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「ええっ!?ママ、日曜に遊園地行けなくなったの!?」
「ごめんね、みくちゃん…。どうしても外せない用事が入っちゃって…」
「うーん、私はいいんだけど…龍太がどう言うか…」

なんせ日曜はガチレンイベントだ。龍太が非常に楽しみにしていただけに…。

「そうなのよねぇ。さすがに人ごみに子供たちだけでは行かせてあげられないし…
誰か都合の空いてそうな人いないかしら…できればイベントにも理解ができる人がいいわよね」

他人を呼ぶんだからある程度興味がないときついわね…。
大人で、休みの日に暇で、ガチレン好きで…あぁ…いるわ…。

「私、心当たりあるんだけど…」
「本当?誰?」
「矢部先生よ」
「あ、担任の?先生、好きなの?でも迷惑じゃないかしら?」
「かなりのガチレンファンよ。きっと来てくれると思うわ」
「そうなのね。そっか、先生なら私も知ってるし、安心して任せられるわね」
「う、うん…」

…イベントに夢中になりそうな予感がひしひしするわ。言っておいてなんだけど、ダメな気がする…。
といっても。

「じゃあみくちゃん、お願いしてみてね?」
「わ、分かったわ…」

今更引けないわよね。


―――――――――――――――

「矢部っち、今週の日曜空いてる?」
「ガチレンイベントに行くよ!」
「…ごめん」
「謝らないでよー…」
「ま、まぁいいわ。あのね、そのガチレンイベントなんだけど…」
「うん」
「一緒に、行かない?」
「うn、え、えぇっ!?」

え、なんでこんな慌ててるのよ。

「え、杉崎さんと、二人?」
「なななな、違うわよ!」

何言ってんのよこの人!?

「ふぅ、違うのか」
「家族で行こうとしてたんだけど、ママが急に行けなくなってね。龍太もいるし、保護者として来て欲しいの」
「あぁ、そういうことなら分かったよ、一緒に行こう」
「じゃあお願いね」

びっくりしたわ…なんで私が矢部っちと二人なのよ…。ていうか何考えてるの…。


―――――――――――――――

「「いぃぃやっほぉぉぉぉ!」」

……。大人一人に子供二人で入ったのよね。うん、人数は合ってるわ。
私が大人で矢部っちと龍太が子供ね、間違いないわ。ていうかどうすんのよアレ…。
休日の遊園地のイベントなんてものすごい人が集まるのに、あの調子で暴れたらはぐれちゃうじゃないのよ…。
って言ってる側から龍太が!

ガシッ

「っとと、離れると危ないよ」
「お、おぉ!わりーな!」

…なんだかんだでちゃんと見てるのね。意外だわ。
って、私が流されっ!

「ほいっと」
「わ、わわっ」

矢部っちが私の手をしっかりと掴む。そして流されそうな私を引き寄せる。
さすが男の人だわ、結構力強いのね…。…ちょ、ちょっと近いけど…まぁ、いいわ…。
な、流されたくないだけだからね!

「大丈夫かな?」
「え、ええっ、大丈夫よ」
「そう、じゃあ前に行くよ。しっかり捕まっててね」

こ、この手をしっかり握ってろってことね。……っ!変に意識しちゃだめだわ。
矢部っちは担任、そして今日は保護者なのよ。別にこれぐらい普通なんだから…。

そういえば人の流れがあんまり苦にならないわね。こんなにいたら大変なはずなのに。
あ…矢部っち、庇いながら行ってくれてるのね。やっぱり私たちのことよく見てくれてるわ…。
弟と一緒になって騒いで、それでもきっちり私や龍太のことを守ってくれる。
子供っぽいところもあるけど、きっちり年上。
うーん…お兄ちゃんって、こんな感じなのかしら?ちょっと歳が離れているお兄ちゃん?
そ、そうよ!きっとお兄ちゃんみたいな感じなのよ!だからそう!手を繋ぐのも普通なのよ!
私って結構甘えたがりなのかしら…みつばといい…矢部っちといい…。

「杉崎さん、どうしたの?」
「な、なんでもないわっ!なんでもっ!それよりしっかり手を繋いでてよね!」
「え、うん、そりゃはぐれたら困るし、そうするつもりだよ?」

っ!繋いだまま繋いだまま…。う、うぅぅぅ…!普通なの、普通なの…!


