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~ 買物(松岡視点) ~

松岡「んー、姉妹でも嫉妬ってしちゃうものなんだ……」

学校で三女さんが嫉妬してたのを見て思った。
いつも一緒に居る事の出来る家族であってもそういう感情ってあるんだと。

松岡「みっちゃんって意外に慕われてるいい姉なのかな……」

そう考えてみたが――

松岡「いや、あんな性格なのにいい姉って事はないよね」

???「ちょっと! なに私の陰口言ってるのよ!」

突然後ろから声を掛けられる。驚いて振り向くと――

松岡「あっ! みっ…みっちゃん! き、聞いてた?」

――みっちゃんだ。しまった三女さんが嫉妬してるって事、一番知られたくない相手だったんじゃないかな……。

みつば「聞こえたわよ! 『あんな性格でいい姉なんて事はない』ですって、悪かったわね!」

松岡「そ、そこだけ?」

みつば「へ……あ、あんた、それ以外も陰口言ってたわけ!?」

松岡「そ、そういう意味じゃなくて……」

どうやら途中から聞いてたみたいだ。危うく三女さんを辱めてしまうところだった。
とりあえず、話題を逸らそう。

松岡「そ、それでみっちゃん何しにデパートまで来たの?」

たしか杉ちゃんたちと一緒に帰ってたような気がしたんだけど。

みつば「えっと…、ちょっと買い物を……ってあんたに関係ないし!」

何このあからさまな動揺。何か隠してるみたい。だったら……。

松岡「そうなんだ。私はもう買い物終わったから先に帰るね」

みつば「そ、そう? それじゃ、また明日」
なんてね。
そういって別れて、私は気が付かれないようにみっちゃんの後をつけることにした。
別れた後、みっちゃんは周囲を気にしながら、食品店売り場に向かった。

松岡「なーんだ、お菓子か何かかな……」

言ってるそばからチョコレート菓子を……ってあれ、バレンタイン用に包装されたチョコじゃない!
え、何? 誰かに上げるの? ま、まさか自分で食べるように綺麗に包装されたものなんて買わないわよね?
でももう夕方だし、上げるとしても親しい友達か家族とかしか――もしかして三女さんに?
あ、二つ持った。財布見ながら迷ってたみたいだけど、どうやらふたばちゃんの分だと思われるチョコも買うようだ。

なんだかんだ言って易しい良い姉なのかもしれない。

……うん。面白そうだし声掛けよう!

松岡「みっちゃん!」

みつば「!! まっ…松岡! あんた帰ったんじゃ……」

松岡「みっちゃんが何買うのか知りたくて……で、そのチョコは三女さんとふたばちゃんに?」

みつば「ち、違うわよ! 私のよ! 私用のチョコよ!」

松岡「包装してあるチョコなんて自分用に買わないと思うけど」

ニヤニヤしながらみっちゃんを攻める。
コレ意外に楽しい。三女さんや杉ちゃんがみっちゃんを虐めてる理由、ちょっとわかる気がする。

みっちゃんは「ぐぬぬ……」といいながら観念したのか嘆息した後続けた。

みつば「そうよ……ひとはの奴が元気なかった気がしたから相談にのってやろうかと思って」

松岡「相談? チョコいらなくない?」

みつば「……チョコは布石。コレがないと相談持ちかけたとき、はぐらかされると思うから」
えっとどういう意味だろう? チョコがあるとはぐらかされない?
私が理解できていないのがわかったのかみっちゃんが面倒臭そうに説明を始めた。

みつば「もし仮に、私がひとはに『悩みでもあるなら相談してみなさい』って言うとするわよ?
ひとはが返す言葉はむかつくけどたぶん『た、大変! 頭まで脂肪にやられ始めてる!』ってな具合になるのよ。
それを防ぐには、あらかじめ嫌味を言いにくい空気を作る必要があって……」

松岡「あ、なるほど。感謝させてからその台詞を言えば、嫌味を言われないって事ね」

みつば「そういうこと」

意外に頭使ってるんだ。杉ちゃんのチョコのおかげで頭に糖分が回ってるんだろうか?
ちょっと単純に考えすぎだとも思う――――チョコ渡した時点で嫌味を言われることを想定していない点とか――――けど、何とかなるだろう。
私は三女さんが元気の無い理由を知っている。だからその作戦がきっと成功することもわかる。

