「あっ、あっ、んっ、いいよっ、ひとはちゃん……なかなか上手いね」
「はい。そ、そう言ってもらえると……んっ、嬉しいです……」

 10歳くらいの少女と20歳過ぎの男性、二人の体がベッドの上で重なり合っていた。少女の
呼吸は激しい運動をしているように荒く、一方で、男性のほうは陶然とした表情だ。

「ふぅっ、あっ、そこ……うん、そのあたりを中心に……ひゃあっ」
「んっ、どうしました、先生?」
「くすぐったいよひとはちゃん。あんまりくすぐらないで」
「ちょっとくらい良いじゃないですか。……こんな感じ、ですか?」
「そうそう、そんな感じ……あぁーっ、気持ちいい……」
「む、むふぅ」

 少女が指先を動かすたび、男性は恍惚と息をつく。少女も男性が悦んでいるのを感じ取り、
鼻息荒く昂奮していた。二人の下で、安物のベッドがぎしぎしと悲鳴を上げる。
 紹介するまでもなく、ふたりは鴨橋小学校六年三組担任教師の矢部智と、同生徒の丸井ひと
はである。土曜日、矢部の部屋にやってきたひとはは、こうして自らの担任教師とベッドの上
で体を重ねているわけなのだが……

「はぁー……ひとはちゃんのマッサージ、気持ちいいなぁ……」
「んっ、それは良かったです」

 ベッドの上でうつぶせになっている矢部に馬乗りになる体勢で、ひとはが彼にマッサージを
施していた。指先で、背中の凝りを念入りにほぐしていく。

「悪いね、ひとはちゃん。チクビに会いに来ただけなのに、こんなことさせちゃって」
「いえ、構いません。……かわりにあとで、先生が私をマッサージしてくれれば」
「うん。って、ひとはちゃんも凝ってるの?」
「そんなところです。先生こそ、急に私にマッサージを頼むなんて、どうしたんですか?」

 矢部は言っていいものかどうか迷うように、数秒沈黙した。しかしすぐ、

「昨日はほら、父母会があったじゃない。あんまり大きな声じゃ言えないけど、あれのせいで
かなり肩が凝っちゃって」
「……パパが迷惑かけてすみません」
「あ、その、ひとはちゃんのお父さんはぜんぜん問題なかったんだけど……他の親御さんたち
がいろいろ、さ」

「それもふたばから聞きました。けど、パパも原因ですからね。……それでけっきょく、緒方
さんたちのことはどうするんです?」
「うーん……どうしようもないんだよね。ボクが話そうとしても聞かないし、まぁ、そのうち
諦めて、ストーカーみたいなことはやめるとは思うんだけど……」
「甘いですよ、先生」

 矢部の背中を押す手に力をこめて、ひとはは断言した。

「いったん好きになると、諦めるのは簡単じゃありません。どんな手を使ってでも相手を振り
むかせたい、どんな口実を使っても、その人と一緒にいたいと思うものですから」
「へ、へぇー、そうなんだ……。ひとはちゃんにも、そんな相手が……」
「ちっ、ちがいます!! 私のことじゃなくて、その、吉岡さんがそう言っていただけで……」

 ひとははちょっと赤くなり、激しい口調で言った。手の動きも、ちょっぴり荒くなる。
 しかし彼女に背中を向けている矢部には、その表情の変化は見えない。

「あ、そういうことか。勘違いしてごめん。うーん、ボクも好きな人はいるけど、そこまで執
着はしないから、判らないんだよね……」
「だから童貞なんですよ。それに──栗山っちのことは、もう諦めたほうが」
「うっ……」

