ダメだ。これ以上は……。
緊張で身体が震える。
これ以上近づいたら、心臓が止まるかもしれないよっ。
それでも私は近づいていき、そして……。
優しく、唇を重ねた。
数秒間、密着した後……また、ゆっくりと離す。
「……」
……な、なんだろう。この終わった後の気恥ずかしさは。
顔が熱くなっていくのを感じた。
思わず袖で唇を拭う。
恋人同士はいつもこんな事をやってるのだろうか?
他人と唇なんか重ね合わせるなんて不愉快極まりない。これこそ正に無意味だし不必要だよ。
そんな心情とは裏腹に私はまた唇を重ねる。
「んっ……」
いつ起きるかと思うと、興奮と羞恥で二重にドキドキした。
「ぅむっ……くぅっ」
先生の堅く閉じた口を舐めるようにキスをする。
「……んんっ、これじゃ……本当の、んっ、変態だよ……」
だけど頭では解っているのに、止まらない。
次第に私のアソコがムズムズしてきた。
片方の手で、パンツの上からアソコを触ってみる。なぞるように、指先を這わせ、指を窪みに埋める。
湿ったような感触が指先に伝わってきた。
「……っはぁ、はぁ……。これ……」
ひょっとして……これ、濡れるってやつじゃ?
「こ、これは汗だよ、きっと」
自分に言い聞かせる。
歯止めが利かなくなった私は、矢部先生の下半身のある一点に目がいった。
「……」
心臓の音は既にうるさいくらい鳴っていた。
「先生、起きないと見ちゃいますよー……?」
「……」
当然、返事はない。
「い、いいんですね……?」
震える指でズボンのチャックを開ける。
トランクスのボタンを外すと、見覚えのある先生の息子が現れた。
こ、これに刺激を加えると大きくなるみたいだが……どうやったらいいのだろう?
少し悩んだ後、とりあえず握ってみることにした。
力を入れてみたり抜いたりしてみるが、変化はない。
先の割れている部分を指先でなぞってみる。
「んっ……」
ピクン。
あ、少し堅くなってきた。
私は皮を剥いて、そのまま、窪みの辺りを指でなぞってみた。
「くっ、はぁ……っ」
矢部先生が苦しそうに呻いている。
いじっていくと、矢部先生の息子はみるみる大きくなってきた。
「えっ、えっ……?」
こ、こんなに大きくなるんだ……。
それには最初の小学四年生とまで称された面影はなく、この前、お風呂場で見たパパのよりも大きくなっていた。
へ、変態だよっ、変態っ……。
そう思いながらも、持ちやすくなったソレを上下にしごいてみる。
あ、こっちの方がやりやすいかも。
しばらく擦ってみると、また膨張していく。
でも、これ……腕が疲れる。
擦るのを止めて、私はまた指先で、いじってみた。
反り返り、見えやすくなった裏側の筋を指でなぞる。
「うっ」
先生がわずかに反応する。
「先生……気持ちいいんですか?」
筋の先の方をコリコリといじってみた。
「ぅんっ」
ピク、ピクと先生の身体が動く。
こんな事で反応するなんて
「本当に変態教師ですね」
一方的にそう言ってから、私は立ち上がって、染みの出来たパンツを脱いだ。
「先生……、先生が悪いんですよ。いつまでも起きないから……」
私は、先生を跨ごして立った。
……ここに、先生の……を入れるんだよね……?
確か、何かの雑誌に“それが恋人が行う愛情表現の最高峰だ”って書いてあった。
「……」
ゴクリ。また息を呑む。
私は覚悟を決め、指でアソコを開いて、徐々に腰を沈めていった。
チョン、と先端の方がアソコに触れた。
(や、やっぱり、ダメ……こ、怖い……)
未開の恐怖に私は動きを止める。
で、でも……。
「先生……」
先生は、間抜けな顔で眠っている。
本当に、この先生は……。
私に、飛び箱をさせたり、水泳をさせたり、友達を作らせたり……家に上がるのも認めてくれたり、机の下に潜るのだって……。
それから……。
なんでもバスケットの時も……。
まったく、いつも余計な事ばかりする……嫌いだよ、こんな先生なんて。
私は顔を背けながら、ゆっくり腰を沈めていった。
アソコが広がっていき、温かいモノが中に入っていく感触が伝わる。
「あっ、あっ……」
痛いっ……。
ミチミチ、と中へ侵入していく異物を、私は涙目で受け入れた。
「こんなっ……あっ、んっ、嫌いだよっ、こんな先生……なんてっ……」
なのに……。
「嫌い、なのにっ……んぅ?!」
メリメリ。とてつもない痛みが走り始める。
「っ~~~~!!?」
無理!これ以上先になんていけるわけない!!
