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澪「クリスマス、忙しいフリをする準備は大丈夫?」1

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moemoequn

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澪「わ、わたしは忙しいんだ!」

澪「そう、……今いい所」キリッ


  プルプルプルプル

澪「邪魔するなよ? あと一段、あと一段で……」



澪「はっ、鼻がムズムズするぅ」

澪「やめろぉ、冗談じゃな……へっ」

澪「耐えろ、耐えるんだわたし! ……くぅ」

澪「これで23回目のトライ、ついにたどり着いたッ……最上階でぇぇえ!」

澪「えっぷし」


  パサァー

澪「ぐぁあぁぁぁぁ! まーた失敗だぁー!」ダンダン



澪「まぁ『最上階でぇぇえ!』って力んだ時に崩れてたんだけどな!」テヘ

澪「かれこれ23回目も失敗、ハハッ」

澪「……なんだよ?」ジトー

澪「『暇そうで何より』って?」

澪「あー、おほん」

澪「忙しいなぁ! トランプ4階建てタワー作るのに忙しいよ!」

澪「…………」



澪「さ、寂しくなんて……ないからな」

澪「散歩がてらコンビニにでも行くか」



澪「うー、寒い」

澪「しっかり着込んでくればよかった」

澪「…………!」

澪「だけどここは
  『彼と過す予定でお菓子が切れたから買いに来たの~♪』てな感じでフットワーク軽目に……」

澪「そう考えれば怪我の功名! 澪ちゃんナイスッ!」

澪「あそこの角を曲がった辺りから小走り始めれば丁度いいな」フフッ


澪「ん? なんでトランプタワーかって?」

澪「あ、あれは……その」

澪「イヴにいちゃいちゃしてる"カップル達を呪う"わたしなりの」

澪「!? ……とかじゃないぞ、クリスマスに動じない精神力を培う為に」ゴニョゴニョ



澪「唯は憂ちゃん、和と過すのか……」

澪「ムギはきっとパーティーか何かにお呼ばれされてるんだろうなぁ」

澪「でも、もしわたしがムギに電話したら」


  紬『何かしら、え!? 暇……なのね?』

  紬『わっ、わかったわ! 待っててね!』ハァハァ

  紬『20分、いいえ10分で向かうわ! 
    ……ちょっと斎藤! すぐに車を回しなさい』

  斎藤『しかし、お嬢様……』

  紬『友達の一大事なの! 
    こんなパーティーいつでもできるじゃない!』

澪「こんな感じか……?」ハハッ

澪「あー、でもわたしはそう言うの好きじゃないんだなー」


  トボトボ

澪「自分からアクションを起こしたら"負け"って言うかさ……」



澪「もうこの際曽我部先輩でもいい!」

澪「ファンクラブの子達でもいい!」

澪「臆することなくわたしへ声を掛けて欲しかった!」ジンワリ

澪「一人はさび……ッ」


澪「! ……寂しくなんてないぞ!」

澪「あーっはっは! そうだそうだ」



  イラッシャイマセー

澪「そんなこんなでコンビニに着いてしまった」

澪「うっ、クリスマスケーキの店頭販売」


澪「それに並ぶ会社帰りの優しそうなお父さん」アチャー

  「ああ、今まだ会社……帰りは〇〇時くらいかな。ハハ……すまんすまん」

澪「しかも微妙なアリバイ工作して家族を喜ばせる気だ!」


澪「その後ろに並び、肩を寄せ合う若者カップル」グッハー

  「ちょ……冷たいー! やめてよー」エヘヘ 「ほら寒いんだろ? マフラー貸してやるよ」

澪「もう、見ているだけで息が……、意識が遠のく……」


澪「そしてチャラいけど記念日とか敏感そうなお兄さん」アワアワ

澪「最後尾はパート帰りの優しそうなお母さん」ウグッ


澪「みんな、よっ予定があるんだ……な」



澪「お……お前ら、もっと他にあるだろ?」

澪「もっと良いお店で買えばいいだろ!」

澪「コンビニのバイト君達も大変」

澪「って」


                   ワイワイ
  「ありがとーございますっ!」 「こちら1500円になり……」
           「メリークリスマース!」     「よい夜をー!」ヤンヤヤンヤ
    ガヤガヤ

