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~ 調理(ひとは視点) ~

今日は3月13日。所謂ホワイトデー前日だ。

日曜だし私達三姉妹の家で杉ちゃんを呼ばずクッキー作りをする事となった。
もちろん、杉ちゃんを呼ばないのは友チョコのお返しをする当人だし、どうせならサプライズのが良いだろうと言う事だ。
メンバーはみっちゃん、ふたば、松岡さん、吉岡さん、宮下さん、そして私の6人。
私達の狭い家じゃ結構辛い。台所も2,3人までしか立てないし、テーブルも活用して作業を行うこととなる。
っていうか、6人も要らない……宮下さんあたりが要らないかな? ……帰れとまでは言わないけど。

クッキー作りの発案者は宮下さん。実に鬱陶しい。……いや、まぁ、本当に鬱陶しいわけじゃなく言ったみたかっただけだけど。
でも、言い出しっぺの法則って奴だ、材料費は全て宮下さん持ちとなった。

何とかさん達「「「ごめんくださーい」」」

とか考えてると皆が家に着いたようだ。

みつば「ふたばー、玄関開けて来なさい」

ふたば「了解っス!」

寝っ転がりながらふたばに指示を出す。なんて雌豚だ。昼食食べたばかりなのにポテチまで抓んでる……そんな事してるから太るんだよ。

みつば「……ねぇ、ひとは。私達の分はいつ作るのよ!」

そのままの姿勢で、でも、視線は私に合わせずに聞いてくる。
……ふたばに行かせたのはそれを言うためだったのか。

ひとは「み、皆が帰ってからでいいんじゃない? ふたばにはみっちゃんへのお返し作らせればいいし」

みつば「そ、そうね」

何だか微妙な空気だが、別に嫌じゃない。何というか……こう…………と、とりあえず、よくわからないけど嫌じゃない。

言い忘れていたけど、お父さんには出かけてもらった。皆が来るから出かけてって言ったら泣きながら出て行った。

宮下「まったく、何で私が材料買い込まなきゃいけないんだよ……」

愚痴を溢しながら家に上がる宮下さん。うん、清々しいくらい鬱陶しいが今回は大目に見てもいいかな。

吉岡「まぁまぁ、コレも全部杉ちゃんラブラブ大作戦の為だから」><

そして変な妄想をしてるのが後に続いて家に上がる。……ラブラブ大作戦って杉ちゃんと誰をくっ付けるつもりだろう?

松岡「宮ちゃんだけに買わすのは流石にかわいそうだと思ったから、清めの塩は私が用意したわ!」

……いや、塩とかそんな大量に使わないから……家にある分で十分だし。……でもまぁ、頂いておこう。
みつば「んじゃ、さっさと初めて終わらせるわよ! ったく何で私まで杉崎なんかに……」

みっちゃん……杉ちゃんの唯一の手作りチョコを食べておいてそれは言えないよ。
しかも、高級チョコを6つ分くらい使ってた大きさだったよ!

……なんだか考えてみると、杉ちゃんのみっちゃんへの愛――――愛と書いて執念って読んでもいいかも――――を凄まじく感じる。

ひとは「じゃあ、お父さんと同じようにしばらく家から出て行けばいいよ」

吉岡「さ、三女さん? みっちゃんも一緒に作らないと駄目だよ」><

いや、うん、わかってるんだけどつい……。

言ってしまったことを後悔しつつみっちゃんを横目で見る。

みつば「……」

バツの悪そうな顔をして私から視線を逸らす。

……いやいや、なんでみっちゃんがそんな顔してるの?
みっちゃんはいつもの様に反応しただけ出し……それがまぁ、ちょっとだけ気に障ったんだけど。
でも、まぁ普段なら私だって気にしないはずだったし、今回は流石に私が悪い気がする。

