1 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/15(月) 23:30:25 0
以前あったヘヴィファンタジースレがなくなったので
立てました。

ダークなの好きな人集まれ!

2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/16(火) 12:45:50 O
ブニョリプチャギョホ

3 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/16(火) 17:38:27 0
>>2
黙ってろよくそガキ
蛆虫以下

4 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/17(水) 21:18:39 O
やる人いないなら、貰っちゃうよ

5 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/17(水) 21:24:20 0
ok

6 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/17(水) 22:37:20 0
>>4
どうぞどうぞ^^
最初の部分書いてくれたら俺も参加するよ

7 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/17(水) 22:38:28 0
ポニョ

8 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/17(水) 22:39:51 0
はやく1000まで埋めてくだちい

9 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/17(水) 23:01:24 P
>>4
私も参加を希望!
楽しみに待っています。

10 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/19(金) 11:33:19 O
保守派

11 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/19(金) 21:29:08 O
ヒョホ

12 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/19(金) 23:48:03 0
世界は混沌としていた。

昨日よりも今日は暗く

今日より明日は尚暗い

人々は日々に絶望を抱きながら

只、惰性で日常をすごしていた

道行く同胞の亡骸を一顧だにせず

誰もが生きる為に必死な世界。

13 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/19(金) 23:51:28 0
前スレ
■ヘヴィファンタジーTRPGスレ 2■
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1232441963/

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
魔法:
特技:
長所:
短所:
装備品右手:
装備品左手:
装備品鎧:
装備品兜:
装備品アクセサリー:
所持品:
髪の毛の色、長さ:
容姿の特徴・風貌:
趣味:
恋人の有無:
好きな異性のタイプ:
嫌いなもの:
最近気になること:
将来の夢(目標):
簡単なキャラ解説:

14 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/20(土) 00:49:41 0
前スレがヘビーなの?
迷っていたが知らないスレだし参加はしない

15 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/20(土) 01:05:29 0
>>14
実質的に新規スレ

16 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/20(土) 01:12:38 O
世界もルールも変わったからな
スレ主さんよ、雑談所にあったルールは投下しないのか?

17 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 04:19:48 O
おぉ
入りたかったがその時はもう止まってたからなぁ…
規定してるぜ

18 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/22(月) 15:41:50 0
誰かがキャラ紹介書いて
出だしの部分を書けば
あとは続くと思うよ

19 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 17:25:52 O
テンプレは…、これぐらいか?

名前:
年齢:
性別:
種族:
体型:
服装:
能力:
所持品:
簡易説明:


20 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 17:33:31 O
逃げの姿勢全開だな

21 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 17:47:05 0
一人キャラが現れれば後は集まるだろう
ただ、最初にやる奴が主人公、ってことになるだろうから
結構覚悟は必要だろうな

22 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 18:26:14 O
>>21
つーかコンセプト以外ストーリーもなんもないやん
ヘビーっても色々あるけど、前スレのエログロ継承しなきゃいけないのか?

23 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 18:51:40 0
むしろエログロ継承したらいかんだろ
ってかヘビーとダークだと微妙に違うのを想像するのは自分だけ?
ヘビーは白兵戦中心でファンタジー色が薄くてギャグ禁止の重苦しいシリアスもの
ダークは妖しい怪奇幻想系、舞台は暗いがギャグは必ずしも禁止ではなくファンタジー色が濃いのをイメージする

24 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 19:15:42 O
>>23
ダークとハードの違いの説明いいな
なんかやる気が出てきた
しかし立て逃げ野郎の思惑どおりになるのもムカツクからなあ

25 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 19:52:45 O
別にヘヴィを意識しなくていいのでは?
気にし過ぎて進まないより、心機一転のほうがわかりやすいし

26 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 20:37:55 O
>>25
それなら新スレでやれってなんね?
1に関連性が謳っている以上さ

27 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 21:04:51 0
完全心気一転でもいいよ

28 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/22(月) 22:14:59 0
スレタイ違う時点で関連性なしでいいだろ
ヘヴィはヘヴィとは名ばかりのエロスレ

29 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:51:32 0
だな
そのうち入るから誰か頼む

30 名前:名無しになりきれ[age] 投稿日:2009/06/25(木) 23:35:05 O
期待age

31 名前:ガレオン ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/06/27(土) 11:24:20 0
名前: ガレオン
年齢: 不明
性別: 雄
種族: ギガントタイガー
体型: 筋骨隆々の大柄な虎。分厚く発達した下顎からサーベルタイガーのような鋭い牙が伸びている。
服装: 赤と黒の縞々の体毛
能力: 灼熱の炎を吐く
所持品: 理性のペンダント
簡易説明:ある人物によって理性を与えられた魔物。世界の崩壊を防ぐべく旅をしている。
性格は温和だが、首から下げたペンダントが外れると見境なしに暴れまわる凶獣に戻る。

32 名前: ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/06/28(日) 21:25:51 O
名前:ページ・ファセット
年齢:50代
性別:男
種族:人間(?)
体型:白い髪、中肉中背の見た目20代
服装:普通の服、鍔の広い帽子
能力:能力向上系の魔法、本人には使えない
所持品:小銭
簡易説明:普通の村の普通の村人だったが、何故か老いの速度が遅く周りから気味悪がれ流浪の旅へ、自分が何者なのかを求めている。

>>31、きっかけくれてありがとう

33 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/06/28(日) 23:47:19 0
名前: シモン・ペンドラゴン
年齢: 27
性別: 男
種族: 人間
職業: 盗賊
体型: 身長175ぐらい、体重65ぐらい、引き締まった筋肉質
服装: 火鼠の皮でできたレザースーツ、その上にマント
能力: 紐に刃をくくりつけた武器「コカトリス」を使いこなす
所持品: 他に多数のナイフ、チャクラム、毒矢などの暗器
簡易説明:元々は暗黒組織の暗殺者だったが、あるきっかけで抜け、追われる身になる。
飄々とした軽めの性格だが、自分の欲を満たすためには手段を選ばない。

>>31
よろしく〜

34 名前: ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/06/29(月) 08:16:10 O
おはよう
夜帰ってきて、動きなかったら試しに動いてみるわ

35 名前: ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/06/29(月) 13:58:02 O
皆よろしく。
こっちは今日の深夜から動ける予定だ。

36 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/06/29(月) 14:42:33 0
名前:コクハ
年齢:23
性別:女
種族:人間
体型:身長175前後。体重は55前後。どちらかという華奢な方
服装:黒のジャケットに黒白のチェックシャツ。その下には黒のハーフパンツ
能力:武器に各種能力を吹き込む(某ゲームのセイバー系魔法をイメージするとわかりやすいかも)
所持品:バスタードソード、
簡易説明: 旅の剣士。魔物を狩ることで生計を立て、あちらこちらを転々としている。
性格はおっとりとしているが、案外自分勝手な所も。

37 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/06/29(月) 17:25:03 0
名前:ミア
年齢:17
性別:女
種族:人間
体型:150cm、小柄
服装:薄汚れた白のローブ。両手に銀の腕輪をはめ、細長い杖(1M程)を背負う。
能力:風と地の魔術を得意とする。
また、感情が昂ると強力に周囲の“魔”に抗する特殊体質を持つ(が、七年前《伝染する呪い》により故郷が壊滅した際に一度発現したのみ)
所持品:杖、魔術書、旅道具
簡易説明:無表情・無感情な魔術師の少女。故郷が壊滅して以来、当てもない旅を続ける。
旅の中で求めるのは、自分が少しでも“面白い”と感じられるもの。
ちなみに背負った杖を術式に利用することは滅多になく、主に棍として護身に用いている。


皆さん、よろしくお願いします。

38 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/06/29(月) 23:06:40 O
できそうだったら自分も入らせてもらうかも
頑張れよー

39 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage よろしくお願い] 投稿日:2009/06/29(月) 23:38:13 O
その夜は蒸し暑かった。
夜風が吹いても生暖かく、服はべたつき飲み水も既にぬるくなっている
こんな事ならさっさと飲むんだったと、男は軽く後悔しながら水筒を煽り飲み干した。

「まず…」

悪態を付きながら水筒を投げ捨てる。どうせ使い捨てだ
鬱蒼とした森の獣道の隙間に、街の光が微かに見えた。今夜は久しぶりに野宿せずにすみそうだ。 男は安堵と共に一抹の不安を覚えた。

「金、あったかな…?」

上着のポケットを漁り、小銭を取り出す。一食はできるが一泊となると難しい といった具合だ。
全く、ため息が出る。 一体何故自分がこんな苦労をしなければならないのか?
愚痴のような疑問が頭を掠めるがそれ以上は考えない事にする。それについては何年、いや何十年考えても答えは出ず その答えを求め苦労しているのだから。
今考えるべきは、今日の宿の確保、それだけだ

「あ〜…、風呂入りたい…」

40 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 04:31:38 P
夜空には満月。今宵のそれはいつになく明々と輝き、どこか非現実的に浮きあがった印象を与えている。
「…………」
勘を頼りに森を抜け、やっと辿り着いた獣道を、少女はやや覚束無い足取りで歩み始める。
どこか怠惰で仄暗い瞳。ピクリとも動かない表情。それらは人形の如く温かみに欠け、また空虚だった。

無造作に縛ったローブの二の腕部分、侵食する鮮烈な赤い染みの存在だけが、彼女が血の通った人間であることを積極的に主張していた。

「……………………」
(保たない)

焦るでもなく事実を認識すると同時に、ふらりと膝を折る。
先刻の戦闘による体力・魔力の消耗に、この出血のためだ。町は目前なのだが。
…ここで眠ったら、明日は目覚められるのだろうか?
その時。

カコン

何かが木の幹にぶつかる高い音が耳に届き、振り向く。…人がいる。

彼女は無言で懐を探り、数枚の貨幣――人間二人が宿と夕飯をとるのに充分な金額に若干の色をつけ、取り出した。
そのまま、まだ距離がある人影に向かって淡々と呼びかける。
「…………襲われた。けどもう撒いた…多分。
体が動かない。町まで連れて行って」
それから、握った金をちらりと見せる。
(変な奴だったら…その時はその時)



【よろしくお願いします。
私は特にシナリオを持っているわけではありませんが、「辺りに良からぬ輩がいる」ということだけ提示してみました。
このまま町or森の中の会話が続く、もしくは撒いたと思っていた敵に遭遇していきなり戦闘、なんていうのもありかな、と。
その場合は私を気にせず、敵の設定など皆さんで自由に演出して下さいませ。】



41 名前:ガレオン ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 09:44:26 0
夜闇を、異形の影が闊歩している。

それは猫科の大型動物に似ていた。しかしその巨躯、そして分厚く隆々と発達した筋肉は大猩猩を髣髴とさせる。
厳つく突き出た下顎は、その異形の強靭な咀嚼力を誇示しているかのようだ。
そして、長く鋭く伸びた下顎犬歯。真っ向から組み合った獣の喉笛を突き刺すための、戦うためだけの牙。
その牙の存在が、その発達した体格以上に、その異形が戦闘を大前提に進化した生物である事を物語っている。
全身を覆うのは、黒い稲妻模様の規則正しく走った赤い体毛。
そのあちこちに真新しい傷と血が散在し、まだ戦闘が終わって間もない事を示している。

魔獣ギガントタイガー。
薄汚い魔物にして誇高い獣物。

魔獣の眼は怒りに血走っていた。
獲物と思った人間に逆に手痛い反撃を受け、逃してしまったのだ。
否、まだ逃してはいない。血の香りが、獲物の逃げた方角を教えてくれている。
逃しはしない。
大きな足裏で草を踏みしめ、魔獣は獲物の人間…杖を持った少女を求め、夜の闇を進んでいく。
もうそんなに遠くはないだろう。



その様子を、遠くから一羽のウサギが眺めていた。
ウサギは決して魔獣に気付かれないよう風上から距離を保ちながら、その後を追っていく。

42 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 13:36:56 0
夜の闇の中を黒髪黒目の少女が歩いている。
目は一重。髪にはジャギーが入っている、ごくごく普通の人間だ。
腰には剣を差し、手にはランタン持っている。

「おっかしいわね・・・ここら辺にいるはずなんだけど・・・」

もしかして、例のものがいるというのは嘘だったのだろうか。
よくない考えが芽生えてくるの抑えつつ、体ごと左に向けてみた。
ランタンの光が夜の闇を切り裂き、木の幹がオレンジ色に染まっている。
夏の虫たちが、樹液を吸っている以外は特に変わった様子はない。

(左にはなし。とすると、右か)

そう思い、右に向けてみた。
特に何もない。
草がランタンの光によってオレンジに染まっているだけだ。

(左にもいない。右にもいないとすると、真ん中か)

ランタンの光が獣道を照らし出した。
草木が延々と続いているだけ特に何もなさそうだ。
少女はくるりと踵を返し、街のほうへ帰ろうとし始めた。



43 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 20:30:44 0
その作戦は夕方頃から行われた。
「反乱軍に占領された街に行って、人質になった領主を解放し、王国の宝物を奪還する」
これが、その仕事の内容だった。
仕事仲間は全員で十人程。明らかに少なすぎる。

(おかしい…)
盗賊としてはベテランの域に達した彼ではあったが、さすがにこの”仲間たち”の
落ち着き様は異常そのものであった。街にいよいよ侵入、という時点でも
せいぜい緊張していそうなのはせいぜい二、三人といったところだった。

日が沈んだ直後、戦闘が始まった。
見張りの兵士二人が一瞬にして絶命し、「仲間たち」が駆け出した。
反乱軍兵士は甲冑と槍・剣で武装していたが、軽装の彼らによって、
殆どが一撃で急所を斬られ、屠られていった。

一部の反乱軍は町人を人質に取ったが、それを知ってか知らずか、
彼らは町人ごと殺戮していった。

あまりの進軍の速さに彼はついていけず、反乱軍兵士の足止めを食らい、
それらを全て血祭に上げた頃には味方を見失っていた。

「キャァァァ!」
女の悲鳴。そちらを振り返ると、仕事仲間の一人、ランディが反乱軍から助けた女を
まさに犯しているところだった。こいつは仲間の中でも緊張したりと”普通の”行動をしていた奴だ。
傭兵が守るべき女達を犯す光景には慣れていたが、彼は仲間に置いていかれ、腹が立っていた。
一瞬。
懐から彼がそれを取り出した刹那、ランディの首筋から血が噴き出し、
膝をついてやがて絶命した。彼の暗器の一つ、「コカトリス」である。


ようやく領主の館についた彼を待っていたのは、意外なものだった。
「馬鹿な…」
”仲間たち”が手にしていたものは、いくつかの箱に分けられた宝物と、
剣に刺さった、領主と思われる太った髭面の男の首であった。
そして…
「ひぃ…見逃してくれ!命だけはぁ…」「ひぃぃっ!!」
”仲間たち”以外の三人の命が、そこで散らされていった。
人間離れした一撃により上半身が吹き飛び、内臓などがあちこちに飛び散った。
その一部がまさに、彼の前に落下する。

「ひぃ…!」
そして、仲間内で唯一の「生き残り」である彼に視線が集まった。


44 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 20:53:58 0
幸運だったのは、勇敢な一部の町人が騒ぎ立ててくれたことである。
森の方に追い詰められ、既に瀕死の重傷を負っている彼から、敵となった”仲間たち”は
蜘蛛の子を散らすように離れていった。

「”任務失敗”か…俺も運がねぇな…」
恐怖よりも、金ほしさにやった仕事が”大ハズレ”だったことに失望していたのだ。
「それにしても、奴ら…」
自分を付けねらう暗殺組織はよく知っているが、連中はそれでもなかった。何者なのか…

「くそ、それより傷を何とかしねぇと…!」
傷口はかなり深いが、このままいけば何とか街には戻れそうだ。
もっとも、街を”襲った”彼を受け入れてくれるかは別だが…

(おっと…!)
物音を立てないように歩いていたつもりだったが、肩のプレートが木に引っ掛かり、
甲高い音を立ててしまった。
(…!)
途端、真横で何者かが足音を立てた。振り返ると、そこには少女がいた。
貨幣をこちらに見せ、何やら懇願してくる。
「…………襲われた。けどもう撒いた…多分。 体が動かない。町まで連れて行って」
「何だ。驚かせやがって… 体が動かねーのはこっちだっつの」

一瞬だけ、考える。
こいつを殺して金品を奪い取り、街に入るか?こいつを利用して、より容易く街に入るか?
リスクを見れば答えは一つだった。

「…ああ分かった。それより、まずはそのみっともねぇ傷を何とかしようぜ」
遠慮なく、とばかりに硬貨をわしづかみにし、不躾に傷薬を懐から取り出すと、
まずは自分の傷口を水筒で消毒し、塗ってみせた。
「この傷薬は半分お前にやる。その代わりに街まで一緒に来てもらおうか」
パッと見て、悪意の感じられない少女だ。彼は良い盾を見つけたと、少しばかり安堵した。


45 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 21:22:01 0
名前:ディーバダッタ
年齢:35
性別:男
種族:人間
体型:190cm、ガチムチマッチョ
服装:赤い袈裟。首掛け大型数珠。 左目に眼帯。
能力:法術・格闘・金眼
所持品:潅頂剣(刀身の無い剣。思念を通わす事により刀身を形成。思念波であり物理攻撃力はないが物理防御も不能。
        精神や魂、魔力などをダイレクトに傷つける。
        潅頂剣で切られた者はその度合いにより脱力・疲労・虚脱・昏倒・精神崩壊を引き起こす)
    数珠(首に掛けた数珠とは別の携帯用の数珠)
簡易説明:スキンヘッドの隻眼ガチムチマッチョ。
     終焉の月教団の僧侶。
    終末思想で勢力を伸ばしつつあるカルト教団。
    生贄や暴動の扇動など、黒い噂は絶えない。
    幹部は忠誠の証として、自ら片目を抉り教主へ捧げる。
    捧げた片目の変わりに教主より金眼を授かる。
    金眼には特殊能力は一つ込められており、新たなる力を獲ることになる。

よろしくお願いします。

46 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 21:39:52 0
>42
コクハがくるりと踵を返し、街のほうへ帰ろうとし始めた。
しかしランタンが照らすのは帰りの道ではなく、赤い壁であった。
いつの間にか背後に大柄な男が立っていたのだ。

「はっはっは、コクハ殿。やはり迷われていましたか。
あれからより詳しい信託が下りましてな、拙僧急いで後を追ってきたわけですよ。」
朗らかに笑いながら説明するが、夜闇の中ランタンに照らし出されるスキンヘッドの隻眼大男の顔は不気味以外何者でもなかった。

この男、最近勢力を伸ばしているカルト教団【終焉の月】の僧侶。
コクハに例の物を手に入れるように依頼したクライアントでもある。
帰ろうとするコクハに有無を言わせぬ笑顔で真ん中の獣道を指し示す。
「折角ですから共に参りましょうか。
あなたは我が教団から礼金を。我らは例のものを手に入れる。
お互いの幸福は近いですぞ?」
グイグイと後ろからせかすように獣道を進む。

獣道を少し行ったところで、二人は【例のもの】を見つけることになる。

>40>44
「喝っ!」
月明かりの中、ディーバダッタの怒声が空気を震わせた。
獣道を抜けたコハクとディーバダッタの前に、傷薬を塗っているシモンとミアの姿がある。
「やはり神託通りここにいたか。
そこな男、その少女から離れるがいい。
その少女は災厄の坩堝。呪われし感染源。
我らに任せ、早々に立ち去れい!」
無駄な戦いを避け、ミアの回収を最優先にしようとシモンに大声で告げる。
が、その大げさなアクションとは別に、小さくコハクに合図をしていた。

不穏な動きがあれば即座に男を倒すように、と。

【勝手に話を作ってしまいましたが、この先特に考えているわけではありません。
とりあえずダークっぽい悪役に挑戦。
巻き添えで勝手に仲間にしたコクハさんには事後承諾ですいません。
プロリール的に雇われの身にできそうだったので。仲間といってもビジネスライクな関係で。
嫌な悪役なので、いつでも裏切っちゃってもOKです。】

47 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 22:54:41 O
虫と風の音しか聞こえない夜の森に巨獣の唸り声のような低い声が流れた
歩きながら男、ページはソれを聞きながら肩を落とし、自らの腹をさすった

「流石に、水だけじゃ満たされないか…」

ページは腹の虫により一層強くなった空腹感を感じながら手にある小銭を睨み付けた

「……駄目だ、食ったら宿が…、あぁけど腹減ったなぁ」

足を止め、食欲と安眠欲、欲望同士の終わり無き戦いが本格化しようとした時だった。
後ろに何か気配を感じた。振り返ると自分を横切る形で草むらを走る兎の姿が見えた。

もし彼が、空腹により冷静さを欠いてなかったら
夜の森を単独で活動する兎の不自然さや先程の気配はあんな小動物から感じるようなものでない事など気付いていただろう
だが、全ては遅すぎた。
走る兎を必死に追いかけ、木々をかき分け時には飛び越え ついに毛に覆われた細長いモノを手探りで掴む

「よしっ…! 干し肉、いやいや炙り肉も…」

湧き出る妄想に涎を垂らしながら兎の耳と思うソレを引っ張った。しかしソレはまるで楔を打ち付けてあるかのように微動だにしない。
不思議に思い顔を近づける。月明かりに黒の縞模様のある尻尾が浮かび上がった。
頭から血の気が引くのがわかった

「………もしかしなくても、これって」

48 名前: ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 22:56:08 O
>>45
悪役キタ!これで勝つる!

世界やキャラの設定なんて私はその場のノリで決める気満々ですよ

49 名前:ガレオン ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 23:43:18 0
>>47
ぎろり。

魔獣の顔がゆっくりとページに振り返った。

一秒。
二秒。
三秒。

ブチッ。

「グルオォォォォォオオオオオオァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

あらん限りの咆哮。
溜め込んでいた怒りを一気に爆発させるかのように、魔獣はページに飛び掛る!

「危ないっ!」
そこにウサギが駆け込み、ページに体ごと突っ込んで攻撃の軌道から逸らした。
野太い前脚の一撃が、間一髪のところで空を切る。

「大丈夫ですか?ああもう、何て危険な事を!」
ウサギは当然のように人語を繰り、ページを窘める。それはさっきから魔獣を追跡していたウサギだった。
そうするうちに、魔獣は第二撃を加えようと前脚を振りかぶっている。
「とと、話は後です。逃げますか?戦いますか?」

50 名前: ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/06/30(火) 23:45:00 0
人が増えてきたな、いい傾向だ。
ちなみに俺もその場のノリで決める派だぞ。

51 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/01(水) 02:54:01 P
>>44
(……間違えたかしら)
応じた男は控え目に言って満身創痍、助けを求める側の人間だった。
だが彼は一瞬の逡巡のち、承諾した。
怪我人同士肩を貸し合っても…そう思っていると、彼は薬、それも瀕死の重傷にも効果を期待できるようなものを持っているようだった。
「この傷薬は半分お前にやる。その代わりに町まで一緒に来てもらおうか。」
答えず、静かに相手を観察する。
負傷のわりに態度には余裕があり、動きは軽やかで隙がない。明らかに場馴れした戦士だ。
目には思案の光が宿り、決して善意や同情心に満ち溢れた男というわけではないようだったが、とりあえずは信用できると判断した。
「………契約成立。《町に入ること》。」
そう言い、薬に手を伸ばした。

>>46
「喝ッ!」
突然の魂を震わすような一喝に、珍しく彼女は目を瞬かせて驚いた。
現れた赤袈裟が述べたのは、あの“伝染する呪い”のこと――

「……………………だとしたら、何?
呪いの魔素が欲しい?魔素は消えたわ。7年前、私の《力》で全部。
どこにも、私の中にだって、残ってない。
私で何をしたい?」

無機質で一定な声音、関心なさげな冷めた視線。
だが注意深く観察すれば容易に見てとれるだろう――揺れる瞳、その奥に隠れた明らかな動揺が。
…………今更、触れないで欲しかった。

横目でシモンを伺う。彼にこちらを助ける理由は無い…だが、一対ニでは不利だ。
「再契約。私を守って。報酬は、手持ちの内なら言い値で払う。
…足りなければ、体で払う」
そう囁くなり、返事も待たずに呪文を唱えかけた…その時。

>>49
聞き覚えのある獣の慟哭が響いた。近い。
赤袈裟たちの注意がそれた瞬間、彼女はその声の方角を目指して駆け出していた。
考えたのだ。薬が効いているとはいえ、こちらは状態が悪すぎる。だが2つの敵同士をぶつけてしまえれば、あるいは…と。


52 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/07/01(水) 16:01:33 0
>>46
首を縦に振り、男のほうに視線をやった。
ランタンの光によって男のレザースーツとマントがオレンジ色に染まった。
見たところ、武器は持っていなさそうだ。
体の所々には傷があり、満身創痍といったところだが、漂わせる雰囲気は明らかに町人のそれとは違っていた。

(簡単にはいかなそうね)

油断をすれば、こちらがやられる。
剣の塚に手をかけ、男の動きを見守ることにした。

>>51

ところがその時、コクハにとって予想外のことが起きた。

「グルオォォォォォオオオオオオァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

地面が揺れた。
獣の方向によって揺れた。
杖を持った女が走り出した。

声の大きさからすると背丈は相当なものがありそうだ。
見つかればまず間違いなくあの女は死ぬ。
そうなれば、礼金はもらえなくなる。
満身創痍の男は無視し、後を追いかけることにした。

53 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/01(水) 19:06:28 0
>>46>>51-52
「そこな男、その少女から離れるがいい。 その少女は災厄の坩堝。呪われし感染源。
我らに任せ、早々に立ち去れい!」
ようやく薬を塗る時間が取れたと思いほっとしたのも束の間、
突如ズカズカと現れたのは、隻眼の大男と長身の女剣士だった。
「チッ!」

既に武器を構え、災厄の坩堝と言われた少女の方を横目で見る。
「再契約。私を守って。報酬は、手持ちの内なら言い値で払う。
…足りなければ、体で払う」
シモンが口を開く前に少女が言った。
「ふん、今言ったの全部でいいぜ。それより…こいつらとやり合うってのか?」

無理もない。相手は、特に大男の方はこちらに全く臆すことなくにじり寄ってくる。
一方でこちらは自分が手鍛れとはいえ、二人とも満身創痍だ。
先ほど止血した傷口からはまた血が滲み始めている。

と、その時、獣のような恐ろしい鳴き声が響き渡った。
少女が逃げる。シモンはそれを確認すると、懐からナイフを二本、それぞれ
大男と女剣士の足元に投げ、少女を庇うように自分も駆け出した。

54 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/01(水) 22:34:52 0
>51>52>53
響き渡る方向に一瞬気を取られた隙にミアが駆け出す。
それを気に一気に駆け出すコクハとディーバダッタだったが、第二歩は止めざる得なかった。
ミアと共に駆け出したシモンが何かを投げる素振りをしたからだ。

とっさに両腕を上げ目と眉間、咽喉をそれぞれガードした。
夜闇の中で突然投擲されたナイフを見切るのは至難の技。
戦士ならばともかく、僧侶たるディーバダッタにはとっさに急所を守る事だった。
が、予想外の場所から痛みが走る。

急所ならその太い腕で防げただろう。
胴体ならば鋼の筋肉で防げただろう。
しかしナイフはディーバダッタのフクラハギを切り、足元に突き刺さったのだ。

「ぐ・・・くくく!なかなかの手練!面白い!
聖職者に手をかけたからには堕地獄ぞ。
それを恐るるならば我が慈悲に縋り、引導を受け六道輪廻より解き放たれるが良い!」
足元のナイフを拾い、血のついた刃をべろりと舐める。
血の味はいつもと同じ。毒はついていない。
急所や胴体ではなく、逃げる為に相手の起動たる足を狙う。
他の部位に比べ当て憎いとろこにも拘らず、だ。
そのとっさの判断力と見事に当てたところからシモンの力量を推測していた。

ニタリと笑いながら立ち上がり、二人の後を追い始めた。
治療を行うこともできたがそれでは二人を見失う。
ミアもシモンも万全の状態ではないようなので、足の怪我を放置して追うことにしたのだ。
「ふひひひ!災厄の坩堝よ!何を逃げるか!
自身でわかっておろう!己の業深き事を!
そなたは存在するだけで罪なのだ!
我らが邪業悪縁を断ち切り、救世の礎としてやろうというのだぞ!?」
足から血を滴らしているにも拘らず、全く痛みを感じている様子はない。
生い茂る草や枝をその巨躯でなぎ倒しながら突き進む。

夜の森にディーバダッタの声と共に『波阿弥陀仏・南無阿弥陀仏』という経文が響き渡る。

55 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/07/01(水) 23:33:36 0
>>54
追いかけだしたコクハだったが、予想外のことが起こった。
シモンがミアの後を追いかけ始め、こちらに向かってナイフを投げてきたのだ。
相手の姿はよく見えない。かろうじて見えたのは月の光によって光るナイフの先端だけ。
あわてて体を横にずらすが、時すでに遅し。
ナイフの先端が太ももをかすめ、肉が切り裂かれてしまった。

「っ…」

切り裂かれた部分を目を凝らしてみてみた。
赤い一本の線が走り、赤い液体が少々垂れている。
出血は思ったよりもなさそうだ。
ついでに味も確かめてみたが、こちらも特に問題はなさそうだ。

>「ぐ・・・くくく!なかなかの手練!面白い!
>聖職者に手をかけたからには堕地獄ぞ。
>それを恐るるならば我が慈悲に縋り、引導を受け六道輪廻より解き放たれるが良い!」
ふと、気になり相手のほうを見てみた。
太ももにナイフが刺さっている。
そこそこ深手のようだ。
だが、ディーバダッタはそれを気にするようすはまったくない。
ナイフを引き抜き、自分と同じように血の味を確かめていた。

「傷薬。後で暇になったら使って」
南無阿弥陀仏とかなんとか呟いているのをしり目に傷薬を放り投げた。
本来なら放っておくところだ。
特に渡す義理はないし、経文もうるさい。
だが、あの傷が原因で捕まえ損ねたとなればこっちも困る。
あの傷が原因でまともに動けなくなる恐れもあるし、何より運命共同体なのだ。

(ちったは静かにしなさいね)

軽く人睨みしながら二人の後を追いかけ始めた。

56 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 00:57:52 O
死ぬ。
時間の感覚がおかしくなり前足がゆっくり振り下ろされる。
無理だ、逃げられない。このままあの爪で引き裂かれて…、あ、引き裂かれるのも遅いのは嫌だな…。などと意外と落ち着いた頭で少しずれたことを考える事しかできなかった
そして、体を貫く衝撃は予期せぬ方向、即ち脇腹から襲い ページは吹っ飛んだ。

「うぅおおおおぉぉおぉぉぉぉ!!!?」

体中汗と泥だらけになりながらもなんとか体を起こす。目前には未だに怒髪天を突く勢いの巨獣、 目下には

「大丈夫ですか?ああもう、何て危険な事を!」

あのウサギがいた。どうやらコイツが助けてくれたらしい。

「す、すまん! それよりあれはなんだ!?普通の虎ではない!!」

赤く巨大な体躯、鋭く聳える牙、 どう見ても一般的な見解の虎より一回り凶悪な見た目に、こんな奴を怒らした少し前の自分を恨んだ。
ウサギが答える間もなく二撃目が来る。今度はウサギと共に避けられた。

「とと、話は後です。逃げますか?戦いますか?」
「もちろん逃げるっ!」

怪物を相手にして良い事など一つもない。それに自分は、一人では戦えない。
ウサギからの問いに迷う必要はなかった。
今度こそウサギの耳を掴み、背中を見せてがむしゃらに逃げる。
振り向く余裕などない。だが気配は確実に自分を追いかけていた。
女の子に会ったのはそんな時だ。暗くて白いローブを着ている事と大きな棒を持ってるくらいしかわからない
見間違いと思い 立ち止まって見ても確かにそこにいる。
なぜこんな所に一人で子供が、と疑問を抱いた。同時にこの場に虎が来た場合の展開を考え戦慄した。

「…! 君!理由はいいから早く逃げっ」

57 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 17:42:15 0
名前:エルシア・マキシネン
年齢:18歳
性別:女(かつては男だった)
種族:人間
体型:身長160cm(変身後10m以上) 一見スレンダーだが、かなり着痩せするタイプ
服装:茶髪のショートボブで、フードを被り旅の少年然とした格好
    変わった意匠のショーテルを腰に差し、紋章の彫られたカイトシールドを携帯
    旅に必要な品々が入ったリュックサックを背負っている
    背中には盾に彫られたもの同じ意匠のアザがある
能力:忍者のように身軽で優れた身体能力を誇る
    それを活かしたヒット&アウェイを旨とする我流剣術で戦う
    また、実戦的(卑怯とも)な戦法を絡めることもある
    背中の紋章が真っ赤に染まる時、巨大な赤い騎士に変身することができる
    赤騎士になった場合、大剣と火炎魔法を使ったパワフルな戦いを展開する
所持品:レンターズショーテル(名刀匠レンターの遺作であるショーテル)
     カイトシールド(エルシアの手元を絶対に離れることのない不思議な盾)
     リュックサックの中に食糧などの旅用品一式
簡易説明:一人で延々と旅を続けている謎の少女
       普段はその風貌と粗暴な口振りのため、どう見ても少年にしか見えない
       本人曰く弱きを助け強きを挫く正義の味方らしく、盗賊狩りで生計を立てている
       とある古代遺跡にて何らかの呪いを受け、赤騎士に変身する力を得た
       だが、それによって故郷の村を追われてしまうという過去を持つ

58 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 17:50:54 0
よろしくお願いします

59 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 18:12:48 0
>>49>>56
盗賊親分「ひいぃぃっ!
       お、お助けえぇぇ…」
エルシア「人様の命奪ってまでモノ盗むからだよ!
       ええ、どうしてやろうかあ?
       てめえはリーダーだかんな、ミネ打ちくらいじゃ済まさねえぞ」
盗賊親分「な、何が望みだ!?
       金か、女か!?
       俺の命以外なら何でも約束するよ!
       だ、だからぁ…!」
男の悲痛な叫び声と少年の甲高い怒鳴り声が響き渡る
それは、一人の少年によって全滅させられた哀れな盗賊の一団だった
親分以外の手下たちは、周りですっかりノビてしまっている
少年は親分の喉元にショーテルの切っ先を突き付けている

エルシア「そうさなあ…
       女もいいけど、とりあえず金目のモン渡してもらおっか
       そうすりゃてめえらの安い命だって…」
>「グルオォォォォォオオオオオオァァァァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
エルシアのセリフを遮るように響き渡る獣の咆哮
それは耳をつんざかんばかりの凄まじい轟音のようなものだった
盗賊の親分は余りのことに、耳をおさえて震えだした

盗賊親分「ひいぃぃっ!
       な、なんだよぉ…」
エルシア「こ、この咆哮は…ヴェアヴォルフ!?」
盗賊親分をその場に置いて、声のする方向へと駆け出していった
疾風の如く駆け抜け、一瞬にして人影を発見したエルシアは驚愕した
なんと、巨大な虎が烈火の如く人間に襲い掛かっているのだ

エルシア「あ、ありゃヴェアヴォルフなんかじゃねえ…
       化け物トラだとでも言うのかよ!
       …てめえらあぁぁっ!!伏せろおぉぉっ!!目を隠せえぇぇっ!!」
考えている暇もなく、崖から駆け降り始めるエルシア
そして、リュックサックから取り出した閃光玉に火を付けてトラの目の前に投げ付けた
激しい閃光が走るが、エルシアは慣れているため平気である

エルシア「どうでえっ、化け物!
       俺の特製・対大型モンスター用閃光玉の味は!
       大枚叩いた代物だかんな、有り難く味わいやがれ!」

60 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 19:36:36 O
「はぁっ、……はぁ………!」
軋む体を引きずり駆けるうち、正面から見知らぬ男が走り来ることに気がついた。その背後には例の虎が迫っている。
ミアは幸運に感謝した――そして速度を緩めず男に当て身をくらわそうとした。
彼を虎の餌にしてしまえば、その間にミアたちは逃げられる。だが、

「…! 君!理由はいいから早く逃げっ」
……カテゴリー《善人》。
(仕方ない……)
結局非道に徹し切れずに男の腹に届きかけていた拳を解いた、その時。

>>59
「…てめえらあぁぁっ!!伏せろおぉぉっ!!目を隠せえぇぇっ!!」
刹那、閉じた瞼の向こう側から網膜を焼き切るかのような閃光が走る。
赤く染まった世界の中、ミアは手探りでページ、シモンの体に触れた。

「……動かないで。
  “天駆ける自由の民よ――”」
魔力を振り絞り、正式な手順をいくつかキャンセルする。光が収まった頃には呪文は完成していた。
「“飛翔”」
瞬間、三人は重力の楔から解放される。
コントロールはミアが握っている。崖の上まで逃げる力は残っていないが、追手と虎に挟まれた今の状況だけは抜け出すことができるだろう。
虎の頭上を超え、崖下の協力者の元を目指す。


61 名前:ガレオン ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 22:31:56 0
耳を捕まれ、走るページに合わせてぶんぶん揺れるウサギ。
「うわぅわぅわぅわぅわ!ちょ、ちょっと!ガレオンの耳を掴むのはやめてください!
 ガレオンは耳が弱いのですよぅ!」
ウサギは猛抗議するが、その状態では為す術もない。
その後ろからは、怒りの炎を眼に燃やした魔獣が猛烈な勢いで駆けてきている。
…が、魔獣は途中で足を止めた。
そして後脚立ちになってのけぞり、大きく息を吸い込み始める。
その胸が、見る見るうちに風船のように膨らんでいく……!

