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「んんっ…!―――っんく!!」

カーテンから漏れる陽光が、少しだけ部屋を照らす。
その仄暗い
部屋の主が寝ている隣で。丸井ひとはは一人、果てる。


――――――――――――――
休日の朝。
ひとはは歩く。この時間に向かう部屋の主は起きてなどいない。話すこともできない。だが、それで構わない。
朝早く行けば、寝顔を見ることができる。その顔は誰にも見ることができない、ひとはだけの特権だ。
静かに合鍵を使って入り、眺めることになる良く寝入っている顔。
その顔を思い浮かべ、それだけでない自分の目的に背徳感を覚えながら、ひとはは歩みを進めるのだった。

――――――――――――――
静かに入る、主の寝静まった部屋。微かに鼻につく、昨夜に放たれたであろう男の臭いに嘆息が漏れる。
散乱する主のお相手を見つめては、ひとはは自分の胸に手をあて、さらにため息をつく。
自らの姉のそれを思い浮かべては少しだけ希望を募らせてはいるが、分かったものではない。
若干の悲しみを浮かべながら、それでもひとはは部屋の主、矢部に顔を向ける。

寝顔。誰に向けられた顔でもなく、無防備に晒されているその顔はだらしがなく、そして愛おしい。
それはひとはだけが見る顔だからだ。他の人の知らない顔。それだけで特別になる。

初めは見ているだけだった。そしていつも思いを馳せていた。
募らせた気持ちは、ひとはに矢部を求めさせる。
近づきたい、触れてみたいと思っていた感情は、そのまま行動を推し進め、幾度となくひとはを蹂躙する。
今日も、変わらずに。

そっと矢部の顔に手をつける。今までに何度もしているが、最初のこの時だけは矢部が起きるのではないかと緊張が走る。
いつも無駄になる心配ではあるのだが。
どうせ跨ったところで起きなかったのである。熟睡している矢部がこの程度で起きようはずも無い。
顔を触れたことで、矢部が起きないことを確認したひとはは、布団を足元から軽くめくる。
目的を見つけたひとはは、一度、こくんと喉を鳴らす。
軽く、触れる。
少しずつ、少しずつ矢部を感じながら、ひとはは自分に手をあてる。
この行為を考えながら歩いてきた体だ。既に湿り気が充満している。
若干の恥じらいを感じつつも、それでもひとはは止めない。
衣擦れと水音だけが響く部屋。自宅では決して出すことの無いその音色をさらに早めるひとは。
姉に聞かれることを許さないその声は、ここでなら聞かれても構わなかった。
ひょっとして起きているのではないだろうか。聞かれているのではないだろうか。
それならそれで構わない。乱れたひとはを、余計に乱れさせるだけにしかならない。
抑えるものなど何も無い。矢部への想いが自分を蹂躙する。
そして何より目の前に、ひとはだけの寝顔。静かな喜びがひとはに押し寄せる。
それに逆らうことなく。

「んんっ……んくっ!」

男の部屋で、絶頂を迎えた。


――――――――――――――

――――――――――――――
ひとはは矢部の寝顔を見るたびに思っていた。
この人に自分ができることは、と。
ひとはは自分が矢部に様々な喜びを貰ったと思っている。
動物を飼うこと、不可能を可能にすること、褒められること、友達がいること。
5年生までに貰えなかった様々なものを矢部に貰ったと思っている。
ひとは自身の努力もあったのだが、それでも全ては6年生になってからなのだ。
だからこそ、この人にこれからもずっと教えてもらいたい、居てほしいと願う。
そして逆もなのだ。自分が矢部にあげられるもの。渡せるものを考える。
人生経験が上である矢部が絶対に知らないもの。そしてひとはができること。
それを考え、ふと自分の趣味の本たちに目を向ける。
簡単な答えだった。

