澪SSまとめ @wiki
澪「その未来は今」6
最終更新:
moemoequn
-
view
律「なーに泣いてんだよ」
紬「そうよ澪ちゃん、最高の演奏だったじゃない」
唯「うん!楽しかったよ♪」
澪「……ありがとう」
3人に励まされながら、私はずっと泣いていた。
軽音部でよかった。心からそう思った。
・・・・・・
唯「またねー!」
紬「ばいばい♪」
夕方、私たち4人はいつもの場所で別れた。
打ち上げは梓が戻ってきてからにしよう、そう決まった。
みんなには申し訳ないけど、それには参加出来そうにはないかな。
たぶん、この世界での唯とムギとはこれでさよならだ。
ありがとう。心の中でそう言って別れた。
唯とムギと別れ、律と2人きりで歩いていた。
律「なぁ、澪」
澪「ん?」
律「お前、もう元の世界に帰んのか?」
澪「えっ?!な、なんで…?」
律「んー?なんとなく」
3人にはいつ私が元の(になるかわからないが)世界に帰るかを伝えなかった。
余計な気を遣われるのは嫌だし、情で軽音部に再び受け入れてほしくなかったからだ。
澪「…うん。今日の夜」
律「やっぱな」
こんな世界でも、律は変わっていなかった。
妙に勘がよくて、隠し事が通用しない。
どこにいても、お前は相変わらずなんだな。
律「んまっ、元気でやってくれ」
律「あ、そうだ!」
澪「?」
律「もし帰れなかったとしても、とりあえず私たちには声をかけなさいよ」
律「私たちはどこの世界でもお前の味方だから」
澪「…うん」
律「そんじゃな。無事に帰れるといいな。そん時はまたよろしく!」
澪「…あぁ!」
そう言って律はそそくさと帰っていった。
最後の最後まで、私を支えてくれた。
brrrr brrrr
澪「…ん?」
律とも別れ一人帰り道を歩いていると、携帯が鳴った。
一通のメール。
差出人は、梓だった。
―――――――――――――――――――――
From 梓
Subject こんばんは
先輩。お時間ありますか?
少し…お話がしたいです。
―――――――――――――――――――――
まさか梓から連絡が来るとは思ってなかった。
何だろう。私は期待と不安を抱えつつ返信した。
―――――――――――――――――――――
To 梓
Subject Re:
大丈夫だよ。
いつもの交差点でいいかな?
―――――――――――――――――――――
澪「………」
ここに来るのも久しぶりだ。
梓にだけ通じる「いつもの場所」。
日はもう落ちている。月食の見える時間まで、あと少し。
5分ほど経った頃だろうか。
向こうから見覚えのある影が近づいてきた。
澪「梓…」
梓「…こんばんは」
梓だった。
家から来たのだろうか、私服だった。
澪「演奏、見てくれたかな?」
梓「…はい」
どこにいたのかはわからなかったけど、見ていてくれたらしい。
それがわかっただけで十分だった。
梓「先輩」
澪「?」
梓は手から何かを取り出した。
見覚えのあるものだった。
そう、梓が4月14日にくれたネックレスだった。
どんなに部屋の中を探しても見つからないと思っていたら、梓が持っていたのか。
梓「これ、先輩が捨てたんです。私の目の前で」
梓「それだけじゃない。散々ひどいことされたし、傷つくこともたくさん言われた」
梓「もう絶対許さないって思った、一生恨んでやるって思った」
梓「でも、これ…。なぜか捨てられなくて。バカみたいにずっと持ってて」
梓「だけど先輩は、そんなの関係ないんですよね」
梓「何もなかったかのように、何も知らなかったかのように、自分は正しい世界に帰るんですね」
