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松岡咲子は環境委員に所属している。
正直なところ、彼女は環境委員の仕事そのものには興味がない。
だが、霊が居そうな場所…トイレなどを(備品チェックのために)
あちこち見回れるのでこの委員に入っているのである。
つまり彼女にとって、委員会の集まりなどは退屈なものでしかなく。

「南無南無…」
先生が何やら説明している間、松岡はずっと教室の隅で呪文を唱えていた。
既に他の環境委員たちは松岡がキ印であることを察しているので、
あえて声をかけたり注意したりすることはない。
…松岡に惚れている久保田を除いて。

「ま、松岡さん。お経上げてないで先生の話を聞こうよ」
「黙って! 今、この教室の浮遊霊と交霊してるんだから!」
「こ、ここは被服室だよ。なんで被服室に霊がいるの?」
「…私は修行中だから、そこまで詳しい話は聞けないのよ」
「ごまかさないでよ!」

委員会が終わって。
久保田は先生の手伝いをしていたために最後まで教室に残っていた。
帰る前にふと松岡が座っていた席を見ると、一冊の本が置いてある。
「月刊ムフー? 松岡さんの本かな?」
手にした それ をぺらぺらとめくり、久保田は大体の内容を察した。
「やっぱり松岡さんはこういう趣味があるのか…」
趣味どころか、心霊関係にはかなり入れ込んでいて、
降霊の真似ごとまでできるとか誰かが言っていたのを久保田は思い出していた。
「…と言うことは…上手くすれば……」
久保田は何事か企みながら松岡のムフーを手に取ると、教室をあとにした。

 ・

翌日。
久保田は学校の校門前で松岡を待ち構えていた。
数珠を首にかけた松岡の姿は遠目でもはっきり分かる。
たまに友人らしき少女と一緒にいることもあるが、今日は幸い独りのようだ。

「松岡さん、おはよう」
「…おはよう…って、誰だっけ?」
「環境委員で一緒の久保田だよ!」
「あぁ、ごめんなさい。生身の人間に興味ないから、つい…」
「と、友達になったのに酷いよ…ま、まぁそれはそうと、これ昨日忘れていったでしょ?」
久保田が後ろ手に持っていたムフーを差し出すと、松岡は目を輝かせてそれをひったくった。

「やっぱりあの教室に忘れてたんだ! 良かった、まだ買ったばかりだったのよ」
「そのムフーって本、悪いと思ったんだけどちょっと読ませてもらっちゃった。
 この巻頭特集の幽霊の話は特に面白かったなぁ」
「……よ、読んだの? 面白かったんだ」
「もう釘付けだったね、大興奮!」
「そんなに面白かった? 私、そっち関係はかなり好きだから嬉しいな。
 こういう本でもっと勉強して、将来は霊媒師になるつもりよ!」
「へぇ、今から将来のこと決めてるんだ、偉いなぁ」
「そ、それほどでも…」
頬を赤く染めて照れる松岡。
久保田はそんな彼女の様子を見ながら、さりげなくその言葉を口にする。

「僕も心霊とかに興味あるんだよね。本物の心霊写真とか降霊とか見られたらいいなぁ、と」
「え…あ、その、写真もあるけど…降霊も動物霊くらいならできるかも…」
「えぇ、本当? 見せて見せて!」
「あ、でも…こういうのって簡単に見せびらかしたりするものじゃないし…」
「で、でも人前でやった方が修行になると思うよ」
「うーん…」
なんだかんだ言いつつ、松岡が照れているだけなのは手に取るように分かった。
思ったとおり、同じ趣味の話をできる友人がいないのかもしれない。
ここで久保田はもうひと押しする。

「そうそう。僕ね、霊が居そうな廃屋を知ってるんだ」
「えぇっ、本当!?」
この時、松岡は気付かなかった。
久保田がニヤリと笑みを浮かべていたことに…

 ・

二人は学校が終わった後、とある小さな廃屋の前に立っていた。
周囲にはうっそうと木々が繁り、街の喧騒もここまでは聞こえてこない。

「へぇ、こんな場所があったんだ…久保田くんだっけ、なかなかやるじゃない!」
「う、うん…どうも」
「じゃ、さっそく中に入りましょ」
「そうだね」
「こういう場所に居る地縛霊はとっても危険だから、気を強く持ってね。
 私はまだ半人前だし、あなたに何かあっても助けられないかもしれないわ」
いつのまにか地縛霊がいることにされているが、もちろん霊の目撃情報などは存在しない。
数年前まで誰かが住んでいたらしいが、その住人も普通に引っ越していたために
誰もいなくなって荒れていっただけの家だ。

