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「なぁ、三女。お前ら付き合ってんの?」
俺からの突然の質問に三女がものすごく呆けている。

「私と誰が…?」
「矢部っちとだよ」
「…つまりしんちゃんは、キモオタで童貞で口調がカマっぽくて足が臭い人を、私が好きになると」

酷い評価だ。

「この前のプールなんて完全に夫婦漫才してただろ。
あんなもん見たら付き合ってると思うぜ」
「あれは私と先生の普通だよ、先生とはまだ付き合ってないよ」
あの空気を普通とか、まだ、って…あんだけ欠点挙げておいてこいつ…。

「まぁ確かに矢部っちにはそんな甲斐性なさそうだもんな」
…あれ、三女から心なしかオーラが…

「しんちゃんがそんなこと言うかな」
「どういうことだよ」
「しんちゃんが私に付き合ってないか聞いたのは、自分とふたばに一押しが欲しいからでしょ?
他人の関係性にそんなの求めてる時点で甲斐性なしだよ」
「お、俺は別に…」
「しんちゃんは分かりやすいんだよ。ふたばのチョコだけしか食べない時点で誰だって分かるよ」
「ぐっ…」
肝心の本人は全然気づいてねーけどな!
「それじゃ、頑張ってね」
それだけ言い残して三女は去っていった。


―――――――――

くそっ、ばればれかよ
けど…確かに、自分たちのことを他人の関係性に求めるのはおかしいよな。

「しんちゃーん、一緒に帰ろっ」
考えがまとまらないうちに俺を悩ませている元凶が来た。
「お、おうっ」
うわ、声が上ずった。本人のこと考えてる時に本人が来るんだもんな…。
「どうしたの?」
ふたばが俺の顔を覗き込んでくる。顔が近い。これが無意識なのは反則だろ。
「な、なんでもねーよ、帰ろうぜ」
「うん!」
「なんだよー、イケメン様は今日も女連れかー」
今このタイミングで茶化すな、千葉。意識しちゃうだろーが。
それを表に出さないために、俺はできるだけぶっきらぼうに返す。
「うっせー千葉。一緒に帰るぐらいいいだろ」
「ぐらいって…お前ら付き合ってんの?」
「はぁ!?」
自分が発した言葉が返ってくるなんて思ってもみなかった。
これは確かに呆けるか驚くかしかないな。三女には悪いことをした。
つか俺とふたばが…付き合って…。

「普通は『ぐらい』とか言わねーと思うけど…まぁお前らの場合時間の問題だよな」
俺とふたばはそんな風に見られてるのか。…ハズい。

「うるせー!もう行くぞ、ふたば」
「あぁん、しんちゃん待ってよー」

―――――――――――


チラッ
くそっ、千葉が余計なことを言うからふたばが気になって仕方ない。
普段一緒にいるといっても、意識するとふたばはやっぱり可愛いしな…。

「しんちゃん、どうしたの?」
「な、なんでもねーよ」
なんでもないわけがない。どうしてもふたばに視線がいってしまう。
チラッ

「……ねぇしんちゃん、さっきのこと気にしてる?」
「うぉっ!?」
時々鋭いんだよな…。何もこんな時に気づかなくていいと思うが。

「あんなの気にしなくてもいいっスよ。しんちゃんは小生と付き合う気はないだろうし…」
…?何を言っているんだ?
「ずっとずっと一緒にいるけど…しんちゃんからは何にもないし、そういうことっスよね」
違う、それは違うぞふたば。
「しんちゃんはかっこいいから、色んな人に好かれてるし…」
そんなことは関係ない。誰から好かれようと俺が好きなのは、
「小生は女の子らしくないから―――」

時間の問題なんてありゃ嘘だ。時間がどうにかするのは諦めだけ。
求めるなら動かなければならない。大切なことは伝えなければ理解されない。
だから俺は、これ以上ふたばの寂しさを聞く気はない。言わせる気もない。

「んっ―んん――」
柔らかい。
勢いのついた俺の口。あたったふたばの唇は、それでも柔らかかった。
「――っはぅ。
し、しんちゃん…」

肩を掴む。ふたばの涙がよく見える。
俺がやることは一つだけだ。

「ふたば!好きだ!」

「っ!し、しんちゃん…」

ふたばが底抜けの笑顔を返してくれる。伝えて、良かった…。

「しんちゃんも好きって言ってくれた…」

…も?何か引っかかる。もう一度繰り返してみるか。

「あぁ、好きだぞ、ふたば」

「うん!今度はパパの前で言ってね!」
ブフッ!
「そそそそ、そういうのはまだ早すぎるだろ!」
「えー、小生、パパの前でしんちゃんのこと好きって言ったっスよ!」
「いやでもお前あん時お父さんのことが一番好きだって言っただろ!?」
「パパはパパだから一番っス。でもしんちゃんは男の子として好きっス…」
「―っ」

普段が普段だから、こういうこと言われると余計に可愛く見えてしまう。

「だから、もう一度きっちり言うっス」
「しんちゃん、大好き!」




「さ、佐藤君もふたばちゃんも大胆すぎるよ~><」
「よく往来の真ん中であんなことできるね…」
「テレビじゃないんだから、もっと普通にムードのあるところでしなさいよね!」
「幸せそうなんだからいいじゃない。それとも妹に先を越されて悔しいのかしら?」
「とりあえず明日はお祝いしてやろうなっ☆」

「「「(気絶中)」」」


おしまい