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「う……ぐすっ…なんでだよ、唯……っすん…」

澪は涙を流した。

丸まった背中、震える肩、今の澪は普段の彼女とは程遠く、ひどく弱々しい。

それは、澪が決して他人には見せようとしない姿……



憂「澪さん」

突然の呼びかけに、ぴくっと反応した澪が涙を拭い、顔を上げる

澪の視線の先には、憂が居た。

澪「憂ちゃん…」

憂「大丈夫ですか?」

澪「……大丈夫」

平静を装い澪が答えると、憂は何も言わず、てくてくと歩き、澪の前に屈んだ。



憂「そうですか…澪さん辛そうですよ?」

首をかしげて、憂が澪の顔を覗き込んだ。

澪「別に何でも無い…」

心を見透かすような憂の瞳に、澪は少したじろいだが強がりをやめようとしない。

それでも、その言葉の端々からは気弱な澪が顔を見せていた。



憂は澪から視線を逸らし、、ふっとため息を吐いた。

憂「でも、泣いてたましたよね……さっき」

澪の瞳にまた涙が浮かんできた。

その涙を見られまいとしたのか、はたまた弱りきった心がそうさせたのか、澪は膝を抱えて顔を隠した。



澪「唯に振られちゃったんだ…」

  「……私は魅力……ないのかなぁ……やっぱり……」

重く沈んだ声で澪が呟くと、憂の腕が澪を優しく包んだ。

憂「そんなことないです。澪さんはすっごく魅力的ですよ」

澪の耳元で、憂が囁いた。



澪「……」

憂「本当ですよ?」

ぎゅっと強く、憂が澪の体を抱きしめる。

澪「ありがとう……」

顔を上げた澪が、はにかみながら笑顔を憂に向ける。

すると、憂もまた澪に微笑み返し、そっと澪のほほの涙を拭った。



~次の日

憂「澪さん良かったら一緒にお昼食べません?」

澪「え?私は構わないけど」

憂「良かった。実は澪さんの分も作って来ちゃったんだ」

憂(澪さん、お姉ちゃんと一緒だと気まずいかなと思ってたんだ)



机の上へと弁当箱を置いて、包みを解く。

白い四角い箱の蓋を開けると

中にはサンドイッチが綺麗に詰められていた。

澪「おおー」

憂「そんな大したものじゃないですよ」

感動の声を上げる澪を見て、憂が言う。



澪「これ、憂ちゃんが作ったのか?」

憂「そうですよ」

 「はい、どうぞ」

憂から差し出されたサンドイッチをじっと見つめていた澪が嬉しそうに笑った。



憂「何です?いきなり笑って」

澪「いやぁ、憂ちゃんの手料理が食べられるなんて幸せだなぁって」

憂「…褒めても何も出ませんよ?」

そう言って、憂は少し照れたような表情を見せた。

澪「本当にそう思ったんだよ?」

憂「もう、早く食べて下さいよ」



澪はサンドイッチを掴んで、口へと運んだ。

そんな澪の動きを、じっと見つめる憂。

もぐもぐと口を動かした後、澪がにっこりと笑う。

澪「美味しいよ」

その言葉に憂は、ほっとした表情を見せた。

憂「良かったです」

澪の反応が良いものだった事に憂も満足したようだった。



憂「はい、紅茶もどうぞ」

澪「ありがとう」

 「んふふ」

憂「何です?」

澪「だってなんだか私と憂ちゃんが恋人みたい」

嬉しそうな顔を見せながら澪が言った。

憂「えっ…」

思いもよらない澪の言葉に、憂は頬を赤らめる。



澪「このお礼をしなくちゃな」

憂「え?別にいいですよ、そんな大したものじゃなかったし」

澪「駄目だよ、ちゃんとお礼をしないと」

憂「そんな、お弁当くらいで大げさです…」



澪「今度の日曜日って空いてる?」

憂「多分空いてると思いますけど?」

澪「じゃあ、一緒に映画でも見に行かない?」

憂「映画ですか?良いですね」

澪「じゃあ決まりだな」



~日曜日

澪「憂ちゃんは何の映画が観たい?」

憂「んーっと…」

憂(恋愛物だとお姉ちゃんとの事思い出させちゃうよね…)