ひとは「……みっちゃん、宮村さんからバターと砂糖貰ってボールで混ぜておいてくれる?」

まぁ、素直に謝ったり出来ないので、とりあえず指示を出しておく。
……本当、みっちゃんに引けを取らないくらい、私も素直じゃないかも……。

横で宮下さんが「宮下だからな!」と言っているが無視しておく。

みつば「わ、わかったわ……分量はどうするのよ?」

ひとは「えっと、テーブルの上にメモ置いてあるからそれに書いてあるよ」

吉岡「あ、みっちゃん、私も手伝うよ」

松岡「それじゃ私は三女さんと――」宮下「それじゃ私は三女と――」

松岡&宮下「え?」

ひとは「……ふたば私の手伝いお願い」

ふたば「了解っス!」

そんな感じでクッキー作りを開始した。


~ 完成(みつば視点) ~

吉岡「わー、すごいよー。おいしそー」><

ふたば「ホントっスね!」

目の前のテーブルには焼きたての様々な形をしたクッキーが沢山ある。

みつば「こんなに杉崎に上げる必要ないし、皆で1個……2個ずつ食べるわよ」

ひとは「1個だよ! 2個ずつ食べたら、杉ちゃんの分3個しか残らないよ!」

やっぱり2個は欲張りすぎか。

宮下「まぁ1個だよな。厭くまでお返しのクッキー何だし」

わかってるわよ! 被せて来るなんて流石宮下ってところね。

ひとは「ちょっとまって、紅茶入れ――」
松岡「三女さん手伝うわ!」

脅威の反応速度。宮下は私に忠告しているから出遅れたようだ。
隣で「しまった!」とか言ってるし……。

しばらくすると、ひとはと松岡が紅茶を持ってきた。

松岡「お待たせー…って私は運んだだけなんだけどね」

そして、皆に紅茶が行き渡り、クッキーを食べながら適当な話をした。
怪談話や恋愛話が始まったのは言うまでもない。



吉岡「それじゃ。明日、クッキーみっちゃんが持ってくるって事で」

みつば「くっ、なんで私が……」

松岡「まぁ、ジャンケンで勝ったんだしね」

みつば「普通、負けた人じゃないの!」

宮下「おいおい、負けた人が持って行くって杉崎に失礼じゃないか!」

確かにそうなんだけど……負けた人だったら宮下の奴が一人負けだったのに……。
カバンの中に入れられるようにカバンを後で整理しておかないと。
とりあえず、嵩張るスナック菓子は持っていけないわね。
吉岡「じゃ、そろそろ私達帰るよ」

宮下「じゃ、また明日な」

松岡「また明日ー」

<ガチャ>

皆が家から出て行く。

ひとは「それじゃ、私達の分も作ろうか」

ふたば「私達っスか?」

みつば「私があんたらにチョコ上げた――」

……あれ? コレって私がひとはに返すこと出来ないんじゃないの?

みつば「(ちょっとひとは! 私はどうするのよ!)」

ひとは「(……考えて無かったよ)」

みつば「(……作らなくてもいい?)」

ひとは「……」

無言で表情一つ変えずこちらに視線を向け続けられた。
怒ってる? どうしろってのよ……。

しばらくすると、ひとはは視線をふたばに向け声を掛けた。

ひとは「それじゃ、ふたば、クッキー作るから手伝って」

ふたば「了解っス!」

…………。

二人は私のために作ってくれているのに……。
それでも何だか意地と言うか何というか……私も作るとは言い出せない。

ひとは「あ……夕飯の材料買いに行くの忘れてた」

みつば「……私が買いに行ってくるわ……何が必要なのか言いなさいよ」

この場に何もせずに居る方が居心地が悪くて、夕飯の買出し役を買って出ることにした。



~ 相談(松岡視点) ~

家に帰った私は自分のベットに仰向けになり、ポケットから1枚の紙を取り出す。

松岡「はぁー、持ってきたのはいいけど……これどうしようかな……」

大きく嘆息して独り言。

三女さんはきっとあの後みっちゃんに何か作ったんだろうな。バレンタインにチョコ貰ったはずだし……。
あ、でもふたばちゃんも貰ってるから一緒に作ってるのかな?

