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俺は変態じゃねえ!!


「オッス、千葉!…あれ、田渕もか?
来てくれる予定だったっけ?」
「遅いぜ佐藤。
いや、さっき偶然会ってな」
「おーう、久しぶりだなイケメン。近所なのに会わねえもんだな」

2学期中間テストの終わった土曜。
部活も予定もなくてどうしようかって思ってた矢先、千葉からメールが届いた。
[久しぶりにメシでも食いに行かね?]という短い文章だったが、
別々の高校になって会う回数が減っても、昔と同じように気楽に連絡をとってくれたのは正直嬉しかった。

「ああ、そうだな。
田渕と最後に会ったのは中学の卒業式だから…半年ちょいくらいか?
なんせ俺んとこは電車で一時間半だからなぁ…。通勤ラッシュに慣れちまった自分が悲しいよ」

俺とふたばはこの町から離れた、文武両道で売ってる私立大付属に通っている。
眠い目をこすり、ぐずるふたばを連れて通う毎日に、最初はちょっと文句を言ったもんだが……。
…いや、今はよそう。

「ひえー!一時間半かよ!
んじゃ、何時に起きてんだ?」
「6時」
「げぇー……そりゃお気の毒だな」
「おい、その辺は歩きながら話そうぜ。
12時前になると駅前はどの店も混んで来るんだし、ちょっと早めに入ろうぜ」
「了解」
千葉に促され、駅前に向かって歩き出す。

「2時から三次や行田なんかも合流できるって言ってたし、久しぶりにミニサッカーでもしねぇか?」
「いいね。久しぶりに鴨小エースストライカー様の実力を拝ませてもらうとするか!
聞いたぜ?1年で準レギュラー入りなんだろ!あそこ、結構強豪なのに!」
「大したことねーよ。俺は練習試合しか出させてもらったことねぇし。
同級でレギュラー入りってヤツもいるんだから」
「やれやれ…イケメン様の満足ラインは高ぇーんですね」
「そんなんじゃねえよ」

…そう。そんなんじゃないんだよ。

「………」
「あんだよ佐藤。暗くなってんぞー?」
「ああ、うん…。
なあ、昨日の毎朝テレビ見たか?新人アスリート特集のヤツ」
「んあー?
あー…ふたばの出てたやつだろ。スゲーよな、1年生にしてインハイ女子800記録大幅更新の超新星!
これまでは鴨テレとか地方局ばっかだったけど、ついに全国放送にも本格的に顔出しだからなー!」
「ああ、それだよ。
………。
なあ…俺、最近思うんだ。俺なんかじゃふたばの隣に居る資格が無いんじゃないかって。
俺なんかがどれだけ頑張っても、『特別』なあいつについて行けないんじゃないか、って」
「そういや駅前に新しいラーメン屋ができてたぜ」
「へー。
んじゃ、今日はそこ行ってみっか」
「おい!聞けよ!」
「ダイジョウブダッテオマエトフタバノナカジャネェカ」
「ソウダゼキニスンナヨ」
「あからさまに面倒くさそうに、しかもものすごい棒読みで返すなよ!
ったく……。
とにかくあいつ、中2のときに陸上はじめてから、一気に有名になりだしただろ?
なんだか違う世界の住人になっちまったみたいでさ…。
最初は、中学に馴染めないあいつが居場所を見つけられた、って素直に喜べたんだ…。
でもこうやって、次々に上のステージに駆け上がるのを見てると、置いて行かれる気がしてさ……」
「この夏休み、ロードバイクのホイールを自分で組んだんだぜ!
パーツもカラーも凝ったし、やっぱ愛着が違うぜー」
「へー、すげーじゃん。今度見せろよ!」
「おい!」
「ダイジョウブダッテオマエトフタバノナカジャネェカ」
「ソウダゼキニスンナヨ」
「それさっきもやっただろ!」

こ…こいつら~!

「…まあいい。
本当はさ、昔からこうなるんじゃないかって思ってたんだ…。
やっぱあいつ、か…可愛いし、最近一気に大人っぽくなってきたし。それに何よりアスリートとしての才能の格が違うし…。
昨日のテレビで言ってたとおりだよ…。
『陸上界のアイドル』、『超高校生級』……。
……いや、わかってるんだ。俺みたいな凡人が独占欲を見せていいやつじゃないってのは…。
でもさ……」
「ところで古文の問3の答えって、なんにした?」
「一応『イ』を入れといたけど、はっきり言って適当だぜ?」
「だー!かー!らー!!
ていうかお前ら高校違うだろ!なんでさも同じテスト受けたみたいに会話してんだよ!!」
「ソウダゼキニスンナヨ」
「ダイジョウブダッテオマエトフタバノナカジャネェカ」
「セリフを交換しただけじゃねぇか!?既に会話になってねぇだろ!!
俺は本気で悩みを打ち明けてるんだよ!真面目に聞けよ!!」ゼェゼェ
「あ~?
いや、だって正直めんどいしよー。なあ…?」
おい!そこまで言うか、千葉!?
「ああ。俺も聞いてたまんまだったしなぁ。
それに話ならそろそろ…」

トテチテトテチテ

「しんちゃーーん!」

「ほれ来た」
「ん?
あ…ふたば!?」

キキー!