廃屋に侵入してから30分ほどして。
全ての部屋を一通り見終わった二人は、リビングと思われる場所でひと休みしていた。
「うーん、確かに何か気配のする家ね…。和室の押し入れとか、
 ビンビン感じるわ…旦那に殺された妻の死体が隠されていたり…」
「死体!?」
「…しても不思議じゃないくらいの強い念が…それに怪しい物音もするし…」
「…それはネズミが走り回る音だと思うけど」
リビングの椅子に腰かけ、ここに来る途中で買った缶ジュースを飲みながらしばし雑談する二人。
松岡は新発見の心霊スポットに興奮して気づいていなかったが、
雑談の間、久保田は終始ニヤニヤしっぱなしであった。

(これってデートと言ってもよいのでは…)
普通に考えてよくないと思うが、久保田の中では既にそういうことになっていた。
だが、久保田の目的はこれで終わりではない。
そう、心霊好きを装ってデートをするだけではなく、霊に憑依されたふりをして
その先までいってしまおうというのが、久保田が思いつめた末に打ち出した結論なのである。

「じゃ、じゃあ松岡さん…そろそろ降霊してみてくれない?」
「そうね…わかったわ。でもその前に注意しておくけど、ここには私とあなたしかいないわ。
 慣れているから大丈夫だと思うけど、万が一凶悪な霊に憑依されてあなたを襲わないとも限らない…
 もしそうなった場合はすぐに逃げて、この地図のこの家の場所に行って、三女さんを呼んできて」
「さ、三女さん?」
「尋常でないオーラを纏った美少女霊媒師よ。私の師匠なの」
「あ、そ、そう…」
なんだか分からないが、とにかく久保田は地図を受け取って適当にうなずいておいた。
どうせ本物の霊なんて憑依するはずないんだし、気にすることも無いだろう、と。
「じゃあ、始めるわね」

 ・

「南無南無……」
松岡がもにょもにょと呪文を唱え始める。
よほど集中しているのか、額にうっすらと汗を浮かべて精神を集中しているのが見て取れる。

(な、なんだか邪魔するのは気が引けるほど集中してるなぁ…
 でも、目の前には無防備な松岡さんがいるわけで…これはチャンスだ)
久保田はそっと松岡に近づくと、両肩に手をかけて叫んだ。

「うわぁ、手、手が勝手に…! 助けて松岡さん!」
「もにょもにょ…なに? 集中してるんだけど…」
「なんだか分からないけど身体が勝手に動くんだ! 誰かに無理やり動かされてるみたいに!」
そう言いながら松岡の背中を撫でまわし、頬に手を這わす久保田。
(あぁ、松岡さんのほっぺ…背中…あったかいなぁ)
初めは遠慮がちに撫でていた久保田だったが、松岡が抵抗しないのを見ると、
次第に大胆に、腰や太ももにも指を這わせ始める。
松岡はわずかに身をよじったりするものの、嫌がったりすることはなかった。
まるで何かを確認するかのように、久保田にされるままになっている。
「ま、松岡さん…?」
あまり反応しない松岡の様子に不安を感じたのか、久保田が小さく声をかける。
すると松岡は、身体を触られたままゆっくりと話し始めた。
「久保田くん…この世に未練を残して死んだ霊は成仏できないっていうでしょ?」
「う、うん…それはよく聞くね」
「つまりあなたに憑依してる霊はね…童貞のまま死んだ霊よ。
 異性と接することなく死んだ、とても可哀想な霊…
 だからあなたの身体を乗っ取って、私を襲おうとしている…」
「ど、どうすればいいの?」
「お経か何かで強制成仏させれば手っ取り早いんだけど…
 私にはそこまでの力はないし…やっぱりここは…うふふふふ」
松岡の目が怪しく輝く。
「…あ、あの?」
久保田は操られているふりをするのも忘れ、松岡の異様な雰囲気に押されていた。
「うふふ…私、初めては霊と…って決めてたのよね…」
あはぁあはぁと息を荒げつつ、危ない目で久保田を、
いや、久保田の中にいると思いこんでいる霊を見つめる松岡。

「え…?」
「私が身体を張って、その霊を成仏させるわ。あなたは私の言うとおりにして」
「そ、それってもしかして…」
本番までいっちゃうの?
という言葉を何とか飲み込む久保田。
身体を張ってということは、言うまでもなくそういうことなのだろう。

「さぁ、この世に未練を残して亡くなった幽霊さん…私の身体を好きにしていいのよ…」
「や、やっぱりまずくない?」
と、一応言ってみる久保田。
自分で計画を立てておいて、予想よりも上手くいきそうになると逃げ越しになる辺りが情けない。
「うふふ、大丈夫。私に任せて…ね?」
(ま、まずい…これは理性が崩壊しそう……ええいもうなるようになれ!)
――ガバッ

