朝の湯煙の中で

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mioazu

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 ――サァーー……。

「うーん、朝のシャワーは目が覚めるし気持ちいいなあ……」

 休日の朝、私はお風呂場にて熱いシャワーを浴び、起きたばかりの体に残る眠気を払拭していた。
 現在、自室の布団では一緒に眠った一人の眠り姫が今も夢の中にいるだろう。

 ――昨日の夜、布団の上の梓が両腕をそっと私の首元に伸ばし私はそれに応じるようにゆっくりと覆い被さり、

「(澪先輩……)」
「(梓……)」

 互いに名前を呼びながら、強くぎゅっと抱きしめ合って――。

 改めて思い返すと、頭から煙でも出そうになるが、

「梓、すごく可愛いかったな……」

 もちろんいつも梓は可愛いけど、昨日はまたこの上なく可愛いくて仕方がなくて。つい顔がにやけてしまった。

 ――と、

「澪先輩っ!」

 突如、ガラッと勢いよくお風呂場の扉が開いたかと思うと、まだ布団で眠っているはずの梓がそこにはいた。

「お、おはよう梓。今日は早起きだな」
「おはようじゃないですっ、見て下さいこれっ!」
「見てって何を……?」」

 梓は何やら怒っているような様子で自分の首元辺りを指差しているが……ん?

「な、なんだこれ?」

 そこには妙な形をした斑点のような跡がいくつもついていて、思わず疑問の声を上げた。
 まさか何かの病気……!? と一瞬思ったが、

「なんだじゃないですっ!
 昨日そ、その……澪先輩と色々とした時にこの辺りいっぱいキスされたので、首元が先輩のキスマークだらけなんですっ!」
「……あ」

 そう言われて、一瞬あっけに取られた後、ハッと気付いた。
 この斑点のような形は私が、私の唇で付けたものだということを。

 とはいえ途中からその……興奮してたからか詳細はよく覚えてないのだが、そういったコトを何度もしていたのは断片的になんとなく覚えはあった。
 うう……恥ずかしい限りだ。




「こんなについてたら服着ても隠しようがないですよー!」
「いやその、あんなに可愛い梓の姿を見せられたらつい歯止めがきかなかったというか……ごめん」
「ななっ」

 こうなると今日いっぱいは外に出て過ごすのは無理かなあ……と思うが、その前に。

「梓、せっかく起きたんだし一緒にシャワー浴びよ? 梓も昨日は汗かいただろうしさ」
「えっ、ちょっと先輩っ、あっ」

 話をごまかすかのようにスッと梓の髮留めのゴムを外しながら、お風呂場に招き入れることにした。
 夜はともかく、朝一緒にシャワーを浴びるなんてなかなかないだろうしね。





「ん……はん……」
「あむ……ちゅ……」

 上から温かいお湯が絶え間無く降り注ぎ、湯気でお風呂場が白く染まる中で互いの唇を重ねる。
 シャワーを浴びながらこうしてキスするのはまた一段と扇情的なものを感じて、すごくドキドキする。

「ぷはっ……普通にシャワー浴びるんじゃなかったんですかぁ……」
「ん……髮を降ろした梓、大人っぽくてすごく綺麗だから、つい」

 甘い吐息をもらしながら抗議する梓に、私はそう正直に返答する。

 ――普段のツインテールに結ばず、長く艶やかな黒髮をそのまま降ろしている梓はいつもには無い大人っぽさを感じてとても魅力的で。
 それでつい、シャワーを浴びながらもこうして唇を寄せにいってしまっていた。

「そんな、大人っぽくて綺麗だなんて……先輩のほうがずっと綺麗ですよ」

 かあっと更に頬を赤くしながら顔を横に背けて否定する梓だが、ちょうどお風呂場の窓から朝の陽光が差し込み、梓の黒髮をきらきらと照らし出していて。
 可愛さと美しさ、相反する要素を持ち合わせたその姿は思わず見とれるほどだ。

「いいや、本当に可愛いだけじゃなくて綺麗だぞ、梓」
「だからそんな、んっ……」




 梓の顎をそっと持ち、正面に振り向かせると再び唇を重ね合わせる。

 そのままぎゅっと抱きしめ、唇を深く重ねていくと、梓もまたゆっくりと私に甘えるように腕を回し優しく抱き返してくれた。
 何も着ていないこともあり、体を密着させていると梓の柔らかな体の感触と鼓動が直接伝わってくる……。

「梓……好き……」
「私もです……澪先輩……」

 しばらくの間、お風呂場にはシャワーから流れるお湯の音と、時折お互いの口からもれる私と梓の吐息が静かに響いていた――

(FIN)
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