水着姿でつかまえて

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mioazu

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真夏の陽光、潮風の香り、打ち寄せる波の音、そして……先輩の声。

「梓、こら待てっ!」
「あはははっ、こっちですよー先輩っ」

もちろん本気で追いかけっこしてるわけじゃない。ほんのちょっとした、そう、仔猫同士のじゃれあいみたいなものだった。だけど……。

「きゃ…!」

うかつにも私は砂に足を取られ、顔面から砂地に突っ込んでしまった。

「大丈夫か、梓!?」

あわてて駆け寄ってきた先輩に半身を起してもらう。

「はいっ。ちょっと砂が……ぺっぺっ」
「まったく、小学生みたいにはしゃいでるから」

やれやれと言いながらも、澪先輩は私の髪やほっぺについた砂粒を丁寧に払ってくれた。
そのひとつひとつの仕草に、とてもドキドキしてしまう。
顔を寄せ、細く長く指であちこち触られているという、たったそれだけのことに。

もちろん澪先輩に他意があるはずもない。わかっているけど、なんでこんなに意識してしまうんだろう。
そんなことをされているうちに私の身体からしだいに力が抜けていく。
そのうち堪え切れなくなり、背中から砂浜に寝転がってしまう。

「あ……梓」
「せん、ぱい」

喘ぐように呟くことしかできない。情けない私。哀れな私。救いを求めるように両手を伸ばす。

「いい……ですよ、先輩」

胸が破裂しそうに高鳴っていた。一瞬遅れてゴクリという生々しい音が聞こえる。果たしてそれは私のものか、それとも澪先輩のものだったのだろうか。

意を決した澪先輩が、ゆっくりと私の上に覆いかぶさってくる。その時。

「みーおー、腹減ったよー」
「あずにゃーん、私とも遊ぼうよー」
「「へっ……」」

私と澪先輩は、同時に声のした方に顔を向ける。そこには律先輩と唯先輩が、この世の終わりの光景を目撃したかのような表情を浮かべて立ちくすんでいた。

「「お、おじゃましましたー!!」」

そのまま一目散に姿を消してしまう。

「は、はは……」

私たちにできたのは、ただひきつった笑顔を浮かべていることだけだった。
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