腕を上げて持っていた紙を、腕ごと<パタン>と横に下ろす。

……本当はそんなことで悩んでるんじゃない。私が悩んでるのはこれからどうするか。
別のことを考えたのは、答えを出すのを先延ばしにするため……だと思う。

でも、やっぱり実際実行するとなると……なんて言って渡せばいいのかわからない。
だって私はバレンタインで、三女さんからチョコなんて貰っていないのだから……。

……とりあえずだ! 行動しないと始まらない。
後のことは後で考えられるんだし、今しなければいけないことしなくちゃ!
起き上がりもう一度紙を見る。紙に記された“クッキーのレシピ”……三女さんが書いたであろう丁寧な文字だ。
その紙に書かれた通りのものを準備するため私はデパートに向かうことにした。



松岡「えっと……後はコレと…コレかな?」

材料を買い物籠に入れていく。
バターひとつでも無塩バターとかケーキ用バターとかあってよくわからないので、一番普通そうで安い奴を入れておく。
……安いのを買う理由は、先月オカルトグッツとか墓地に張るテント――――親に没収されたのよ!――――を買ってしまったのでお金が無いから。
上げるものだし、本当はもう少しお金掛けたかったんだけど、仕方が無い。

???「あ、松岡じゃない? 何してんのよ」

背後から声を掛けられ振り返ると、そこにはみっちゃんが……何だか先月も同じようなことがあった気がする。

松岡「え、あ、みっちゃん? 別にただの買い物だけど……」

みつば「……その紙ってクッキーのレシピが書いてあった奴じゃないの?」

あ! しまった!

みつば「籠の中もクッキーの材料っぽいわね……誰かに作るの?」

松岡「そ、そんなの……誰だって……。そ、そんなことよりみっちゃん、三女さんからバレンタインのお返し貰えた?」

誤魔化すための無理な返し。だけど、言ってみてから気がついたが動揺もさせられるし、最高の返しかも。
そして、案の定、動揺してくれた。
みつば「! ど、どうして知ってるのよ!」

松岡「どうしてもなにも、みっちゃんが三女さんにチョコ渡したの私知ってるし」

みつば「……そうだったわね、……明日貰えるんじゃないかしら?」

視線を逸らし不機嫌そうに言う。
うん、不機嫌にはなっちゃったけどうまく話を逸らせ――

みつば「で、話し戻すけど、それ誰に作るのよ!」

――なかったみたい。むしろイライラした口調で食いついてきた。

みつば「私の妹のレシピ勝手に盗んでおいてダンマリなんて許さないわよ!」

嘘だ。さっきまで全然怒ってる感じじゃなかったのに……どうやら私の質問が相当気に食わなかったのだろう……。



それから、余りにしつこく聞いてくるので教えてしまった。

みつば「ふーん、ひとはにクッキーを渡すって事は、あんたもチョコ貰ってたのね」

松岡「え、いや……それなんだけど私は貰って…ない……あれ? 『あんたも』?」

みつば「……あ」

さっきから私達なんで秘密の暴露大会開いてるんだろう。さっきのみっちゃんに到っては自爆だし。

松岡「なるほど、みっちゃんは三女さんからチョコ貰ったんだね」

みつば「う、うっさいわね! 姉妹なんだし別にいいでしょ!」

別に悪いなんて言ってないんだけど……。

みつば「それであんた、何でチョコ貰ってないのにクッキー渡すのよ?」

松岡「えっと、三女さんにはいつもお世話になってるし……なにかお返しがしたいと思って
それで、杉ちゃんの友チョコや、みっちゃんが三女さんやふたばちゃんにチョコ買ってるの見て
私もチョコ渡しておけばよかったなって後悔してて……」

みつば「それで、ホワイトデーにクッキーって訳ね」

みっちゃんは馬鹿にする訳でもなく、ただ普通に納得してくれた。
ちょっと……相談……してみようかな。

松岡「でね……やっぱりチョコ貰ってないのにクッキー渡すのって変かな……」

私の台詞を聞いてるのか無視してるのかわからないが、みっちゃんは何も喋ってくれない。
それでも私は構わず続けた。

松岡「作ってみようと思ったのはいいんだけど……なんて言って渡せばいいのかわからなくて……」
どうしてみっちゃんに相談なんて発想になったのだろう……。
私はこの時、何だかみっちゃんが頼れる存在に見えていたのかも知れない。
そして、その選択は間違っていなかった。

