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時が経つのは早いもので気づけばもう九月だ。
数週間前まで綺麗に茂っていた緑葉もその役目を終えて
地面に無造作に散らばっている。
さすがに太陽もやっと自重し始めたらしく、暑さも大分和らいだ気がする。
今日はチクビに朝ごはんをあげるため、みっちゃん達より早く家を出て、
通学路を一人で歩いてるわけである。

「おーい、三女ー」

後方から聞き覚えのある声がしたので振り返った。この人はたしか・・・

「宮原さんおはよう」
「宮下だっ!!いい加減覚えてくれ」

ああ、そうだ宮下さんだ。ここ最近席替えをして私の前になった人だ。
それ以来から何かと私に纏わりついてくる人だ。
にしても、朝からめんどくさい人に会っちゃったな。
全く、うっとうしいことこの上ない。

「どしたの、こんな朝早くから?」
「ああ、私はバスケの朝練があったからさ。やっぱり、秋はスポーツの秋だろ?」

またうっとうしいことを・・・
そういえば、この人は地元のバスケチームに入ってるとか言ってたな。
この前部員が何人か辞めたから私にも入部を勧めて来たっけ。
ああ、もう思い出したくないな。

「三女こそこんな朝早くからどうしたんだ?」
「私はチクビの飼育係だから朝ごはんをあげようと・・・」
「よし、私も手伝うぞ三女、いっしょにやろう!!」

ああ、やっぱり言わない方がよかったな。

「いいよ、一人でやるよ・・・」
「二人でやった方が楽だろう?だからさ」
「もういいって、どうせ宮下さんに手伝ってもらったってろくなことにならないし」
「大丈夫だって、今度はちゃんと・・・」
「宮下さん・・・ほんとにうっとうしいよ・・・」
「えっ・・・・・」

私はそういって学校に向かった。宮下さんはしばらくその場に突っ立っていた。
ちょっと、言い過ぎたかな?と考えていたがチクビがお腹を空かして待っている
だろうから足早に学校に向かった。

そして昼休み

「どうしたの宮ちゃん、元気ないよ?」
「・・・うん?・・・ああ、ちょっと朝から具合が悪くてさ」
「保健室にでも行ってきたら?」
「いや、大丈夫だ。心配してくれてありがとう」

宮下さんは朝からずっとこの調子だ。う~ん、やっぱ私のせいなのかな?
謝ったほうがいいのだろうか?でも私は人に謝るのが苦手だ。
そうだ、手紙に謝罪文を書いて彼女の机に入れておくのはどうだろうか?
いや、もっと無理だな・・・・・
助けて、ガチレンジャー!!


そして放課後

結局、彼女に謝罪することなく放課後になってしまった。
彼女は杉崎さん達と先に帰ってしまった。
教室から出るとき、一瞬私の方を見た気がした。

「はあ・・・・・」

溜息をひとつついて私は教室を後にした。

時間が経過していくたびに私は自分のしたことがいかに悪いことだったのか自覚していく。
明日こそちゃんと謝ろう。彼女は自分の好意から私の手伝いをしようとしてくれたのに
私はそれを無碍に断り、彼女を傷つけてしまった。でも、ちゃんと言えるかな・・・

ツルッ

「っ・・・・・・」

しまった、考え事をしてたから階段で足を滑らせてしまった。どうしよ、この落ち方は
かなりまずい気が・・・

目を開けてみると、見慣れない天井が目に入った。何やら薬品の匂いもする。ここは・・・保健室かな?
でも、誰が運んでくれたんだろうか。
起き上がったと同時に腰あたりに痛みが走った。と同時にドアノブが音をたてた。


ガチャッ

「三女・・・目覚めたのか・・・よかったあ・・・」
「・・・・・宮下さん・・・」

そこには、涙目になっている宮下さんが突っ立ていた。
なにも、涙目にならなくてもいいのに。でもそれだけ私のこと心配してくれてたのかな。

「ここまでひとはちゃんを運んでくれたのは宮坂さんなんだよ」
「宮下だっ!!」

栗山っち・・・いたんだ・・・
あれっ、でも宮下さんはたしか

「でも、宮下さん先に帰ったはずじゃ・・・」
「うん?ああ・・・・三女のことがちょっと気になってさ、そしたら階段の踊り場でグッタリしてたからここまで運んだってわけ」
「・・・・・あ、ありがとう///」
「いや、とっ当然のことをしたけだ、ははっ///」

宮下さんの顔が少し紅くなってる気がした。
同時に私の頬も徐々に紅潮していくのがわかった。

「ひとはちゃん、それくらい元気ならもう帰ってもいいよ。もう六時になるし」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、一緒に帰ろうか三女」
「うん」

外に出ると漆黒の闇が空を覆い尽くし、星達が燦然と輝いていた。
クラブ活動をしている生徒もさすがにいなかった。
カラスがまるで私達に帰るのを促すかのように鳴いている。

「あのう、宮下さん・・・・・」
「うん?どうした三女どっか痛むのか?」
「いやっ、その・・・・・」
「?」

喉まで言葉は出掛かってるのになかなか言えない。
たった一言謝るだけなのに・・・
こんなに勇気がいることだとは思わなかった。
私の胸はすごい勢いで音をたてていた。

「朝、ひどい事言ってゴメン・・・せっかく宮下さんが・・・」
「ああ、いいんだよしつこすぎた私がいけなかったんだから。三女が謝る必要はないぞ」
「宮下さん・・・・・」

宮下さんは謝る私を笑顔でそう諭してくれた。
私は今までこんなにも思いやりのある人をずっと拒絶し続けてきたのか。最低だな・・・・・私・・・・・

「ゴメン、今までひどい事言ってきて・・・ホントにゴメン・・・」

気づけば私の目からは涙がこぼれ始めていた・・・・・

「三女?どうしたんだよ、とりあえずあそこの公園で少し休んでいこう」

宮下さんは泣く私を近くの公園のベンチまで誘導してくれた。
空はもう完全に真っ暗で、公園にはいくつかの電灯が点っているだけだ。
せっかくの機会なので前から思ってたことを彼女に聞いてみた。

「宮下さんはどうしてそんなに私と仲良くしてくれるの?」
「なんかさあ、三女ってとても繊細な感じがしてさ、誰かが守ってやらなきゃって感じがしてさそれに・・・///」
「それに?」
「ああ、いや何でもない///」

何やら口ごもる宮下さん。そんな彼女の表情が不覚にもかわいいと思ってしまった。
これが萌えってやつなのかな?
あっ、そういえば

「宮下さん」
「なんだ、三女?」
「これから私のこと・・ひとはって呼んでいいよ・・・///」
「ほんとか?さん、いやっ、ひとは」
「うんっ」
「じゃあ、ひとはそろそろ帰ろうか。家の人も心配してるだろう」
「うん」

それから、私達はどちらからともなく互いに手をつないでいた。
もう秋だけど、心の中は温もりで満たされていてとても幸せな気分だった。
そうだ、彼女にまだ言ってなかったことがある。

「宮下さん」
「なんだひとは」
「こっ、これからよろしく///」
「ああ、こちらこそ」


END