女だ。

――――――――――――――
ひとはは矢部に顔を向ける。ひとはも男を知らない。それも矢部に教えて貰いたい。
同時に、女を教えたい。
もうずっと前に決めたことだ。それでも矢部は気持ちだけで嬉しいというだろう。
先生なんだから教えるのは当たり前だと言うだろう。だが、ひとはにとってはそうではない。
6年生になるまでに当たり前に浴せなかった。当たり前をくれたのは矢部だけなのだ。
それだけがひとはの事実だった。ひとはにとって矢部は特別なのだ。
だからこそ、矢部の特別を欲しがる。特別になりたいと願う。
けれど、自分に受け入れられる下地がない。受け入れられるだけの余裕がない。
だから湿らせる。慣れさせる。矢部の男を手に取り、何度も何度もそれの形で自らを蹂躙する。
それを繰り返してきたひとはは、もう、後戻りなどする気はなかった。

「先生、私はもう、我慢しません」

ひとはは矢部に跨る。刺激を与え、充分に屹立した矢部を、自らに押し当てる。
矢部自身にして貰いたいとは思っていた。しかし、きっとそれでは相手にしてくれないのだ。
矢部に、ひとはを女だと認識させたい。生徒の女の子では全く足りない。
ひとはは、何よりも感覚的な方法で自分の女を主張した。

「っっっ―――!!」

何度も想像した。何度も刺激した。何度も蹂躙した。それでも、それでも痛い。余裕がない。
自らを湿らせていた雫は赤く変わり、それが知らせる激痛はひとはの行為を中断させようとする。
けれど自らの思い、行為を無駄になどできない。ひとはは自身の重みを矢部に任せる。
文字通り身が千切れる痛みに、ひとははそれでも声を抑える。
まだだ、まだ、起こすタイミングではないのだ。痛みに自分を見失いそうになる。
それでも矢部を知りたかった。ひとはを知ってほしかった。
痛みで動けないことを知れば、矢部は行為を絶対に許さない。
それぐらいは分かっている。けれど。それでも。矢部に語りかけてもらいたかった。
自分を知って、どう思ったかを教えて欲しかった。だから、ひとはは、矢部に、顔を、向ける。

「…どういう状況なのこれ」

さすがに目覚めていた。意外と冷静である。
というよりも、目覚めたら自分の教え子が一糸纏わぬ姿で跨っているという状況に、混乱を通り越しているだけだが。

「わ、たしをっ、あげてっ、ます…!」

本当に苦しそうな声をあげるひとは。もっとも、矢部には意味が分からない。そしてそろそろ彼の混乱が増す。

「どうしてそんなことしてるの!?」
「先生が、好きっ、だか、ら」

簡単なことだ。こんなことをする理由など一つしかない。
しかし、彼にとっては理解の範疇を超えている。

「ひ、ひとはちゃん!?!?」
「そ、そう、お願い、です、もっと、呼んでくださ、い、痛いから…っ!」

矢部は、この状況をやっと整理しようとする。
ひとはは自分を好きだという。全裸。明らかに違和感のある自分の股座。そして何より、痛いという言葉。
もしかしても何も無い。これは彼が経験したことのない、女だった。

「な、なんで、してるかっと、とか、後で、いい、ます。いまは、私を、知っ、て、ください」
「ひとはちゃん…」

そうは言われても容認など出来るものではない。彼には彼の矜持がある。だがそれも。

「受け止、めて、ください」
「えぇ、でも痛そうだよ、それにこんなことは」
「いや、です」
「…わ、わかったよ」

いつものように、絶対にひとはには敵わないのだ。
目覚めたら跨られていた。絶対に矢部は悪く無い。けれどそんなことは関係ない。
ここまでするひとはの好きという気持ちを疑う気にはなれなかった。
痛そうで辛そうで、それでも自分にその気持ちを伝え、名前を呼んで欲しいと、知って欲しいというひとは。
彼女の真剣な気持ちなのだろうとある程度察した矢部は、抵抗は無駄だと悟る。
ただ、他人事のように天井を仰ぎ見た。自分の部屋がまるで違う空間に感じる。
しかし、自分の上で苦しそうにしている女の子がいるのは事実なのだ。
だから、ひとはを気遣うことにした。