ギガントタイガーは、体内に炎嚢と呼ばれる器官を持っている。
炎嚢は人間の頭程度の大きさで、管を通って肺と直結しており、入り口は弁で塞がれている。
そこでは体内の栄養分を合成し、化学物質ニトロヒドラジン酸リン酸ウランが作り出されている。
空気と反応すると爆発的な勢いで燃え上がる、極めて危険な物質だ。
そして、ギガントタイガーは自らの意思でこの炎嚢弁を開閉することができる。

ギガントタイガーは、限界まで息を吸い込んだところでピタリと動きを止めた。
炎嚢弁が、開く。
肺の空気が炎嚢に流れ込み、炎嚢の内容物が一瞬で燃え上がった。
爆発のような勢いで発生した炎が、魔獣の規格外の横隔筋の力で一気に肺から押し出される。
そして肺から押し出された大量の炎は、弾丸のようなパワーを持って口から射出される!

…しかし、ページとガレオンを焼き尽くすはずだった炎は、明後日の方向に向けて放たれていた。
突如として発生した閃光玉の爆光が魔獣を怯ませたのだ。
「グァウッ!?」
肺の中の炎を吹き切りながら魔獣は首を振った。
光は存分に効いているようだ。

そして魔獣が光に怯んでいる間に、ページ達はその頭上を飛び越えて離脱していた。
しかし混乱した魔獣にはそれに気付く由もない。
「ガァッ!グゥアッ!!」
眼の痛みにもがきながら、魔獣は明後日の方向に猛烈な勢いで走り始めた。


空中。
「いやぁ助かりました。できればこのデリカシーのない男の腕もちょん切ってくれると最高なのですがね」
ページの手の下でぷらんぷらん揺れながら、ガレオンが少女に礼を言う。
「…しかし貴女の顔を見るに、まだあまり助かった感じではないようですねぇ」
少女にあまり余裕があるようには見えない。
魔獣もまだ大人しく逃げ帰ってくれるかは分からないし、
この少女と少女の連れの男も果たしてどんな厄介を抱え込んでいるやら分からない。
「…長い夜になりそうだ」
首から下げたペンダントを見つめ、ガレオンはひっそりと呟いた。

62 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/02(木) 23:20:12 0
>55
>「傷薬。後で暇になったら使って」
「おお、これはありがたい。
コクハ殿には我が神の加護があるでしょう!」
コクハの思惑も知らず声の大きさは収まるところを知らない。
二人の後を追いながら傷薬を受け取り袖に入れると、ディーバダッタの気炎は高まっていく。
それに呼応するように足の筋肉が盛り上がり傷口を塞いでいく。
そして一気に駆け出した。

獣道を野原の如く加速し、あっという間にミアとシモンの背中を捕らえる。
あと少し、というところで跳躍。
首にかけた巨大な数珠を手に翳す。
巨大な数珠は今正に鈍器へと変貌し、シモンの背中に振り下ろされようとしていた。
その瞬間である。

夜闇を切り裂く閃光!
「な・・・ぐおおおおお!?」
暗闇に慣れた目には閃光は実に効果的だった。
視界がホワイトアウトし、シモンを見失う。
しかしそれだけでは終わらなかった。
本来水平発射されるはずだった魔獣の炎は夜空を焦がし、宙を舞っていたディーバダッタを直撃したのだ。

火達磨になりながら地面に落ちるが、それでも体制を崩す事はなかった。
「光で目を奪おうと、炎を浴びせようと、我が信心が揺らぐと思うてか!
目は見えずとも気配は掴んでおるぞ!打ち据えよ!」
袈裟を焦がす炎を振り払う勢いで手に持った巨大な数珠を投げつけた。

飛翔する数珠はバラバラになり、無数の礫となって空中の一向に襲い掛かる。

63 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/03(金) 00:06:18 0
追っ手の足が一時的に止まったようだ。どうやら上手くいったらしい。
追撃はなおもドタドタと続いているようだが、華奢な少女は予想以上に
速かったため、辛うじて追いつかれるのは免れた。

と、一瞬、少女の足が止まる。
目の前には白髪の青年。奇妙だが、見た感じ自分と同じぐらいの歳のようだ。
「…! 君!理由はいいから早く逃げっ」
その時、シモンは後ろに迫る巨大な獣の気配に気付いた。


「やべぇっ…!」
「…てめえらあぁぁっ!!伏せろおぉぉっ!!目を隠せえぇぇっ!!」
そして響き渡る謎の少年の声。 もはや何が何だか。
とりあえず武器に手をやるシモンの体に、少女が静かに触れた。

「“飛翔”」
「うあぉっ!」
魔法抵抗をしよう隙もなく、シモンは少女の魔法によって宙を舞った。
木のてっぺんぐらいの高さまで上がったところで、自分と少女とさっきの青年が、
上空にいるということに気付いた。勿論、この高さを飛ぶのは初めてである。

「おい!ちょっと、これは、どういう、ことだよぉ!」
高さが高さなので安定してはいない。恐らく、抵抗すれば魔法は切れるだろう…しかし。
(こりゃ…タダじゃ済まねぇな)
下を見ればどれだけの高さにいるかは分かる。声が怖気づくのを極力抑えた。
「とり、あえず、だ。どこか、安全そうな場所に、降ろしてくれ…」

ふと横を見ると、青年の腕にウサギがぶら下がっており、突然喋りだした。
「いやぁ助かりました。できればこのデリカシーのない男の腕もちょん切ってくれると最高なのですがね」

「もう、何がなんだか…」
魔法は次第に高度を下げていった。

64 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/03(金) 00:08:33 0
>>62を盛り込むのを忘れていましたが、適度に迫られて、攻撃を
受けかけた、ということでお願いします。すみません】

65 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/07/03(金) 00:25:09 0
>>「おお、これはありがたい。
>>コクハ殿には我が神の加護があるでしょう!」
かあっと心があたたくなった。
ものすごく恥ずかしい。
頬を真っ赤に染め、はにかんだような笑顔を浮かべた。

>>「…てめえらあぁぁっ!!伏せろおぉぉっ!!目を隠せえぇぇっ!!」
笑顔によって足の速だが落ちたその時である。
突然、声が上から降ってきた。
わけもわからず、体を伏せ、目をつぶっていると、何かがはじける音が聞こえてきた。
ついでに温かいものが背中をかけぬけ、皮膚を焼いた。

「いったい何なのよ」
ひりひりとする痛みに目をしかめつつ起き上がると、ディーバダッタが火だるまになっているのが見えた。
声が非常にうるさい男だが、放っておくことは信義則に反することになる。

>「光で目を奪おうと、炎を浴びせようと、我が信心が揺らぐと思うてか!
>目は見えずとも気配は掴んでおるぞ!打ち据えよ!」
満月に光によって光る何かが宙に向かって投げられるのが見えた。
それと同時に魔獣が走ってくる。
ディーバダッタと魔獣の距離は数センチ。
このままだと踏みつぶされる。
魔物の大きさからいって、踏みつぶされたら、即死になるのはほぼ確実だ。
今の状況からして放置しておくことはできない。
地面をけると同時に抜刀し、魔物の額に剣の切っ先を向けた。


66 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/03(金) 10:51:22 O
目の前の少女は逃げなかった。それどころか迎え撃つつもりかこちらに向かってきた。後ろに仲間らしき人物も見れるが二人になったところで勝てるとは思えない。
もう一度、今度は声を荒げて叫ぼうとしたが、それ以上の大声に遮られ 喉から出ることはなかった

「…てめえらあぁぁっ!!伏せろおぉぉっ!!目を隠せえぇぇっ!!」
「おっ?」

あたりを光が覆う、虎は怯み、足が大地から離れる。魔術の初歩を学んだ事があるため、「飛翔」だとわかる
しかし、この魔術が先の二人どちらのものなのかはわからなかった

「ッッッ…!!! …遅かったか」
目を守るのが遅れ、視力が無くなっているのだ。 しばらくは治りそうもない。

「いやぁ、助かりました。できればこのデリカシーのない男の腕もちょん切ってくれれば最高なのですがね」
「む、痛かったか? それはすまなかった、何分慌てていてな…。それと私からも礼を言わせてくれ、おかげで喰われずにすんだ」

耳から手を離し、抱きかかえる。これで文句はあるまい

「…しかし貴女の顔を見るに、まだあまり助かった感じではないようですねぇ」

ウサギの言葉を切り口に何かが空を切る重い音がした。

「くそ…、今度はなんだ!?」

見えず、下手に動けずの状況では自分にできることはなかった。

67 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/03(金) 22:36:34 0
>>60-66
エルシア「オーライオーライ
       そのままこっちに降りて来てくれ」
徐々に高度を下げてくる一行に指図しながら、着陸地点へ誘導する
よく見れば、魔法使いらしき女と盗賊然とした若い男、冴えなさそうな男の顔ぶれである
ついでに怪しそうなウサギもオマケについている

エルシア「というわけで、助けてやったお礼を頼むぜ
       あの閃光玉とても高…危ねえっ!」
一行の背後から、無数の物体が飛んで来るのが分かった
それが凄まじい勢いだということを読み、ショーテルを抜いてサッと飛び上がる

エルシア「てやっ!せぃっ!はあぁぁっ!」
ショーテルや盾を振るって次々と数珠を叩き落としていく
ボトボトと地上に落下する数珠と共に、エルシアもまた静かに着地する
誇らしげに立ち上がると、既に地上に降り立った一行を見据える

エルシア「残った奴は全部処理したぜ
       ま、俺にかかりゃこんなもんだ
       …でだな、助けてやったお礼の方を頼めるか?
       閃光玉には相当金かかってんだよ」
礼金の方はきちんと弾むよう、交渉を始める
しかし、間髪入れずに背後から襲いかかって来る影があった

盗賊親分「このアマぁ、舐めんじゃねえぞ!」
エルシア「えぇっ!?」
先ほど放置したはずの盗賊親分が物陰から斬りかかってきたのだ
親分は手に持ったサーベルを振り下ろし、エルシアの背中を斬ろうとした
しかし、寸でのところで前に転んで交わしたため、服をかすめただけで終わった
怒りの感情に駆られたエルシアは、親分に振り返ってショーテルを抜いた

エルシア「この野郎!
       てめえも懲りねえな!」
盗賊親分「ひいぃぃっ!
       おたおたお助けえぇぇ…」
瞬時に親分のサーベルを叩き落とすと、喉元に切っ先を突き付ける
先ほどと全く同じシチュエーションである
しかし、エルシアの背中を見ていたミアたちの目に映ったものがある
それは、少し破れた服の隙間から見えるキメの細やかな肌と火傷のように赤い紋章の一部であった

68 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/04(土) 04:19:54 0
「――――ッ」
魔術が発動した瞬間、頭の芯に鉄串で貫かれたような激痛が走った――限界が近い。
慌てず深く息を吸い、その苦痛を傍らの他人として眺めるようなイメージを構成する。
それは使い慣れたマインドコントロール。今、制御を失うわけにはいかない。

>「いやぁ助かりました。できればこのデリカシーのない男の腕もちょん切ってくれると最高なのですがね」
…今、誰が喋った? 視線をやれば、ぷらんぷらんと揺れつつ抗議をしていたのは、一羽の兎。
今日は妙な生き物によく出会う日だ。試しに手を伸ばし、その柔らかな毛皮を撫でてみるも、幻術でもなければ普通の兎と違う点も見いだせず、首を傾げる。
>「む、痛かったか? それはすまなかった、何分慌てていてな…。それと私からも礼を言わせてくれ、おかげで喰われずにすんだ」
「喰わせるつもりだったのに」
礼に対してにこりともせず、肩を竦めてさらりと返す。同時、ページがそう慌てていないことを意外に思う。
むしろシモンの方がうろたえているようだ。こういった経験はあまりないのだろうか。

>「…しかし貴女の顔を見るに、まだあまり助かった感じではないようですねぇ」
「……追われてる。相手に心当たりはない。南無阿弥陀仏、とか言ってたけど…」
背後に視線を向ければ、追っ手たちが例の虎へ刃を向ける期待通りの光景。
だがこちらを見逃す気もないようだ。高度が徐々に下がりつつある今、飛び来る無数の数珠――避けられない!
ミアは身を硬くした。しかし衝撃が体を襲うことはなかった。

>「というわけで、助けてやったお礼を頼むぜ
       あの閃光玉とても高…危ねえっ!」
跳躍し武器をふるった少年により、全て叩き落とされていたのだ。
「手持ちの内なら――」
言葉を切る。シモンと同じ条件を連発するわけにはいかない。財布は一つだ。
同時に今更ながら、先刻の発言内容の問題性を自覚する。…二度と言うまい、と誓った。

無事に地面が近づいてくる。あと3メートル、2メートル、1メートル――着地。
術式を終了させ、重力が体に戻ってくる。

その時。

(…………!?)

>「残った奴は全部処理したぜ
       ま、俺にかかりゃこんなもんだ
       …でだな、助けてやったお礼の方を頼めるか?
       閃光玉には相当金かかってんだよ」

少年の問いに、ミアは答えることができなかった。


「っ――――――きゃあっ!!!」
頭を押さえ、一同の目の前で崩れ落ちる。
仮初めに切り離していた感覚が逆流する。痛みに視界が明滅し、膝から力が抜け、高まる動悸に息ができなくなる。
「う……あ……っ」
限界を超えた魔法の使用が招いた結果だ。術式を終了させるための負荷が最後の一押しとなった。
早く逃げねば稼いだ時間の意味が無いというのに、頭痛は収まる気配が無く、足は鉛のように動かなかった。


69 名前:ガレオン ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/07/04(土) 09:19:36 0
魔獣は頭をぶんぶん振るいながらひた走る。
所詮は理性のない獣、眼をやられたパニックで動きが目茶苦茶だ。
その先にはディーバダッタが…そして彼を庇うようにコクハが駆けてきて、剣の切っ先を魔獣に向けた。

額が切っ先に触れる瞬間、魔獣はまた激しく頭を振る。
剣は額から僅かに逸れ、魔獣の右目を斜めに切り裂いた。
青黒い鮮血が舞う。
「グゥワッ!?」
魔獣は突然の痛みに呻く。

普通の魔物なら、視力を奪い接近した段階で勝負がついたも同然だ。
しかし、魔獣ギガントタイガー。
魔術も知性もなしに数々の魔物狩りを返り討ちにしてきた屈強の魔物である。
象を真っ向から組み伏せるその剛力もさることながら、最大の特徴はその強靭な下顎の支える長く鋭い牙だ。
適当に振り回すだけでも極めて有害な武器となる。

そして、その牙が頭部を振るう勢いでコクハを突き上げにかかる!


ところ変わって上空。
>「む、痛かったか? それはすまなかった、何分慌てていてな…。
ページは詫びてガレオンを抱っこし直した。
こう素直に謝られればガレオンも軽口を抑えざるを得ない。
「…最初からそうしていれば良かったのです。まあ、水に流して差し上げましょう」
そしてミアに物珍しそうに撫でられているうち、喋るウサギは物珍しい存在だったと思い出した。
「ああ、そういえば私はですね…」
しかし語る余裕はなかった。
ディーバダッタの追撃の数珠が向かってきていたのだ。

それをエルシアが迎撃し、一向は地上に降り立った。
エルシアが礼金交渉を始めた時、ミアが突然悲鳴とともに崩れ落ちる。
「!!」
ガレオンはミアに振り返る。
暗いので分かり辛かったが、その体の傷は浅くは無い。
この状態で飛翔魔法など無茶をしたものだ。その反動だろうか。
「これはいけない…!彼女を早く町へ運ばなくては。私は残って囮になりましょう」
ガレオンは今はただのウサギなので、ミアを運ぶ力も敵と戦う力もない。
しかし、陽動くらいならできなくもないだろう。

70 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/04(土) 14:45:01 0
少年に誘導されるように高度を下げ、シモンたち3人は降りていった。
「とぉっ!」
頭ぐらいの高さになった時、痺れを切らしたシモンは浮遊魔法から脱出し、
軽やかに着地した。空が不安でならなかったのである。

「…ったく、俺もようやく自由に…って、何だありゃあ!」
ほっとしたのも束の間、多数の魔法火弾がこちらに押し寄せてきていた。
恐らく、あの大男の放ったマジック・アイテムあたりだろう。

「危ねえっ!てやっ!せぃっ!はあぁぁっ!」
シモンが構えるまでもなく、少年によってそれは打ち落とされていた。
「やるじゃねぇか…おっと」

続いて、少年の後方から盗賊らしき男が切りかかってきた。
(しまった!)
しかし、庇いに入るまでもなく盗賊は少年によってあっさりと打ちのめされてしまった。
”彼”の破られた服をよく見ると、紋章のようなものが見え、それよりも驚いたのは
明らかに少年とは思えない肌、そして僅かに見える”くびれ”であった。
(こいつ…女か?)

「っ――――――きゃあっ!!!」
そちらに気を取られていると、突然少女が苦しみだし、崩れ落ちた。
慌てて体を支え、抱きかかえるシモン。
「う……あ……っ」
魔法の使えない彼には、傷によるものか精神力によるものかは分からなかったが、
とりあえず少女を邪魔にならないよう、肩にかつぐことにした。
「ったく、先のことぐらい考えろっつの。なぁ、この辺で安全な場所を知らないか?」
目の前の少年に問いかける。とにかく”荷物”が増えた以上、ここに居ては危険だ。
「おいウサギ、走れるか?」
傷も大分塞がってきた。これでいざとなっても夕方とほぼ遜色なく戦えるはずだ。

71 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/04(土) 19:01:00 0
剣の切っ先が額を外れ、右目を切り裂いた。
魔獣の下あごについている牙は太い。
次に移る行動は下からの突き上げ。
突き上げを食らえばまず間違いなく死ぬ。
お金をもらっていない状況で死ぬわけにはいかない。
剣を捨て、地面をけった。

「そんな行動はお見通しよ」

魔獣の牙が布をさく。
そして、その勢いのまま顎を貫くかと思われたが、それをよりも早くコクハの体が宙を舞った。
両手が地面に着く。
その両手を軸に弧を描き、魔獣と再び向き合った。

「くっ…あなたなかなかやるのね」

暗く染まった草地に赤い滴が垂れた。
魔獣の前に剣が転がっている。
武器はもうない。
あの時ナイフを拾っておくべきだった。
コクハは己のうかつさに舌を撃った。

72 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sageやりすぎかな・・・] 投稿日:2009/07/04(土) 23:04:31 0
数珠を投げた直後、ディーバダッタは力尽きていた。
信仰の力で痛みを消していたが、機能的な限界はある。
足の傷に加え魔獣の炎をまともに浴びたのだから無理はない。
コクハが魔獣の前に立たなければ、なすすべもなく踏み潰されて死んでいただろう。

夜の森に蹲るディーバダッタの意識が回復するのは数秒後の事だった。
それはエルシアによって投げつけた数珠がすべて撃ち落されたのを感じたからだった。
それと同時にカッと見開かれるディーバダッタの目。
体は動かない。
しかし、ディーバダッタは曲がりなりとも僧侶。それを回復させる術があった。
「我は未だ役目を終えておらず。神よ!我に奇蹟を与え給え!」
コクハと魔獣が戦っている中、ディーバダッタの祈りが唱えられる。

そして・・・それは起こった。
森全体に妖気が立ち込め、あらゆる者がそのプレッシャーに身が重く感じ一瞬動きが止まるだろう。
いや、ただ二人、例外がいる。
のっそりと立ち上がるディーバダッタと、魔法の過剰使用で苦しんでいたミアだ。
ミアの頭痛は嘘のように消え去っている。
が、逆に過剰にプレッシャーを感じるものもいるだろう。
エルシアは背中の刻印が締め付けられるような痛みに襲われる。

この事態を引き起こしたのは、誰もが見ることができるだろう。
頭上に輝く満月。
否、満月だったもの。
今はおぞましい眼球となっており、血の涙を滴らせながら上空から森を睥睨していた。

「ぐはははは!神よ!感謝しますぞ!」
足の傷が塞がり、火傷も七割方回復したディーバダッタが硬直した魔獣に素早く潅頂剣を一閃させる。
魔獣のしなやかな毛皮も、強靭な筋肉も傷一つついていない。
だが、逆に言えばそれらはディーバダッタの刃を防ぐには値しなかったのだ。
潅頂剣の刃は思念で形作られる。
物理攻撃力はないが、あらゆる物理障壁を無視してその者の精神を、魔力を、そして魂を傷つける。

「毛駄物如きが我が神命を邪魔するとは片腹痛いわ!」
魂を切り裂かれた魔獣を渾身の力で蹴り飛ばし、きっと崖の方を見る。
まるで上空の眼球を通じて位置がわかっているかのように正確に。
「ぐふふふふふ!逃がさぬぞ!行くぞ!邪魔するものは皆殺しだ!!」
コクハにかける声に先ほどまでの穏やかさは微塵も残っていない。
あるのは言葉に孕む狂気のみ。
見て判るほどの妖気を迸らせながら歩を進める。
それを確認してから上空の眼球はゆっくりと閉じ、元の満月へと戻っていった。

73 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/04(土) 23:08:52 0
【訂正】
>72最後の行。
それを確認してから上空の眼球はゆっくりと閉じ、元の満月へと戻っていった。

それを確認してから上空の眼球はゆっくりと閉じ、元の満月へと戻り森全体に圧し掛かっていたプレッシャーも消えた。


74 名前:ガレオン ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 00:21:16 0
魔獣が苦しまぎれに振るった牙は、コクハの素早い動きで回避された。
コクハの気配が遠ざかったのは感じたはずだが、魔獣はそれを探して走り回るのをやめる。
視力のない状態で顔面に痛恨の一撃を受けたのだ。理性はなくとも迂闊な動きを抑えざるを得ない。
下手に動けば殺られる。
「グルル…!」
首を軽く振り、喉を低く鳴らして威嚇を示す。
相変わらず視力の回復する目処は立たないが、獲物を前に尻尾を巻くのは王者のプライドに反するのだろう。

しかし、終わりの時は唐突にやってきた。
ディーバダッタに魂を切り裂かれ、魔獣は絶命した。



>「おいウサギ、走れるか?」
シモンがミアに肩を貸しつつ、ガレオンに問いかける。
「当然です。自慢じゃありませんが私は今日まだ何もしていませんからねぇ」
自慢じゃない。
「ということで、私はひとっ走り行ってきましょう。皆さんまた後で!」
ガレオンはそう言い、闇の中に消えていった。

しかし、「また後で」の約束が叶う事はなかった。
ガレオンは急いで走る最中躓いて転び、首から掛けた理性のペンダントを落としてしまったのだ。
理性を失ったウサギはただのウサギに戻り、ピョンピョンと森の中へ帰っていった。
そして、理性のペンダント「ガレオン」は、再び誰かに拾われる日まで闇の中で眠りにつくのだった………


                                        ―――ガレオン END

75 名前: ◆DJchUtKn1I [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 00:23:47 0
さすがに魂を切り裂かれたら死ぬなぁ。
ということでガレオンは一足先にキャラエンドだ!残りの皆はこの先も楽しんでってくれ。

76 名前: ◆Boz/6.SDro [sageなんてこったい!] 投稿日:2009/07/05(日) 00:32:04 0
>75
な、なんだってええ!?
ガレオン=ペンダントでギガントタイガーはまだガレオンじゃない。
魂切り裂かれてギガントタイガー昏倒→ペンダント移動でギガントタイガーがガレオン化して復活と読んでいたのだが・・・

こんな流れで復活しませんか?
まだまだ一緒に楽しみたいです。

77 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 01:05:00 O
>>75
Ω ΩΩ{な、なんだってー!?
まだ参加してくれ、な?

「喰わせるつもりだったのに」
謎の攻撃に耐えつつ恩人であるはずの少女の言葉に体が固まる。苦笑いしかできない
「……追われてる。相手に心当たりはない。南無阿弥陀物、とか言ってたけど…」
「…それは本当か?」
南無阿弥陀物
だか、この言葉を聞いた途端、少し抜けていたページの雰囲気がなんとなく変わった
「まさか、終焉の月か? だが、だとしたらなぜこんな…」
徐々に高度が下がる。援護をしてくれたらしい人物から金だの礼だの聞こえるが考え事を理由に聞かなかったことにする
金が無いのはお互い様だ
足が地につく。聞こえるのは戦闘の掛け合いと悲鳴。
「この野郎! てめえも懲りねえな!」
「ひいぃぃっ!おたおたお助けえぇぇ…」
「っーーーーーーきゃあっ!!!」
「…忙しいな」
思考を打ち切る、まずは悲鳴の上げた少女に触れる。 生暖かい物が手についた
「う……あ……っ」
「これは…! 馬鹿者っ!己の限界くらい自覚せぬか!!」
聞こえているかわからないが一喝した。明らかに無理のし過ぎだ。
「なぁ、この辺に安全な場所を知らないか?」
「私は知らん、だが…」
前置きを置いて、次は未だ悲鳴をあげる男の方に向かう
「お前は賊か何かだろ? アジトがあるならあの青年を案内してくれないか?」
武器を掲げている人物との間に入り男に提案する。助かりたければそれが一番と目で伝える
「青年、彼女を支えながら行けるか?
少年、できれば君には私とここにいて欲しい。彼女を襲う人物に興味があるがまだ視力がぼんやりとしかないのだ。
二人共、受けるなら私がサポートと全財産を払う」

78 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/05(日) 02:10:31 O
誰がどの台詞を言っているのか判りづらいな
他のPCの台詞も勝手に書いてないか?

79 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 04:13:57 O
脳髄を鉄釘で抉られ続けているかのような痛みに、最早自分が立っているか倒れているかすらわからない。
〉「ったく、先のことくらい考えろっつの。」
〉「これは…! 馬鹿者っ!己の限界くらい自覚せぬか!!」
「…………ッ…!!」
叱咤の声も次第に遠く消えていく。
(……私も、全く)
そんな自嘲を最後に、ミアはシモンに支えられたまま完全に意識を失った。

―――――――

目を開くと、何も見えなくなっていた。
音もない。足元の感覚も先ほどの土と違い、生肉を踏むように不気味に柔らかい。
「……………どこ?」先ほどまで傍らにいた男たちの気配も無い。
(死んだ?…いくらなんでもまさか)

ピトッ

「――――っ!」
頬に触れた、ぬるく湿った何か。
飛びのき、背に手を伸ばす。…杖が無い。
状況が理解できない。ミアは困惑し、静かに危機感を深めた。


【序盤からすみません。数日間、書き込み頻度が怪しくなりそうなので、こういう方向に進んでみました。私を気にせず物語を進めて下さい。
本当に、自分勝手で申し訳ないです!!

ミアは頭痛が収まる前に気絶しています。後半の描写は意識世界のつもりです。
強い呼びかけなら若干は届くかもしれません。仲間たちとか、例の『月』とか。
何も無ければ普通にミアの悪夢です。
本当にすみません。よろしくお願いします。
>ガレオンさん
まだ数レスしかお付き合いできていませんが、頼りになる方だと一目で感じました。
ぜひもっとご一緒したい。戻ってきていただけると嬉しいです。】


80 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/05(日) 04:28:15 0
新規参加を希望する者です
よろしいでしょうか?

81 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/05(日) 15:10:32 O
スレ主って誰?
参加表明順?

82 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 16:46:26 0


――――今夜のポーカーは散々だった。



決着が二枚目のキッカーにまで縺れ込んだ、最後の大勝負。
賭博師のジャックは高飛車女のクイーンに競り負けて終わった。
手元に残ったのは一枚のコインだけだ。今夜の宿の当てすら無い。
放り投げたアンティ未満の銅貨が、ガッシュオークの幹で跳ね返った。

「森林資源に寄付だ……安酒の一杯にも、なりゃしないが」

―――細身の黒スーツに身を包んだ赤髪の伊達男。
長い指が乾いた音を鳴らすと、銜え煙草に火が点いた。

《高級煙草を燻らせながら言うセリフかしら》

ガラス細工の様な声の主は、黒スーツの左肩に乗った"作品"だった。
その背に闇色の翼。夜色のゴシックドレスを纏った―――堕天使人形。

《私…"大きくなったら"小説を書くの。
 それでレノを養ってあげるわ?》

「小説……?例えば、どんな」

《書き出しは、こうよ。

 ―――オレの名前はレノ。
 自称・賭博師。
 職業・造形師。
 だが、その本質は独自体系の魔術師だ。
 愚者どもは、オレを奇術師と呼ぶから嫌いだ》

「わかってるじゃないか。続けてくれ」

《賢者どもは、オレをペテン師と見破るから嫌いだ。
 それから、オレの赤髪をバカにする奴も嫌いだ。
 …あ。甘いモノも嫌いだったわよね?
 あんなにおいしいのに。
 それから――》

「――そこまでだ、セラ。
 続きは、羊皮紙の裏にでも書いてろ―――Good Luck.(幸運を祈る)」

遮った理由は、彼女の文才への絶望だけではない。
森の闇を吹き抜ける夜風が、妖しい魔力を湛えていた――――


名前:レノ
年齢:24
性別:男
種族:人間
体型:強靭/流麗
服装:赤髪/黒スーツ
能力:賭博/魔術/造形
所持品:アンティークトランク
簡易説明:賭博師/魔術師/造形師

83 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 16:48:09 0

――――遠くに、強いプレッシャーを感じる。
森林沿いの街道で戦闘の気配を察知した魔術師は、
本来の最短ルートを迂回するカタチで街に向かっていた。

《…ねえ、あれを見て。
 キレイなペンダントが落ちているみたい》

「よくやったぞセラ。
 ―――拾って、さっさと売り飛ばそう」

《そうじゃないわレノ。
 きっと"あの子"に似合うと思ったの》

「そのアイディアには気付かなかった。
 ―――抱き合わせで、値段を上乗せして売り飛ばそう」

赤髪の黒スーツが、詠唱代わりに指を鳴らす。
アンティークのトランクケースが虚空に浮かんだ。
金の装飾が施された蓋が開いて、召喚魔方陣が起動する――

「ああ……確かに、良く似合ってる」

――トランクから現れたのは、未だ人工霊魂が安定していない人形。
まるで"このペンダントを着ける為に生み出された様な"美しい姿に、
造形師は、煙草を指に挟み感嘆の口笛を吹いた……但し煙色の。



【……悪いが、招かれざる人材のお通りだ。
 今後はノープランかつ不定期に出演予定。

 >74-75 ガレオン
 勝手に拾っちまったが、そっちの気が向いたら復活歓迎。
 続投の場合は、人形のディテールを好きに決めてくれ。
 余計なお世話だったら、このまま放置プレイで頼む。

 >80-81 参加許可の有無?/スレ主の有無?
 ……少なくともオレは、そのどちらも気にならない。

 ―――Good Luck.】

84 名前:レオナルド ◆uGkFsjJg4o [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 16:52:38 0
名前:レオナルド
年齢:28歳
性別:男
種族:ワーウルフ
体型:筋骨隆々
服装:ボロボロのズボンを穿いている以外は裸
能力:俊敏な動きとパワー、牙や爪
   分身術
所持品:特になし
簡易説明:殺戮を繰り返しながら旅を続けている強欲な狼男
      血肉と戦闘を求める狂気を持ち、「クレイジー・ウルフ」の名で恐れられる
      苦手な射手や魔法使いに対応するため、分身で相手を翻弄する術を持つ

85 名前:レオナルド ◆uGkFsjJg4o [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 16:56:22 0
「どこの誰かは知らないけどよぉ」

びちゃっびちゃっ

「運が悪かったなぁ」

びちゃっびちゃっ

「何せこの俺様が相手だったんだから」

びちゃっびちゃっ

「そのハラワタ、おいしく頂いちゃうぜ」

ぐしゅっぐしゅっ

86 名前:レオナルド ◆uGkFsjJg4o [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 17:08:17 0
別に今が満月ってわけじゃない
ただそれでも、本能に従うのを辞められないだけなんだよ
俺ほど狼男であることを喜んでる狼男は居ないんじゃねえのか?

