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これが杉ちゃんのパソコンにある、みっちゃんコレクションか……。
みっちゃんの下着姿、着替え中、などなど酷いものを見た。

ここは杉ちゃんの家。
非常に珍しいことに部屋には私と杉ちゃんしかいない。

「ちょっと、これ……すごいわね! いくら払えば私にくれるの?」

杉ちゃんが興奮気味に私に話しかける。
私はみっちゃんの生着替え動画――――動画まであるとはほんとただの犯罪者だよ――――を見ながら杉ちゃんの方に振り向きもせずに答える。

「見てもいいって言ったけど、売るなんていってないんだけど」

そう言い終わるタイミングで生着替え動画も終わる。さて、次はフォルダー“みつばパンツコレクション”を開いてみようかな。

「うぅ、欲しいわ~」

あぁ、うるさいな。
後ろからねだるように杉ちゃんの声が非常に耳障りだった。

「みっちゃんの写真を2度と取らないって覚悟があるならタダであ――」
「見るだけにしておくわね!」

そんな約束してもらってもあげるつもりなんて無いが、狙い通り静かになった。

ちなみに杉ちゃんが見てるのは、私の日記、別名『雌豚飼育日記』だ。
少し前に家に来た時に日記の存在に気が付かれてしまったので、この際見せてあげる代わりに、杉ちゃんのコレクションを見せて貰っているわけだけど。
うん、どれもこれも酷い。そんな日記売らなくても、訴えて賠償金請求するだけで家族全員遊んで暮らせるくらいには酷い。

「それにしても、ほんとみつばのことばっかりね……」

日記を見ながら杉ちゃんが言う。
そっくりそのまま台詞を返してやりたいが、きっとそれは蝸牛角上の争い。
その言葉を自分の中に留めておいて、普通に質問に返す。

「……みっちゃんにもそれ言われた…それからはところどころ私のこと書いてあるはずだけど?」

そう、過去の日記は8割くらいみっちゃんのことばっかりだった気がする。

「まぁ、そうだけど……それでも7割くらはみつばこのことじゃない?」

え……そうだったっけ?
せめて5割くらいじゃないの?

日記を奪ってざっと見る。……7割から8割くらいだった。
なんてことだろう、みっちゃんに指摘されてから然程変わっていなかったとは……。
「う、うるさいな……みっちゃんが一番面白いネタになるんだから仕方が無いんだよ」

そう言って日記を杉ちゃんに返す。
実際そうだ。トラブル持ってくるのは大抵みっちゃんであり当事者もみっちゃん。
みっちゃん以外書くことが無いからこうなってるだけだ。……たぶん。

それから日記を一通り読み終わった杉ちゃんが私に質問を投げかける。

「で、私のコレクションの方はどう? “凄い”でしょ?」

「うん、とっても“凄い”変態画像集だね」

「でしょー……って変態って何よ!」

「私今“凄い”引いてるよ」

「そこなの!? “凄い”をつける所!」

「杉ちゃんって“凄い”よね、いろんな意味で」

「さっきの台詞聞いてからだと悪意たっぷりにしか聞こえないわよ!」

「え? “凄い”悪意たっぷりだよ?」

「っ! いいわよ、もう見せないから!」

怒らせてしまった。どうやらからかい過ぎたようだ。
杉ちゃんもみっちゃんに似てる部分があるからついついからかってしまう。

それにしても、盗撮しておいて、独り占めとは……。
みっちゃんを独り占めしてるようで、妙に腹立たしい。
ということで――

「別に下着姿も大抵家で見えるし。……お風呂も水道代節約で一緒に入ってるし」

――杉ちゃんが羨ましがるようなことを言ってみる。
……正直、言ってから気が付いたが、私も結構恥ずかしい。

すると私の台詞を聞いて、案の定悔しがる表情を見せてから噛み付いてくる。

「っ! なんであんた、コレクション見たいだなんて言ったのよ!」

「今の杉ちゃんの変態っぷりを調査するためだけど……私“凄い”引いてるよ」

「もう“凄い”はいいわよ!」

ああ、しまった。またからかってしまった。

その会話が終わると杉ちゃんはまた私の日記を開いて読み始めた。
私も杉ちゃんのコレクションの続きでも調査しよう。

と言ってもさっき言ったとおり大抵は家でも見れる光景が多い。
……それなのに、なぜだろう? 私は調査という名目の割りに楽しんでいる気がする。
みっちゃんの走っているところ、食べてるところ、頑張ってるところ、高笑いしてるところ……何気ない一枚一枚なのにだ。