みつば「……変かもしれないけど……正直な気持ちを言えばちゃんと受け取ってくれるわよ」

正直な気持ち……。

さらにみっちゃんは視線を逸らしながら続けた。

みつば「ど、どーせ、ひとはなんてそんな状況になれば断る勇気なんてありゃしないわよ!」

コレはさっきのまともなアドバイスの照れ隠しだろう。

みつば「それじゃ、借りは返したわよ!」

松岡「え、借り?」

みつば「バレンタインの時の借りよ! あの時は正直あんたの言葉は……その……ちょっとだけ…励みになったというか……」

松岡「あぁ、あの時のこと……。別に大したこと言ってないよ?」

みつば「そんなこと…あっ、そうだった、ひとはに買い物頼まれてたのにこんなことしてる場合じゃなかったわ!」

そう言ったみっちゃんのカゴの中を覗いてみると、野菜やお肉がいくつか入っている。
昼間のことを考えると忙しくて、買い物しなくちゃいけないこと忘れていたのだろう。

松岡「あ、ごめん邪魔しちゃったみたい?」

みつば「本当よ! まったく!」

松岡「そういえば、みっちゃんは三女さんにお返し作った?」

みつば「っ! ……悪かったわね、作ってなくて」

松岡「駄目だよ! 杉ちゃんには作って、三女さんには作らないなんて三女さんが可哀想だよ!」

みつば「わ、わかってるわよ……あ!」

松岡「へ? なに?」

みつば「明日はひとはの奴帰りにデパートに寄るはずなのよ。そしてふたばも変態パンツと川辺でサッカー……コレしかないわ」

松岡「え? どういうこと??」

みつば「いいから、あんたは明日学校終わったらその材料持って急いで家に来なさい!」



~ 晴天(ひとは視点) ~

今日の天気は私の心と違って晴天だ。

今は学校の給食中。私は誰の席に移動するわけでもなく一人黙々と食べていた。
いつもなら松岡さんとか来るんだけど……今日は来ない様だ。

昨日は失敗した。
意地を張らずに一緒に作って貰うよう誘えばみっちゃんだって……。

結構楽しみにしてたのに……。
それどころか、昨日みっちゃんが帰ってきてからまともに話すらしてない。
定型的な挨拶とかはしたんだけど、本当にそれだけだ。

そのまま給食が終わり、昼休みに入りみっちゃんがこっちに来た。

みつば「ちょっとひとは、皆で杉崎にクッキー渡すんだからこっち来なさいよ」

ひとは「あ、うん」

あれから初めてのまともな会話だが、内容が内容だけに素直に喜べない。
でも、一人で、しかも憂鬱な時間が少しでも減ることは関しては有難い。

杉崎「な、なによ? みんな集まってきて……」

杉ちゃんの席の周りに不自然に皆が集まったことで何だか警戒された。

吉岡「杉ちゃんに渡したいものがあるの」

ふたば「受け取って貰いたいっス」

杉崎「???」

何がなにやらわかってない様子。以前にもホワイトデーのお返ししたんだから察することも出来そうなものだけど……。
まぁ、杉ちゃんもこういうところで地味に鈍感だから仕方がないのかも知れない。

みつば「……はい、有難く受け取りなさい……そ、そして私を敬うことね!」

そういいって後ろ手に隠していたクッキーの入った袋を渡す。

宮下「余計な台詞付け足すなよ」

まったくだ。でも、みっちゃんらしいかな。

杉崎「えっ……と? もしかしてホワイトデーのクッキー?」
みつば「勘違いしないでよ! 宮下が皆で作ろうって言ったから作っただけよ!」

なにその反応。俗に言うツン……なんだっけ? まぁいいや。
隣で宮下が「ぷっ、どこをどう勘違いなんだろうな」とか言ってニヤニヤしてる。気持ち悪い。
と言うかいつの間に隣に居たんだろう。