梓の言う通りだった。
私の身勝手で、この間違った世界にさよならを告げるのだから。
澪「…関係なくなんか、ないよ」
澪「梓のことはずっと好きだし。今も大切に想ってる」
澪「だから―――」
バチィ…ン
覚えのある痛みが走る。
頬を叩かれたのは、これで2回目だった。
梓は、泣いていた。
梓「ずるいですよ、先輩」
梓「不器用なくせに…。メルヘンな甘い歌詞しか書けないくせに…」
梓「あの曲…、さよならの曲でしょ?」
そう。私が書いた詞は、さよならの詞だった。
間違った未来に、さよなら。
何もかも失っていた私に、さよなら。
隣にいない梓に、さよなら。
そう意味を込めて書いた詞だった。
梓「ずるいよ…。自分だけいい格好して、いなくなろうとしてさ」
梓「人の気も知らないで。…バカ……最低」
澪「…ごめん」
梓「もう先輩の顔なんて見たくない。そのネックレス持ってとっとといなくなってください」
梓「戻った世界で私のこと泣かせたら、許しませんから…」
梓はそう言うと私に背を向け歩きだした。
5ヶ月前のあの時と同じように。
いや、あの時とはちがう。
だって今の君は泣いているから。
私は大声で叫んだ。
澪「――梓!」
澪「聞いてくれて、ありがとう!」
梓「……ふざけんな、バカ…」
梓は振り返りもせずそれだけを言い放ち、夜の街に溶けていった。
・・・・・・
雑木林の前には私と憂ちゃん、そして和の3人がいた。
私は冬服のブレザーを羽織り、こっちに来たときの格好をしていた。
澪「…戻れるかなぁ」
憂「きっと大丈夫ですよ」
和「まぁ、ダメだったらまた私たちのところに来ればいいわ」
澪「…それもそうだな」
気持ちは穏やかだった。
頬が少し痛むけど、心は晴れやかだった。
和「あ、そうだ」
和「もし戻れたら、律に言っておいてほしいことがあるんだけど」
澪「?」
和「体育館の使用申請書。さっさと出せって」
和「新歓の時ギリギリだったんだから…」
澪「…ふふ、わかった。伝えておくよ」
和は最後の最後まで気を配ってくれた。
戻ったら、またお礼を言わなきゃな。何のことだって思うだろうけど。
憂「あ、澪さんそれ…」
澪「あぁ、これか。さっき梓に返されたんだ」
憂「似合ってますよ♪」
澪「ありがとう」
きっと私の見えないところで梓を支えていてくれていたのだろう。
憂ちゃんは何も言わなかったけど、私は知っているよ。
澪「あの…さ」
澪「梓のこと、また泣かしちゃったんだ」
澪「だから、その…励ましてくれるかな?」
憂「はい、もちろんです!」
憂「梓ちゃん。軽音部の演奏聞いて泣いてたんですよ」
澪「…そっか」
うれしかった。ただ純粋に。
想いが伝わったのかはわからないけど、きっと届いたはずだ。
澪「それじゃあ」
和「うん、またね」
憂「気をつけて」
澪「本当にありがとう」
2人に別れとお礼を告げ、私は雑木林に入っていった。
一箇所だけ光が特に集まる場所。
その場所に足を踏み入れる。
澪「………」
空を見上げた。
きれいな月だ。あの時見たのと同じ。
地面が揺れる。頭が絞めつけられる。
あっ、この感覚は…。
―――――梓…。
――――――
――――
―――
――
…
――……輩。
――――…先輩!
―――――――……澪先輩!
澪「へっ?」
梓「んもぉーっ、話聞いてなかったでしょ!?」
澪「…?」
梓「新歓ライブ!絶対成功させようねって!」
澪「え、あ…」
梓「あっ、もう交差点だね」
梓「ねぇ。私先輩に渡したいものがあるんだ」
夢…?