憂「じゃあホラー映画にしましょう」

澪「えぇっ?!」



澪(私が怖いの苦手なの知らないのか。ホラー…)

澪(でも観るの怖いって言うの恥ずかしい…)

澪「い、良いねホラー映画。面白そうだ」

憂「良かった」



~上映開始

澪「うわー!!怖い!!」

澪「もう観るのやだ…。帰りたい…」

憂「大丈夫ですよ。私が隣にいます」

澪「ほんとに…?」

憂(澪さん怖いの苦手だったんだ…何か可愛い)

憂「ハイ、手握ってますよ」

澪「うぅ…。ありがと…」



澪「うわああぁあぁあ!!」

ギュウウッ

澪「ううう、見えない聞こえない。見えない聞こえない…」

澪「はぅぅ…」

ギュウウウゥウッ!!

憂(手が痛い……)



~帰り道

憂「澪さん、怖いの苦手だったんですね」

澪「…実は、そうなんだ」

憂「ご免なさい…気づかなくて」

澪「い、いや言わなかった私が悪いんだ。それに憂ちゃんと映画観れて楽しかったよ」

憂「良かった」



憂「…くしゅん」

憂がくしゃみをした。

澪「寒い?ほら」

そう言って澪が自分のマフラーを憂に巻いてやる。

憂「ありがとうございます」

澪「寒いから、手つなごっか?」

その言葉に憂は澪の顔をじっと見た。



澪「手を繋ぐのイヤだった?」

澪の言葉に憂はふるふると首を横に振った。

憂「じゃあ」

そのまま自然に握られた手は、とても柔らかくて暖かかった。

澪「手、冷たいな」

澪の言葉もその手の感触で飛んでしまいそうになる。



澪「唯ともこうやって良く手を繋いだっけ」

憂「お姉ちゃん、手を繋ぐの好きですもんね」

言った後にハッと気づく。澪と一緒の時、唯の話題は避けてきた。

澪「いいんだよ、気にしなくて」

憂の態度に気づいた澪が優しく声をかける。



一緒に歩いていた澪の足が不意に止まる。

澪「あ、あのさ、憂ちゃん。今日一緒にいて凄く楽しかったんだ。」

 「それで、私じゃ駄目かな?」

憂「…………」

憂「…………駄目です」

憂は繋いでいた手を離す。



憂「…澪さん、私にお姉ちゃんを重ねて見てる」

次の瞬間、憂は駆けだしてしまった。

澪はどんな顔でいるんだろう?

澪の心にはどんな気持ちが渦巻いているのか?

そう思いながらも憂は止まれなかった。



澪と過ごした時間はとても楽しかった事。

澪が姉と恋人だった事。

澪が自分を好きになった事。


そして、自分も澪に恋をしてしまった事。

そんな思いが憂の頭を巡っていた。



澪「憂ちゃん、待ってくれ」

憂「澪さん?」

澪「違う!私は、私は憂ちゃんが好きなんだ」

ストレートな澪の言葉に頬を赤らめる憂。

憂「で、でも……私なんかで良いんですか?」

澪「憂ちゃんじゃ無いと駄目なんだ」



澪は憂に抱きつく。

頬を赤らめた憂もぎゅっと、澪の背中に手を回して澪を抱きしめる。

そして互いに見つめあい、憂の方から澪にキスをした。



憂「今度から私の事、『憂ちゃん』じゃなくて…『憂』って呼んで下さい…」

澪「………わかった…」

澪は憂から一旦顔を離す。

澪「う、う、憂…」

恥じらいながらも優しい声でそっと、憂の名を呼ぶ。

そしてもう一度キス。

今度は長いディープキス。

 憂が澪の唇を舐め、そっと澪の口内に舌を入れる。

それに答えるように澪が憂と舌を絡める。



澪「唯には私から話すよ」

憂「で、出来ればそうして欲しいです」

憂は澪の胸に顔を埋めた。

澪は優しく憂を抱きしめた。



お終い