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「ああ~、終わっちゃったかぁ~……。
まあいいや!しんちゃん、次に行こっ!!」
「あ…もうちょっと……違う違う!
そ…そうだな!千葉たちが下りてきたら………っ!?」
あれれ?立ち上がる途中で、急に真っ赤になって屈んじゃった。

「どうしたの??
腰、ケガしちゃったんスか!?」
「ちょちょちょ!?大丈夫だから!ちょっと離れてくれ!!
ケガなんてしてないから!気にしないで!先に行って!」
「大丈夫、待ってるっスよ!
それとも矢部っち呼んで来た方がいい?」
「待たないでいいから!絶対呼ばないでいいから!!
頼む、ちょっとだけ先に行っててくれ!!」
「でも……」

大丈夫って言うけど、しんちゃんは屈んだままこっちに顔も向けてくれない。ひょっとして腰が痛すぎて泣いてるの?
うぅ…心配っス。


「お~~い、ふたば~!三女がアスレチックに、ロープ登りの練習行きたいってさー!!
一緒に……あっ!待てよ三女!できないのは恥ずかしい事じゃないぞっ!!」


「ほらっ!宮下たちも呼んでるしっ!!後で追いつくから!
お願いだから!!」
「……うん!
じゃあ後でね~~!!」

トテチテトテチテ

今日はしんちゃんが小生に『お願い』してくれた!嬉しいな!!


  「ふぅ…危なかった……。あいつ良い匂いするから余計に…って俺は変態集団かよっ!!落ち着け!!!
  ……すぅ~~…はぁ~~………………よし、そろそろ……」

  「「「佐藤く~~ん!!!」」」シュゴ--!

  「げっ!今度こそ全員集合してやがる!!」


「ひぃぃぃ~~~~!!!」
しんちゃんの声…元気になって良かった!!

ダダダダッ

……あれ?違う方向に走ってく……?
ははぁ~~ん、こっそりダイエットしたかったんスね!!
んも~、かっこつけマンだなぁ!


――――――――――


「しんちゃ~~ん!!」

ヒュゥ--- スタッ!

「どわぁ!
あんな高いとこから飛び降りんな!てか大声出すな!」モニョモニョ
「ターザンごっこの途中だったので……。
うふふっ!しんちゃん、その遊具は上に乗るんスよ!」

凹の形に組まれた板。その板の下側、すごく狭いところに、しんちゃんが屈んで入り込んでる。
上側には登るための取っ手も沢山ついてるのに、遊び方に気づかないなんてドジっスね~。

「バカ野郎!隠れてんだよ!それくらいわかれバカ!!」モニョモニョ
「あう…ゴメンね……かくれんぼしてたんスか……」
「ああいや…泣かなくていいからっ。
とにかくこっち来い」
「おす…」
しんちゃんの手招きに呼ばれて、一緒に遊具の下で膝を抱えて座る。
うう……また迷惑かけちゃったっス……。

「ゴメンね……」
「……いや、俺こそゴメン。言い過ぎたよ。
そもそもお前が悪いわけじゃないのにな。ほんとゴメンな」
「怒ってない……?」
「怒ってない、怒ってない」

ナデナデ

しんちゃんの手が、ゆっくりと小生の頭を撫でてくれる。元気だしてって。
…うん、もうほんとに怒ってない。
しんちゃんは優しいな。小生がドジして迷惑かけても、ちゃんと謝ったらすぐ許してくれる。

やっぱりパパに似てるっス!!

「はぁ…ふぅ……。
しかし今の声、変態集団に聞かれてなきゃいいけど……。
てか、なんであいつらこういう時は異常に足が速くなるんだよ……」
狭い隠れ家から、少しだけ顔を出して鬼が来てないか確かめてるしんちゃん。
ここへ来るまでにすっごく頑張って走り回ったみたいだ。体中から次々に汗が生まれて、すぐに地面に落ちて消えていく。

ボタポタ

すごい汗……。何かないかな……そうだっ!

ゴソゴソ ゴソゴソ

「しんちゃん、これで汗拭いて」
「ああ、サンキュ…。ゴシゴシ
なんかあったかくていい匂いする…って、ここここっ…コレっ……!」
「うんっ!
小生ハンカチ持ってないし、しんちゃんはパンツ大好きだから、ちょうどいいと思って!!」

「大バカ野郎!!!