でもこの場面、覚えがある。
…そうだ。このあと、梓はカバンからプレゼントを出して―――。
梓「はいっ。2ヶ月おめでとう」
梓「2ヶ月って中途半端なんだけどさ、進級祝いも兼ねてってことで」
梓「かわいいでしょ?先輩に似合うかなと思ってサプライズで、って…えっ?」
梓「嘘…?ごめん、先輩同じの持ってたんだ…」
自分の首に手をかける。
梓が持っているものと同じネックレスが、私の首にかかっていた。
そっか…。これは、夢じゃないんだな。
元の世界に、戻ってこれたんだな。
落ち込んだ顔をした梓の顔が目に映る。
そうだ。これは、私の知ってる梓だ。
私の恋人。私の大好きな、梓だった。
澪「―――梓っ!!!」ぎゅっ
私は梓を思い切り抱きしめた。
人の目なんか気にならなかった。
やっと会えた。ずっとこうしたかった。
梓「えっ、ちょっ…。み、澪先輩///」
澪「梓、あずさぁっ…」
私は何度も梓の名前を呼んだ。
離したくなかった。
このあたたかさを、いつまでも感じていたかった。
梓「…澪先輩?」
澪「………」
梓「………」
いきなりの出来事に体を強張らせていた梓だったが、
しばらくすると緊張も解けたようで、そっと私を抱き返した。
梓「私、先輩のこと好きだよ?」
澪「…うんっ」
梓「ずっとずっと、大切だよ?」
澪「うんっ、うんっ」
梓「どこにも行かないでね。ずっと一緒だからね」
澪「あぁ、約束する。ずっと一緒だ」
梓「ねぇ、先輩」
梓「……キスして」
――――――
――――
―――
――
…
それからのことを少し話そうと思う。
律をけしかけ体育館の使用申請書を出させたあと、5人で新歓に向けてめいっぱい練習した。
その結果が実ったのか、新歓ライブは大成功に終わった。大きなトラブルもなかった。
…結局部員は来なかったけど。
でも周りが言うには、他の人が入れないぐらい5人の仲が良さそうだから入りづらかったんじゃないかって。
だから別に後悔とかはなかった。梓も、5人のままがいいって言ってくれた。
それからは、毎日があっという間だった。
修学旅行も行った。合宿もやった。野外フェスにも行った。
空白だった5ヶ月を凄い早さで過ごしていた。
軽音部のみんなと。そして、梓と。
片時も離れることはなかった。
そして、今日は9月27日。
文化祭だ。
律「いよいよだな」
唯「ひ、人がいっぱいだよ…!」
紬「大丈夫よ、笑顔笑顔♪」
聞いた覚えのある言葉。
梓「頑張りましょう!」
そこに加わるもう一つの声。
澪「よしっ、行こう」
「次は軽音部による演奏です」
ステージにライトが照らされる。
“5人”は顔を合わせ、うんと頷く。
あの時経験した未来。
何もかもが違った未来。
その未来は今、軽音部と。
そして、梓と共にあった。
おわり
紬「そうよ澪ちゃん、最高の演奏だったじゃない」
唯「うん!楽しかったよ♪」
澪「……ありがとう」
3人に励まされながら、私はずっと泣いていた。
軽音部でよかった。心からそう思った。
・・・・・・
唯「またねー!」
紬「ばいばい♪」
夕方、私たち4人はいつもの場所で別れた。
打ち上げは梓が戻ってきてからにしよう、そう決まった。
みんなには申し訳ないけど、それには参加出来そうにはないかな。
たぶん、この世界での唯とムギとはこれでさよならだ。
ありがとう。心の中でそう言って別れた。
唯とムギと別れ、律と2人きりで歩いていた。
律「なぁ、澪」
澪「ん?」
律「お前、もう元の世界に帰んのか?」
澪「えっ?!な、なんで…?」
律「んー?なんとなく」
3人にはいつ私が元の(になるかわからないが)世界に帰るかを伝えなかった。
余計な気を遣われるのは嫌だし、情で軽音部に再び受け入れてほしくなかったからだ。
澪「…うん。今日の夜」
律「やっぱな」
こんな世界でも、律は変わっていなかった。
妙に勘がよくて、隠し事が通用しない。
どこにいても、お前は相変わらずなんだな。
律「んまっ、元気でやってくれ」
律「あ、そうだ!」
澪「?」
律「もし帰れなかったとしても、とりあえず私たちには声をかけなさいよ」
律「私たちはどこの世界でもお前の味方だから」
澪「…うん」
律「そんじゃな。無事に帰れるといいな。そん時はまたよろしく!」
澪「…あぁ!」
そう言って律はそそくさと帰っていった。
最後の最後まで、私を支えてくれた。
brrrr brrrr
澪「…ん?」
律とも別れ一人帰り道を歩いていると、携帯が鳴った。
一通のメール。
差出人は、梓だった。
―――――――――――――――――――――
From 梓
Subject こんばんは
先輩。お時間ありますか?
