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唯「……」

澪「……」

唯「ねぇ澪ちゃん」

澪「何だ?」

唯「海の中ってそんなに青くないんだね」

澪「うん、私もそう思った」

唯「青いどころか若干ドス黒くて周りがよく見えないね」

澪「あぁ、砂とかプランクトンとかで何がなんだか分からないよ」

唯「うん、そうだね」

唯「ねぇ澪ちゃん」

澪「何だ?」






唯「私達、何でヒラメになっちゃったの…?」

澪「知らん」



唯「あ、澪ちゃん」

澪「何?」

唯「ほら、あれってもしかしてハマグリじゃない?」

澪「ん~…あ、ホントだ」

唯「波で流されてきちゃったのかな?」

澪「さぁ…」

唯「あ、タコに食べられた」

澪「うわなにあれぐろい」

唯「貝殻はちゃんと吐き出すんだね」

澪「器用だなアイツ」

唯「あ、こっちに気づいたみたいだよ」

澪「よし逃げよう」フヨフヨ



澪「あ」

唯「どうしたの澪ちゃん?」

澪「いや、ふと思ったんだけど」

澪「私達って、何食べればいいんだっけ?」

唯「えっ?うーん…小魚とかじゃないの?」

澪「泳いでる小魚を?生で?」

唯「しかも踊り食いだよ。凄く豪華だね」

澪「いやその発想おかしくない?」

唯「えっ?何で?」

澪「いや、何でって聞かれても…」

唯「だって私しらすの踊り食いなんて食べたことないもん。これは滅多にできない体験だと思うよ」

澪「いや別にしらす限定とは限らないから」

唯「えっ!?他の魚を踊り食いするの!?澪ちゃん意外とワイルドなんだね!」

澪「何この子めんどくさい」



唯「うーん」

澪「どうした唯?」

唯「あの魚、誰かに似てるんだよねぇ…」

澪「えっ?どれ?」

唯「ほら、あの大きな魚」

澪「……マンボウ?」

唯「あっ!分かった!」

澪「ちょっと待て唯」

唯「えっ?」

澪「よく見ろ、アレには眉毛がないだろ」

唯「あっ…」

澪「まったく、友達とマンボウが似てるなんて失礼な事思うなよ」

唯「ごめんなさい…」

澪「分かればいいんだ」



唯「お腹すいたね…」

澪「うん…」

唯「やっぱり踊り食いでもいいから何か食べないといけないね」

澪「そうだな…私達って何食べればいいんだろう?」

唯「うーん…」

澪「うーん…」






「あっ!澪先輩!唯先輩!」








唯「……」

澪「……」

梓「よかったぁ…唯先輩達も魚介類になってたんですね!」

梓「私なんて気がついたら帆立になってたんですよ!もうびっくりしました!」

梓「もしこのまま私一人だったらどうしようかって……先輩?」












唯澪「」




唯「げふっ。あー美味しかった!」

澪「うん。やっぱり普段から食べ慣れてる食材が一番安心できるな」

唯「あっ、殻が残っちゃったけどどうしよう」

澪「あ、それはそのままでいいよ」

唯「えっ?放っておいて大丈夫なの?」

澪「あぁ。そのままにしておけば私達より小さい魚やプランクトン達の餌になるからな」

唯「そっか、小さい生き物は大きな生き物の死骸を食べて生きるんだっけ」

澪「自然界の摂理はそうやって成り立ってるんだ」

澪「循環性を保てなくなったら、私達生物は絶滅してしまう」

澪「そうならないためにも、こうやって弱い生き物にもちゃんと餌を摂取させてあげる事が必要だ」

澪「自己中心的な生物はどんな世界でだって生きる事ができない。私達人間だってな」

唯「そうだね。私も気をつけるよ」

唯(私達が魚だってツッコミは今しないほうがいいよね)



