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「ふたば、早く起きなさいよ。遅刻するわよ」
早朝、着替えをすませたみつばが、ふたばを起こしに来た。
今日もまた、女の子らしい服装に身を包んだ、みつばは声をかけるだけでは起きない妹に溜め息をつく。
「……まったく、私の手を煩わせるんじゃないわよっ」
文句を言いながら、ふたばを無理矢理起こそうと、布団を剥ぎ取った。
すると、パンツ一丁になったふたばがゴロンッ、と転がって出てきた。
その拍子に、同年代にしては大きいふたばの胸がふるんっ、と揺れる。
多分、寝ている途中で脱いだのだろう。
ベッドの足下にはパジャマが脱ぎ捨てられていた。
たまにこういう事はあるが、我が妹ながら将来が心配になってくる。
「ほら、さっさと起きなさいよっ」
ふたばの肩を掴み、揺さぶってみたが、起きる気配はない。
「ぐー」
「ふたばー」
ふたばを揺さぶる度に揺れる胸に少し顔が熱くなるのを感じた。
(それにしても大きいわね……いや、私も大きいけど……)
好奇心に負けて、つんっ、と触ってみると、指先に柔らかい感触が伝わってきた。
「んっ……んっ……」
ふたばの身体がピクンっと反射する。
「やっぱり変態だね」
「ギャーーーーって、いつから居たの?!」
突然背後から話しかけてきたひとはに驚くみつば。
「あろう事か、妹の胸を指で押して興奮を覚えてる辺りからだよ。いつまでも下りてこないから気になって。ご飯冷めるから早くしてほしいのに」
「んあっ、ご飯っスか……?」
ご飯という単語に反応して、ふたばが起きる。
「そうだよ。だから、早く下りてきて。その前に何か着て」
「んっ……は~いっス」
ゆっくりとふたばは布団から出て、下へ向かう。
その後をひとはと真っ赤になったみつばがついて行った。

「おはよ~」
「おはよう……」
「おぅ、おはよーっス」
「朝っぱらから不愉快な顔向けるんじゃないわよっ、変態ブタゴリラ」
「おはようっス、しんちゃん!」
「あぁ。おはよう」
クラスメートと挨拶を交わしながら、三人はランドセルを各自の席へ置いていく。
「ねぇねぇ、杉ちゃんは昨日のドラマ観た?」
「えぇ、もちろん観たわよ」
「ラストで亜季が事故にあって、喋れなくなる所とか感動したよね~」
「そうそう。車椅子に乗ってて、それでも必死で剛に愛を伝えてる所とか、もう凄い興奮したよ」
「何の話よ?」
杉崎グループの中にみつばが割ってはいる。
「あっ、みっちゃん。昨日のドラマの話だよ」
「そうそう『100万マイルの霊』だっけ?」
「『100万マイルの恋』だよ」
「まぁ、お子様なみつばはもちろん観てないんでしょうけど」
「誰がお子様よっ!この変態バネ髪女っ!」
みつばと杉崎がワイワイと蔑みあっている横では千葉と田渕とふたばらが雑誌を開き、おっぱいについて熱く語り合っていた。
「やはり大きければ良いと言うものじゃないっスね」
「あぁ。一概に、大きければいいとはいえない。
だが、女たちの中には自分のおっぱいがもう少し大きかったら、あるいは逆に、もう少し小さかったらと考える者も多い。
けれど、大きさに捉われるあまり、おっぱいの本当の魅力を見過ごすことは愚の骨頂だ。確かに大きなおっぱいはそれだけで素晴らしい。可憐だ。美を纏っている。
巨乳を強調しようがしまいが、良いものは良い。これに影響され貧乳の乙女たちは巨乳の悩みを羨ましく思うも者もいるかもしれない。
しかしおっぱいの大きさはさして気にする必要はないのだ。
おっぱいは大きいから良いという話でもないからだ。必ずしもおっぱいの大きさでおっぱいの優劣をつけるのではない。
おっぱいはそれぞれの大きさによってそれぞれの良さがある。
……こんな名言もある。『巨乳は眺めるもの、貧乳は愛でるもの』
いいか?おっぱいは女性の象徴といっても過言ではない。
巨乳の、そのなめらかな曲線はまさしく女性的であり、またナニもかも包み込めてしまうような女性的包容力がある。その情景はいと美しい。
貧乳はどうか。貧乳もまたその利点がある。
巨乳は将来的には老化により垂れが生じるが、貧乳の場合は垂れの可能性はその乳房が小さければ小さいほど低い。
わかるか?つまり、大きさも大事な要因の一つだ。
だが、それだけではおっぱいは語れない。形、艶、乳首、弾力全てが奏であってこそ、最高のシンフォニーが生まれる。
……ふたば、お前も大きくなればわかるだろうさ。なっ、佐藤」
「なんでそこで俺にふるんだよっ!?」
「いや、今後ふたばの胸を熟知出来るのはお前だけだろうから」
「熟っ……!?し、知らねえよ!」
佐藤はそう言って、前を向いた。
前の方では、ひとはが矢部の机の下に潜っていくのが見えた。
「さて、そろそろ、朝の挨拶始めようかな」
プリントの整理をしていた矢部が時計を見る。
「……」
キーンコーンカーンコーン。
丁度よく始業ベルの音が鳴った。
「はーい、じゃあみんな席についてー」
パン、パンと手をたたきながら、矢部が叫んだ。
それを聞いて、ふたばは自分の席に座り、持ってきていたボールを膝の上に置いた。
一日の始まりに、ふたばは大きく背伸びをした。

