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澪先輩の誕生日がやってくる。しかし私はどうしても良さげなプレゼントが浮かばない。

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mioazu

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澪先輩の誕生日がやってくる。しかし私はどうしても良さげなプレゼントが浮かばない。
かといって花だけとか言うのも味気ないし、
あんまり高い物だと澪先輩に受け取ってもらえなそうだし。
 仕方なく、私は最終手段を取った。何の事はない、本人にリクエストを聞いてみたのだ。

「梓のくれる物なら別に何でも良いよ」
 予想通り、何の解決にもならない返事が。さらに、
「あ、でも高い物とかはいらないよ。梓に気を遣わせるのも悪いし」
 しっかりと釘を刺されてしまう。私は澪先輩の為だったら全然気にしないんだけどな……。
「じゃあ、当日はデートしましようか。学校終わったら二人で街へ出て。一日くらい練習休んでも平気ですよね」
「あ、良いねそれ」澪先輩は快く承諾してくれた。
 決まりはしたが、そーなると何処に行こうかで今から迷う……。
「うふふ。結局梓は悩むハメになるんだな」
 悩んでいる私を見て、澪先輩は実に嬉しそうな表情でニヤニヤと笑っていた。




 誕生日当日、放課後になると私と澪先輩は、電車に乗り目的地を目指した。
「なあ、まずはどこ行くんだ?」
「まずは純に聞いたオススメのスイーツのお店です。今日は遠慮なく食べて下さいね」
「ダ、ダイエット中なんだけどな……」
 澪先輩はちょっぴり困った表情を浮かべる。と、澪先輩の隣に座っていた人が席を立った。
「梓、席空いたぞ」
「私はこのままでいいです」
 「ここならずっと澪先輩の顔が見られる。私にとってはベストポジションです」
いつもと違って澪先輩を見下ろすという感覚は、ちょっとくすぐったい。
「むー……」
 澪先輩は何か言いたげに口をとがらせる。多分、先輩の自分だけ座ってるってのは気が引けるんでしょう。
「じゃあ、帰りは梓が座ってくれ。私だって上から梓を観察してやる」
「こんな風にですか?」
 梓は吊り輪を掴みながらずいっと身体を澪の顔に近付ける。
「あ、梓顔近すぎ」
「ふふ、しばらくこのままでいます」

 梓はじっくりと目の前であたふたする澪を眺める。

 ……いつもと変わらない光景。それが、澪先輩の望んだプレゼント?
 でも、いつもより歯がゆいような感覚がするのは気のせい?




「腕組んじゃいましょうか」
 駅を出て、唐突に切り出す。返事も待たずに私は澪先輩の肩を抱き寄せた。
「さ、さすがにそれは恥ずかしい……」
「大丈夫ですよっ 誰も知り合い居ないんですから、これくらい」
「周囲の目が痛い……」
「気にしなければ良いんです。周囲にアピールしてやりましょう」
「しょうがないな、特別だぞ……」
 私が必死に説得すると、澪先輩は恥ずかしそうにしながらおずおずと私の腕に寄り添ってきた。
澪先輩の温もりが伝わってきて、私は一段と表情を緩ませてしまう。
 ……何故だろう、私の方が舞い上がってる。
「……ふふふ」
 軽く照れ笑いを浮かべた澪先輩がとても可愛くて、私は懸命にドキドキするのを抑えていた……




「わあ……。素敵なお店」
 オープンテラスに腰を下ろすと、澪先輩はうっとりとした表情を浮かべる。
「こういうのって良いな……」
 知らない街で、見知らぬ人を眺める。ゆったりした空気の中で、澪先輩は嬉しそうに紅茶を口に運ぶ。
「このケーキ美味しい。ムギが持ってきてくれるのみたい。梓も一口食べてみる?」
 あーん、と言いながら澪先輩はフォークを差し出してくる。……気付いてるのか分からないけど、
さすがにそれは腕組みより恥ずかしいですよ、澪先輩……。
 ぱくり。
「な?凄く美味しいだろ?」
 そんな嬉しそうな表情見せられたら、私はもうお腹いっぱいです。。
「じゃあ、お返しに私のケーキをどうぞ」
 恥ずかしさを誤魔化すかのように、私は自分のケーキを提供する。嬉しそうに口を開ける澪先輩を見ると、
ついついイタズラしたくななってしまう。
 ひょい、ぱくっ。
 澪先輩の口に入る直前でフォークを引き、自分の口へ。
「うーっ……」
 これは恥ずかしかったのか、やや赤くなりながら澪先輩はジト目で抗議してくる。
澪先輩は怒った顔も可愛い。でもって……、
「ごめんなさい。はい、どーぞ」
 ぱくっ。
「美味しい……」
 ころっと変わる澪先輩の表情が堪らない。
「梓。美味しいお店連れてってくれてありがとうな」
 けれど、澪先輩は笑顔一発で私のペースを崩してしまう。ダメだ、どうしてもこの笑顔には勝てない。
「お店教えてくれた純にお礼言わなくちゃですね」
 私はぱたぱた手を振りながら、胸の高鳴りを押さえていた。
「梓、顔赤いぞ?」
 くすくす笑いながら澪先輩が指摘してくる。私が振り回されてどーすんの
「じゃあ次行きましょう」
 このままだと私の理性が持ちそうに無い。私はそそくさと席を立つ。
会計を済ませ、私たちは店を出た。