―――――――――――――――

結局、私はその後のイベントの内容なんて全然頭に入ってなかった。
普段だったら龍太の話に合わせるためにも見ておくんだけど、今日は矢部っちがいるから問題もなく。
なんせ二人で大盛り上がりだ。むしろ私が入らないほうがいいぐらいの騒ぎっぷり。
けれどそれも自宅についたら終わり。用事を終わらせたママが出迎えてくれた。

「先生、ありがとうございました」
「あ、いえ。僕のほうも楽しませていただきましたし、二人ともいい子にしていましたから」
「今日は楽しかったぜ!また一緒に行こうな!」
「…ありがと、矢部っち」
「それじゃまた学校でね」

それだけじゃ冷たいわ。折角一緒に行ってくれたんだし、何かお礼をしないと。

「あの、お礼をしたいんですけど」
「あはは、君はまだそんなこと気にしなくていいの、ちゃんと学校に来てくれたらそれでいいよ」

この人ほんとに何も分かってない…。

「そうじゃなくて…。私がお礼したいのよ」
「あはは、本当に気にしなくていいんだよ」
「くすくす…それじゃ先生、お礼はまた後日させていただきます」
「えっ、あ、お構いなく!それでは失礼します」

あーあ、ほんとに帰っちゃったわ…。ていうかママと態度が違いすぎるわ!
って、ママ?何、内緒話みたいに。

「みくちゃん、あぁいう時はね…」


―――――――――――――――

<翌週・土曜>
ふふっ、驚くかしら。そりゃいきなり来たら驚くわよね。

ピンポーン

…ガチャ
「…っとと、何でいつもみたいに入っ、あれ?杉崎さん?」

いつもみたいに…?

「どうしたの、お休みの日に」

っと、いけない、ちゃんとすることしないとダメね。

「先週のお礼をしにね」
「え、そんな、いいよ」
「そんなこと言われてももうココまで来ちゃったわけだし」
「う、まぁ確かにココまで来られちゃ仕方ないね…で、お礼って…」
「矢部っちのお世話をしに来ちゃった」
「えぇっ!?」

わ、すごく驚いてるわ。ちょっと楽しいかも。

「いやいやいや!だって今この部屋入られると困るよ!」
「掃除してないんでしょ。心配しないで、それがお礼よ」
「いや、それ以外にもね、その…」
「いかがわしい本があるのね」
「…はい」

ほんとにダメな大人ね。お客さんが来たらどうするつもりなのかしら。
まぁ、それはともかく。

「とりあえず、玄関先で立ち話だと目立つから、入れてくれないかしら」
「あー…ぁぁ、うん」

「って、汚っ!?」
「もー、だから止めたのにー」
「う…悪かったわよ。でもとりあえず私が掃除するから任せて」
「なんでそこまで?」

そうよね、やっぱり不思議に思うわよね。仕方ないか…。

「あのね、笑わないで聞いてくれる?」
「うん」
「この前ね、龍太と一緒になってはしゃいでる矢部っちを見て、なんか可愛いなと思って…」
「大人に可愛いって…」
「もう、ちゃんと最後まで聞いてよ。
でね、それでもしっかり私たちのことを気にかけてくれている矢部っちを見て、ちゃんと守ってくれてるんだなって思って…。
それでその…矢部っちのこと、お兄ちゃんみたいだなぁと思って。
それで、すっごく何かしてあげたいなぁって思っちゃったの」
「お兄ちゃんみたい…?」
「だって私、お兄ちゃんいないもの。みたいってことしか分からないわ。
でもきっとお兄ちゃんって矢部っちのように優しくて、でも男の人の子供っぽいところもあるんだわ」

ものすごく恥ずかしい。けど、なんだか気持ちがスッキリする。

「杉崎さん…」
「だからお願い、今日は妹みたいなものだと思って、これぐらいのワガママ、言わせて?」
「うっ…うぅ、分かったよ」

やたっ!ママ、私大勝利よ!

