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~ 肝試し(松岡視点) ~

来た!

ついにこのときが来た。さっきお風呂を出てから肝試しの時間になるまでの30分が永遠にも感じられた。

そして班分け、これも霊の仕業か、天才美少女霊媒師の三女さんと組めることになった。今日はきっと幽霊に会える。そんな気がした。

松岡「よ、よろしくね! 三女さん! バックアップは任せて!」

ひとは「え、あ、うん……」

流石三女さん、この幽霊が出るであろう状況でもいつもの冷静さを失わない。私も見習わなければ。

みつば「もう、最悪。なんであんたと一緒になるわけ?」

杉崎「なによ、くじで決めたんだから文句言わないでよ!」

あっちは先頭のみっちゃん、杉ちゃんペア。あの喧嘩で幽霊を追い払わなければ良いのだが。

吉岡「宮ちゃん、よろしくね」

宮下「ああ、任せとけ。幽霊なんて居ないし、脅かしてくる先生も幼稚な真似しかしてこないさ」

幽霊が居ない? 何を寝ぼけたこと言っているのか。寝言は寝て言うから寝言なのだ。

そんな事思っている奴が居ると幽霊が離れていってしまうから困る。しかも2番目だし。

3番目は私たちだ。ちなみに4番目はふたばちゃんと伊藤さん、5番目は緒方さんと加藤さん。それ以降は知らない。

三十路「次は3組ね。先頭のペア早く行きなさい。走ったりコース間違えたりしないように! その5分後に……」

早速みっちゃんと杉ちゃんがスタートした。海江田先生は説明をしているが誰も聞いていない様子だ。もちろん私も聞いてない。

~ 肝試し(杉崎視点) ~

みつば「ちょっと服掴まないでよ!」

気が付いたらみつばの袖を掴んでいた。

杉崎「え、あ、ち、違うのよ! こ、怖くなんて無いのよ!」

恥ずかしい。これは絶対にバレタ。馬鹿にされるだろうと思ったが……

みつば「そんなことじゃなくて、料理の時火傷したの知ってるでしょ! そっちの袖掴まれると服がすれて痛いのよ!」

馬鹿にはしなかった。さっきの言葉にみつばはさらに続ける。

みつば「掴むなら反対の袖にしてってことよ!」

……なんだ、きっとみつばも本当は少し怖いのだろう。掴まないで意地悪しようかと思ったが私が無理だ。恥ずかしいけど掴むことにする。

杉崎「あ、あんたのために掴んであげるんだからね!」

みつば「なによそれ……なら掴まなくたって良いわよ」

私たちはちょっとビクビクしながら、そして私は同時にドキドキしながら進む。

コースは昼間の間に聞いていた。施設の外周を3/4週ほど回るという内容。

暗くなると不気味なものだ。昼間は全然怖いなんて思わなかったのに。

ガサガサっ

みつば&杉崎「!!」

物音がした、何か居る……きっと先生が用意したものだとわかっていても怖がらずには居られない。

いつの間にか袖を掴んでいた手は腕を掴んでいた。

みつば「だ、大丈夫よ、さっさと行くわよ」

返事をせずに、腕を掴んだまま付いていく。

~ 肝試し(宮下視点) ~

肝試しなんて馬鹿馬鹿しい。さっきまでそう思っていたけど、案外怖い。

先に行った杉崎とか泣いてるんじゃないのだろうか?