ズタズタに引き裂いてやった死体
この俺様を討伐しにきやがった馬鹿な傭兵だ
変身させなけりゃ倒せるとでも思ってたらしい
舐められたもんだ
だから俺はこいつ引き裂いて、そのハラワタを貪ってやってんのさ

生暖かい血で溢れ返り、目ん玉が飛び出してだらしくなく舌を出してやがる
内蔵が丸見えで折れた骨や赤い肉が切断面から剥き出し
人間ってのはズタズタにしてやると馬鹿みたいに醜くなりやがる
か弱い分獲物としては物足りないが、おもちゃには最適だ

「うおおいっ!!!」

こりゃ傑作だ
変身してないのに遠吠えしたくなっちまった
俺は身も心も全て狼男なんだぜ

87 名前: ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/05(日) 18:16:21 O
>>78
>>77の事だよな?
わかりづらいと言うのは申し訳ない、これからもっと詳しく書くよ
台詞作りはしてないはず

>>81
さぁ? 特に決めてない
◆DJchUtKn1I氏は引退らしいし…

>>80>>82>>84
よおこそ

88 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/05(日) 19:48:56 0
>>75
ここでお別れになるとは残念です。

>>72
だが、運が良かった。
いや、悪運が強いというべきだろう。
威嚇している魔獣と向き合っている最中にディーバダッタが復活し、魔獣を一撃で仕留めてしまったのだ。

「・・・お肉」
剣を拾い上げ、魔獣のほうを見つめた。
体長は自分とほぼ同じぐらい。
これを町に持ち帰り、解体業者に売り払えば、いくらかの金になる。

>「ぐふふふふふ!逃がさぬぞ!行くぞ!邪魔するものは皆殺しだ!!」
だが、その暇はなさそうだ。
くるったこの人間に魔獣の価値を説いたところで理解してもらえそうにない。
恨めしそうな目で魔獣の死体を見つめ、その後を追いかけることにした。


89 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/06(月) 08:21:47 0
>>68-77
>「う……あ……っ」
エルシア「お、おい、そいつ大丈夫なのかよ?」
突然崩れ落ちたミアに目をやり、心配そうに見つめる
しかし、盗賊親分の喉元から切っ先を放すことはしない

>なぁ、この辺で安全な場所を知らないか?」
エルシア「あ…、済まねえ
       ここに来てたのは単なる商売目的だからな
       実は俺もよく分かんねえんだ」
バツが悪そうに頭を掻きながら、困った表情を浮かべる
エルシア自身、ここには盗賊一味を追って来ただけである
地理に詳しいわけではないのだ

>「お前は賊か何かだろ? アジトがあるならあの青年を案内してくれないか?」
盗賊親分「………
       わ、分かった、案内する…」
ページに語り掛けられ、まるで何かを悟ったように項垂れる
そして、ゆっくり立ち上がるとそそくさと出発の準備を始める
その背中には、エルシアが相変わらず切っ先が突き付けたままである

>少年、できれば君には私とここにいて欲しい。
  彼女を襲う人物に興味があるがまだ視力がぼんやりとしかないのだ。
エルシア「てめえ正気かよ!
       ここがヤバイってのは考えなくても分かるだろ!
       特に俺の背中が痛んでる時、悪い事が起こらなかった試しがねえ!」
ここに残ってくれと言うページに対し、驚きと怒りをぶつける
状況が不穏になっているというのは、どんなに鈍感な人間でも分かるほどである
先ほどの数珠と言い、不思議なほどに輝く満月、いや不気味な空の眼球
そして、背中の紋章に沿って走る締め付けるような痛み
まるで赤騎士に変身してしまう寸前の如く、真っ赤に染まり危険を告げていた
しかし、それでもページの表情は微塵も変わる事はなかった
放っておけば、この男は一人でもこの場に留まるつもりだろう

エルシア「…ちっ、分かった
       そのかわり、礼はた〜んと弾めよ!
       バカ親分の方はあんたらに任せるぜ
       …んじゃ、負ってやるから乗りな」
シモンたちに親分のことを任せると、ショーテルを鞘に納める
そして、ページを背負うために背を向けて腰を下ろす

盗賊親分「へへ、よ、よろしく…」
強張った愛想笑いでシモンを見上げ、冷や汗を垂らす親分
もう準備は出来ているらしい

90 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/06(月) 08:24:22 0
>>75
短い間でしたが、レスを交わすことができて楽しかったです
また、是非復帰してください
ありがとうございました

91 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/07(火) 00:56:56 0
少女をかついでさぁ、行こうと思った矢先、突如空が怪しく光った。
見ると、月が真っ赤な眼球のようになって禍々しいオーラを放ちながら
こちらを睨んでいる。
「ぐぁ…」
一瞬、頭痛が走る。軽い戦慄を覚えた。
「まさか、終焉の月か? だが、だとしたらなぜこんな…」
白髪の男がそのような言葉を口にした。
その直後、獣の悲鳴のような音が響いたと思うと、再びあたりは
静けさをとり戻した。

「ということで、私はひとっ走り行ってきましょう。皆さんまた後で!」
喋るウサギがよく分からないことを口走りながら森の奥に消えていった。

「へへ、よ、よろしく…」
白髪の青年と少年の交渉も落ち着き、シモンたちは盗賊の案内を待つことになった。
「さっさと案内してそこを俺らに貸してくれれば、命だけは必ず保障するぜ。
 俺も元は盗賊だ。約束する」

しばらく歩くと、森の中の僅かな空き地に木でできたほったて小屋を見つけた。
「こ、ここがアジトでさぁ…」
とりあえず無言でミアを安全な地面に下ろして横たえる。
どうも苦しそうな顔だが、うなされているのだろうか。
体の傷が悪化していないのを確認すると、シモンは他の三人を制し、
真っ先に小屋に近づいた。敵が潜んでいるかもしれないためである。

(よし、誰もいないようだ)
「ここは安全みてぇだな。おい、入っていいぜ」
「ちょ、ちょっと待て!ここは俺の…」
ボコォ!
盗賊親分はシモンによって後頭部を殴打され、あっさり倒れた。
武器を全て外され、手足を縛って小屋近くの木にくくりつける。

「よし、これで命の保証、と」
小屋に入る。中は簡単な暖炉と、テーブル・椅子が用意されており、
干した食料や予備用の武器などが置いてあった。

「上出来だ」
ミアを床に寝かせ、自分は椅子に座って他の二人にも座るよう促した。
荷物や鎧を外し、裸になった上半身に薬を塗りながら改めて語りだした。
「俺の名はシモン。今日までは冒険者をやっていた。お前らは?」


92 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/07(火) 00:57:59 0
>◆DJchUtKn1I
【お疲れ様でした〜】

93 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/07(火) 01:04:29 O
ん?エルシアとページは崖に残ったんじゃねーの?

94 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/07(火) 01:38:59 0
――――魔術都市ヴァフティアに、夜が来る。

巨大な魔方陣として区画開発された、別名"結界都市"―――
美しく整備された景観から、観光都市として名高いその街は、
一方で、大陸中から商人達が集い来る商業都市の顔も持っていた。
彼らの主な目的は、外部では入手困難なマジックアイテムの仕入れだ。


「アトリエ"シートベルツ"人形師レノの新作ドール―――
 ノークレーム・ノーリターン。今ならペンダント付きだ」

各地域の文化、言語、風習が入り乱れる賑わいの中にあってなお、
"赤頭の上に人形を乗せて歩く黒スーツ姿"は浮いた存在だと言えた。

「そこの商人風の姉さん、良質のドールを仕入れてみないか?」

人形の首に掛けられた銀のチェーンには、ペンダントと共に、
"70000"の数字が丁寧に書き込まれたタグが揺れている。

「そこの盗賊風の姉さん、験担ぎに幸運のドールはどうだ?」

出荷を決めた人形からは、"魂"を事前に移し去ってある。
転移先は、ちょうどアトリエで造りかけだった一体だ。
売れ残ったら――今夜の宿が取れなければ――
今夜は、作業台の上で彼女と添い寝だ。

「そこの傭兵風の姉さん、渇いた心に潤いが欲しくないか?」

現在トランクで眠っているセラは、残念ながら戦力外だ。
口達者は自分より数段上だが、何しろ人見知りが激しい。

「そこの魔術師風の姉さん、面白いモノが――――…」


街のメインストリートは、昼夜を問わず売買の声が耐えない。
道でひしめく誰もが、その瞳に刃の如き光を灯している。
彼らは互いに鎬を削り合う商人であり顧客だった。
付いた名前が、通称"カフェイン通り"だ。

「アトリエ"シートベルツ"人形師レノの新作ドール―――
 ノークレーム・ノーリターン。ペンダントはサービスだ」

値札の"70000"は斜線で消され、"50000"と殴り書きされていた。

「名前は――」

決めてなかった。
夜空を見上げる。
天頂に掛かる月。

「――ルナだ」

自身の卓越したネーミングセンスに満足した造形師は、
空きっ腹を抱えて、再び"カフェイン通り"を練り歩き始めた。

「アトリエ"シートベルツ"人形師レノの新作ドール"ルナ"嬢。
 ノークレーム・ノーリターン。嫁の貰い手を募集中だ――――」


――――商業都市ヴァフティアに、夜は無い。

95 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/07(火) 01:40:30 0
【何度も繰り返されてる"街"を勝手に演出してみた。
 なんなら違う街だったってコトでスルーしてもオーケーだ。
 「財布と心に余裕がある方は、是非"ルナ嬢"のお買い上げを」

 ―――Good Luck.】

96 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/07(火) 07:20:51 0
気軽にやるのはいいがもっと分かりやすく描写してほしいな

97 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/07(火) 23:07:19 0
走る!走る!草を踏み潰し、枝を蹴散らし!全力で走る!
奇蹟の力により傷が癒えたディーバダッタは森を走っていた。
浮遊術によりミアたちが飛び越えた森を走り、崖を目指して。
極のため密集した木々を避ける事もかなわず、否、避けようともせずに。
火炎を浴びてボロボロになった袈裟は容易に枝に引っかかり、引き剥がされていく。
しかしそんな事も構わず、不気味な経文を唱えながら一直線に駆けていく。

後ろからついていくコクハは気付くだろう。
ディーバダッタの身体が一回り大きくなっている事に。
それは夜闇に駆けている為の錯覚などではない。
人間にはありえない筋肉のつき方、張り方。
そして何よりも、月明かりを浴びてその身体は鈍く金色に光っているのだから。

「ぬおおおお!!【門】をこの目に見ながら取り逃すとはっ!!!」
崖についた時、既にそこには人の気配すら残っていなかった。
一歩は焼く一行はこの場を後にし、盗賊のアジトへと去っていたのだ。
全力で悔しがるディーバダッタの身体はますます人間離れしていく。

何もなければひとしきり悔しがった後、肩を落として町へと帰っていくだろう。

*         *        *          *

>79
意識を失ったミアの意識の中に何者かがジワジワと侵入していく。

ミアの夢の中、ソレは這いずるように近づいていく。
人としてのシルエットをギリギリ保った程度のソレは、目が見えていないようで手探りで蠢いている。
ぬるく湿った手でミアの頬に触れ、漸くその存在に気付く。
這い上がるように纏わりつき、ほの暗い声で囁く。
「・・・見つけた・・・ようやく・・・」
絞り出すような声は更に続く。
「どうして・・・?七年前・・・閂は外したというのに・・・何故まだ人でいられる・・・?【門】よ!」
【門】とよばれ、ソレがナチュラルに自分の事だとわかっただろう。
そして声の主が【鍵】だという事も。

ソレを自覚した瞬間、へばりついていた【鍵】は消えうせる。

**********************

ミアさんの夢にちょっかいをかけてみました。
森のほうは一行も逃げ出したのでシーンエンドでいいかな、と。
ディーバダッタは一旦待ちに帰りますが、コクハさんは追跡を続けてもOKですし、無防備な背中に剣をつきたててもOKデスヨー。
先のことは考えていませんが、次のシーンでもしつこく現われるつもりです。


98 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/08(水) 00:26:56 0
【「残る」という事を忘れて勝手に二人を小屋の中に入れてしまい、すみませんでした。
次のどちらかのロールで、小屋の中に入ったか、小屋の外に残ったか決めてください】

99 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/08(水) 04:52:33 O
結局周りの反対を押し切れず一緒についていくことになった。
だが、もしあのまま残っていたとしても
あのプレッシャーや 声量が大きすぎる遠吠えなど
危険がありすぎた、と言えばそうであるが…
たどり着いたアジトは小さな小屋だった。ここに来るまでに目はもう治ったようだ
中に入り青年の乱暴な「命の保証」に内心呆れながらも目の前の食料を目一杯食い始める。

「くっは〜! 最っ高!」

こういう場面だと空腹は極上の調味料とつくづく共感する。周りからの視線に気づくまで相当時間がかかってしまった

「ん…、あ〜ゴホン
いや失礼…、私はページ、ページ・ファセットだ。何分食べてなくて、君もどうだい?」

自己紹介をしながらも食べ物を食う手は止まらない。
干し肉をエルシアに渡しながら水で一気に流し込んだ

「ふぅ…、
さて、シモン殿でいいかな? そこの少女がさっき言った事なんだが…
君らを追う人物は本当に「南無阿弥陀物」と言ったのかい?」



ついていくルートにしました。◆dokNpu3MIgさん振り回してすみません…
あと、◆Boz/6.SDroがよろしければ終焉の月のちょっとした設定を書きたいと思います

100 名前: ◆mLrP2EAMX. [sage] 投稿日:2009/07/08(水) 07:48:56 0
>>91>>99
>「よし、これで命の保証、と」
エルシア「おやおや…
       俺よりいっとうひでえ仕打ちだな、おい
       けど、なかなか面白いぜ」
シモンの鮮やかな手際に口笛を吹きつつ舌を巻く
「ナイス!」と言わんばかりにその肩にポンと手を置いてグッドサインを送る
なるほど、こういう「命の保証」というのも納得ができるものだと思った

エルシア「俺はエルシアってんだ
       ここだけの話、俺の趣味と職業は正義の味方なんだぜ
       盗賊狩りはその一環ってワケだ
       ………」
と誇らしげに自己紹介をしてみるが、シモンには一瞬の間の後軽くスルーされる
ページに至っては、干し肉に食べるのに夢中でそもそも聞いている様子がない
沈黙が続く間に、見る見るエルシアの顔が赤くなっていく

エルシア「サ、サンキュー!
       改めて自己紹介するとだな、俺はエルシアっていう旅のモンだ
       盗賊討伐のためにここまで出張ってきてたんだが…」
ページに渡された干し肉を受け取ると、それに被り付きながら二度目の自己紹介を行った
先ほどの恥ずかしい自己紹介を誤魔化すためのものである
だが、二人は特に気にしている様子もなかったので安心した

エルシア「そそ、俺も聞きたいぜ
       あそこまで肝が冷えたのは久しぶりだかんな…
       あのハゲオヤジ、一体何モンだ?」
ページの話に合わせて、エルシアもシモンに詰め寄る
とにかく分からないことだらけであった

101 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/08(水) 20:47:29 0
>>97
ディーバダッタの体が大きくなっている。これは断じて見間違いの類ではなく、事実だった。
だが、コクハはそれほど驚かない。
この類の能力自体、それほどまれではないし、コクハ自身も何度となく、その光景を目撃してきたからだ。

>「ぬおおおお!!【門】をこの目に見ながら取り逃すとはっ!!!」
崖から見下ろすが、特に人の気配はない。
どうやら逃げられたようだ。

逃げられたとなれば、いる理由はない。街へと引き返すことにした。

102 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/08(水) 22:04:55 0
>99
了解です。
悪の秘密結社の怪僧キャラのつもりが、単に極端な坊主になってしまって修正が必要と思っていたところですよ。。
ここで一つオドロオドロしい設定書いていただけると助かったりしてw
遠慮なくジャンジャン書いちゃってくださいな。

103 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/10(金) 00:14:51 0

「そこの剣士風の"お嬢さん"―――ちょっといいか?」

月が傾いた深夜過ぎ……賭博師は、小さな賭けに出ていた。
この女の様に一見、掴み所の無い雰囲気を纏っているタイプは、
意外に純情だったりカワイイのが好きだったりするケースが稀にある。

「アトリエ"シートベルツ"人形師レノの新作ドール"ルナ"嬢。
 お嬢さんの可憐さに免じて、定価70000のトコを45000で御提供」

判断ミスに気付いたのは、売り文句を仕掛けた後だった。
……ダメだ、こいつ。今は手持ちが無さそうなカオしてやがる。
大して期待もせずに返事を待ちながら、視線は次の客を探して動く。

―――数瞬後、造形師の動作と軽口が完全に停止した。

「なん…だと?」

……無意識に、掠れた声が魔術師の咽喉を衝く。
"カフェイン通り"から一本入った路地に佇む人影。

禿頭の巨漢――眼帯――赤袈裟。

「シーヴァダッタ、なのか……?」

奴は、七年前の"ゲート"争奪戦で死んでいたはずだ――――



――――オレと一緒に、死んだはずだった。

104 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/10(金) 00:16:20 0
【"お嬢さん"がコクハ嬢(23)その人か否かは、本人に丸投げだ。
 "Cバダッタ"もノリ一発。本or他人/旧or偽名/記憶or勘違い/etc.
 
 ―――Good Luck.】

105 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/10(金) 04:58:09 0
>>97
>「…見つけた…ようやく…」
>「どうして…?七年前…閂は外したというのに…何故まだ人でいられる…?【門】よ!」

閂、門――突拍子のない言葉。
だがそれは息が苦しくなる程に不吉な予感を伴っていた。
抑えつけられていた記憶の断片が蘇る。
「嫌っ」
触れられ、激しい恐怖と嫌悪を感じた。振りはらうことすらできずにその場に座り込む。
「やめて…………来ないでっ、“鍵”!!」
瞬間、影は消え失せた。
覚えのないはずの言葉がすんなり口をついて出たことに、驚く間もない。

ミアはまだ感触の残る頬に茫然と手を当て、何度も爪で擦った。
「………………今更、なによ…なんで放っておいてくれないの。
なりたくて門になったわけじゃない。起こしたくて災厄を起こしたわけじゃない。
ああでもしないと…私……………。嫌。違う。私、罪人なんかじゃないっ!!
…………
“月”の思い通りになんて、ならない」

  *  *  *   *

>>91>>99>>100
半覚醒の意識に、男達の話し声が滑り込む。薄く目を開くと、覚えのない天井が広がっていた。
(あのまま倒れたのね)
これまでの経緯を思い出す。また内容は忘れてしまったが、酷く悪い夢を見ていたことも。
寝汗が酷い。どんな夢だったのだだろう。
首を傾げるが、彼女はすぐに関心を失ってしまった。
疲れのせいか、それは旅を初めてから頻繁に起こることだったためだ。

塞がりかけた腕の傷を気にしつつ、ゆっくりと身を起こす。頭痛は嘘のように消え去っていた。
自然と集まることとなる男たちの視線に、ミアは再び首を傾げた。何を言えばいいのだろう。集団、しかも男性相手は不慣れである。
「………………ミアよ」
たっぷり数秒迷った末、それだけ口にする。悪気はないが愛想もない。
何となく居心地が悪くなって、早口で付け足した。
「…ありがとう」
全く文章にならなかった。

まあ、助けられたことに対する感謝だと理解はされただろう。
それ以上の追及をかわすように目の前の水筒に手を伸ばし、続く会話に耳を傾けることにした。


106 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/10(金) 04:58:51 0
【帰還です。
皆さん、大変ご迷惑をおかけしました。
この先もよろしくお願いします。】

107 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/11(土) 00:02:43 0
部屋に中央では赤々と護摩壇に火が踊り蹲る巨漢を闇に照らし出していた。
部屋の広さもどれだけあるかわからぬその部屋にディーバダッタは跪いていた。
ミアを逃した後、町に戻りコクハと分かれ教団に帰っていたのだ。

「まことに申し訳ございません。すべては拙僧の未熟なるが故!」
全力で頭を床に叩きつけ地に伏せるディーバダッタ。
床にはひびが入り、血がジワジワと広がっていく。
「・・・よい・・・」
護摩壇を挟み設けられた祭壇からたおやかな少女の声が響く。
祭壇には幾重ものベールが垂らされ声の主のシルエットしか見ることが出来ない。
シルエットがかすかに動くと、護摩壇の上に瓶が現われる。
その瓶の中には・・・眼球が一つ浮いていた。
そう、この瓶詰めの眼球こそがディーバダッタが幹部になる際に捧げた眼球なのだ。
「そなたの目を通して一切を見た・・・。
既に【門】は我らの因果のうちに入った。」
護摩壇の炎は祭壇とディーバダッタを照らすが、それより先は闇に吸い込まれなにものをも映し出させない。
広さも、上下もわからぬ空間にただただその声は続く。

「此度の失態はこの血を持って購われる・・・
そして新たなる神託を示すであろう。」
ポタリ・・・ポタリと護摩壇に落ちる血が瓶を濡らし、護摩壇の炎に吸い込まれていく。
血を吸った護摩壇の炎は一段と激しさを増し、その中に一人の男を照らし出した。

夜の街角で人形を売るレノの姿を・・・

そして炎の勢いと共に強くなった光が僅かにその領域を広げる。
いまだ壁を照らすには及ばないが、護摩壇の上に吊るされた流れる血の主を曝け出すのだった。
「行け。末法に終焉を与え、浄土をもたらす【門】を我が元へ連れてくるのだ・・・!」
「ははっ!!」
その宣言と共に護摩壇の炎は掻き消え、完全なる闇に覆われる。
そして暫く後に、部屋は姿を現した。
こじんまりとした礼拝堂であり、護摩壇はあるが先ほどの祭壇は存在すらしない。
そして天井も低く、吊るされた血の主も消えうせている。

光を取り戻した礼拝堂でディーバダッタは立ち上がる。
目的を果たす為に・・・夜の街へと。

>103
森の襲撃から数日後の夜。
深夜も過ぎた頃のカフェイン通りにディーバダッタは佇んでいた。
>「シーヴァダッタ、なのか……?」
「ディーバダッタだ。久しいな。用件は・・・わかっているな?」
逃れられぬ因果律を突きつけるが如く、ディーバダッタはレノの前に立つ。


【時間軸を進めてみました。
他の方々とはずれますが、調整できるかな、と。
>ミアさん
おかえりなさい。】

108 名前: ◆mLrP2EAMX. [sage] 投稿日:2009/07/11(土) 08:58:05 0
幼き日の記憶
迷い込んだその先で始まった、悲痛なる運命
かつて一人の少年が居た

ラシエ「ちぇっ…
     立ち入り禁止の聖地だとか言うから期待してたのに
     何でもない普通の遺跡じゃん」
少年の名はラシエ・マキシネンという
辺境の小さな村で生まれたごく普通の少年であった
そんな彼の趣味は、探検であった
村の掟で立ち入りを固く禁じられた村の聖地である古代遺跡
彼の冒険心は、ついにはそこにまで足を踏み入れることとなった
戦場となって荒れ果てたらしく、保存状態は劣悪である

ラシエ「探してみるもんだなあ
     ちゃんとしたもんあるじゃん!」
彼が古代遺跡の最奥に達したとき、異様な雰囲気の部屋へ到達した
祭壇にもたれかかるように横たわった、巨大な騎士の残骸である
喜びに胸を躍らせ、吸い込まれるように祭壇に登って行く
そして、祭壇の上に飾られていたカイトシールドに手を伸ばした

ラシエ「凄い…
     これって伝説の赤き騎士が使っていた盾かな?
     …えっ、うわあぁぁっ!?」
突如カイトシールドから炎の渦が出現し、あっという間に少年を呑み込んでしまった
そして、薄れゆく意識の中何者かの声が語りかけてきた

〜汝、汚れし手で我が眠りを妨げし者よ
 我が浄化の炎の贄となるがよい
 汝に我が力の礎たる紋章を与え、汝の雄を我は奪う〜

ラシエは気が付くと、何事も無かったかのように夜が明けていた
余りの恐怖に村に逃げ帰ると、村では村長一同が松明を持って待ち構えていた

村長「………」
ラシエ「村長…さん?
     お、俺何も悪気があったわけじゃ…」
村長「おまえの言い分など聞いとらん
    おい、背中を見せろ」
ラシエの言葉を遮り、逞しい村の青年に彼を捉えさせて背中を見せさせる
乱暴かつ強引に衣服を破り、脱がさせた

村人たち「おおっ…」
村長「やはりな…
    既に性別すらも変わってしまっておる」
ラシエ「えっ…?
     どういうことなんだよ、村長さん!」
ラシエの背中には謎の紋章が刻まれており、胸には大きめの乳房が盛り上がっていた
どう見ても女にしか見えず、声まで高くなってしまっている
ワケが分からないラシエは、半狂乱のような状態で村長に尋ねた

109 名前: ◆mLrP2EAMX. [sage] 投稿日:2009/07/11(土) 09:14:05 0
村長「ラシエ、おまえは赤騎士に取り憑かれてしまったのだ
    赤騎士は意思を持った古代の破壊兵器
    愚かにもおまえはそれを目覚めさせてしまった
    明日、おまえを処刑せねば村に禍いが訪れる」
ラシエ「ま、待ってくれよ!
     親父、お袋も何とか言ってくれよ!」
しかし、ラシエの両親は項垂れたまま彼の顔を見ようとはしなかった
そして女となってしまった少年は、村の地下牢へと連れていかれた

青年「ラシエ、まさかおまえがそんなザマになるとはな」
ラシエ「う、嘘だ…
     こんなの…」
牢番の青年が侮蔑の表情で錯乱するラシエを見下ろす
しかし突如、労を開けて入ってきた

ラシエ「や、辞めろ!
     何をする気なんだ…」
青年「ジジイたちが、おまえは女になったっていうからな
    その機能を体で試してやろうってわけよ
    手を出すなって言われてるが、折角女になったんだ
    死ぬ前に処女ぐらい捨ててもいいだろうよ」
ラシエ「いや…いやだああぁぁぁぁっ!」
夜闇に響く少女の悲痛な叫びは、かつての少年のものとは思えないほど高かった
そして、夜が明けて全てが終わる日がきた

青年「隅から隅まで本当に女だったな
    じゃ、俺は会場の準備があるから行くぜ」
ラシエ「………」
放心状態のまま、太ももに一筋の血を流し倒れているラシエ
しかし青年は、ラシエの背中の紋章が真っ赤になっていることに気付けなかった

赤騎士「汝ら、罪深き者どもよ
      我が浄化の炎で焼き尽くされよ」
その後、ラシエには何があったかは分からない
ただ、焼けの原となった生まれ故郷の村の真ん中に横たわっていた
そこには、黒こげとなった村人の死体も無数に転がっていた
ただラシエは恐ろしくなって、その場から逃げだしていった

ラシエは叔父の刀匠レンダーの保護を受け、そこで17になるまで過ごした
運命に抗うべく、修業をして力を身に付けていった
そして、新たな名を得ると旅をしながら呪いを解く方法を探している

110 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/11(土) 21:03:34 0
>「アトリエ"シートベルツ"人形師レノの新作ドール"ルナ"嬢。
 お嬢さんの可憐さに免じて、定価70000のトコを45000で御提供」
声がしたので人形のほうを見た。
黒の帽子に黒の服。青の瞳はつぶらそのもので・・・ほうきにまたがっている姿が、なんというか、かわいい。
ついついうっとりと見つめてしまう。
一匹ほしい。
いれば何かと役に立つにつがいない。
ほうきに載っているその姿は魔法使いだ。
人形師レノの作品だから、きっと何かしらの力が込められているはずだ。

だが、お金がない。
今の手持ちは10000ちょっとしかないのだ。
コクハは手持ちがありませんという顔をするほかなかった。


111 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/11(土) 21:15:43 O
ボフッ

112 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage ◇Boz/6.SDroさんありがとうございます!] 投稿日:2009/07/11(土) 22:53:56 O
「ハゲオヤジ? まさか…」

エルシアと名乗る者の呟きにページは静かに頷き 決心した。

「先に言う。これから話す事はあまり信じられるものではない… 話に花を咲かせる程度に聞いてもいい。
だが、少なくとも私にとっては真実だ」

前置きを置いて、ページは話し始めた。食う手も止めている

「七年前の、いわゆる"ゲート争奪戦"と呼ばれる…、世界各国所々から『魔』が湧き出たアレ、覚えてるか?」

魔物が、闇が、それ以外の何かが、
世界を覆った未曽有の大惨事 それがゲート争奪戦である

「なんで争奪と言われているかは諸説あるが…、今はおいておこう。
肝心なのは『終焉の月』という存在が裏で暗躍していたと話があったことだ。井戸端の噂程度だが、世界中同じ噂があったらしい」

ここらで一息とばかりに水を飲んだ。この話を他人にするなど初めてだ

「しかし…、『終焉の月』という団体ができたのは最近じゃない。
昔、…まぁ趣味で読んだ古文書にこうあったんだ
【政は荒み、田畑は死に、民の心に絶望の夜がくる。我々は誓う。民の絶望を終わらせよう、夜を照らす月になろう
『終焉の月』となりて、人々の道を照らそうぞ】」

内容に嘘はない。自身の謎を調べる為という理由を趣味の一言ですませただけだ

「偶然の一致かと思っていたが、頭を剃っていたり経を読んでいたり、関係がないということはなさそう…
いや、頭髪については自由だったかな…?」

113 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/11(土) 22:56:55 O

少々記憶が曖昧なところを悩んでいた時、先程まで寝ていた少女が起きてこちらを見ているのに気がついた
彼女は簡潔な自己紹介の後に
「ありがとう」
と言った。

「はっは、私はむしろ助けられたんですがね
とにかく、終焉の月は君を襲ったんだろ?
関係はなさそうだが書と現在の月の行動は全く正反対。私には何が何だかさっぱりだよ
さて、疲れている時は食事に限る。君も食え食え!」

今までの真面目な雰囲気が元に戻り、ミアにも明るく無責任に食事を勧めた。無論、自分も再開しながら

食えるうちに食う。さもなければ急に襲われた時に後悔すると彼は考えていたから





許可貰った癖に曖昧ですみません… ガチガチに決めるよりみんなでチクチク埋める方が良いと思いました
>>106さん、これからもよろしく

114 名前: ◆mLrP2EAMX. [sage] 投稿日:2009/07/11(土) 23:53:09 0
【今更ながら突然ですが、エルシアの過去の話を投下してみました】
【これはレンダーの下での修業時代の話ですが、何となく月と関係を持たせてみました】
【これから絡んでいくための参考にしていきたいと思っています】

ここはレンダーが所有する修行場を兼ねた大鍛冶場である
エルシアが10歳から17歳までの七年間を過ごした場所だった
そして、これは彼女が13歳の頃の出来事である

ディルヴッデ「ラ…いや、エルシアの様子はどうか」
レンダー「修業はきちんと続けているよ
       だが、未だに心を開こうとしない
       余程あの時の出来事がトラウマになってしまっているのだろう」
一人の僧侶と、ここの主である刀匠レンダーが話し込んでいた
その傍では、棒きれを片手に藁人形を打ち据えるエルシアの姿があった

ディルブッデ「私が監視していながら何たる無様…
         『月』のあの遺跡への介入を許してしまうとは…」
レンダー「いくら悔やんでも今更仕方がない
       『月』の元幹部である君が出し抜かれたんだ
       余程の使い手だったんだろう」
僧侶の名はディルブッデ
カルト教団「終焉の月」の元幹部で、狂気に走る教団に嫌気が差して脱退
強大な力の解放と獲得を求める「終焉の月」幹部僧から遺跡を守るため隠遁していた
「ゲート」争奪戦の折、溢れ出した「魔」の影響で古代遺跡の封印が弱体化
出し抜かれて封印を解かれてしまった

ディルブッデ「いや、当然と言えば当然の結果であったのかもしれん
         今の私では、最早奴らと戦うことはできない
         教祖様への忠誠に背いた罰として、捧げた眼球を潰されてしまったのだ
         金眼は朽ち果て、法力も随分弱ってしまった」
レンダー「仕方がないよ…
       だけど、赤騎士を解放したのがあの子であったのが幸いだろうね
       いや、そんなこと言っちゃダメか…」
ディルブッデの眼帯の下の金眼は、幾重にもヒビが入って輝きが失われていた
二人は深刻な問題に憂鬱な気分に包まれてしまっている

レンダー「君はまた、旅に出るのかい?」
ディルブッデ「ああ…居座る理由が無くなったのでな…
         『月』の動きを探り、その陰謀を阻止しようと思っている
         例えこの身が砕けようとも…」
レンダー「達者で…ね」
ディルブッデ「うむ」
こうして、背を向けてあてもなき旅路に付くディルブッデ
彼はその後、旅先で有力な幹部僧によって誅殺されてしまった
レンダーもまた、病で若くしてこの世を去った
エルシアが17になったその日、呪いを解くべく旅が始まったのだ

115 名前: ◆mLrP2EAMX. [sage] 投稿日:2009/07/11(土) 23:56:43 0
すみません、「10歳から17歳の七年間」は間違いです
実際は「11歳から17歳の六年間」でした

116 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/12(日) 16:28:53 O
※※それぞれの中の人は、次のレスは自分の次に参加表明した人の文体を真似て書く事※※
     (最後に参加した人は最初の人を真似る)

117 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/12(日) 23:21:20 0

――――ソレは、魔術師の存在を捉えた。



「そいつを気に入ったか、寡黙な"お嬢さん"?」

剣士風の女は、純真な少女の瞳で人形と見つめ合っている様に見えた。
もっとも、実際の所は"機能"を見定めているに過ぎないのかもしれない。
商売用のドールには人工霊魂こそ無いが、黒のローブは伊達じゃない。
きっちり抗・対人呪術護符が縫い込んである、一種の魔術チャームだ。

――――ならば立ち向かうのか。

「美人剣士とカワイイ魔術師人形、良いコンビになれる」

金にはならなさそうな女だった。
だが、放っておけない雰囲気がある。
黒スーツは新しい煙草を銜えかけ、止めた。

――――未来へ向かうのは逃避か?

「……わかったから、そんな顔はよせ。
 金なら直ぐに払える分だけで譲ってやる。
 その代わり、今度オレと会った時に一杯奢れ」

オレもガキの頃は、あんな目で楽器屋のアルトサックスを眺めてたもんだ。
その為に酒場の厨房でアルバイトの日々……冬場は皿洗いが辛かった。
必死で溜めた金で買ったその夜に、ケンカでぶち壊したわけだが。

――――現在を生きるのは停滞か?