松岡「レシピは三女さんが用意してくれたの」

宮下「ざ、材料費は私負担なんだぞ!」

宮下さんの地味なアピール。さっきから鬱陶しいね。

杉崎「み、みんな……ありがとう。どうせみつばは沢山つまみ食いしてただろうけど――」
みつば「失礼ね! 1個だけよ!」

杉崎「結局は食べたのね、1個」

呆れた顔で突っ込みを入れる杉崎。
流石にアレなのでフォロー入れておく。

ひとは「杉ちゃん、皆で1個ずつ食べたから、みっちゃんだけじゃないよ」

杉崎「へ? そ、そうなの?」

みつば「……ふん!」

ふたば「杉ちゃん酷いっス! みっちゃんが拗ねちゃったっス」

杉崎「え…何、私が悪いの?」

みつば「あんたが悪いに決まってるでしょーが! こぉの、勘違い女~!」

指で杉ちゃんの髪の毛のバネを弄るみっちゃん。全然拗ねてないし。

杉崎「な! も、元はと言えばあんたがいつも勘違いするようなことしてるのが悪いのよ!」

バネを弄る手を払いのけて言う。いつものように仲良く喧嘩。
ちなみに私は杉ちゃんと同じくみっちゃんが悪いと思う。
狼少年じゃないが、日頃の行いが悪いからこういうことになる。

反省して欲しいところなんだけど。それどころか他人の間違いに調子に乗る。
私の姉はこんな姉なのだ……。



~ 白日(みつば視点) ~

佐藤「おーい、ふたば、今日は川原でサッカーするぞ。覚えてるか?」

ふたば「覚えてるっスよ!」

ひとは「私もデパートに寄ってくから先に行くよ」

下校時間になり予定通り、ふたばはサッカーへ、ひとははデパートに向かった。
二人が教室から出て行ったのを確認して松岡に声を掛けようかと思ったが、どうやらいつの間にか帰っていたようだ。
まぁ、昨日の今日だし覚えているだろう。

みつば「私もちょっと用事あるから先に帰るわ」

私も早く帰ろう。そうしないとひとはが帰ってくるまで間に合わないかもしれない。
そして、そういうときに限って声を掛けてくる奴。

杉崎「途中まで一緒なんだし、先に帰る必要ないじゃない」

みつば「うっさいわね! 急いで帰るのよ、一緒に走って付いて来るって言うの?」

流石に此処まで言えば付いてこないだろう。

杉崎「みつばの走る速度なんて、精々私達の早足くらいじゃない」

自分がクラスでも足が速いほうだからって……まったくイライラする!

吉岡「え~、わ、私、みっちゃんより走るの遅いよ~」><

ナイスよ、吉岡! 忘れてたけど吉岡はクラスでもひとはと争えるくらい足が遅かったんだ。

杉崎「……まぁ、いいわ。急いでるんでしょ? さっさと行きなさいよ」

なんだかいきなりキレ気味に言われる。意味がわからない。引き止められてイライラしてるのは私なのに!
口に出してるとさらに遅くなる恐れもあるしここは我慢しておく。

みつば「……」

無言で睨み付けてから教室を出る。今出来る精一杯の抵抗だ。
でも、その時の杉崎の目は少し残念そうに見えたけど……気のせいかな?



急いで家に帰ると誰も居なかった。当たり前だそういう計画なのだから、そうでなければ困る。

帰ってきてすぐ、玄関のチャイムが鳴った。

玄関を開けて開口一番。

みつば「やっと来たわね!」
松岡「さっき家に入るとこ見えたのに、やっとってことはないよ」

みつば「こ、言葉の誤よ!」

ぐぬぬ……急いで帰ったのに、一度家に帰った松岡とほぼ同時に着くなんて……全部杉崎が悪いのよ!

松岡「それで……クッキー作るんだよね?」

みつば「ええ、そうよ。ひとりで作るのなんて簡単だけど、せっかくだから松岡の分も手伝ってあげるって言ってんのよ」

実際のところ一人じゃ作れる気がしない。昨日皆で作ったけど……作業分担してたし松岡がレシピ持って――

松岡「よかったー、材料は持ってきたけどレシピ忘れたからどうしようかと思ってたのよ」

――ないし!