ふたばの靴が漫画みたいな音を上げる。
…そう、『靴』。
陸上連がふたばのためにメーカーと協力して作った、『足を縛り付けない限りなく裸足に近い感覚のスポーツシューズ』だ。
さすが最新スポーツ科学。
靴を履くと実力を発揮できなかったあのふたばが、ほとんど裸足と遜色ないほど…いや、いまのスピードは裸足以上じゃないか?
こいつ自身も気に入ってるようで、私生活でも使用して、1足数万もするそれを遠慮なくガンガン履きつぶしてるが、
その度に陸上連が支給してくれてる。
……こいつが国体強化選手の中でも特に注力されてる証拠だ。
実力だけじゃなく、『華』のあるふたばを押し出して陸上を盛り上げようって考えだろう。

そしてそれは、実を結びつつある。

「やっぱりしんちゃんだ!こっちから声がしたと思ったんス!」
いつものふたば。今日も赤い長袖のジャージで首元から足首まですっぽり覆ってる。

…こいつ、中学のとき鴨テレ出た頃からずっと…夏でも長袖ジャージなんだよな。
前に理由を聞いたときは『恥ずかしいから秘密っス』ってごまかされたが…人並みに羞恥心を覚えてくれたのか?
でも俺への接し方を思い返すと、あんまり変わってないような気もするし……う~ん…?
……ま、どっちにしても『着飾る』ってことからは遠いよな。

けど。

「おお~、千葉氏たちも!お久しぶりっス!!」ニコッ
そんな格好なんて関係なく輝き、人目を惹き付けるルックス、スタイル、そして何より…笑顔。

……『陸上界のアイドル』か…。
確かに、そこいらのグラビアアイドルなんて目じゃないな…。
…比べて俺は……。
「あ…ああ、うん…。久しぶりだな……」
「もー!何言ってるんスか、しんちゃん!
しんちゃんとは昨日も一緒に学校行ったよ!」
「…うん、そう…そうだったな…」昨夜のテレビを見た後じゃ、お前が遠くて、さ…。
「??
どうしたの、しんちゃん?元気ないっスよ?」
「いや…んなことねーよ……」
……俺のバカ野郎。ふたばに心配かけてどうすんだよ。
ほら、うつむいた俺を心配そうに覗き込んでる。こんな顔させんじゃねぇよ。
ふたばもそんなにピョコピョコ俺の周囲をまわって確認しなくていいよ。大丈夫だって。

ピョコピョコ

…ふふっ。
動きに合わせてちょんまげがピョコピョコ揺れてんぞ。
って、あれ?
「今日は久しぶりにその髪形なんだな」
高校では…休みの日でもずっと左だけ結った髪形にしてたから、もうちょんまげはやめちゃったのかと思ってたのに。

「やっぱお前はそれが1番か……その…1番似合ってるな」

……『それが1番可愛い』なんて、口が裂けても言えるかよ…。

「…………」
…?ふたばの動きが止まった…。


「エヘヘェ~」
笑顔。
そのまぶしさに目がくらむ。


「な…なんだよ?」
「しんちゃん大好き!」
んなっ!
「なななな何だ急に!?」
「だってテレビの人は、ちょんまげはあんまり可愛くないって言うんだもん。
だからガチピンクみたいにしてたんスけど……」
なんだよ、テレビのヤツに言われたから変えちまったのかよ……。
ちぇっ、あんなにこだわってたくせにさ。
ま、確かに今の髪形にしてから取材が増えたような……あれ、じゃあテレビに出たくてちょんまげをやめたのか?
でもこいつがんな事で……?

「けど今日はお休みだし、最近収録とかテストとかあって疲れちゃったから、久しぶりに戻したんス。
それでね…エヘヘ……。
しんちゃんがそれを褒めてくれたのが、すっごく嬉しくて!!」
「べっ…別に俺は思ったことを言っただけで…その……。
あっ、その髪留め…?」
「うん!!6年生の時の誕生日に、しんちゃんがくれたのだよ!
1番大事な髪留めだから、1番大事なトコロに使ってるんス!」
「ばっ…バカ野郎!」一番大事なトコロって…。


ふと、ふたばと目が合う。

それだけでお互いの気持ちが通じ合った気がする。
…そうだよな。俺達にはこれまで積み重ねてきたものがあるもんな。
わかるよ。お前がどれだけ俺との想い出を大事にしてくれてるか。


「なあ、ふた「ところでふたばー、テレビ局のおっぱい情勢はどうだったー?」
「おお!千葉氏!よくぞ聞いてくれたっス!
おっぱい天国は本当にあったっスよ!!」
「っておい!」
なんだよ千葉、そのぶった切りは!?そんな『ところで』初めて聞いたぞ!
いくらなんでも無茶苦茶だろ!!

