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 学校の帰り道、ふたばが突然「ドーナツが食べたくなったっス」と言ったので
それなら料理上手の三女に作って貰えば良いだろと返したら、
しんちゃんも一緒に食べようと丸井家まで引きずられてきてしまった。
先に帰ったはずの長女、三女は家には居なく、ドーナツの種もなかったので
ふたばが買いに家を飛び出したのが3分前。
必然的に丸井家の留守番を任されることになった俺はふたばが

返ってくるまで宿題でもしておこうと教科書とノートを広げていた。

 しばらくすると玄関の開く音が聞こえた。
ふたばが帰ってきたみたいだ。
振り返らずにふたばに声をかける。
「おかえり、ふたば。早かっ」
言い終わる前に背中に軽い衝撃。
「…しんちゃん、待ったっスか」
ふたばは時々俺を男と思っていないのかこうやってじゃれてくるが…
「なんのつもりだ?三女」
三女にこうされるのは初めてだった。
背中にいる三女がびくっとしたのが伝わる。
騙そうとしたんだろうけど、やわら…いや先ず声が違う!うん、そうだ!
そんな俺の心を読んだのか三女が毒を吐く。
「さすがしんちゃんだね。私とふたばの違いなんてお見通しなんだね。
あっ、そっかいつもふたばに抱きつかれてるから
感触を覚えてるんだよね。とんでもない変態だよ!」
ぐっ、ズバリ言い当てられたので怯んでいるが
認めてはいけないと本能が叫んでいる。
「ち、ちげーよ。声で判ったんだよ。お前らとは幼なじみだし!」
「…」
沈黙が怖いというか三女はいつまで俺にひっついているんだ。
俺が三女を離れさせようと体を動かすともちっとした
柔らかい感触が背中に押しつけられた。
えっ?この柔らかさ、大きくもなく
小さくもないこれはもしかして…
「おっぱいじゃないよ。ほっぺただよ」
今度は俺がびくっとした。
「おっぱいと勘違いするなんて、やっぱりしんちゃんは変態だよ!」
むふぅむふぅ背中でなんか聞こえる。
なんか悔しい。
「っていつまでこうしてるんだよ!」
強く言ってみたが、
「ふたばには言わないのに。ふたばと同じことしてるだけだよ」
と離れない。
駄目だ、三女には口げんかでは勝てそうにない。
俺はこの状況は半分諦め始めていた。

どれくらいの時間がたったのだろう。
幼なじみの家で幼なじみに抱きつかれている。
しかもあまり仲良いとは言えない三女に。
…あれ?なんか引っかかった。
本当に仲良くはなかったのか?三女とは?俺は考えてみる。

 小さい頃から三つ子といつも一緒だった。
何をするにも三つ子と一緒で、ボールで遊ぶ時な

んかも長女と三女は参加はしなくても俺とふたばが
遊ぶのについてきていた。ままごとしたり、
絵本を読んだり、絵を描くこともあった。
あれ?結構一緒に遊んでるな。いつからなんだろう、
俺がふたばとしか遊ばなくなったのは。
何故なんだろう?
あんなに仲が良かったはずなのに、思い出せない。

 しばらくして三女が動いた。
「しんちゃん、しんちゃん」
未だに三女は俺の背中にぺたり。
俺は慣れたのかあまりこの状況に違和感を感じなくなってしまった。
「なんだ?」
「心臓の音静かだね」
何を言い出すんだ、突然。
でも確かに恥ずかしさとかそういうのよりも心地よさを
感じていることに俺は気づいている。
だから落ち着いているのかもしれない心も体も。ふたばとは違う感じだ。
それを三女に伝えようかどうか迷ったが結局…
「そんなに悪くないと思ってるのかもな、この状況。…変だけど」
「…」
三女からの返事はない。
三女はどう感じてるのかは俺は判らない。
でも少なくとも俺と同じでそんなに悪くないと思っているはずだ。
そうじゃなきゃこんなことになってないだろうし。

やっぱり幼なじみで差がつきすぎたのかもしれない。
昔は仲良かったのに段々三つ子の中で一人だけとしか
遊ばなくなっていき話もしなくなっていく。
あんまり面白いことではないよな。
「なぁ」
俺の背中に語りかける。
「俺がふたばだけとしか遊ばなくなったから」
「しんちゃんは人が嫌がることはしないよね」
「元々私は運動得意じゃないし、しょうがなかったんだと思う。
…でも…でも遊ばなくなっても話しかけては欲しかったな…」
「うん、ごめん」

「…許す。またこうやって話してるんだし」
むふぅむふぅ聞こえる。
なんか色々話せたような気がする。そして近づけた気もする。
またずいぶん前みたいに戻れるかどうかは判らないけど。
これをきっかけにこれからも三つ子との関係も変化していくの

だろうか…

「そろそろふたばが帰ってくるころだから、準備しないと。
しんちゃんも食べるでしょ、ドーナツ」
そう言って背中の温もりがゆっくりと離れた。
すこし名残惜しいと思っている。
「知ってたのかよ」
「ふたばに会ったからね。
それに「しんちゃん寂しがってるからお相手よろしくっス」
と言われてたし寂しくなかったでしょ?」
後ろから聞こえる声が心なしか弾んでる気がする。気のせいかもしれないが。
「なんだよ、それ」
子供扱いされてちょっと不貞腐れたふりをする。
でも俺が寂しがる?なんか違うような…
「…しんちゃん」
呼ばれて頭だけ振り返る。

ほっぺたに軽い衝撃。
目と鼻の先にある顔はずいぶんと真っ赤だ。多分俺も同じなんだろう。
「ふたばに感謝しないと」
とはにかんだ顔が一瞬でホラーになった。
嫌な予感しかしないがその目線の先に俺も顔を向けると庭先によく知った面々。

「人の妹に何してんのよ!変態」
ピロリロリーン
「こんな状況でパンツなんか撮るなよ杉崎」
「三女さん大胆過ぎだよ~」
「ハッ!霊の仕業ね」

 色々ややこしくなりそうだった。
「ただいま~材料買ってきたっスよ」
玄関の開く音とふたばの声が聞こえる。
「あっ、ドーナツ作らなきゃ」
すぃーとこの事件の共犯者はこの現場から逃亡を図ろうとしていた。
俺はそれを阻止しようと
「おい、待てひとは!」

さっきまでの喧騒が嘘のように静かになった。
あれ?時が止まってる?もしかして俺なんか…

 立ち止っていたひとはがむふぅむふぅと動き出した時、
俺はこれからやってくるであろう災難に頭を抱えた。

        しんちゃんBADEND?