「……杉崎さん?」
「な、なんでもないわ!」


―――――――――――――――

ある程度覚悟していたつもりだったけど…。

「いかがわしい本、多すぎだったわ…」
「ハイ…」

本当に仕方ない人ね。急な来客に全く対応できないじゃないの。
ふふ、こうやって私がたまに見にこないとダメかしら。

「でも杉崎さん本当にすごいんだねー、あっという間に片付いちゃったよ」
「お礼だし、頑張ってやっておいたわ」
「あはは、ありがとう。きっといいお嫁さんになれるよー」

い、いきなりこの人何言ってんの!?それにしても、お、お嫁さん。…矢部っちの?
っ!?私ってば今何を!?

ガチャ
「「…えっ」」
「あ、ひとはちゃん」

えっと、どういうことかしら。鍵はしてたわよね。なんで入ってこれるのかしら…。

「今日は遅かったねー。何かあったの?」
「はい、少し。…それよりですね」
「「これはどういうこと?」なんですか?」
「えっと、何が?」

何でのほほんとしてんの…。

「はぁ…先生にこんなの求めるだけ無駄だね、とりあえず私たちで話そう」
「そうね、それじゃ私から言うわ」

―――――――――――――――
お互いの話を聞き終わった後、つぶやいたのは私だった。

「そう、じゃあ毎週ココに来てたのね」
「うん」

なんなのかしら。異様に悔しいわ。それに…羨ましい。合鍵なんて…まるで彼女だ。

「この部屋、杉崎さんが掃除したんだよね」
「ええ」

チクビと遊びながらそうつぶやく三女。
あら…三女も何かオーラが…三女は間違いなくそうだろうから、ってことは私はやっぱり矢部っちを…。
ち、違う、違うわ!そう、これはきっと兄を取られて寂しい感覚よ!
で、でもちゃんとした兄弟でもないのにこんなこと思うかしら…。う、ぅぅぅ。

「とりあえずお昼前だし、私は帰ります。チクビ、また明日ね」

っ!?ってことは明日も三女ココに来るのね、そう、なのね…。

私も負けていられないわ。

「矢部っち、私も今日は帰るわ。私は…矢部っちに会いに、明日も来るわ」
「っ!?」

「?う、うん、まぁいいけど」


―――――――――――――――

「杉崎さん」
「んー、分かんないのよね」
「えっ?」
「矢部っちのこと。お兄ちゃんみたいだなって思ってたんだけど、三女と二人で会ってるって考えたら急に悔しくなったの」

…自分で言ってて分かるけど、告白同然ね、これ。

「二人って…私はチクビに会いに行ってるだけだよ」
「そう?じゃあ、もしもだけど…私が矢部っち貰ってもいいのね?」
「よくない」
「あら、素直じゃないのね」
「けどそれよりも、先生は相手にしてくれないよ」

随分と弱気ね…。

「そんなの分かんないじゃない」
「掃除してたら分かると思ったけど…エロ本、見てないの?」
「…大きいのばかりだったわね」
「そう、つまり私や杉崎さん程度じゃダメなんだよ」

そ、そんなっ!って…

「自分で言ってて泣きたくならない?」
「なる」
「そ、そう…」
「だからその、こっちの件では共闘しておっきく。どうせ今は相手にしてくれないし」

確かに現状は、教師と小学生だもんね。さっきはあぁ言ったけど、確かに普通に考えたら相手にされないわ。

「おっきくするのは分かったけど…。それで…矢部っちに対しては?」
「現状維持、というか手出し無用というか…」
「そ、分かったわ。それじゃお互い頑張りましょ」
「ん。それじゃ私は来週からもチクビに会いに行くよ」
「んなっ!?」

こ、この子…っ!ぜ、絶対に負けないんだからーっ!!