放課後。
ふたばは佐藤に話しかけた。
「しんちゃん……」
ふたばの声はいつもと違い元気のないようだった。その様子に不安になった佐藤はふたばに問いかける。
「どうしたんだ、ふたば?何かあったのか?」
「サッカーボールが……」
泣きそうな声で、何とか声を絞りだす。
佐藤はふたばが小脇に抱えているサッカーボールを見た。相変わらず佐藤には普通のボールにしか見えていない。
しかし……、ふたばには目と口が見えているらしい。そして、泣きそうな顔でそのボールを見せてくるという事は、恐らくそれがどうかなっているのだろう。
「コイツがどうかしたのか……?」
佐藤は、意を決して聞いてみた。
「目が……、目が、無くなってて……」
そう言うと、ふたばの瞳から涙が一粒、二粒と溢れ出した。
「目……?あぁ、泣くなっ、ふたばっ!大丈夫だから!」
「しんちゃぁんっ……」
泣きながらふたばは佐藤にしがみついた。
その拍子に腹部をギリギリと締め付けられ、痛みに思わず顔をしかめる。
「ぐふっ……?!だ、大丈夫だから……ふたば、一旦、手ぇ……、離せ……っ」
「あっ、ごめん、つい……」
慌てて、手を離すふたば。その反動でドサッと佐藤は尻餅をついた。
「と、とにかく家に帰ってから話そう、な?」
「うん……」
後ろの方でさっきから千葉やクラスメートが「あーぁ泣かしたー」とか
「さすがイケメンだな」とか
「これって痴情のもつれ?!相手はだれ?!杉ちゃん!?」とか
「私なわけないでしょ」とか
「馬鹿な事行ってないで帰るぞー」とか言ってるのがやたら気になっている佐藤は
取りあえずふたばの手をつなぎ、家まで送った。

「ただいまー」
「おじゃましまーす」
二人は家に入るとすぐふたばの、正確には三つ子の部屋へ向かった。
中央付近に向かい合うように座り、先ずは、泣きじゃくるふたばを必死に慰める佐藤。
ハンカチを渡して、涙を拭くように言う。
「ぐすっ……ありがどう、しんぢゃん」
そう言って、ふたばは涙を拭いて、涙を拭いて、豪快に鼻をかんだ。
ティッシュを渡せば良かったな、と思ったがもう遅い。
「……で、何でいきなり目が見えなくなったんだ?」
ふたばが落ち着いた頃合いを見計らって、聞いてみた。
「うん……。いきなりじゃなくて、昨日から片目だけしか見えなかったんだけど……、
その内治るかなーと思って放っておいたら、さっき見たら両目とも無くなってて……」
そう言って、ボールを撫でるふたば。
伝えたい事は何となくわかったが……正直、最初から見えていなかった佐藤にとっては、
イマイチ実感のわかない話だ。だが、それでも佐藤は必死に理解しようと努力する。
「ふた……」
佐藤が話しかけようとした時、部屋のドアが開いた。
「急いで帰ったから、何してるのかと思ったら、またボールのはなし……?」
「ひと……」
ランドセルを机に置いて、中央に座り込む。
開口一番の三女のセリフを聞いて、こいつ聞いてやがったな……、と佐藤は思った。
「ボールはボールだよ、ふたば。目や口が生えるわけないよ」
「うっ……」
いつも以上にストレートな三女の言葉に、ふたばは反論すら出来なかった。
「三女、……」
そんなにはっきりと言わなくとも……、と思ったが、多分三女は三女なりに心配して言っているのだろう、と気づく。
実の姉がある日突然ボールに目と口があると言い出したんだ。ひとはじゃなくても心配するだろう。
ひとはの言葉にふたばは溜めていた涙を再びこぼし始めた。
泉のように次々溢れる涙は、もはや本人さえ止める術を失っているようだ。
「しょ、小生は、うっ……、嘘なんか言って、なっ……うっ、」
「いや、そんな事言ってる訳じゃ……」
佐藤がいつもと違う二人の雰囲気に口を挟めずにいる時だった。
再び、部屋のドアが開く。