みつば「ちょ、ちょっとレシピ無いってマジなの!?」

松岡「え…うん、忘れたよ」

みつば「……」

松岡「……?」

……終った。少なくともおいしいクッキー作れないだろう。
でも……今更どうこうする時間もないし……。

みつば「と、とりあえず、作るわよ! 」

確か最初は……。

“宮村さんからバターと砂糖貰ってボールで混ぜておいてくれる”

ひとはの言った台詞が脳裏に蘇る。
そうだ、バターと砂糖だ。

みつば「バターと砂糖よ! ボールで混ぜなさい!」

松岡「うん、えっと分量は?」
……。

みつば「……適量よ」

無理だ……そんなことまで覚えてない。

松岡「適量って……みっちゃんまさか……」

みつば「っ! 作り方なんて知らないわよ! レシピないんだから適当に作るしかないじゃない!」

………………。

…………。

……。



みつば「出来……た?」

松岡「う、うん……出来たんじゃない…かな?」

とりあえずお互いに“出来た”と言うが……。
明らかに昨日の物とは違う何かが出来てしまった。

見た目としては……えっと、ホットケーキとクッキーの間のような感じ。
味はまだ確認していない。
何となく食べるべきじゃないと、頭の中で誰かが警告してる気がして……。

松岡「これを、三女さんに渡すん……だよね?」

みつば「え、えぇ、そうなるんじゃない?」

……味見すべきだ…そのままひとはに渡すとか酷すぎる。
判ってるんだけど……うん。無理だ。

それは松岡も同じだったようで何も言わない。

でも……やっぱり……流石に……。
うん、だめだ。

みつば「……捨てようか?」
ひとは「何を捨てるの?」

松岡「何って、このクッキーを作ったつもりの何か――」

松岡の台詞が途中で途切れる。なに? どうしたのよ?

ふと、となりを見ると、ひとはが居た。
そう、ひとは。
……。

みつば「な、な何であんたっ! …っ!?」

後半は声にならない声を上げて、口をパクパクって感じで驚いた。
いや、だって、玄関開くような音聞こえなかったし、今一番着て欲しくないタイミングで現れるから。

ひとは「……クッキー? どれが?」

ひどい! いや、私から見てもクッキーみたいな何かだけど。

松岡「えっと、ね? 三女さんコレは、その……」

松岡も言い淀む……。

…………。

ひとは「これ、もしかして――」
みつば「わ、私からのホワイトデーのお返しと、松岡からの気持ちよ!」

勢いに任せてとりあえず言ったはいいがコレを食べさすのは酷だし……私はさらに付け加えて言った。

みつば「こ、今回は失敗したから後日改めて作り直すわ! わっ、わかったわね!」

ひとは「べ、別にいいよ……コレで」



~ 正直(松岡視点) ~

松岡「で、でもそれ美味しくないと思うし……」

ひとは「というか松岡さんはどうしてここに居るの?」

……当然の疑問だろうが正直凹んだ。

隣でみっちゃんが「(正直なあんたの気持ちを言えばいいのよ!)」と囁く。
ありがとう。みっちゃん。
勇気を出して、私は一歩三女さんの前に近づく。

すると半歩下がられた。またしてもちょっと凹んだ……でも!

松岡「三女さん、私ね! その……いつも幽霊関連で助けられて……学ぶことばかりですごく感謝してて……」

何を言うかなんて全然準備してなかった。思いついた言葉を正直に、詰まりながらも紡いでいく。

松岡「だ、だけどそれだけじゃなくて……普通に…普通の友達としてもずっと居られたらって……だから!
三女さんにバレンタインデーの時チョコレート渡さなかったこと後悔してて、それで……今日! ホワイトデーのクッキー作ったの!
だから……感謝の印と、友達の証として……」

顔が熱い。どうしてか判らないけど……すごく恥ずかしい。そして最後に……。

松岡「…あ、あんな失敗作でも受け取ってくれないかな?」

三女さんを見るとあからさまに同様してる……当たり前だよね。いきなり意味不明な事いって意味不明なもの渡そうとしてるんだから。

ひとは「え、えっと、……あ、ありがとう。受け…取るよ」

う、受け取ってくれた……。

へ、変に思われなかったかな?
いや、みっちゃんが言ってた通り変には思われたんだろうな…。
でも、良かった。

ひとは「……ら、来年のバレンタインデーの時お返しとして、私からもチョコ……渡すよ」

松岡「! 本当! 三女さんのチョコ食べれるのね! みっちゃんが羨ましかったのよね!」

ひとは「……ちょっと待って、さっきから気になってるけど……みっちゃん、なんで松岡さんは私がみっちゃんにチョコ渡したこと知ってるの?」

そういえば、内緒にしてたんだっけ? 口を滑らしちゃった?
口を押さえてそんなこと思ってると三女さんにフォローを入れられた。

ひとは「さっきの台詞の前から気が付いてるよ。まず二人でクッキー作ってる点とか、
みっちゃんの“ホワイトデーのお返し”って台詞に何も反応しなかった松岡さんとか……」