「それと、この先は条件って訳じゃないが……
 この辺りで安い宿を知ってたら案内してくれ。
 いや、宿屋じゃなくてもいい。ココ以外の何処か――――」

イイ女を目の前にしているのに、普段の軽口が出て来ない。
街に入る前に森で感じた威圧感の正体を唐突に理解した。
目を閉じ、耳を塞ぎ、背を向けようとした、その矢先に。


――――赤い過去が、眼前に立ち塞がった。



『ディーバダッタだ。久しいな』

118 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/12(日) 23:22:20 0

『ディーバダッタだ。久しいな』

「―――ちっ。聞こえてやがったのか。
 地獄耳は相変わらずだな、ビィーヴァダッタ」

『用件は・・・わかっているな?』

「用件?……そいつはドールの商談か?
 生憎だが、新作はたった今売れちまったよ。
 良いニュースもあるぜ……次の予約注文なら受付中だ。
 腐れ縁の義理で、定価70000のトコを98000で譲ってやってもいい」

造形師の渇いた言葉は、湿った夜風に吸われて消え失せる。



……

魔術師は長い沈黙を持て余し、指を鳴らして煙草を点けた。

「……七年だ。
 オレは、戦う以外の生き方を見つけられるまで七年掛かった。
 ―――今更"月"に戻る気はねえよ」

煙草がジリジリと焦げる音が耳障りだ。立ち上る薄煙。
その向こう側で、魔術師の左の虹彩が淡い金色を帯びる。

「"ゲート"のガキは消え失せた。
 セラフィムも完全には救えなかった。
 あの場で死んだのさ。お前も、オレもだ。
 ……もう終わってるんだよ、とっくの昔にな」

何かから視線を逸らす様にして紫煙を吐く。
魔術師の左眼に映り込むのは、沈み往く月光。


「いつまでもオレ達だけが夢から醒められないってのは、
 タチの悪いジョークだと思わないか?ディーバダッタ」

119 名前: ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/12(日) 23:25:16 0
【こっちは相変わらずのノープランだ。ま、適当に行こうか。
 メインのキャスト達が街に入るまでの繋ぎだとでも思ってくれ。
 
 >116
 面白そうなネタだが……悪い。オレはパスだ。
 文体を操る能力も、時間の余裕もないもんでな。
 
 ―――Good Luck.】

120 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/12(日) 23:49:44 0
「くっは〜! 最っ高!
私はページ、ページ・ファセットだ。何分食べてなくて、君もどうだい?」
白髪の青年が干し肉にむしゃぶりつきながら答える。相当に空腹だったようだ。
少なくともこの男に関しては悪意が感じられないとしか言いようがない。
「いい食いっぷりだねぇ、しかし」
あいていた手を横に広げてつい、冗談じみた笑みを浮かべてしまうのだった。

「俺はエルシアってんだ」
少年が口を開く。
目の前では白髪の男が奥からくすねてきた干し肉に夢中になっている。
「ああ、エルシアね〜、女みたいで可愛い系の名前だな」
傷の手当てに集中していたシモンは、その声に気付くと
聞いているか聞いてないか程度の反応で、皮肉気味にそうつぶやいた。

やがて、傷の手当が終わると、シモンも干し肉を頂戴し始めた。
水筒の水は決して多くはないが、明日の朝近くで汲んでくれば大丈夫だろう。

「あそこまで肝が冷えたのは久しぶりだかんな…
       あのハゲオヤジ、一体何モンだ?」
「君らを追う人物は本当に「南無阿弥陀物」と言ったのかい?」
どうやらこの二人も自分たちを襲った敵の正体を知らないらしい。
「実は俺もあいつらに関してはよく分からん。俺に傷を負わせた奴とも
関係ないかもな。ただ、やたらこいつに執着してたなぁ…
災厄の坩堝だとか、呪われし感染源だとかな」
シモンは床に横たわる少女を顎で差して言った。

(思えば、追われてんのもこいつが元凶みてぇなんだよな…しっかし)
命は助けたし、十分世話にもなった。
報酬がどうとか言っていたが、この身なりでは碌に取るものもないだろう。
だが、自分の貧困と敵に回した勢力の数、そしてその正体を掴めていないことを考えると
ここから一人になるのも得策ではない。
(もう少し、利用させてもらうか)

121 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/13(月) 00:29:53 0
「………………ミアよ…」
「ありがとう」
少し遅れて、ミアと名乗った少女が地面から呟いた。
「…あ?聞いてたのか」
目の前の水筒に手を伸ばし、寝ぼけたような顔で
話に耳を傾けている。
「ま、こんな感じよ。寝てりゃ可愛いガキなんだけどなぁ。食うか?これ」
シモンは再び干し肉を口に入れ、千切ったそれをミアに渡した。
「さて、俺は少しここで夜が明けるまで休むかねぇ…」

シモンが椅子にもたれかかり、居眠りを始めたそのときだった。
「待てよ、ハゲオヤジ? まさか…」
ページが突然何かを思い出しはじめたようだ。思わず目を開いてしまう。
「七年前の、いわゆる"ゲート争奪戦"と呼ばれる…、世界各国所々から『魔』が湧き出たアレ、覚えてるか?」


ページの話が終わる頃には、すっかりシモンの眠気は覚めていた。
「終焉の月」「ゲート争奪戦」については聞いたことがある。
同時に思い出した。確かに、領主を襲った集団…
そしてシモンを襲った集団の装束の中に、三日月のような紋章があったのが
今になって脳裏に焼きついた。
(まさか、あの大男も…)
古文書の内容とやらから察するに、どうも連中は王国に反旗を翻すつもりらしい。
王国の財宝を奪ったのもその一環と見ていいだろう。

しばらくの間、まるで居眠りをするように考え込んでいたシモンが口を開いた。
「…分かった。俺もできる限り協力する。このまま仕事をせずに帰る訳にもいかねぇからな。
俺は腕っぷしにゃ自信があるが、お前らのように知識はねえ。だから、知ってる限りでいいさ。
ミア、さっきのページの話で何か気付いたことはあるか?」
協力する、というのは建前である。シモンにとってこれはどう考えても協力させる、だった。
無知な振りをしていれば、自分にとって有用な情報だけが耳に入るという寸法である。
”終焉の月”に対する恐怖は決して小さい訳ではない。
しかし、既にシモンの脳内は、王国の財宝のことで一杯であった。

122 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/13(月) 04:10:07 0
もう当人の方はいらっしゃらないかもしれませんが、
一応フラグを匂わせつつ・・・参加させてもらいます。よろしく。

名前:ギルバート・ロア
年齢:見た目は20代後半〜30前後
性別:男
種族:ウェアウルフ変種
体型:引き締まった長身痩躯/ぼさっとした銀髪、やや長め
服装:白のシャツに細身の黒服をだらしなく着崩している/重そうなブーツ
能力:鋭敏な五感六感/特定条件下での獣化
所持品:銀のロケット/ナックルとして使う銀の彫刻指輪/体に巻きつける皮のバッグ
     いつも火の付いてないパイプをくわえている
簡易説明:
かつて小さな集落に隠れ住んでいた人狼の一族の生き残り。
その集落はある日、彼の親友だった男の裏切り(と本人は信じている)の為に、
突然神の名を借りた人間達の襲撃を受け、肉親と恋人を含め皆殺しにされた。
彼も瀕死の重症を負うが、生き残った事を幸いある錬金術師の実験サンプルにされ弄ばれる。
その時の実験の成果か、獣化しても知性と理性が残る。

その後何とか脱出し各地を放浪するが、かつては復讐を誓って鋭く研ぎ澄まされた性格はスレて仮面を被り、
眠そうなたわけた表情で上辺では常に明るく、どこまで本気か分からない冗談を使い、本心をうかがわせない。
一応今も、仇であるかつての親友を追っているはずなのだが・・・

123 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/13(月) 04:11:27 0
【大きい変化の途中のように見えるので、ひとまずどちらにでも絡める形で。】
【無論こっから誰かに接触貰うのもアリですが・・・とりあえず参加だけ】


「・・・さて、弁解の余地があるか考証してみようか、俺」

一度だけ、ほぼ半分の上弦の月を眩しそうに見上げると、男はため息をついて足元の草を蹴っ飛ばす。
まるで目の前に誰かがいるかのような会話調。しかしその顔はこれ以上なく不機嫌そう、というよりは面倒そうだ。

「近道は失敗。勘はハズレ。異議なーし!あーこりゃ迷った。完全に迷ったぜ畜生!」

はーあ、と深いため息をつくと、しゃがみこんで頬杖を付く。
さらりとした銀髪が月光で蒼く光り、黄色かオレンジに近い瞳とコントラストを生み出す。
が、テキトーに乱した髪型にだるそうで眠そうな目、オマケに僅かな無精髭は、そんな詩的な表現からは程遠かった。

「・・・しかしまぁ・・・森だ」

その通り、目の前には森の入り口。広いのか小さいのかもわからない。

「で・・・戻るのは無理、と」

その通り、勘だけを頼りに道を外れて歩いてきた今、元来た道を戻る術はなかった。

「・・・・・・ま、どっかに繋がってるだろ。多分」

結果、勘に勘を重ね、男は立ち上がると、森の中へと歩みを進めていった―――

124 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/13(月) 12:43:14 0
エルシア「お、気付いたか
       俺はエルシア、よろしくな!」
目覚めたばかりのミアに気づき、笑顔に軽く手を挙げて挨拶する
早口の「ありがとう」までは聞き取れなかった
そのまま、ページたちとの会話に移行する

>「七年前の、いわゆる"ゲート争奪戦"と呼ばれる…、(ry
>「なんで争奪と言われているかは諸説あるが…、今はおいておこう。(ry
エルシア「………」
忘れたくても忘れることが出来ない、全てを失った七年前の事件
争奪戦そのものの詳しい経緯を知る由はない
だが、その裏で暗躍した「終焉の月」により、大いなる混乱がもたらされたことは事実
それによってエルシアは、破壊の力を孕む女体を押し付けられたのだ
ページの話を深刻な眼差しで聞き入る

エルシア「なあ…、ページ…
       もし他に終焉の月について知ってるなら教えてくれよ
       伝説とか逸話とかそんなもんじゃなくてさ
       …奴らの本拠地とか支部の場所かなんかを」
干し肉を指先で千切って食べながら、静かにページに語り掛ける
その姿に先ほどまでの快活さはなく、何かしら心で静かに燃えるものが感じられる

125 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/13(月) 23:02:47 0
設定が立て込んできたのでちょっと整理をしてみました。

●七年前【ゲート争奪戦】が行われ、世界各国から【魔】が湧き出る。
   【ゲート争奪戦】の渦中にあった【門】=ミア?
   【閂】が外されたらしい。
   ミアは感情が昂ると強力に周囲の“魔”に抗する特殊体質を持つ(が、七年前《伝染する呪い》により故郷が壊滅した際に一度発現したのみ)

●ゲート争奪戦の影響で赤騎士の封印が弱体化、解かれる。
   封印が解かれた赤騎士を解放し、取り憑かれたのがエルシア

●レノとディーバダッタは【ゲート争奪戦】に参加。その時に死亡している(概念的に?)
   ゲートである子供は消えうせ、セラフィムも完全には救えなかった。

●この事件の背後には【終焉の月】が深く関与していた。
   【政は荒み、田畑は死に、民の心に絶望の夜がくる。我々は誓う。民の絶望を終わらせよう、夜を照らす月になろう
   『終焉の月』となりて、人々の道を照らそうぞ】
     古文書にあるが、教団としての【終焉の月】は終末思想のカルト教団

●反乱軍と領主の戦いに介入し、王国の財宝を奪ってシモンを襲った一団に三日月の紋章(=終焉の月?)

●ページ:原因不明の老いの加速で白髪化。ゲート争奪戦との関係は不明


修正や補足など在りましたらよろしくお願いします。
ディーバダッタのレスは明日に・・・

126 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/13(月) 23:04:19 0
>ギルバートさん
ようこそ、よろしくお願いします。

127 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [よろしくお願いしますsage] 投稿日:2009/07/14(火) 05:18:19 P
〉「ミア、さっきのページの話で何か気付いたことはあるか?」

…思い当たる内容は、確かにあった。
「…少し考える」
何かを押し殺したようにどこか固い調子でそう言い、
「疲れた」
進められた食事にも手をつけず、目を閉じて壁に身を預けた。

…“ゲート争奪戦”など思い出したくもない。
最後まで理由も知らされずにいくつもの組織に奪い合われ、時には実験とも儀式ともつかない何かを行われた負の記憶。
自らの手で禁忌とされた呪いを解き、全てを壊すという形でしか収束させられなかった罪の意識。
…国一つ滅びる前に“力”で何とか抑えはしたが、それが救いになるはずもなく。

ともかく、ページの話では7年前に暗躍したという終焉の月も、そんな組織の一つだったのだろう…と推測できる。
推測、などと曖昧であるのは、当時の記憶に幾つかの大きな欠落部分があるためだ。
ミアは知らないことだが、終焉の月に関する記憶は鍵や閂という言葉と共に失われていた。
(…何、されたのかしら)

何にせよ、詳細は今日会ったばかりの人物に話すのは気が進まなかった。
ミアは必要と思われる情報だけを淡々と述べた、

「信じないなら別にいい。
私は…かつて、ゲートと呼ばれた。

理由は知らないし、記憶も曖昧。
けど終焉の月には7年前にも一度、追われたことがある。

エルシア。奴等は厄介。乗り込むのは無謀。
…どうせ、嫌でも私を追って来る」


128 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/14(火) 22:40:59 0
>110>118
コクハとレノの商談に無遠慮に割って入る巨漢。
レノに向けた冷たい視線とは対照的な表情でコクハに小袋を差し出した。
「コクハ殿、この男から人形をお求めか。
だとするととても手持ちでは足りますまい。
これは前回の謝礼と、今回の前金です。」
手に乗せられた子袋はずっしりと重い。
中には金貨で100万の額が入っていた。

「前回は想定外の邪魔者のお陰で取り逃しましたが、な。
今回はそれも込みでの仕事です。
内容は変わらず。手段を問わず彼女の確保。
他はどうしようが構いません。
そして、今回はこの男も含め事に当たります。」
有無を言わさず小袋と共に話を押し付ける。
そしてレノに向きかえるにつれ、それまでの笑みは消えうせていく。

紫煙と共に厭世的な言葉を吐き出すレノの口元からタバコを奪い取る。
「その目・・・普通に見えるのは術で覆いを被せているのか?
お前の目はいまだ我らが教主様の元にある。
即ち、生も、死も、あの方に捧げたままなのだ。
潰す事も操る事もせず、今まで生きながらえさせ己が意志で戻らせるは慈悲と心得よ・・・!」
重々しく宣言し、奪ったタバコを握り潰した。
ジュッという音共に肉の焼ける臭いが鼻につくだろう。

「各地の宝具の収集も殆ど完了した。
今度こそ、完全なる開門が出来るのだ。
飢えも、貧困も、差別も、苦しみもない世界を迎えられる・・・!
さすればお前も悪夢から目覚められる。」
不敵な笑いが深夜の街角に響く。

129 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/15(水) 09:27:22 O
自分の話を三人は笑わなかった。
ページは驚いた

「…分かった。俺もできる限り協力する。」
「もし他に終焉の月について知ってるなら教えてくれよ」

二人が今の話を真に聞き止め 動こうとしている事を

「私は…かつて、ゲートと呼ばれた。」

あの事件の当事者がいたことを、それがまだ少女と言える歳であること

「な…、門とは人の事なのか!? 七年前なんてほんの子供ではないか…」

思わず声に出て、後悔した
彼女の過去の苦労は自分にはわからないが、生半可なものではなかっただろう
ならば、安易な同情や慰めは 彼女にとって何の意味があるのか。 そんな気がした
帽子を深く被り直して視線をずらし これ以上の追求をやめた

「エルシア殿、残念だが確実な情報は持ち合わせていない。私は逆に伝説や逸話なんて言った不確かな情報を集めるのが目的なんだよ
あと、勘違いしているようだから断っておくが、私は別に月を潰そうとか考えてるわけではない。
少し、知りたい事があるだけだ。 だが、そんな危険団体だとすると、厳しいな…」


130 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/15(水) 09:33:30 O
顔を隠すように立ち上がり小屋の扉に手をかけた

「少し夜風に当たってくるよ。すぐ戻るから大丈夫」


暗い森、静かな月
外は至って変わらない普通の光景
先程までの戦闘が嘘のように静かだ

「さて、どうするか…」

腹も膨れたし、寝床は確保した。 汗を流せないのが不満だが贅沢は言ってられない
明日、早朝からでればヴァフティアにつくだろう。手掛かりはないがいつもの事だ

「どうせ、私には皆より時間があるのだ…」

適当に思案を巡らせながら 森をぶらつく。
すぐ近くに銀色に光るモノがいることにページは気づかない



>>125
◆Boz/6.SDroさん
紛らわしくて申し訳ありませんがページは老化が遅くなっているんです(ほぼ停止? そこあたりは追々)
実年齢=50代 見た目=20代 て感じです
>>123
◆.0XEPHJZ1sさん よろしくお願い

131 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/15(水) 20:51:47 0
>>128
袋が押しつけられた。
中は見なくてもわかる。
金貨だ。
それもたくさん。
これだけあれば人形を買うこともできるし、当分の間、なにもせずに暮らすことだって気になる。
しかし、これだけの額を突き付けてくるとなると・・・
ただ事ではない。

「彼女を確保するのはなぜ?彼女を確保して何をしようというの」

彼女を確保しなければならない理由が何かあるはずだ。
実験動物として使うつもりなのか。
魔力の媒体として使うのか・・・。
はたまたそれ以外の目的で使うのかは定かではない。
でも、どことなく、胸がざわめくのを感じる。
断るべきだと直感でコクハは感じていた。

132 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/07/15(水) 20:53:56 0
>>131
× 断るべきだと
○ 返答次第では断るべきだと

>>123
ギルバートさんよろしくお願いします。

133 名前:レオナルド ◆gzRY.g0LmA [sage] 投稿日:2009/07/15(水) 21:02:33 0
>130
「よう、人間!今日はいい夜じゃねえか!なあ?」

俺は人間の臭いがしたんでひょっこりと出てみた
するとどうだ?
見かけねえ面の男が歩いていやがった
ま、こんな森の中で人間見かけるなんてそんなにねえけどよ

「じゅるるっじゅるっ」

こういう夜には、殊更血肉への飢えが強くなるんだぜ
こいつは飛んで火に入る夏の虫
おいしく頂かなきゃ「クレイジー・ウルフ」の二つ名が泣くってもんだ
というわけで俺は、男の首目掛けて爪の一撃を繰り出してやった

134 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/15(水) 21:05:52 O
>>133
流れ読めない奴だな

135 名前:レオナルド ◆gzRY.g0LmA [sage] 投稿日:2009/07/15(水) 21:08:40 0
そんなものは知らん

136 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/16(木) 00:17:46 O
>>135
wwwww

137 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/16(木) 01:37:03 0
「・・・うん?」

森に分け入って5分程歩いた頃。
彼は突然立ち止まると、しきりと鼻を動かして匂いをかぐ素振りを見せる。
さらには襟元に顔を寄せ、自分の匂いを確認し始めた。

「ん・・・?んん?・・・血?俺、どこか怪我したっけ?
 ・・・って、自分の匂いだったら気がつかねーだろってのフツー」

ビシッ、一人芝居にツッコミが入った。
当然誰も何もコメントも入らず、木から落ちた葉が一枚、ギルバートの頭に乗る。

「・・・・・・虚しいからやめるか。古い血・・・人の血だな。・・・こっちかね」

コキコキと首を鳴らしてからひとまず生真面目な顔を作ると、今までとは打って変わり、
足音を殺した滑らかな動きで匂いの後を追い始めた。
それは紛れもない、野生の狩猟者の立場にある者の身のこなし。
普段なら避けてすらいたかもしれない、そんな些細な事になぜそんな反応をしたのか―――
その時はまだ、考えてもみなかった。

138 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/16(木) 02:11:23 0
「なあ…、ページ…
       もし他に終焉の月について知ってるなら教えてくれよ
       …奴らの本拠地とか支部の場所かなんかを」
エルシアの言葉でシモンはふと、考えた。
「本拠地…」
彼は自分が属した暗殺組織について思い出していた。

切欠は本当に些細なことだった。
シモンは貧民の出身で、その身のこなしを買われ、覆面の男に勧誘されて
家族への送金を約束され、組織に入ることになったのだ。

実際に入ってみると、そこは理想とは全く違う世界だった。
実家に金が支払われているかどうかも知らず、シモンはただひたすら仕事をこなした。
数年経ったある日、”本拠地”で覆面の男が首領と会話をしているのを目にした。
会話の内容は忘れてしまった。
何故ならその後シモンは捕らえられ、酷い拷問を受けたからである。

「…」
「信じないなら別にいい。
私は…かつて、ゲートと呼ばれた。
理由は知らないし、記憶も曖昧。
けど終焉の月には7年前にも一度、追われたことがある」
「ゲート…ね。何となくは分かったよ。
要は、お前が奴らに捕まったら、何かとんでもねぇことになるって事だろ?」

「そんな危険団体だとすると、厳しいな…」
ページが視線をずらしてつぶやく。どうやらこれ以上は語る気はないようだ。

「少し夜風に当たってくるよ。すぐ戻るから大丈夫」
「あ、外に行くってか?どうなっても知らねぇぞ」
会話が途切れ、小屋の外に出ようとするページに悪態をつくと、
再び椅子に寄りかかり、居眠りを始めた。
(夜明けまではまだもう少しありそうだな)

「ギィャァァァァッ!!!」
「ひぃぃっ!何だこいつは!?」
断末魔ともいえる悲鳴と、ページの叫び声が響いた。明らかに非常事態だ。

「な、何だァ?」
本能的に椅子から起き上がると、ミアとエルシアを手で制し、壁際に近づける。
続いてドアの横へばりつくように立って静かにあけ、武器を構えながら
外の様子を素早く見た。

木にくくりつけられた盗賊は既に何者かによって首をかき切られて絶命していた。
まだ生々しく血が溢れてきている。
そしてその先には、暗闇に光る二つの目が、こちらに近づいてきている。
あれは…ワーウルフだ!
「よう、人間!今日はいい夜じゃねえか!なあ?」
どやら言葉を話すらしい。
次の瞬間、ページめがけてそれは飛び掛ってきた。
シモンはとっさにナイフを抜くと、ウェアウルフの心臓目掛けて投げた。
(チッ、ついてねぇ)

「お前ら、敵襲だ!戦える奴は頼む!」
そして今度は腰の「コカトリス」に手をかけた。


139 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/16(木) 21:34:29 0

『コクハ殿、この男から人形をお求めか。
 だとするととても手持ちでは足りますまい』

「これでも"良心的な"価格設定のつもりだ。
 見ろ、きっちり値札の横にも書いてある」

"この人形の売り上げの一部は、恵まれない貧しい人が
 一晩の温かいスープと毛布を得るために使われます"

"恵まれない貧しい人"が示すのは無論、他ならぬ造形師自身であり、
"一部"以外は、カジノ預金の引き落とし手数料として有効利用される。

 『これは前回の謝礼と、今回の前金です』

剣士は、大枚の報酬を警戒しているらしい。
だが、この程度の額は"月"にしてみれば端金だ。
彼女の手から、金貨の皮袋を無造作に取り上げる。
その代わりに、魔術師のドールを胸に抱かせてやった。

『――そして、今回はこの男も含め事に当たります』

「……勘違いするな。
 オレは七年前に貸した酒代を取り返しただけだ。
 事を急ぎたがる所も相変わらずか?イーヴァダッタ」

140 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/16(木) 21:36:25 0

『その目・・・普通に見えるのは術で覆いを被せているのか?』

「……この左目は、俺の"最高傑作"の一部だ。
 オリジナルの目よりも良く出来てるくらいさ」

未だ半分も減っていなかった煙草が、赤袈裟の掌中で燃素を求める。
魔術師は、手元に出現させた次の一本で自身の左眼を指し示して見せた。
ソレは空の月光が叢雲に遮られると共に、右と同様の深い碧眼に戻っていく。

『お前の目はいまだ我らが教主様の元にある。
 即ち、生も、死も、あの方に捧げたままなのだ。
 潰す事も操る事もせず、今まで生きながらえさせ己が意志で戻らせるは慈悲と心得よ・・・!』

「―――逃げられた男の忘れ形見をか?
 あのロリババアに、そんな可愛気があったとは驚きだ。
 金眼は海に捨てた……そっちも、さっさと始末すればいい」

燻ぶる煙草が上げる黒煙にも肉を焼く熱にも、巨漢は揺るがない。
その信仰は紛れも無い本物だ……加えて、頑強な肉体と明晰な頭脳。
オレは以前、この男を"超人"と評した事があった。無論、冗談半分でだ。
だが、半分は本気だった。相棒へ吐いた軽口に、奴は何と答えたんだったか―――

『各地の宝具の収集も殆ど完了した』

「なるほどな……それで、最後に"スペアキー"を出迎えに来たって訳か。
 ご苦労なこった。生憎だが、こっちはすっかり錆付いちまってる。
 今更、使いモノになるとは思えない」

『今度こそ、完全なる開門が出来るのだ』

「忘れてるなら、ついでに思い出させてやる。
 あの時、オレは一度"ゲート"に拒絶されてるんだ。
 今度も出る幕なんざねえよ。その向こうの世界に興味も――」

『――飢えも、貧困も、差別も、苦しみもない世界を迎えられる・・・!
 さすればお前も悪夢から目覚められる』

「ああ……そいつは最高に幻想的なヴィジョンだな――――」

自分の顔の前に手の甲を翳して、言葉を切った。
……この左眼は、どうも過去を視たがる。


「――――悪夢でも見てた方がマシだ」

141 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/17(金) 03:37:30 0
>>138

「はっ、はぁ、はっ・・・」
呼吸が荒い。あれは。アイツは。まさか。いや違う。だけど。バカな。

森の中の、明らかに人の手が入った広場。今見たモノが信じられず、視界がブレる。
息苦しさに思わず胸を鷲掴み、傍の木の裏に倒れこむと背を預け、空を見上げた。
木々の隙間から見える月が赤い。紅い。血のように紅い―――
心臓の辺りにドス黒い塊が生まれ、それが徐々に燃え始めるような感覚。
知っている感覚だ。馴染みのある変化だ。だが、今は。今は、まだ・・・

「ウソ、だろ、・・・まだ、月、は―――!」

いつもの満月の変化とは違う。僅かに残った隅で考えつつ、頭を抱える。
感情の奔流に意識が押し流され、過去の記憶がいくつか
擦りガラスのようにぼんやりした映像になってフラッシュバックしていく。

「コレ・・・マズい・・・ぐあ・・・!!
 おいっ!そこの小屋のてめーら・・・!逃げ―――」

ろ、まで叫ぶ事は出来なかった。

「う・・・ぐッ・・・が、アァァ!!!!!!」

獣の咆哮が上がり、ギルバートの体がねじれ、変異する。
身に纏っていたものは次々に黒い霧に変化して周囲に漂い、
頭髪と同じ青みがかった銀色の体毛が全身を覆い、頭が、腕が、足が変わってゆく。
次の瞬間にはそこに「人」はおらず、紅い眼をギラギラと光らせる白銀の狼がうずくまっていた。
残ったのは地に落ちたバッグ、首の銀のロケット、右手にはめた4つの銀指輪のみ。

その獣は大きさ以外、普通の狼とさして変わらない。普通の人狼の様に二足で立つ事もしない。
それが特徴だった。だが、もう一つの特徴は今回に限って―――

「・・・グガゥガァァアアアッ!!!!」

咆哮するや、その狼は木陰から銀色の閃光のように飛び出し、そこにいたまだ若い男の前をかすめ横切り、
目の前で襲い掛かろうと腕を振り上げている、ウェアウルフの喉笛を狙い飛びかかった。

142 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/18(土) 23:07:18 0
>131>140
レノの苦々しくも辛辣な言葉にもディーバダッタは揺らぐ事はなかった。
すべての言葉を飲み込み、その飢えで狂気を孕んだ笑みを浮かべている。
そんなディーバダッタに疑問を投げかけるコクハ。
>「彼女を確保するのはなぜ?彼女を確保して何をしようというの」
その問いに右目だけがギロリと動き、その後に口が動き出す。

「コクハ殿。神とは、どういったものとお考えかな?
すべての造物主?超常的な力の持ち主?
いいや違う。
それらだとすれば、生命を作り出す錬金術師やコクハ殿、あなたもある意味神となるでしょう。
相対的な意味でですな。
神とは、突出したエントロピーの具現。
運命などと呼ばれる大きなうねりそのものなのです。」
突然の宗教談話にコクハは驚くだろうが、そんな反応を一向に気にする様子も無く言葉は続く。

「彼女は人の形をしていますが、既に人ではないのです。少なくとも中身は!
彼女は魔に抗する体質ではありますが、そんなものは本来の力の副次的なものでしかない。
人の形をしたうねりそのもの。
その力は使い方によっては救世の力にもなれば、大いなる災いにもなる。
そして我らは正しき使う術を持っておるのですよ。」
既に人の通りも殆ど無くなった深夜の路地に重々しくも荘厳なディーバダッタの声が吹きぬけた。
ジャラジャラと数珠をこすり合わせる音と共に。

「あなたは金のため、我らは救世のため。
既にコクハ殿も私も、うねりの中に身を置いております。
望もうが望むまいが、否が応でも合に流れ着くものなのです。
レノ・・・無論お主も、な。
抗う術は無いぞ?」
それだけ言うとディーバダッタは踵を返す。
何時、どこで何をするか。
仕事の詳細など一切告げずに。
それは言わずとも「その時」になれば必ず出会うといわんばかりに。

ざっざと足音を鳴らしながら歩いていくディーバダッタを月が照らす。
その影は人のものではなく、まるで巨大な何かのようだった。

143 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/19(日) 02:28:03 0
>「彼女は人の形をしていますが、既に人ではないのです。少なくとも中身は!
>彼女は魔に抗する体質ではありますが、そんなものは本来の力の副次的なものでしかない。
>人の形をしたうねりそのもの。
>その力は使い方によっては救世の力にもなれば、大いなる災いにもなる。
>そして我らは正しき使う術を持っておるのですよ。」
そのためだけに彼女を捕らえるというのか。

断じてこのような悪事に加担することなどできやしない。

「悪いけど、今回の話はなかったことにさせてもらうわ」
淡々と言葉を紡ぎ、ディーバダッタとは逆の方向へ歩き出した。

144 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/19(日) 18:39:03 O
「よう、人間!今日はいい夜じゃねえか!なあ?」
「ひぃぃっ!何だこいつは!?」

突然の声に迫り来る腕は飛んでくるナイフともう一匹の狼のおかげでページの首は繋がった

「シモン殿!ありがとう!」

必死にナイフが飛んできた場所、シモンの所へ向かう
距離を離して振り返ると二匹の狼が敵対していた。

「おかしい…、狼は集団が基本だ。なぜお互い単独で…」

狼というものは確固とした群れ、組織をつくって行動する、例え魔物でもそれは変わらないはずではなかったのか

「お前ら、敵襲だ!戦える奴は頼む!」

シモンは既に武器を構え敵に迫らんとしていた。だが先程とは違い今度の相手は 人より遥かに五感が鋭い魔獣、生半可ではいかない

「仕方ない…、シモン殿 少し待っててください…」

今にも飛び出しそうなシモンを制止し、ページは魔術の詠唱を始める
能力向上術、ページが使える唯一の魔術だ

「…………見極めろ、"心眼"
よし…、お三方!これで視る力が強くなったはずだ。 …すまないが私はこれぐらいしかできなくてな」

145 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/19(日) 21:15:43 0

『――抗う術は無いぞ?』

『悪いけど、今回の話はなかったことにさせてもらうわ』

両者は対照的だ。放った言葉も、歩き去った方角も。
だが、暗に"追ってくるな"と言っている背中は同じだった。
二人のどちらかが向かう先に、居るのだろうか……あの少女が。

「お前も、この月を見てるのか――――ミア?」

―――左眼の奥が熱く疼く。
黄金の瞳で夜空の月を見上げた。
考えなければならないコトは山積みだ。
先ずは、百万近い不労所得の最初の使い道。
戦いに身を投じるにしても、不可欠な準備があった。



……

どう立ち回るにしろ食欲の充足は優先事項だ。
繁盛してなさそうな夜市屋台を選んで入った。
屑肉が焦げる煙と熱気が混じって纏わり付く。

「イスハンドゥラ」

品書きも見ないで無愛想に注文だけを告げて、
狭い店内の薄汚れた簡易テーブルに陣取った。
女店主は焼いた肉を回転させながら削ぎ切る。

『アタシの名前だ』

「何だって?」

『イスハンドゥラ』

「そいつは傑作だ」

金貨を一枚放る。

「この店で一番高い酒をくれ」

『こんな高い酒は出した事がないね』

安酒のグラス底に金貨が沈んで返って来た。

「料理じゃない方のイスハンドゥラ」

『奥でダンナが寝てる』

「嫉妬で気が狂れそうだ」

『自棄酒なら付き合うよ』

作りたてのイスハンドゥラの皿が置かれた。
添えられたヨーグルトが肉の量以上に多い。
ソースはスパイシーかつジャンキーな味だ。
賭博師は、この手の味が嫌いではなかった。

146 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/20(月) 04:23:20 0
>「な…、門とは人の事なのか!? 七年前なんてほんの子供ではないか…」
>「ゲート…ね。何となくは分かったよ。
>要は、お前が奴らに捕まったら、何かとんでもねぇことになるって事だろ?」
驚かれはしたが、気味悪がられることも笑い飛ばされることもなかった。
肝の据わった連中だ。これならある程度は信用できる。

>「少し夜風に当たってくるよ。すぐ戻るから大丈夫」

外気に頬を撫でられ、反射的に移した視線の先にはあの月があった。

「……………………嫌い」

扉が閉まって数秒。ミアはようやく視線を戻した。

月は嫌いだ。
今のような空にあぶれた月は多少マシ――けどなぜか、今日に限ってはそれも酷く不快だ。
いつもなら、一緒ね、とでも呟くのだが。

月は心を乱す。
ミアの場合、感じるのは肉を削ぎ落とし心に穴を穿つような喪失感だった。
それでも彼女は頻繁に月に目をやる。癖なのだ。何かひきつけられるような。
それに時折、ふと安らいだ感覚が訪れることもある。余分なものが洗い流されていくからなのだろうか。
(……やっぱり、嫌いだけど)

毎夜見上げずにはいられない、麻薬のような空。
明日も明後日もその先も、きっとこうして眺めている。





>「ギィャァァァァッ!!!」
>「ひぃぃっ!何だこいつは!?」

束の間の休息はあっさりと中断された。
「……何?」
シモンに促され、壁際に寄る。戸の隙間から見えるのは――血?

>「よう、人間!今日はいい夜じゃねえか!なあ?」
シモンが動いた。友好的な相手ではないことを認識する。
>「お前ら、敵襲だ!戦える奴は頼む!」
杖を手にとり、小屋を出て入口のすぐ脇に立つ。
本調子ではないものの、消耗した魔力は嘘のように回復していた。

だが飛び出したはいいものの、彼女には状況が理解できなかった。
>「…………見極めろ、"心眼"」
後退して魔術を使ったページに問いかける。
「この状況は何? 本当に敵襲? なぜ人狼同士で争っているの?」

ページを襲った者は言葉を操っていたが、獣に近い形をとった白銀の人狼は理性を失っているようだ。
おそらく人型が襲撃者で、何らかの理由でそれと敵対した白銀がページを救った。
だがそれは単に偶然と優先順位の問題だったのかもしれない。
獣の本性として、白銀も何かの拍子でこちらを襲う可能性は高い。

……どうすればいいのだろう?
とりあえずは白銀の加勢をするべきなのだろうか……?

147 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/20(月) 20:52:46 0
夜風に流れる紫煙を横目で追った向こうで、月が叢雲に隠れていた。

「……嫌われちまったか」

その姿が視界から失われた後にも、視線だけは外せないでいる。

月は孤独だ。
その輝きは星屑と共に在っても、溶け込むコトは無い。
故に、だろうか―――天上の祭壇に祀り上げられた存在。

月を瞳が求める。
込み上げるモノは熱い疼き。時には激痛。痛みに比例して流れ込むのは魔力。
元より、この左眼は"そう在る様に"造られていた。己の意志では抗えないサガ。
その一方で、魔力以外の何かが不思議な浄化感を齎す。温もりにも似た、何かが。

「―――存外に徹えるな、片想いってのも」

月には眼球に作用する引力でも備わっているのかもしれない。
そうでなければ人間の瞳は余程、寄る辺の無い存在に違いなかった。
おそらくは、後者。明日の夜空を望める根拠など何所にもありはしないからだ。

148 名前:レオナルド ◆gzRY.g0LmA [sage] 投稿日:2009/07/21(火) 06:40:03 0
「ああ、何だ?
 痒いじゃねえか」

どっかの馬鹿が投げたナイフが胸の辺りに当たりやがった
が、こんなチンケな刃物じゃ変身した俺の鋼毛皮は貫けねえ
毛皮に引っ掛かったナイフを指に挟み、投げた野郎に見せ付けながら折ってやった

「やらせるかよ!」

俺は地面を蹴ってナイフ野郎に砂を浴びせて距離を取った
どうもこいつら、一人や二人じゃねえみてえだ

>「・・・グガゥガァァアアアッ!!!!」
「な、何ぃっ!?」

いきなり急に物陰からバカでかい何かが飛び出してきやがった!
俺の咆哮に勝るとも劣らない凄まじい咆哮
間違いなくこいつは俺と同じ狼族の魔物だ
が、こんな銀色の野郎は見たことが…銀色の野郎?
とにかく俺は手でそいつの口を払いのけ、後ずさった

「おいてめえ…、せっかくのお楽しみを邪魔しやがって…
 俺を誰だと思ってやがる?
 今すぐ立ち去らねえと同族でも殺すぜ?」

唸り声と爪の擦り合わせで目の前のデカ狼を威嚇する
こいつ、まさか「クレイジー・ウルフ」の名と噂を知らない若手のモグリかよ?
だが、この白銀の毛はどこかで見た記憶がある
まあ、この際んなこたあどうでもいいから、こいつは殺す!