吉岡「ね、ねぇきっとこの肝試しでいくつかカップルできるよね!」

こいつ……こんな状況でもこんなことしか考えられないのか……

宮下「いや、ねーだろ。男女別れてるしさ」

吉岡「で、でも愛に性別なんて些細なことだよ」><

いや、この状況で言われても、どう反応すれば良いんだよ……

三女とかがペアだったら怖がるだろうから、守ってあげようって気になれるけど、案外吉岡は怖がらない。

というか、別のこと考えてるからだけかもしれないけど。

ん? なんだあれ、風船に目玉が書いてある……先生たちが用意した仕掛けのようだ。

吉岡「きっと、カップルできるよ、私にはわかるよ!」

緊張感ねーな、おい! まぁ別に良いけど。袖とか腕を掴まれる状況を少し予想していたのだが、そんな事全然なかった。

~ 肝試し(ひとは視点) ~

私たちの番になった。正直みっちゃんと一緒が一番良かった。

……もちろん他意はない。消去法での話しだ。……みっちゃんなら少しは頼りにはなるだろうと思う。

ふたばは私以上に怖がりだし、抱きつかれて窒息死なんてこともありえるから困る。

松岡「よし、幽霊探すわよ! 三女さんどこに行けば居ると思う!?」

ひとは「いや、コース決まってるから……」

そして、肝試しという状況から、やっぱり松岡さんが一番ペアになりたくなかった。

松岡「三女さん見て!あそこ、人影が見える!」

ひとは「え、……ってあれ見回りの先生じゃない?」

少し驚いたが、良く見ると他のクラスの先生だった。

松岡「残念ね……」

私は全然残念じゃないけどね。

見回りの先生を通り過ぎて、しばらくすると、

ガサガサ、風で木が揺れる。

松岡「危ないっ三女さん!幽霊の気配がするわ!」

ひとは「え、今のは、っ!」ドンっ

何故か松岡さんに突き飛ばされた。それだけならよかったのだけど……

~ 肝試し(みつば視点) ~

やっと終わった。と、言っても10分程度だったのだけど。意外に怖かった。

みつば「ちょっといつまでくっついてるのよ! 恥ずかしいじゃない!」

腕を掴んでる杉崎に言う。

杉崎「え、あ、ごめん」

あわてて離れる杉崎。まぁ私もそこそこ怖かったし、恥ずかしいしで掴んでいたことは余り言及しないことにした。

しばらくすると、宮下と吉岡が来た。なんだか宮下は呆れ顔、吉岡は楽しそうに話してる。

するとすぐに松岡が来た。5分あけたはずなのにやけに早い。というかひとはがいない。

すぐに私たちを見つけるとこっちに来る。

松岡「はぁはぁ、あ、あのね、三女さんが、はぁ、消えちゃったの!」

…………え?