久保田は松岡に抱きつくと、むしゃぶりつくようにその唇に吸いついた。
「はふっ…んっ、ゆ、幽霊さ…ん……んんっ…」
「ま、松岡さん…ごめんね、僕が幽霊に憑依されたりしなければ…」
「んちゅっ…んふっ、ぁっ……ぷぁっ。いいのよ、久保田くん…霊とできるなんて凄い経験だわ」
松岡の荒い息遣いを感じながら唇を味わっているうちに、
久保田は自身の股間がはち切れんばかりにいきり立つのを感じていた。
「…うふふふ、幽霊さんも興奮してきたみたいね。私も…こんなになっちゃったわ」
松岡が立ちあがってスカートをめくると、パンツは既にぐっしょりと濡れていた。

 ・

「幽霊さん…私もう、我慢できない……」
あはぁあはぁと、再び異常に興奮し始める松岡。
「あなたのこの世への未練、解放してあげるから…」
松岡は久保田を押し倒すと、その上に馬乗りになる。
「私の初めて、貰ってください…」

 ・

「あんっ、はぁっ…はぁっ、んんっ…んぁっ……」
松岡は久保田の上に馬乗りになる形で身体を上下させていた。
久保田は右手で、年齢の割に大きな松岡の胸を揉みしだき、左手で松岡の腰をしっかりとつかむ。
「ふぁっ…あっ、んんっ……ぁ、あふっ…」

「ま、松岡さん…松岡さん…!」
「ゆ、幽霊さぁん…あぁっ!」

互いの身体を求めあう二人。
とは言え、松岡が求めているのは久保田に憑依している(と思っている)幽霊であり、
久保田自身の身体ではないのが、久保田にとっては悲しいところだ。
だが、久保田にとってはそれはどうでもいいことだったのかもしれない。
あこがれの女の子である松岡咲子とこうして一つになれているわけで。
それ以上何を望むことがあろうか。

「あはぁ、はぁん…幽霊さん、凄いぃ……」
「はぁ、はぁっ、ま、松岡さぁん…」

今、松岡咲子は自分の身体の上でその肢体を上下させ、
息を荒げ、喘ぎ声を上げ、その表情は恍惚に満ち、目はとろんとして
口の端からは涎を垂らしているのだ。
それだけで十分であった。

「い、いいよ…すごく気持ちいい…」
「ゆ、幽霊さん…成仏できそう?」
「あぁ、もうすぐ、もうすぐ成仏できるよ…」

「くっ……うぅっ」
「あぁぁっ!」

 ・

「はぁ、はぁ…これで成仏させられたはず…。
 どう、久保田くん、身体の自由は効くようになった?」
「え、えぇ…それはもう」
「そう、よかった」
「僕もよかった…」
「え?」
「いや、あのぅ、さっきの幽霊だけど…」
「あぁ、あの童貞霊は女の人とセックスできなかったのが未練になって
 成仏できずにいた霊だから、もう成仏したはずよ」
(……。…そういうことにしておこう)
松岡さんはさっさと衣服を整え、僕とのセックスの余韻に浸る様子すらないけれど、
僕たちがひとつになったのは間違いないわけだし、それでいい。
久保田はそう思った。

 ・

翌日。
「久保田くん!」
「あ、松岡さん…な、名前覚えてくれたんだ」
「そんなことはどうでもいいから、またあの廃屋に行くわよ!」
「え、え?」
「私、あの後思ったのよ。あの霊を成仏させないで、ずっと久保田くんに憑依させておけば…
 そうすれば、私はあの霊と恋人になれたんじゃないかって…」
「…はぁ?」
「だから、もう一度あの霊を降霊するの! もしかしたらまだ成仏してないかもしれないわ!
 久保田くんは身体を乗っ取られたままになるかもしれないけど……協力してくれるわね?」
目が完全にイっている…
昨日は松岡さんと触れ合いたい一心で気づかなかったが、この人本当は危ない人なのでは…?
今さらながらそう思う久保田。

「あのぉ…今日はちょっと都合が…」
か細い声でそう言ってみるが、松岡の耳には届かなかった。
「さぁ、行くわよ!」
「いや、その、多分もう霊は成仏してると…」
「それなら他の霊でもいいわ!」
「えぇ~~~~っ!?」
今さら昨日の霊の話は全て嘘でしたと言うわけにもいかず、
久保田は松岡にずるずると引きずられていくのであった。

おしまい。