「バカが!冥土の土産にこの名を持って行け!
 『クレイジー・ウルフ』のレオナルド・シュバリッツ・ダルディンの名を!」

俺は背後の大木を足場に瞬時に白銀の頭上に飛び上がった
そして、奴の脳天目掛け爪を振り下ろす
同族を手早くぶっ殺すにゃ頭を叩き潰すのが一番だぜ

149 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 07:37:58 O
ウルフ達が戦うかたわら、一人の少女がページに駆け寄ってきた。
「今のうちです、早くこちらへ!」
少女はページの仲間達も連れてその場を離れた。

翌朝、少女のテントで一行は目を覚ました。
テントから出てきた者に少女が笑いかける。
「おはようございます。昨日は大変でしたね」
少女はそう言って焚き火で焼いていたハムの串を手渡した。

150 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 08:43:15 0
空気を読む、空気に従うってことを知らん連中だな

151 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 09:11:32 O
空気を作れるなら別によくね?
元々空気を読むことも従うことも作ることもできない狼がグダグダにした流れ
それを流して進めるのは空気を読めるってコトやん

152 名前: ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/21(火) 11:10:10 0
みんな戦闘の後なんで、ここでドンパチやるつもりはなかったんですが・・・うーん。
・・・あ、逃げろって言った以上、正しい展開なのか?

えっと、とりあえず>>149の人は今後もその少女役で参加してくれるんでしょうか。
それなら、コテと人物紹介も入れたほうがいいと思うのですが。
もしそうでない場合、一人の判断で展開進めてしまっていいのか迷うんですが・・・どうしよう。

153 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 12:06:32 0
>>149は名前欄が入っていないので当然スルーで
>>148はちゃんと流れ自体は読んでるから気にしなくていいよ
次のキャラハンが>>148の次にどう動くか次第

154 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 12:26:37 O
話し合いは避難所で

155 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 13:14:33 O
名無し投下排除するなよ
おいしいと思えば拾えばいいし、まずけりゃ拾わなくていい
そんだけ
自分が拾ったから他人まで巻き込むなんて心配しなくていい
実は残っていたてか、別方向に逃げたとか好きにやればいいだけだから

156 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 16:15:46 O
雑談所でどうぞ!

157 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 16:25:41 0
>149をどうするかで、このスレの方向性と真価が決まる!
「善意っぽいけどストーリーを壊すっぽい投下」をどうさばくか
対応能力の見せどころだ

158 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 17:15:17 O
>>157
結局は善意か壊すかどっちもわかってないんじゃん
こゆときはスレ主の判断だな

159 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 17:23:53 O
つまりガチムチ判断か
奴なら拾うだろうな

160 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/21(火) 20:27:26 0
「・・・グガゥガァァアアアッ!!!!」
その時、銀色の別のウェアウルフが飛び出し、こちらに向かっていたウルフに
飛び掛った。
「シモン殿!ありがとう!
おかしい…、狼は集団が基本だ。なぜお互い単独で…」

シモンの元にページが駆け寄った。
獣人同士を組み付かせているうちにこちらは体勢を立て直す方針となった。

「…………見極めろ、"心眼" 」
ページが魔術のようなものをシモンらにかける
(ん…なんだこれは…夜目が…?)

明らかに視力が獣のそれのように人間離れしたものになった。
これで闇の中でのアドバンテージは互角になったはずである。
ミアがウェアウルフたちを見据えながら様子を見ている。
恐らく、4人全員がその範囲に入ったはずだ。つまり…

「バカが!冥土の土産にこの名を持って行け!
 『クレイジー・ウルフ』のレオナルド・シュバリッツ・ダルディンの名を!」
先ほど攻撃を受けた方のウェアウルフが、銀色のウェアウルフに勢い良く反撃した。
かなり高くジャンプしている。こちらは相手ではないということか?

(こりゃ、”チャンス”に違えねぇ)
幸運にも全員が熟睡しておらず、起きて意識もはっきりしているようだ。
「おい、ここは一旦退却だ!ずらかるぞ!大事なモン忘れんなよ!」

他の3人に足並みをなるべく揃えながら、猛スピードでひた走る。
真夜中なのに獣道がはっきりと見え、彼らの速度が緩むことはなかった。
ある程度小屋から離れたところまで来たシモンは、足を止め、
ウェアウルフたちから離れたことを確認する
「おいミア!さっきのはもう使えねぇか?ここからあの崖の洞窟まで移動しよう」



161 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 11:37:07 0
>「おい、ここは一旦退却だ!ずらかるぞ!大事なモン忘れんなよ!」
シモンが下した判断は“退却”。
ミアも賛成だった。避けられるものなら余計な体力を浪費する必要はない。
最低限の食料を懐に詰め込み、蟻の巣穴すら見分けられるようになった夜道を駆けだした。



――――――――――――………………



パチン

脂の匂いと薪の爆ぜる音に目を開けば、鼻先に黴臭い岩壁があった。
寝返りをうつ。たき火を囲って朝食をとっている仲間たちが目に入る。メニューはハムだろうか。

確認したところで再び瞼が落ちる。――眠い。
ミアは朝が弱かった。

夢の世界に片足を粘らせていると、ふいに昨晩の記憶が蘇る。
ミアは提案に応じて“飛翔”を使った。
無事に辿り着いた洞窟は、ほぼ垂直に近い崖の上、ウルフの脚力をもってしても容易には辿り着けない高さにある。
のんきな朝食風景を見てわかる通り、あれから特に問題も無く時が経ったのであろう。

ミアにはその経過はよくわからない。
着くなり「疲れた。お休み」の一言で寝入り、見張りもせずに朝を迎えたためだ。
悪いとは思うが、一人分の質量を増してそれなりの高度と最大速度で術を行使したのは堪えたのだ――きっとページ辺りは察してくれたに違いない。

(…さすがに、そろそろ)
「……………………おはよう」
欠伸をかみ殺して肉を手に取り、口に運ぶ。昨晩よりは食欲があった。

入口に目をやると、柔らかい朝日に照らされて昨晩抜けてきた森が見えた。
森はある地点から切り取られたように消失している。
その先には、壮観を通り越して馬鹿げたと思える程に巨大な魔法陣――魔術都市ヴァフティア。
結界都市、と言った方が通りが良いかもしれない。

咀嚼を終え、町を指さして、
「昼までには着く。
着いたら“月”のことも調べられる。あそこはその類の資料が豊富。
エルシアの言う教団の本拠地とかも、もしかしたら。人が集まる場所だから。
…どちらも下手に嗅ぎ回ったら、居場所を教えることになるかもしれないけど」

162 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 22:49:58 0
>>148
>>160

がちっ

鉄の錠前を閉じたような音をたて、狼の顎が空を噛む。
そのままの勢いでレオナルドの横をかすめると、地面に爪を立てる。
低く唸り声を上げつつ、何かを見定めるかのように、レオナルドを睨み据えた。
後ろで何人かの人間が走り去っても、そちらを見ようともしない。

「バカが!冥土の土産にこの名を持って行け!
 『クレイジー・ウルフ』のレオナルド・シュバリッツ・ダルディンの名を!」
「・・・・・・・・・」

言葉を理解しているのかしていないのか。理性があるのかどうか。
ただ聞こえてはいる証拠に、ゆらゆらと空を掃いていた尻尾が、それを聞いてぴたりと止まった。
直後に頭上を襲った一撃を大きく飛び下がってかわすと、
跳ね返るように今度は前へ飛び、レオナルドに向かって体当たりする。
二匹はもつれ合って茂みの中に落ちた。後は、壮絶な殴り合い。
互いに相手に牙を突き立てる瞬間を狙い、爪を振るう。
お互いの咆哮が、梢を震わせていつまでも続いた―――


―――――――― ・・・・・・ … … …


翌朝。
喧しい小鳥の囀りに薄眼を開けると、ギルバートは小屋のテーブルの上で起き上がった。

「・・・なんだ、こりゃ」

答える声はない。小屋の暖炉にはすっかり炭になった薪が僅かに色付いている。
他に椅子は倒れ床には物が散らばり、まるで台風が過ぎ去ったあとのようだ。

「頭痛ってぇ・・・つーかなんにも覚えてねぇ。昨日森に入って、
 小屋を見つけて・・・・・・おいおい俺、何したんだ?
 しこたま酔い喰らって盗賊の皆さんとタップダンスでも踊ったか?
 ・・・・・・全裸で?」

そこでやっとその重大な一事に気がつき、散らばっていた衣類を身につけ始める。
胸の長い切り傷に気がついたのはその時だった。固まった血がこびりついている。
銀器で傷付けられでもしない限り、こんな傷が残るはずはないのだが。
いや、切られたというよりもむしろこれは、何か引っ掛かれたような―――

「・・・ま、いい。生きてりゃ万事オッケー、明日があるさ、っと」

余り深く考えずにシャツのボタンを留めた。何より頭痛が酷くて考えるのが億劫だ。
幸い小屋の中には食料他、役立ちそうな物が置き捨てられており、
その中でこの辺りの地図を見つけ、広げて周辺を確認してみる。

「お、デカイ街。やっぱ俺の勘は最高だな!・・・方向的に、7割弱ぐらいで。
 ・・・あのまま森スルーしてたら谷に出てたな・・・やれやれ。
 えーと。・・・ヴァフティア、ね」

次に向かうべき街の名を口に出して呟くと、もう一度だけ小屋の中を見回し、
肩をすくめると、ギルバートは日がたっぷりと差す外へと出て行った。

163 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/24(金) 22:20:38 0

――――今日の朝日は、黒かった。

《起きて―――》

ソレは、閉じた目蓋の向こうで揺れている。

《―――レノ、起きて》

オレの眠りを妨げる奴は太陽だろうと、ぶっ飛ばす――
――ただし、あと半刻ほど惰眠を貪った後で必ずだ。

《……ねえ。レノったら。
 今日は図書塔に連れて行ってくれる約束でしょう?
 本の返却期限が過ぎてしまうわ》

"約束"には心当たりがあったが、うっとおしいコトこの上ない。
トランクの開閉音。薄い紙束らしきモノが二日酔いで痛む頭に乗った。
手探りで取り上げて、寝惚け眼で確認する。札束の可能性もゼロではない。

「"宇宙的生命力の充填秘法"……?」

《知らないの? カノン・コヨウの代表作よ》

「……何処の異世界人だ、そいつは」

《星の向こう側から来たんですって。ロマンティックだわ》

「小説家志望の愛読書にはイマイチじゃないか、セラ?」

《いいのよ。私がなりたいのは娯楽小説家だもの》

「とにかく、昼に連れてってやるから、もう一眠り――」

『――昼の仕込みの時間だ。店仕舞いだぜ腹話術師』

呆れ声の主は、イスハンドゥラの旦那らしきナイスガイだ。
悪魔人形が、何かを思い付いた風に嗤った―――そんな気がした。

《…私、人見知りを直そうと思うわ》

「―――どうした、急に。
 お前を酔わせた覚えは無いんだが」

《お店のカウンターで、おしゃべりをするの。
 具体的は、昨夜レノがイスハンドゥラを――》

「――釣りは要らないぜ、大将!」

金貨で適当に数万を置いて屋台を飛び出した。
薄暗い店内から直射日光の下へ。軽い眩暈がする。
往来の石畳を灼く太陽は、さっぱり黒くなどなかった。

164 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/24(金) 22:21:39 0

「……本しか置いてないトコに、どうしてこれだけ人間が集まる?」

―――ヴァフティア市立リバベリオン大図書塔。
研究者の生命線であり、市民の娯楽施設でもあり、
出版業者の上取引先であり、一般書店の仇敵だった。

《人々の精神が、暗闇の時代を生きるための糧を求めているからだわ》

古文書/魔術書、専門書/技術書、地図/資料集、
娯楽書、著者不明の手記から果てはポルノまで。
本に分類されるモノなら何でも揃う場所だったし、
逆に言えば、他に存在する物品は椅子と机だけだ。

「活字が読める様な光の側で生きてる連中が、か?」

地上八階/地下四階からなるその規模は、何かの冗談としか思えない。
400年前の建設当時には閲覧室だった空間も本棚で塞がれており、
後年に"閲覧棟"が併設され、地上各階から渡り廊下で繋がれた。
アカデミー同様、これで"市立"と言うのだから呆れるしかない。
機能性一辺倒の空間構造に平面的な魔術装飾を施すという、
ヴァフティアン・バロック建築様式の 象徴的存在でもある。
そのせいか、観光名所としての人気も非常に高い。

―――そして、受付嬢のレベルも高かった。


『日付と署名を、こちらの返却カードに』

「今夜お前を貸し出してもらうには、ドコに書けばいい?」

『パーソナルチェックに500万くらいかしら』

「50万に負けてくれないか?」

『……今夜一晩だけで?』

「毎晩でもいい」

『赤髪の黒服って…あなたまさか―――"人形師レノ"?』

「いや、人違いだ。オレは賭博師さ」

『…それなら5000万でもパスよ』

「理由を訊いても?」

『私、今の仕事が気に入ってるの』

「オレは、お前が気に入った」

『本棚の角に頭ぶつけて死んじゃえば?』

「どうせなら美女の膝枕で永眠したいもんだ」

『お昼寝なら地下第四層でどうぞ』

「屋台のカウンターよりは、寝心地が良いんだろうな」

『もちろん―――"信仰心の墓所"って呼ばれてるくらいよ』

165 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/24(金) 22:23:32 0
【資料検索先の候補を置いといた。
 気が向いた時にでも拾ってくれ。
 無用な時は街の背景のお供だ。

 ―――Good Luck.】

166 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/25(土) 19:14:35 O
「バカが!冥土の土産にこの名を持って行け!
 『クレイジー・ウルフ』のレオナルド・シュバリッツ・ダルディンの名を!」

こちらは自分を抜いて三人、いかに魔獣とてこちらが有利、そう思っていた
違った自ら『狂った狼』と称するそれは 威圧感、狂気、殺気、全て想像を絶するものだった
逃げなければ、たとえ勝っても無事ではすまない 皆に退却を促そうとしたときだ

「今のうちです、早くこちらへ!」

唐突に、突然に、少女がページの腕を掴んでいた

こんな所でなにをやっている!? 君こそ早く逃げろ!!
そう言うつもりだった。しかし喉から声がでない それどころか どこにそんな力があるのかページは少女の引っ張る力に押されていた。
シモン殿この子は一体…? 今度はシモンに問い質す。しかしやはり声はでない
少女に引かれながら共に脱出しようとする仲間を見て、 あ 結果オーライかと 思う
彼が覚えているのはここまでだ




「ーーッ!」

突然の覚醒で目を覚ます。どうやら無事に朝を迎えたようだ。
辺りを見回す。朝食をとる三人の姿が見えた。 あの少女の姿は、ない
ミアはこれからを話す。当然というか行き先は同じだ

「行程については概ね了解だが…、二つほど聞いて良いか
最近異常に活発化している「魔」の存在、何か心当たりはないか?」

ゲート争奪戦の当事者、おそらく「魔」に一番近い者に聞く。確実だが彼女の触れたくないところを直接抉るようで
我ながら汚い事を言うと、自己嫌悪する

「あと、逃げ出すときに一緒にいた女の子…、今はいないようだがあれは一体誰なんだ?」

167 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/26(日) 12:16:03 0
エルシア「…よっ、おはようミア」
目覚めたミアに気付き、手に焼けたハムを持ったまま挨拶をする
一足先に目覚めたエルシアが、用意していた食料を調理したのだ

エルシア「ヴァフティア…か
       噂には聞いてたが、妙ちくりんな町だな」
巨大な魔法陣の中に乱立する大小不思議な形の様々な建物
その異質さは、赤騎士が封印されていた古代遺跡の意匠に通じるものがあった
町を見た瞬間、初めて来たのではない懐かしさのような感覚が背中から広がった

エルシア「そりゃ本当か!?
       だったら善は急げ、やることは一つだ
       体を休めたら直ぐにでも出発しようぜ」
ミアのセリフを聞き、右手の拳を固く握ってヴァフティアの方を見る
エルシアの目的は、とある人物に会うことでもあった

168 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:29:50 0
その日の朝、一番遅く起きたのはシモンだった。
先日まで殆ど寝ていなかったため、ここにきて睡眠欲が一気に解放されたのだろう。
「体を休めたら直ぐにでも出発しようぜ」
急かすエルシアに眠たい目を擦りながら、シモンは朝食も取らずに外出の支度をした。

魔術都市ヴァフティア…言わずと知れた国内有数規模の城塞都市である。
強固な外壁に似合わず中は華やかで、リバベリオン大図書塔などの文化施設が多数ある。
”終焉の月”に関係する人間も多くいるに違いない、とシモンは直感した。
それに、最悪あそこなら仕事に困ることもあるまい。

(しかし…ここからが問題だな)
獣道を抜け、大きな街道に出たシモンたちは、道を往来する人々の向こうに
厄介なものを発見した。城門も前にある検問所である。

発見されたリスクを考えれば、忍び込もうなどと考えるよりもやはり正面から行くしかない。
シモンは他の三人に先立って先頭に立った。
「俺が先に行く。お前らも後から適当に入ってくれ」
”帯刀は見えるところに一本のみで、他は全て持ち込めません”と書いてある。
シモンは複数の武器を持っており、明らかに”アウト”である。

槍兵、弓兵…そして魔法兵と、総勢20人はいると思われる。
「次の方〜、こちらへどうぞ」
杖を持った若い女の魔法兵二人がシモンを案内した。
「へいへい」
他の地域ではそう見られない挑発的な服装に思わずシモンはゴクリと唾を飲む。

「あっ!危険物です」
シモンの体が光る度に武器が取り上げられていく。ナイフ、チャクラム、吹き矢…
「…」
金属探知の魔法は容赦なくシモンの武器を発見していき、魔法兵はついに呆れたような表情になった。
「お〜いおい、後ろがつかえてるぜ。じゃあ俺がお前さんのチェックを…」
「きゃあ!この変態、さっさとあっちに行って!」
シモンが魔法兵の尻を触ると、彼の腹に強烈な杖の一撃が入った。
「ぐぅおぉぉぉ…!」
城門の前まで腹を押さえながら走ると、シモンはニヤリとした。
メインウェポン「コカトリス」の紐は体に、刃は頭のレザーヘルムの内側に
隠してあった。検問には兜の鉄板程度にしか思われなかっただろう。
毒類も全て無事だ。ナイフも一番使えるものは腰に差さっている。

(しかし、予想以上の練度…生半可な奴だったら今ので倒れてただろうよ)
再び腹を押さえながら、シモンは嬉々として夢の舞台、ヴァフティアに踏み込んだ。

169 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/27(月) 17:35:02 0
「おい!検問は男女別で行う規則だろう!」
シモンの検問が終わった後、黒衣のウィザードが叫びながら走り寄る。
本来、女の検問はウィッチが、男の検問はウィザードが行わなければならない。
「申し訳ございません、上級魔法兵殿…
 担当のウィザードは現在、市内巡回のシフトが入っておりまして…」
黒衣は上級魔法兵の証で、それ以下の下級魔法兵に対し命令権を持っている。
シモンを検問したウィッチが申し訳なさそうに項垂れる。

「仕方が無い…戻ってくるまで私も手伝おう
 おまえたち、男は私の方へ、女は彼女の方へ行け」
黒衣は、小さなステッキを取り出すと金属探知魔法を準備した。

170 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/27(月) 17:37:33 0
ヴァフティアは現在、いつもの華やかさとは対照的に物々しい雰囲気のただ中にある。
城内の至る所で巡回や検問などの警備態勢が強化されている。
『月』の活動が活発化しているためと思われる。

171 名前: ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/27(月) 22:17:39 0
【某月某日の"ヴァフティアン・ラッシュ"店内コルクボード】


【魂の祭祀・ラウル・ラジーノ祭せまる!】
/・前夜祭は混雑が予想されますので、係員の指示に従ってください。
 ・神殿広場の露天営業、仮装パレード参加には事前の届出が必要です。
 
 ※ラウル・ラジーノ祭は、皆様の寄付金で成り立っています。
 1口2000となっております。ぜひ、お近くの窓口までお立ち寄りください。
 (10口以上の御協力で送り花火観覧席優先チケットを進呈)
 
 ラウル・ラジーノ祭実行委員会/


【注意喚起と捜査協力のお願い】
/先日未明、人狼によるものと思われる人的被害が発生、現在調査中です
 "終焉の月"の活動が活性化したとの未確認情報も入って来ています
 現在、我々は市街の安全確保の為に警備体制を強化しています
 不便を掛けるかもしれませんが、理解と協力をいただきたい
 市民一人ひとりの防犯意識は脅威を防ぐ大きな力です
 各自、警戒を怠らぬよう気を付けて下さい 
  
 目撃情報を募集しています
 どんな些細な事でも構いません
 我々は全力をもって市民の皆さんの信頼に応えます
 
 ヴァフティア市街守備隊長プリメラ・イーリス/


【賞金首】
/逃亡中の元・神殿騎士
 生死不問 
 報奨金400,000
 
 神殿騎士修道会/


【スタッフ急募!】
/あなたも検問所で働いてみませんか?
 住み良い街を守りましょう。
 明るく楽しい職場です。 
 
 [業務]城塞門検問アシスタント/簡単な魔導具操作
 [資格]15〜30才位迄までの男女/要Fランク(簡易査定有)
 [時間/給与]応相談/日払い可
 [待遇]
 制服貸与。
 現役アカデミー生優遇。
 スタッフが城塞門まで送迎します。
 未経験者大歓迎!!
 Cランク上級ウィザードが親切丁寧に指導します。

 ヴァフティア警備部 求人担当/


【伝言】 
/愛してるよエディちゃん!
 ラッシュの女神に首ったけだー
 エディちゃんの料理なら何(以下、破り取られており全文不明)/

172 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/27(月) 22:21:21 0
噂話、求人、求職、冒険者、傭兵、ごろつき、ロクデナシ、
稀に仕事帰りのカタギ、市民広報課の役人、巡回警備兵、
酔っ払い、喧嘩、ナンパ、食い逃げ、流しの音楽屋―――
普段ならそういった連中で混沌としている筈の店内は、
今日に限って異様な静けさを主たる客としていた。


賭博師は憤慨した。

「……ジェイク、オレは"いつもの"って言ったぜ」

『今日は、それがウチの"ロック"だ』

「この水割りが、か?」

『冷導庫がイカれて氷が作れないんだ、黙って飲め』

腕組みをして言い切ったのは、三十代も半ばを越えた髭の店主――
――"ジェイクの言葉は絶対"、それが暗黙にして唯一のルールだった。
少なくとも此処、酒場"ヴァフティアン・ラッシュ"に屯する者達にとっては。

「いつまでも旧世代の骨董品を使ってるからだ」

『何処かの博打屋がツケを払ってくれれば、買い換えられるんだがな』

「道理で今日は他の連中が寄り付かない訳だ。こんなもん――」

カウンターに片手を付き、軽業師の様に飛び越えた。

『――おいレノ、何やってる!』

「何って、見てわからねえのか? このポンコツを蹴ってる」

制止を耳に入れた上で業務用の大型冷導庫に踵で蹴りを加える。
頭を抱えたジェイクの心中の煩悶は、打撃の騒音に集約されていた。
天井の換気扇が、ソレを賭博師の銜え煙草の紫煙と共に店外へ排出する。

『だから俺が聞いてるのは、トドメ刺す必要があるのかって事だ!』

「うるせえな……蹴れば直るだろ」

蹴る。蹴る。蹴る――――やがて、何かが爆ぜる様な異音がした。
内部で、老朽化していた魔導回路が魔力石振動子と噛み合った音だ。
開いた扉から赤頭と碧眼が覗き込む。冷却オーブが正常に作動している。

『本当に直しちまいやがった―――どんなペテンを使った?』

「…さて、な。それより技術提供料は、次の一杯奢りでいいぜ」

『……ああ。それなら"こないだ飲んだ分"を奢りだった事にしよう』


――――再び、何かを蹴っ飛ばした様な騒音が店内に響いた。

173 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/28(火) 12:48:31 0
>>166
>「行程については概ね了解だが…、二つほど聞いて良いか
>最近異常に活発化している「魔」の存在、何か心当たりはないか?」

「…争奪戦の開始による魔の異常発生で見過ごされていたけど。
戦いの少し前。私の住んでいた町の周辺ではそれまで生息していなかったはずの魔物が既に何度か目撃されていた。

不運、で済まされていた。
けど私はそう思わない。おそらく何かの兆候。

…そしてそれは、今と似ている。


このタイミングで、七年間接触のなかった終焉の月に襲われた。

ゲートと言われた私の中の“何か”が特性を示すには、時期があるのかもしれない。
時期を迎えて特性を示したから、組織は私の所在を捉えたのかもしれない。

もし再び組織に捕らえられたら、また何かが起こる。
今度は止められる保証はない。争奪戦を終わらせたのは――」

すらすらと語っていたところを、一瞬言いよどむ。
終わらせたのは、禁呪の発動による大破壊――言葉を適当に濁した。

「その――もう使えない手段だから」

>「あと、逃げ出すときに一緒にいた女の子…、今はいないようだがあれは一体誰なんだ?」
「………………」

ミアは思考を中断した。おもむろにハムの串を地面に刺して身を乗り出し、ページの額に自分の額を当てる。
(…熱は無い)
面食らう相手を置いてけぼりにして額を離し、

「……そんなもの、見ていないわ」
霊魂、魔物、精霊…人ならぬ存在が見えてしまう者は確かにいる。
それは祝福を得ている証かもしれないし、親和性が高い血なのかもしれない――等々、書物で聞きかじったことを説明しておく。
最も助けてもらったようであるから、そう警戒する必要は無いのだろうが。


174 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/28(火) 13:20:13 0
(久しぶりだわ。小さい頃の修学訪問以来)
こう物々しい雰囲気であるのは何故だろうか。
昔はあのような検問は無かった。ミアは背の杖の装飾と両腕にはめた幅広の銀の腕輪くらいしか金属製品を持たなかったので、そう困りはしなかったが。

しかし重い空気が漂うのは、警備など公的な部分だけであるようだ。
旅人はともかく、住人は大通りの様子を見る限り浮かれているようにすら思える。
不思議に思ったが、見かけた掲示板にあった“祭”の文字で合点がいった。

「好都合。人が集まれば情報も集まる。
町で聞き込む、大図書館に行く、守備隊に情報提供を求める――まずはどうす」

“る”、まで言い切れず、大通りの人混みに押されて尻餅をついた。
踏まれる前に道の脇に避難する。…こういった混雑は苦手だった。
ため息をつく。身長の低い彼女では視界を確保するだけで一苦労だ。

175 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/07/28(火) 14:24:48 O
【町に入った描写をし忘れました。おかげで凄く唐突な場転に…】

176 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/28(火) 23:57:54 0
「目的は?」
「観光。かの有名な"魔術師の塔"を一目見たくってね」
「魔法に縁があるようには見えんがな。危険物探査をする」
「オイオイ、俺が犯罪者に見えるか?男に体触られるなんてぞっとしねぇぜ」
「規則だ」
「はいはい規則規則っと。どうせアンタら、女と寝る時もマニュアルを読むんだろ?」
「その指輪は何だ?」
「よく出来てるだろ?婚約指輪だよ」
「四つ全部がか?」
「モテる男は辛いよなぁ」
「ちっ。さっさと行け、二度と出てこなくていいぞ」





概ね問題なく検問を通過したギルバートは、ひとまず喉を潤す事にした。
"居酒屋「ラウルの恵み」亭"と書かれた看板の下をくぐり、カウンターに腰を落ち着ける。

「マスター、コキュートスのストレートをダブルだ」
「おいおい、あんた女にでもフラれたか?」

マスターの呆れたような声を聞き流し、強いウイスキーを軽く呷る。
店内は閑散としているが、外の喧騒が伝わってあまり静かではない。

「しかし、昼間から騒がしいもんだな。何かあるのかい?」
「神殿の記念祭が近いからな。物騒な噂が多いってのによ・・・」

年季が皺となって顔に刻まれたマスターは渋い顔をする。
大方、祭りとは名ばかりで多分に布教用のイベント、それにただ騒ぎたい連中が乗っているのだろう。

「で、何が物騒だって?」
「何でも、この近くで狼男に旅人が殺されたんだとよ」

―――狼、男?

177 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00:01:11 0
無意識の内に火の付いていないパイプを噛んでいた。
マスターがマッチを買う金もないのか?と肩をすくめ、向こうの客の方へ行く。
好都合だ、今は考える時間がほしい。

可能性は二つだ。俺か、それとも別の"仲間"か?
事件はいつの事だ?素早くカウンター横の掲示板に眼を走らせる。
市民に注意を喚起する張り紙があった。・・・死体が見つかったのは、10日前。
ならば・・・俺ではない。森の中で記憶が飛んだのはつい昨日だ。

ギルバートは、普段は狼と化しても理性が吹き飛ぶ訳ではない。
きちんと記憶も残る。皮肉にも、それがかつて実験に弄ばれて得た恩恵だった。
と言って、錬金術師共がギルバートのためにそのような手を加えた訳ではない。
奴らはただ、「自分が狂う様を知り眺めるモノ」を見たかったのだ。悪趣味な物だ。
結果的に、それが実現する前に逃げおおせたが。

・・・とにかく、ギルバートが気がかりだったのはあの不可解な記憶の空白だった。
少しほっとすると同時に、再度嫌な頭痛を覚える。
思い出したくないことを思い出そうとしている―――
それは何か、触れたくない生傷に触れずにはいられないような。

「・・・胸クソ悪ぃ・・・」

吐き出すように呟くと、乱暴に立ち上がる。
空になったグラスに銀貨を二枚放り込むと、酒場のドアを押して通りへ出る。
と、その時。

178 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00:03:29 0
>>174

―――ドン!