少し…お話がしたいです。
―――――――――――――――――――――
まさか梓から連絡が来るとは思ってなかった。
何だろう。私は期待と不安を抱えつつ返信した。
―――――――――――――――――――――
To 梓
Subject Re:
大丈夫だよ。
いつもの交差点でいいかな?
―――――――――――――――――――――
澪「………」
ここに来るのも久しぶりだ。
梓にだけ通じる「いつもの場所」。
日はもう落ちている。月食の見える時間まで、あと少し。
5分ほど経った頃だろうか。
向こうから見覚えのある影が近づいてきた。
澪「梓…」
梓「…こんばんは」
梓だった。
家から来たのだろうか、私服だった。
澪「演奏、見てくれたかな?」
梓「…はい」
どこにいたのかはわからなかったけど、見ていてくれたらしい。
それがわかっただけで十分だった。
梓「先輩」
澪「?」
梓は手から何かを取り出した。
見覚えのあるものだった。
そう、梓が4月14日にくれたネックレスだった。
どんなに部屋の中を探しても見つからないと思っていたら、梓が持っていたのか。
梓「これ、先輩が捨てたんです。私の目の前で」
梓「それだけじゃない。散々ひどいことされたし、傷つくこともたくさん言われた」
梓「もう絶対許さないって思った、一生恨んでやるって思った」
梓「でも、これ…。なぜか捨てられなくて。バカみたいにずっと持ってて」
梓「だけど先輩は、そんなの関係ないんですよね」
梓「何もなかったかのように、何も知らなかったかのように、自分は正しい世界に帰るんですね」
梓の言う通りだった。
私の身勝手で、この間違った世界にさよならを告げるのだから。
澪「…関係なくなんか、ないよ」
澪「梓のことはずっと好きだし。今も大切に想ってる」
澪「だから―――」
バチィ…ン
覚えのある痛みが走る。
頬を叩かれたのは、これで2回目だった。
梓は、泣いていた。
梓「ずるいですよ、先輩」
梓「不器用なくせに…。メルヘンな甘い歌詞しか書けないくせに…」
梓「あの曲…、さよならの曲でしょ?」
そう。私が書いた詞は、さよならの詞だった。
間違った未来に、さよなら。
何もかも失っていた私に、さよなら。
隣にいない梓に、さよなら。
そう意味を込めて書いた詞だった。
梓「ずるいよ…。自分だけいい格好して、いなくなろうとしてさ」
梓「人の気も知らないで。…バカ……最低」
澪「…ごめん」
梓「もう先輩の顔なんて見たくない。そのネックレス持ってとっとといなくなってください」
梓「戻った世界で私のこと泣かせたら、許しませんから…」
梓はそう言うと私に背を向け歩きだした。
5ヶ月前のあの時と同じように。
いや、あの時とはちがう。
だって今の君は泣いているから。
私は大声で叫んだ。
澪「――梓!」
澪「聞いてくれて、ありがとう!」
梓「……ふざけんな、バカ…」
梓は振り返りもせずそれだけを言い放ち、夜の街に溶けていった。
・・・・・・
雑木林の前には私と憂ちゃん、そして和の3人がいた。
私は冬服のブレザーを羽織り、こっちに来たときの格好をしていた。
澪「…戻れるかなぁ」
憂「きっと大丈夫ですよ」
和「まぁ、ダメだったらまた私たちのところに来ればいいわ」
澪「…それもそうだな」
気持ちは穏やかだった。
頬が少し痛むけど、心は晴れやかだった。
和「あ、そうだ」
和「もし戻れたら、律に言っておいてほしいことがあるんだけど」
澪「?」
和「体育館の使用申請書。さっさと出せって」
和「新歓の時ギリギリだったんだから…」
澪「…ふふ、わかった。伝えておくよ」
和は最後の最後まで気を配ってくれた。
戻ったら、またお礼を言わなきゃな。何のことだって思うだろうけど。
憂「あ、澪さんそれ…」
澪「あぁ、これか。さっき梓に返されたんだ」
憂「似合ってますよ♪」
澪「ありがとう」
きっと私の見えないところで梓を支えていてくれていたのだろう。
憂ちゃんは何も言わなかったけど、私は知っているよ。
澪「あの…さ」
澪「梓のこと、また泣かしちゃったんだ」
澪「だから、その…励ましてくれるかな?」
憂「はい、もちろんです!」
憂「梓ちゃん。軽音部の演奏聞いて泣いてたんですよ」
澪「…そっか」
うれしかった。ただ純粋に。
想いが伝わったのかはわからないけど、きっと届いたはずだ。
澪「それじゃあ」
和「うん、またね」
憂「気をつけて」
澪「本当にありがとう」
2人に別れとお礼を告げ、私は雑木林に入っていった。
一箇所だけ光が特に集まる場所。
その場所に足を踏み入れる。
澪「………」
空を見上げた。
きれいな月だ。あの時見たのと同じ。
地面が揺れる。頭が絞めつけられる。
あっ、この感覚は…。
―――――梓…。
――――――
――――
―――
――
…
――……輩。
――――…先輩!
