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「……あー、もしもし千葉?えっと、今度の金曜……あらバイトなんだ。じゃあ土曜は?」

みっちゃんの声。私は夕飯の為に足りない食材を買い出しに行こうとして、サービス券の存在を思い出して出戻ったところだ

(……電話中……ああ、なるほど)

「……やた♪じゃあ12:00にいつもの……うん、うん……今度は何のスイーツか?失礼ねアンタ、毎回私が食べ物ねだると思ってない?……いやまぁ今回もそうだけど」

音を殆ど立てずにみっちゃんの後方へ。後ろ姿でも嬉しそうな様子はまるわかりだ。お腹が5mm縮んだ時並みに機嫌が良い

「今回はねー、『レッツパーリィ!サラブレッドmix』っていう……え?ヒットー?何それ?……あぁ、もちろんアンタにはあげないから。横でジュースでも飲んでれば?」

はて。みっちゃんの言ったサラブだかアラブだかセレブなんとか。この奇怪な言葉、最近どこかで聞いたような気がする。どこだろう

「……あはは!まぁ、この私のお付きが出来て光栄と思いなさい!……うん、おっけー、それじゃ、土曜ね」


「なんだっけ……?」
「ぎゃあ?!……ひ、ひとは!あ、あんた買い物どうしたのよ?!」
「サービス券忘れたから戻ってきたんだよ」
「そ、そうなの……」

「……またスイーツ?」
「えっ?!べっ、別に良いでしょ!」
「太るよ」
「うっさい!!……自分のお小遣い使って何が悪いのよ」
「へぇ……ふぅん……」
「な、何よ……」
「千葉君に奢ってもらってるくせに」
「?!ちちち、千葉!?何でアイツの名前が出てくるのよ!?」
「『あー、もしもし千葉?』」
「う」
「全部再現してあげてもいいけど?」
「最初から聞いてたのね……いつの間に……」
「仲良いんだね」
「……別に、あんな奴」
「そう?そう言う割にすっごい楽しそうだったけど?」
「ぬぐぐ……た……たまたま、そう!たまたまちょっとした……えーと、事件があって、その関係で奢らせてるだけよ!」

強情でめんどくさい姉だなぁ。そういう態度が自分の首を絞めているというのに
とりあえずいい加減色々白状させようか。私はおもむろにICレコーダーを取り出す

「?何それ」
「ポチッとな」


『……ん……ぁ……はっ……くぅ……ち……ばぁ……ぁぁぅ……っぁ……ふぅん……』


「ちょちょっとちょっとちょっと!??ななななな何よこの音声は!!?」
「昨日の夜の自分の声なのに忘れたの?そこまで夢中だったんだね」
「な……な……!!」

「聞いての通り、みっちゃんが千葉君をオカズにおn」
「ぎゃあああああストーップストーップストぉぉぉぉぉっプ!!!!」
「編集版もあるんだよ。ポチッとな」



『……ち……ばぁ……』
『……ちば……ぁふ……』
『……ぁっぁっ……ちば……きもちぃょ……』



「いやあああああ?!ひ、ひとは!?お願いだから止めて、止めてってば!!」
「しょうがないなぁ。でも千葉君も幸せものだね。こんなに想ってもらえて」
「ど、どうして、こんなことになるのよぉ……」


最近みっちゃんの様子がおかしい。ふたばが私に相談してきた時、ちょうど私も同じことを思っていた
なんだかんだいって大事な姉である。私もふたばも、夜中にごそごそ何かやっていることには気付いていたから、私のレコーダーを使って、何回か音声を隠し録りしたのだった
音声が取れると、大体何が起きているのかはすぐ察することが出来た
家族に聞かれないようにどこかに電話をかけていること、今までとは違うタイミングの外出が増えていたこと、それから帰ると決まって機嫌がとてもいいこと
ふたばがしんちゃんに頼んで、それとなく千葉君の近況を探ってもらって得た情報も総合すると、答えは単純かつ明快だった

