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律「じゃあなー! 澪」


夕日を背景に律が手を振る


澪「あぁ、またな。明日はちゃんと練習するからな」

律「わかった、わかった。考えておくよ」

澪「考えておくって…… まったく」


少しあきれながらも澪は律と別れる


澪(ちゃんと練習したいのにな)

澪(律はいつも練習しないでお茶ばっかり。……私もつられてるけど)

澪(でもやっぱり、練習はやりたいし……)



彼女が一人悩みながら歩いているとふと視界に一枚の花びらが入ってきた


澪(あっ、桜!!)

澪(そういえばすぐ近くに桜の木があったっけ。)

澪(ちょっと見に行ってみよ)


今日は少し寄り道して帰ろう――


澪「えっと確かここだったはず」

澪「やっぱりここだ! きれいだなぁ」


彼女の前には大きな桜の木が一本、公園の隅に立っていた



澪「夕日に照らされる桜も乙なものだな」

澪「こういう自然美っていいなぁ。なんかこれで一つ詩が書けそうかも」

そう言って彼女は鞄からノートとペンを取り出す

今日はステキなものを見つけたよ
きっとみんながステキと感じるよ
あなたはそのうちいなくなってしまうけど
わたしあなたをまた見つけるからね

澪「うん、こんな感じかな。いつもより大人っぽく書けてる気がする」

澪「よし、詩も書けたし、そろそろ暗くなる前に帰ろっと……」

公園から出ると視線の先に一軒の店が見えた

澪「あれ、あの店って確か唯の家の近くにあった雑貨屋さんじゃないか?」

澪「へぇーここにもオープンしたんだ。ちょっとのぞいてみようかな」



カランカラン――

店員「いらっしゃいませー」

店内にはオープンのチラシがあちこちに張られ、お客さんで賑わっていた

澪「うわぁ、けっこう人がいるんだな」

澪「初めてこのお店に入ったけど、やっぱり女性ターゲットなものが多いな」

ぬいぐるみや日用品、食器などがかわいらしくデザインされた物で
店内は覆い尽くされている

澪「いい、いいよ。かわいいものがいっぱいある」



澪「目移りしちゃうな。このぬいぐるみもかわいいし、こっちのマグカップも」

澪「こんな素晴らしい場所があったなんて」

澪「ほかにはなにか…… えっ!!?」

目が釘付けになる

澪「えっ、えっこれ……」

彼女があるものを手に取る

澪「こっ、このフォーク…… かわいすぎるよぉぉぉ!!!」

食器コーナーで立ち尽くす
一本のくまの形をしたフォークを持ちながら彼女は驚愕した



澪「この持つ部分が体になっていて、その先端の顔の可愛さと言ったらもう///」

澪「刺す部分もあまり鋭利になってなくて丸っこいのもさらにかわいさを引き立ててるよ」

澪「はぁ、この吸い込まれそうなまん丸なお目目。可愛い、ほんっとに可愛い///」

澪「そうだ! このフォークでムギが持ってきたケーキを食べれたらどんなに幸せか」

このフォークでケーキを指し、口に運ぶ姿を想像する――

澪「いいなぁ、実に良いよぉ。よしこれ買っちゃおう!!」

そのままレジの方へ向かう――

が、ピタッと足が止まった

澪「……まてよ、このくまちゃんフォークをお茶の時間に持っていったら律が……」



『みぃおちゅうあん、こんなかわいいフォーク使うんでちゅかぁ?
おこちゃまでちゅねぇー』

澪「なんてことを言ってバカにされるよ」

澪「欲しい、でもな… でもやっぱり欲しい……」

店員(あの子さっきから何一人でブツブツ言ってるのかしら?)

澪「うう、でも…… でも……」

店員(きもちわるいなぁ……)

ダッ――

店員(あっ、帰った)

カランカラン――

澪「はぁ、やっぱり馬鹿にされるのは嫌だ。諦めて帰ろう……」

空はすっかり暗くなり、桜は夜桜と変わっていた。



次の日!


澪(やっぱりあのくまちゃんフォーク買えばよかったかな。でも律が……)

