鼻に届く甘い香り、肌に感じるあたたかな体温と柔らかな感触。
耳に聞こえるのは自分の鼓動と……そして澪先輩の鼓動。
耳に聞こえるのは自分の鼓動と……そして澪先輩の鼓動。
「ん? どうかした?」
布団の中でひょこっと顔を上げると枕元にある小さいスタンドの明かりが、それこそ目と鼻の距離にあるお互いの顔をぼんやりと照らしだす。
「眠くなった? そろそろ寝よっか?」
「あ、いえ、あの……」
「あ、いえ、あの……」
目の前で優しくたずねてくる先輩の笑顔はスタンドの明かりよりも眩しく見えて、私の鼓動が少しばかり早くなる。
――今日は二連休の最初の休みで、澪先輩とデートをして……お互いにすっごく楽しかった。
夜は両親が二人とも泊まりがけの仕事でいないので、デートの終わり際に「よ、よかったら、私の家に来ませんか」と先輩にドキドキしながら誘った所、快くOKしてくれて。
家に帰ってきてからは一緒に居間でまったりと音楽を聞いたり、一緒にお風呂に入ったり、お風呂から出た後はお互いの長い髪を梳かしあったりして……。
家に帰ってきてからは一緒に居間でまったりと音楽を聞いたり、一緒にお風呂に入ったり、お風呂から出た後はお互いの長い髪を梳かしあったりして……。
「何だか、幸せだなあって思って……」
そして今、一緒の布団で先輩の腕の中で眠ることが出来る自分は本当に幸せ者だって思う。
けど……。
けど……。
「だけど、ふと思うんです。
こうして澪先輩に抱きしめられて……一緒に居ることが出来てすごく幸せなんですけど……」
「けど?」
「こんなに幸せでいいのかなって……。
何か、痛いしっぺ返しとかがくるんじゃないかって少し不安にもなるんです」
こうして澪先輩に抱きしめられて……一緒に居ることが出来てすごく幸せなんですけど……」
「けど?」
「こんなに幸せでいいのかなって……。
何か、痛いしっぺ返しとかがくるんじゃないかって少し不安にもなるんです」
先輩と一緒に居てすごく幸せだからこそ、同時に思うものがあって。
こんなにも先輩と一緒で楽しくて幸せでいれて、何かバチが当たるんじゃないかと。
私にはあまりに不相応すぎる幸せなのでは、と心の隅に感じるものがあった。
私にはあまりに不相応すぎる幸せなのでは、と心の隅に感じるものがあった。
――だが、そんなコトを考える私に対し、
「何言ってるんだよ、梓」
「ひゃっ」
「ひゃっ」
先輩は人差し指を目の前に出すと、私のおでこをツン、とつついた。
「梓は何も悪いことをしていないし、何も間違ったこともしていない。だからそんな心配なんてすることないよ。
もし梓の幸せを妬んで危害を加えようとするやつがいたら、そんなやつは私が叩き出す」
もし梓の幸せを妬んで危害を加えようとするやつがいたら、そんなやつは私が叩き出す」
真剣な顔で、ぎゅっと私を抱きしめてくれる腕に力を込めながら話し、
「それに今、一緒に居てこんなに幸せなんだ。
だからこれからも一緒に居れば、もっと幸せになるに決まってるさ」
だからこれからも一緒に居れば、もっと幸せになるに決まってるさ」
今度は先程までの真面目な顔ではなくいつも私に向けてくれる、にこやかな笑顔でそう言ってくれた。
「澪先輩……」
「だから一緒に幸せになろう。
梓は私が守るし幸せにするから、な?」
「……は、はい!」
「だから一緒に幸せになろう。
梓は私が守るし幸せにするから、な?」
「……は、はい!」
幸せにする、と言ってくれたのが何だか恥ずかしくも嬉しくて、先輩の体をこちらからもぎゅっと抱きしめる。
ほとんどもうプロポーズの言葉ですよ、先輩……。
ほとんどもうプロポーズの言葉ですよ、先輩……。
「梓……」
と、熱っぽい声で私を呼びながら、目を閉じた先輩の顔がゆっくりと近づいてきて。
それに従うかのように、私も目を閉じて……。
それに従うかのように、私も目を閉じて……。
「せんぱい……ん……」
布団の中で、お互いに体を抱きしめながら、静かにキスをした。
――将来、たどり着く未来がどんな未来かは分からないけど。
澪先輩と一緒なら、きっと幸せな未来にたどり着けると……そう思える。
澪先輩と一緒なら、きっと幸せな未来にたどり着けると……そう思える。
私の幸せな未来は、澪先輩と一緒に作り出していくものだから――
(FIN)