「まぁ、私は良いと思うよ。千葉君って、あれでけっこうしっかりしてるみたいだし」
「うぅ……もう何も言えないわよぉ……」

全く、変なところで強がったりせず、今みたいに素直な部分をもっと見せればいいのに。家族に対しても、友達に対しても、好きな人に対しても
みっちゃんは長女で、私やふたばを引っ張る必要があったから、いつからか無駄に自分を大きく見せるようになってしまった
もうそんな必要は無いというのに、なかなかそれから脱却出来ないみっちゃん。家族はみんな、そんな彼女を心配していた
でも、最近のみっちゃんは気付くとすごく楽しそうで、割と素直で、そして可愛くなっていた
恋は人を変えると言う。別にそれを信じ切っているわけじゃないけれど、少なくとも期待くらいしても良いんじゃないかと思いたい

「嘘が下手なのに隠し事が出来るとても思ってたの?」
「……恥ずかしいじゃないの。千葉よ?あのパンツ下ろしとかばっかりやってた、変態の」
「でも好きなんでしょ?」
「……否定出来ないのよね……」
「もっと素直になりなよ」
「……でも……」

「たっだいまー!!ひと!ご飯なぁに?……あれ、どうしたの?」
「おかえり、ふたば。レコーダーのアレ」
「おお、エッチボイス!」
「ちょ?!なななな何!?ふたばも、まさかあれ、聞い、たの?」
「うん」

あれ、言ってなかったっけ。そうか、これはみっちゃん的には相当なショックになるだろうな

「~~~~っ、……死、死にたい……今すぐ、お手軽にぃ……」

おっと、自分に死ねというのは割と本気でへこんでしまった時だ。白い灰になりかけているじゃないか。ふたばも慌てている

「ひと、みっちゃん大丈夫かな」
「……ご飯食べたら立ち直るよ、多分」
「そっか……そうだね!」

みっちゃんには食べ物を与えれば大概何とかなる。丸井家どころか上尾市の常識である

「そうだよ。ところでふたば?」
「何?」
「今日はしんちゃんと何回キスしたのかな」
「んー、3回!」
「……相変わらず仲が良いね」
「うん!私、しんちゃん大好きだもん!」

にっこり幸せそうな笑顔を浮かべるふたば。実姉との違いに溜め息が出そうだ。ここまでの素直さはいらないだろうけれど、みっちゃんは少し見習ってもいいと思う
いや、むしろふたばに恥じらいを持たせる方が先決かな。これではパパが卒倒する日も遠くはないだろうし

……ああ、そうだ。私は買い物に行こうとしていたんだっけ。さすがに時間を使い過ぎてしまった
ふたばにみっちゃんを任せて、玄関を出る。今更だけど、ちょっとだけみっちゃんをいじめ過ぎたかもしれない
好物の生クリームプリンでも買ってあげるとしよう。私はいつもより早い歩調でスーパーに向かった

まさか妹達にこんなに早くばれるなんて。しかも、その……あんな音声まで録音されて……私の姉としての威厳は粉微塵になってしまったんじゃあないか

「おーい」
「うひゃあ?!」
「そんなに驚くなよ」
「かっ、考え事してたのよ」

今日は土曜日。千葉と待ち合わせをして、例のスイーツが食べられるお店に向かっている
が、先日あんなことがあったので、私はひどく落ち着かない気分でいた。千葉にはバレないようにしているけれど

「長女……どうかしたか?」
「べっ、別にどうもしてないわよ……」

と思いきや、あっさり感づかれてしまった。もしかしたら意外に気遣いの男なのかしらね、こいつ

「……!そうか!あれか、女性特有の月のmぐぎゃあ!?」

どうやら気違いの男だったようだ。思いっきり目潰ししてやった。両手で

ようやく目的の喫茶店に着いた。千葉はまだ目を抑えている。ざまあみろ。女の敵はこうなって然るべきだ。いくら好きな相手だろうと、手を抜くつもりは無い

(……好きな相手……かぁ)

千葉を見る。未だにちょっと悶絶している様子がひどく滑稽だったけれど、ちょっとだけ申し訳ないかなぁと思う

「……一緒に食べよっか」
「痛つつ……ん?」
「だから……その、分けてあげるわよ、ってこと」

一緒に食べたいなぁとか、今までも思ったことはあったけれど、『素直になりなよ』というひとはの言葉に後押しされて、ようやく口に出来た

「……お前本当に長女か?」
「あんたねぇ……また指突っ込まれたいのかしら?」
「いやいやそりゃ遠慮するわ……ってか、そのサラブなんとかいうの、今日はもうやって無いっぽいぞ」
「え!?嘘!」