 矢部はぐにゃりとベッドの上に伸びた。
 その背中を、ひとはがべしべし手のひらで叩く。

「はい、おしまいです。どうですか?」
「ん、楽になったよ。ありがとう、ひとはちゃん」
「どういたしまして。それじゃ、今度は私がマッサージしてもらう番ですね」

 ひとはは矢部の上からどく。今度は彼女が、矢部がどいたばかりのベッドの上に寝転がり、
マッサージをしてもらう体勢になった。

 ただし──仰向けで。

「ひ、ひとはちゃん? どうしたの? うつぶせにならないと、マッサージできないよ」
「いえ、先生に揉んで欲しいのは、背中じゃありませんから」

 震える声で言うと、矢部に見せつけるように、着ているワンピースの前ボタンを外し始めた。

 矢部はたちまち狼狽えて、

「ちょっ、ちょっとひとはちゃん!? いったい何を……」
「その……マッサージしてもらいたいのは、ここです」

 少女の小さい手のひらが、自らのワンピースの胸元をはぎ取った。
 ブラジャーどころかハーフトップさえもつけていない少女の胸元が、蛍光灯の薄明に照らし
出される。日焼けしないたちなのか、服の下からあらわれた肌は、初春の雪原のごときまばゆ
さだった。
 小学六年生ともなればそろそろ胸が膨らんでくる頃合いだが、彼女の胸にはまったくと言っ
ていいほど凹凸がない。ともすれば少年のそれとも見える胸だったが、胸の左右に冠せられた
小さなピンク色の宝石が、エロティックな香気を発散している。

(女の子の、胸……!!)

 矢部は思わず、生唾を嚥み下した。
 ひとまわり年下の、まだいたいけな少女のものであることが判っていながらも、昂奮せずに
はいられない。とろんとした瞳で自分を見上げているひとはの表情も、いっそう矢部の情欲を
そそった。

「せ、先生。約束です、私の胸を……マッサージ、して下さい」
「だめだよ、ひとはちゃん……」

 最後の理性で、矢部は言った。しかしその表情は明らかに、「教師」のものから「男」のも
のに変わっている。両目は食い入るように、ひとはの胸を見つめていた。

「胸のマッサージなんて、ひ、必要あるの?」
「ありますよ。私だって……その、少しくらいは胸が欲しいんです。マッサージをすると胸が
大きくなるって読んだものですから、先生にも手伝ってもらおうと思って」
「そ、そういうことはふたばちゃんに頼めばいいじゃないか! どうしてボクに……」
「男の人がマッサージした方が効果が高いって、雑誌に書いてありました。なんでも、自分で
するよりも男性からされたときの方が、たくさん女性ホルモンが分泌されるとか」
「一体何の本を読んでるのさ!?」
「普通の女性誌ですけど」

 ひとはは胸元を露出したまま、恨めしそうに矢部を見上げた。

「そんなわけですから、早くマッサージして下さい」
「え、ええと……やっぱりだめだよ、ひとはちゃん。ひとはちゃんは女の子なんだし、ボクは
男なんだから」
「どうしていけないんですか? 単なるマッサージですよ。それとも先生は、小学生の女の子
の胸を触って昂奮してしまうような変態なんですか?」
「そうじゃないけど、その……ほ、ほら、つまり……」
「いいから、早くして下さい」

 歯切れ悪く逃げ口上を述べる矢部に、ひとはは強い口調で言った。上から言われると逆らう
ことができない矢部の気弱を、彼女はこの上なく知っている。
 案の定、

「わ、判ったよ……その、マッサージするだけだからね?」
「ええ、お願いします」

 矢部はベッドの脇に立ったまま、おそるおそるひとはの胸に手を伸ばす。
 しかしその途端、

「待ってください、先生。ちゃんと私の上にまたがって下さい」
「えっ、ええっ!?」
「マッサージするときの基本的な体勢ですよ。さぁ、遠慮なく」
「う、うん」

 ひとはに命じられるがまま、矢部は彼女の太股のあたりにまたがる。それだけで、ひとはの
ほっぺたがほんのりと赤らんだ。

「それじゃ、始めるよ、ひとはちゃん」
「ええ、お願いします」

 矢部は両手をひとはの胸に近づけ、そっと白い肌に手のひらを載せた。指先が少女の体温を
感じると同時、

「んっ……!」

 まるで冷たい氷を押しつけられたように、ひとはは小さな悲鳴を上げた。ほっそりした体が
びくんと震え、みるみるうちに顔が真っ赤になる。

「ひ、ひとはちゃん?」
「んふぅ……だ、大丈夫です、続けてください」

 ひとはは目を閉じて、じっと矢部の愛撫に身を任せる。
 唇を噛みしめるその表情に、矢部は頭の芯が痺れたような気分になった。指先を動かして、
いよいよ本格的に少女の胸の感触を味わいにかかる。
 見た目そのままの肌ざわり。手のひらの中心で、乳首が柔らかく潰れる。想像していたより
もさらに胸は薄く、肋骨の表面にわずかに脂肪の層が存在する程度。手のひらで摘めるほどの
胸もない。ほっぺたのほうがよほどボリューミーだ。
 しかし少女の胸を揉んでいるという事実は、徐々に矢部の脳を蝕んでいく。もともと彼は巨乳フェチで、少女の幼い肢体に性的興奮を覚えるペドフィリアではないのだが、それでも童貞
の悲しさ、「女の子の胸」と言うだけで昂奮してしまうのだ。いつしかむくむくと、彼の小学
四年生は高校三年生くらいまで大きくなり──ズボンの中で膨らんだその先端が、少女の太股
に触れた。