澪「まっ眩しい! 笑顔が"キラキラ"してるぅ……」アワワ

澪「ぐぅ、わたしみたいな根っからのボッチ属性に
  あの笑顔、あのエネルギー、抉られる……効果はバツグンだぞッ!」グッハー


澪「て、……店内へ」

澪「ここに居ては"正のエネルギー"にヤラれる……」ヨタヨタ




  ウイーン
    ――ピンポーン

澪「…………」キョロキョロ

澪「立ち読み客3、内女性客1」

澪「その他"日常"を過す男性客数名やサンタ服で眠そうな店員君」

澪「そうだ、……これこそわたしが求めていたオアシス! コンビニエンスストア!」


  「っしゃせー」

澪「!?」ビクッ

澪「……あはは」ヘコヘコ



澪「とりあえず立ち読み……」

澪「うわぁ、どれもクリスマス特集」

澪「いつも通りヤンマガから、ってイカンイカン」 

澪「飽くまでも『彼と過す予定でお菓子が切れたから買いに来たの~♪』の態」

澪「横の女性客と同じ様に『クリスマス特集で気になる雑誌があって』って感じでだな」


  「もっしもーし? あータカシ? 待ちくたびれたんだけどー?」

澪「ぐうっ……、コイツ敵だったか!」ワナワナ 

澪「フフッ、してやられた。店外ならず店内にまで……」クククッ


  「えー! まだ仕事終わんない……ん?」チラッ

澪「!?」ヒクッ

澪「……あははは」ヘコヘコ



澪「うぅー、目が合うとは」

澪「そうそう、当初の目的を果たそう」

澪「って言ってもフラッと来たんだけどな」アハハ


澪「まず……」ガサガサ

澪「ピザポテト、これは外せない」

澪「パーティーパックは食べていて飽きるから通常サイズ」

澪「イコールッ! ……見えてきた、飲み物はコーラで決まりだな」

澪「しょっぱいお菓子が1つ、次は甘いお菓子だ」

澪「ここでしょっぱいお菓子を二つ買ってしまうと連鎖が切れなくなるからな」

澪「本当はじゃがりことかも買いたいんだけどガマンガマン」



澪「それとデザートを1品」

澪「今日はうーんっと、……黄色系?」

澪「モンブランって気分かなー?」ハハッ

澪「ティラミスなんかも捨てがたいんだけどな」

澪「あっ!」

澪「……危ない危ない、
  モンブランなんて買って帰ったらボッチ確定じゃないか!」

澪「危うく1失点だったぞ、わたし」

澪「うーん、しかたないここはプチシューパックだな」



  「しゃーせー、こちら298円が1点……」

澪「あ、……中華まんかぁ」

澪「ピザまん、美味しいんだけどピザポテトとでダブルピザだ」

澪「かと言ってチャーシューまんとか女の子が頼むのもな……」


  「合計827円になりまーす」

澪「肉まんって気分でもないし」


  「あのー?」

澪「あ、あ、あの! あんんまんくッ、あんまんも下さい!」


  「あーざいまーす」

澪「絶対に『めんどくさい客』って思われたよな……」




  ――ウイーン
       アザーシター

澪「ううっ寒い!」

澪「ってまだ並んでるのか」

澪「いいねえー、若いねー」

澪「まあ、わたしもまだまだ若者だけどなッ」ハハハッ

澪「さーて、寒空の中あんまんを食べながら帰りますか」

澪「いやー粋だねぇ? なんツッて」ガサゴソ


梓「あれ? 澪……先輩?」

澪「!?」ドキッ



純「こ、こんばんは! 澪先輩ッ」

梓「こんばんは、寒いですね」

澪「あっ、あぁ! 寒いなー、冷えるなー」ナハハ

梓「買い物……ですか?」

澪「そ、そ、そうそう! 少しな」

純「あ! もしかして澪先輩、クリスマスは彼氏さんと一緒に……」

梓「ふぇ!?」

澪「えぇ!?」



