「……」
矢部 智の家に入るや否や、丸井 ひとはは絶句した。
目の前で一糸纏わぬ姿の担任教師が、仰向けで鼾を立てて寝ていたからである。
ドサッ、
無意識に手の力が抜け、ハムスターのチクビに買ってきた餌が床に落ちる。
「と、とりあえず、何かかくすもの……」
辺りを見渡す。
真っ先に目に付いたのは床に無造作に散りばめられたズボンとTシャツ、それとパンツだった。
咄嗟にTシャツを掴み、矢部の露出した局部に被せる。
それから呼吸を整え、状況の整理を行った。
何故、担任教師はこんな所で、加えて全裸で寝ているのか。
「くりやませんせぇ……おっぱい……」
何も知らない矢部は、幸せそうな顔で同期の保険医に対する寝言を呟いていた。
(そんな事はTwitterにでも書いてください……)
心の中でツッコミを入れる。
その時、矢部の顔を見たひとははある事に気づいた。矢部の顔が全体的に赤くなっている。
顔を近づけて、臭いを嗅いでみる。それは酒を呑んだ後の父親の臭いによく似ていた。
つまり……。
「……はぁ」
呆れたようにひとはは溜め息を一つ、それから、ベッドにあったタオルケットを引っ張り、矢部に被せておくと、そのまま放置し、台所へと向かった……。

コトリ、
水の入ったコップを、寝ている矢部の側に置いた。
それから、薬箱から勝手に拝借した二日酔いにも効く胃薬と念の為二重にしたビニール袋も一緒に置いておく。
台所には、卵の入ったお粥も作り置きしておいた。
「……よし」
これで遠慮せずにチクビと遊べる。
鼻息荒くゲージからチクビを取り出す。
チクビは鼻先をヒクヒクと動かし、ひとはの指先を嗅いでいた。
その仕草にひとはの母性本能は擽られる。
指先でチクビの頭を撫でたり、お腹を撫でたりしてみる。
チクビは目を細め、嬉しそうに撫でられていた。
愛らしい仕草にひとはの鼻息はさらに荒くなった。
「むふー」
今度は持ってきた餌を掌に乗せてみる。
チクビは少し匂って、それが何かを確認してから、カリカリカリ、と餌をかじり始めた。
「チクビ……」
呼び掛けながら餌を食べるチクビの頭を優しく撫でてみる。
食べることに夢中になっているせいか、チクビは無反応だった。
「……むふぅー」
食べる姿の愛らしさに再び鼻が鳴る。
このまま家に持って帰れたら良いのに……などと考えながら、今の家の現状では無理な事は分かっていた。
ただでさえ動物が二匹もいるのに、家に持って帰ったら、それこそ餌になってしまう。
ちなみに、その動物と言うのは、一匹は猫で、一匹は雌豚だが。

「うぅ、う~ん」
考えに没頭していると、先生が苦しそうに呻きだした。
しまった。起こしてしまったか、と思いひとははチクビをゲージに優しく入れ、矢部の側に座った。
顔を見れば、ぼんやりと瞼を開けている。……ただし、目は虚ろだが。
「先生……大丈夫ですか?」
話しかけると、ぼんやりとした目でこちらを見つめた。
その目に少しだけ恐怖感を覚える。
だが、まさか日頃先生として真摯な態度を貫いている、矢部先生に限ってそんな事は……と、高を括っていた。
しかし、その考えは完全に油断をしていた。
「く、くりやませんせぇ……」
不意に、ひとはは強い力で手首を引っ張られたかと思うと、次の瞬間にはさっきまで矢部が寝ていたタオルケットの上に押さえ込まれていた。
「ちょ、はなして……」
ひとははそう言うが、矢部が放す気配は無かった。
直後、矢部はひとはと唇を重ねた。
あまりの唐突さに、現状に付いて行けないひとはは、瞳孔を見開き、呆然としている。
(お酒臭い……)
ふと思ったことはそれだった。
しかし、矢部の勘違いが止まることはない。
唇を離し、くりやませんせぇ、と呟くと、再びひとはの唇を奪った。今度は舌を絡めてくる。そして、徐にひとはの下半身へも手を伸ばした。