こんなとこで……あっ、スパッツは穿きなおしてるのか……じゃなくて!
お前こんな事して、恥ずかしくないのかよ!!」
「え……?
ちょっと恥ずかしいっスけど……」

ちょっと前まではしんちゃんなら恥ずかしくなかったのに、最近はしんちゃんだから恥ずかしいって感じる……何でかな?
でも、
「しんちゃんが欲しいのなら、何でも大丈夫っス」
「欲しくない!!それに『何でも』なんて軽々しく言うな!!」
あれ?何だかますます怒らせちゃった……?

しんちゃんが目を吊り上げて、ギザギザとがった声をぶつけてくる。
こんなに怖いしんちゃんは、めったに、ほとんど、ぜんぜん見ない。見たくないから頑張って考えたのに……。

「……欲しくない…嬉しくないっスか…?」
「ぜったい嬉しくない!
お前がわからないでやってるから嬉しくないし、わかってやられたらもっと嬉しくない!!」
「え~っと、わかってないから……でもわかってたら……?
……とにかくゴメンね、しんちゃん……。
小生、しんちゃんが大好きだから、小生にできることなら何でもしてあげたいなって思って……」
「だからそういう事を簡単に言うな!!」
「…うぅ…ぐすっ……。
だってしんちゃん何でも持ってるし、何でもできるから…どうしたらいいのか全然わかんなくって……。
ひっく……いっつも迷惑かけてゴメン……」

どうしていつもこうなっちゃうんだろう。
しんちゃんにも、パパにも、ひとはにも、みっちゃんにも矢部っちにも、みんなにいっぱいいっぱいありがとうのお返しをしたいのに、
小生が頑張るたびに、もっともっと困らせちゃう。
優しいみんなが笑って許してくれるたびに、小生の胸はもっともっと痛くなる。

ああ、うぅ、う…なみだ、が、止まら、ない…。

「………なぁ、ふたば。今から俺はお前を怒る。ゴメンな。
でも、泣かずにしっかり聞いて?」

ゆらゆらする世界の中、優しい声が聞こえたと思ったら、また明るい光が戻ってきてくれた。
今日も優しいしんちゃんが、ハンカチで小生の涙を拭いてくれる。
その手の動きが、あったかさが、匂いが、全部が優しくて、触れてくれたところから次々に痛いのが飛んで消えてっちゃう。

「……ぐずっ………うん……」

心が軽くなって、どこまででも飛んでいけそうな気持ちになる。


しんちゃんと、一緒なら。


「お前が俺のためにって思ってくれるのは、すっげー嬉しい。本当の本当に嬉しいよ。
ありがとうな。
でもさ、俺はこういうカタチで欲しいんじゃないんだ。
それに、こういうカタチはちょっと普通と違ってるから、余計に困る」

「じゃあ、どういうのなら欲しいの?」

「………ふたばが考えてくれ。それを考えてくれるのが1番嬉しいよ。
別に普通にして欲しいってわけじゃないんだ。
お前が特別なのはよくわかってる。俺だけじゃなくて、みんながお前をすごいって思ってる。
だけどさ、俺たちもうすぐ中学生になるよな。
そしたらこれまでみたいに自由じゃいられないかも知れない。
みんなも苦しかったり、痛かったりする事が増えていくかも知れない」

「そんなの嫌っス。いっつもみんな楽しいのが良いっス」

「……俺もそうだよ。
でも多分大人になるってそうなんだ。みんないつまでも今のままじゃいられないんだよ。
お前は俺より見えるから、これから先、きっと色んなやつが泣いてるのを見つけるよ。
お前は俺より優しいから、これから先、きっと色んなやつを助けたいって思うよ。
お前は俺よりずっと何でもできるから、きっとお前だけができる事にたくさん出会うよ。
だからなんでそいつが痛いのか、苦しいのか。どうしたら1番良いのか、わかるようになって欲しい。
……そうだな。俺は『ふたば』にそうなって欲しいな。
俺のわがままだけど」

「けど、小生はしんちゃんに……」

「俺は迷惑なんて思ってない…わけでもないけどさ、でもまぁいいよ。
俺たち幼なじみなんだから、これでいいんだよ。
結局いつも何とかなってるしさ。
大体、俺は何か欲しいってわけじゃないし…てか、何かをもらうほど大した事はしてないって。
俺はお前と一緒に居るのが楽しい。お前と一緒ならこんなもんだと思ってる。
だから今のままで十分だよ」

「しんちゃんは今のまま、ずっと一緒に居てくれる?」

「お前が……うん、当たり前だよ。これまでだって、ずっと一緒だったろ?
だからこれからは、ゆっくりでいいから一緒に頑張っていこうな」

「うんっ!!」
よくわかんないけど頑張ろう!!
大丈夫!だってしんちゃんが一緒なら、怖い事なんて何にもないんだもん!!
ずっと一緒なら、ずっと何も怖くない!!

