妹のような恋人

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mioazu

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「ふう……ふう……」

 息を切らせながら、ぱたりと布団に倒れる。
 体全体には汗が滲み、額には汗のせいで前髪が少し張り付いている。

 けど、それは私だけではなくて――

「はぁ……はぁ……」

 腕の中に抱きしめている梓も同じような様子だ。
 少し強く抱きしめすぎたか、梓は私の体に顔をうずめたまま僅かに身じろぎする。

「梓、大丈夫?」
「あ……はい……大丈夫です」
「ごめん、ちょっと無理させちゃったかな」

 いくら梓が可愛いからって、愛しすぎて逆に負担をかけてしまっていてはどうしようもない。
 だがしかし、

「いえっ、最初に好きにしていいですって言ったのは私ですし……それに私、嬉しかったです」

 にこっと微笑みながら梓がそんなことを言うので、落ち着きはじめていた私の心臓がまたドキドキしてしまう。

「もう、ようやく落ち着いてきたんだから、またドキリとするようなこと言うなよ」
「えへへ」

 照れくさいのをごまかすかのように指先で梓の額をツンと軽く小突き、お互いにくすくすと笑い合う。

 ぴったりと私の体に寄り添う梓は先ほど一緒にお風呂から上がってきたこともあり、普段のツインテールをといており今は豊かなストレートヘアが布団の上に広がっている。

 こうして改めて見るとホントに実の妹みたいで、先程までのことを考えると何だか色々といけない気分になってくる。
 ……まあ、女の子同士でここまで親密な関係になってる時点でいけないも何もないのだろうけど。

「澪先輩、どうしました?」
「ん? ああ、髪をといている梓は実の妹みたいで可愛いなって思って」
「そ、そんな、妹みたいだなんて」
「それでいて普段にはない大人っぽさを感じるから、そのギャップでまたドキドキしちゃうんだよ」

 だからさっきまでドキドキしっぱなしだったんだろうな、私。




「大人っぽいだなんて……私チビですし、胸だってないですしそんなことは……」
「んー、でも梓はこんなに可愛いんだから気にすることなんてないぞ?」
「も、もうっ!」

 頬をむーっと膨らませる梓に対し「ごめんごめん」と言いながら、髪をそっと撫でてなだめる。
 梓は怒った顔もなんだか可愛いくて、微笑ましい。

「けどさ、やっぱり梓が本当に妹ではなくてよかったって思うよ」
「えっ、どうしてですか? 私は澪先輩がお姉ちゃんだったらすごく嬉しいですけど……」
「ふふっ、ありがとう。
 だけどさ」

 言いながら私は布団から体を起こし、ゆっくりと梓を抱き起こす。

「私達がもし本当の姉妹だったら、こうして恋人同士になることは出来なかっただろうから」
「せんぱい……ん……」

 そのまま顔を寄せ、優しく、いたわるようにキスをする。
 両手で梓の後頭部と背中を抱いていると、梓の小さくも柔らかな両手が私の背中に回り、甘えるように抱き着いてきてくれた。

 少しの間、お互いがお互いを抱きしめてお互いの感触だけを感じた後、ゆっくりと唇を離す。

「明日の朝、また一緒にシャワー浴びよっか? お互い汗かいちゃったしさ」
「そ、そうですね」

 そうしてぽすん、とお互い布団に横になると私は梓の耳たぶから頬、頬から顎の先まで撫でるように指先を滑らせる。

「ひゃんっ、くすぐったいです先輩」
「うふふっ」

 ぷるっと体を震わせた梓は気恥ずかしさを隠すように、私にすり寄り顔を見せないようにしながらぎゅっと抱き着いた。
 そんな梓を私もまた優しく抱きしめ返す。

「おやすみ、梓」
「おやすみなさい、澪先輩」

 ――妹のように小さくて可愛い、大切な恋人の温もりを自分の腕の中に感じながら眠りにつける……それが本当に心地好くて、幸せだ。

 まどろむ意識の中、この温もりをずっと大事に、大切にしていこう……そう考えながら、私は梓と共に眠りに落ちていった――

(FIN)
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