唯「うー」

澪「どうした?いきなり唸って」

唯「砂がじゃりじゃりしてて痛い」

唯「澪ちゃんだっこ」

澪「へっ?」

唯「どーん!」ベシャア

澪「ぶぉ!?がばっ!馬鹿っ!降りろっ!」

唯「あぁ~ぬめぬめで気持ちいい~」

澪「ごぼっ!ちょっ!エラ!エラが押さえっ!ぶぼっ!」ジタバタ

澪「呼吸…でき…」

澪「」



澪「…まったく、死ぬかと思った」

唯「ごめんね澪ちゃん。私全然魚のこと知らないから…」

澪「いや、そもそも何で私の上に乗るなんて発想が浮かぶのさ」

唯「だって…砂はじゃりじゃりしてるから居心地悪くて」

澪「もう…魚なんだから慣れないと駄目だろ」

唯「うん…」

唯「でもね澪ちゃん」

澪「何だ?」

唯「澪ちゃんの皮、すごく気持ちよかったよ」

澪「そ、そうか…?///」

唯「うん。まるで全身油塗りたくったみたいな感触ですごく気持ち良かった」

澪「おい」



澪「はぁー…暇だな」

唯「うん、暇だね」

澪「元に戻る気配もないしなぁ」

唯「これから私達どうなっちゃうんだろう」

澪「心配する事はないと思う」

唯「えっ?何で?」

澪「ヒラメになってもこうやって唯と話せてるんだ」

澪「きっと私達が完全に魚になってない証拠だよ」

唯「でも、もし完全に魚になっちゃったら…」

澪「その時は…その時に考えよう」

唯「うん…」

唯「ねぇ澪ちゃん」

澪「何だ?」

唯「完全にヒラメになっても、私達友達だよね?」

澪「うん。友達だ」



唯「ねぇ澪ちゃん」

澪「何だ?」

唯「私ね、海がこんなにも広くて大きいなんて知らなかったんだ」

澪「?そんなの誰だって知ってると思うけど…」

唯「ううん、そういう事じゃなくて」

唯「実際に海に潜った事は何回もあるけど、こんなに深い所から海を見たのは初めて」

唯「だから、こんなにも下から見る海の景色が暗いだなんて知らなかった」

澪「…うん、そうだな」

唯「これって、私が人間だったら一生見えなかったのかな?」

澪「そんな事はないよ。本気を出せば人間だって海の深い所までもぐる事ができるはずだ」

澪「大事なのはそれをするかしないのかの差だよ」

唯「そっか…そうだよね」



澪「でも…」

唯「?」

澪「努力をしたって見れない事もあるかもしれないな」

唯「どういうこと?」

澪「ほら、例えば何らかの障害があったらどうだろう?」

澪「手足が自由に利かなかったり、水に入ることで持病が起きてしまうとか」

唯「あっ、うん…そうだね」

唯「だとしたら、私達って贅沢な事してるのかな?」

澪「さぁね。私はこんな景色見てもあまり楽しくないし…」

澪「でも、『海の中』を知らない人にとっては、凄く羨ましい事なんだと思う」

唯「そっか…」

澪「本当に欲しい物に限って自分で手に入れる事ができない、人が欲しい物は簡単に手に入れる事ができる」

澪「皮肉なものだよ…人生なんて」



唯「ねぇ、それって恋とかにも言えるのかな?」

澪「…そうだな。実際、恋愛物の小説や漫画はそんなものばっかりだ」

唯「そっか~。でもおかしいね」

澪「何がだ?」

唯「だって欲しい物が手に入らないなんて嫌でしょ?」

唯「だったらなんでそんな漫画や小説ばっかりが売れてるんだろう?」

澪「…クスッ」

唯「えっ?澪ちゃん今笑った?」

澪「まったく…唯は子供だな」

唯「あーっ!馬鹿にしたっ!澪ちゃん今私を馬鹿にしたっ!」



澪「ほらほら怒るな。みっともないだろ」

唯「うー」

澪「ふふ…じゃあ教えてやるよ」

唯「?」

澪「何故自分には価値の分からない物が手に入りやすく、本当に欲しい物が手に入らない物語が好まれるのか」

澪「それはね…」

唯「…うん」









澪「その『価値観』の違いの相互が、人生そのもので面白いからな」








唯「あっ!澪ちゃん見て!」

澪「なんだよ…?丁度今から昼寝しようと思ってたのに」

唯「それどころじゃないってば!ほらアレ!」

澪「んん~」

澪「っ!?」

唯「あれって漁師さんとかが使う網だよね…?」

澪「あぁ…あれは網引きだ」

澪「きっと船で漁をしにきたんだ」

唯「でも私達は地面に這ってるから大丈夫だよね」

澪「何言ってるんだ、あの網もしかしたら地面まで届いてるかもしれないんだぞ?」

唯「えっ!?どっどうしよう…」アセアセ

澪「とにかく逃げるぞ。ついて来い」スイスイ

唯「うんっ!」スイスイ


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