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~ 悪戯(杉崎視点) ~

一限目と二限目の間の休み時間。

朝はみつばが来るのが遅かったし、宮下もいなかったので用意してきた友チョコ――――1個千円する高級チョコよ!――――
を皆に食べてもらうことができなかったが、今は全員いるみたいだ。

声を掛けて皆を集めようかと思っていると――

みつば「杉崎ー、あんたチョコ持ってきてるわよね! 私に献上しなさい!」

――みつばのほうから催促しに来た。
なんて図々しい奴だろう。
……まぁ、対みつば悪戯用チョコレートがあるし今回は目をつぶっておこう。

吉岡「杉ちゃん、今年もチョコ持ってきたの?」

私がみつばに言葉を返す前に吉岡がやつれた宮下をつれて私のところまで来た。
なぜ宮下がやつれているのか……敢えて聞かないことにする。

杉崎「ええ、もちろん持ってきたわよ。皆で食べましょう」

そういってチョコレートの入った箱を取り出し、蓋を開け机の上に置いた。

みつば「さすがね、変体金持ち女!」

早速手を伸ばす雌豚。だけどコレはみつばのためのものじゃない。
さっきも言ったように対みつば用チョコレートを用意したのだ。
それを食べてもらわないと話にならない。
杉崎「コレは、あんたのじゃないわ!」<バシッ>

みつばの手を叩きチョコの強奪を阻止する。

みつば「さ、さっきのは、嘘。変体“お”金持ち女」

宮下「たいして変わってないぞ……」

みつばの発言に徐々にイライラしつつも、作戦実行のため今は我慢しておく。

杉崎「そうじゃなくて、あんたにはこっちを食べてもらうわ」

そう言って私は、バックの中から大き目の箱を取り出しみつばに渡す。

みつば「な、なによこれ?」

怪訝な顔をこちらに向け聞いてくる。あからさまに怪しまれているわね。
うまい誤魔化し方が浮かばないのでとりあえず大事な部分だけ隠して事実を言っておく。

杉崎「なにって、あんた用のチョコレートよ!」

みつば「……え?」

宮下「お、おい杉崎それって……」

あれ? 何だか空気が変わった。

杉崎「え? なに? 私へんなこと言った?」

私の問いには答えず皆別々の反応を見せる。

吉岡は悶え、宮下はありえないものを見るような目で私を見る。
そして、みつばは真っ赤な顔で箱を眺めている。

私は言った内容を思い出そうと思っているとみつばが口を開いた。

みつば「と、と、とりあえず、あけるわよ!」

そう言いながら箱に手を伸ばして――

<パーン!>

みつば「――っ!」

渇いた破裂音と共にみつばが後ろにこけて尻餅をつく。

対みつばびっくり箱作戦は見事成功!

何だか混乱していた様だったけど……まぁ作戦は成功したし結果オーライって事で。
<ピロリロリン♪ ピロリロリン♪ ピロリロリン♪>

すぐさま携帯を取り出し、捲れあがったスカートの中を映すために連続でシャッターを切る。

ここで注意しなければいけないのは、子供パンツのズーム写真を撮ることはもちろん、
みつばの驚いている顔を撮ること、またその全体像を撮るこ――

みつば「な、何なのよ……っ! ちょっと何撮ってんのよ!」

<ピロリロリン♪>

もちろん、今の子供パンツを隠すためにスカートを押さえて、真っ赤な顔をしているところも逃してはいけない。

吉岡「ああ! 杉ちゃんが千葉くんとの三角関係を有利に進めるためにみっちゃんの弱みを――」><

宮下「いや、どう考えても違うだろ……」

さらにもう一枚写真を撮ろうとした時、みつばが立ち上がった。

みつば「いいかげんに……って、チョコ入ってるじゃない!」

怒りを爆発させるのかと思ったが、びっくり箱の中のチョコに気がついたようだ。

杉崎「せっかくだし入れておいてあげたわ。高級チョコを溶かして雌豚の型を取ったチョコよ、有難く頂きなさい」

私は満面の笑みで、かつ威圧的な態度で言う。みつばのことだ、チョコが食べたくて食べたくてどうしようもないだろう。
こんな嫌がらせをしても食べてくれるだろうと言う算段だ。どんな顔をして食べてくれるのか楽しみで仕方が無い。
まぁ、食べないなら食べないでも構わない……少し残念ではあるけど……作戦自体は成功したわけだし。

それに、うまくみつばの注意がチョコに向いたおかげで携帯を奪われることもないのだ。

みつば「くっ……わざわざ雌豚型にするなんて……」

文句を出しているが、涎も出している。さぁ、何て言って食べるの?
~ 嫉妬(ひとは視点) ~

杉崎「なにって、あんた用のチョコレートよ!」

!?

ちょ、え? なに???
何がどうなっていきなりそんな展開に?

