「吉岡、後は俺がやっとくから」
放課後、掃除当番になっていた私は、同じく掃除当番になっていた佐藤くんにそう言われて焦った。
「い、いやっ。大丈夫だよっ」
他の人達は用事があるらしく、みんな帰ってしまい、今教室の中には私と佐藤くんだけだ。
正直、気まずいけど……。
私はまだ半分しか消し終わってない黒板を見る……。
今日は、海江田先生が授業中嫌という程書いていたので、中々消し終わらない。
だから、教室全体の掃除をしている佐藤くんに、黒板消しまで押し付けるのは余りに忍びなかった。
(はぁ……腕、疲れちゃった……)
先生、筆圧も強いみたいだから中々消えないよぉ~。
そう思って、休んでいた時、佐藤くんが黒板消しを私から取って、消し始めた。
「女子には大変だろ?いいよ。後はやっとくから」
(さ、佐藤くん、顔近……)
いきなり現れたその横顔に思わずドキッとする。
(間近で見ると……やっぱり佐藤くんってかっこいいんだなぁ……)
不意に、私がふたばちゃんに間違えられた時の事が思い出された。
(そういえば、なんであの時……)
気付いたときには、私は佐藤くんを呼んでいた
「佐藤、くん……?」
「なんだ?吉岡……」
一歩、佐藤くんに近付いた時、足元の段差に引っ掛かった。
「きゃあっ!?」
「え……うわっ!?」
勢いよく私は佐藤くんに倒れ込んだ。
「いたたっ……きゃっ?!」
佐藤くんの顔が、私の胸に押し付けられていた。
「な、なんだ?前が見えないぞっ!?」
ガララ。
「よし!最後に佐藤くんのリコーダーがあるか確認して、本日のSSS隊の活動は終りょ……」
突然、教室のドアが開く。
ドサッ。
開くなり、緒方さんが倒れた。
(えぇぇぇぇぇ?!なんで緒方さん倒れるの?!)
「お、おがちんっ!」
「な、なんだ?今、なんか緒方達の声が……」
「吉岡さん、だよね?ちょっと私についてきてもらえるかな?」
「おがちーん」
はわわわわっ、なんか誤解が大きくなってるっ。
「ち、違うの!?こ、これは……」
私はようやく立ち上がる。
「ぷはっ、やっと前が……」
「わ……私、佐藤くんのことなんとも思ってないし、佐藤くんの気持ちは嬉しいけど……ご、ごめんなさい!!」
「あぁ!?」
私の言葉を聞いて、佐藤くんは真っ白になる……ごめんね、佐藤くん。
「俺、またフラレたの?なんで?」
真っ白になった佐藤くんが呟く。
夕方の教室には四人の賑やかな声が響いていた。
~おわり~
最終更新:2011年04月08日 22:32