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~ 相互(みつば視点) ~

みつば「……」

杉崎「……」

どうしてこうなったのよ!
折角ドMが来て二人っきりじゃなくなったって言うのに、またすぐに二人っきりだなんて……。
ドMの奴なにが「ちょっとママ、デパートに寄る所があるの、みくちゃんちょっと待ってて」よ!

というか、さっきまで二人で普通に話しできてたのに……あー、もういいや!

みつば「わ、私もう帰るわね!」

そう言って私はさっさと帰ることにする。
もとより私がドMを待つ理由なんてないわけだし。
それにもう5時半を過ぎだ。季節は秋、外はもう夕方とは言い辛い暗さ。

杉崎「え……あ、そう…ね」

そう杉崎が曖昧な反応を返す。
ちょっとは普通に反応してきなさいよ、まったく……。

そして私は帰るために足を踏み出した時。

杉崎「み、みつば、きょ、今日は楽しかったわね!」

みつば「ば、ばかじゃないの! デ、デート終わった後みたいな台詞いわないでよ!」

言葉の選択肢どう考えても間違ってるじゃない!
そんなこと急に言ったら、間違いでも恥ずかしいし、周りが勘違いしたらどうするのよ!

杉崎「あ……」

杉崎は自分の台詞を思い出してか下を向いた。
みつば「あんたは……楽しかったのね」

空気を変えようと、挑発しようと思って言うはずだったが、なんだか言うのが恥ずかしくて声のトーンを落としすぎた。
でも、挑発だと解釈できたのか、恥ずかしく思っただけなのか杉崎は反論してきた。

杉崎「っ! 楽しい訳ないでしょ! あんたと二人っきりだなんて疲れるだけよ!」

けど――

杉崎「さっきのは、言葉の誤なんだから本気にしないでよ!」

――そういわれるとなんだか腹が立つし……寂しかった。

みつば「そう……そんじゃ帰るわね」

特に反論する気もなく帰るために後ろを向く。

杉崎「っ! ま、待って!」<ガシッ>

そういって私をまた引き止める。そして杉崎の手は私の腕を掴んでいた。
振り向くと、そこには下を向いた杉崎。そのまますぐに口を開いた。

杉崎「嘘よ……確かに疲れはしたけど……それ以上に楽しかったわ」

みつば「す、杉崎?」

私は急な杉崎の言葉に混乱する。

杉崎は、バッと顔を上げて私を見て言った。

杉崎「私は楽しかったわ! ……あんたは! あんたは楽しかったの!?」

デパートの光で照らされた杉崎の顔は真っ赤で、そして真剣な顔だった。

杉崎「どうなのよ!」

私は言い淀む。実際どうなんだろう。
楽しかった? 楽しくなかった? 疲れた?
沢山の答えが浮かんだが、判らなかった。
適当なことをいうのは簡単だけど……でも、真剣にされた質問には、真剣に答えたかった。

最初は楽しみだった。皆でわいわい騒いでどっちがセンスがいいのか決めて、勝敗なんて関係なく楽しめる、そう思っていた。
でも、結局、勝負の当事者二人だけでデパートに行き、気を使いながら、無駄に緊張をしながら――

杉崎「……楽しくなかったのね……あんたは」
私が答えを整理し終わる前に口を挟む。

みつば「あ、ちょっ……」

杉崎は私の腕を乱暴に放して、私が何か言う暇を与えずに携帯で電話を掛けた。

杉崎「あ、ママ、私先にかえる…………うん、大丈夫……それじゃ」<ピッ>

みつば「ちょっと! 杉崎!」

電話を終えた杉崎に、そう呼びかけてもまるで聞こえてないように立ち止まることもせず去っていった。


……。

???「今のはみっちゃんが悪いわね」

っ! だ、誰!? 振り向くとそこには――

松岡「すぐ追いかけるべきだよ……ね、三女さん!」

ひとは「なんで、急に飛び出すかな……松岡さん」

――ま、松岡とひとは!?