でも、頭を使って考えてる割にみっちゃんの顔は若干不安な顔をしていて……きっと成功する自信は余り無いのだろう。
だから、私は――

松岡「うん、みっちゃんその作戦絶対成功すると思うよ」

――励ました。三女さんに元気になってもらうため、もちろんみっちゃんにも……。

みつば「何であんたにわかるのよ? また霊の仕――」
松岡「違うわよ、私がそう思うの!」

みっちゃんが言い切る前に言ってやった。これは紛れもない私の意志だったから。
みつば「へ? そ、そう…一応、その……ありが…と」

松岡「う、うそ! みっちゃんがお礼だなんて……これは霊――」
みつば「ちょ! 私がお礼しちゃいけないわけ! っていうかあんた――……」

みっちゃんがベラベラ喋りだした。ああ、コレいつものみっちゃんだ。幽霊の仕業だと思ったのに残念。



デパートの出口に向かっているとき、買ったチョコを片手にブラブラさせながら、みっちゃんが話しかけてきた。

みつば「そーいや、あんたと二人で買い物なんて、ブラ買ったとき以来ね」

そういえばそうかも。というより私基本ひとりで行動してるから、みっちゃんに限らず複数人で買い物なんてことが珍しい。
っていうかチョコを“ブラブラ”させてたから“ブラ”の件思い出したとか? そんなわけないか。

松岡「あ、あの時のブラ、結局私が貰っちゃったんだっけ? ……今から買いに行く?」

みつば「いいわね! ――と思ったけど、お金がもう無いから今回は諦めるわ。バレンタインデーのチョコってあんなに高いだなんて驚きよ」

たしかに、綺麗に包装されたチョコだったのでそこそこ値が張ってたようだ。改めて思うとやっぱり良い姉だ。

みつば「じゃ、私帰るけどあんたは?」

松岡「んー、……もうちょっとデパートにいるかな」

みつば「ふーん、じゃ先に帰るわね」

松岡「うん、また明日ー」

そういって別れた後、私はみっちゃんが買っていたバレンタインチョコ売り場に来ていた。

松岡「う~ん。今年はもう無理だけど……来年は友チョコとか学校に持っていこうかな……」
~ 本命?(ひとは視点) ~

……遅い。

いったいどこほっつき歩いてるんだか……。

ふたば「ひと! 悩みごとっスか! 小生が相談に乗ってあげるっスよ!」

ふたばは、さっきからこの調子だ。
悩みがあるって知られた以上は話したほうがいいかと思ったんだけど……。
ふたばは口が軽い……って訳じゃないけど、なんと言うか純粋すぎると言うべきか。
学校の皆には、みっちゃんにチョコを用意したなんてこと知られたくない。
だから、知られてしまうリスクは出来る限り減らしたい。

ひとは「なんでも無いから。勘違いだよ」

何度目になるかわからない誤魔化し。酷く良心が痛む。
みっちゃん、早く帰ってきて…………帰ってきたところで解決するかどうかわからないし、チョコだってどう渡すか決まってない。

いっその事もう渡さないで置こうか?

……うん。だったら悩まなくて……済むしね。
もともと作らないつもりだったんだし……。

ふたば「ひと! 勘違いじゃないっス! 元気ないっス! 今だって辛そうな顔してたっス!」

ふたばが炬燵から乗り出して、対面にいる私に言う。

辛そうな顔? 私が?

その時、玄関から物音がした。
みつば「ただいまー……ってふたば何やってんのよ?」

……良いタイミングだ。正直、ふたばへの返答に困っていたから。

ふたば「みっちゃん! ひとが悩みを相談してくれないんっスよ」

ひとは「べ、別に、悩みなんて無いよ」

そっけなく言ったつもりだが、悩みの元凶であるみっちゃんがいる前ではうまくいかない。
コレじゃ、二人から攻めたれるかも……。

みっちゃんとは目を合わせず視界の隅だけで反応を確認する。
みっちゃんは私を一瞥した後、少し考えるような素振りをしてから口を開いた。

みつば「……あ、そういえばパパがまた職質で交番に連れてかれたらしいのよ、ふたば悪いけど迎えにいってくれる?」

……あからさまに嘘だ。職質されたなんて電話着てないし、携帯持ってないみっちゃんがそれを知るには家で電話を取る必要がある。
でも、どうして?