「小生、これまでおっぱいは大きければ大きいほど価値があると思ってたっス!
けど、テレビ局でいろんなおっぱいを見て悟ったっス!

例えBでも美乳の方が奥が深いと!!!!」

「だー!ふたばも乗るな!
ていうかそんなに大きくて綺麗なおっぱいがいいなら、自分のを見てろ!!」



…………はっ!?しまった!!

「「…………」」
ああああ!千葉と田淵の目が白い!

「ふぅ…。やれやれっス…」
「な…何だよ…?」
「しんちゃんはなんにもわかって無いっスねー…。
正直、がっかりっスよ…」
そこまで言うかよ……いや、こいつももう高校生なんだ。
男の俺にはわからない、スタイルについての何かがあって、気にしてることとか言っちまったのかも……。

…だがしかし、ふたばを見れば誰だって同じことを思うだろう。
ふたばはスタイルだって超高校生級だ。
身長は168センチと女子にしては高いし(俺と2センチしか違わないんだよな…くそっ、やっぱあと5センチは欲しい)、
陸上で鍛えられた長い手脚は健康的に引き締まっていて、見ているだけで心地よさすら感じる。
そしてなにより…胸。
そりゃガキの頃もそうなのかなって思ってたけど……今ははっきり言える。

でかい。

しかもまだまだ大きくなってるみたいで、
こないだも『また大きくなっちゃったっス~。ついにDっスよ~』とか言ってた(ていうか、なぜいちいち俺に報告する…)。
加えてこいつの場合は身体が締まってるから、凶悪なくらいのインパクトがある。
さらに大きさだけじゃなく、形だって文句の付けどころがない。
……前に不可抗力で目にした生のソレは、ツンと上を向いていて、一切の型崩れが無く、
美術の教科書に出てくる彫像みたいに綺麗だったな…って、俺のバカ!
勘の鋭いこいつの前でこんなこと考えてちゃまず…じゃなくて、え~っと…まずは謝っておかなきゃ!

「あ~…いや、スマン。
なんか俺がわかってなくて、お前に悪いこと言ったんなら謝るよ」
「そうっス!全然わかってないっス!
いいっスか、しんちゃん?
おっぱいは見て良し、揉んで良しの総合芸術っスよ。
おはようからおやすみまでずっと一緒にいたい心のよりどころっス。
小さくても…ううん、大きさなんて関係ない。全てのおっぱいが、ただそこにあるだけで癒しを与えてくれる宝物なんス!!」
「じゃあやっぱり、お…お前のでもいいじゃねーか……」
「ダメッス!!
自分にくっ付いてるのは重いし、走っってても屋根から飛び降りても跳ねて痛いしで邪魔なだけっス!」
「知らねーよ!そんな超お前理論は!!
一瞬でも真面目に悩んだ自分が悲しいよ!
ていうかいい加減屋根に上ったり飛び降りたりはやめろ!」
「重要事項なんス!
ブラもすぐ合わなくなって、ひとに家計を圧迫するなって怒られるし!」

……そりゃおそらく、家計の問題だけじゃないと思う。
三女のヤツ、矢部っちのせいで昔以上に巨乳を敵視してるからなぁ……。
とんだとばっちりだよ。
あのヘタレ教師、いい加減に決着を付けろよな。優柔不断の意気地無しってのは本当に情けないぜ。

「ともかく、ホントに重くて邪魔なんス!
あげられるなら今すぐ全部しんちゃんにあげたいくらいっス!!」

ぐふっ!

「んなっ!?
ばっ…バカ野郎!おまっ…何言ってんだ!!
てか、お前バカ力なんだからそんなの軽いもんだろうが!」
「え~っ!
だってこんなに重いんだよ~?」

グイッ

言うや否や、ふたばが俺の両手をとって自分の胸の下に差し入れる。
そのまま手を上方向に持っていったと思ったら、今度は俺の手を残して離した。
つまり、俺はふたばのおっぱいをモロに『持ち上げた』かたちになるわけで……。

ちょっっっ!!!??