「あ……」
「わっ、ご、ごめんっ!」

 途端にぱちりと目を開けるひとは。矢部はのけぞって、慌てて腰を浮かせた。
 しかしひとはは相変わらず真っ赤な顔のまま、無表情に矢部を見上げて、

「……どうしたんですか? マッサージ、続けてください」
「え、ええと……はい」

 矢部は再びひとはの太腿に腰を下ろし、前屈みの体勢になった。するととうぜん、未だ勃起
止まぬペニスの先端がひとはの太腿の付け根に当たってしまう。まずい、と思う矢部だったが、
ひとはが何も言わない以上、勃起を自己申告するわけにもいかない。せいぜい、気付かれない
ように少し腰を浮かせて、硬直したペニスが少女の太腿を圧迫しないようにするだけだ。

 再び少女の両胸に手を添えて、「マッサージ」を再開する。しばらく揉むうち、彼は手のひ
らの中心に、何やら硬くしこるものがあるのを感じ取った。

(ち、乳首が……勃ってる!!)

 先ほどまで、手のひらの下で柔らかく潰れていたはずの突起が、つんと手のひらの中心をつ
ついてくる。手を動かすと、乳首が掌中で転がるのが判った。
 乳首だけではない。見おろす少女の顔は赤く上気して、瞳はぼんやりと潤んでいる。童貞の
矢部にも判るほど、判りやすい欲情のサインだ。

「んっ、ふぅっ、……はぁ」
「ど、どどどどどう、ひとはちゃん?」
「はぁっ、はっ、はい……もっと、続けてください……」
「はぁっ、う、うん……」

 いつしか矢部の呼吸も、ひとはの吐息に重なるように激しくなってくる。ペニスがこれまで
にないほど硬くいきり立った。さらにひとはは少し膝を立てて、自らの太股を矢部のペニスに
押しつけてきて、

(まっ、まずい……このままやってたら、暴発する……!!)

 まるでオナニーのフィニッシュ近くの時のように、ペニスが痙攣を始めている。それを促す
ようにひとはの太腿がさりげなく股間を擦りあげ、矢部の欲情はいまにも射精しそうなほどに
高められて、

「ご、──ごめんっ!!!!」

 矢部は絶叫もろとも、ベッドの上からバネ仕掛けのように飛び上がってトイレに駆け込んだ。
途中に積んであったカップ麺の山が、床の上に撒き散らされる。

「あ……あーあ」

 担任教師の醜態を見送ったひとはは失望の溜息をつくと、もそもそと胸のボタンを留めなお
した。それでもどこか満足そうな表情で、まるで矢部の手のひらの感触を思い出そうとするか
のように、自分で平坦な胸をもみもみする。

(ちょっと、いじめすぎたかな)
(でも……半分以上は、先生の責任だからね。ちゃんと手伝ってもらわないと)

 彼女が見つめるのは、ベッド脇に山と積まれたDVD。いずれも巨乳のAV女優が、あられ
もないポーズで挑発している。ひとははふんと鼻を鳴らして、

「先生、どうしたんですか? マッサージ、もうおしまいですか?」

 トイレに引きこもってさめざめと泣いている矢部を、説得にかかったのだった。


マッサージ(おまけ)
  * * *

「杉崎さん、その、私、ちょっと大きくなったかも」
「ええっ、……ほ、本当!! いったい何をしたのよ三女!!」
「マッサージしてもらったんだ。雑誌に載ってた方法なんだけど、意外と効くみたい」
「へぇー……好きな相手にしてもらうと効果大って書いてあったけど、三女さんは……」
「……何でいま、先生を見たの?」
「…………、まぁ、隠したいなら聞かないけどさ。それよりもあたしは誰に頼もうかしら。好
きな男子なんていないし」
「……何でいま、みっちゃんを見たの?」
「ん、呼んだ?」
「な、何でもないわよ!! ……あの、みつば。今日うちに来ない? 相談したいことがあるん
だけど」
「ま、まぁ、スイーツがでるんなら行ってやってもいいけど」
「決まりね!!」

(えぇー!?)

          (おしまい)

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最終更新:2011年02月26日 00:56