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「それでねっ!2組の須藤くんと里中さんが熱愛中なの!」
今日もまた目をキラキラさせながら、吉岡が『重大ニュース』とやらをあたしと杉崎に『こっそり』大声で報告してくる。
なぁ~んか最近、昼休みはコレが定番になってきてるな。
………そろそろ時間の有効な使い方ってやつを、真面目に考えた方がいい気がする……。

「確かに見えたの!
須藤くんが落ちたハンカチを手渡すとき、ふたりだけの秘密のサインが!」
それは絶対に気のせいだ。

真っ赤になって鼻息荒く語ってくれてる吉岡には悪いけど(?)、里中は佐藤派なんだよな。
女バスで一緒だからよく知ってるんだよ。

「…それにしても、よくまあ毎日こんなオリジナルストーリーを作れるわねぇ。
シチュエーションとか背景も毎回丁寧に作りこんでるし、なんかもう感動の域に達してるわ」
なんて言葉とは裏腹に、杉崎の顔に浮かんでるのはもちろん呆れだ。

「確かにな。
吉岡のパパの職業が職業だし、やっぱそういう才能とかあるんじゃね?」
「ちょっとふたりとも!もっとちゃんと聞いてよ!
超超重大ニュースなんだから!!」
「「はぁ~い」」

やれやれ、今日も長くなりそうだ……。
ま、吉岡が楽しそうだから良しとしとくかね。

「……そういえばさ、吉岡から見て佐藤はどうなの?」
しかし杉崎はこの状況を打開したかったのか、いきなり違う話題をふってきた。

「えっ?
えっ…えええぇぇっ!?なっ…なんでいきなり!?
そんな、えっと、もちろん佐藤くんは悪い人じゃないけど、正直ごめんなさいっていうか……」
「うぉい!ほんとに正直だな!」
そりゃそうだろうと思うけど。

「違う違う。そうじゃなくて、佐藤の周りに恋のオーラは見えないの?って事」
「ああ…なるほどな」

確かにあたしも気になってた。
クラスで、っていうより鴨小で…っつーか世界中探してもあれ以上わかりやすい男子はいないのに、
吉岡のセンサーは全くの無反応を続けてるってことに。
なんでなんだろ?

「なぁ~んだ、そういうことかぁ。
う~ん…杉ちゃんが期待してるところに悪いんだけど、佐藤くんの周りには特に何も感じないなぁ」
「……なんでよ?」
「だって佐藤くんも奇行が多いから」
「奇行~…?
そりゃ確かに佐藤はバカだけど、そこまでは行ってないだろ」
言いつつ、視線を移動させてみる。

「だからさ、エアロ系のスキルで固めたほうが強いって!」
「うっせ。
俺は弱点をカバーするより特徴を延ばすのが好きなんだよ」
「それで田渕はいつもスキルポイント余らせるじゃん!もったいねぇよ!」
と、佐藤は机をはさんで田渕と意味不明な事を真剣に語り合ってるところだった。
……多分ゲームかなんかの事だろうけど、確かにあのイタい姿は奇行といえなくも無いな。

「じゃあグラムザンバーは捨てろって言うのかよ!?」
「どうせタルカジャの重ねがけの方が強いだろ!」
議論はどんどん熱を帯びていって、もう殴りあいでも始めそうな雰囲気だ。すっげぇバカ丸出し。
ったく…男子って暇さえあればゲームの話ばっかして、ほんっとにガキだよなぁ。
余計なお世話なんだろうけど、もうちょっとマシな時間の使い方を考えた方がいいと思うぜ。

トテチテトテチテ

「しんちゃ~ん!」
「なんだよふたば」
明るい声で呼ばれた途端、いつも通り直前の行動をサクッっと打ち切って向き直る佐藤。
なんかスイッチでもついてんのかこいつ?
いい加減慣れたもんだが、それでもこの急激な温度の変わり方には呆れてしまう。
田渕も同じなんだろう、微妙に顔をゆがませて席に戻っていった。

…奇行ってこれか。

「昨日杉ちゃんにチブサの写真を沢山撮ってもらったんス!見て見て~!」
嬉しくてしょうがないって顔で、ふたばが写真を机に並べていく。前から思ってたけど、ふたばってネコバカなところがあるな。
三女もチクビのことになると目の色変えるし、似てないんだか似てるんだかわかんねぇ三つ子だよ。

「これはご飯食べてるとこ!チブサはカリカリが好きなんだよ!
そんでこっちは洗濯機に落ちちゃったとこ!ちょっとドジなんスよね~!」
一枚一枚、丁寧に状況を語りながら写真に込められた想いを説明していく。

「…へぇ…。
ふぅん……」
だけど返事はそれと正反対に、気の無いものばっかりだ。

だって佐藤の視線が写真を向いていたのは最初の3秒だけだから。

「…ははっ、そっか」
ゆったりと頬杖をついた佐藤が、優しい微笑を浮かべながら甘い声で囁いている。

なんて勘違いする女子もいるんだろうけど、中身がすっからかんな実態を知ってるあたしらは、
『また美化300%のしょーもない想い出に浸ってるんだろうなぁ。キモ』、くらいしか思い浮かばない。
いやほんと、こいつくらい単純に生きられたら人生楽しくてしょうがねえだろうな。

「ねっ!かわいいでしょ!!」
ふたばが顔を上げる、だけで教室が明るくなる。
…気のせい、じゃないと思う。だって今はクラスのみんなが視線を向けているから。

「お前が1番かわ……」
そして視線の集まる中、思わず本音を漏らしかけるバカが1人。

「………………………………………………………………………………………………」
完全にフリーズした…お?

ガタン

……勢いよく立ったと思ったら、黒板に歩いていって ガツン! うわっ!なんか頭をぶつけだしたぞ!!

ガツン ガツン ガツン

さらに3度ぶつけてやっと気が済んだ(なんのだか)のか、また席に戻っていく。

「ああそうだな。この鯵の切り身に警戒してるのなんて、すっげぇ可愛いよ」
「し…しんちゃん、頭から血が……」


視線を戻し、呆然としちゃってる吉岡に賛辞を送る。
「お前が正しい」


<おわり>