モチモチとしたひとはの肌に、普段の矢部なら気がついたはずだった。だが、手が痺れているのか今は全く気づく様子は無かった。
ようやく、唇が離されたひとはは、涙混じりに呆然としている。
そんな様子が見えてない矢部は止まらず、下半身を下着越しに触ってみる。
くすぐったい、ひとはは思った。
それから、他人に自分の身体を触られるのがこんなに気持ちが悪いとは、思っていなかった。
「やめてっ、やめてください……」
自分でも触らないような場所を他人に触られながらも、ひとはの呼吸は乱れ始めてきた。
恐怖感と高揚感が入り混じる思考の中で、こういう気持ちになるのはその場の雰囲気なのだろうか、と何処かで冷静に考えている自分もいる事に、ひとはは気付いた。
「くりやま○△□※~」
最後の方は上手く聞き取れない言葉と共に、矢部はひとはのパンツを膝の辺りまで一気にずらした。
ツルンとした、幼い秘部が露出する。
「なぁ……っ!?」
顔を赤くして驚きの声をあげるひとは。
しかし、暇を与えず、矢部はひとはの足を開き、その幼い秘部に顔を埋める。
パンツがビッ、と音を立てて千切れた。
「だ、ちょっ、やめてください……!!」
しかし、そんな事を気にしている余裕はもうひとはには無い。
手で矢部の頭を押して、秘部への刺激を出来るだけ和らげる。
そこで、矢部は不意に顔を離した。
観念してくれたのだろうか?そう思っていると、腰を掴まれ、身体をうつ伏せの状態に反転させられた。

そのまま腰だけを持たれると、ひとははお尻を突き出した形になる。
自分の秘部だけではなく、お尻の穴まで相手に見えているという状態は、ひとはにとって、耐え難い程の恥辱だった。
それでも、まだ泣いていないのは、小学六年生にして、家事の一切を努めてきた精神的な強さに因るところが大きいのだろう。
ヌルヌル、と矢部は何かを押し付けてくる。
「すいません、い、いれても大丈夫でしゅ○※□☆」
呂律が回ってないのか、またもその言葉は聞こえなかったが、なんとなく意味は状況で理解した。
「だ、だめです!やめてください!!」
必死に抵抗をするひとはだが、矢部の耳にはまったく伝わっていない。
「し、しゅつれいします!!」
グッ、ズブッ、
堅いものが少し中に入ってきたのをひとはは感じた。
「……っ!!」
これが“濡れている”ということだろうか。前に本で観たような痛みは少なく、すんなりと入ったように感じる。……だが、ひとははすぐにある事に気付いた。
「せ、先生!そこはお尻です!!抜いてください!!」
慌ててひとはは矢部に言うが、本人は気持ちよさそうな顔で、満足しているようだった。
(ここで満足するんですかっ)
見当違いなツッコミは胸の中に閉まっておく。
取り敢えず早く抜かなければ、とひとはは前に匍匐前進で進んだ。
「あ、待ってくだはい、せんせえ」
負けじと矢部は、腰を掴む手に力を入れて、手前へと引き寄せる。
ズブブッ、
更にお尻の奥に堅いものが侵入してきた。
「あっ、あ…」
感じたことのない刺激に、思わず身体が仰け反る。
(まだ、全部入ってなかったの……?)
普段出るところから入る感触があるのは、かなりの違和感を感じた。
その内にお尻の穴から皮膚を引っ張られるような、ピリピリとした痛みが現れてくる。
「いっ、痛いです、抜いてください……!」
その間も、矢部の起立したモノはひとはの肛門の奥へと侵入してきた。
自分の中に何かが入ってくる感触は、正直あまり気持ちの良いものではないなと、ひとはは思った。
コツン、と背中の下の方で何かに当たった感触を感じた。
多分、これ以上進めないという事なのだろう。