純「そんなぁー! 憧れの澪先輩が……梓、わたしショックで目眩が」

梓「ちょ……純! 大げさだって、
  先輩くらいになればそっそりゃ彼氏だって……居るよ」カァ

澪「あ、ああっ、ぁわわわわ」

純「いーなー、わたしなんてこれから」チラッ

梓「ん?」

純「(コイツ)……と一緒にメリークリスマスですよ」ハァ

梓「にゃっ! もう、いくよっ純!」

純「へーいへい。ではでは澪先輩っ、良い夜をー♪」フリフリ

澪「ハッ……アハハッ、ハハハハハハッ」ブンブン



澪「…………」フリフリ

澪「ッ! はぁはぁ……わ、わたしは悪くないぞ?」

澪「純ちゃんが取り違えただけだ」

澪「そうだ! 彼女達にはそれだけわたしが魅力的に見えたということだ!」

澪「ハハッ、そう! それそれ!」

澪「ハァ……」

澪「あ、あんまん」ガソゴソ


  ムグムグ

澪「ちょっと冷めちゃったな……」

澪「…………」トボトボ



澪「一緒に過す恋人、……居ない」


  トボトボ

澪「一緒に過す友達、……も居ない」


  ムグムグ

澪「ひょうわ……(今日は)」ハムハフ

澪「……んっ」ゴクリ


澪「クリスマス……」



澪「はぁ……」

澪「どうする? どうするのサンタさーん!」

澪「家に居ても腐ってるみたいで惨めだしさ」

澪「外に出たら執拗必死にボッチ隠し!

澪「後輩にはあらぬ心配されてさ!」

澪「……ハハハ」


澪「サンタさーん!」

澪「クリスマスプレゼントはそうだなー、
  『"魔法使いの女の子"にしてあーげーるっ♪』とかでもいいよ?」フフッ



澪「例えば……」

澪「ホァッ! 信号よ"青"になーれっ♪」 


  パッ

澪「! ……ハハッ、このくらい序の口だよ! なんちゃって」


  テクテク

澪「うーん、そうだ! お次は……」


  「んでさー? 聞いてるー?」フフフ

  「聞いてるよー」アハハ

澪「よし、あのカップルだ!」

澪「わたしの前で引っ付いていちゃいちゃとはいい度胸……」

澪「魔法少女ミオちゃんの御前であろう!」クワッ

澪「どーれ、カップルの頭上にだけ雨を降らせてしんぜよう」ククク


澪「そぉい! 雨よ降ーれっ♪」




  ヒュー
    ――ペチョ

  「ウゲッ! 鳥に糞ひっかけられた!」

  「あははっ! うーけーるー♪」

  「ちぇ、そろそろ家いくかー」

  「そーだね♪ 鳥さんのう〇ち洗わないとねー」フフフ

  「うっせー、そーら行くぞー」ゲラゲラ

澪「……まあ」

澪「結果オーライ!」

澪「そうそう、まだ魔法に慣れてないだけだって」ナハハ



澪「コントロールが難しい、な……」テクテク


  「ああ、まだ終わらなくってな。……スマン」スタスタ

  『――あなた、聡美だって楽しみにしてるの』

  「わかってる、もう少しで上がれるだろうからさ」イソイソ

  『――もう』

澪「こう……、手首をくるっと返して」

澪「フレミングの左手の法則で……」クイッ

澪「えいッ♪ って感じか?」


  「――ッ! あてェェ」ズッテン

  「あ、……聡美、あぁ……聡美の楽しみにしてるケーキ」

  「ぅ……ぐっ、すまない……ううっぎゅぎゅっ、うぎゅ……聡美ぃぃ」メソメソ


澪「ヒッ!」ビクッ





  タッタッタッ

澪「あぁぁわぁわあああ」

澪「そ、あの! 悪気は……、練習のつもりだったんだよッ!」アワアワ

澪「ごめんなさい! ごめんなさぃいぃぃ!」ウウッ


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