急な出来事で状況がうまく理解できない。

さっきまで遠目で見ていたが、杉ちゃんが友チョコを皆に上げようとしていただけのはずだった。
それが一転してこの状況。意味不明だ。

みつば「と、と、とりあえず、あけるわよ!」

動揺しすぎ……って言うか、受け取っちゃうの?
受け取るって事は……あれだよね、両思――

<パーン!>

――……混乱してるところにこの破裂音は心臓に悪い。
だけど、何とか状況が理解できた。

<ピロリロリン♪ ピロリロリン♪ ピロリロリン♪>

杉ちゃんが尻餅をついたみっちゃんを激写……つまり、悪戯ってこと。

ひとは「はぁー」

安心した。……何に?

そんなことより、朝、寝坊したおかげで忘れていたがみっちゃんに上げるチョコを持ってきていない。
渡すとしたら帰ってからってことになる。
結局どうやって渡すか決まらなかったし、今のうちにシミュレーションしておくのもいいだろう。

えっと――

みつば「いいかげんに……って、チョコ入ってるじゃない!」

杉崎「せっかくだし入れておいてあげたわ。高級チョコを溶かして雌豚の型を取ったチョコよ、有難く頂きなさい」

みつば「くっ……わざわざ雌豚型にするなんて……」

――とりあえずシミュレーションは後回しだね。

……杉ちゃんそれって一応手作りチョコって事だけど気がついてる?
みっちゃんも馬鹿だから理解出来てないみたいだけど……。

みつば「し、仕方が無いわね、貰ってあげるわ!」

杉崎「え? 何その上からの態度。上げないわよ?」

杉ちゃん随分楽しそうだ。手作りって自覚がないとあそこまで自然に振舞えてしまうのか。
みっちゃんもみっちゃんだ。何普通に貰おうとしてるの? こういう時こそプライドってものをもう少しもって欲しい。

……そこまで考えてから気がついた。今日遅刻しそうだったから朝御飯食べてないんだ。
だとすると、プライドを捨ててまで腹を満たしたいと……。
朝抜くだけで倒れるくらいなのに朝から走ってきたのだ。昼間で何も食べないのはみっちゃんには無理な話だろう。

みつば「っ……その…チョコレート私に…下…さい」

杉崎「ふふふ、いいわよ、この躾のなってない雌豚にくれてあげるわ」

と言うわけで杉ちゃんの完全勝利。そしてみっちゃんは悔しそうな顔をしてチョコを食べる。
そして、二口目からは満面の笑みでおいしそうに食べ始めた。……とんでもない雌豚だよ。

何だか見るのが辛くて……私は視線をみっちゃん達から外す。

あー、色々と失敗したな……チョコなんて作ってたから寝坊して迷惑掛けて、それに……杉ちゃんのチョコだって……。

松岡「三女さん? どうしたの元気なさそうだけど」

ひとは「……別に普通だよ」

そういうと、納得してなさそうな顔をしならが「そう?」と呟く。
何もリアクションなしに返事したけどもう少し存在感を出してから登場して欲しい。

しばらく沈黙が続いてしまう。これ以上沈黙が続くとあちらから詮索される気がしたので私から話しかけることにした。

ひとは「松岡さんは杉ちゃんにチョコ貰いに行かないの?」

松岡「んー、まだお腹空いてないしね。食べないのに貰いに行くのって失礼かなって」

視線をみっちゃんたちのほうに向けながらさらに続ける。

松岡「まぁ、お昼のデザートとして貰いに行くよ」

松岡さんなりにちゃんと考えてるんだ。失礼な言い方になるけど意外にまともだった。
でもチョコレートはお菓子でありデザートにはならないと思うんだけど……まぁ、気にしないでおこう。

そして松岡さんの視線の先を私も辿ると、みっちゃんと杉ちゃんが馬鹿やってる姿が写る。
それを見たまま、松岡さんがなんでもないように呟く。

松岡「それにしても、あの二人仲いいよね」

ひとは「だね……」

私も正直にそう思う。だけど……松岡さんの言葉がなぜか心を重くした。

松岡「…………もしかして、みっちゃんと杉ちゃんが仲良くしてるのが面白くない?」

ひとは「ゴッ、ゴホゴホッ!」

完全に不意打ちだ。予想外の台詞に、咳き込んだ。
そうやって咳き込んでいると、松岡さんが「大丈夫?」と心配そうに覗き込んでくる。

ひとは「ど、どうしてそう思ったの?」

否定すればいいものを、何でこんな答え方……。
どうやら私は、動揺しすぎてうまく頭が回ってないらしい。

松岡「えっとね……私も三女さんが他の人と仲良くしてたら…少しくらい嫉妬しちゃうしね」

照れ隠しをするように頬をかいて、私が何も喋れないでいると続けて喋る。

松岡「何となく気持ちは分かるって言うか……」

…………。

まぁ、いいや。否定しようと思ったが止めた。
別に茶化したりするつもりもなさそうだし。
ひとは「嫉妬…なのかな……」

頬杖を付いて考える。確かにあの二人見てて面白くない。
それじゃ、宮下さんと吉岡さんを見てると……違う意味で面白く無いか。何というか鬱陶しそうだ。
他の人に例えるのは難しいので止めよう。

二人を見てて面白くないって、いつもそんな風に思ってるわけじゃない。
今日が顕著にそう感じるだけで……それは今日がバレンタインデーだから?
私もみっちゃんにチョコを作った。なのに杉ちゃんに先に渡された。
そして、みっちゃんは貰ったチョコをすごくおいしそうに食べていて……何だか杉ちゃんに負けた気がして。
だから、面白くない。コレが嫉妬と言うものなのだろうか。

私は嫉妬するほどみっちゃんを好いているのだろうか?

