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―――夏。

ああ、どうしてこんなに暑いんだろう

もう本当にやる気がでない

まあこれからも当然毎年"夏"は来るんだろうけど

そして私は夏が来るといつもあの夏を思い出す

もう戻ってこないあの夏を

そういやもうあれから何年だ?

すっかり私も大人になって……フフ

今となって思い出すと全てが懐かしい


「さて……と」

私は気だるい体をムクッと起こし空を見上げた

「軽音……か」




――2010年8月。


唯「図書館に来たわいいものの……」

唯「一向にやる気が出ないのは何故でしょうか」

唯「私の中のやる気……目覚めよ!」

唯「……あれ?」

唯「目覚め―――、
バンッ

澪「いいからペンを動かせ!」

唯「だってぇ……シクシク」

澪「律、お前もだぞ!」

律「お前は先生かっつーの!」

澪「はあ?大学行けなくても知らないぞ!」

澪(ムギ……旅行なんて行ってないで早く帰ってきてくれ…)




律「う……だ、だいたいなんで夏休みに勉強なんてしなきゃいけないんだ」

澪「それじゃあ頭も良くならないな」

律「だってそうじゃんか!こんなことに時間費やすよりもっとやるべきことが………」

澪「やるべきこと?」

律「た、例えば…………ば、バンド練習とか!」

澪「まあそれも大事だけど、今は勉強優先だろ……」
律「勉強勉強……ってもっと大切なことがあると思います!」

澪「ほぅ。聞かせてもらおうじゃないか!」
律「えっと……だな」
澪「?」
律「……い…」
唯「できたー!」
唯「ねえねえ見て見て!ほら!あずにゃん!」

律「……」
澪「……」

唯「あれ……なんかおかしいかな」
律「………ップ」
澪「………クス」

唯「えーっ、どうしてどうしてー?上手いじゃーん……」




「今日も暑いわねー」

「あっ、本当ですね……もう車無きゃ外になんか出られませんよね」

私は車の鍵を挿し込みドアを開けた

車の中はサウナ状態だ

「お出かけですか?」

「ちょっと今日は出勤しなくちゃいけないんで」

「こんな暑い中大変ねぇ……行ってらっしゃい」

「はーい!」

あの時の私が見たら驚くんだろうな…

私が車を運転しているなんて予想にもしてないだろうからな

「この先右折です」
聞き慣れたカーナビの声が妙な懐かしさを私に感じさせる

私の昔からの"通学路"

「はいはい、右折ですねー」
一人でぶつぶつ呟きながら私はハンドルをきった




唯「今日花火やらない?」
律「おっいいなー」澪「そんくらいなら……まあいいか」
紬「やっぱり夏といえば花火よね」
唯「そうと決まれば」カチカチ

律「梓呼ぶのかー?」
唯「あたりまえです!」
律「どうせなら憂ちゃんや和も誘えば?」
唯「そうだね!やっぱり多い方が楽しいもんね!」
澪「でどこでやるんだ?」
唯「あ……」
澪「決めてなかったんかい」ガクッ