ひとは「っていうか、手、放して!」

松岡「あ、ごめん。でも共犯だから出頭した時も一緒じゃないとね!」
みつば「なんで、あんた達……っていうか共犯ってなによ?」

松岡「それは私達が――むぐぅ」
ひとは「ちょ! 他言無用って言ったよ!」

そういって松岡の口を押さえながらひとはは言った。
良くわからないが二人の秘密らしい……仲いいわね。

ひとはが松岡の口を押さえたままで続けて言う。

ひとは「みっちゃん……追いかけなくていいの? 杉ちゃん、きっと悲しんでるよ?」

みつば「な、なんでそんなこと判るのよ!」

そう答えると、ひとはは大きく嘆息してから答えた。

ひとは「みっちゃんも杉ちゃんに楽しくないって否定された時、悲しくなかった?」

……わかってる。わかってるわよそんなこと。
私からも言わなくちゃいけないって、そうしないときっと、私が悲しんだように杉崎も悲しむって。

杉崎も私がそう感じたからこそ、引き止めて、恥ずかしいのを我慢して本音で言ってくれた。

ひとは「杉ちゃんも、きっと一緒だよ」

そう、一緒なのだ。自惚れかも知れない。そう思ってた時もあったし、私自身杉崎なんて嫌いなはずだと思い込んでいたこともあった。
でも、一緒に下校するようになってから……いや…もっと前から、杉崎を案じてる私が居て……私を案じてくれてる杉崎が居た。
今日だって、私が洋服代を気にしてるとき気を使ってくれてた。

だったら、追うしかないじゃない!

みつば「……ひとは、私の分の夕飯ちゃんと残しておきなさいよ!」

そういって私は二人を置いて走った。
まだ答えなんて見つかっていないが、今からでも…会ってからでも考えればいい。




~ 電話(杉崎視点) ~

私は、デパート出てまっすぐ帰らずに、誰も居ない脇道に入ってしゃがみこんでいた。

馬鹿だな……私。
急にあんなこといって……。

みつばは何だかんだ言っても、私のこと心配してくれたりするけど……その優しさは、私にだけ向けられてるわけじゃない。
あんな性格だけど皆に優しい。別に勘違いしてたわけでもなくわかっていた事。
それなのに……。

今日は一人で舞い上がってたのかな……私。
全然そんなつもりなかったのに。

実際、みつばに言った通り気を張りっぱなしで疲れはしたけど、本当に……本当に楽しかった。
いつも皆と一緒の時も楽しいけど……それとは違う、なにか新鮮味のある特別な時間だった。

携帯を取り出し、今日撮ったデニムスカート姿のみつばの写真を見る。
今日のことを思い出し唇が軽くつり上がるのが判った。でも――

杉崎「私は……楽しかったのに……どうして? ううぅ……――」

――それは同時に悲しいことだった。
そして、悔しかった。……私だけが楽しんでたということがどうしようもなく、悔しかった。
私は声を必死に押し殺して……それでも目から溢れる涙は止められなかった。


しばらく泣いて落ち着いた。

あー……なんでみつばの為にこんなにも辛い思いしなきゃいけないのよ……。
って言うか、みつばから言い出した勝負よ!
私はそれに付き合っただけじゃない! なんで私のほうがこんな辛い目に会わなきゃいけないのよ……。

……この感情が開き直りってことは自覚してる。
人間の本能と言うか性質というか……そういうのには本当に驚かされる。
開き直りってこんなにも便利なものか。

開いたままだった携帯を操作してバックライトをつける。液晶に現れた数字は18:55、もうすぐ7時……どんだけ泣いてるのよ私。

メールが一通来ていた。差出人はママ。内容は少し遅くなるというものだった。
まだ、私がこんなところに居るなんて思っても見ないだろう。

とりあえず帰るために立ち上がる。
長い間しゃがみ込んでいたためか膝が少し痛かった。

杉崎「っと……はぁ…さっさと帰って寝ようかしら」

なにも悩むことない。明日からいつも通りにしていればいい。
それが私の望む形であり、みつばの望む形のはずだから……。

脇道から本来通る道に戻った。

外はいつの間にか完全に夜となっていて、風も肌寒い。

私は俯いたまま、帰路に着く。
足取りは重くて……荷物は多くて嫌になる。

そう思ってしまうのはやっぱり無理してるってことなのだろう……。
あんなことさえなければ、こんな気持ちで帰ることもなかったはずだから。
<♪~~>

携帯の着信音……ママだろうか?
携帯を取り出して確認すると……丸井家……。

十中八九みつばだろう。……応答すべきだろうか?

