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暖かい日だった。
「うーん……」
珍しく教室に残り、佐藤は腕を組んでいた。
それというのも、三つ子の誕生日が明日に迫っているからだ。
「確か、去年はアクセサリーをあげたから……今年もアクセサリーにするか?いや……さすがにありきたりだし……」
三つ子ともなると、さすがに一人だけにあげるのは気が引ける佐藤は──文句は言われながらも──毎年三人にプレゼントをあげていた。
「うーん……」
大体、佐藤はこの時期にはいつも悩まされている。千葉からはすでに“春先の風物詩”とまで言われていた。
キーンコーンカーン……。
チャイムが鳴った。
「もうそんな時間か……」
続きは放課後考える事にして、佐藤は次の授業の準備をしようと机から筆箱と教科書を出す。
「うーん……」
しかし、思考はすぐにまたプレゼントの方へ戻っていった。


放課後。
「で、なんでそんなイケメン様の好感度アップ大作戦に俺まで付き合わなくちゃなんないんだよ」
千葉と佐藤は、通学路から少し外れたデパートに来ていた。
夕方と言うこともあり、沢山の人が溢れかえっている。
「いいじゃんかよ、たまには。今度ジュース奢ってやるから」
「割に合わない気がするんだが……」
渋々と千葉と佐藤は、人混みを掻き分け進んでいく。
「ところで、千葉。お前ならプレゼントに何買う?」「俺にそれを聞くとは……お前もヤキが回ったな。でも、そうだな……」
チラリと、下着売り場が目に入る。
「やはり、パンツだな!」
千葉は腕を組み、言い切った。
「買えるわけないだろ!パンツ以外で、だよ」
「でも、ふたばにあげるなら、おっぱい~~とかでいいんじゃないのか?」
「安直すぎるだろ……もっとふたばには……って、ふたば限定じゃねぇよ!三・つ・子!」
佐藤は、若干頬を赤く染め、訂正した。
「はいはい。しかし、三つ子それぞれに同じものとなると……」
ふと、千葉の言葉が止まる。
「?どうした、千葉?」
「……あれでいいんじゃないか?」
千葉が指差した方を佐藤は見る。

そこにあったのは、パジャマだった。
児童向けのガチレンジャー変身パジャマ。
「おぉっ、これはいいかも……」
近寄って、良く確認する。
これなら、ふたばも好きかもしれない。
数を見ると、丁度残り三着しかなかった。
サイズもこれくらいだったらいけそうだ。
迷わず佐藤は購入する事に決めた。
小学生の少ないお小遣いで頑張って貯めたお金……。
しかし、佐藤はそれほど惜しくはなかった。
浮かんでくるのはふたばの笑顔ばかり。
(あいつ、きっと喜ぶぞ)
自然と顔が綻んだ。
「おい、佐藤……その、何だ。……俺も一人分くらいなら出すぞ」
千葉も財布を出す。
(わかりやすい奴……)
自分のことを棚に上げ、佐藤はそう思うのだった。


次の日。
佐藤は千葉とともに丸井家へ赴いた。
春の陽光が指す街路を抜け、丸井家のチャイムを押す。

ピンポーン。

……足音はすぐに近づいてきた。
長年の経験から、佐藤は少し離れておく。
「しんちゃん!?」
勢いよく扉が開き、蝶番が壊された。
「だから、ふたばに行かせちゃダメだって……」
「しょ、しょうがないでしょ!?あのバカ、止めても無駄だったんだから!!」
奥ではひとはとみつばがそんな言い争いをしていたので、佐藤は大体何があったのか察した。
「しんちゃん!プレゼント?プレゼント!?」
キラキラと、目を輝かせてふたばは佐藤に純真無垢な表情を向ける。
「あ、あぁ…………えぇと、ほら。…………誕生日おめでとう」
佐藤は紙袋を渡す。
「わぁいっ、しんちゃんからのプレゼントっス~」
明らかに他意はないだろうが、佐藤はその言葉に少し反応する。
「毎年ごめんね」
ひとはが申し訳なさそうに言う。
「いや、いいよ。……それに、今回は千葉も手伝ってくれたから」
突然振られた千葉は驚いた顔をする。
「そうなの?千葉くんありがとう」
「……」
千葉は、三女のそんな笑顔に固まっていた。……顔はすでにまっ赤だった。
ひとは、ふたば、みつばはプレゼントを身体に当ててみたり、着てみたりして嬉しそうに賑わっていた。

暖かい日、玄関先での、


そんなある日の風景。