本当に、今日はこれで良かったのか……?
 私は凄く楽しかった。いつもより笑顔の澪先輩も堪能出来たし。
 でも。これはいつもと変わらない日常で。
 澪先輩の誕生日という特別な日に、私は澪先輩の為に何か出来たのか……?

「そろそろ暗くなってきたな……。帰ろっか」
澪先輩は歩き出す。けれど、私は足を止めて……
「……梓?」
 きょとんとした澪先輩が私を見る。
「澪先輩……。何か私にして欲しい事あります?」
 思い切って私は切り出してみた。不安が顔に出ていたのか、澪先輩はすぐさま私の気持ちを察してしまう。

「ううん、もう充分貰ったから?」

「えっ……?」
「私が欲しかったのは時間。梓と一緒にいられる時間だった。少しでも梓と二人きりになりたかった」
 建前なんかじゃない。澪先輩はありのままの笑顔で答える。

「澪先輩……」
 にこりと、澪先輩は笑って見せる。
「あれ私今格好いい事言った?」
「うーん……、どっちかっていうと恥ずかしい事です」
「うふふ、梓顔真っ赤」
「だって……、嬉しかったんです……」

 もう、限界……
 人の目なんて気にしていられない。私は、思いっ切り澪先輩の身体を抱きしめた。

「私、今日はすっごく楽しかったから……。私ばっかり楽しんでるみたいで不安だったんです……」
「馬鹿だなあ……。梓が楽しんでて、私が楽しくないワケないだろ?……」
 澪先輩は私の腕の中で、ちょっぴり呆れた表情をしている。
「私をからかって笑う梓。照れて真っ赤になる梓……。
どれもこれも、私の大好きな梓の笑顔。私には、梓の笑顔が最高のプレゼント……」
 そして、澪先輩は、ゆっくりと私の温もりを味わうように目を閉じた。

 私も、幸せで胸が張り裂けそうなくらい。ドキドキしてるのが澪先輩に伝わるくらい、幸せだから……
 ……と、澪先輩は不意に顔を上げ、してやったりの表情で言ったのだ。
「うふふ。今度こそ格好いい事言っただろ?」
ハイ、ときめきシュガーもびっくりです。




 私たちは帰りの電車に乗り込む。
混雑の時間は過ぎてたようで周りはガラガラ。
 澪先輩も同じことを思っていたみたい。けれども行きの電車で言っていた約束を律儀に守って、
澪先輩は私の前に立っている。
「澪先輩も座ってくださいよ。歩き回ったから疲れてますよね?」
「ううん、こーやって梓の顔見てる方が落ち着く」
 そして澪先輩は、私がやっていたように吊り輪を両手で掴みながらぶら下がり顔を近づけてくる。

「もう……。そんなに顔近付けてると、どうなっても知りませんよ?」
「へっ?」
 きょとんとする澪先輩に、私は素早く顔を近づける。そして……、
「こーゆー事です」

 ちゅっ。

「!!!!!」
 さすがの澪先輩も、これはびっくりしたみたい。
「あ、梓いきなりそんな///」
「コレが一番のプレゼントだと思って」
「だ、だからっててこんな所で……」
「油断してた澪先輩が悪いんですよ」
「ううっ……」
「お誕生日おめでとうございます、澪先輩」
「最高に恥ずかしいプレゼントだよ……」
 澪先輩ってば耳まで真っ赤になってる でも、これだけじゃ足りないから。
 さっき澪先輩が、私にくれた言葉。それは、とても大切なプレゼント。
 まだ、私はそれに答えていない。だから……
「私だって澪先輩といたいから。ずっとずっと、一緒にいたいから だから、約束……」

 私は、いつまでも澪先輩の隣にいますからね……

 囁きながら、私はもう一度澪先輩の唇にキスする。
 幸せそうな顔で、澪先輩は、ゆっくりと頷いた……



おしまい
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