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「いくらなんでも早く来すぎてしまった…」
現在時刻は午前4時40分。人によっては深夜に分類されるかもしれない時間帯。遅めの日の出くらいの時間だ。
人には時々訳も無く早起きに成功してしまう場合があるが、私の場合元々朝早いものだからそれが更に早くなってしまった。
日曜は先生の家でチクビと遊びながらガチレンジャーを観賞する習慣があって、今日もその週末の恒例通りに来ただけなのに
基本私が先生の家に着いた時、先生本人は気持良さそうに寝ている。だからといって、流石に5時前はちょっと非常識な気もする。
チクビを愛しすぎて私まで夜行性になってしまったのだろうか。それともみっちゃんの言う通りババ臭くなってきているのが顕著に顕れてしまったというのか。
先生の住む安いアパートのドアの前で、がらにも無く優柔不断な挙動をとってしまう。
いつまでも肌寒い外気に触れているほどマゾじゃないので、いい加減ふっきれよう。
「お邪魔します」
いつもは言わない挨拶もついしてしまう。あと30分もすれば先生も私につられて起きるだろうし、さも今来たかのように振る舞えば何ら問題はない。
それまでチクビと遊んでいよう。

掌の上で私を可愛らしく見上げるチクビの姿は小動物特有の愛らしさをフルに活用するようで、うっとりするほど抱きしめたくなる。
まともに教師らしい事をした事が少ない先生も、チクビを連れてきた事だけは褒めてあげなくては。
しかし、いくらチクビと一緒でも朝の時間は長く感じる。餌もあげたし小屋の掃除を済んだ。はっきり言って暇に近い倦怠感がある。
いつも来ていた時間は丁度良かったんだなぁとつくづく感じる。暇でしょうがないので、先生が寝言で何回栗山先生の名前を呼ぶか数えてみようか。
…いや、別に面白くは無いしやめておこう。甲斐性無しの先生は夢の中でくらいしか幸せを掴めそうにないし、それを邪魔する程私は悪女じゃない。
話相手もとい、からかい相手に先生を起こそうか。前みたいにチクビが枕元に逃げたふりしてのしかかれば眠りの深い先生も起きるだろう。
でも…そうだ、先生は寝ていて、私は起きている。時間ばかりが余っている。この状況はとびきりの悪戯をしかけろと神様が言っているんだよ。
「ふあぁ~…んー……あれ、ひとはちゃん?今日は日曜だったよね、来てないのかな…」
「あ、先生…」
「あぁ、そこにいたの。おはよう、台所なんかで何してんの?」
「起きちゃいましたか…」
「そりゃ起きるよ、ガチレンジャーが始まるまでに目を覚醒させておかないとね」
まだ終わってないのに…本当間の悪い先生だよ。
「あれ、それって…ひょっとして朝ご飯作ってくれたの?わぁ、嬉しいな」
「チクビにもたまには餌以外で何か食べさせてあげないよ可哀想だと思いまして。
 もちろんハムスター用に作ってありますよ」
「何だやっぱりチクビか…」
「……せ、先生の分も、まぁ、一応…」
「へ、本当?」
「台所使わせてもらったお礼だと思ってください、ついでなので質素ですが、どうぞ」
「うん、全然美味しそうだよ、ひとはちゃんの料理一回食べてみたかったんだ」
「作ったといっても目玉焼きとトーストですよ」
「あぁ、そうなの…まぁでもありがとう、いただきます…
 あれ、チクビの分はもうチクビが食べちゃったの?」
「いえ、今からですよ、卵焼きあたりがいいかな」
「だって、ついでの僕よりチクビの分が遅いってどういうこと?」
「…え、いや……チクビの分は豪華に作ってあげようかと思って、試行錯誤してたんです」
「それで卵焼き?ふーん」
「別にいいじゃないですか、私が本気で作ったらそれはもう美味しい卵焼きが…」
「そんな凄い卵焼きが…」

先生が起きる前、顔に落書きしようかとか、歯磨き粉をすり替えようとか
寝言を録音しようかとか色々考えたけどどれもしっくりこなくて…それで結局
私が朝食を作っていたらなんていう、今考えると別に悪戯でも何でもない事に思い至ってしまい
それだけならまだよかったものの
作っている途中で先生が起きてしまったが為に先生をからかうネタも無いままに
いつもよりずっとキレの悪い言い訳しか思いつかず、勝手に恥をかいた気分。
これじゃただの優等生だよまったく…。

「ところでひとはちゃん」
「はい?」
「顔赤いけど、具合悪くない?」
「…え」