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「うちのクラス、結構ごみが多く出るよな……」

 いつものように放課後を迎えた今日、私は教室掃除にて最後のごみ捨てに向かうのを決めるジャンケンに負けて、ごみ捨てを任されていた。
 全く……どうして私はジャンケンとなるといつも最初にチョキを出してしまうんだろうか。

 おまけにごみ袋の結び方が妙になっていて、ごみが溢れてくる心配はないのだが何とも持ちにくい形になっている。
 多少重いのが二個あるのはまだしも、それに加えて持ちにくい形に袋が結ばれているから地味に持っていきにくい。

 律のやつ、袋を結んでくれたのはいいけど結んだあとの袋の持ちやすさはあまり考えていないらしい……まあ律らしいといえばらしいけど。

 そんな事を考えながら階段を降りていると、

「あっ、澪先輩っ」

 下からやってきた梓と顔を合わせた。

「梓、これから部室に?」
「はい、今さっき教室の掃除が終わったところで」
「そっか、私も教室掃除なんだけどこれからごみ捨てでさ」

 両手に持つごみ袋の片方を上げて、これからごみ捨てに行くことをアピールする。

「そんなわけだから、先に行ってて。ごみを捨てたらすぐに行くから」

 じゃあ、と微笑みながら梓の横を通り階段を降りていく。
 すると、

「ま、待ってくださいっ」
「梓?」

 上に向かうはずの梓が下に降りてきた。

「て、手伝います、私」
「えっ、でも一人で持っていけないわけじゃないしさ」

 少し重くて袋が持ちにくいということはあるけど、別に一人で持っていくのが辛いというわけではなかったのだが、

「こういったことでも、少しでも澪先輩の助けになりたいんです」

 じっと私の目を見ながら真剣な表情で助けたいと思ってる梓を見て。

 こういった目をしている時の梓は簡単に自分を曲げないということを知ってたし、そんな梓の思いをむげにするのは逆に失礼になるということも私は知っていた。




「……ああ、わかった。
 じゃあ梓の助けを借りようかな」
「はい! 借りちゃってください!」

 助けを借りることを承諾すると、ぱっと梓は笑顔になりながら片方のごみ袋を持ってくれた。
 私の助けになれることで梓が笑顔を浮かべてくれるのは、ちょっと照れくさくも嬉しく感じる。

「ん、ちょっと重い上になんだか持ちにくいですね」
「あ、ああ極力持ちにくいのは気にしないでやってくれ」
「?」
「じゃ行こっか?」
「はいっ」

 そうして互いに一個ずつごみ袋を持ち、校舎の一階の外にあるごみ捨て場に向けて一緒に階段を降り始めた。




「ありがとうな、ごみ捨て手伝ってもらって」
「いえ、澪先輩の助けになれて嬉しいです」

 ――あれから二人で下のごみ捨て場まで行き、ごみを捨てて。
 現在は校舎の隅にある水飲み場にて、二人でぱしゃぱしゃと水の音を立てながら手を洗っている。

「あ、そうだ」
「澪先輩?」

 先に手を拭き終わると、辺りを見回して周りに誰もいないことを確認して。

「梓、お礼に」

 両手をハンカチで拭いている梓の肩に手を置き、

「……ちゅっ」
「?!!」

 そっと頬に、キスをしてあげた。

「みっ、みみっ、澪先輩っ!?」
「なんだ? 唇にしてほしかったのか?」
「そ、そうじゃなくて、こ、こんなとこでっ……」

 あわあわとした様子で両手をぱたぱたと動かし、手を拭いていたハンカチを落としかけそうになる梓はなんだか見ていてとても微笑ましい。

「こんなお礼、めったにしないんだからな?」
「も、もうっ……!」

 私が笑いかけながらそう言うと、かあっとまるで熟したリンゴのように顔を赤くしながらも梓はちょっと嬉しそうに照れ笑いを浮かべてくれた。

「さ、みんな待ってるだろうし部室に行こ?」
「はっ、はい」

 顔を真っ赤にしている梓の手を握り部室に向かう中、やっぱり梓とキスするなら二人きりで見つめ合いながら。

 静かに目を閉じて唇にするのが一番だな、なんて考えたりしていた――

(FIN)