「梓、遅いな……どうしたんだろう」
部室を出て階段を下りると、私は少し駆け足で梓がいると思われる二年生の教室を目指す。
いつものように放課後を迎え、いつものようにみんなとティータイムを過ごしていたが、今日は時間が経ってもなかなか梓が部室にやってこない。
何かしら用事があって休むとしても先に部室に来て断りを入れてから帰るはずなので、こうして顔も見せにこないのはちょっと心配。
だからかこうして、いてもたってもいられず部室を出て、梓を探しにきていたのだった。
だからかこうして、いてもたってもいられず部室を出て、梓を探しにきていたのだった。
「教室にいなかったら携帯にかけてみるとして……さて」
梓のことを考えながら二年生の教室までやってきた所で、中をそっと覗く。
黄色い陽射しに染め上げられた教室は静まり返っていて、人の気配を感じさせない。
他の生徒たちはみんな早々に下校したか、それぞれの部活に行ってしまったようだった。
黄色い陽射しに染め上げられた教室は静まり返っていて、人の気配を感じさせない。
他の生徒たちはみんな早々に下校したか、それぞれの部活に行ってしまったようだった。
――そんな人気のなくなった教室に、
「すぅ……すぅ……」
机に突っ伏して、かすかな寝息を立てて熟睡している梓の姿があった。
「梓……?」
足音を立てないように近づき、梓の前の席の椅子に物音を立てないよう慎重に座る。
普通に考えれば早く起こして一緒にすぐ部室に行くべきなのだろうけど……寝ている梓の姿が可愛くて、なんだか起こす気になれないでいた。
普通に考えれば早く起こして一緒にすぐ部室に行くべきなのだろうけど……寝ている梓の姿が可愛くて、なんだか起こす気になれないでいた。
ふと私はそっと手を伸ばし、梓の髪を静かに、そっと撫でる。
流石に起きるかなと思ったけど、
流石に起きるかなと思ったけど、
「ふにゃあ……ん……」
まるでネコのような声を上げながら、嬉しそうに、気持ちよさそうに表情を緩ませながら眠り続けていた。
(可愛いな……)
それがあまりにも可愛いくて、私はつい至近距離で梓の寝顔をまじまじと見つめながら、髪を優しく撫で続ける。
「んん……みおせんぱぁい……んにゃあ……」
「ふふっ」
「ふふっ」
寝ている状態でも、撫でているのが私だと分かるのだろうか?
無邪気に私を呼びながら、まるで天使のように幸せな寝顔を見せる梓を見ていたくて、私はしばらく梓を撫で続けていた。
無邪気に私を呼びながら、まるで天使のように幸せな寝顔を見せる梓を見ていたくて、私はしばらく梓を撫で続けていた。
「んん、ん……?」
「あ、起きた? 梓」
「みお、せんぱい……?」
「あ、起きた? 梓」
「みお、せんぱい……?」
少しして、未だまどろみの中といった様子ながらもようやく梓が目を覚ました。
とろんとした無垢な瞳にじっと見つめられて、ちょっとドキッとしてしまう。
とろんとした無垢な瞳にじっと見つめられて、ちょっとドキッとしてしまう。
「あれぇ……? なんでみおせんぱいがわたしのクラスに……?」
やっぱりまだ少し寝ぼけているのか、微妙に呂律が回っておらず目の焦点もあっていない。
そんな寝ぼけている梓もまた可愛いと思ったけど……それは一旦置いておこう。
そんな寝ぼけている梓もまた可愛いと思ったけど……それは一旦置いておこう。
「もう、梓がなかなか部室に来ないから、心配で教室まで見にきたんだぞ」
「ふぇ……?」
「そしたら梓が机に突っ伏して眠ってるから……」
「……はっ!」
「ふぇ……?」
「そしたら梓が机に突っ伏して眠ってるから……」
「……はっ!」
事情を簡単に説明したところで梓の目がぱちりと開き、どうやら完全に目が覚めたようだ。
「あ、あのっ、私っ……」
「なんで教室で眠ってたりしたんだ?」