隣から「ねぇ?」と松岡さんが言葉を挟み、私は思考を中断することにした。

松岡「さ、三女さん……その腕の怪我!」

頬杖していたので朝出来た腕の傷が見えたらしい。

ひとは「あ、コレは朝ふたばが――」

松岡「霊との激戦があったのね!」

…………。

今までまともに会話できてただけあっていきなりの変貌にイラっと来た。

ひとは「そうだよ、怪我をした状態で保健室に行くとその霊に会えるよ! さぁ松岡さんも早く怪我をして保健室へ!」

松岡「やだなー三女さん。怪我をした状態で保健室だなんて、会えるのは暴走した栗山っちだけだよ~」

…………。

もうやだこの人……。



~ 下校(みつば視点) ~

みつば「はぁ、……今年もまた杉崎に何か返さないといけないわけね……」

下校時間、校門前でお手洗いに行っている杉崎を待ってるときに一緒にいるふたば、宮下、吉岡に言う。

宮下「まぁ、いいんじゃないか? それなりに旨かったし。またみんなでクッキー作ってやろうぜ?」

吉岡「そうだね、それがいいよー」

ふたばは……一人で走り回っていたためか聞いていなかったようだ。
まぁ、クッキー作りのときに役に立つのはふたばじゃなくひとはだし問題ないけど。

――そこまで考えて気がつく。宮下の奴、ひとはと料理したいだけじゃない?
いつも何かとひとはに粘着してるし……。

あれ? そういえば……ひとはは?

杉崎「お待たせ。……あれ? 三女っていなかったんだっけ?」

杉崎が戻ってきて、丁度私が疑問に思ったことを言ってくれた。

ふたば「何か用事があるから先に帰るって言ってたっスよ」

用事ね……買い物でもしにいったのだろうか?
特にそんな話聞いてないし、わからないものはわからない。考えるのを止めようと思ったが――

ふたば「今日のひと、元気なかったっスけどだいじょうぶっスかねー」

――ふたばの言葉に少しだけ考えることにした。
確かに元気なかったかも……朝はそんなに引っ掛かっていなかったのだが、午後あたりは無口になったというか、不機嫌というか。
何度か憎まれ口を叩かれたのだが、とにかく少し違和感を感じていた。
宮下「そんなことなかったろ? 私にはいつもと一緒に見えたぞ」

まぁ、ひとはも気が付かれないように取り繕ってたみたいだし、正直私も言われるまで気に留めてなかった。

みつば「まぁ、空気読めない宮下じゃわからなくて当然ね」

宮下「なんだと! だったら何が原因で元気なかったんだよ!」

みつば「しっ…知らないわよそんなこと! あんたに何かされたんじゃないの! 前科もあるし!」

宮下「何もしてねーって! ていうか、朝迷惑掛けられたの私のほうだし! あと前科とか言うな、完全に誤解だ!」

吉岡「だ、大丈夫だよ宮ちゃん! 私達、前科があっても友達だよ!」><

宮下「だぁー、吉岡おまえもフォローになってないんだよ!」

ふたば「突如理由無くキレる若者……かっこいいっスね!」

宮下「理由、ありすぎて困るくらいだ!」

杉崎「……」プイ

宮下「ちょ! なんで視線逸らしたんだよ!」

あ、宮下のやつ、泣きそうになってるし。皆、流石に言いすぎ……って私から言ったんだっけ?
まぁ、杉崎はフォローしてあげようと思ったがフォローする言葉が見当たらなかったってところだろう。
……ある意味一番ひどいかもしれないけど。

杉崎「そういえば、三女に友チョコ渡して無かったわね……」

話題を逸らすように杉崎が言い、カバンの中から残っていた高級チョコを取り出す。

杉崎「みつばあんたに渡して置くから……いや、ふたばのほうが――」

みつば「べ、別に食べないわよ! 私が渡すわ!」バシッ

そういってふたばに渡そうとしたチョコを奪ってやった。
…………。

杉崎のチョコを眺めていて思いついた。

みつば「ちょっと、用事思い出したわ。ふたば、先に帰ってなさい」

杉崎「え、ちょ、どこ行くのよ?」

みつば「別に何処だっていいでしょ!」

ふたば「みっちゃん! 小生もいくっスよ!」

みつば「あんた、ばかなの? ひとは元気なかったと思うんだったらさっさと帰ってあげなさいよ!」

ふたば「あ、そっか~、了解したっス!」

そういって私は皆から別れ、デパートに向かった。