律「おーい、澪?」

澪「うわぁ、律!!」

律「何驚いてるんだよ、早く部室行こうぜ。もうみんないると思うし」

澪「あぁ、そうだな。待たせたら悪いしな。行こうか」



ガチャッ――

律「おっ、みんな揃ってるな」

梓「こんにちは律先輩、澪先輩」

紬「二人とも座って~ 今お茶を入れるところだったのよ」

律「よっしゃ!! ムギ、ミルクティーをよろしく」

紬「りょうか~い」

ビシッと片手にティーポットを持ちながら敬礼する

紬「澪ちゃんは?」

澪「私も同じものをお願いしていいかな」

そう言いながら席につく



紬「そしたら準備してくるわね~」

梓「律先輩、お茶が終わったら今日は練習しますからね」

律「わかった、わかった」

澪「唯、どうした? 今日はやけにおとなしいな」


肘を机に置き、手を組んでそれを顔の方へと置いている唯に声をかける


唯「澪ちゃん、今日はねデビュー戦なんだ。今はその時を来るのを静かに待つだけ」

澪「???」

梓「さっきからこんな調子なんです」



紬「お茶の準備が出来たわ。今日のお菓子は桜のケーキよ」

律「季節物かぁ、いいね」

澪「クリームがピンク色で綺麗だな」

梓「見た目もよしで、おいしそうです!!」

お茶の香りと桜のケーキのほのかな甘い香りが部室にくつろぎと春を届ける

紬「さぁ、召し上がれ」

澪・律・梓「いただきます!」

澪「おいしい!!」

律「ほんとうめー!!」

梓「唯先輩食べないんですか?」



唯「そろそろ行こうか。くまっ太」

梓「?」


そう言って唯は鞄からフォークを取り出す


澪「えっ!!?」

律「どうしたんだよ、そのくまのフォーク」

唯「この前、憂と近くの雑貨屋にいった時に可愛くて買ったんだ!!」

唯「これでムギちゃんのケーキが食べたくて」



唯「えへへ、いいでしょう!!」フンス

澪(あのフォーク、昨日私が買おうとした奴!!)

澪(先越されたぁ……)

澪(まさか、唯がこのフォークを持っているなんて)

紬「あら、かわいいくまさんね」

唯「いいでしょ。くまっ太と言うんだよ」

紬「くまっ太? 名前があるんだ」

唯「私が名付け親だよ!!」

澪(違うよ、くまっ太じゃなくてくまちゃんだよ)

澪(私の中では女の子なのに……)



律「なんだぁ唯。そんなお子様用のフォークに名前なんかつけてるのか?」

律「幼稚園児かよ。救えないな」


律がひやかしながらケーキを口に運ぶ


唯「むっ。なにそれスプーンじゃなきゃだめってこと?」

律「いや、そういうすくうじゃなくて……」

梓「そうですよ唯先輩。もう高校生なんですから」

梓「いつまでも子どものままじゃだめですよ!!」

唯「あずにゃんのイケずー。このくまっ太の可愛さがわからないなんて」



唯「見てよ。このお耳!! この耳こそくまっ太の最大の可愛さだよ~」

澪(違うよ、まん丸お目目が最大の可愛さだ!!)

唯「もうね食べちゃいたいくらいだよこのお耳~」

澪(目だよ!!)

唯「いやぁ~ この耳が…」

澪「目だよ!!!」




シーン―――
部室が静まり返る



梓「……」

紬「……」

唯「……澪ちゃん?」



澪「はっ!! いや、これは、別に、その……」

律「みお~ もしかして唯のフォークが可愛くて自分も欲しくなったとか?」

澪「ば……バカ……馬鹿なこというなぁ!!」

澪「そんな私は……その……子どもっぽいし……」

律「はぁ……」



唯「澪ちゃんならくまっ太の可愛さがわかってくれると思ったのにな~」

唯「くまっ太で食べるケーキはいつもより2倍、いや3倍はおいしく感じるよ~」モグモグ

再びくまっ太は唯の口にケーキを届ける

律「フォークなんてケーキが食べられるならどれでもいいだろ」

唯「幸せ~」モグモグ

梓「……」

紬「……」

澪(ばれてないよな、セーフだよな?)

紬「……あっ、梓ちゃん紅茶のおかわりどう?」

梓「!! そ、そしたら頂きます」

澪(あぁ、私もくまちゃんフォークで…)モグモグ


唯「あ~おいしい♪」



~~~~~~~~


律「じゃあなー! 澪」

澪「あぁ、またな。明日こそはちゃんと練習するからな」

律「わかった、わかった。考えておくよ」

澪「考えておくって…… また同じこと……」

澪(結局今日もティータイムだけで練習ほとんど出来なかった……)

澪(それにしてもまさか唯があのフォークを持ってくるなんて)

澪(くまちゃんフォークで食べる唯。本当においしそうだったな)

澪(あぁ~ 今日の唯を見たら余計あのフォークでムギのケーキが食べたくなったよぉ)



澪(買っちゃおうかな…… 今買えば唯という理解者もいるし)

澪(でも、律がフォークを見て子どもっぽいって冷やかしてたしな)

澪(今買ったら、律に馬鹿にされるプラス『唯のパクリかよ~』なんて言われそう)

澪(おまけに梓もフォークを否定的に見ていたしな……)

澪(年上の私が後輩に子どもっぽいと思われるのは恥ずかしすぎる!!!)

澪(余計買いづらくなったかも……)トボトボ




澪(あっ、そういえば新しい詩の発表するの忘れてた)



~~~~~~~


唯「ごちそうさま!!」

憂「おそまつさま。はいこれデザートのイチゴだよ~」

唯「やった!! イチゴだ!!」

唯「くまっ太出番だよ!!」


おもむろにフォークを取り出す


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