私は迷った挙句、約10秒着信が続いた時に応答した。

杉崎「もしも――」
みつば『ちょっと! あんた今どこに居るわけ!』

あまりの大声に携帯を耳から離す。
まったく、いったいなんなのよ……。

杉崎「別に……どこだっていいでしょ?」

みつば『よくないわよ! 家に行ってもドMもあんたも帰ってないって言うし、どこほっつき歩いてんのよ!』

だからそういうことじゃなくて。

杉崎「なんで、みつばにどこにいるか言わなきゃならないのかって言ってるのよ、この雌豚!」

みつば『っ! なんです――』ひとは『(ちょっとみっちゃん、冷静に話すって言ってたでしょ? って言うかさっきからうるさい)』

私の悪態に反応したが、途中で受話器の向こう側からひとはの声で制止が掛かったようだ。

みつば『ど、怒鳴って悪かったわね……とりあえず、あんたと直接会って話がしたい訳よ。どこにいるか教えてくれない?』

あまりに急すぎる態度の変化に笑いそうになる。なに? 私に気でも使ってるのだろうか?
でも……やっぱりみつばと話すのは、本当楽しいわね。

杉崎「別に電話でも話くらいできるじゃないの?」

みつば『そ、それはそうだけど……』

言い淀むみつば。
はぁ……。直接会って話したいこと……か。
杉崎「……デパートを出てすぐの通りよ」

大体何を話しに来るかなんて想像は付いてる。

みつば『あんた、なんでまだそんな所にいるわけ?』

杉崎「さぁーね。忘れたわそんなこと」

みつば『何によそれ……とりあえずそこで待ってなさい今から行くから!』

杉崎「嫌よ。帰ってる途中なんだから」

みつば『っ! い、いいわよ! あんたの家の方からそっちに向かうから! 絶対回り道とかするんじゃないわよ!』<ガチャ!>

そういって、私の返答を待たずに切られた。

……私に答えを返すつもりよね?
だとしたら、答えは「私も楽しかった」だろう。
誰にでも気を使えるみつばだ。この答えで決まりだ。

それは私の求めていた答え。でも……気を使ってのその答えは、惨めなだけだ。

杉崎「まぁ……別にいいけど」

もう、惨めでもなんでもいい。
さっさとこんなこと忘れて、いつも通りに話がしたい。
とりあえず今はどんな顔して聞けばいいか考えておこう。





みつば「こっ、今度、もう一度二人でどこか行くわよ!」

杉崎「……へ?」




~ 返答(みつば視点) ~

私の非常に恥ずかしい台詞を聞いて、杉崎は予想外の答えに驚いてるようだった。

あー、私、顔から火が出てるんじゃないかしら?
湯気くらいなら当然出てるだろう。

――って、自分のことで精一杯で気が付いてなかったが杉崎の目元……赤くない?

みつば「あ、ちょっと、今の話は置いといて――」
杉崎「え? な、なんで置いておくのよ!」

いや、そんな身を乗り出してまで突っ込み入れなくても……。

みつば「そんなことより、あんた……泣いてたの?」

杉崎「ふぇっ!」

私がそう言うと、杉崎は間抜けな声を上げた後、私から距離を取って――――というより私を突き放して――――顔を隠すため慌てて後ろを向いた。
今更隠したところで意味ないわよ……。

みつば「……なにかあったの?」

杉崎「な、なんでもないわよ!!」

そのことに触れるなと言わんばかりの態度。
なんだか知らないが勢いに圧倒された。

……まぁ、見た所暴力とかされたようにも見えないし、此処まで嫌がってるんだから追求はしない方がいいかも知れない。
なんたって態々質問に答えに来た理由の半分以上は、杉崎のご機嫌を取りに来たようなものだし……何してるんだろ私。

でも、べつに杉崎が喜びそうな答えを選んできたわけじゃない。

杉崎「それより、……置いておいた話に戻しなさいよ」

後ろを向いたまま杉崎が言う。
その言葉に私は考え事を中断した。

……杉崎が後ろ向いてるっていうのは、正直私もやり易い。
それでも恥ずかしいけど……仕方がない。
みつば「も、もう一度言うわよ? 今度もう一度二人でどこか行かない?」

杉崎「……」

みつば「……」

訂正。全然やり易くない……。

みつば「……な、何か言いなさいよ! あんたの問いに対して考えた答えなのよ!」

杉崎「どういう、考え方すれば、そんな答えになるのよ! っていうか答えになってないじゃない!」

な! ちゃんと真剣に考えた答えを……答えになってないですって!
……。

問い:楽しかったですか?
答え:もう一度二人でどこか行きませんか?

……なってなかった。
って違う!

みつば「だから! 私は楽しかったかどうか良くわからなかったのよ!」

そう、だから考えた答えが――

みつば「もう一度二人でどこか行くことで、ハッキリさせたかったのよ!」

杉崎に答える暇を与えず、私はさらに続ける。

みつば「あんたが真剣にしてきた質問でしょ! ……た、たまにはちゃんと考えて答えてあげようって思ったのよ……」
杉崎「……へ、へー、そう…なの……」

みつば「……」

杉崎「……」

なんでまた沈黙なのよ……。
超が付くほど恥ずかしいのに!

しびれを切らして私は声を発する。

みつば「……さ、さっさと質問に答えなさいよ! まったく使えないわね!」

でもその声は、恥ずかしさを紛らわすために一言余計な事まで付け足してしまった。

杉崎「な! ……わかった、答えてあげるわ……行かないわよ!」

みつば「はぁ!? なんでよ、あんた楽しかったんでしょ? だったら――」
杉崎「ええ、そうよ! でも行かない!」

きっぱりとそう告げられる。
そして、私が切り返す前に更に付け加える。

杉崎「あんたなんか今日楽しかったのか、楽しくなかったのか一生悩んでればいいのよ!」

こ、この女~~~!
私に蟠りが残るのと、自分が楽しめるのを天秤にかけてその答えに行き着くとか……最低ね!