「うん。
難しくて……上手く言えなくてゴメン。それでも、しっかり聞いてくれてありがとう。
すっげえ嬉しいよ」
いつも通り、しんちゃんがぱっちりキラキラな目を優しく細めて笑ってくれる。
あったかくて、優しくて、小生に元気をくれる大好きな笑顔。
辛い事も、嫌な事も、怖い事もみぃ~~んなあったかいので塗り替えてくれる……あれ?今日は胸がキュンキュン痛いや。
でもこの痛いのは嫌じゃない…ううん、それどころかすっごく大事なものな気がする。

何でかな?

「………さてと。
それはそれとして、今はどうやって変態集団を撒くか……。
あいつら匂いに敏感だから、こんな所に隠れてるくらいじゃ……」
ハンカチをズボンにしまったしんちゃんが、また周りをキョロキョロしだした。

そうだ、まだ鬼ごっこの途中だったんだ。何とかしてしんちゃんを逃がしてあげないと。むむむ…。
「匂い……」

あげるんじゃなくて、できる事……考える………!!

「そうっス!しんちゃん!」
「だから大声出すなって…なんだよ?」
「服を脱いで!!」
「服を……んなっ!?おまっ、だからそういうのは……!」
「ふっ、ふっ、ふっ!!
しんちゃんなりきり大作戦っス!!」


「しんちゃん、着替え終わったからこっち向いていいよ」
「………ああ……」

遊具の下に隠れたまま、小生がしんちゃんの服に着替えて、しんちゃんが小生の服に着替えた。
見られるのは恥ずかしいから……しんちゃんもそうだって言うから、お互い後ろを向いて。
でも狭いから、途中で何度も身体をぶつけちった。
めんごめんご。

うふふ、小生の服を着たしんちゃん、可愛いな。
でも、
「なんだか疲れてるっスね?
どうしたんスか、着替えただけなのに」
「……いや……ちょっと自分の我慢強さに感動してて……」
「ふ~ん……?
とにかくこれで、おがちん達を引き付けられるはずっス!!」

服にはしんちゃんの汗がたくさん染み込んでる。
このまま小生が外に出て、顔がわからないくらい離れて逃げ続ければ、しんちゃんは見つからなくて済むっス!!

「そんなに上手くいくかなぁ……?
…あれ、どうしたんだ?うずくまって」
「う~~ん……。 クンスカクンスカ
うんっ!やっぱりしんちゃんは匂いまで気持ちいいっス!!」
「ぐふっ!!お…おまっ!!
……そう言われると、この服もすげぇ良い匂いが……って、だから俺は変態じゃねえよ!!
だーくそっ!やっぱ俺の服返せ……あぁでも着替えでまた……」


「こっちよ!こっちから佐藤くんの匂いがするわ!!!」


「げっ!!来た!!」
「しんちゃんは隠れてて!!1時間したらまたここでねっ!!」

トテチテトテチテ

「「「待って~~~!!!」」」ドドドッ


  「……本当に上手くいくとは…無茶苦茶だな……。
  でもまぁ一応これで開放されたか。……ありがとう、ふたば。
  …………………………………。
  ………………くんくん………待て。マジで待ってくれ長女。これはちが」


「うわああぁぁあぁあ!!」
おおっ!喜びの声が!!


「よ~~し!しんちゃんのために頑張るっスよ~~!!
鬼さんこちらっス!!!」


――――――――――


「は~い、お疲れ様!!でも家に帰るまでが遠足だよ!
気をつけて帰ってね!!」


「今日はすっごく楽しかったね!」
「おうよ!お宝本も拾えたしなっ!!
……しかし佐藤、今日一日でずいぶん痩せたな?」
「……ああ…あの後も……着替えとかで……身も心も…………」
「ダイエットできてよかったね!!」
「…………………そうだな……」



<おわり>