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気づけば既に黄昏時。放課後の時間にかまけて、チクビと遊びすぎてしまったようだ。
校舎内にする気配はまばらで、不気味な静けさを漂わせている。
急ぎランドセルを背負い、家路へとつく。

校庭に出たところで気づいたのは迫り来る雨雲。
この時期の風物詩ではあるけれども、それに降られる前に帰っておきたい。
急ごう。

「あれ、ひとはちゃん?」

こんな時に空気を読まないのは私の知り合いでは一人しか居ない。どんよりと見上げる見知った顔。

「先生」
「今、帰りかな?」

生徒がこの時間にランドセルを背負い、校門に向かっているとしたら答えは一つしかないだろうに。
ただ、その問答も今は時間の浪費になる。だから私は素直に応じる。

「はい、先生もですか?」
「そうだよ、じゃ、帰ろうか」

…小学生と大人が歩いていたらそれだけで通報されそうなこのご時勢に、この人はかなりお気楽だ。
最も、忠告などはしてあげないが。

「あんまり天気が良くないね」

先生と歩く通学路。時期が時期だけにただ歩いているだけで汗ばんでくる。
話をするのも疲れるので会話はしない。別にそれで居心地が悪いわけじゃないから構わない。
私と先生。それでいいのだ。
…っと。

「あちゃー、降ってきちゃったね、急ごうか」

とか言いながら先生は歩調を早めた。それについていく私も律儀なものだ。
が、それでどうなるわけでもなく、無情に雨は吹き付ける。勢いを強めながら。
…これはダメだね、雨宿りしよう。先生、ちょっと止まりましょう。
「あはは、濡れちゃったねぇ…」
「まぁ、まだずぶ濡れじゃないからマシですけどね…傘があれば良かったんですけどね」
「あっ!あ、あは、あはは…」

…先生、私、先生が童貞の理由が良く分かります。

「持ってるんですね」
「お、折り畳み傘だけどね」

ふぅ、この人は…。

「ちょっと待ってね、傘を開くから」
「傘があるのは正直助かりますが、先生にしては準備がいいですね」
「ひとはちゃん、ひどっ!?」

酷くないです。

「さて、傘はあるんだけど…ひとはちゃん、これじゃ濡れちゃうよね」

私と先生の相合傘。言葉だけならば悪くないんだけど…現実を見れば、大きな身長差。
一緒に歩くのは不恰好だろうか。
なんだか、気分がよろしくない。

「問題ないです、私が借りれば済む話なので」
「えぇ!?僕は!?」
「濡れて帰るか、雨宿りを続けるかを選ぶしかないじゃないですか」

そんなわけない、先生と歩んでる道。自分で投げ出すはずが無い。

「ひとはちゃん、僕泣いちゃうよ!?」
「はぁ…仕方が無いので一緒に帰りましょう」

本当にめんどくさい人だ。私は…。

「え、でもさっきも言ったけど濡れちゃうんじゃないかな」

この人もめんどくさい人だ。私はそれでも同じ傘に入りたいと思っているのに…。
けど、絶対止めるんだろうなぁ…。だから。

「どこかコンビニでも寄ってください。そこでビニール傘を買います」
「ん、そっか。じゃあそれまで一緒に行こうか」

先生の傘は小さくて。小さな私の肩は濡れていて。大きな先生の肩はびしょ濡れで。

だから。

いつか、肩を並べて一つの傘に――――。