「そ、その、昨日家で夜にギターの練習で夜更かししてて、ちょっと寝不足で疲れててっ……」
「うん」
「それに加えて今日6時間目が体育だったのでクタクタで、10分か15分くらい一眠りしてから部室に行こうと思ってたんですけど……」
「けど疲れてたから予想以上に寝入ってた、そんなところかな?」
「はっ、はい……」
「なんで教室で眠ってたりしたんだ?」
「そ、その、昨日家で夜にギターの練習で夜更かししてて、ちょっと寝不足で疲れててっ……」
「うん」
「それに加えて今日6時間目が体育だったのでクタクタで、10分か15分くらい一眠りしてから部室に行こうと思ってたんですけど……」
「けど疲れてたから予想以上に寝入ってた、そんなところかな?」
「はっ、はい……」
私が言い当てると、梓は恥ずかしそうにうつむきかけるが、何かハッと気づいたかのように顔を上げる。
「と、ところで先輩、いつから私の教室に?」
「ん? ええと……今から10分ぐらい前からかな」
「な、なんですぐ私を起こさなかったんですか?」
「いや……その、梓の寝顔が可愛いかったから、つい見入ってたというか、見とれてたというかさ」
「え、ええっ!?」
「ん? ええと……今から10分ぐらい前からかな」
「な、なんですぐ私を起こさなかったんですか?」
「いや……その、梓の寝顔が可愛いかったから、つい見入ってたというか、見とれてたというかさ」
「え、ええっ!?」
バツが悪そうに私が顔を背けながらそう言うと、梓はうつむきながら頬を赤く染めていた。
「どうしたんだ?」
「だ、だって……寝顔なんてみっともないもの見られて、恥ずかしいです……」
「そんなことないぞ、言ったろ? 可愛いかったから見とれてたって」
「か、可愛いなんて……」
「それに、梓の髪を撫でてたら私のこと呼びながらもっと気持ち良さそうに眠るから起こすに起こせなかったんだよ」
「!! わっ私、寝言で澪先輩のこと呼んだりしてたんですか!?」
「ああ、甘え声でみおせんぱい、みおせんぱいって」
「――――っ!!」
「だ、だって……寝顔なんてみっともないもの見られて、恥ずかしいです……」
「そんなことないぞ、言ったろ? 可愛いかったから見とれてたって」
「か、可愛いなんて……」
「それに、梓の髪を撫でてたら私のこと呼びながらもっと気持ち良さそうに眠るから起こすに起こせなかったんだよ」
「!! わっ私、寝言で澪先輩のこと呼んだりしてたんですか!?」
「ああ、甘え声でみおせんぱい、みおせんぱいって」
「――――っ!!」
寝ていた時の詳細を話すと、梓は頬だけでなく顔全体まで真っ赤になってしまった。
だが、
だが、
(むむ、恥ずかしがる梓もこれはまた可愛いな……)
そう思い、抱きしめたい衝動にかられて私は椅子から立ち上がり梓の横に立つと、そのまま梓の首元に腕を回して身をかがめ、ぎゅっと抱きしめる。
「せ、先輩!?」
「ふふっ、よしよし」
「ふふっ、よしよし」
なだめるように髪を撫でながら、ささやくように梓の耳元で話しかける。
「梓は本当に可愛いから……な?」
「せん、ぱい……」
「せん、ぱい……」
戸惑い、身を固くしていた梓だったが、私がそのまま抱きしめていると次第に体の力を抜き、甘えるように私の体にもたれ掛かってきてくれた。
「……ん、落ち着いた?」
「落ち着いた……というより心地好かったです、澪先輩」
「そう? ふふっ、ありがとな」
「えへへ」
「落ち着いた……というより心地好かったです、澪先輩」
「そう? ふふっ、ありがとな」
「えへへ」
少し体を離し、見つめ合うとお互いにくすりと笑いあう。
「じゃ、そろそろ部室に行こ? みんな待ちくたびれてるぞ」
「は、はい!」
「は、はい!」
――寝ぼけていたり、頬を赤く染めて恥ずかしがる梓も可愛いけれど。
やっぱり、梓は笑っている顔が一番可愛いって改めて思う私だった――
(FIN)