通りに出た途端、腰の辺りが何か柔らかいものを突き飛ばした。
女性―――少女だ。白いローブに身を包み、小柄な体にいささか不釣合いな杖を背負っている。
咄嗟に、ぐらりと傾く少女の背中の杖を掴み、流石にこの形は悪いともう一方の手で肩をつかんで支えた。

「っと。悪い、お嬢さん。怪我はねェかい?はは、飲みすぎたかね、俺も」

軽口を叩きつつ謝り、ついでに少女の頭をポンポンと叩いた所で、ソレを見た。
少女の、眼。無表情で、感情は読み取れない。
が、その奥。瞳に映る自分の、そのさらに奥。
色の無い光が、色の無い輝きを発するような―――説明し難い感覚。

知っている。この眼を知っている。いや、正確にはこの眼ではない。
だが、同じ眼だ。彼女と―――彼女は―――

「・・・・・・ゲーティ、ア・・・・・・?」

自分で呟いた声で我に返った。気がつくと、小柄な少女の肩を掴んだまま硬直していた。
頭が痛い。割れそうだ。考えたくない。考えるな。いや思い出せ。"彼女"の事を―――

「・・・悪いな・・・お嬢さん・・・飲み過ぎ、だ・・・」

ようやくそれだけを呟くと、引きつった笑みを浮かべ、くるりと背を向ける。
何とか一歩を踏み出した瞬間、割れそうな頭が、一つの事実を思い出していた。
今まで背を向け、忘れ続けていた記憶の一片。
硬く固く縛った記憶の紐の一端。

あの時、"ゲーティア"(門)と呼ばれた彼女が死んだ事―――


血塗れで地に倒れ、死に掛けている自分の目の前で、自らの命を絶った事を。

179 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/29(水) 05:37:54 0
ヴァフティアン・ラッシュ店内のコルクボード前にて。
「40万か」
グラス片手につぶやいた。
中身は水同然の酒。
マスターが早く出て行けと言っているのは気のせいだろうか。
(へいへい。長居は無用ということですね)
お勘定をすませ、外に出ることにした。
向かう場所はもちろん。神殿の前だ。


180 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 21:02:36 0
ヴァフティア市庁舎、守備隊長室。
重厚な扉をノックする音と共に、若い男が入ってきた。
「失礼します、プリメラ隊長!・・・っ!!」
室内に入った男が何かを言おうとして思わず言葉に詰まったのは、室内にいた人間が守備隊長だけでなかったからだった。
暫しの間の後、本来出る言葉の代わりの言葉が用意された。
「・・・っあ、失礼しました。顧問占星術師殿も一緒でしたか。」
その言葉に部屋の奥のソファーに腰掛けていたローブの男が小さく頭を下げる。
数ヶ月前に市長の肝いりで顧問占星術師として登用されたその男。
特に目立った行動は無いが、それなりに市政の相談役としている。
フードを目深に被っており顔は見えないが、その特徴的な巨躯がその人物だと知らしめている。

隊長に促され、思い出したように若い男が用意していた言葉を連ねる。
「手配の少女と思しき者を検問の魔法兵が発見したとの報告がありました。
指示通りそのまま通過させ泳がせていますが・・・失礼ですが、本当に【終焉の月】の教主なのでしょうか?
私も密かに見ましたがとてもそうには・・・。」
そう言いながら小袋を差し出した。
ミアが市内に入ったとき、人込みに紛れて盗賊ギルドの者に掏らしたのだった。
所持品からも、若い男の印象からもとても【終焉の月】の教主とは思えないのは無理もない。

「あーそれがな・・・
顧問占星術師殿にも協力を頂き情報を精査した結果、その少女は何の関係もないと判ったところなんだ。
各街道の検問は終了、市内に戻って良いと伝えろ。
小袋は取得物として守備隊詰め所預かり。問い合わせに来たら返してやれ。」
バツが悪そうに若い男に返す。
その言葉を聞き若い男の怪訝そうな表情が晴れた。
【終焉の月】の教主潜入情報により張り詰めていた緊張感から解放された瞬間だった。
若い男は一礼をし、守備隊長室を出る。

その姿を見送りたっぷりと10の呼吸を過ぎた時、守備隊長が顧問占星術師に向かい口を開く。
「・これで・・・よかったのか?」
「結構。誠に重畳。」
上擦った声、顔に浮かび上がる脂汗。
恐れと緊張の中、漸く搾り出した言葉に応える顧問占星術師の声は対照的に重厚であった。
有無を言わさぬ重さと深さ。
一歩も動けぬ守備隊長を余所に、ゆっくりと立ち上がりその目深に被ったフードを取り払う。

剃髪した頭、隻眼、巨躯。
そこには終焉の月幹部であるディーバダッタが立っていた。
「協力者まではわからぬとも、【門】がこの街に入ったことが判れば十分。
くくくく・・・蝕の刻は迫っておるな・・・!」
堪えきれぬ笑みを漏らすディーバダッタにプリメラは恐る恐る尋ねる。
「お、お前達はこのヴィフティアで何をしようというのだ・・・!」
その問いにディーバダッタは暫しの沈黙の後、応える。
「祭り、だ!
安心しなされ。そなたの妻子は丁重にお預かりしておる。そなたももう二度と魂を切り裂かれる事もない。
くはははは!汝の信仰には慈悲を以って応えようとも!」

「ど、どこへ行くのだ?」
部屋を出ようとするディーバダッタにプリメラは何とか問いかける。
その声色には恐怖と不安、そして安堵が入り混じっている。
「くっくっく、なあに、【門】に惹かれ様々なモノも市内に入っておる様子。
暫し市中を巡らせてもらうだけだ。」

魔術都市ヴァフティアの中枢に終焉の月が蠢き、水面下でその野望は進む。
まるで目に見えぬ巨大なうねりに引き込まれるかのように、運命の糸は収束していく。

181 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 22:01:56 0
エルシア「………」
一番最後にウィザードに金属探知魔法をかけられるエルシア
金属類などショーテルと盾以外に持ち合わせてはいない
リュックサックの中に入っているものも、食糧ぐらいのものだ
検査の最中、偶然上級魔法兵の指先がエルシアの胸に当たった
むにゅっと柔らかい感触がした

上級魔法兵「何だこれは?
         おまえ、胸に何を入れている?」
エルシア「うわわっ!」
上級魔法兵がエルシアの胸の柔らかいものを鷲掴みにする
すると、本人は顔を真っ赤にさせて黄色い悲鳴を上げた

エルシア「こ、これは肉まんだよ!
       いつもここに入れてるんだ!
       ツレには秘密で頼む、な?」
上級魔法兵「ふむ…
         まあ、そういうことにしておいてやろう」
自分の胸を抱きながら、フードを深く被ってその場を後にする
そそくさとパーティーの後に続いた

エルシア(危なかった…
       こいつらには俺が女だってことを知られるわけにゃいかねえからな…)

エルシア「みんな、ちょっとすまねえ
       俺はここからちょっと単独行動がとりたい
       夕方に大図書館で合流しようぜ、んじゃ!」
そう言うと、手を振りながら面々と分かれつつ、一人通りを歩き始める
先に目的を果たしたいと思っているのだ
懐から小さな紙切れを取り出し、それに描かれた地図を基に目的地へと向かう
華やかな新市街中央通りとは対照的に、暗い雰囲気に包まれた旧市街中央通り
それを更に横道に逸れ、更に暗い雰囲気を漂わせる薄汚い横丁に足を踏み入れる

エルシア「ここが…ディルブッデ様が幼い時分を過ごされた場所…
       ガラマホフ横丁…」
閉鎖された商店ばかりが空しく立ち並び、行き場を失くした者たちが屯すのみである
横丁は奥深く、そこをどんどん進んでゆく
好機と不審の眼差しが、エルシアに一斉に注がれるが気にしてはいない
そのような眼で見られることには慣れている

182 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 22:32:14 0
???「よく来たな、ラシエ
      いや、今はエルシアだったかな?
      おまえが来るのは分かっていたよ」
エルシア「ディルブッデ様でございましょうか!?」
フードを取り、少女のような笑顔で声に対して振り返るエルシア
しかし、そこに居たのはディルブッデではなく、非常に恰幅のいい男であった
穏やかな笑顔をエルシアに向けている

エルシア「ラゼオンのおっちゃん!
       久しぶりじゃねえか!」
ラゼオン「はは、相変わらずだね
       師匠のとこで最後におまえの姿を見たのはもう3年も前のことだよ
       いやあ、立派になったもんだ」
この男、名をラゼオン・バッシと言う
エルシアの叔父レンダーの一番弟子で、現在はヴァフティア最高の魔法鍛冶屋である
「ガラマモフの鍛冶の魔術師」という異名もあり、ヴァフティアの人間で知らぬ者は居ない

エルシア「おっちゃん、ディルブッデ様は居ねえのか?
       俺、聞きたいことが山ほどあるんだ!」
ラゼオン「そうか、おまえ、何も聞いていないのか…」
エルシア「どういうことだ?」
ラゼオン「ディルブッデ様は亡くなられたよ
       『月』の動向を探るべく、大図書館に潜入したままご遺体となって…」
エルシア「えっ!?」
エルシアはかつてないほどに驚愕した
命を救ってくれた大恩人であり、『月』の動向を知る数少ない重要人物を失ったからである
ラゼオンの話によれば、ヴァフティアに戻ったディルブッデは『月』の動向を単身探っていた
ところが、二年ほど前に大図書館に潜入したまま連絡が途絶え、その後遺体で発見される
遺体はズタズタに引き裂かれ、二目と見られない様であったという
ラゼオン自身も店を潜伏先として貸していたため命を狙われ、早々に畳んで横丁に避難したらしい

ラゼオン「この一帯はヴァフティアの一部でありながら見捨てられた無法地帯…
       領主様に頼んで私は戸籍上死亡したことにしてもらい、ここに隠れていたんだ」
エルシア「ディルブッデ様…おっちゃん…
       すまねえ、俺のために…」
ラゼオン「おまえが謝ることじゃないさ
       全ては自分勝手な理想のために世界を混乱に陥れている『月』のせいだよ」
エルシア「俺、これから一体どうすりゃいいんだ?
       背中の紋章がまた赤くなり始めてるんだ!
       このままじゃ近いうちにまた…」
不安げな表情を浮かべ、感情的に沈んでしまうエルシア
しかし、ラゼオンがその肩に手を乗せて語り掛ける


183 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 22:51:46 0
ラゼオン「封印の更新をしてくださるディルブッデ様は確かにもう居ない
       だが、その封印はおまえの気持ち次第で如何様にもできるんだよ」
エルシア「どういうことだよ!?」
ラゼオン「赤騎士は宿主となった者の心の弱さにつけこんでその力を増す
       おまえが気持ちを強く持てば、影響力を抑えることができるのさ
       …おまえはこれから一人で生きていかなくちゃならない
       それが出来るようにならなければ再び多くの命を奪うことにもなりかねない」
エルシア「気持ちを…強く…」
ラゼオンに言われたことを胸に手を当て、よく考える
自分は今まで強く生きてきたつもりだが、運命と自分の中に巣食う存在に恐れ脅えていたのだ
しかし、最早そこから逃げることは叶わない

エルシア「とにかく『やってみよう』って気持ちが大事ってことだろ?
       今まで通り、やってやるぜ!」
ラゼオン「大体そんなところだね
       さ、仲間が待っているんだろう?
       行ってあげなさい」
エルシア「ありがとう!
       おっちゃん、またな!」
ラゼオン「ああ」
笑顔いっぱいに横手を振って、横丁を後にするエルシア
それを寂しげな様子で見送るラゼオン
エルシアが立ち去った後の横丁で、先ほどから漂っていた不穏な気配が増した
途端、穏やかな表情から厳しい表情に変わったラゼオンが振り返って言い放つ

ラゼオン「そこに居るんだろう?
       こそこそ隠れてないで出て来たらどうだね」
???「………」
横丁の影から、黒装束に身を包んだ集団が姿を現す
一人の例外もなく何らかの武器を隠し持っているようだ
ラゼオンも横丁の隅に隠しておいた剣を抜く

ラゼオン「おまえたち、『月』が仕向けた暗殺者だろう?
       随分私の動向を察知するのが遅かったね」
???「貴様は裏切り者ディルブッデに肩を貸した反逆者の一味…
      断じて生かしておくことはできん」
ラゼオン「フン、最早『月』にかつての理想などないくせに何を…」
???「黙れ…」
ラゼオン「ぐあっ!?」
先頭の黒装束がラゼオンの脇腹をすれ違いざまに切り裂いた
太ったお腹の脇腹がパックリ割れ、大量の血が流れ腸が食み出ている

???「………」
ラゼオン「フフ、これで戸籍…通り…死ねるっ…てワケだ…」
???「今すぐに殺しはせん
      知っていることを全て聞きだしてからだ」
ラゼオン「こ、答えると…思うかね?」
???「我らに不可能なことなどない」
ラゼオン「そう…かい…」
???「!!!」
そう言うと、ラゼオンは突如剣を自らの腹に突き立て、大量の血飛沫を撒き散らした
その刹那、ラゼオンの体は爆発を起こし周囲の建物を黒装束の面々ごと吹き飛ばした
その爆音はエルシアの耳にも届くが、エルシアは涙を飲みつつ無言で離れていった

184 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 22:55:27 0
>>180
その後、人気のない道を歩いていたディーバダッタの前に黒装束が姿を見せる

黒装束「ディーバダッタ様、申し訳ございません…
      ラゼオン・バッシの確保に失敗いたしました
      実行部隊にも数名犠牲者が出た模様です
      しかし、これで我らに仇名す者どもの最後の首魁は消えました」

185 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/07/29(水) 23:22:01 0
【すみません、修正ミス。
>180
妻子を預かっている→子供を預かっている。に脳内修正お願いします。
昨日の時点では、市長室で市長と話しているシーンだったので台詞が髭のオッサンのようにもなってしまっています。

それから亀ですが>130
ナチュラルに読み違えていました。指摘感謝です。】

186 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/07/30(木) 01:43:48 0

「―――ハンターは行っちまったみたいだぜ? "40万"」

薄暗い店内の奥、ロクな換気もされずに紫煙が漂っている一角。
黒スーツに赤髪の魔術師は他人様のシガーケースに腕を伸ばす。

『……俺の品格を反映出来てねえ二つ名だな、そいつは』

壁際の長椅子の上で身を起こし、略奪を阻止する無精髭の無頼漢。
素行不良、傍若無人、放蕩無頼の元・神殿騎士、洗礼名は"ハーツェ"

「最初から存在しないモノを、一体どうやって反映すればいい?
 賞金首としての"品格"に食い付かれてたのは間違いないが」

『俺の似顔絵に釘付けか。それなら"40万"も悪くねえ。
 銀の女神よ、乙女を惑わせた罪なる美徳を赦し給え』

「笑えないジョークだ。コクハ嬢には同情する」

『お前、あの嬢ちゃんと知り合いか?』

「オレの客だ」

『どっちの方の?』

「真っ当な商売の方だ」

『そっちのジョークは笑わせてくれるじゃねえか。
 お互い無縁だろうぜ、真っ当な生き方も……死に方もだ。
 この街で凌げなくなるツケも、先に俺の所へ回って来ただけだ』

「……流れの牧師にでもなろうってのか、ハーツェ」

『そいつは違うぜ、レノ。他の何かになるんじゃない――』

本人曰く"退職金代わり"の特殊鋼のバスタードソードを肩に担いで、
修道会追放から十日、賞金首になってから三日の聖職者は街を出る。

『――"シド"に戻るってだけさ』

聖職者は最後の一本を銜えて、立ち上がった。
魔術師が指を鳴らして、その煙草に点火する。

「あんたと居ると酒が不味くなる。さっさと行っちまえ似非聖職者。
 ――――Good Luck.(あばよ)」

『明日からはお前の戯言を聞かずに済む。清々するぜ詐欺魔術師。
 ――――Blessing of Mithrie.(達者でな)』

187 名前: ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/07/31(金) 04:11:36 O
進行早っ!
すみません…、今日でテスト終わるので夜か明日には

188 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 07:47:30 0
テストとか書くなよ糞ガキ
糞忙しい社会人紳士もいるってのに空気を読めよ

189 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/31(金) 09:53:04 0
「すみません。賞金首について詳しい話を聞かせてほしいですが」
神殿の受付に座っているやる気なさそうなおばさんに声をかけた。
「賞金首?もしかして、こいつのことかい?」
写真付きのアルバム?のようなものを手渡された。
名前はハーツェ・・・
赤い髪にハンサムそうな顔立ち。
どこかで見たことがある。
「へ・・・」
写真に写っている顔が信じられなかった。
「お嬢ちゃん・・・知ってるのかい?」
「知ってるも何も。3日前に人形を売りつけられそうになりました」
おばさんの行動は素早かった。
受付の脇の置いてある電話機のようなものをとり、例のあんちゃんが見つかったよ。


それから数分後。
そう服を身にまとった男の人が出てきた。
「ハーツェを見たという話を詳しく聞かせてもらえますか?」
事の顛末を話した。
内容はそれほど大差ない。
時刻を加えた程度だ。
「では、わかりました。その例の男は高い戦闘能力を持ってます。あなたも加わってください」
なかなか賢そうな男だ。
ここまでされては例の男も逃げられまい。
「ええ。わかりました」
二つ返事で了承し、捜索隊に加わることにした。


190 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 14:02:41 0
どれくらいの近代社会の設定なの?
写真や電話機、酒場に壊れやすいグラス。
ソファーとかあるの?
マッチ?黄燐をつかったもの?
コキュートスってそういう地獄の概念をもった神話が語源になりうるの?
マニュアルってものが普通に存在する世界なの?

191 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 16:28:23 0
酒場の酔っ払い「書いてあるんだからあるんだろうよ。細けえ事気にするとハゲちまうぞ」

192 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 19:48:56 O
酒場の酔っ払いB「目安を確認しておく必要はあるだろうがよ。
絶望的に空気を読めないあのコテがメカとか出したらどうすんだ」

193 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/07/31(金) 20:15:03 0
>>190
電話機といっても、普通の電話機ではなく、神殿内限定の電話機です。
説明不足ですみません。

194 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 20:24:22 O
>>193
コテなら名前出せ

195 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [] 投稿日:2009/07/31(金) 20:24:59 0
似顔絵ということをうっかり失念してました。
ちと、遅きにあらずですが、訂正させてもらいます。////

×写真 ○似顔絵



196 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 20:42:38 O
ハーツェの似顔絵見たんだろ?
人形売ったのはレノだろ?
ハーツェとは面識ないんじゃね?

197 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 20:46:05 O
>>193
神殿内限定でも電話機っつったらDQみたいなオールドファンタジー的にはNG
かといって科学のある世界観なら神殿内限定?何それ内線電話?って話になる
お前の目指す基準が全く分からん

198 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 20:55:15 O
>>197
伝声官
短距離水晶念話装置

好きなほう選び

199 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 20:57:19 0
ほい解決
まだ議論したい人はこっち

TRP系スレ総合避難所2
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1243430164/

200 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:00:42 O
>>196
よく読め
レノがハーツェなんだよ

201 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:11:39 O
>>199
レノに言えよ

202 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:16:30 O
>>200
分かりにきい
つかわかんねよ
避難所で町から出るとか言ってたけど、ありゃリタイア宣言かよ

203 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:34:56 0
誰か>>189のレスを日本語に解読してくれないか?


204 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 21:47:35 0
>>198
>>193で電話機と断言してるんだが
機だぞ機

205 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:18:08 0
>200
レノのレスでは
「」括りがレノの台詞
『』括りが他人の台詞
>186ではレノとハーツェの会話じゃないのか?
どこでレノ=ハーツェになったか教えてくれ

206 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:31:00 O
>>205
ヒント:ドッピオ

207 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:36:05 0
どこで二重人格と判断したんだ?
というかレノが解説すれば話は早いからタノム

208 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:37:18 0
>207
まだ分からんのか?コクハでも分かったのに
叙述トリックを本人に説明させるなよ

209 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/07/31(金) 22:53:17 0
>聖職者は最後の一本を銜えて、立ち上がった。
>魔術師が指を鳴らして、その煙草に点火する。

この文章は中々巧い

210 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/08/01(土) 00:25:32 O
我々は無事、魔法都市ヴァフティアにたどり着いた。物々しい検問があったが元より服の金具や小銭程度しか貴金属がなかったページは何の問題もなかった
シモンとエルシアがなにやら一悶着あったようだが、シモンは…、言わずもがなとして エルシアに声をかけようとしたら慌てた様子でどこかへ去ってしまった

「大方、あの妙な曲刀が引っかかったのかな?
…というかシモン殿、何やってるんですか」

呆れながら町を見渡す。なるほどこれはなかなかに巨大な都市だ
あちこちに変わった形の建物や変わった服装の人々が歩いている。道端の露店も魔法が絡んでいるのか一見意味不明な物が多い
なかでも群を抜いて目立つのはここが魔法都市たる町の象徴"魔術師の塔"だ
町の中心に位置するこれは 本来なら有り得ない角度で曲がっている不思議な塔だ
なんでも元々魔道の修行場だったそこで一人の狂った修行者が悪魔を喚びだそうと大儀式を行い、その時の余波で常世の法則が乱れあのように塔がねじ曲がった。
という逸話がある。ちなみにその儀式は結局失敗、修行者は死んだというオチだ

「観光、情報収集、やりたいことはあるが… まずは…」

ポケットを弄るだけででてくる全財産に泣きたくなる、今朝は幸運だったが今日は本当になにかしらで稼がなくては

「とりあえずお二人は、…あれ!?」

振り返るとシモンだけ、ミアの姿がなかった。はぐれたか、一人で行動したか…
だが、仮に後者だとしてもこんなに人が多いと、もしかしたら悪漢がいても…

「ううむ…、余計な世話かもしれんが… まぁいい!
シモン殿! 私はちょっとミア殿を探してくる!」

211 名前: ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/01(土) 14:47:44 0
■ダークファンタジーTRPGスレ 避難所■
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/10454/1249104655/

【専用避難所をでっちあげた。必要に応じて使ってくれ。
 
 ―――Good Luck.(お気軽に)】

212 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 15:10:09 O
>>208
レノ本人も驚くトリックを読み取ったおまいはエスパーを越えたなw

213 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/01(土) 17:44:41 0
>>189
うえ。
ハーツェとレノは別人だったのですが。
どしよ・・・(汗


214 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 18:17:15 O
>>213
避難所で相談して来なよ

215 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sagegt;コクハさん、大丈夫、なんとでもなりますよ。避難所にて] 投稿日:2009/08/01(土) 22:19:52 0
「珍しい人が歩いているな。また俺を泣かせに来たのかい?」
「おお、これは棟梁。此度は誠にご苦労様でした。」
通りを歩く黒衣の巨漢に壮年の男が声をかける。
男に対し、黒衣の巨漢、ディーバダッタは深々と頭を下げる。

ディーバダッタはヴァフティア市顧問占星術師に就任した後、町に配置されている尖塔の移築を提案したのだ。
期限は数ヶ月。
祭りまでに完成させること、として。
規模は大きく、完工が疑問視される計画であったが無事完成させた。
その工事の中心となったのがディーバダッタに声をかけた男なのだ。
「最初は無茶な話しだと思ったが、町の結界出力も上がったって話じゃねえか。
お陰で安心して祭りを迎えられるってもんだ!」
「はっはっは。市内の安全を充実するのも私の仕事ですからな。
もしも七年前のゲート争奪戦が再来しても外部から魔が入ることはありますまい。」
笑い声を交えてやり取りするが、棟梁は知らない。
確かに結界出力は大きく上がり、外部から魔が流入しようとしても防げるだろう。
だが・・・尖塔を移築した事により、ヴィフティアの機能は別の側面を持ってしまったことを。

>184
ディーバダッタか笑い声と共に棟梁に別れを告げ、人気の無い道へと入る。
そこへ現れるは同じような黒装束。
ラゼオンの確保失敗と死亡。そして実行部隊の犠牲者の報告がなされる。
「爆発・・・か。ふんっ。まあよかろう。少年の方に糸はつけてあるな?」
ラゼオンの死には動じなかったディーバダッタだが、その死に様が爆死と聞き眉を潜める。
生きて確保し、拷問にかけるつもりであった。
例え死んだとしても構わない。
終焉の月には死者からも情報を引き出す術があるのだから。
しかし、それは媒体となる頭蓋があってのことだ。
爆発したとなってはもはやなす術がない。

「情報を確実なものにしておきたかったが・・・良かろう。
先に往った者どもとは直ぐ逢える。祭りまでの別れだ。」
エルシアに備考がついている報告に大きく頷き歩き出す。


エルシアはガラマホフ横丁を出てから何者かの視線を感じていた。
それは町の人々からの視線ではない。
はっきりと意思を持った追跡者の視線。
そしてところどころ見え隠れする黒衣の切れ端。

それを巻こうと、あるいは正体を探ろうと移動を繰り返すうちに徐々に人気の無いところへと入っていく。
日も傾きかけた頃、自分が誘導されていた事に気付くだろう。
まだ夕暮れに満たないというにも拘らず、そこは既に夜の帳が落ちたかのように陰が支配した一角。
それはディーバダッタが指示した区画整理の中、意図的に作られた都会の死角であった。

影の中から現われたのは黒衣の巨漢。
フードを取り、その剃髪隻眼の顔をあらわにしたディーバダッタであった。
「君がエルシアだね。私はディーバダッタ。ディルブッデ師の弟子。
『終焉の月』の目は至るところにある。このような接触を許して欲しい。
師の遺言により君を赤き騎士から解放する為に来た。」
薄暗い袋小路に重々しい言葉が響く。

216 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/01(土) 22:56:00 0

『すみません。賞金首について詳しい話を聞かせてほしいですが』

受付を次の担当に引継ぐ直前の時間帯に声を掛けられたモーラは、
疲れた態度を隠す事も、気だるげな居住まいを正す事もしなかった。

『賞金首?もしかして、こいつのことかい?』

一般の賞金稼ぎ向けに情報が限定された"表向きの"資料を手渡した。

『へ・・・』

不意に女剣士が妙な声を上げる。
何かが信じられないという様子だ。

『……ああ、悪いね。そっちは少し前のファイルだよ』

ほぼ同時だった。モーラが自分のミスに気付いたのは。
集中力の欠如が、渡すべきファイルを取り違えさせていた。
現在"公には"賞金が掛けられなくなっている連中のリストだった。

『ハーツェは今週の……どうしたんだい? まさか――』

次に驚愕の表情を浮かべたのは、モーラの方だった。
女剣士が見つめているのは、"あの"レノの画像資料だ。

『――お嬢ちゃん・・・知ってるのかい?』

『知ってるも何も。3日前に人形を売りつけられそうになりました』

『"人形売り"……かい。少し待ってな』

モーラは、迷わず魔導伝話器の受話器を取った。

『クルツさんかい、たったいま情報が入ってね――』

口元の短距離水晶念話発信子が淡い光を纏う。

『――例のあんちゃんが見つかったよ』

それから、たっぷり二呼吸分の時間を置いて―――
モーラの耳元で受信子が組み込まれたオーブが明滅した。

217 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/01(土) 22:59:44 0

『―――お待たせしました。
 現在、正規の担当者は出払っています。
 私は代理のクルツと申します……お見知りおきを』

現れたのは、鋭利な印象と丁寧な物腰が同居した眼鏡の男だ。
女剣士にソファーの席を勧めて、単刀直入に話を切り出した。

『ハーツェを見たという話を詳しく聞かせてもらえますか?』

女剣士の話を聞いて、即座に何かの勘違いであると判った。
ハーツェに関する有益な情報を持ってはいない様だ。
……そう、ハーツェに関しては。

『それでは、貴女が会ったという赤髪に碧眼の商売人に関して、
 覚えている限りの事を教えてください。幾つか質問もあります』

クルツは両手を組んで顎に添えると、本題に入った。

『ビリヤードのキューを携帯していませんでしたか?
 或いは、クリスタル製のカラーボールでもいい……。
 …有名な人形師が作ったアミュレット・ドールを? 
 アンティークのトランクを携えていたのですね…?』

クルツの異端審問改宗局員としての勘が囁く。
間違いない――――"ヴァーミリオン"レノ本人だ。
この瞬間、彼の脳裏で一つのアイディアが繋がった。
当局で身柄を拘束していた神殿騎士逃亡の重要参考人――
――この線でならば、再び賞金を懸けてレノを捜査出来る。

『では、わかりました――』

クルツは中指で眼鏡のブリッジを僅かに押し上げる。
自身の鋭すぎる眼光を隠す為に身に着けたクセだった。

『――改めて仕事を確認しましょう。
 "ハーツェ"並びに"例の男"の確保――』

"ヴァーミリオン"レノの名前は出さない。
一般の賞金稼ぎには、知る必要の無い事だ。

『――その例の男は高い戦闘能力を持ってます。あなたも加わってください』

数名の捜査員などでは無く、捜査隊を編成し事に当たらせるのは、
"ハーツェ"と"ヴァーミリオン"の戦闘力を考慮すれば当然だった。

『ええ。わかりました』

少なくとも、彼女の腕だけは信用に値するとの判断だ。
何らかの契約に従い生きる者か否か、見れば判る。
彼もまた、職務に忠実な人間だったからだ。

218 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/01(土) 23:01:43 0
>>189/>>213 コクハ
 ……辻褄合わせってのは、こうやるのさ。
 だが、オレは基本的にこういった面倒事が嫌いだ。
 だから、こいつはフォローを入れたってわけじゃない。
 たまたま今回は気が向いただけだ。勘違いはしないでくれ。
 避難所を含め、オレのレスを拾うも無視するも、お好きな様に。
 ディーバダッタの話は聞く価値があると思う。気が向いたら避難所に。
 
 ―――Good Luck.】

219 名前:通りすがりのスライム[sage] 投稿日:2009/08/01(土) 23:52:08 0
このツンデレ野郎!

220 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/02(日) 02:16:07 0
エルシアは「夕方に大図書館で」との約束を残して別れて、
その後ミアと一時的にはぐれたが、何とか合流することに成功した。

辛うじて取ることができた安宿は、四人で一部屋の窮屈なところで、
シモンは着くが早く、分解した「武器」を一つに纏めはじめた。
慣れているのだろう。それはほどなくして終わった。
「夕方って言われてもなァ〜、…まだ昼頃ってとこか」
外の喧騒に耳を澄ませれば、確かに昼食どきのようだった。

時間がつぶせて、かつ情報が仕入れられそうな場所――
それは一つぐらいしか思い当たる節がなかった。
特に賞金首の情報…それがシモンにとっての注目の的だった。
「ミア、……金」
ベッドに横になったまま、ミアに声をかける。
以前、シモンがミアと約束した護衛の報酬…”有り金全部と体”のことだった。
シモンの手持ちの金は、この街で生活するにはあまりにも少なかった。
「……」
しかし、ミアは全く答えず、腰掛けたまま何やら考え事をしているようであった。
「チッ… ページ、行くぞ。このあたりにある酒場によ」

ミアが立ち上がるまで少々の時間を要したが、三人は辛うじて昼過ぎには酒場に辿り着いた。
"ヴァフティアン・ラッシュ"
街の名前が付いた、いかにも地元の、といった名前である。
「う〜っ!ハラも減っちまった。酒のついでに昼飯といこうぜ」
まだ痛む腹を押さえながら、シモンたちは酒と料理を注文した。

221 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/08/02(日) 21:48:39 0
>>178
転びそうになった彼女を支えた男性に、ポンポンと無遠慮に頭を撫でられる。
「…………え?」
その瞬間、胸に奇妙な感覚が走った。それは少し暖かく、身を裂かれるように切なく痛い。
>「・・・・・・ゲーティ、ア・・・・・・?」
その名はどこかで聞き覚えがあった。
いつしか心を蝕むようになった喪失感を埋める何かが、指先に触れた気がした。



…………

巨大な目玉。赤い月。赤い地面。誰かの冷たい頬。
『ここまでですね――ご協力を感謝します。
“私”は消えます。“私”がいなければ、教団が道を降臨させるのは不可能。
“私”の再召喚が実行される可能性は否定できませんが……いえ。後処理は“彼女”に任せましょう。
どうか私たちが再会しませんように。――さよなら、ギル』
冷たい刃。見上げた空。赤く染まった――

…………


(――え? 今のは)
「貴方は――」
(私を知っているの?)
>「・・・悪いな・・・お嬢さん・・・飲み過ぎ、だ・・・」
「――!! 待って!」

目を逸らされた瞬間、静止していた時間が動き出す。
青ざめた顔で背を向けた男。追いかけようとするが、
「どいて。通る。邪魔! ――きゃっ」
頭二つ分は背の高い柄の悪い男の集団がちょうど目の前を横切った。
割り込んで無理に通り抜けようとしたが、逆に乱暴に突き飛ばされてしまう。
視界が回転する。今度こそ石畳の上に尻餅をついた。

「…………あ……」
ミアは立ち上がる気力も失い、茫然と呟いた。男の姿は既に雑踏に消えていた。
(何か思い出せるかと思ったのに)
“月”に捕らえられ、失われていたあの記憶に彼は通じる人物に違いなかった。。
自分を見て呟かれたゲーティアというのは、当時の自分の呼び名だったのだろうか?

数秒、そのまま俯いていたら、肩に何者かの手がかかった。

「……ページ」
ぼーっと見上げる。彼は心配そうにこちらを見つめている。
はぐれた挙げ句に道の真ん中で座り込んでいたのだ、当たり前である。

「…はぐれて、悪かった。
私が忘れている間に知り合いだったかもしれない人に会った。それだけ」
土埃に汚れてしまったローブをはたき、立ち上がる。
ページに他の二名の行き先を伝えられ、ミアはどこか上の空のままその場を後にした。


222 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/08/02(日) 21:49:22 0
>>220
>「う〜っ!ハラも減っちまった。酒のついでに昼飯といこうぜ」

時は経ち、彼女らは"ヴァフティアン・ラッシュ"と呼ばれる酒場にいた。
ミアは隅の席に腰掛け、ぼーっと思索にふけっている。
彼女はもうずっとこのような様子だ。あの通りでの一件以来、ほとんど口をきいた覚えがない。

――巨大な目玉。赤い月。赤い地面。誰かの冷たい頬――あれはいつどこの誰の記憶だったのか。
思い出したはずの光景も言葉も、時が経つにつれ徐々に曖昧なものに戻っていった。

そろそろ頭を切り換えるべきかもしれない。今は中より外に情報を求めるべきだ。
彼女はのろのろと億劫そうに店内を見回した。

>>171
>店内コルクボード
>【注意喚起と捜査協力のお願い】
>/先日未明、人狼によるものと思われる人的被害が発生、現在調査中です
> "終焉の月"の活動が活性化したとの未確認情報も入って来ています

「……動いているようね」
後は、客やマスターに詳細を尋ねるべきか。だがそれは、このような性格の彼女に甚だ不向きの作業である。
「……任せた。苦手なの。情報収集」

223 名前:エルシア ◆dokNpu3MIg [sage] 投稿日:2009/08/02(日) 22:48:52 0
>>215
エルシア「し、しまった!?」
不審な気配から逃げることを繰り返していたエルシア
しかし、気付けば随分と人気のない場所に来てしまっていた
ラゼオンの死による悲しみが判断力を鈍らせていたのだ
誘い込まれたことにようやく気付く
不自然なまでに静寂に包まれた空間は、不気味な雰囲気を醸し出していた
影から現れた黒衣の巨漢に対し身構える

>「君がエルシアだね。私はディーバダッタ。ディルブッデ師の弟子。(ry
「てめえ、あの時のハゲオヤジ!
 ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ!」
素早くショーテルを抜いて盾を構えると、身を屈めていつでも飛びかかれるように準備する
巨漢の顔を見て、直ぐに森で出会ったあの恐ろしい坊主だというのは直ぐに分かった
顔は覚えていないが、放たれる不気味で異様な雰囲気で直ぐに分かる

エルシア「ディルブッデ様は『月』に反目し、『月』に殺されたんだ
       てめえが例えあの方の弟子だとしても、んな遺言残すわけがねえ!
       『月』の一員だってんなら、尚更その言葉信用できねえな!」
フードは被ったまま、鋭い眼光だけをディーバダッタに対し向ける
気迫では負けまいと、必死になって圧倒的な威圧感に対抗しようとする
しかし、この男の戦闘力が人外的であることは森の一件でも分かっている
背中の紋章が衣服越しに赤く輝き、激しく痛み始める

エルシア(こいつはミアの身柄も確保しようとしてやがるはずだ…
       このまま放置は危険…、逃げるのも不可能…
       だったら!)
エルシア「………!」
先手必勝を閃いたエルシアは、一瞬にしてディーバダッタの頭上を飛び越えた
そして、その背後の壁を蹴ると、そのまま背後から飛び掛かった
ショーテルを構え、背後から一気に刺し貫こうと言うのだ

224 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/08/02(日) 23:37:08 0
>223
>「てめえ、あの時のハゲオヤジ!
> ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ!」
油断させるつもりで姿を現したディーバダッタだが、エルシアのこの言葉に驚きを隠しきれなかった。
そして理解した。
森で閃光弾を放ったのがエルシアだったのだ、と。

森ではミアに気を取られていただけでなく、閃光で目をくらまされソの上魔獣の襲来。
様々な事がありすぎたとはいえ、これを見落としていたのは痛かった。
そしてそれ以上に、この思考をせねばならぬ状態が決定的な隙をエルシアに与えたのだ。

易々と頭上を飛び越えられ、背後の壁に三角飛びをされ、ショーテルの一刺しがディーバダッタの背中に迫る。
これだけの隙を突かれても反射的に体が動いたのは百戦の練磨のお陰だろう。
「鋭い一閃だが、武器を誤ったな・・・!」
ディーバダッタは貫かれる刹那、ローブをはためかせて刃の軌道上から身体を躱す。
刃は脇腹をかすりながらローブを貫いた。
が・・・ショーテルの形状ゆえにただ貫くだけでなく、はためかせたローブを巻き込んでしまったのだ。
飛び掛った状態なので途中の軌道修正も利かず、刀身は切り裂いたローブが巻きついてしまっている。

今、エルシアは武器を封じられた状態。
にも拘らず、ディーバダッタは追撃をしなかった。
エリシアを睥睨しながら言葉をかける。
「落ち着きなさい。君が思っておるほど終焉の月は甘い組織ではない。
ディルブッデ師はそのことをよく知っておいでであった!いずれ己が殺される事も!
だから、私に託されたのだ。
師は裏切り追われる。
それに対し、私には深く月に潜り、信頼を勝ち取るように、と・・・!」
脇腹からの血を流れるままに、ディーバダッタは潅頂剣を取り出した。

それは刀身のない柄だけの剣。
しかしディーバダッタが念を込めると、まるでガラスのような透明な刀身が形成される。
「全てはこれを・・・手に入れるため、だ。
この剣を潅頂剣という。思念の刃にて肉体を傷つける事無く相手の精神を、魂を、切り裂く剣。
私はこれを教主様より拝領する為に終焉の月の幹部としてあらゆる事に手を染めた。
全てはディルブッデ師の遺言・・・
エルシア、君の中の赤き騎士を葬り去る為に、だ!」
エルシアに取り憑いた赤き騎士はいわば精神寄生体。
それを傷つける事は即ちエルシアを傷つける事に直結する。
しかし、精神や魂を直接切り裂く潅頂剣ならば話しは別なのだ。

そう説明を付け加えると、ディーバダッタは穏やかに言葉を続ける。
「ディルブッデ師はいつも君を案じておられた。
そして赤き騎士を危ぶまれておられた。
どうか私に師の遺言を果たさせてはくれまいか・・・?」
にっこりと笑いかけるが、その笑顔の裏には恐るべき計算があった。

エルシアを殺すのは簡単だ。
が、ただ単に殺してしまえば赤き騎士も消える、もしくは暴走するだろう。
ディーバダッタが・・・終焉の月が手に入れたいのは赤き騎士。
潅頂剣で斬られれば赤き騎士だけでなくエルシアの魂も切り裂く事になる。
等しく切り裂かれるのであれば、魂の大きい赤き騎士は生き残るのだから・・・!