ぽよん

うわわわわ!なんだこれ!?
ジャージの上からでもはっきりわかる、信じられないくらいの柔らかさ。
俺の指に合わせて自在にその姿を変え、なのにそれでいて指の間からこぼれ落ちるなんてことは無く、しっかりとハリを自己主張してる。
だけど何よりも感動的なのは、この暖かな存在感だ。
ふたばは『重い』なんて言ったが、そりゃ違うよ。なんて言うかな…?
そう、『安心する質量』って表現すべきか。
男がどこまでも求めて止まない、原初に回帰させてくれる懐かしい触り心地。
いつまで触れていても飽きるなんてことのない、いつまででも触れていたくなる、深い母性が俺の手の中に満ちている。

…でもだめだ、足りない。もっと感じたい。
もう少し、指で掴んでみたらどうなるんだろう?

ぐに

あぁ…思ったとおり、どこまででも俺を受け入れてくれる優しさが、確かにここにいてくれてるっていう安心感が、
指を通して俺に伝わってくる。

……でもだめだ、まだ足りない。もっと味わいたい。
もっと、手で押してみたらどうなるんだろう?

むにゅう

わわわっ…!
大きくひしゃげて、その分手のひらに、指の間にと、みっしりと柔らかさを感じさせてくれる。
そして同時に、隙間無く暖かさが―――

「…んぅう……し…しんちゃぁん…。はぁ…しんちゃぁん!!」

―――っ!!!?

お…俺は何をして……?

――俺の手は、おっぱいにこれ以上無いくらいめり込んで。
――俺の目の前には、潤んだ瞳と、見たことの無いくらい扇情的な貌があって。

―――ふたばの瞳から零れ落ちたひとしずくの涙は、流れ星みたいに綺麗で――
 
「どっっっわぁぁーぁぁああぁ!!?
おおおまっ、な…なにっ!何すん…何させんだよ!!!」
あわてて飛びのく!
うあ…手にまだ感触が…。

「そ…そんなコト言ったってぇ……。しんちゃん、何度も呼んだのに、返事もせずに小生のおっぱいを…」
んなーーーーーーー!!!
俺、そんなに夢中になって揉んでたの!?

「あ…あああ、いや、ご…ゴメン!えっと…その、俺の意思じゃないわけでなく俺がやってたんだけど、そのっ!!」
「うー…」
「……っ」
ぐわあ!気まずい!
い…いや、とにかく何か言わなきゃ!
「あの、ふた「あっ!そ…そういえば、ひとと買い物した帰りだった!荷物持ってあげなきゃ!じゃーね、しんちゃん!!」

テテテ クルッ

「あ…明日、しんちゃんち行くから!勉強教えてね!お願い!」

クルッ テテテテテテ...

「あっ…」

あーもう!!何だこのグダグダ!かっこ悪ぃ…。


…明日。

俺の家に来てくれるって。俺の部屋で、2人で……。
……………!

いやいやいや!当然母さんもいるし!そうそう!
あー!わー!!そうじゃなくて!
そう、明日!
勉強教えて欲しいって。明日も一緒に居ようって。

……うん、そうだ。
俺には、あいつのためにできる事がたくさんあるんだよな。
今日だって、あいつを笑顔にできたじゃないか。
そうさ!
俺とふたばの仲なんだから!!

よおし!頑張れよ、俺!!

「さあ千葉!田渕!たっぷり食って、ガシっと遊ぼうぜ!」

ガシャン

ガシャン?
…音のした箇所、俺の右手に目をやると…そこには手錠が。
その鎖の先を辿ると…
「お…お巡りさん…コンニチハ…」

待て。
見える…見えるぞ、オチが……!!

「き…きき…キミは!公道のど真ん中で、堂々と少女の胸を揉みしだくとは……!」
「いっ…いや、違うんです!」
「何が違うんだ!しかも今のは、昨日のテレビにも出ていた丸井ふたばちゃんだろう!
有名になると良からぬ輩も出てくるかもと心配していたが、いきなりこんなとんでもない変態が現れるとは……!!」
「ああああああの!俺とふたばは特別な仲で!」
「ストーカーの類はみんなそう言うんだ!
可哀相に…ふたばちゃん、目に涙を溜めて逃げていったじゃないか!」
「ああいやっ!それはその!」
「ともかく交番まで来てもらおうか!」

ファンファンファン

って、この音は!?
「ちょちょちょ!?待ってくれ!
そうだっ!千葉!!お巡りさんに誤解だって伝えて――…」


ばっと、千葉と目が合う。

それだけでお互いの気持ちが通じ合った気がする。
…そうだよな。俺達にはこれまで積み重ねてきたものがあるもんな。
わかるよ。お前の言いたいこと。


―――まあ、たっぷり反省してこいや――


「ちょっ!おまっ!さすがにこれはシャレになんねーだろ!!
おい!頼む千葉ぁ!!田渕!!」

ああああああ!今回も…


「最悪だー!!!」


バタン ブロロ ファンファンファン...



<おわり>