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澪「妹の観察日記」1

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moemoequn

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日記 ×月×日

パパとママが私を置いて海外旅行に行った。

私も行きたかったのに、学校があるからと言う理由で拒否された。

本当の理由はわかってる。新婚気分に浸りたいだけなんだ。

大人はずるい。身勝手だ。

私だって海外に行きたい。私だって一人は怖い。



日記 ×月×日

唯のうちに泊まることにした。

なんでも憂ちゃんが家出したらしい。

唯を一人にしておくと不安だし、私だって好き勝手にする権利がある。

ちなみに家出の理由を聞いたら、「憂が私のスイカバー食べたからケンカになった」と言っていた。

この姉妹はなかなかに過激だ。



日記 ×月×日

律が弟を自慢してきた。悔しい。

私だって好き好んで一人っ子に生まれてきたわけじゃない。

というわけで、唯に妹になってもらうことにした。

私だってしっかり者のお姉さんを演じてみたい。

ちなみに梓が妹になりたがってたけど、つまらなそうだから断った。



日記 ×月×日

唯がなかなか私のことをお姉ちゃんと呼んでくれない。

何度訂正しても、顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。

やっぱり同級生を姉と呼ぶのは気恥ずかしいらしい。

試しに「姉たん」と呼ばせてみた。

二人で床の上を転げ回ってしまった。



日記 ×月×日

今日は二人で学校に遅刻した。

私が寝坊したのも悪いけど、唯がなかなか起きないのも悪い。

一番悪いのは平沢家のベッドだ。フカフカしすぎだ。

遅い朝食を二人でいっしょに教室で食べた。

唯はパンにジャムを塗りすぎだと思う。



日記 ×月×日

今日は初めて平沢家で晩ご飯を作った。

と言っても、カレーと簡単なサラダだけだ。

唯に野菜を切ってもらったけど、すぐに挫折してしまった。

しょうがないから、床の上をコロコロ転がっててもらった。

タマネギを刻ませるんじゃなかった。



日記 ×月×日

今日の朝食は夕べの残りのカレー。

やっぱり一晩寝かせたカレーはおいしい。

ひとつ嬉しいことがあった。唯が「お姉ちゃんが作ったカレーおいしい」と言ってくれた。

初めて自然に「お姉ちゃん」と呼ばれた。

気恥ずかしくて床の上を二人で転がってしまった。



日記 ×月×日

今日は軽音部の練習で帰りが遅くなった。

遅くなったついでに、唯と二人でゲームセンターに遊びに行った。

パパもママも自分勝手なんだ。私だって悪いことがしたい。

格ゲーで唯に見事に惨敗した。

悪いことは難しい。



日記 ×月×日

うっかりテレビで怖い番組を見てしまった。

タモリは大嫌いだ。

一人で寝れなくなって、唯の部屋に布団を敷いて寝た。

唯は私のことをからかわなかった。ただ一言「いいよ」と言ってくれた。
私の妹の笑顔は優しい。



日記 ×月×日

最近はどうしても朝早くに目が覚めてしまう。

やっぱり私がしっかりしないといけないから。

でも朝ご飯がとてもおいしく感じる。早起きは三文の得だ。

今日は唯が朝ご飯を作る手伝いをしてくれた。

唯の入れたインスタントのお味噌汁はおいしい。



日記 ×月×日

今日は初めて唯といっしょにお風呂に入った。

真っ赤になって逃げる唯を追いかけたからとても疲れた。

あんなに意識されたら、こっちも恥ずかしくなってしまう。

髪を洗ってやっている間、唯はずっと目をつむっていた。

お湯をかけたら、「んー」と言った。



日記 ×月×日

唯の耳そうじをした。

くすぐったがって暴れるから、鼓膜を破らないかすごくヒヤヒヤした。

唯の耳はすごくプニプニしてた。