しかもただ斬るのではなく、斬られる事を甘受させる事によりエルシアの魂の抵抗は低くなる。
こうすることで等しく魂を切り裂かれようともよりエルシアへのダメージは大きくなるのだ。
潅頂剣に人を殺す力はないが、魂を切り裂き昏倒させ、廃人にする力はある。
極小となったエルシアの魂を喰らい尽くし、赤き騎士は蘇るだろう。

薄暗い袋小路でエルシアは甘美な誘いの真意に気付く事ができるのだろうか?

225 名前:レノ ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/03(月) 00:37:32 0

「―――"ソフトシェルクラブのワイン蒸し"だ。
 熱い内に食ってくれ……何せ、冷めると不味い」

態度の悪い店員が、テーブルに大皿を運んで来た。
黒スーツの上に牛革のエプロンを身に着けた男だった。
赤髪に巻いたバンダナが、眼帯の様に左眼を隠している。

『……おい、最後の一言は余計だ!』

「ちっ、聞こえてやがったか」

ナイフで殻を割って、料理を三人分の小皿に取り分け始める。
その器用で淀み無い動作の最後に仕込まれた、一つのトリック。
少女の前にある皿の下にだけ、伝票と異なるカードを差してある。



……

賭博師はカウンターの影に戻ると、
バンダナとエプロンを脱ぎ捨てた。
ジェイクが背中に声を掛けてくる。

『珍しいな、昔の女か?』

「―――七年前に振られた女さ」

『七年前、か――』

ジェイクは、食事を始めようとしている少女の容姿を先ず眺め、
続いて、帰り支度を終えようとしている賭博師に判決を下した。

『――犯罪だな、そりゃ』

「……ああ。死刑を喰らった時のコトは、今でも夢に見る。
 そういうわけで今日は、犯罪者らしく裏口から出て行くぜ」

『待て』

「置き土産の昔話は、もう充分しただろ」

『そうじゃない。料理の代金を置いて行け』



……

少女の皿の下に差したのは一見すると空白のカードだが、
魔力を持つ者が手に取ると反応して文字が浮かび上がる。


  "月が動いた
  この街を出ろ

  ヴァーミリオン"

226 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/03(月) 03:41:24 0
日が傾き、名残惜しそうに雲を憂鬱な茜色に染める夕暮れ。
しかし太陽のそんな努力も、この街の癌とも言える入り組んだ裏路地には届かず、
全く人通りのない道々はほとんど夜のような闇に包まれている。

その通りを、ギルバートはアテもなく歩いていた。
足取りは重く、それでいて確かでもなく。
ミアとの邂逅の後、今までずっとそんな足取りで街の中をうろついていたのだった。
あれから頭の中を次々とよぎる、過去の記憶の断片。


―――巨大な目玉。赤い月。自分の血に染まった地面。頬に感じるかすかな温もり。
『・・・どうか私たちが――・・・・・・――さよなら、ギル』
"ゲーティア"・・・守れなかったモノ・・・裏切り・・・誰の・・・友の・・・?
『・・・"門"が死んだ?この役立たず共が・・・!まぁいい・・・永遠に失った訳では――
 また別の――・・・何だ、この男は?生きている――使える――実験に――・・・』

―――俺が許せないのは・・・誰だ?

「待ちな、そこのニイさん。こんなトコを一人で、無用心だぜぇ?」


突然の声に顔を上げると、人影がいくつかギルバートの行く手を塞ぎ、野卑た声を上げた。

「そうそう。でも安心しな、俺達が表通りまで連れて行ってやるよ」
「ヒヒヒ、駄賃は有り金全部でいいぜ。・・・お?よく見りゃ上等な服着てるじゃねーか」
「・・・・・・」

ギルバートは黙ったまま歩みも止めず、歩き過ぎようとする。
一瞬戸惑った様子を見せるゴロツキ共。だがすぐに甲高い声で何かを叫ぶと襲い掛かってきた。
最初に迫ったのは、節くれだった木の棒を持った男。

ため息を一つつき、左足を地に着け、そのまま腰を僅かに捻り、その捻りを右肩から腕に伝える。
次の瞬間、棍棒が振り下ろされるより先に、最小限の動きで作られたアッパーが、
最大限の効果を以って男の顎を打ち抜いていた。蛙の潰れた様な音をたて、男が地に膝をつく。

―――それは、自分が過去に身につけた動き。

ほぼ同時に横合いから突き出されたナイフを、軽く背と首を曲げてかわす。
そのまま男の顔に、大きく回転してきた裏拳がかち合った。
折れた歯が飛び、体がほとんど半回転して地面に落ちる。
コンマ1秒先の動きが、見ずとも感じられる。

―――それは、自分が過去に見につけた技術。

悲鳴に顔を向けると、最後の一人がなぜか体を曲げ、その場に倒れる所だった。
その傍らの闇の中から、吐き出されるように黒衣の男が現れる。

227 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/03(月) 03:43:52 0
「久しぶりだな、兄弟」
「・・・・・・グレイ、か」

すんなりそいつの名前が出てきた事に、軽い驚きを覚える。
そいつは三歩先で立ち止まると、ギルバートに細く鋭い眼を向けた。

「俺はもう"兄弟"じゃない。・・・その俺に今さら何の用だ、グレイ」
「ふむ。こいつを渡したくてね」

呟くと、グレイがゆっくりと左手をポケットから出し、何かを握った手を上げる。
その手に視線を向けたその瞬間だった。頭痛と同時に頭に響く、自分自身の声。
―――右手だ!

グレイの左手がぱっと開く。その中には何もない。
それを理解するより早く、弾かれたように鋭く上半身を捻ると、右頬を冷たい風がかすめた。
間髪いれず、崩れた体勢の中重心を一つ右手に作ると、渾身の力で振り抜く。

静寂。右手に感じる手応え。見ると、拳はグレイの被っていた帽子をふっ飛ばしている。
一方ギルバートの右頬は、グレイの右手に握られた折りたたみナイフに浅く切り裂かれていた。

「フン・・・酷い動きだな。昔のお前と比べたら止まっているみたいだ」
「・・・うるせーぞ」

ギルバートが不機嫌そうに呟くと、グレイはナイフを畳んでしまい、姿勢のいい立ち姿に戻る。
そう・・・こいつは根は適当に出来てるくせに、仕事は型にはめてやらないと気がすまない奴だった。

「今日の用件は三つだ。一つは俺の使命。"組織(ファミリー)"を抜けたお前の"送り狼"」
「けっ、義理深いこった。ありがたくて涙が止まらんね」
「そいつは、真にもって残念ながらたった今失敗した。二つ目は―――ほらよ」

闇の中を飛んできた袋をキャッチする。重い。
中を覗くと、無数の金貨が鈍く光った。

「"親父さん"からの小遣いだ」
「・・・ガキじゃあるまいし」
「嫌なら退職金という事にしておけ。親父さんの心尽くしだ。
 ・・・なあ、ギル。いい加減過去に引きずられるのは止めたらどうだ」

228 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/03(月) 03:46:00 0
「・・・・・・」
「お前は十分に苦しんだし、十分すぎる代償を払った。
 忘れてもいい。思い出しても構わん。だが、もう引きずるのはよせ」

―――俺の為に言ってくれている事は理解している。

「その金で新しい暮らしを始めろ。新たに愛せる女を探せ。
 ・・・・・・いい加減、自分を許すことを知るんだ」

―――だが、アンタは知らない・・・彼女の事・・・奴の裏切りの事・・・

「それが、三つ目の用事か。・・・・・・すまない」
「おい、やめろ。お前の礼なんざ、気持ち悪くて鳥肌が立つぜ、ギル」
「馬鹿、お前じゃねぇ。親父さんに言ったんだ」
「フン」

そこで初めてグレイが笑った。つられて、ギルバートも唇をゆがめる。
頬が痛い。触れると、傷口から血が流れていた。
確か奴の折りたたみナイフは、どこぞの大教会の聖十字架から削りだしたとかいう洗礼銀器だ。
もちろん人狼が食らえば、場所によってはすぐ命に関わる。

「・・・ちっ。鈍ってる奴に、本気でやりやがってお前は」
「そりゃお互い様だぜ、"魔狼"よ。
 ・・・さて、仕事は終わりだ。あばよ、ギル」

そう言って、グレイは背を向けた。
言われて右手に目を落とす。指にはめた4つの"フェンリア"は全て半回転され、
白銀の凶器と化していた。いつやったのか、記憶にも無い。

「ああ、あばよ。・・・・・・"兄弟"」

呟き、首に下げた銀のロケットを握る。火がついているかのように熱く感じた。

「・・・俺は、赦せない。裏切った"奴"も、守り通せなかった自分も―――・・・
 どうすれば赦せる?"奴"を探して殺せば赦せるのか?・・・ならば、俺も、殺すのか?
 ――どうすればいい?ゲーティア・・・いや、・・・―――」

小さく呟いた"彼女"の名前は、吹き抜ける風にかき消された。

229 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/03(月) 20:09:06 0
「マスター、ハーツェという男を見なかった?」
「何か頼みな」
「ん〜、カシスオレンジを一つ」
マスターが魔法回路で構成された冷蔵庫からボトルを2つとりだした。
一つはオレンジ色の液体が入ったボトル。
もう一つは赤茶色の透明な液体が入ったボトルだ。
「ハーツェという男なら数時間前に見たよ」
しゃべりながらグラスに液体を注ぎ、慣れた手つきで混ぜている。
「行き先とはわかる?」
「さあね、そこまでは知らねえよ」
目の前で氷が入ったカクテルグラスにグラスの中の液体が注がれた。
そのグラスに手を伸ばし、口をつけた。
ほのかにだけどアルコールの味がする。
「これでもだめ?」
カクテルグラスを机の上に置き、金貨を一枚置いた。
「シドに戻るとか何とか言ってたぜ」
「ありがとー」
くるりとターンし、店のほうに歩きだした。


白いローブをまとった小柄の少女が座っている。
両方の手首には腕輪が一つ。
黒い服の女がわきを通り過ぎた。
机の立てかけてある杖が倒れた。
「おっと。ごめんよ」
黒い服の女は杖を拾い上げ、立てかけた。
その瞬間。
あいまみえることはないだろうと思われた再び会いまみえた。

230 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 20:16:06 O
>>229
捜索隊はどーしたよ
なんか前と繋がってないな

231 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/05(水) 23:39:47 0
>「……任せた。苦手なの。情報収集」
ミアがぼんやりとした目で店内のコルクボードを眺めながら、そう言った。
「そんなものがあったのか…おっ」
目に入ったのは賞金首の情報…これだけの報酬があればしばらくは遊んで暮らせる。
とりあえず神殿にいかないと情報は得られなそうだが。
(…最悪、検問にでも応募してみるかね)

そんな事を考えていると、香ばしい匂いとともに料理が運ばれてきた。
>「―――"ソフトシェルクラブのワイン蒸し"だ。
 熱い内に食ってくれ……何せ、冷めると不味い」
やたらと洒落た舌周りで変な服装、態度の悪い店員だ。
「随分と上等なウェイターだな」
口元を歪めながら男を睨む。男はそれに気づいているのかいないのか、
軽快な動作で料理を切り分けはじめた。

男は他の街の店ではあまり見ない伝票を皿の下に差し込んでいるようだったが、
すぐにシモンは別のものに注目していた。
背の高い、黒い服の女がすぐ脇を通りすぎ、ミアの杖を倒したのだった。
>「おっと。ごめんよ」
その時、一瞬女の顔をはっきりと見てしまった。
それは確かに、背格好からしてあの時襲ってきた巨漢と一緒にいた女だった。
(ちっ…!)
シモンはなるべく察されないように、手を腰の近くに置いた。
”武器”をいつでも取り出せるようにしておくためである。

232 名前:ページ ◆p0UoX09u/I [sage] 投稿日:2009/08/07(金) 00:50:51 O
「―――"ソフトシェルクラブのワイン蒸し"だ。
 熱い内に食ってくれ……何せ、冷めると不味い」

ウェイターらしからぬ態度でやって来た料理は、一体誰が金を出すのか不安になるような料理だった …つまり立派だった
物怖じてなかなか手が着けられず困りながらあたりを見渡した。ミアに言われた、と言うのもあるがひとまず情報が欲しい
だと言うのに周りの張り紙には人狼討伐の依頼がほとんどだ。あんなのにもう一回会って戦えだって? 冗談じゃない
何か他に手段はないか、真剣に考えていると

「おっと、ごめんよ」

他の客がミアの杖にぶつかり立てかけた。 それだけであって欲しかった
隠すつもりのない剣、十中八九あの夜襲に関わった人物だろう …相手には見えないようにしているがシモンが武器を持っているのが目で見えた
彼はやる気かもしれないが、こんなところで戦闘なんて避けるべきだ。 …戦わないのが一番だが、彼女自身が『月』の団員なのかは知るべきである
あちらもミアを見入っている。下手に誤魔化さないほうがいいだろう

「……ご縁ですね。とりあえず落ち着きましょう。
ご縁ついでにいいですか? …別にあなたの仕事にケチを付ける訳じゃないが、昨夜の襲撃は単純に金目的ですか?」

233 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/07(金) 19:17:59 0
レザースーツを身につけた男が手を動かすのが見えた。
何をするつもりか。
レザースーツの男はこちらから見てテーブルの後ろの方にいるのでわからない。
よもや、ここでやるつもりか。
やるつもりなら、こちらもやらねばならない。
ここでやるといろいろ面倒なのでできるだけ避けたいところだが・・・
>「……ご縁ですね。とりあえず落ち着きましょう。
>ご縁ついでにいいですか? …別にあなたの仕事にケチを付ける訳じゃないが、昨夜の襲撃は単純に金目的ですか?」
そう思っていたら、白い髪の男が声をかけてきた。
どうやら、杞憂に終わりそうだ。
「ええ。半分正解。金と言えば金ね。でも、それだけじゃないわ。雇われたから襲ったの。もっとも、今は違うけどね」
わざと含みを持たせた言い方をしてみた。
果たして、どう打って出るか。


234 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 03:57:32 0
残りの情報収集は仲間達に任せてしまえば、料理が届くまでは手持ち無沙汰である。
…暇ならコルクボードの内容を写すくらいはしておこうか。
そう思い、取り出した筆記具を動かし始めた時のこと。

>「―――"ソフトシェルクラブのワイン蒸し"だ。
> 熱い内に食ってくれ……何せ、冷めると不味い」

ガタン

無意識に動いた足がテーブルに触れ、派手に音がたった。
「……ごめん」
(まただ……)
この街で二度目の気味の悪い既視感。知らない男のはずなのに。
時が来たということなのだろうか――何か起こっている。

「あの」
料理を切り分ける男に声をかける。
…返事はない。聞こえなかったか、無視されたか。
苛立つよりほっとした。この男は何故か怖い。
心臓がどくどくと音をたてる。早く立ち去って。早く。早く!

厨房へと去る直前、男は何かカードを皿の下にさしこんだ。
恐る恐る手に取ると、例の文字が浮き出てくる。

月の活動が活発化していることは知っている。
だがこの街を出ろとまで言うのは、まさかもう自分たちの居場所は知れているとでもいうのだろうか?
また、それをわざわざ自分たちに教える理由もわからない。
情報提供が露見すれば彼もまた組織の報復を受ける危険があるというのに。

(ヴァーミリオン……いったい)

>「おっと。ごめんよ」
顔を上げ、鬱陶しそうに音の発信源に目を遣る。そしてそのまま目を瞬かせた。
ここまで早く追っ手が来るとは――

>「……ご縁ですね。とりあえず落ち着きましょう。
>ご縁ついでにいいですか? …別にあなたの仕事にケチを付ける訳じゃないが、昨夜の襲撃は単純に金目的ですか?」

>「ええ。半分正解。金と言えば金ね。でも、それだけじゃないわ。雇われたから襲ったの。もっとも、今は違うけどね」

――追っ手ではなかった。
試すような態度をとるこの女性は、少なくともあの怪僧よりは国語で意志疎通できる相手に思えた。

会話に興味がないふりをしてコルクボードの内容を写す作業を再開する。
それに紛れて先ほどの“ヴァーミリオン”の忠告を書き留め、テーブルの陰で仲間に回した。

できることなら無駄な対立は避けたかった。
この女性は今は雇われていないと言ったが、その理由は単なる契約の完了か仲違いか。
また契約を結んだ時、自分や組織について知っていたのか――
事情によってはこちら側に引き入れる余地もあると思うのだが、前述のようにミアは言葉が上手くない。

もどかしく思いながらも、手元から目を外さないまま少しだけ口を開いた。

「……月からは離れた方が身のため。ただの宗教じゃない。
貴方が戻らないのなら、私は争わない」

235 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 19:19:52 0
>「……ご縁ですね。とりあえず落ち着きましょう。
>ご縁ついでにいいですか? …別にあなたの仕事にケチを付ける訳じゃないが、昨夜の襲撃は単純に金目的ですか?」
ページも”敵”に気付いたらしく、こちらが何かの行動に出る前に、牽制したようだ。

>「ええ。半分正解。金と言えば金ね。でも、それだけじゃないわ。雇われたから襲ったの。もっとも、今は違うけどね」
そう言うと女はそそくさと立ち去った。腰に置いていた手を引っ込める。

その瞬間。
女が戻っていったテーブルの向こう側で、強い視線を感じた。
一番奥のテーブル…
そこに座っていた男は、シモンがかつて所属していた暗殺組織の一員…
確かピラルといったはずだ。目が合う。
向かい側には女が座っている。ピラルと思われる男はすぐに女に何かを話すと、
席を立ってカウンターに金を置き、店を出た。
(しまった…)
女が一瞬、こちらを見る。どこかで見た顔だと思ったが、すぐに気が付いた。
先ほどの検問所にいた魔法兵の一人だったのである。
募集基準が比較的緩いがために、このような事が起こりうる訳なのだろう。

視線をミアの方に戻すと、何やら驚いたような顔をして、すぐにメモをとると、
こちらにまわしてきた。
”月が動いた この街を出ろ とウェイターからの伝言”
現にもう、動いているんだろう。

>「……月からは離れた方が身のため。ただの宗教じゃない。
>貴方が戻らないのなら、私は争わない」
ミアがその言葉を口にするや否や、シモンは他の二人に席を立たせ、
ウェイターの方を一瞥すると、なけなしの金を払い、店を出た。

外に出て一歩。
まるでシモンたちが出るのを”わざと”待っていたかのように、
街角にいたフードの人物がこちらを見ていた。
数秒が経過すると何事もなかったかのように人ごみの中に消えていく。
その姿はシモンを襲い、街を略奪したあの一団の誰かと見ていいだろう。
付けられていたのだ。

「気を抜くな。どこに敵が潜んでいるか分からねぇからな」
一瞬、ガクガクと体が震えるのをこらえ、宿に戻って武器の”仕込み”を行うと、
夕暮れの中、エルシアの待つ大図書館へと急いだ。

236 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:10:10 0
「あっづぅ……」

既に日が落ちようとしているにも関わらず酷く蒸した。
額から玉のように浮く汗は、馬車の車輪が道端の小石を踏んづける度に派手に飛び散って視界を横切る。

寝心地は悪くない。揺れは敷き詰められた梱包用の藁が吸収してくれる。
レクスト=リフレクティアは荷台の藁の中で本日幾度目かの気伸びをしてそのまま後ろに倒れこんだ。

「あーくそ、サービスの悪い客車だな。冷却術式ぐらいかけとけよ全く」

精悍な顔立ちをした若者だった。短く刈り込んだ頭髪は艶のない黒。
長身といっていいのか微妙な体躯は一見すると細身だが無駄のない筋肉で覆われている。
"戦う為の理想的な"肉の付き方である。高度な訓練を受けた人間の身体だった。

「悪いな、荷台に乗るのは荷と相場が決まってる。"お荷物"にかけてやる情はねぇなぁ」

レクストの悪態に皮肉で返すのは御者台で馬型ゴーレムに鞭をくれる恰幅のいい中年男性。
この馬車の主であり、帝都と魔術都市ヴァフティアを繋ぐキャラバンの団長である。

「暑いなら自分でなんとかしろよ、きょうび冷却術なんてプライマリ(初等生)でも使えるぜ。従士様よぉ?」

団長が視線を前から外さず言う。レクストはばつが悪そうに俯いた。

「俺達ゃ便利屋じゃねぇっての。お国を護る従士様だぜ?エリートよエリート。そんな庶民臭い魔法なんざ使えるかよ」

「その庶民を護る人間の言い草じゃあねぇよなあ」

帝都王立従士隊の一員であるレクストは戦闘に特化しているが故に一般の魔法をほとんど使えない。
魔法陣やオーブの力を借りれば不可能ではないが、それだけの設備を用意するには懐具合があまりに厳しい。

団長の苦笑を聞き流し、レクストは逃げるように荷台の中を這いずって幌から顔を出した。
夕方の風が頬を叩き、汗を飛ばして熱を奪っていく。橙色の陽光は彼の頭を幾分か伸ばして影に落とした。

見渡す限りの蒼絨毯、背の低い草ばかりが茂る草原真っ只中を連成馬車が行く。

遠くに見える微かな明かりは魔術都市ヴァフティア。この辺りでは有数の巨大都市である。
原色の魔力灯の光は遠目にも届き、西から来る闇色の侵食に抗っていた。

溜息が出る。

「はーぁ、なんだってヴァフティアくんだりまで派遣なんだよ……『魔』とか人狼とか帝都でも似たようなもんだろ」

「左遷だな」

「うっせ」

「はは、図星か。しかしまぁ、従士『隊』なのに一人でこんなとこまで左遷たぁ、一体何やらかしたんだお前さん」

顔を幌の中へ引っ込めるとたちまちじっとりと汗ばむ。
肌にひっつくのも構わず藁の中に顔を埋めると、一足先に埋没していた得物に額がぶつかった。

「それについては諸説あるだけどよ、俺ってこんなに若い癖して将来有望なエリート公務官じゃん?帝都の教導院出てるし。ぶっちゃけ妬みじゃね?」

「自分で言うことじゃないがな。ああ、言ってくれる他人もいないのか――はは、可哀相に」

「ど、同情しやがったなこの野朗!上から目線やめろよおっさん偉いな!よく考えたら偉いなアンタ!」



【いきなりの参加ですが、よろしくお願いします】

237 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:57:50 O
テンプレ

238 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:01:18 0
>>237
おk、まだ続くから最後に張らせていただく

239 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:26:05 0
「さぁて、もう半刻としないうちに着くぞ」

先導のゴーレムがスピードを上げた。帝都からヴァフティアまでは草原を横断するだけの一本道だが、
森を避けるために迂回るルートをとっている。故に目的地さえ見えればあとは一直線に進むだけだ。

「あんたかい?帝都から左遷されてきたっていう気の毒な従士さんは」

横付けしてきた単機ゴーレムに乗った護衛が馬車越しに声をかけてきた。高速で流れる大気の中否が応にも胴間声だ。

「ああ、いかにも俺が悪逆非道の帝府政官の手にかかり閑職へと追いやられた不屈のエリート、レクスト=リフレクティアさ。
 この顔と名前はきっちり覚えとけよ、そのうち金貨の表に刻まれることになるだろうから。友達にも自慢できるぜ!」

「――はは、可哀相に」

「に、二度目だぞ!微妙に上から目線で同情すんの流行ってるのかこのキャラバンは!」

レクストは頭を抱え、二秒ほど唸ったのち護衛に続きを促した。

「ここのところ帝都にいる家内とも連絡とってなかったもんでよ。あっちの景気はどうだい?」

「どこも似たようなもんさ、帝都だって例外じゃあない。『魔』の流出のせいで怪異や魔物がやたらに多くなってよ。
 この春から従士隊も増員したし近衛団のほうでフリーの退魔師を大量に雇ったって話だ。人の出入りは相変わらずだよ」

『月』の影響もある。いくら守備を強めたところで内部から湧き出るようにその勢力を増やすカルト教団には従士隊もほとほと手を焼いていた。
対抗するために傭兵や退魔師を強化しても、強化した人間が敵になれば塩を送ることに他ならない。

「噂じゃあ『眼』を提供するために眼帯してる奴が怪しいってんで、街ん中でも誰が敵かわかんねぇからな。疑心暗鬼でピリピリしてる」

帝府は必死に情報統制を敢行しているが、緘口令といえど人の口に戸は立てられない。疑惑が疑念を呼び疑念が猜疑を呼ぶ悪意の坩堝。
既に田舎へ疎開する人々も出始めている。流入する傭兵と流出する国民で、帝都は今てんやわんやの状態だった。

「悪ふざけした連中がみんなで眼帯つけて歩いたりな。そりゃ枯れ尾花が幽霊に見えるってもんよ」

「へぇ、そいつは芳しくねぇな。近いうちにおれも家内とガキ連れて田舎に引っ込むか――」

言いながら護衛は離れていく。そのとき、閃光が瞬き視界を白が覆った。
轟音。
気が付けば護衛がゴーレムの背中に突っ伏していた。眼球をぐるりと回転させ、白眼を向いて倒れている。

「失神術――!!敵襲だ!」

一部始終を見ていた団長が叫ぶ。目線の先に併走するゴーレムの集団がいた。

「よーお、景気はどうだ団長さん。繁盛してると嬉しいなぁ、俺達の稼ぎが増えるもんよぉ!」

卵の腐ったような笑い声を重ねるのは草原を往復するキャラバンを狙った盗賊団である。
一瞬で護衛を無力化したあたり手練だ。命を奪わなかったのは泳がせてまた"収穫"するためか。

「知恵つけてやがるなぁ、最近の賊は。その向上心もっと別のほうに向けろよおまえら!」

「おい従士」

「なんだよおっさん、様をつけろよ様を」

「いいから聞け。お前さん従士名乗るからには強いんだろ、護れよ俺達を」

「えー、めんどくせぇなぁ。でも報酬次第じゃ頑張っちゃうかもよ俺」

「馬車代タダにヴァフティアで一晩奢る。そうだな、ついでに――――荷台に冷却魔術かけてやるよ」

240 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:15:56 0
「よっしゃ交渉せいりーつ!――っておわっ!?」

勢い良く幌から立ち上がったレクストの頭上を魔導弾が掠めた。
軽くスウェーしてそれを躱すと、そのままブリッジして藁の中から自分の得物を発掘した。

精霊樹材と魔導金属で鋳造されたそれは、従士隊正式採用の銃剣である。引き金を引くと使用者の魔力を以って魔導弾を生成射出する、
この界隈では普通に流通しているタイプの携行型魔導砲だ。特筆すべきは剣部分、本来小型のナイフが着剣されている箇所は、
巨大な刃に置き換わっていた。まるで等寸の出刃包丁を据えつけたかのようなブレードは、砲身と一体化している。

マーズ牛の皮で出来たシースから刃を抜き放つと、ミスリル鋼製の銀剣は外気に含まれた魔力に反応して小さく鳴動した。
刻印された従士としてのレクストの個人認識指標が、美しきこの刃が帝都を護るための懐剣であることを如実に示している。

「『バイオネット』……カッコイイだろ?俺の相棒!羨ましいか?羨ましいよな!」

再び立ち上がったレクストの上半身に放たれた魔導弾が集中する。
しかし弾が届く瞬間にはもう彼の姿はそこになかった。風を切り裂く音だけが流れる大気を震わせる。

「消えやがった!隠蔽術式か?転移魔術か!?どこにいやがる!!」

「欲しいか?欲しいよな!――でもあ〜〜っげないっ!!!」

鈍い音が響いた。魔導弾を撃った隊列の端にいた賊の一人が昏倒してゴーレムに突っ伏した。
レクストがそこにいた。銃把を握って銃床でフルスイング。傍で撃っていたもう一人も同じように後頭部を打ち抜かれて気絶した。

「分かったッ!こいつは『隠蔽』でも『転移』でもねェェーッ!!『純粋な速さ』ッ!『向かい風』に紛れて移動してるだけなんだァァーーッ!!」

「だがタネが割れればどうということはねェッ!『ただ速い』だけなら囲んでボコりゃいいだけよォォーー!!」

既に消えている。離れた場所で併走する賊の乗ってきた馬車に降り立って御者に一撃くれながらレクストは分析する。

「ふむ、ざっと十五人くらいか。ご丁寧に横一列に並んでくれちゃって、帝都の射的ゲーム『赤玉』を思いだすぜぇ。
 俺あんまし上手くないんだよなぁ、アレ。ちょっと憂さ晴らすわ」

幌から出てくるレクストを一斉射撃で迎え撃つために賊の砲撃手たちは横一列に展開していた。
故に離れた位置から俯瞰するレクストにとっては並んだ的以外のなにものでもなかった。

「まさか野郎ッ!そこまで考えて俺達を誘導したってのかッ!おいはやく戻r「もう遅いッ!」

レクストは既に射撃体勢に入っていた。奪った馬車の上に膝をつき、ブレードを畳んで砲身を露出させる。
真っ直ぐ賊たちを捉えた砲塔の内部では、既に砲撃のための魔導弾生成射出術式が組みあがっていた。

「エリート従士様こと俺にちょっかいかけた時点でおまえらの勝ち得る『時』は既にッ!!」

射撃する。

「『時間切れ』なんだよォォーーーーッッ!!!」

発射された魔導弾の連なりはもはや一本の光条と化し、なぎ払うように賊たちへと叩き込まれる。
多様な属性をもつ魔導弾のうち賊が使用したものと同じ『失神』の効果を内包した魔力の束はそのまま賊へと返って意識を刈り取っていく。

光が晴れて、キャラバンを襲撃した賊は一人残らずゴーレムの上で昏倒していた。
意思なき下僕である騎馬ゴーレムはおかまいなしに疾走しているが、このままキャラバンと併走していれば
ヴァフティアまで着いてくる。自ら主を警護詰め所まで乗せていくことになるだろう。

「すげぇなお前さん、一人で賊を全滅させちまいやがった」

「どうよ、これがエリートの力ってもんよ!凄いだろ?なぁ凄いだろ?もっと俺を褒めろよ!称えろよ!跪けよ!靴とか舐めろよ!」

腐っても帝都の従士である。本隊には一騎当千を地で行く傑物もいるのだが、それは心の奥底にしまっておいて気づけばヴァフティアへと到着した。


241 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:19:59 0

名前:レクスト=リフレクティア
年齢:19
性別:男
種族:人間
体型:178cm

服装:帝都王立従士隊正式採用の魔力装甲。軽機動マジカルアーマー

能力:従士なので武闘派。格闘から魔法まで"けっこう"こなせる
   ただし魔法及び技能は戦闘のみそれも攻撃特化なので極めて単一能

所持品:バイオネット(銃剣付き携行型魔導砲。剣部分が砲身と融合した巨大なもの)

簡易説明:帝都からヴァフティアに派遣されてきた従士。
     王立教導院の出身で所謂キャリア従士なのでエリート意識が強い。
     ヴァフティアで起こっている人狼被害や魔の流出の防衛力補填として任命された。
     訓練された従士なので基本なんでもできる。頭は悪い。あと友達いない
     左遷された理由には『月』が関係してるらしい


【テンプレが遅れましたが、どうぞよろしくお願いします】

242 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 18:04:02 O
嫌いじゃないんだが、ちょっと毛色が違い過ぎないか?

243 名前:名無しになりきれ[saga] 投稿日:2009/08/11(火) 19:57:49 0
所々ジョジョ臭がするけどまあ許容範囲じゃね?
むしろ砲のある世界観なのかが気になる。旧式っぽいし構造も違うっぽいからいいか

244 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/14(金) 07:28:05 0
>「……月からは離れた方が身のため。ただの宗教じゃない。
>貴方が戻らないのなら、私は争わない」
そのつもりはないわ。そう答えようとしたところ・・・3人とも立ち上がりどこかへ行ってしまった。
「いったいぜんたい。何?」
あまりに突然すぎる。
何か不愉快な事でもしたのだろうか。
そう思ったが、あまりにも突然すぎる。
そもそも、思い当たる節がない。
「まあ、いっかー」
足早に店の外へ向かい、店の外へ出たところで、ハーツェという男について情報を得たことをほかの仲間に伝えたのであった。


245 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 08:07:18 0
>>244
名前を忘れてました。


246 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 14:17:59 0
「・・・ぃよっし、俺・復活!」

ばちーんと両頬を平手でひっぱたくと、勢いをつけて身を起こす。
夜明け前の空気はまだ肌寒いものの、日中の日差しで暖められた屋根はまだ温もりを残していた。
裏路地での一事の後、ギルバートは結局あれからも宿も取らず、
軒並みの中でも広く高いこの建物の屋根の上に寝転がって腐っていたのだった。

「――ま、何にせよ・・・今も昔も俺は俺だ。俺でいる他無ェよ。悟ったね、これは」

新興宗教でも開くかねー、と下らない事を呟きつつ、しかし考える。
あのローブの少女・・・"ゲーティア"と同じ眼を持っていた嬢ちゃん。
あの子を探して、見つけたとする。アテは無くもない。
彼女とぶつかったのは城門の近くだった。ならばこれから出る所か入ってきた所かだが、
多少くたびれた様子もあった気がする。おそらく着いたばかりだったのだろう。
宿を片っ端からあたれば手がかりは掴めるはずだ。
・・・それからどうする?何を話すつもりだ?

もしもしお嬢さん。失礼ですがどこかで会った事はありませんかね?
いやいやその眼に見覚えがありましてね?
いやぁきれいな瞳だ君の瞳にカンp・・・

「・・・アホかッッ! って痛ッ」

247 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 14:20:50 0
馬鹿馬鹿しいシミュレートを中断し、再度その場にひっくり返る。
勢い余って頭をぶつけ、清々しい音が鳴る。近くにとまっていたカラスが寝ぼけた声を上げた。

「くそっ。・・・大体あの嬢ちゃん何歳だ?14・・・せいぜい16か?
 ・・・捕まるぞ、俺。間違いなく。しかもこの上なく不名誉な罪状で」

ふと頬に手をやると、生暖かい血の感触があった。
さっきから何だかんだと騒いだせいで、また傷が開いたようだ。

「ちっ、グレイの奴。次に会ったらニンニクをこんがり焼いてダース単位で食わせてやる」

そりゃ吸血鬼だ、とツッコミをが入るワケもなく、再度カラスが馬鹿にしたように鳴くだけだった。

「・・・ま、いいや、面倒臭ぇ。もう全部見つけてから考える。
 仮にとっ捕まっても人体実験よりはマシだろ・・・多分。
 それに女に当たって砕けてもそれは名誉の戦傷だー、ってね」

実際はその前に「分や歳相応の」という言葉が入るのだが、そこは目を瞑っておく。

―――バキッ

頬の傷に布をあてつつ立ち上がった時、足元で不吉な音がした。

「バキ?」

ギッ・・・ ズルズルズズズズうわっやべぇ滑っ 落ちっ うおおおお!!??


・・・ドサッ ガシャーン  フギャー!!!