家でも、学校でもいつでも会えるのにどうしてだろう……。

私は別段珍しくも無い画像を見て自然と口元が緩む。

「なによ、興味津々じゃない?」
「っ!」

いつの間にか後ろに居た杉ちゃん……趣味悪い――のはこのパソコンを見ればわかりきった事か。

「なになに? 何に興味示してたの?」

「え、ぁ……えっと」

私は顔が熱くなるのを感じた。
口篭る私。興味ない振りしてて一生懸命みっちゃんの画像を眺めてるところを見られたからって言うのもある。
でも、それを抜いても私は答えをすぐに言い出せなかっただろう。

どうして私は、何時も見てるはずのみっちゃんを見て楽しめていたのだろう?

「ちょっと、なに黙ってるのよ。教えなさいよ!」

そう杉ちゃんに言われて、とりあえず今開いているフォルダーの中で、なんとなく一番気に入った一枚を指差すことにした。

「んー? あぁ、これね。いい顔――じゃなかった、面白い顔してるでしょ? これはね――……」

杉ちゃんが写真の説明を饒舌にし始める。
私はと言うと、聞いてなかった。それはただ単に興味が無いとかじゃなく疑問が解消され、説明が耳に届いていなかったから。

杉ちゃんの言ったように、今パソコンに写っている画像には、いい表情の――何かに胸を躍らされているような……そんな表情のみっちゃんがいた。

そう……私はみっちゃんの表情を見てたんだ。

時折見せる悲しい表情、失敗してばつが悪そうな表情、本気で心配してる時の表情。
このパソコンの中には沢山のみっちゃんの感情があった。

それは、普段一瞬しか見せない表情も沢山あって……見ようと思っても見えないものであって。
だから私は、見てて楽しかったんだ。
「――ってわけなのよ。ほんとみつばって、馬鹿よねー♪」

杉ちゃんが満面の笑みで嬉しそうに、まるで自分の出来事を自慢するかように話を終え、同意を求めてくる。

「え、あ、うん、そうだね」

とりあえず、適当に相槌をしておく。
そして、杉ちゃんの説明が終わり一息ついたとき私が話しかける。

「杉ちゃん、何となくわかったよ。杉ちゃんのコレクションの“凄さ”」

沢山の表情を閉じ込めてる杉ちゃんのみっちゃんへの愛……と言うより執念。
正直、かなわないと思った。
一番近くに居るはずの家族である私ですら、こんなに沢山の表情を知らなかった。

「また“凄さ”って、それはもいいって言ったじゃない……」

「違うよ、本当の真面目な意味で“凄い”って思ったんだよ」

そういうと「そ、そう?」と照れながら顔を背けた。
褒めて欲しかった、もしくは自慢したかったはずなのにいざ褒めるとこれだ。
本当、どこぞの雌豚にそっくりなところ。

すると「こ、これなんてどう! 私の一番のお気に入りなんだから!」
そう言って“お気に入りのみつば”のフォルダーを開いてみせる……フォルダー名には突っ込まないでおこう。
私は、今度はどんな表情のみっちゃんがいるか期待していた。

……あ、うん、期待して“いた”。過去形。

そこには卑猥な画像ばかり……物によっては顔も写ってないものもあった。
……やっぱりただの変質者だったよこの人。

「さて、松岡さん呼んで供養しようか」

「ど、どうしてそうなるのよ!」

その後、松岡さんが来て供養を全力で阻止しようとする杉ちゃんを見て今更ながら思う。

みっちゃん……大変だな……。

おわり