千葉が指さす方を見ると、確かに今日はサラブレッドmixは終了しているようだ。店先にお知らせが出ている

「1日限定5食、か。そりゃあ先に食われちまうわな」
「うー、何よそれ……はぁ。仕方ないわ、普通のメニューから選ぼうっと」
「結局入るのな……」
「当たり前よ!まぁでも、これならあんたも自分の分頼めるじゃない♪」

まぁ予定は狂ったけどよしとしよう。それにしても、自分に素直になるって結構いいかもしれない。自然に笑えている感じがするのだ
私は千葉の腕を引っ張って店の扉を開いた

「お、おう……そうするかな」
「?」

何だこいつ。心なしかぎこちない。……変なの

店内に入る。内装のデザインは明るい感じで、テーブル周りは白を基調としている。よくある喫茶店という印象だ

(俺だけだと絶対入れないなこりゃ)

よくある喫茶店なんて、えてしてカップルばっかに決まっている
現に店内の半分以上が男女の2人組だ。野郎1人でそんな魔窟に入る気になるわけがない。処刑されに行くようなものだ
だが、今は自分達も一応男女で来ている。恋人では無い。でも友達は越えている、そんな微妙な関係だが

出会い系の件の補填という大義名分もかなり薄れてきたというのに、週末近くに連絡が来て、色んなスイーツを食べ歩くことだけは日常化していた

「ちょっと、あんたも早く決めなさいよ」
「お、おぉ悪い悪い」

目の前のこいつも、弁償だのなんだのとかは全く言わなくなった
代わりに最近の家族の様子とか、鴨小の時の昔話とか、至って普通の話題を振ってきて、俺も普通に返す
街中を2人で冷やかしたり、笑いあったり、たまには喧嘩腰になったり。そして『また今度』、とお互い帰っていくのだ

(こりゃあ、そういうもんだと思ってもいいのかね)

頬杖をついて正面に座る長女を見つめる。メニューのあちらこちらに目が行っている。迷っているのだ

なんだかんだで、やっぱりこいつ可愛いよな、と思う。よく分からんが、多分センスも悪くないんだろう
そういや小学生の頃は頑としてスカートにこだわっていたっけ。良い獲物だったっけなぁ、色々と
それから、たまに不意打ちみたいに可愛くなりやがる。さっき腕を引っ張られた時は、正直笑顔に見惚れてしまった

女子高生になって、からだも大分成長したようだ。ふたばほど精密な目測が出来るわけじゃないが、上から80の58の81とみた。ウエストの主張が若干激しいのは仕方ない

今は胸に行く栄養が腹に行っているのかもしれないが、揉めば大きくなるらしいから今後に期待だな

(……あれ、何考えてんだ俺)

まるで俺が長女の胸を揉むこと前提じゃないか。いや揉めるなら喜んで揉みにいこう。おっぱいは男子のふるさとなのです
そういえば、今までの人生で一番揉み心地が良かったのはこいつの腹だったし、もしかしたら胸もなかなかイイ感触なんじゃなかろうか

――
『……っ、痛いわよ!もっと優しく……んぁ!……ち、乳首ばっか弄んないで……ふぁぅ……』

そこまで大きいわけでは無いが、若いから肌の弾力は十分だ。掴むと確かな反発を感じられる
最初は強気だった長女も、先端をしつこく責められてしおらしくなっている。このギャップがまたそそるのだ

――

「……ありだな!」
「?……ってかいい加減決めなさいって」
「あー……んじゃお前と同じのでいいや」
「えー……味見とかしたいし、違うもの頼まないと損じゃない!」
「どんだけ食欲魔人なんだお前」

危ない危ない、堂々と目の前にいるこいつを使ったエロい想像なんて、もしバレたらどんな報復が来るかも分からん
長女は今スイーツに夢中だから、そんな心配はいらんだろうけど。ついでにいつも通りの食い意地を見せつけられ、こっちの毒気も抜かれてしまった
まぁこれで良いんだろう。こっちだって、背徳感がかけらも無かったわけじゃあないし

(……楽しんでるよな俺。多分……こいつも)