ふたば「ホントっスか! あ、でもひとが……」

みつば「ひとはは私に任しておきなさい! それに悩みなんて後でも聞けるでしょ?」

ふたば「! みっちゃん……かたじけないっス!」

みっちゃんの嘘を信じたふたばが家から出て行く。みっちゃんはそれを見て軽く嘆息した。

ひとは「…………みっちゃん、どういうつもり?」

みつば「何がよ?」

しらばくれるつもりだろうか?

なんだか、みっちゃんを見てると腹が立ってきた。
……惚けたのも理由のひとつだろうけど、今日の休み時間のアレと同じ……。

ひとは「あんな嘘ついて……みっちゃんも私に何か言いたいの?」
動揺を隠すため可能な限り冷たく言い放つ。
ついでにこれ以上追求されなければ言うことないんだけど――

みつば「……え、ええ、ふたばがいるよりやり易いしね」

――そううまくはいかない。若干怯みはしたものの、引き下がる気は無いらしい。

みつば「……はい」

みっちゃんがポケットから何かを取り出して炬燵の上に置いた。

ひとは「え、チョコレート?」

……まさかバレンタインだから?

みつば「杉崎からの友チョコよ、ちゃんと貰いなさいよね」

き、期待なんてしてなかったけどね!

みつば「……こ、これも、受け取りなさい」

そういって手に持っていた袋から綺麗に包装されたチョコレートを取り出し炬燵の上に置いた。
……これは誰からのチョコレートだろう?
考えても答えは出てこない。みっちゃんもなぜか黙ってしまったので仕方なく聞き返すことにした。

ひとは「こっちは、誰からの?」

みつば「……私…からのよ」

ひとは「ふーん……みっちゃんから………………え゛?」

みっちゃんから?

みつば「な、何よその反応……」

ひとは「いやいや、なんでさ!? むしろ自分が欲しいって言ってなかった?」

言った。確かに言ってた。だから、私はチョコレート作ったんだし……。
みつば「い、言ってたけど……べ、別にそれであんたにチョコ上げない理由はならないじゃない」

それはそうなんだけど……。

ひとは「だ、だけど――」
みつば「いいから、受け取んなさいよ!」

私は納得できず言葉を続けようとしたが、チョコを胸元押し付けられた。

みつば「か、勘違いしないでよね! べ、別に深い意味なんて無いわよ!」

よく見るとみっちゃんの顔は真っ赤で……視線を胸元に移すと、チョコを貰ったって実感が沸いてきて……。

ひとは「……あ…ありがと……」

結果、私も恥ずかしくなって……きっと私の顔も真っ赤なのだろう。

みつば「そ、それで、ふたばも言ってたけど悩みって何よ?」

仕切り直すように、しかし視線は私から外したまま話しかけてくる。

ひとは「あ……えっと……」

チョコ買って来たのは私が元気なさそうに見えたからだろうか?
どういうつもりでチョコをくれたのかと思ったがそういうことか。
……冷静に考えてみれば、みっちゃんがチョコを渡すなんて発想しないだろう。
私の態度に違和感を感じ、みっちゃんなりに気を使ってくれたのかも知れない。
…………。

ひとは「……ちょっと待って」

私は立ち上がって、冷蔵庫を開ける。
渡さないでおこうと思っていたが、ふたばに心配掛けて、みっちゃんに心配掛けて、そしてチョコまで渡され……。
このまま、白を切り通すなんて選択肢、ありえない。
みっちゃんもチョコを渡してきたんだし、この勢いで渡してしまおう。

冷蔵庫の奥に隠すようにおかれた目当てのものを取り出す。

ひとは「こ、これ……」

みつば「へ? なによコレ?」

炬燵の上に置いたのは白い箱。昨日の夜私が作ったチョコが入った箱。

ひとは「……チョコレート…トリュフ…何だけど……」

みつば「えっと……いつ買ってきたの?」

ひとは「買ったんじゃなくて……作ったん…だけど」

みつば「……私に?」

ひとは「っ! ……う、うん」

みつば「……なんで私に?」

……キレていいかな?