何がなんだかわからないで居ると隣に居た宮下が聞く。

宮下「ど、どういうことだよ?消えたってどこかではぐれちゃったのか?」

松岡「わからない……途中で幽霊の気配がして三女さんを守ろうとして、押し飛ばしたんだけど少したって三女さんのほうを確認すると……」

みつば「ちょっと待って押し飛ばしたって何よ!」

私は声を荒らげて言う。状況がまだはっきりと把握できない。

松岡「え、だって幽霊っぽい何かがいた気がしたから、三女さんが危ないと思って……」

……ああ、きっと真剣に話してるんだろうけど、ダメだ。とりあえずその後居なくなったって事はなんとなくわかった……

考えても仕方が無い。探しに行くのが一番だ。

みつば「杉崎、ライト借りるわよ!あんたは待ってなさい!」杉崎「え、ちょ、あっ!」

ライトを渡していた杉崎からライトを奪い取ると、私は肝試しのコースを逆走した。

松岡「まって、私も行く!」

~ 行方不明(吉岡視点) ~

矢部っち「ちょっと! あの二人どこいったの!」

矢部っちが言う。

吉岡「えっと、えっと、三女さんが途中で居なくなったって聞いて、多分探しにいったんだと思う」

私は今の状況に動揺しながら答える。

矢部っち「ええ! ひとはちゃんは今道の途中に居る見回りの先生二人が探してるはずなんだけど……」

どうやら、三女さんが居なくなってることは先生たちにも伝わっているみたいだ。

たしか、海江田先生が途中二人先生が待機してるって言ってたし、一人で走ってきた松岡さんを見て、そう判断したのだろう。

矢部っち「これ以上生徒に何か起きたら大変だよ……君たちは栗山先生と一緒に居なさい」

矢部っちもさっちゃん達を追いかけていってしまった。

宮下「……私達どうする?」

杉崎「どうするもこうも……心配だけど……私達が探しにいっても、さらに混乱させるだけじゃない?」

私もそう思う。ここはさっちゃんとみっちゃん、それと先生達を信じるしかないと思う。

吉岡「私も杉ちゃんの意見に賛成かな……ライトも宮ちゃんの一個だけだしあまり役に立てないと思うよ」

宮下「だよな……」

私達は、心配だけどここで待つのが最善と判断した。

~ 行方不明(ひとは視点) ~

……あれ……ここどこだろう? 気を失っていたみたいだ。

真っ暗で地面は……落ち葉や草が生えてる。見渡す限り闇だが視覚以外からの情報を頼りにして、なんとなく林の中なのがわかった。

立ち上がろうとして、足に痛みを感じる。

ひとは「痛っ!」

とりあえず、立ち上がらずに一度状況を整理する。確か肝試しを松岡さんとしていて、それで途中で松岡さんが幽霊とか騒いで……

そのあと確か、……突き飛ばされたんだ。

周りをもう一度見渡すと、目が慣れてきたのか後ろのほうが上りの斜面になっていることに気が付く。

きっと上から落ちたんだ。落ちる恐怖で気を失ったのだろう。足は落ちた時に捻ったのかも。

今度は、捻ったほうの足を使わないように立ち上がる。歩くことは出来そうだけど、ここを上るのは無理だろう。

懐中電灯も松岡さんが持っていたから私は持っていない。前だけでなく足元すら良く見えないのは非常に困る。

そういえば松岡さんはどうしたのだろう? 私がここにまだ残されているって事は、落ちたことに気が付いてなかったのだろうか。

状況が徐々に飲み込めてきて冷静になると同時に不安が心を侵食する。

どれだけ気絶していたのだろう? もう何時間も見つけられて居ないのではないか? マイナスの思考に呑まれそうになる。

しかも真っ暗だ、怖い。だれもそばに居ない……

ひとは「だれか、誰かいないの!」

孤独と不安に耐え切れなくなり、誰かを求める声を発する。

林の中では虫が鳴き、私の小さな声ではこの斜面のすぐ上までしか届いていないだろう。

私はいつまでここに居なきゃいけないの?

「……は…………ひと…………ひとは!」

かすかに声が聞こえてきた。私の呼ぶ声のようだ。

その声は近づいてきている。そして、それは私の良く知った者の声だった。

「ひとは! どこに居るの! 聞こえる? 聞こえたら返事をしなさい!」

みっちゃんだ! 上に光も見えた。私はすぐに声を上げた。

ひとは「みっちゃん! ここだよ! みっちゃん!」

思った以上に声は出なかった、けど……

みつば「ひとは? ……そこにいるの? ひとは!」

届いた! 私はもう一度声を上げる。

ひとは「ここだよ! みっちゃん!」

目に光が当たった。

~ 行方不明(みつば視点) ~

ひとはを見つけることが出来た。後ろから追ってきていた松岡も私に追いついた。

松岡「みっちゃん、三女さんいたの?」

おそらくひとはを突き落とした本人。だけどふざけてた訳じゃなく、彼女なりにひとはに協力したかったのだろう。

いつもの私と同じ……空回りしているだけなのだ。同じだからわかる。松岡は反省してるし後悔してる。

実際、怒るべきなのかもしれないが、自分の姿と重ねてしまい、怒りは湧いてこなかった。それよりも……

みつば「この下に居るわ。降りるから松岡はここで待ってて!」

ここで争うよりひとはを助けるほうが先決だ。

松岡「え、降りるって流石に危ないって! 昼間見たときも結構急だったし……」

無視して降りる準備をする。

ひとは「みっちゃん? ……降りようとしてない? あぶないよ! 松岡さん止めて!」

下からひとはが言うがそんな事知らない。松岡が私に近づくが止められる前に私は足を踏み出した。

松岡「ちょっと、みっちゃん!」

私はこの斜面を立ちながら降りていくつもりだったが……

みつば「あっ!」ガサガサガサっ

二歩目にして滑った。これだけ暗いのだから立って降りるのは初めから無理な話だった。

ひとは「ちょ、み、みっちゃん! 大丈夫?」

ひとはの声が近くで聞こえる。私は全身にちょっとした傷がいくつか出来ていたが後回しだ。

ひとは「み……!」

私はひとはを抱きしめていた。本当に無事でよかった。

みつば「……心配させるんじゃないわよ。あんたが居なきゃ私やふたばなんて何にも出来やしないんだから!」

偽りのない言葉。いつもの私の口から絶対に出ないような台詞だった。

ひとは「ご、ごめん。みっちゃん」

戸惑いながらもひとはは答えてくれた。

松岡「ちょっと、みっちゃん大丈夫? 先生呼んでくるからもう少し待ってて!」

松岡の言葉で我に返る。そうだ、私が降りてきただけじゃ解決しない。ここを上らないといけない。

みつば「ありがと! ロープとかあったら持ってきなさい!」

松岡が、走って行った音が聞こえた。返事はなかったが聞こえては居ただろう。

今になってまだ抱きついてることに気が付いて離れる。恥ずかしいことをしてしまった……。

ひとは「……なんで降りてきたの? こんな斜面降りようとしたらどうなるか……わかる……でしょ……」

みつば「うっさいわ…ね? ……ひとは?」

ひとはは、泣いていた。どこか痛いのだろうか?

みつば「ちょっと大丈夫? 痛いところあるの! あるなら見せなさい!」

ひとはは首を横に振る。そしてひとはが口をあける。

ひとは「……安心、したから。……不安だった。……私いつからここに居て、いつまでここに一人で居なくちゃダメなのかって思って……」

ひとはがさらに続ける

ひとは「誰も……誰も助けになんて、来ないんじゃないかって……」

みつば「本当、あんたはバカね……」

不安と闇に押しつぶされそうになっていたのだろう。しっかり者って言ってもまだ私と同じ小学6年生だ。私はもう一度優しく抱き寄せた。

ひとは「ありがとう……みっちゃん……」

今度はひとはも私に抱きついてくれた。