【シナリオ1:鉱山の兇刃】
追跡宝貝達は人界に散り、逃亡宝貝を探していた。
気配を消し、人界に紛れる宝貝もいるが、見つけるのは不可能な事ではない。
宝貝の力は人界においては強すぎるのだ。
何らかの行動を起こせば必ず噂となり、朧気ながらも知れる事になる。
しかし、今回は全くそのような必要はなかった。
まるで隠そうともしない強烈な剣気がある山から立ち上っているのだから。
強烈過ぎるその気配に誰もが理解するだろう。
そこにいるのは、大剣の宝貝【愚断】だと!
擬人化した宝貝たちが集団脱走し、それを追う追跡宝貝たちが出発してから一週間。
人界の山中に一人の男が仁王立ちしていた。
この男、愚断剣という。
筋骨隆々の巨躯を惜しげもなく見せ付けるように上半身は何も身につけておらず、手に持つ大剣を地面に突き刺している。
これは何も意味のないことではない。
この山は鉱山であり、金気が宿る。
剣の宝貝である愚断は剣を突き刺す事により山の金気を吸い取り己を強化しているのだ。
仁王立ちしたまま愚断は待っていた。
自分は剣である。
だが、どこまで切れ味が鋭くなるか突き詰める為に作られた為、実際に戦いの場に持ち出される事はなかった。
愚断にはそれが我慢できなかったのだ。
剣である以上、戦うことは至上の目的。
それができず飼い殺しのような状態だった仙界での生活が。
だからこそ人界に下ったのだが、人界には愚断を満足させるような獲物はいなかった。
この鉱山の周囲には一切の生き物の気配はない。
なぜならば・・・・
そうして今、愚断は待っている。
仙界からの追っ手を!
戦いを!
鉱山の中腹、広く場の開いた場所で愚断は微動だにせず立っていた。
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