紬「でもいいわねぇ花火って……私もいつか小さな頃やったのを覚えているわ」
紬「花火ってやってるときと思い出すときじゃなんか違わない?」

澪「わかるな……それ」

律「えーっ、どんな感じ?」

澪「お前にもいつかわかる日が来るよ」
律「今知ーりーたーいー!」





夕方


梓「あの…唯先輩?」

唯「え?」

梓「本当にここで花火やっていいんですか?」

唯「いいんだよ~」
唯「だってほら花火の残骸がたくさん残ってるしー」

梓「いや…その残骸は花火を讃えるというよりむしろマナーの悪さを表しているんですが…」

梓「それに見てください!」

梓「ほら《花火禁止》って書いてあるじゃないですか!」

唯「花火やりたくないんだ」

梓「いや決してそういう訳じゃありませんけど…」




律「大丈夫だってぇ。ほらここ河川敷だから火事になっても水はたくさんあるし」

梓「いや花火で火事って大惨事なんですけど…」

紬「でもいいんじゃない?またスリルがあって」

梓「それは抱いちゃいけない感情だと思うんですが…」

和「…まあマナーを守ってやれば良いんじゃない?」

唯「そうだよー、ってもう日が暮れちゃったよ」

律「じゃ…始めるか!」





まだ時間あるし喫茶店でも寄ってくかな…

店員「いらっしゃいませー」

「えーと…アイスティで」

店員「かしこまりましたー」


私もすっかり大人になってしまったな

昔ならなんか甘いやつを飲んで美味しい美味しいって言ってたけど今は逆に甘ったるくて変な感じがする


この喫茶店も懐かしいなあ


よく来た覚えがある
まあ高校生の頃はムギの持ってきた紅茶を良く飲んでたけど、たまにここに来てこうやって何か飲むこともあった

でももうあの味は全く思い出せない

そういやムギは今頃何やってんだろうな…

でもなんかスゴいことしてそうな気がする




それにしても今日はいい空をしている

雲一つない青空で

だから夏の空は好きなんだ

ずっとずっと遠くを眺めることができそうで

私はあっという間にアイスティを飲み干し、店を出た

店員「ありがとうございましたー」

カランカラン





唯「うわっ!」

パチパチパチ

律「私は三本だぜ!」

ジュジュジュ

律「おら梓覚悟しろー!」

タッタッタ

梓「ちょ、やめてくださいよー!」


和「澪はあっちに行かないの?」

澪「私はこれで十分」

パチパチパチ

澪「線香花火っていいよな……なんていうか風情があって」
和「……そうね。私もどちらかといえば線香花火の方が好きよ」



和「私たちって線香花火と同じよね」

パチパチ

和「今はこうやって光ってるけどいつかは終わりがくる」

和「だけどその儚さがまたその光をより光らせてくれているの」

パチパチ……

澪「あっ…」

和「……」

和「でもね澪、大丈夫」ゴソゴソ

澪「え?」

和「花火はたくさんあるから」

澪「いつの間に…」
和「だからね、一つの花火が終わったらまた次の花火をしたらいいのよ」

澪「次の……花火?」

和「夜は長いから」



タッタッタ

パチパチパチ

澪「うわっ!」

律「なーにやってんのさ、そんな小さい花火ばっかやって。もっと派手な花火にしようぜ?」

澪「って火傷するわ!」

律「へっ!」

タッタッタ

澪「くっそ…バカ律……!待てー!」

タッタッタ

和「なかなか楽しんでるじゃない…」

唯「和ちゃんもやろ!」

和「そうね」



ただ実際高校を卒業してから"2本目の花火"になかなか火を着けることができなかったのは事実だ

今はそこそこ安定はしているけれど、綺麗とは言えないんだろうな




ヒュルルルル


パーン


唯「いやぁやっぱり打ち上げ花火だねー!」

澪「だな…」

紬「綺麗ね…」

和「本当に夏っていいわよね」

憂「ですね」

梓「……」ジーッ

梓(律先輩すごい頑張ってるなー)


律「ああもう!どうしてグーをだしたんだ我が拳よ!」

ジュッ

ジュッ

律「私も見たーーーい!!!」




それとも初めから"2本目"なんて存在しなかったのだろうか

私は初めから1本の花火で

一度消えたら二度と着かないんじゃないだろうか

だとしたらあの花火と一緒で私の花火が綺麗な火花を出すことはもうないのかもしれない

でもまあ、それが花火のあるべき姿なのかもしれないが


その日は唯の家に泊まった




唯「いやー花火良かったねー」

梓「警察に見つかってたら大変な目にあってましたよ」

和「でもちゃんと掃除もしてきたし、打ち上げ花火なんか近所の人も見てたから良かったんじゃない?」

紬「ちょっと警察に追われてみたい気もしたけど」

梓(だからそれは芽生えちゃいけない感情ですってばー!)
唯「りっちゃんも……って寝てる」

紬「澪ちゃんも…」



憂「二人ともはしゃいでましたからね…」

律「………zzz」
澪「………zzz」

梓「本当に仲が良いですよね」

唯「じゃああずにゃん私たちも一緒に…」

梓「いやです!だいたい『じゃあ』ってなんですか!」

唯「うぅ…」

和「でももう夜も遅いし私たちも寝たほうが良いんじゃない?明日からまた勉……」

和「言わない約束よね」


憂「じゃあ電気消しますねー」

カチッ


結局あの日以来あんな風に皆と花火をやることはなかった

というより「またそのうちできる」という思いが逆になかなかできない状況を作っていたのかもしれないが




私は車に乗り込みエンジンをかけようとしたそのとき誰かが窓を叩いているのに気がついた

「?」

憂「お久しぶりです!」

「あー!憂ちゃん、久しぶりー!」

憂「あんま変わってなくてホッとしましたよ」

憂「これからお出かけですか?」

「うん。まあお出かけっていうか仕事なんだけどな」

憂「大変ですねー、頑張ってくださいね」

「また手のかかる子達でねー…あはは」
憂「あっ、そっか!先生やってるんでしたよね?」

「そうなんだ。でもこんなに大変だとは思わなかったな」




憂「でも輝いてますよ!先生!」

「ちょっと~!」

憂「あ、じゃあまた今度うちに遊びに来てくださいね!お姉ちゃんもいるんで!」

「うん。そのうち行かせてもらうよ」


「じゃあ」と彼女は笑顔で手を振って歩いていった

私はエンジンをかけ直し再び車を走らせた


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