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緒方「ふんふーん」

時刻は放課後、運動場で遊んでた子達も帰ったくらい
しょうがない隊は2人共休みだし
今日だけは佐藤君の香りを独り占め出来る
そう思うとテンションが上がってきて、鼻歌交じりに教室へ向かった
この時間なら流石に誰もいないだろうし
気にせず堪能できるわ

千葉「…………」
緒方「…………」

そう思って教室の扉をくぐると
何故かまだ千葉が残っていた
なんでまだいるのよ……

緒方「ちょ、ちょっと……もう下校時刻なんだけど……」
千葉「ん、ああ……そうか」
緒方「こんな時間まで何してんの?
    どうせまたしょうもない技の研究とかなんだろうけど」
千葉「……いや、宿題を終わらせてたんだよ」

日ごろ教室内でギャーギャー騒いでる姿しか知らないので
こういうマジメな部分があるのは意外だった
確かに、見てみると開かれてるのは算数のノートだ

緒方「……なんで学校でやってんの?」
千葉「……家だと集中できないからな」
緒方「ふぅん……なんか絶対に宿題とかやらないイメージだったけど」
千葉「ん……まあな、確かにどうでもいいと思ってたんだけどな」

ノートに視線を落としていた彼が、こちらに視線を向けて
若干物憂げに息を吐いたのが見える

千葉「……もうすぐ、俺らも中学生だろ」
緒方「―――!」
千葉「バカばっかりやってられないしな」
緒方「……アンタはバカなイメージしかないわよ」
千葉「それについては反論しねーよ」

なによ、急にマジメな事言い出して
普段なら、全く喋らない相手なのに
2人しかいない空間だと、喋らないと気まずい
だから、私は仕方なく喋ってるだけだ、うん

千葉「あーあ、まだまだ遊び足りねーよ」
緒方「……そうね」
千葉「運動会とか、体育とかさ……もうなんか避難訓練でもいいや
    もう一回やりてぇよ」
緒方「何言ってんのよ、全然マジメにやらないじゃない」
千葉「そこは気にするな」

変な時間は終わりを向かえ、何事もなくお互い帰る
くだらない話で、笑って、喋って
本当にしたい相手は別にいるのに
それでも、悔しいけど
少しだけ楽しかった



あ、佐藤君の香り忘れてた……

翌日の放課後も私は教室に足を運んだ
相変わらずしょうがない隊は、今日も私だけだ
風邪なんて佐藤君パワーがあればすぐ直るだろうに
二人とも案外ヤワなのね

千葉「……よう」
緒方「……またいたの」
千葉「宿題は毎日出るしな」
緒方「そのマジメさ、普段の授業で出しなさいよ」
千葉「ごもっともで」

教室に入ると、やっぱりコイツはいた
また始まる下らない時間
本当に少しずつだけど、この時間が悪くない物だと感じ始めている自分がいる
だけど、それは特別な感情なんかではないはずだ


それからも、数日
私たちの下らない話は、たまたま時間がかぶるばっかりに、行われていた
そんなある日の事

佐藤「……最近オマエ放課後まで何してるんだ?」
千葉「ん……?」
緒方「―――――!」

偶然聞こえてしまった会話
普段なら一緒に帰っている相手が、数日いないのだから
それは佐藤君も不思議に思うだろう
だけど、私が偶然にしろ、アイツと会っているなんて
間違っても佐藤君には知られたくなかった

千葉「……秘技の開発に勤しんでるんだよ」
佐藤「またかよ……オマエそろそろ痛い目見るぞ」
千葉「その程度でヘコたれる俺だと思ってるのか」
佐藤「いや、知ってるけどさ……」

……嘘ついた
それは何?
私に気を使ったから?
私と会ってる事を秘密にしたかったから?


―――それとも
アイツも、あの時間が特別だと……思ったから?



その日の放課後
私は意を決して聞いてみた

緒方「……なんで、今日嘘ついたの?」
千葉「ん?あー……佐藤の話か」
緒方「別に、勉強してるだけなんだから、嘘つかなくてよかったんじゃない」
千葉「……まあアイツは勉強できるからな、出来れば誰にも知らたく無かった」
緒方「……努力してる姿を見られたくなかったって事?」
千葉「まあ、そうだな」

カリカリとペンの音が教室に響く
なんだ、それって私は邪魔だったんじゃない
わからない、何故かムカムカする

緒方「……勉強の邪魔して悪かったわね」
千葉「え、おい」
緒方「誰にも知られたくないんでしょ、じゃあ私がいたら邪魔じゃない」
千葉「……いや……えっと」

私は何かわからないイライラに突き動かされて
教室の扉へ向かっていく
しかし、体は外へ行かなかった
アイツが私の手を捕まえていたからだ

―――ちょっ……!くさ……
…………らない

千葉「待てって……」
緒方「なによ……」
千葉「……出来れば、他のヤツには邪魔されたくなかったんだよ」
緒方「だから、言ってるでしょ、邪魔して悪かったって」
千葉「そうじゃねーよ、だから……」
緒方「言いたい事があるならハッキリ言ってよ!」
千葉「だから、お前と過ごしてるこの時間が悪くないって思ってるんだよ!」
緒方「…………」
千葉「……あー、クソッ……」

……何それ
え、どういう事?
手まで捕まれて、こんな事言われて
イヤなはずなのに
腐るはずなのに
顔がどんどん熱くなってきて
胸が痛くなってきて……
悪くないと思い始めてる自分が―――――!

緒方「っ!」
千葉「俺とした事が……なんつー恥ずかしい台詞を……」
緒方「な、ななななによそれ!もうほとんど告白じゃない!」
千葉「なっ、ばっ!」

沸騰しそうな頭を必死にクールダウンして
捕まれてる腕を振り解くと、正面に向かって言ってやる

緒方「アンタなんてお断りよ!」
千葉「……うむ」
緒方「で、でも……この時間にはまたきてやる!」
千葉「……んん?」
緒方「ちょ、ちょうどいい暇つぶしになるから……またきてやる!」
千葉「……そうか」
緒方「な、何よその笑み!勘違いしないでよ!」

結局、まだまだこの下らない時間は続く事になりそう
悔しいけど。
楽しいんだから仕方ない

終わり。