「大丈夫かな…?」
「き、ついです。それより、どうですか、先生、童貞じゃ、なくなった気持ちは」

ひとはは少し楽になってきているようだ。それでも勿論苦しそうなのだが。
そして矢部はこう言われて初めて、自分が女を知ったことを自覚する。
今まで自分が知らなかったもの。それを知った気持ち。そこに意識が集中する。
温かく、自身を全て鷲掴みにされている。それなのに、痛いなどとは思わない。
自身が引きずられる感覚を覚えるが、それさえも気持ちがよい。

「あ…すごく、気持ちいい、かな」
「は、い。せんせ」

告げるひとはは矢部に倒れる。そうすることで痛みを和らげるように。
自分を感じてもらうように。何より矢部に、抱かれるために。

「抱きしめてください」
「え…こ、こうかな」

まるで飴細工を触るかのように、ただ軽く腕を回す矢部。分からないから。相手を壊れ物のように思っているから。

「ちが、違います。もっと、ぎゅっと」

矢部は求められるまま、腕にこめる力を強くする。触れていただけのものが、確かなものになる。
ひとはが自分に抱かれている。いつも自分の傍にいる女の子が、自分を求めている。その現実が自分をかき乱す。
ただ跨られるだけだった事実は、女を抱いている自分を意識させる。
腕の中にいる女が現実だと囁く。

「動かし、ます」

腕を解き、座ったままの姿へ。
それに痛みを顔に浮かべるひとは。それでもひとはは止めない。止めようとも思わない。
自分の女を知ってもらいたい。ただいつも傍にいるだけの女の子ではない。貴方の女なんだと伝えたい。
消し飛びそうな意識を矢部に引き止められながら、ひとはは腰を揺らす。

「ん、あぁぁぁっ、い、あ、あ」
「っ、ひ、ひとはちゃ」

ひとはに引きずり込まれる矢部。経験のなかった女に、自分の意識が剥ぎ取られそうになる。
それでも跨り、苦痛を表しながらも自分を放さないひとはに、食らいつく。

「はい、せんせ、んあっ、く、あぁぁっ」

ひとはの細い体が揺れる。赤い証が矢部を染める。苦渋の顔に、他の感情が混ざり始める。
痛みと共に、喜びがひとはを駆け抜ける。その喜びが矢部を離さない。
矢部がいつも見ている、良く知るひとは。それなのに、今のひとはは同じ顔ではない。
自分を昂ぶらせる女の顔。口の中に涎が満ちる。喉が鳴る。矢部はもう、どうしようもないほどひとはに引きずられていた。
それはそのまま、行為への集中を促す。
ひとはの裸体。ひとはの喘ぎ。ひとはの揺れ。何よりも、ひとはとの繋がり。
味わったことの無いひとはの味は、どんな慰めよりも心地よかった。

「ひとはちゃ、きもちっ、いい」

名を呼ばれる度に、心を握られるひとは。自分はこの人のものなのだと、そう感じる。相手にも感じて欲しいから、返す。

「せ、んせっ、せんせっ!んあんっ!んっ!」
「ひとはちゃんっ!」

お互いを呼ぶ。そうすることで更に互いを求める。互いの繋がりを感じる。
ひとはは、全てを渡そうとし。矢部は今、ひとはを感じることに全力を尽くす。
カーテンより零れる光だけが二人を照らす。二人の繋がりを煌かせる。
誰も受け入れたことの無かったひとはが、矢部を優しく包み込む。
そして二人は、恍惚を迎える。

「あ、っくよ、ひとはちゃ、そこ、離れて!」
「いい、ですっ!全部、全部知ってほしいから!知りたいから!くださいっ!」
「え、だめだ、よ!うあ、動くと、でちゃう、からっ!」
「やっ、ですっ!!」
「っくあっ、っく!!」
「あぁぁっ、んぅっ!!」

「はっ、はぁっ、うあっ、あ、あっ」
「うくっ、で、たっ」

ひとはは矢部に倒れ掛かる。鈍る痛みを離さないように。貰ったものを零さないように。
それを矢部は抱きとめる。知った女を捕まえたというように。

二人の息だけが支配する部屋。二人だけが開けることのできる部屋。
他の誰も入らないその部屋で。
まるで今から初めて愛し合うかの如く、二人は口付けを交わした。