ひとは「な、なんでって……チョコ寄越しなさいって言ってたよ!」

みつば「そういう意味じゃなくて! ……って言うか、あんたそんとき、すぐ断ったじゃない!」

ひとは「そ、そうだけど……」

みつば「それにコレが悩みと何の関係があるのよ?」

ひとは「だ、だから……断ったのに作ったから……なんて言って渡せばいいのか…わからなくて」

みつば「……」

ひとは「……」

ああ、なにこれ……気不味い。
やっぱり渡すのやめた方が良かったのかな……。
みつば「ああぁあ! もういいや!」

何だか知らないが、頭を掻き毟って炬燵に突っ伏した。
意味がわからない。

みつば「……ねぇ、コレ、今から食べていい?」

炬燵に突っ伏したまま問いかけるみっちゃん。何その上目遣い……。

ひとは「あ……うん」

みつば「そっ、それじゃ、いただ……貰ってあげる!」

いや、言い直さなくても……それにしてもみっちゃん、一気に機嫌が良くなった……さすが雌豚ってところだろうか。
そんなことより、みっちゃんがチョコ食べてくれた。

ひとは「ど、どう? す、杉崎さんのより美味しい?」

つい、感想が聞きたくなり、しかも杉ちゃんと比べて聞いた。
どんだけ嫉妬してるんだろ……私。

みつば「え? 杉崎? ……」

みっちゃんがなにやら考え込んでいる。……やはり市販のチョコじゃ高級チョコに勝てなかったのだろうか……。

みつば「……あんたのが…美味しい…………と思う」

……えっと?

ひとは「今、気を使った?」

みつば「使ってないわよ!」

ひとは「目、逸らしていったよ?」

みつば「そ、それは……」

ひとは「杉崎さんのチョコのが美味しかったんでしょ?」

みつば「ち、違うわよ! 杉崎のも美味しかったけど高級過ぎて口に合わなかったのよ!」
ひとは「……」

私が納得のいかない顔で見つめてやると、しょうがなくといった具合に続ける。

みつば「きょ、去年食べたのと、違う種類みたいで香りが強いというか何というか――」

ひとは「庶民であるみっちゃんには美味しさがわからない味って事?」

みつば「くっ、悔しいけど、そういうことよ! ……まぁそれなりには美味しかったけど」

ひとは「その台詞、杉崎さんに言って上げればとてつもなく喜んだと思うよ」

みつば「だから、杉崎に言わないでおいたって……あれ? ひとはって杉崎のこと杉ちゃんって呼んでなかったっけ?」

! 本当だ。杉崎さんって呼んでた。
えっと、やっぱりコレって嫉妬……が原因だよね。
とりあえず誤魔化さないと……。

ひとは「……杉崎さんの“崎”が丁度思い出せたんだよ」

コレはひどい。
杉ちゃんって呼んでる所を宮下さんに指摘されたときと同じ様な返しをしてしまった。

みつば「……よくわかんないけど、喧嘩してるんなら仲直りしておきなさいよ」

えー……みっちゃんにそんなこと言われる日が来るなんて……。
でも、まぁ、杉ちゃんには何だか悪い気がするし、恐らくホワイトデーのお返しを皆ですることになるだろう。
その時は嫉妬とか置いといて、しっかりしないと。

みつば「……そういや、コレふたばの分は? まだ冷蔵庫の中?」

ひとは「え? みっちゃんの分だけ…だけど……」

……途中まで言って気がついたが、そっか。ふたばの分も一緒に作っておくべきだった。
そうしたら、こんな悩まずに済んだだろうし……それにこれじゃ、ふたばがかわいそうな気もしてきた。

みつば「……知らぬが仏ね。さっさと食べて証拠隠滅。まぁ、私がふたばのチョコ買ってきてあるし……」
あ……そうなんだ。
いや、まぁ、それが普通……だよね。

…………。

不意に嫌な汗が流れる。
みっちゃんにだけに……チョコを作ったんだ……私。
杉ちゃんは友チョコとしてたくさんの人に上げたのに。
みっちゃんだって姉として妹二人にチョコ用意してるのに。
だったら、私のチョコは?
たった一人のために作った……たった一人に渡すチョコ。

……本命?