……と行っても私が余計な一言つけたからこんな事になったのかも知れないけど。
だから杉崎が怒るのは当然。
そして、私も――

みつば「どうしても行かないって訳ね。この性悪女……意地だけは一人前なんだから……」

――一言どころか二言も多い発言……やっぱりこうなる。
わかってはいるのに、口が勝手に動いてしまうから。
杉崎「! あんたに言われたくないわよ! 体重だけは二人前の癖に!」

みつば「そ、そんなに重くないわよ! パッとボロ雑巾のように捻じ切れてしまえ!」

まぁ、こうやって喧嘩するのも悪くないと思ってるのが一番の原因な気がする。
いや、むしろこれが自然体と言うべきだ。
……でも二人だけだと、この喧嘩終わらないだろうな。



いや……これならいける!

そう思いついたのは、杉崎も私も息切れを起こし始めた時。
一息ついたタイミングを見計らって提案する。

みつば「なら、これでどう? 明日のお洒落勝負、私が勝ったらどこか行くわよ!」

杉崎「ふん! 臨むところよ! 庶民の選んだ服なんかに私が負けるわけないわ!」

もう、私も杉崎も恥ずかしいとか無くなって、いつもの喧嘩だ。
いやまぁ、よくよく考えればきっと恥ずかしいこと言ってるんだけど、よくよく考えてないので大丈夫だ。

勝負の約束を再度取り付けたところで、丁度杉崎の家……今更ながら付いてき過ぎた、これじゃ少し遠回りだ。
そんなことを考えていると、杉崎が突然、突拍子もないことを言う。

杉崎「みつば……ありがと」




~ 二人(杉崎視点) ~

そう、それは些細な問題でしかなかった。

私がみつばの気持ちに、一喜一憂しなければならないことなんてない。
だって、私はこうやってみつばと会話――――と言うより喧嘩なんだけど――――しているだけでこんなにも楽しいのだ。

少し前までなら、無理してるって言える発言だと思う。
今も気にしてないわけじゃない。でも……あの時の自分に言ってやりたい、「みつばが楽しくないなんて、喜ばしいことでしょ!」って。
雰囲気に流されただけだ。いつもならそんなに落ち込むようなことじゃない。

杉崎「みつば……ありがと」

私は自分の家を目の前にして、みつばを見ずに呟く。
みつばに、無性に発したかった言葉。

――それは、態々私に真剣に答えを言いに来てくれたみつばに言いたかった言葉。
――それは、私達の関係になんら変化がないってことを教えてくれたみつばに伝えたかった言葉。
――それは、……傍にいてくれて嬉しかった私からの気持ちだった。

みつば「な、何よいきなり……何に対しての感謝なのよ!」

杉崎「……さぁ? その空っぽの……いえ、脂肪の詰まった重い頭で考えて見たらどう?」

後ろを向いていても、みつばの悔しがる顔が容易に想像が付く。
そのまま家に中に入っても良かったのだが、その顔見たさに私は振り向く。
物のついでに此処まで付いてきてくれたみつばに、“みつばに取って大事なこと”を教えてあげることにした。

杉崎「あんたも、さっさと家に帰りなさいよ……“夕飯”、まだなんでしょ?」

悔しがっている表情を一変させる。
流石みつばね。期待を裏切らない反応。それっ! <ピロリロリーン♪>

そんな、みつばの表情の変化を、私は携帯に閉じ込める。
これも同じだ、私だけ楽しんで、みつばは楽しんでなどいない。
でも、問題ないじゃない。それが辛いだなんて思ったこともない。

逆もそうだ。みつばが楽しんでる状況があったとしても、私も共に楽しめるとは限らない。
つまり、お互い様って事。
私達二人は、お互い捻くれ者同士なのだ。

だからこそ、私はみつばの誘いを一度突っ撥ねた訳だし。

でもね……明日の勝負に貴方が勝った時の約束……二人でどこかに行く時は、貴方にも楽しんでもらうんだから。
もし貴方の出した答えが“楽しくない”だとしてもどこか一点でも楽しんでもらうわ。
そして、私は貴方が悔しがるほどに楽しんでやるから。

みつばは私に文句を言いたそうな顔をしながらも、私から背を向けた。

はぁー、まったく……私への文句より夕飯のが大事とは妬ける(?)話だ。
そう思いながらも私は笑っていた。

おわり