「はぁ……っ、はぁーっ、はぁーっ」
無意識に止めていた息を吐き出す。
しかし、それも束の間だった。
「う、動きますよ、く、くりやませんせぃ!!」
ヌルッ、ズブブッ、
一旦、入り口まで引き抜き、それから再びお尻の奥まで押し込まれた。
「あっ……くぅっ!!」
思わず声が出てしまった事に気づき、あわてて口を抑えるひとは。
しかし、その間も矢部の動きは止まる事なく、何度も出し入れを繰り返される。
「んっ、くぅ……っ!?」
違和感とたまにくる気持ちよさに必死に声を抑えながら、私はなにをしてるんだろう、とひとはは思った。だが、その思考も徐々に真っ白になっていく。
「ん、はぁっ……、あ……っ、いっ……た……」
徐々に光芒としてきた自分の表情に、ひとはは気づいていなかった。
クチュ、クチャ、
静かな部屋に吐息と水音が響く。
ズブッ、ヌルンッ、ズブブッ、コツッ、
お尻の穴の違和感はもう気にならなくなっていた。
むしろ、少し気持ちいいとさえ思えてきた。
もちろん、まだ痛みはあるが……。
「せんせい、出ます。出します!」
切羽詰まった様子で矢部が叫ぶ。
「あっ……え、せんせえ、まって……っ!」
ドクンッ!!ビュルルッ!!
「うぁ……っ!」
ひとはの声は届かなかった。一瞬中で膨らんだかと思うと、肛門の奥の辺りに熱い何かを感じた。
「あっ、あ……」
(何かでてる……)
トクンッ、トクンッ……、と、お尻の奥で徐々に鼓動が遅くなっていく。
(あつい……)
ぼんやりと思っていると、矢部は自分の起立したモノを奥から一気に引き抜いた。
ヌヌッ、ヌルンッ、
「んっ……!」
一瞬、ひとはは気持ち良くて声を出してしまった。
呼吸を乱しながら、恐る恐る今まで自分の中に入っていたものを見る。
ソレは小学六年生のひとはには、思っていたものより大きく感じた。
(あんなに大きくなるんだ……)
しかし、その起立したモノはみるみる着席していく。
その様子を思わずジーッと見つめていると、矢部がいきなりのしかかってきた。
「ぐぇっ」
声がでる。お腹を押され、お尻から何か漏れてきたのを感じた。
「くっ、うっ」
必死に矢部の下から抜け出し、お尻の入り口を指先で触ってみると、白い液体が付いていた。
「……トイレ行こ」
取り敢えず、ひとはは呟いた。

目を覚ますと、矢部は先ず起き上がり、時計を見た。時刻は12時12分。
あー、休日だからって寝過ぎたかなぁ、と矢部は思いながら、ある事に気づく。「そ、そうだ!たしか休日はひとはちゃんが来るんだった!!」
最近付け加えられた、新しい日常行事を思い出し、立ち上がろうとしたが、足に上手く力が入らない。
「あ、あれ?」
加えて、頭が痛く、気分も悪い。
「…………ふーっ」
一旦落ち着こう。
息を吐き、深呼吸してから昨日の事をよくよく思い返した。
確か、昨日は学校の後、同僚の先生方数名と呑みに行くことになって……
昨日は栗山先生も珍しく居たから僕も行くことになって……
それで、呑んでたら段々気が大きくなって……
つまり……
「二日酔い……?」
いい年して二日酔いとは情けない、と矢部は思った。
そうしている内に少し吐きたくなった矢部は、すぐ側に二重になったビニール袋と水、それに胃薬まである事に気付く。
最初、矢部は不審に思った。
が、すぐにピンとくる。

「ひとはちゃん、かな……?」
考えたが、心当たりはそれぐらいしかない。
思わぬ優しさに矢部は涙が出てきた。
(明後日学校であったらお礼言っとこう……グスッ)
そう思いながら矢部は手を突いて起き上がろうとした。
フニッ、
何かに当たった。
条件反射的に矢部はその感触の方を見る。そこには、ひとはが無防備に眠っていた。
「……」
指先で目頭を揉んでみる。
もう一度隣を見た。
そこには、ひとはが無防備に眠っていた。
矢部の脳裏に昨今の、児童に対する教諭達の性犯罪のニュースが次々に過ぎっていった。
汗がぶわっ、と噴き出しTシャツに張り付いていたが、そんな事気にならない程動転していた。
「…………んっ」
ひとはが目を覚ます。
ゆっくりと瞼を開いて、起き上がる。
どうやら寝ぼけている様子で、ぼーっとしていた。
「……」
矢部は口を開いたまま固まる。
そんな矢部を見つめて、ひとははいきなり意識を取り戻したように顔を赤くした。
「お、おはようございます……」
「……はっ!あ、あぁ、うん。おはよう…………き、来てたんだね?」
ぎこちなくへんじをする矢部。
「は、はい……。でも、もう帰るので……」
ひとはは起き上がり、早足で玄関まで歩いていく。
「あ、ちょ……」
それを矢部が引き止めた。スカートの裾を引っ張って……。
そのせいで、座っている矢部の視点からはスカートの中が丸見えだった。
目を丸くする矢部。
真っ赤になって固まるひとは。
そこには本来あるはずのモノが無かった。
女性と、男性の、恥ずかしい部分をいつも優しく包んでくれる。
男女共通の下着、パンツが……。
目の前にはプルン、と柔らかそうな山が聳えているだけだった。
「え?あの、え、ひ、ひとはちゃん、パンツは……?」
「~~~……ッッ!!」
バンッ!!
ドアを勢い良く開けたひとはは、そのまま走り去った。
残された矢部は驚き、目に焼き付いた光景を思いながらただ固まっているのだった。


おしまい。

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最終更新:2011年02月25日 20:04