そう思った時……。
「ひ、ひとはちゃん……?」
矢部先生が目を覚ましていた。
先生は状況が整理できないのか、固まっている。
「せ、先生……」
次の言葉を続けようとしたが、遮るように先生が口を開いた。
「ちょっ……?な、何やってるの?!ひとはちゃん!!」
やっと状況が整理出来たのか、先生が叫ぶ。
「……この前授業でやった保健体育の復習ですが?何か?」
「何か、じゃないよ!と、とにかく、今すぐ離れて!」
「どうですか?教え子で童貞卒業している気分は?」
「いいから離れて!」
「……嫌です」
「え?」
「嫌です」
「な、なんで?」
「先生の初めてが、こんなのでいいんですか?」
「そ、そういう問題じゃ……」
「大丈夫です、私に全てを任せて……」
そう言って行為を続けようとした時、矢部先生は私の脇を掴んで、無理矢理離した。
呆気にとられている私は先生の横に座らせられる。
はぁ、と溜め息をついてから先生は私に聞いてきた。
「なんで、こんな事したの?」
「起きなかったからです」
と私は答えておく。
「あのねぇ」と言いかけて先生は、息子が露出している事に気づいて息子を直した後、また溜め息をついた。
「あのね、こういう事は本当に好きな人とじゃなきゃしちゃいけないんだよ?」
「そうなんですか?」
わざとらしく、私は惚けてみせた。
「そうだよ。だから、こういう事はもう少し大人になってから……」
そして、先生が話している途中で我慢ができなくなった私は口を開く。
「じゃあ、やっていいんですね」
「…………え?」
「本当に好きな人となら、やってもいいんですよね?」
「え?あ、あれ……?」
先生は動揺していた。
それはそうだろう。小学生から真面目な告白なんて、可笑し過ぎて笑えないよ。
それでも、私は真っ直ぐ先生を見て。
「私は」
言葉を、強く……押し出した。
「矢部先生が好きです」
「いや、ひとはちゃ……」
「本当に好きです」
涙が一粒、零れた。
「大好きです」
それから、後を追うように、涙はどんどん零れていった。
先生は無言になる。
私は目を堅く瞑って、返事を待った。
いいよ。言いたい事は言ったんだ。どんな言葉でも受けるよ。
長い沈黙が続く。
テレビからは馬鹿みたいに笑う声が、その場の空気を必死に取り繕うように流れていた。
外からは犬が鳴く声がする。
…………不意に、先生は正座に座り直し、口を開いた。
「ごめんね……」
優しく諭すように、その言葉は私の心を打ち砕く。
……わかっていた。わかっていたことだよ……。職業に対しては真面目な先生だよ。教え子に、まして、小学生になんて……。
「なんで……」
それでも……。
「……」
「なんで、ですか……」
それでも納得できないことだってある。
「……」
先生は答えない。
「先生は私が嫌いなんですね……」
「そ、そんな事ないよ。……大好きだよ。ひとはちゃんは、最初に僕と仲良くなってくれた、大事な生徒だから」
「じゃあ……!」
「でも!」
言いかけた私を、先生は声を荒げて止める。
「でも……ひとはちゃんはまだ小学生だよ。これから、色んな人に出会うと思う。それなのに、こんな所で……それも、僕なんかで、自分の将来を潰さないで欲しいんだ」
矢部先生の声は、私から見ても辛そうで、途端に“あぁ、私は今先生を苦しめているのか”という事に気づく。
「先生……わかりました」
納得したように声を出す。
「ひとはちゃん……」
けれど、自分で思ったよりも、私の声は震えていて……。
「でも……学校では今まで通り、接してくださいね」
「う、うん。わかった」
本当に、嫌になる。こんな不必要な感情を私が持つなんて……。
俯いた私を先生は撫でてくれた。
その手は大きくて、私は堪えられずまた泣いてしまう。
――そして、それからの私の小学校生活は、消化試合のようなものだった。
最終更新:2011年04月04日 23:03