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二人だけの日だった。
「今日お母さん達帰ってこないから」
朝一番に聞いたのは姉の絵理による、そんな言葉だった。
「……ん。何で?」
別にそんな事が初めてでもない信也は寝癖を揺らして、牛乳をコップに注ぎながら絵理に問い返す。
「何か友達の結婚式とかなんとか言ってたよ」
「ふーん」
ソファーに座ってテレビを見ている姉に、信也は二杯目の牛乳を注ぎながら生返事をする。
「だから、今日は私が夕飯作るから」
「……え?姉貴、作れたっけ?」
さすがに、聞き捨てならない事が聞こえたので、信也は聞き返した。
「作れるわよ、夕飯くらい」
「……」
信也は無言になる。
いつも丸井家の三女以外の三つ子の料理を見ているせいか、悪い予感が自然と浮かんでくる。
「べ、別に食べに行ってもいいんだぞ、姉貴?」
「……そんなに不安?まぁ、わかる気もするけど」
三つ子を知っている絵理も信也の態度を妙に納得した。
「心配しなくてもいいって。簡単なものですませるし。てゆーか、あんたも手伝うのよ」
「えぇ~」
明らかに不満を漏らす信也。外ではめったに見せない態度も家では普通に見せる辺りまだ子どもだな、と絵理は思った。
「まぁ、夕方を楽しみに待ってなさい」
「へいへい」
そう言って信也は洗面所へ向かった。

夕方。
出来上がった料理を食卓に並べていく。
「手伝いってハンバーグこねるだけかよ……」
「そうよ。あんた、ハンバーグこねるの好きだったじゃない?」
「何年前の話だよ!」
信也は文句を言いながら食卓に付く。
「ったく……いただきます」
「はいはい、召し上がれ」
いつもの調子で食べ始める二人。
お互いに話す事もなく黙々と食べていく。
「……」
「……」
「…………」
「…………あぁ、おしいっ」
サッカー中継を観ながら、信也は呟く。
「相変わらずサッカー好きだねぇ」
「……姉貴だって、剣道好きじゃん」
「そぉ?最近はそんなでもないけど」
「毎朝、早くから練習してるくせに」
「あぁ。それは朝練つって……、まぁ強制的に行かせられてるのよ」
絵理はご飯を口に運んだ。
「ふーん?大変なんだな」
信也もご飯を口に運ぶ。
そして、箸を持った手を机に置いた時、不意にリモコンのボタンに当たった。
チャンネルが変わる。

『んっ……はぁ、はぁっ!』
『あかりっ……』
「ぶはっ!」
信也は、慌ててチャンネルを戻した。
絵理は、顔を真っ赤にして固まっている。
テレビはすでに、ニュース番組へと切り替わっていた。
「なっ……」
何なんだよ、今のは。
気まずい雰囲気を振り払うため、そう言おうとしたが、言葉に詰まる。姉がそんな事わかるわけがないからだ。
多分、今のはビデオだったはず……。
信也は、ビデオデッキを見る。信也には覚えがない。姉の様子からすると、姉にも覚えはないだろう。
とすると……。
い、いや、深く考えるのはよそう。
気まずい雰囲気を振り払うように、信也は黙々と箸を進めた。
「し、信也……」
絵理が話しかける。
「な、なんだよ?」
ぎこちなく信也が応えた。
「私達って……その、お母さん達が……をしたから生まれたんだよね……」
「ぶはっ!!」
姉の言葉にまた吹き出す。
「し、知るか!!ごちそうさま!!」
「あっ、ちょっ、信也……」
姉の言葉を無視して、信也は二階へ上がる。
(何なんだよ何なんだよ何なんだよっ……!!)
歩調が自然と強まる。
力強く自室の扉を閉めた。
「………………ふぅー」
思い切り息を吐くと、少し頭の中がクリアになる。
(……)
モヤモヤと先程のビデオが思い出された。
「あぁ……くそっ!」
妄想を振り払う
そうだ、風呂に入ろう!風呂に入ってこの汚れた思考を洗い流そう!
我ながら上手いことを考えたもんだと思い、信也は着替えを持って風呂に向かった。

一方、片付けを終えた絵理は、先程の事を思い出していた。
地味とは言え彼女も立派に思春期なのか、頭の中は男性器の不思議をずっと考えていた。
そこにちょうど風呂場から音が聞こえてきた。
信也がお風呂に入ったのだろうか?
しばらく考えた後、絵理は自分も風呂場へと向かった。
服を艶めかしい動作で素早く脱ぎ、タオルで前を隠す。
そして、浴室の扉を開けた。
「信也、入るね?」


そんなある日の風景。