相手を理解しているからこその暴言。たまに実感する、お互いの成長。ちょっと懐かしいようで、どこかが違うやりとり

やっぱりこれは、俗に言うレンアイ関係ないしその一歩手前なんじゃないだろうか

俺自身、どこかでそういう認識はしている
そうじゃなければ、とっくの昔にこいつの毎週の誘いを突っぱねているところだ
自惚れじゃなければ、長女だって、純粋に俺と色々出掛けるのを楽しんでいるように見える。少なくとも、まんざらじゃない、くらいには思っているだろう

しかし小学生の頃から知っている、という関係性がこれまた厄介で、最後の一線を越えることが出来ていないのであった
お互い、数少ない気兼ねない異性だったはずだ。しかし出会い系の一件から、明らかにその関係は変化してしまった

漫画なんかで『友達でいたいから』とかいう台詞を見ると、決まって嘘つけこのビ○チが!とツッコミを入れていた自分が、まさかその台詞を理解する日が来るとは

「……ん?そうすると俺って糞○ッチ?男なのにビッ○……いや女体化か?……キモッ!?」
「何ブツブツ不気味なこと言ってんのよ……もう、あんたのもあたしが頼むわ。店員さーん!」

どうやら色々真剣に考えこんだりするのは体に合わないらしい。何だか無性に疲れた。もう考えるのはやめよう
長女との付き合いは、その内けじめを着けないといけなくなるだろうけれど

(楽しいもんは楽しい、ってことにしとくか)

そっちの方が断然わかりやすい。今はただ、昔より女らしくなったこいつとの時間をエンジョイしてやろうじゃないか

「……はぁい!今伺いますぅ!」

長女の声で店員さんがやってくる。おぉ、これはエロい。ぶるんぶるん揺れておるわ
ほほう、86の59の87だと?長女には悪いが、見知らぬ店員さんの方が女性としては上だな。安心しろ長女、いつか俺が育ててやるから

「……え?」

「お待たせしましたぁ、ご注文を……え?」

「……え?」


「あ」
「?どうしたの、ひと」
「思い出した」
「何が?」
「サラブレッドmix……あぁ、みっちゃんも可哀そうに……」
「?」


『私、バイト始めたんだぁ!』
『へぇ、親御さんには?』
『怒られちゃうから内緒だよ』
『まぁ、だろうねぇ』
『でね!とっても素敵なお店なんだよ!』
『小物とかのお店?』
『ううん、喫茶店。看板メニューはちょっとあれなんだけど……』
『看板メニュー?』
『レッツパーリィ!サラブレッドmixっていう、眼帯付けたお馬さんみたいな大きいスイーツが……』
『れぇっつぱぁーりぃ!』
『三女さん?!』
『気にしないで。でもそれはセンス最悪だね』
『あーん、そんなこと言わないで?他のスイーツは可愛いくて美味しいんだから!』
『……疑わしい』
『と、とにかく出来れば遊びに来てね!土曜日は毎週入ってるから!』


「えええええええええみつばちゃん!?、それに千葉君!?」
「よ、吉岡?!」
「……なんてこった」

吉岡ゆき。今でも私とつながりがあるクラスメイトの1人。ひとはと同じ女子高で、色々とひとはがお世話になっている
今年はクラスも一緒らしい。ひとはは人見知りだし、丸井家としては結構頼りにしている大事な友人である


だが、今は出てきて欲しくない人物のぶっちぎりトップであった


「ふふ2人で喫茶店!?当然同じテーブル?!偶然じゃないのね!?これは必然?約束?運命!?ああっ、素敵っ!
運命的に道端で再会した2人が惹かれあって、あんなことやそんなことをして、そして仲良く喫茶店!?きゃーーー!?
やらしい、やらしいよう2人ともっ!17歳だからって、エッチなのはいけないと思うの!でもでもっ!一度体を重ねた2人はそれに抗えなくて……
ああ!不埒っ、なんて不埒なの!?でも私は、2人の共通の友達として、2人を最後まで応援するよっ!!
みつばちゃん!頑張ってね!?千葉君!みつばちゃんをしっかり守るんだよっ!?あぁでも2人には……」


(ああ……めんどくさいなぁ……)

なんだか勝手に設定を付け足しているし、前よりもひどい状態じゃないかこれは

『女子高で色々知ってしまったんだよ……知らなくてもいいようなことをね……』

あぁ、妹よ。あんたも苦労しているんだろうね……

結局、私達がまゆ毛の呪縛から解き放たれる頃には、とっくに日が暮れていた