でも何より嬉しかったのは、唯に初めて膝枕したこと。

「お姉ちゃんのお膝はあったかいね」って言われた。床の上をコロコロしたのは言うまでもない。



日記 ×月×日

唯とケンカした。

原因はテレビの取り合い。

唯に「お姉ちゃんなんか大嫌い」って言われた。

でもしばらくしたら部屋に入ってきて、「お姉ちゃん、ごめんね」と小さな声で謝った。

唯の目は涙でいっぱいだった。それで私も泣きそうになってしまった。



日記 ×月×日

唯といっしょにアイスクリーム屋に行った。

行く前から大はしゃぎしてた。私の妹は本当にアイスが好きだ。

でもあんまりはしゃぎすぎて、アイスを落っことしてしまった。

お店の前で泣き出しそうになったから、新しいのを買ってあげた。

お財布が軽くなった。反対に私の気分は重くなった。



日記 ×月×日

唯といっしょに勉強をした。

居眠りしてたから、ほっぺを引っ張って起こそうとした。

唯のほっぺはスベスベで気持ちいい。

それで病みつきになってたくさん引っ張ったら、寝ぼけた唯に反撃された。

まだほっぺがヒリヒリする。



日記 ×月×日

久しぶりに唯のギターの練習につきあった。

唯は一年前とは比べものにならないくらいうまくなっていた。

とても嬉しかったけど、なぜか少し寂しかった。

いつからだろう。唯との付き合いが薄れてしまったのは。

私はいつまで「頼りになるお姉ちゃん」でいられるのかな。



日記 ×月×日

今日は唯の家の大掃除をした。

戸棚の整理をしてたら、平沢家のアルバムが出てきた。

妹の幼い頃の姿がたくさん楽しめた。

幼い憂ちゃんや和はかわいかった。唯のご両親は美男美女だった。

私の居場所はどこにもなかった。



日記 ×月×日

二人で水族館に行ってきた。

唯があちこち駆け回るから、後を追うのが大変だった。

一通り見て回ってから、海に行った。

妹は海を見ながら、「ずっとずっと、お姉ちゃんの妹でいたいな」と言った。

私は何も言うことができなかった。



日記 ×月×日

憂ちゃんが明日帰ってくるらしい。

最後の夜なので、唯といっしょのベッドで寝た。

唯が布団の中で「お姉ちゃんがいなくなるのは嫌だ」と言って泣いた。

私は、「わがまま言うな」と妹を叱った。

唯は本当の姉妹を大切にするべきだ。そしてそれは私じゃない。



日記 ×月×日

我が家に帰った。

私は一人でご飯を食べ、一人でお風呂に入り、一人で寝た。

唯は今頃、憂ちゃんとの再開を喜んでいるのだろう。

それでいいんだ。それが正しいんだ。だから私は泣かなくていいんだ。

なのに、なんで涙が止まらないんだろう。私のバカ。



日記 ×月×日

パパとママが帰ってきた。

お土産をたくさん買ってきてくれた。高級レストランにも連れていってくれた。

フカヒレのスープはなかなかにおいしかった。

でも、できるならインスタントのお味噌汁が飲みたかったな。

理由はわからないけど。



日記 ×月×日

パパもママも優しくしてくれる。今までの埋め合わせのつもりなのだろう。

でも、最近何をやっても面白くない。

勉強に身が入らない。軽音部の練習に顔を出す気にもならない。

もう、日記を書くのも止めようかな。

つまんない。



日記 ×月×日

唯から電話が来た。かつての妹は、両親がいなくて寂しいと言っていた。

そう、唯の両親は仕事であちこちに飛び回っているんだ。私の家とは違うんだ。

私はなんて身勝手なんだろう。

休みの日に、どうしても会いに来てほしいと言っていた。

私はもちろん行くことにした。



日記 ×月×日

唯は嘘をついていた。

一時的とは言え、両親は帰宅していた。後できっちり叱ってやらなくちゃ。

ずっといっしょの大好きな妹と、もう一人の新しい妹が声を合わせて言ってくれた。

「お帰りなさい、お姉ちゃん!」

「…ただいま」



終わり


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