「……ただいま」
「みっちゃん……」
入ってきたのはみつばだった。
「お、おぅ……。お邪魔してるぞ……」
佐藤の言葉をみつばは容易く無視して、気まずそうな顔をした後、意を決したように部屋に入っていく。
机の上にランドセルを置きながら、独り言のように言う。
「玄関開けても返事がないから、いないのかと思ったわよ。……で、なんでふたばは泣いてんの?」
「いや、これは、ちょっと……!」
「変態パンツは黙ってなさいよっ!」
みつばにビシッと言われ、佐藤はそれ以上の言葉を紡ぐのを止めた。
みつばはゆっくりとふたばの側に近寄る。
その時、みつばは何かに気づいたように、件のサッカーボールを取り上げる。
「あら、なんでこのヌイグルミ、目が取れてるの?」
「……」
みつばの言葉に全員が振り返った。
な、なによ?とたじろぐみつばにまずはふたばが訪ねた。
「み、みえてるんスか……?」
「はぁ?何がよ?」
「目と口が付いてるの分かるの、みっちゃん?」
ついで、ひとはが問い詰める。
「見えるけど……。え……、これ、ヌイグルミよね……?その割には本物のサッカーボールみたいな質感が……」
「みっぢゃ~ん!!」
感激の余り、ふたばはみつばに全力で抱きついてきた。
「ギャーーー?!」
同じくそれをみつばは全力で避けた。
ふたばはその勢いのまま壁を突き破り、庭へと落ちていった。
「ふたばぁ!?」
佐藤が慌てて部屋を出ていく。
次いで、ひとはとみつばが部屋を出てきた。
「なんで、避けたりしたの!?」
「避けるに決まってるでしょ!?てゆーか、受けたら私が死んじゃうじゃない!!」
二人の言い合う声が佐藤の後ろから降りかかる。
だが、今はそんな事に構ってられる余裕はなかった。佐藤は玄関で靴を履き、急いで庭に駆けつける。
「ふたばっ!大丈夫か!?」
家の角を曲がりそう叫んだ所で、ふたばの顔が眼前に現れる。
「っうわぁ、とっ……!」
慌てて足で踏みとどまろうとしたが、勢いは殺せず、そのままふたばにぶつかった。
「きゃっ……んむっ!」
短い悲鳴をあげるふたば。その時、二人の唇が重なった。

「んぐっ……!?」
ふたばはそのまま仰向けに押し倒され、佐藤がその上に重なるように倒れた。
「……」
「……」
状況を理解するまで、ひとはとみつばが駆けつけるまで何秒ほどのタイムラグがあっただろうか。
時間が止まったような感覚に見まわれた佐藤とふたばだったが、近づいてくる足音に、無意識に唇を離した。
「大丈夫、ふたばっ!?」
みつばが叫んだ。
その焦りと不安が入り混じった顔には、普段の生活ではあまり見せない姉らしさがあった。
しかし、その顔は一瞬で固まる。
実の妹を変態の幼なじみが組み敷いていたのだ。
目の前で。
見つかった、という表情で。
「こんな時にまで……。しんちゃんはとんでもない変態だね」
ひとはが呟く。
「いや、これは違っ……」
「……っこの、変態がぁぁぁぁぁぁ!!!!」
みつばの怒声が響き渡った。

