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 ありがとうございましたー、というコンビニの店員の声を聞きながら店の外に出ると体の芯まで冷え込みそうな寒さが襲ってくる。

 この寒さ、一人であれば思わず背中を丸くしながら歩いていきそうなぐらいだけど、

「よし、行こうか梓」

「はいっ」

 隣にいて、そっと手を握ってくれる澪先輩の存在が何よりあったかくて、そして嬉しくて。
 この寒さでもしゃきっと背筋を伸ばして歩いていくことが出来る。

「あそこの公園に寄っていこう、あそこなら上に屋根が付いてるベンチがあるからベンチに雪が積もってる心配もないしさ」

「はい!」

 そうして、先ほどのコンビニから少し離れた所にある公園に私達は立ち寄っていくことに。

「運がいいな、今の時間は私達の貸し切りみたいだ」

「少しの間ですけど、これで二人っきりですね」

「ああ、嬉しいかぎりだ」

 人気のいない公園を前にして、私達は互いの顔を見合わせ思わず微笑む。
 澪先輩と二人きりの時間は何より貴重で、そして何よりも嬉しい時間だけど、澪先輩もそんな私と同じように思ってくれているみたい。

「いいよ梓、座って」

「ありがとうございます、澪先輩」

「ふふっ、どういたしまして」

 ベンチをささっと手で払ってくれた澪先輩の心遣いに感謝しながらベンチに腰を下ろすと、澪先輩もまた私のすぐ隣に腰を下ろした。

「さ、買ってきた中華まん食べましょう?」

「ああ、んじゃいただきます」

「いただきますっ」

 ベンチに座り一息ついたところで、先ほどコンビニで買ってきた中華まんを頬張りながら過ごす。
 私はあんまんを、澪先輩は肉まんを食べているけどそれも、

「うん、おいしい」

「はい、半分食べたら交換しましょう」

「ああ、あんまんもおいしそうだな」

 途中で取り替えっこするためにあえて違う種類のを買ってきたのだった。

「あむ……んっ、肉まんもおいしいですね、はむ」

「……ふふっ」

「? なんですか、急に笑ったりして」

「ん、肉まんを頬張ってる梓は可愛いなって思って」

「なっ、何言ってるんですか」

「梓が可愛いってことを言っただけだぞ?」

「も、もうっ……」

 ああもう、自分の頬が熱くなってるのが自分自身でも分かる。
 なんだか澪先輩と付き合うようになってから、私はよく澪先輩に頬を熱くさせられてるような気がするなあ……。

「ごちそうさまです」

「ん……ごちそうさまでした」

「どうしましょうかこれから、楽器屋にでも行きますか?」

 中華まんを食べ終えた所で、これからどうするか澪先輩に尋ねてみる。

 すると澪先輩は、

「んー、それも悪くないけど今は……」

「み、澪先輩?」

 私の肩に腕を周しそっと肩を抱いてきた。
 澪先輩のあったかさが、更に身近に感じられる。

「もうちょっと、こうして梓と二人きりでいたいな」

「澪先輩がそう言うなら私もちょっとの間、澪先輩に甘えていたいです」

「さっき皆で盛大に誕生日を祝ってくれたのは嬉しいけど、こうして梓と二人きりで静かに誕生日を過ごす時間も欲しかったんだ」

「ん……私もこうして澪先輩と静かに過ごしたいなって思ってました」

 澪先輩に肩を抱き寄せられ、そして髪を撫でられながら優しい声が耳元で響く。

「ね、澪先輩」

「なんだ?」

「んっ」

 顔を上げ、澪先輩と一瞬目を合わせたのち私はほんのわずかに唇を突き出して目を閉じる。

「む……りょーかい」

 私の意図に気付くと、澪先輩はそっと私の頬を両手で包み、唇を重ねてくれた。

「ん……」

 柔らかくてふっくらとして、そしてとっても甘い澪先輩の唇を感じ、そしてその感触が離れていくと同時に目を開けるとちょうど同じように目を開いた澪先輩と視線が合った。

「ふふっ、やっぱり甘いな梓の唇は」

「澪先輩の唇だって」

 そんなことを言いながら、私達はまた自然と微笑んでいた。

(おしまい)