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「しっかし、何で俺もお前も気付かなかったんだかなぁ……」
「全くだわ……(ぐもぐも)……(んぐ)ふぅ。それにしても、やっぱりおいしいわぁ、これ(あむ)」

ここは最近ちょっとばかし有名なカフェ。何でも聖天ペガサスmix盛りだとかいうスイーツの城が大人気なのだそうだ
実際目の前で見てみると、人間一人の食う甘味の量を遥かに超えている。「あげないわよ」とか悪鬼羅刹の目つきで言ってきた長女には悪いが、全く食う気にならん
それをほっこり顔でむしゃこらむしゃこらやってる長女は正直すごい。いや、異常というべきレベルだろう
店側でも最低4~5人前相当を目安にしているというのに、一人の女子高生がそれを順調に消化していく。ギャラリーまで集まってるじゃないか。自重してくれ

そんなお化け商品だから、当然値段もそれなりに張るのだ。俺のひと月のバイト代は高校生として考えても安い方だと思うが、まさかスイーツ一つで半分も吹っ飛ぶとは思わなかった

「……とほほ」
「(むぐ)何よ!文句あんの!?人を弄んでおいて!」
「……滅相もございません」

先の一件に関しては、責任を取って当然なのは分かっている。自分の最低さ加減も、馬鹿さも、改めて考えると本当にひどいものがある
だがだからといって、懐が痛んで文句が出ないほど、こちとら大人じゃない。さすがに支払いを拒否ったりはしないけれど、嘆息くらいはさせて欲しいってのが本音だ

「……エロ行為には及ばんかっただろ」
「まだ懲りてないわけ?あんたが手を出そうとした他の女の子に同情するわ……(むぐむぐ)」
「む。失礼だな」
「何が失礼なんだか……(あむ)あたしが、(ごくん)他の女の子の分も絶対償わせてやるんだから」
「おいおい……自分の食い意地満たす目的しか無いだろそりゃ。第一償うも何も、俺がやり取りあったのってお前だけだし」
「……え?何……それ……(ごくん)」
「とりあえず食いながら喋んなよ」
「わ、悪かったわね!」

俺の指摘でようやく手を止める長女。城の様相を呈していたスイーツは殆ど壊滅状態だった。こりゃ本丸攻略も時間の問題だな

「……で?私だけってのはどういうことよ?」
「どうもこうも、そのままだよ。お前以外の女の子とはやり取りしてないっつーの」
「……嘘ついてんじゃ無いでしょうね」

実際俺は、適当に目に付いた最初のプロフィールにメッセージを送って、その娘とのやり取り以外はしていない
まぁ何の因果か知らんが、その娘が目の前のスイーツ攻略中の女だったわけだが。世の中って意外に狭いっていうことを、まさかこんな形で実感するとは
例のサイトの履歴も一応見せて、俺の言ったことを証明する。まじまじと画面を見ていた長女は、しばらくすると俺を不服そうに見つめてきた。どうやら納得はしたらしい

「ふん……まぁ本当みたいね。信じてあげる」
「そりゃどうも。まぁ予想以上にこういうサイトがめんどい、ってのもあったけど」
「……けど?」
「意外に楽しかったからなぁ、お前とのやり取り。他の人にメッセージ送る気無くなっちゃったんだよ」
「……」
「あぁ、こりゃ実際会うとなっても大丈夫だな、ってすぐに思ったからな。まさかそれが長女だったとは夢にも思わなかったけどさぁ」
「……」
「あれ?どうした?」

目が点になる、ってのは、多分今の長女みたいのを言うんだろう。不思議なものでも見たように固まっている

片手にフォークを持って、漫画みたいに口元を生クリームで汚して、唖然とこっちを見ている長女
しかし改めて見ると、こいつって割と可愛いんだよな。髪は伸ばしつつ、手入れはしっかり行き届いているみたいだし、小物も可愛らしい感じで統一している
更にフォークと口のクリームが幼さとそこはかとないエロスを演出しているとはな。うーん、ベネ。なかなか良いぞ長女。黙ってりゃ嫁にもらいたいくらいだ

「……何かすっごい変態ちっくで失礼なこと考えてない?」
「んーそいつは言いがかりだぞははは」

おっと、妙なところで鋭いじゃないか。スイーツ食って機嫌は上々だろうが、何かの拍子にまた色々責められるのも面白くないというものだ

「それはそうとだな長女」
「何よ」
「『友達に顔向け出来ない』」
「?!」
「いや、茶化すわけじゃないんだ。ただ、本当に良い台詞だと思ってな」
「……それで?」
「ありがとよ。あれで目が覚めたんだ。カッコよかったぜ、あの時のお前」
「……」

こりゃあ茶化してるように聞こえるよなぁ。まぁそういう風に言ってるんだがな。一応紛れもなく俺の本心なのだが

あの時、泣いてた長女。俺に色々と打ち明けた時の長女。あの日以来、こいつの姿を見ると妙に心がざわついて落ち着かない
そんな相手に、こんな小っ恥ずかしいことを真面目に言えるわけがないだろう

「……はは、なんてな。ははは……」
「……」
「……」
「……」

しかし、茶化し気味に言ったはずなのにやたら恥ずかしいなこれ。何か気まずい。お互いちょっとの間無言になる
沈黙を破ったのは長女だった

「……携帯」
「お?」
「出しなさいよ」
「あ、ああ」
「赤外線受信出来るでしょそれ」
「おう」
「私の番号とアドレス送るから」
「おう……え?」
「あんたのも頂戴」
「あ、いや別にいいんだが……」
「も、元はといえば、お互いのアドレス知らなかったからあんなことになったんじゃないの!」
「……確かに……」

それは事実だ。実際今日ここに来る連絡も、家の電話で受けたのだ。女の子からだよ、とにやにやしていたお袋の様子は正直もう勘弁願いたい

「それに、今回だけで償いきれてるわけないんだから」
「またその話……ってあとどんだけ食べるんだお前!」
「う・る・さ・い!とにかく、早いとこ交換しなさいよね!」

番号を交換し終わると、長女は機嫌良さそうに残りのスイーツ攻略に取りかかった
鼻歌混じりにどんどん食べていく。ほどなく完食したこいつは、こんなことを言い出しやがった

「とりあえず、向こうひと月は少なくとも週1で付き合ってもらおうかしらね」
「週1?!俺の財布はどうなるんだ……?」
「自分で何とかなさい……私との、で、デートみたいなもんなのよ!光栄に思いなさいよね!」
「悪夢かこりゃ」
「……やっぱり失礼な奴!」
「おぉこわいこわい」

そんなやり取りをしつつ、バイトをどうやって増やそうか考え始めた俺は、内心今の状況を悪くないと考えているのであった