寝言は正直

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mioazu

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 プシュー、という音と共にバスの扉が開き、私達はバスに乗り込む。

 早めにバス停に来ていたこともあって、ちょうど空いていた一番後ろの席で澪先輩と隣同士に座ることが出来た。

「今日は楽しかったですね、澪先輩」
「ああ、でも今日はって、まだ終わりじゃないだろ?」
「えっ?」
「だってこれから私、梓の家に泊まりに行くんだからさ」
「あっ、そうでしたね、えへへ……」
「うふふっ」

 ――今日は朝早くから中心街のほうに澪先輩とデートに出掛け、色んな所を回ってきた。

 デパートでショッピングを楽しんだり、昼食は公園にて先輩が作ってきたお弁当を一緒に食べたり、先程までは喫茶店で普段の部活の時とはまた一味違ったまったりとした時間を過ごしたりして……。

 そうしてバスが出発して先輩の綺麗な横顔に見とれていると、次第にウトウトとして瞼が重くなってきた。
 先輩と一緒に中心街の色んな所を歩き回ったからなあ……もちろんそれだけでもすごく楽しかったんだけど、ね。

「梓、眠たい?」

 そんな私の様子を察して、先輩が優しくたずねる。

「はい、ちょっと……」
「眠たいなら眠っていいよ、どうせ降りるのは終点なんだしさ」

 そう言いながら、先輩はそっと私の肩を持って抱き寄せてくれた。

「じゃあ……お言葉に甘えて、ちょっと寝ますね……」
「ああ、降りる時になったら起こすから」
「はい……ありがとうございます……」

 先輩の肩にもたれ、先輩の心地好さを感じながら瞼を閉じる。
 すうっと意識が遠退き眠りにつく前、先輩が静かに私の頭を撫でてくれたのがとても嬉しく感じていた――





「……さ、あずさ」
「むにゃ……ん……」
「ほら、着いたから降りるぞ」
「あ……はいっ」

 先輩の声でぼんやりと目を覚ますと、どうやら終点に着いたらしく窓の外を見るといつもの見慣れた町並みがあった。

 寝ぼけまなこをこすりつつ、ぐいっと先輩に手を引っ張られバスを降りるが……。




「……っ」
「み、澪先輩?」

 あれ、何だか先輩怒ってるような……?
 どうしたんですか、と聞こうとした所、

「全く……恥ずかしかったんだぞ」
「えっ?」
「だって梓、さっきまで寝言でずっと……」

「(んん……みおせんぱい……)」
(……?)
「(すきです……あいしてます……)」
(あっ、梓!?)
「(えへへ~、だめですよぅ……だめですってば、みおせんぱぁい……むにゃむにゃ……)」
(???!)

「え……ほ、ほんとに寝言でわ、わたしそんなことを……ずっと?」
「うん、地味に周りの視線がいたかった……いたかったよ」

 赤い顔でこくりと頷く先輩。
 一瞬、頭の中が真っ白になって思考がしばし停止した後、一気に顔に熱が集まり顔全体が真っ赤になるのが自分自身でも分かった。それもう、公開告白に達するレベルじゃないですかっ……!?

「な、なら起こして下さいよう!」
「いや、それは無理だよ」
「どうしてですかっ!」
「だって……梓の寝顔、可愛いくて、終点に着くまで起こしたくなかったからさ」
「~~~!」

 うわああっ、もうこれ以上顔が熱くならないと思ってたのにまだ顔が熱くなってる……なんだか頭から蒸気でも出そうなぐらい……。

 ――と、

「まあその代わり、と言ってはなんだけどさ」
「な、なんですか?」

 急に先輩の顔が耳元に近づいたかと思うと、

「……今夜は、寝かさないからな」

 ニコッと微笑みながら、そんなコトをささやいていた。

「ええっ!?」
「じゃあ梓の家に行こっか。楽しみだな~」

 鼻歌まじりで楽しそうに私の家に歩きだす先輩。

「い、色々と覚悟しておかないとダメっぽいかな……」

 私はそんな先輩の後ろで、いまだに赤く、熱くなっている頬を抑えつつ、夜への期待と不安が入り混じる中で帰路につくしかなかった――。

(FIN)
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