いやいやいや! 違う、断じて違う!
みっちゃんにチョコを寄こせって言われたからで……。

確かにその通りなのだけど……でも……断ったし、作る必要なんて……無かったのに。
みっちゃんの台詞は、ただの切っ掛けに過ぎないってことで……。
結局は私の意志で……みっちゃんにだけチョコを作った……。

顔が熱い。しかも思考がうまく纏まらない。

みつば「……――ひと…? ……ひとは!」

ひとは「え! あ、な、なに?」

みっちゃんの言葉が聞こえ現実に戻される。

みつば「何じゃないわよ! いきなり呆けちゃって……熱でもあるの?」

ひとは「だ、大丈夫だよ。気にしないで」

みつば「本当でしょうね? ……まぁいいわ。とりあえず、えっと…チョコ……ありがと」

ひとは「あ…わ、私夕飯の準備しないと……」

……動揺しすぎ私……照れ隠しの下手さにも程がある。
まぁ、でもとりあえず夕飯の準備だ。時間的にも間違ってないし、顔を隠すのには丁度いい。
……視線を感じる……。いや、気のせいかもしれないけど。

えっと、結局私は何でみっちゃんにだけチョコを作ったのか……。
さっきも考えたが、切っ掛けはみっちゃんの一言だった……だけど。
……認めたくないけど私は、私の作ったチョコをみっちゃんに食べて貰いたかった。
私のチョコを貰って美味しいって……笑顔で答え、満足してもらいたかった。

……。

だけど……本命チョコじゃない。絶対に。そんなつもりで作ったんじゃない。

自分の中で出した答えは、“本命じゃないチョコ”。
だけど、その答えを何故だがひどく空しく感じた。
私がみっちゃんのために一生懸命に作ったチョコが、ありもしない本命チョコに劣っている気がして……。

自分の考えてることがわからなくなる。

私はみっちゃんが嫌いだ。わがままで、ドSで、雌豚だし、ガチレン馬鹿にする……。
でも、違う。……この想いは矛盾しているのだろうか?

嫌いなはずなのに……私はみっちゃんが好きなのだと思う。

……意味がわからない。
しかもその“好き”が姉としてなのか、家族愛なのか、それとも――

――そこまで考えて、考えるのをやめた。
きっと答えなんて出ない……出さない方がいいのかも知れない。
答えが出ていない方が……みっちゃんとの関係を自然に感じることが出来る気がして。
気持ちの整理は完全ではないが、頭は回るようになってきた気がする。
ふっと沈黙が続いていたのが今更気になり、夕飯の準備をしながらみっちゃんに声を掛けた。

ひとは「ねぇ……みっちゃん?」

みつば「な、なによ?」

ひとは「ホワイトデーのお返しは……くれるの?」

普通、見返りは求めないものだとは思う。でも私達のよくわからない関係性だからこそいえる言葉。

みつば「……いいわよ、上げるわ。その代わりあんたも私に寄こしなさいよね」

断るかと思ったが、自分もお返しがもらえるチャンスだとでも思ったのか、条件付で了承してくれた。
そっちがそのつもりなら、こっちも条件をさらにつけ加えてやる。

ひとは「私が作り方教えるから……今度は手作りね」

みつば「はぁ? 何よそれ! あんたに教わってあんたに渡すって変じゃない?」

ひとは「……気にしすぎだよ」

<バタン>

玄関が開いた音。ふたばか、お父さんか……

ふたば「ただいまっス!」
草次郎「ただいま……なぁ、連絡してないのにどうしてパパが交番に居るってわかったんだ?」

……へー、本当に職質されてたんだ。そんなオチだと思ったよ。



さて、ホワイトデーは何作って、何作らそうか考えておこう。

おわり