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…ストライプ…水玉…白か、ありきたりだな…なっ!大人しそうな顔をして黒だと!こいつはたまげたぜ…

梅雨の恩恵を存分に眼に受けながら大学への道を歩いていく。
いつもの味気ない道が一気に服濡れスケ鑑賞ロードというエロスの塊に
景色を変えたことに俺は少しの満足感を覚えた。
しかしながら、梅雨が鬱陶しいことは変わりない。

そうでなくてもここ最近面白くないことが続いて気が滅入っているのだから。
この時期に幸せを感じる者もいれば、幸せを感じられない者もいる。唯、自分は後者だった。
正確に言うならば最近、後者になった。

昔は大好きだった、この鬱陶しくも服を透けさせ俺を刺激してくれるこの時期が。
だけど今は好きとは思えない。嫌いではないがこの灰色の空のように陰鬱としてくるのだ気分が。

と、考え事をしていたら俺のレーダーにまたもや反応あり。店の軒先で雨宿りをしている二人組。
ああ、後ろ姿でわかるあれは美人だ。一人は派手目でもう一人は清楚な雰囲気。
残念ながら服は透けてないがそれでも充分に眼福だ。…ってあれは三女さんと長女じゃねぇか!

「まっ、いつでもいいから偶には家にも顔出しなさいよ。パパも喜ぶし」
「暇があればね…それに先生のお世話も結構忙しいんだよ」
「大学通いながら主婦するのは大変なのはわかるんだけど、
 流石に二人…「三女さん達は雨宿りっすか?」…げっ、千葉!」
「こんにちは、千葉くん」
「お久しぶりっす」

雨宿り+美人妻という組み合わせはエロスが滲み出てるなとかどうでもいい事を考えてみる。雌豚+雨は…

「最後に会ったのは4月の後半だったかな。同じ大学とはいえ、中々会わないね」
「まぁ学部とか違いますし、仕方のないことっすよ。あっ、でも長女はよく見かけるな。主に学食の辺りで」

時間を問わずとは言わなかったが…
「気付いてるんなら声かけなさいよ!…まぁ、あたしもあんたを時々見るわ。
 …佐藤とふたばと一緒にいる所を。あたしは講義あったりして移動中だけど」
「なんやかんやで時間合わせたりして会ってるからな。高校ほどじゃないけど」
あいつらは二人きりでいる時間が高校の時より更に増えた。
そりゃ二人で同じ学部同じ学科に入れば増えるのは当たり前だろう。でもそれだけではなく、

「へぇ、千葉くんはふたば達とも結構会ってるんだ、じゃああの話は知ってるの?」

…あの話。ああ、知ってる。梅雨の始まりに聞かされたあの話。あれ以来あの日の様な…

「知ってる筈よ」

俺の代わりに長女が答えた。
というかなんで俺があの話知ってることを?

「私の後に千葉にも話すってふたばが言ってたけど」

なるほど。ご丁寧なご報告ぶりだ。

「あの二人付き合い始めたんですよね。いやぁいつかはと焦れてたんすが
 このタイミングとはびっくりしました。まさに大学デビューっすかね。長女も突然で驚いただろ?」
「…そうね」
「しかも結婚も考えてて同棲するんだろ?いやもうしてるんだっけ」
「…そうね。…ちょっと早い気もするけど」

なんだか長女の声のトーンが若干落ちてる気がするが気のせいか?

「まぁ、でもあのふたばが自分から同棲するって言い出したんだから凄い事じゃない」

ああ、まただ。頭ん中が急に重たくなって身体全体がふらつく様な感覚。
てっきり佐藤が言い出したと思ってたけど、ふたばの方からか…その事実にかなりの衝撃を受けた。
はっきり言って立ってるのが辛い状況。一刻も早くこの場から立ち去りたいと思い、
隣を見ると女心なしか長女の顔色が悪いような気がした。

「ふたばからしんちゃんとの関係の悩みを相談されてたから、こう上手くいって本当良かったよ」
「…やっぱり経験者のあんたに相談するのが一番だからね。
 私には同棲する事にしたっす、って相談も無しだったけど」

三女さんから見えない長女の左手が強く握り締められたのが視界に入った。

「それはほら、みっちゃんが誰とも付き合った事が無いし、好きな人もいないからだよ」

昔みたいな暗い笑いではなく、優しく諭す様な微笑を向ける三女さん。
嫌味が全くないのは解るが、この言葉は自分が言われた訳でもないが酷く堪えた。
目線を落とすと長女の左手が先程より強く握り締められているのが分かった。

この時、俺と長女は似た者同士でお互い同じ様な立場にいることに気付いた。
そう今まであいつらの隣に居たのは何も俺だけじゃない長女もずっとつるんでいたのだ。
中学に入った辺りから四人で行動する事が多くなり、何かにつけては集まっていたあの頃。
あの時間を経て俺の気持ちが育ったように長女の気持ちも育っていったのかもしれない。
いや既に育っていたとしてもおかしくはない。

ふたばが佐藤の幼馴染みであるように長女もまた佐藤の幼馴染みなのだから。

「だからみっちゃんもほら千葉く」
「い!や!よ!」

三女さんの冗談に即答かよ。気持ちは解るがな。

「私の心配の前に自分の旦那の心配でもしてなさい。あのヘタレ絶対傘忘れてるから濡れて帰ってくるわよ」
「!先生も今日傘持っていってない。…お風呂沸かして、着替え用意して、温かい夕食も!
 急いで帰らないと。またね、みっちゃん、千葉くん」

三女さんは軒先から飛び出していってしまった。雨の中、自分が濡れるのも構わず。

「あんなに慌てちゃって、しかも自分も濡れて風邪でも引いたら元も子もないじゃない。本当にあの子は」
「それだけ矢部っちが好きってことだろ」
「そうね。私には理解できないけど」
「いやお前も旦那が居て同じ状況だとしたら、多分こんな風に行動してるだろ」
「なっ!…そんなわけ…あるわけ…な…い…じゃな…い」

そう思ったのは三つ子だから。
個性はあるけど根本的なところは一緒だから。
それに、そんな光景が容易に想像できたから。
多分長女も同じことを思っただろう。

傘を忘れた誰かの帰りを待つ光景。
傘を忘れた誰かに傘を届ける光景。
傘を忘れた誰かと一緒に帰る光景。

その誰かを自分に当てはめ思い描こうとするけど、なんか誰かががぼやけて見えてとても息苦しい。
その先にいる相手は簡単に、しかもはっきりと描けるのに。
ふと隣を見ると、長女が百面相をしていた。大方、自分と同じような感じになったのだろう。


お互いこうなる前に何かしていたらとは思わずにはいられない。
今が変わってたかもしれないし、変わってなかったかもしれない。
しかしこの雨のような陰鬱さだけは無かった…はずだと思いたい。


「ねぇ、雨止まないんだけど」
「いつかは止むだろ」

とは言ってはみたものの当分雨は止みそうにはない。

   END