そういいながらみっちゃんを睨む三女さん。……なんか黒いオーラ出てるし……これが三女さんの力なのね!
みつば「ちょ、違うのよ! ワザとじゃないのよ! っていうか別にいいじゃないそのくらい!」

ひとは「っ! そ、そのくら……いいよ! 来年は松岡さんの分だけ作るから!」

みつば「え……あ、いいわよ別に! あんたなんかにチョコなんて貰わないわないし、受け取らないわよ!」

……あれ? 何だか喧嘩しちゃった?
そしてさっきまで重要な役回りだった気がする私が蚊帳の外になってないかな?



それから私が何も喋れないまま数分、二人は喧嘩してた。
いや、ちょっとは「喧嘩やめよ?」とか言ったけど悉くスルーされた。今日はやたらと凹む日だな。
それでも……それ以上に良いこと合ったと思う。

喧嘩の後半になってからはちょっとした取っ組み合いが始まったので流石に止めに入ったんだけど収まらない。

ふたば「ただいまー、あ、プロレスごっこっスね!」

ひとは&みつば「してない! してない!」

ああ、この二人も……いや、三人かな? 本当仲良いな……。



みつば「それじゃあまた明日」

ひとは「松岡さんまた明日」

ふたば「バイバイーっス!」

皆が見送ってくれた。
そのまま分かれようかと思ったけど、危うく忘れるところだった。
玄関を閉めようとしてるみっちゃんを呼び止める。

みつば「? なに?」

鞄からお菓子売り場で買ったクッキーのお菓子を取り出す。

松岡「これ。昨日と今日のお礼にって思って」

みつば「え……私に?」

松岡「クッキー作るの、私のせいで失敗しちゃったしお詫びとしてになっちゃったけどね」

みつば「ま、まぁそういうことなら、って言うかあんな失敗作よりこっちをひとはに渡せばよかったんじゃないの?」

みっちゃんの言うことは尤もかもしれない。でも。

松岡「コレはみっちゃんにって買ったものなの! それを三女さんに渡すのは二人に失礼だよ!」

みつば「……そう。わかったわよ。有難く貰って置いてあげる」

そういって、私の差し出したクッキーを受け取ってくれた。

松岡「それじゃ、今度こそまた明日」

みつば「はいはい、また明日」

そうして私は帰路に着く。

何となくふたばちゃんが帰ってきたときのことを思い出す。
あの時、みっちゃんが注意を引き付けてる間に三女さんがクッキー(?)を隠していた。
ちょっと前まで喧嘩してたのに、あの完璧な連携プレーには驚いた。
やっぱり、チョコの件だけでなく、三女さんのことを良くわかっているみっちゃんが羨ましく思う。

その後、三女さんとふたばちゃんもみっちゃんにクッキーを渡してた。
三女さんはさっきまで喧嘩してたこともあって、若干渡すのに抵抗があったようだし、みっちゃんはみっちゃんで受け取る側にも抵抗があるようだった。
でも、まぁ、ふたばちゃんの手前、喧嘩再開するのもアレだしで、とりあえず何事もなく事は済んだ。



……そういえば三女さんに渡したクッキー(?)は結局のところ、食べれるのだろうか?
ちょっと心配になったけど、明日みっちゃんに聞いてみようかな。



~ 蛇足(ひとは視点) ~

お父さんとふたばが風呂に入ってる今しかない。

隠してあったクッキーらしきものを取り出して、一口食べてみる。

ひとは「ぶっ!」

……塩辛い。絶対清めの塩だよ、コレ……。

みつば「ああ、松岡が砂糖足してるのかと思ってたけど、アレ、塩だったのね」

おわり