―――――――……澪先輩!
澪「へっ?」
梓「んもぉーっ、話聞いてなかったでしょ!?」
澪「…?」
梓「新歓ライブ!絶対成功させようねって!」
澪「え、あ…」
梓「あっ、もう交差点だね」
梓「ねぇ。私先輩に渡したいものがあるんだ」
夢…?
でもこの場面、覚えがある。
…そうだ。このあと、梓はカバンからプレゼントを出して―――。
梓「はいっ。2ヶ月おめでとう」
梓「2ヶ月って中途半端なんだけどさ、進級祝いも兼ねてってことで」
梓「かわいいでしょ?先輩に似合うかなと思ってサプライズで、って…えっ?」
梓「嘘…?ごめん、先輩同じの持ってたんだ…」
自分の首に手をかける。
梓が持っているものと同じネックレスが、私の首にかかっていた。
そっか…。これは、夢じゃないんだな。
元の世界に、戻ってこれたんだな。
落ち込んだ顔をした梓の顔が目に映る。
そうだ。これは、私の知ってる梓だ。
私の恋人。私の大好きな、梓だった。
澪「―――梓っ!!!」ぎゅっ
私は梓を思い切り抱きしめた。
人の目なんか気にならなかった。
やっと会えた。ずっとこうしたかった。
梓「えっ、ちょっ…。み、澪先輩///」
澪「梓、あずさぁっ…」
私は何度も梓の名前を呼んだ。
離したくなかった。
このあたたかさを、いつまでも感じていたかった。
梓「…澪先輩?」
澪「………」
梓「………」
いきなりの出来事に体を強張らせていた梓だったが、
しばらくすると緊張も解けたようで、そっと私を抱き返した。
梓「私、先輩のこと好きだよ?」
澪「…うんっ」
梓「ずっとずっと、大切だよ?」
澪「うんっ、うんっ」
梓「どこにも行かないでね。ずっと一緒だからね」
澪「あぁ、約束する。ずっと一緒だ」
梓「ねぇ、先輩」
梓「……キスして」
――――――
――――
―――
――
…
それからのことを少し話そうと思う。
律をけしかけ体育館の使用申請書を出させたあと、5人で新歓に向けてめいっぱい練習した。
その結果が実ったのか、新歓ライブは大成功に終わった。大きなトラブルもなかった。
…結局部員は来なかったけど。
でも周りが言うには、他の人が入れないぐらい5人の仲が良さそうだから入りづらかったんじゃないかって。
だから別に後悔とかはなかった。梓も、5人のままがいいって言ってくれた。
それからは、毎日があっという間だった。
修学旅行も行った。合宿もやった。野外フェスにも行った。
空白だった5ヶ月を凄い早さで過ごしていた。
軽音部のみんなと。そして、梓と。
片時も離れることはなかった。
そして、今日は9月27日。
文化祭だ。
律「いよいよだな」
唯「ひ、人がいっぱいだよ…!」
紬「大丈夫よ、笑顔笑顔♪」
聞いた覚えのある言葉。
梓「頑張りましょう!」
そこに加わるもう一つの声。
澪「よしっ、行こう」
「次は軽音部による演奏です」
ステージにライトが照らされる。
“5人”は顔を合わせ、うんと頷く。
あの時経験した未来。
何もかもが違った未来。
その未来は今、軽音部と。
そして、梓と共にあった。
おわり