「はい。今日は鯖の塩焼きだよ」
「普通だな」
頬にバンソーコーやまぶたに青痣を作り、すっかり痛々しくなった佐藤が呟く。
結局、あの後みつばの誤解を解いたり、ひとはに口外しないよう土下座をしたりして、ボールの件はうやむやになった。
疲れ果てた佐藤は、ひとはのお詫びを兼ねた夕飯にそのまま招かれたのであった。
ひとはから、主菜を手渡され、食卓には今ご飯、味噌汁、鯖の塩焼きが並んでいた。
「ごめんね。こんなものしかない家で」
「あっ、いや、そんなわけじゃ……!」
ひとはが悲しそうに言ってくるので佐藤はたじろいだ。
「ウチは女が多いのに何故か食費がかさむからね」
「……あぁ」
「ちょっとっ!なんでそのタイミングで私の方を見るのよっ!!」
机を叩いてみつばが反論するが、あまり説得力が無かった。
「とりあえず……いただきます」
「ふんっ!いただきますっ!」
「召し上がれ」
「……」
騒々しく三人が食べ始める中、ふたばだけが手を動かさない。
ボールを抱いたまま、上の空で空虚を眺めている。
「どうしたの?ふたば。食べないの?」
いつも真っ先に食べ始めるふたばが箸を持ちもしないことに疑問を感じたひとはが話しかける。
「い、いや、別に!なんでもないっスよ!?」
話しかけられた事に慌てたのか、我に返り急いで箸を持った。
しかし……。
「……」
ご飯を二、三口食べた所で箸が止まる。
「ふたば……?」
「ごめん、ひと……ごちそうさま」
「え?」
ふたばはそう言うと、ひとはの返事も聞かず席を立った。
「ふたば……!?」
ひとはが叫んだが、ふたばは振り返りもせず、二階へと向かった。
「……しんちゃん、何かあった?」
ひとはが、佐藤にそう言うと、佐藤は僅かに反応した。
「べ、別に何もねぇよっ」
佐藤はそう言うが、ひとはからは何となく目を逸らしてしまった。
そのせいで、ひとはは更に見てくる。
佐藤は何とか平静を保とうと、箸を進めた。そのせいか殆ど味がしなかった。
「ふぉちほうはまっ!!」
口一杯にほうばり、佐藤は箸を置いた。
「ひょっほぉふはばのほうふふぃへくふ」
逃げるように佐藤は席を立った。
「……」
相変わらずひとはは佐藤を睨みつけるように見ている。
みつばは、その間も口だけを動かしていた。

「ふ、ふたばー……」
気まずそうに佐藤は三つ子の部屋の扉を開けた。
「……」
ふたばは布団に潜り込んでいた。
返事がないので、覗き込むと、僅かに動きがある。
「ふたば、あの……、ごめん、な?」
「……」
やはり、返事はない。
はぁ、と溜め息を付く佐藤。どうしたもんかと考える。
わざとじゃないとは言え、ふたばの唇を奪ってしまった事実に変わりはない。
しかし、小学生の佐藤には、どうしていいか、何と話しかければよいかすらわからなかった。
「ふたば、……えーと、」
苦し紛れにそう話しかける。その時、布団が勢い良くめくれあがった。
ふたばは、
起き上がったふたばは、佐藤を見る。
涙で濡れた双眸で、佐藤を見る。
「ふたば……っ?!」
あまり見ることが無いふたばの泣き顔に佐藤の心臓は僅かに跳ねた。
「ど、どうしたんだ?!ど、どっか痛いのか!?」
慌てて問いかける佐藤にふたばは静かに首を振った。涙の雫が一滴、二滴と綿布団に滴る。
「違うの……しんちゃん。小生、どうしたらいいかわからないの」

「……はっ?」
思わず佐藤は聞き返す。
「しんちゃんと、キ……キス、してから、なんでかずっと……ずっと、もやもやしてて……、言いたい事があるのに言いたい事がわからないような、なんか……」
ふたばの言葉を佐藤は困ったような顔で聞いていた。
ふたばが言った事。それは佐藤も同じ気持ちだったからだ。
「しんちゃん、……どうしたらいいの?」
それは佐藤にもわからなかった。
ふたばはボールをギュッと抱き、小動物の様に背中を丸める。
ふたばの弱弱しい姿を見て、佐藤の胸の奥がズキンッと痛んだ。
だから、佐藤は言葉の代わりに、ふたばの頭をなでた。
頭のてっぺんのおさげに当たらないように、赤みがかったふたばの髪をなるべく優しく撫でる。
佐藤は少し照れながらふたばに言った。
「あー、わからないならさ?今無理して言わなくていいから」
「でもっ……」
それでも食い下がるふたばに佐藤はあっさりと言い放つ。
「だって、いつでも言えばいいだろ?思い出した時に。ずっと一緒にいるんだから」
それは、佐藤にとっては何気ない一言だった。
今まで、ずっと一緒だった幼なじみだからこそ言える、信じて疑わない未来の話だった。
ふたばだって信じていただろう。しかし、どこかで不安になっていたのかもしれない。佐藤は優しい。変態と罵るみつばとも自分に付きまとうSSS隊の人達とも分け隔てなく話す事が出来る。だからこそ、ふたばの顔は、それだけの事で真っ赤になっていた。
「しんちゃん……」
「ん?……っうわ!!」
ふたばは、覗き込んでいた佐藤を強引に引き寄せた。