248 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 14:57:57 0
>224
町の死角たる特異空間。
そして繰り出される赤の騎士とディルブッデというキーワードは確実にエルシアを惑わしていった。
何か引っかかってはいるが、確証はもてない。
信じていいものかどうなのか。
そんなエルシアの心の揺れをディーバダッタは見逃さなかった。

本来ならば完全に信じ込ませてからのほうがよいが、それを待つよりは一気に片をつけることを選んだのだ。
「では、いざ!」
>「ちょ・・・ま・・・」
潅頂剣を振り上げるディーバダッタにエルシアが戸惑いの声を上げるがもはや止まりはしなかった。
一気に振り下ろし、思念の刃はエリシアを一切傷つける事無くその魂を・精神を・・・切り裂いた。

が・・・その手ごたえにディーバダッタは目を丸くしエルシアを凝視した。
しかし当のエルシアは気絶したようにその場に伏して動かない。
本来あるはずのない手ごたえ。
まるで刃のある剣と剣がぶつかり合ったような・・・
手に痺れと共に潅頂剣が崩壊する感触が伝わってくる。
飛び散った思念の刃は周囲を潜み囲んでいた黒衣の者達を貫き倒す。

「我が潅頂剣が・・・!
そうか、貴様か!ディルブッデ!!」
『いかにも、我が弟子よ。そして我を殺せし者よ!』
じっとりと脂汗を垂らしながら呻くディーバダッタの前に現れたのは、エルシアの身体に重なるように顕れたディルブッデだった。

魂や精神をダイレクトに切り裂く潅頂剣。
物理的制約を一切受けないこの刃に対抗しうるのも、魂や精神力そのもの。
幽体となったディルブッデだからこそ、兇刃からエルシアを守れたのだった。

『あの時、私はお前に殺される事を悟っていた。
だからこそ、事前に秘術を施しエルシアを守っていたのだよ。』
ディルブッデの言葉にディーバダッタは全てを悟った。
三年前に殺した際、頭蓋骨を使い様々な情報を引き出した。
が・・・それは巧妙に仕組まれた情報操作だったのだ。
本来視すれば術に抗うすべは無いが、事前に秘術を施し幽体となっていたのであれば別だ。
そして今までエルシアの中で赤の騎士の封印をしつつエルシアを守ってきたのだろう。

「だが!潅頂剣の代償は大きかったようだな!
もはや何も出来まい!」
むき出しの思念同士がぶつかり合ったのだ。
潅頂剣を砕いたディルブッデも無事ではすまなかった。
その色、存在感の薄さにディーバダッタは眼帯を剥ぎ取って立ち上がる。

最強の武器たる潅頂剣を失ったのは確かに痛いが、それでも切り札はあるのだから。

黄金に輝き鳴動するディーバダッタにディルブッデは不適に笑う。
『確かに、私にはもはや殆ど力は残ってはいない。
だが、力が残っていないという事はこういう事でもあるのだよ、我が弟子よ!』
その直後、エルシアの身体が跳ね上がり、ディーバダッタに襲い掛かった。

「ぬ・・・ぬおおおおお!?赤の騎士よ!我を忘れたのかああ!!」
***ズズーーーーーン!!***
ディーバダッタの叫びと共に破壊音が響き渡る。

249 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 14:58:14 0

  *   *   *   *   *   *   *

『うまく行ったようだな・・・エルシア・・・いや・・・ラシエ・・・生きるんだ・・・。』
その言葉をエルシアの耳に残り香のように残し、ディルブッデは姿を消した。

今まで押さえ込んでいた赤の騎士の封印がディルブッデの弱体化により一気に解放されたのだ。
その反動で赤の騎士には何も映りはしなかった。
黄金に輝き始めたデーバダッタすらも・・・
目の前のものを破壊し、衝動が収まった瞬間を狙いディルブッデは残る力全てを使って赤の騎士を再封印した。

意識を取り戻したエルシアが目の当たりにしたものは、大きく陥没した床と、耳に残る【何か】のみ。
時間をかければ何があったかわかるかもしれないが、今はまず、この場を離れることを選んだ。
夕暮れに赤く染まるエルシアの影がどこまでも長く伸びていた。


「く・・・くそ・・・発動直後を狙われるとは・・・死してもどこまでも邪魔をしお・・・て・・・」
一方ディーバダッタは・・・
陥没した床のそこに倒れていた。
したが下水道となっており、赤の騎士の攻撃に耐え切れず崩壊したのだ。
僅かであっても発動していたからこそ死なずにすんだのだが、暫くは動けそうにない。

土砂と瓦礫に埋もれているが、意図的に都市の死角としたこの場所では発見されるのも期待できないだろう。
ディーバダッタの意識は夕闇より深い闇へと沈んでいった。

250 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/18(火) 11:38:49 O
お疲れ
もう終わりでいいよ

251 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/20(木) 00:56:35 O
ええと、確かガチムチ参加は完走フラグ・・・でしたっけ?

252 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/20(木) 02:14:52 0
――魔術都市ヴァフティア。
『結界都市(タリスマン・シティ)』の異名をとるこの街は帝国内にありながらその外周に国境を内包し、諸外国との交流交渉の出島として運営されている。
故にその市政に本国は不可侵であり、さながら"独立政令自治区"としての立場を明確なものとしていた。

つまり、

「――『あらゆる国の指図を受けず、自由にして円滑な貿易を』。これがこの街の基本理念。王立の従士隊が駐屯してないのはそういうワケさ」

歩きながらレクストが述懐する。ブレードを畳んだ『バイオネット』を斜めに背負い、三歩ごとに道端の石を落ち着きなく蹴っている。
隣を歩くのはキャラバンの団長。賊の引渡しを終えた彼らは街で物資の補給と整備を行う為に市街地へ向けて歩を進めていた。

「へぇ、『結界』ってのが護るのは街の中じゃなく外――本国に入れないための『壁』ってわけかね」

自警組織として守備隊を配備してはいるが、あくまで自衛は自衛。国のしがらみから逃れるために、後ろ盾を放棄したというのが正しい。
隣接するのは全て同盟国なので他国からの侵略を受けることはないが、それでも手の行き届かない場所に魔は蔓延る。
そしてそれは、治安の悪さに繋がる。レクスト達を襲った賊もその類だった。

「まぁ悪いことばっかじゃないんだぜ?外からの新しいものは何処より早く手に入るし、流行も最先端だ。飯も美味い」

「やけに詳しいな。ここにくるまでは随分と辟易してた癖してなんだかんだ調べてたのか?」

「俺は当然頭も良いからな。エリート従士様は何でも知ってるのさ」

キャラバンを引いてきたゴーレムを整備所に預け、馬車鉄道に乗って市街に入る。
商業都市としての意味合いも強いこの街では停留所ごとに景色が様変わりする。窓の外では定例祭であるラウル・ラジーノの
準備で大わらわだった。視界を極彩色の看板がいくつも横切り、やぐらの建材を抱えた大工の集団を見送った。

「張り切っちゃってまぁ、娯楽の乏しい田舎はいやだねこれだから」

「この辺じゃ一番でかい街なんだがな、ここは」

「いーや田舎だね。今時市内交通が馬車鉄道だし大陸横断列車のルートに通ってないし未だに短距離限定の念話オーブなんか使ってるし!
 観光地なんだから交通の便くらいきちっと整備しとけよ客は修験者じゃねえんだぞしかも『苦労して神殿に至ることで身も心も浄化されます』
 とかもっともらしい言い訳つけてんじゃねェェーー!住んでる人間みんな檀家じゃねえよ一般市民のことも考えろよ市長!」

「なんでそう内部事情に精通してるんだお前さんは」

馬車が揺れ、目的地の停留所へと到着する。運賃の銅貨を御者の帽子に弾き入れて、磨り減った石畳の上に降り立った。
中央広場である。噴水を起点とした街を縦に貫くメインストリートは、北を『揺り篭通り』南を『カフェイン通り』とそれぞれ名を付けられている。
ちなみに東へ進めばレクスト達が通ってきた鉄道を遡って入門管理局に至り、西はヴァフティア名物市立図書館と『魔術師の塔』だ。

「ちっと時間空いちまったなぁ。守備隊詰め所に行くのは明日でもいいし――おっさんは?」

「俺はキャラバンの荷を搬入しに図書館へ行く。今回の荷は殆ど本とお前さんだけだったからな」

「へぇ、どんなん仕入れてんだ?」

団長が懐から出した注文書を引ったくり、レクストはミミズの這ったような羅列に眼を通していく。

「えーと――『解る!レフトマン教授の法理系魔術論』、『帝都グルメスポット200!』、『月間魔道士』、『淫靡の果実(R-18)』
 『魔法幼女キャるるんリリるん(R-18)』、『とある魔術の淫書目録(R-18)』、『服が透ける魔法(R-18)』、『シリーホッターと尿道結石(女性向け)』
 …………後半から妙に趣向が傾いてんなこれ!どんだけエロ方面に需要あるんだよこの街うらやまけしからん!!」

「帝都の書物卸し問屋『れもんブックス』でもヴァフティアからの発注数が髄一らしいな」

「おいおいエロ本溜め込んでどうするつもりだ?魔術都市から童貞都市にでも改名すんのか?」

「さあな。――さて、報酬がまだだったな、ついでに一杯やりにいくか?」

レクストの頷きとともに、まだ陽光の色濃く残る街道を二人は北へ繰り出して行った。

253 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/20(木) 19:25:57 0
夕暮れが近い頃…
シモン、ページ、ミアの三人はなるべく人気の多い場所を通りながら、
エルシアの待つ大図書館へと向かっていた。

敵には恐らく姿が割れている。ミアを安全な場所に置いて、ということも
考えはしたが、一人にするか護衛に一人置くか、では三人一緒に行動した方が有利だ。
図書館の近くは自警団が誘導を行っている。
「あ?」
どうやら図書館は一般開放していないらしい。
時間があれば本を読み漁ろうとしていたページとミアは残念そうな表情である。

人気のない、図書館への細く奥まった道を歩いていくと、シモンはやがて
ある異変に気付いた。
前にも後ろにも、一般の人影が見当たらない。
後ろから何食わぬ顔で付いてくるのはさっきの自警団員数名だった。
ページ、ミアに目配せし、合図を送る。
やがて、正面から四人ほどの槍を持った自警団員が三人を止めた。
「ちょっと失礼。これよりチェックを行いますので、こちらまでどうぞ」
言われるまま、自警団員に囲まれるようにして植林の陰の方に案内される。
その先には魔法兵と思われる女が三人。

「…ッ!!」
シモンがふと気づいて目を疑った。植林の陰に敵が潜んでいたのだ。
ボウガンを構えてこちらを狙っている。その数三人。
さらに、その後ろにも何人か武器を持った敵が控えているようだ。
(嵌められた…こいつら、”月”の奴らだ!!)
三人の前には自警団員が二人、後ろにも二人。
よく注意すると後ろの二人は槍を傾け、既にこちらに攻撃するタイミングを
伺っているようだ。
前の二人もチラチラとこちらを見ているようである。全員が敵で間違いないだろう。
初めから自警団員に紛れていたのか、それとも奪って扮しているのか…
僅かな時間にそんな事を考えていると、矢が放たれた。
「おい、矢が来るぞ、避けろ!」
一人に一発ずつ正確な矢が放たれると同時に、戦闘が始まった。

シモンはすぐさまナイフを引き抜くと、胸の手前でそれを弾き落とした。
「チッ!力づくでも”ゲート”を捕らえろ!あとの奴は皆殺しだ!」
間違いない、さっき酒場で見かけたピラルの声だ。
「気をつけろ!こいつら殺しのプロだ…!」

正面からの槍による攻撃をすんでのところでかわし、そのまま一人の脇に入り
胸元をえぐるように裂く。鋭い刃先は鎖鎧を切り裂き心臓に達したのか、
自警団の男は血を吐きながら崩れた。
二射目の矢が放たれると屠った敵を盾にして防ぎ、それを地面に落とすと
同時に詠唱中の魔法兵二人にそれぞれ、投げ針を飛ばす。
詠唱を妨げることに成功し、うち一人の無防備な脚に針が直撃した。
脇からは槍兵の攻撃。間一髪で左手に持ったナイフを逆手にして受けた。
そのときだった。
「ぐ…う…ォッ!」
”痺れ”の魔法がシモンを直撃し、それが体の自由を奪った。

ふらつくシモン。そこをピラルは見逃さなかった。

254 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/21(金) 02:57:41 0
「お前さん、生まれは帝都かね?」

「うんにゃ、帝都には教導院に入学するとき下宿した。出身は田舎さ。どうしようもねぇ、な」

『揺り篭通り』を北上していく。南の『カフェイン通り』がカジノやバーに富んだ"眠らない街"ならば、対となるこちらは
商店街と住宅地の密集するベッドタウン。揺り篭の名が示す通り、"眠るための街"なのである。

飲みに行くなら良い場所がある、とレクストの案内で二人は歩く。露天商を冷やかし、屋台の串肉を咥え、
時々ぶつかってくるスリの尻を蹴飛ばし、従士服と銃剣をカッコいいと寄ってくる子供達の頭を撫でながら路地の横丁に入る。
さながら網の目のように繋がる路地は例外なく商店と露店で埋め尽くされ、夕時の買い物客で賑わっていた。

軒先で彩り鮮やかな果物を広げる青果店がある。陳列台の置くで丸椅子に腰掛けながら読書に興じる店員は少女。
濃い緑のエプロンの下に白のワンピースを着込んだ彼女はそれなりに目を引く容姿であるもののどこかくたびれた感があった。
ざんばらに切られた髪を強引に纏めたようなポニーテールは汗で肩に張り付き、亜麻色の襟巻きのようになっている。傍から見ても暑そうだ。

少女の座る傍にはボードが立てかけてあり、商品名と値段の羅列をびっしりと並べていた。
レクストはその前で立ち止まり、来客にも視線すらくれずにハードカバーに没頭する少女へ声を放った。

「ヘイお嬢さんリンゴ一つくれよ!……一つで500ぅ?おいおい観光客だと思ってぼってんじゃあないだろな」

声をかけられた少女はレクストを見上げた途端に目を皿のようにして驚愕の表情を作り、数瞬後にはジト目になり、そして眉を立てた。
傍にあった篭からよく熟れたリンゴを一つ握ると、まるで競技選手のような流麗なフォームで投擲!
ぱかん、と硬いもの同士が衝突した快音と何かが倒れるような音が路地で同時に響き、

「――ってぇ!いてぇけどうめえ!上手くて美味ぇ!」

気が付けばレクストが地面に転がっていた。顔に先ほどのリンゴがめり込んでいる。
鼻血をだらだら流しながら器用にも顔に刺さったリンゴを咀嚼しているその姿は贔屓目に見ても珍妙以外のなにものでもなかった。

「ほぉ、上手いもんだなぁ。至近距離とはいえこうも綺麗に人の顔に命中させるとは、お嬢ちゃんは投石師の才能があるな」

「おっさん何普通に評価してんだよ!重大事件ですよこれは!市井の民が従士様にボーリョク振るいやがった!どういう教育してんだ親の顔が見たいわ!」

「見たいなら呼ぶけど」

少女がぼそりと呟いた。それだけでレクストは竦みあがり、死に掛けのフナムシのようにカサカサと這いながら方向転換して少女の下に跪いた。

「うそ!うそです!全然興味ないですから親父召喚だけは!召喚したらオーバーキルされちゃうぅぅぅぅぅ!」

今度は団長が目を丸くする番だった。

「なんだお前さん、このお嬢ちゃんと知り合いか?てっきりまた珍妙の発作が起こって見知らぬ少女にちょっかいかけ始めたのかと」

「アンタん中で俺はどういうキャラ付けなんだよ!新ジャンルロリコン従士は流行らんですよ!?」

喚くロリコン従士を無視して少女に視線を戻すと、何やら上を指差している。導かれるまま団長が見上げると、店の看板があった。

                           『青果・酒――リフレクティア商店』

少女――リフィル=リフレクティアは地面に額をつけて啜り泣き始めた兄を引き摺って、店の中に消えていく。
ようやく合点がいった団長は苦笑しながら彼女達の後を追ってレクスト=リフレクティアの実家の敷居を跨ぐのだった。

255 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 09:07:41 O
同僚と絡む気ゼロかよ
何しに参加してんの?

256 名前:名無しになりきれ[saga] 投稿日:2009/08/21(金) 12:14:21 O
いい加減避難所行けよ
ここはお前の感想スペースじゃねえんだ

257 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 13:05:40 0
>>256
反応すんなよ
いつもの奴だから

258 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/21(金) 20:07:36 0
隊員達と馬車に揺られること3日ほど。
シドという町に着いた。
「どして、転移魔法を使わなかったのですか・・・」
はっきり言って死にそうだ。
休みは一応とってはいるが、3日の長旅はきつい。
剣を杖のように突きながら歩いていると、隊員の一人が声をかけてきた。
「仕方ないですよ。転移魔法を使える魔術師がいないんですから」
見るとその隊員もどこかやつれたような顔をしている。
「あ、隊員さんだ」
こっちの事情を知ってか知らずか。
子供がやってきた。
あまりにうるさいので足蹴りにしてやろうと思ったが、その気力もない。
疲れた笑みを浮かべ、懐から顔写真を示した。
「このおじさん知ってる?」
「知らないー」
子供はトテトテと走り出していった。
いったい何の用事があったのやら。
用がないなら来ないでほしい。
コクハはそう思った。

259 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/21(金) 20:28:42 0
訂正
写真->似顔絵

260 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 07:59:26 O
コクハが怒っている経緯


レノが賞金首が町にいるとの情報を落とす

コクハがそれを拾って討伐イベントを起こす

レノ「そいつを追うなら俺は知らんから勝手にやれ」

その後ダークから消えて自分の立てたスレで楽しくやっている

コクハ「何をしたかったんだろう、用がないなら出てこないでほしい」

261 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 09:31:07 0
>>260
深読みしすぎだw

262 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 09:47:45 O
しかしあながち間違ってないんじゃね?
時間軸も位置もかえて事実上の離脱宣言じゃん
他のコテも待ちじゃないのに書き込みが途絶えてかなりたつ奴も多い
一度継続意志の確認をして立て直しをはかったほうがいい
今のままじゃバラバラでどうにもならんだろ
とううかどうにもなってないし、実際に

263 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 15:59:39 0
レノのスレってどこよ?

264 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 16:28:49 O
こちらミのスレ主=レノ

265 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 16:30:45 0
狼男は絶望的に空気が読めなく剣士は異常なまでにレスを読み違え男娘はFOなのか出てこないし従士は毛色が違いすぎて赤髪はイベント放置で越境

どうしようもないスレだな

266 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/22(土) 16:51:07 0
赤髪は越境でなくて掛け持ちだろ。

267 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20:27:42 0
暮れなずむ空の下。図書館へと続く、人気のない細道。
両脇にある常緑樹の林が夕日を受け、朱と緑の混ざった奇妙な色合いを見せている。
自分たちと先導する自警団以外の人間はこの場におらず、口を開く者といえばほぼ皆無であった。

(ヴァーミリオン――忠告ありがとう。…けれどね)
静寂に包まれ、歩みを進めながら思いを巡らせる。
甘く見ていた。
先日の交戦を経て“月”の力の強大であることはわかっていたが、問題は活動の規模だ。
数ヶ月前には噂程度にしか聞こえていなかったその活動は、今やこのような大都市で大きく警戒態勢がとられる程に活発化している。
カルト集団故の恐ろしさかあの怪僧の手腕かは知らないが、勢力の拡大がとにかく早い。
つまり、この状況で町などという不特定多数の人間の接近を許すような場所に入ったのは明らかな失策である。
現に酒場からここに至るまで、監視と見られる多数の影があった。

ミアは静かに覚悟を決めていた。

――逃げ切れない――

だがそれは己の人生を諦めたことを意味しない。
彼女は生きたかった。正確に言えば死にたくなかった。
七年前の朧気な記憶の中で、彼女は確かに死の世界を垣間見ている。
意識を消失する“寸前”の諦念、そして“瞬間”に感じた全てを覆すほどの圧倒的恐怖はまだ覚えている――なぜ生き残っているのかはわからないが。

――残された僅かな時間で、少しでも月の思惑を崩すに足る情報を手に入れよう。協力者がいるなら集めてみせよう――彼女は決意した。

二人にはまだ話していない。機会が無い以上に、どこまで話して良いものかわからなかったのだ。
こういう時は会話の不得意な自分の性分が恨めしく感じた。

>ページ、ミアに目配せし、合図を送る。
>「ちょっと失礼。これよりチェックを行いますので、こちらまでどうぞ」
案内された先には肌がひりつくような殺気が漂っていた。
敵の数は、10人を越えたところで数えるのを諦める。

>「おい、矢が来るぞ、避けろ!」

太股を狙って矢が放たれる。それは僅かに服を裂いたに留まり、なんとか避けることができた。

>「チッ!力づくでも”ゲート”を捕らえろ!あとの奴は皆殺しだ!」
>間違いない、さっき酒場で見かけたピラルの声だ。
>「気をつけろ!こいつら殺しのプロだ…!」

シモンが注意を引いてくれてはいるが、もとよりミアの運動能力など大したこともない。
なるべくページから離れないように動き、彼女を殺すことができない彼らの動きを制限するだけで精一杯である。
そしてその動きは、敵にとって読みやすいものだったのだろう。

「――――――ぁっ」
右脇に激痛が走る。目をやれば、腹から黒塗りの刃が突き出ていた。
体に力が入らなくなり、その場に膝をつく。
人体の急所を知り尽くしたプロだけはあり、殺さず無力化する術を知っているようだった。内蔵は傷つけられていないようだが、もう動けない。

>「ぐ…う…ォッ!」
>”痺れ”の魔法がシモンを直撃し、それが体の自由を奪った。
力を振り絞り、ひび割れた声で“解呪”を囁く。シモンの体に自由が戻る。それが限界だった。
決意? 覚悟? 先ほどの自分の思考の甘さ加減にいっそ笑みが零れそうになる。
時間なんて僅かだって残っていないじゃない。

268 名前:パンプキンメロン・ヘッドの死神 ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/23(日) 00:33:27 0

  "―――魂還節の前夜祭"

夕日の赤い瞳の他には世界の全てに見捨てられたかの様な細道に、即興詩が響く。

  "ひん曲がった月は嘲笑い"

その声と共に近づいて来るのは、逆行で伸びた長い、長い影。

  "塔の真下で螺旋繰れ曲がり"

闇色のローブを纏った―――死神。

  "今宵、街に節制は無く"

頭にすっぽり被っているのは不恰好な、だが特大のパンプキンメロン・ヘッド。

  "愚者が素面で舞い踊る"

繰り抜かれた右目は真円。左目が無い代わりに涙型のペイント。

  "星をその手に望むのは"

三日月形に切り抜かれた口からは、紫煙が立ち上っている。

  "悪魔か? それとも死刑者か?"

  《誘われ、詠う、お節介――》

――真教に於いて、人間の生命は果実に例えられる。
ソレは、枝を離れた果実がアビスに落ちてしまわぬよう、
死期が訪れたその実を収穫する慈悲深い農夫だ。即ち――

「――――通りすがりの死神、さ」

《…あら。今夜は魔術師ではないの?》

夜色のドレスに身を包むのは、死神の肩に乗った小さなパンプキンメロン・ヘッド。

「魔術師の時間は、もう少し後だ。
 ……太陽は、まだ沈み切っちゃいない」

大鎌に代わって死神の手に握られたブレイク・キューが、強化魔術の魔力を宿して光を放つ。

「―――さぁ、踊ろうぜ! 運命の輪舞曲を!
 太陽が世界の裏側を焼き焦がしちまう前に……!!」

269 名前:パンプキンメロン・ヘッドの死神 ◆GKjbpalCIs [sage] 投稿日:2009/08/23(日) 00:36:33 0

――――対峙した白兵部隊にとって、ソレは死神そのものだった。

魔力強化したビリヤードのキューを棒術の様に突き出し、回転させ、薙ぎ払う。
死神の戦い方は、ほとんどデタラメで、かつインスピレーションに満ちたモノだった。
一つひとつの動きが意外性に満ちていながら、なおかつ必要最低限の機能性を備えている。
無論、この場合の最低限の機能と言うのは、戦闘訓練を積んだ相手を黙らせる程度の暴力性だ。

「こいつは、まともな自警団の仕事だとは思えないが。
 それとも最近じゃ、観光客をカモにするのが流行なのか?
 ――――おっと。こいつは、ちょいとばかり気前が良過ぎるな」

最初は数人だった"自警団"が次々に合流し、十数人まで増員する。
しかし驚くべきは、敵の人数でも練度でも無く、射って来た矢だった。
呪鉄製の鏃―――そこらの自警組織が持つには不釣合いな代物だ。

「おい、"妖精さん"……魔法のトランクを」

《ええ。わかったわ、"死神さん"》

小さなパンプキンメロン・ヘッドが、自分の背丈よりも大きなアンティークトランクの蓋を解放する。
彼女の両手に納まりきらないサイズの水晶球――赤橙黄緑青藍紫の七色――が飛び出した。
それらは大きなパンプキンメロン・ヘッド正面の空間に集い、矢印型を描いて整列を終える。
同時に、死神が上向けた左の掌には高密度の魔力球が現れる……"キューボール"だ。

「この街に住んでるなら、ヴァフティアン・ビリヤードは知ってるだろ?
 ―――これから、そこで蹲ってる"お嬢さん"を賭けて一勝負と行かないか」

主に酒場で好まれて遊ばれる"ヴァフティアン・ビリヤード"は、キャロムの一種だ。
この非正式競技の最大の特徴は、"一衝き毎に"手番が交代すると言う点にある。
故に"相手の手番にキャノンさせない"為の戦略・戦術が駆け引きのメインになる。
基本的には、集中力が先に切れた方の負けだ―――別名"セブンボール・チェス"
魔術師は、この競技が好きになれなかった。まどろっこしい遊びは性に合わない。
ただし、ゲームの最初のシークエンスだけは例外だった。セットを衝き崩す一撃――――

「――――ブレイク・ショットだ」

……あらゆる武器が、これを操る者の身体の外延を成すとするならば。
激烈な魔術反応によって毎秒800mを超える速度を獲得した七色の水晶球は、
速度/魔力/慣性質量の合成エネルギーと化して他者へと打ち込まれる意志に他ならない。
打ち散された水晶球は、周囲に展開した弓兵の内の七人の急所を砕き、行動不能に追い込んだ。

「こいつはまいったな。随分と腕が鈍っちまってるみたいだ――
 ――手加減が出来なかった」

《あら。もういいの? まだ半分残っているけれど》

「ああ……もう半分は、ココに居るお二人さんと"奴"が片付けてくれるだろうさ」

一時的に増幅されている魔術師の感覚は、この場に接近する異質な"気配"を察知していた。

《それは素敵ね。物語を彩るヒーローの登場、かしら》

「何にせよ、ラウル・ラジーノの前夜祭は開幕したばかりだ。
 望まれないダークヒーローは、次の出番まで闇に消えるとするさ。
 死神らしく、な―――Good Luck.」

夕日の照明は減衰していた。舞台に宵の暗幕が降りる。
大きなパンプキンメロン・ヘッドと小さなパンプキンメロン・ヘッドは、
その闇色のローブと夜色のドレスをヴァフティアの夜に溶け込ませて消えた。

270 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/23(日) 00:52:38 O
という街角の講談師の物語だったとさ





絡む気ないならどっかでSS書いててくれない?
邪魔だから

271 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/23(日) 02:36:31 0
ミア達は>>268>>269は無視していいと思う
これはいくらなんでも酷すぎるぞ
旗から見て内容が理解できない自分に酔ったSSで
勝手に割り込んできたくせに絡みもしないでそのまま離脱って
それこそコクハの言葉どおりだ。


>いったい何の用事があったのやら。
>用がないなら来ないでほしい。

272 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/23(日) 05:09:33 0
そこを上手く繋げるのがTRPGの醍醐味じゃあないか
著しく話の流れを妨げるもんでもないわけだし

273 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/23(日) 09:53:56 O
ほう、この意味不明な文章を解読して自分のレスに落し込む
作業負担を強いるのが妨げではないと申すか
それでも普通に参加して普通に絡むなら
ただの文章の下手な同僚で話は済むが、この有様ではな
いきなりこんな中途半端な事をされたら俺だったら不愉快極まりない

274 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/23(日) 10:45:30 O
>>272
前レノとハーツェは同一人物とか言いはってた奴?
別にいいけどさ
俺はもうレノレスは無視してロールするわ
無視してもまったく影響ないし、文句言われる筋合いないし、奴も文句言える立場じゃないからな
ピクニック気分で参加している奴の面倒なんて一方的な負担負いたくない
誠意のない奴だから特にな!

275 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 03:14:49 0
運命とは何か。

広く長い川の流れを想像する奴が所謂運命論者だ。
流れに身を任せる事はできても、それに逆らう事も急ぐ事も叶わない。
足掻いた先に何があるのかすら知る事はできない。

一本の細く長い糸を想像する奴は自信過剰だ。
望む運命は自分の力で手繰り寄せられるほど余裕のあるものではなく、
また目を向けるだけで全てが見えるような細いものでもない。

巨大な神の手を想像する奴は自分に自信がない。
神という存在を盲信し、自分という存在を放棄している。
自身は眼を閉じて望むだけ。希望という光を暗闇の中で錯覚している。

どいつもこいつも、見えもしないものを見ている気になっている。
三本の道の一つを選ぶ事ができても、どの道で馬車に出くわすかなど見えはしない。
誰かのピンチに颯爽と現れ、命を救うヒーローなどお笑い種だ。
自分が撃たれる未来すら見えないというのに、他人の運命を変えた気になっている。

だが―――

276 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 03:16:24 0
「・・・穏やかじゃねぇ、な」

屋根から落ちた際、下敷きにした猫に引っ掻かれた傷を舐めつつ
大きな通りの角に差し掛かった時、ギルバートが呟く。
吐き気を催すほど鉄臭く、甘美なまでに甘く芳しい―――血の匂いだ。
料理に添えたエシャロットのように血の香りを増し、運んでくるのは、闘争の空気。殺し合いのフレーバー。
日が落ちると共に鋭さを増した人狼の嗅覚が、細く絡みつくように漂うソレを捉えていた。
目の前にあるのは、この街の知の中心である大図書館を示す看板。

暫しそこに佇み、迷う。
当然ながら―――自分には関わる理由も、必要も無い。


―――どいつもこいつも、自分の運命を選んだ気になっている―――


正気の人間ならばこの角を曲がろうなどとは思わない。それが当然だ。
好奇心は猫をも殺す。どうせ殺されているのは酔っ払いか―――浮浪者か。
何であれ、ろくでもない連中だ。悪漢に襲われる謎の美女?安い三文小説の読みすぎだ。


―――誰かの危機に颯爽と現れるヒーローなどお笑い種だ―――


・・・ならば、何故自分は角を折れ、歩みを進めている?
何故?理由は?必要は?お前は運命など選んでいない。"あの時"だってそうだ。
お前はあの時、自分は流れに逆らえる、糸に手を伸ばせる、神は常に自分の正義を助ける―――
―――自分は誰かの運命を変える事ができる。そう錯覚した。その結果はどうだ?


―――三本の道の一本を選ぶ事ができても―――


徐々に濃くなる匂いが近づくにつれ次々と別の支流に別れ、その中の一本が一つの事実を告げる。
その匂いを知っている。懐かしい程に古く、すぐ思い至る程に新しい。
かつてその腕に抱いた匂いであり、昼間に雑踏で衝突した匂いであり―――"ゲーティア"の匂いだ。

雲が流れ、差し込んだ月光が周囲の影を細く、濃くする。
満ちてはいるがまだ満月には至らない、ひん曲がった月。
それを見上げたギルバートの瞳が開き、血の色に染まった。


―――だが―――


ああ―――そうだ。
運命が選べずとも―――少なくとも俺は―――選べるじゃないか。
道を―――四本目の、獣道を。


束の間雲に隠れた月が再度姿を現した時、既にそこに人は存在せず、
銀色の狼が一頭、規則正しい爪音に銀指輪の響きを添え、大図書館への道を辿り始めた。

277 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 21:35:58 0
このまま戻ると時間軸に矛盾が生じてしまうので、ダークの時間で3日経つまでROMらせてもらいます。

278 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/25(火) 11:57:03 O
上手いな
この調子だと3日もスレ内時間が経過する前に間違いなくスレが瓦解する
飽きたから辞めるわけでなく、あくまで進み過ぎた時間分待機しているだけ
引退にもFOにも不定期参加(笑)にもならない、理想的な辞め方だ
レノにもこのくらいのしたたかさがあれば叩かれなかっただろうに

279 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/26(水) 00:23:00 O
そして三日後

280 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 00:32:35 0
市街中心近くでなにやらあったらしく、そちらが騒がしくなり、図書館周辺は
さらに異質な雰囲気を増した。

圧倒的に不利な状況に置かれた三人。
後ろでは戦闘慣れしていないものの、槍を持った敵相手に辛うじて攻撃を
食い止めていた。

「うっ…!うぁぁ…あっ!ひぃ…」
魔法兵の一人が、急にうめき声をあげ、涙を流しながら血を吐いて倒れこんだ。
シモンが投げた針に塗られた即効毒の効果である。
他の魔法兵はこれに気を取られ、一瞬注意が反れて詠唱を中止した。
しかし、すぐさま気を取り直して続行する。さすがに狂信者の動きである。

一方で弓兵も魔法兵とともに波状攻撃を続けていた。
ミア、ページはあらかじめ位置を知っていたため、これも何とか乗り切る。
ギリギリの凌ぎであった。

体が痺れたシモンは、僅かに残った神経と五感を頼りに、
転んだ状態で敵の切っ先を読み、辛うじてそれをかわしていた。
武器も辛うじて握っているだけの状態である。
しかしその均衡は、あっけなく破られてしまった。
「――――――ぁっ」

ミアの悲鳴。一瞬だけ脇に目をやると、彼女の腹からは黒い刃が突き出ており、
それが引き抜かれ、まさに地面に倒れ伏すところだった。
おそらくいつの間にか気配を消して動いていた伏兵だろう…
貫通した傷からは血がにじんでいるが、失血死するほどではない。
一瞬だけ殺した相手と目が合った……フードの中から見えた鋭い目つきは、街で襲われた際に、
自分を追い込んだ男の一人で間違いない。

一瞬で考える。ミアは既に動かぬ”物”と化している。ページもこのままいけばやられる可能性が高い。
では、降伏?  …いや、敵の狙いは”ゲート”のみ。シモンとページは最初からただの障害物同然である。
それも自分は敵の手の者を既に二人殺している。これで武器を捨てたところで「死」以外にはあり得ない。

…つまり、「戦うしかない」!

シモンがそう決意したとき、突如、自分の身体の異変に気付く。
動かないはずだった身体が軽く、それも何か奥から力が漲っているような気さえするのだ。
…それは、ミアが倒れる直前でかけた“解呪”の魔法と、ページがかけた”筋力強化”の魔法であった。
「シモン、頼む!」
ページの掛け声と同時に、シモンは膝をついた状態から飛び跳ねるように回転し、
敵を一薙ぎした。
シモンに襲いかかろうとしたフードの男は刃物を握りなおしている間に胸を一文字に切り裂かれ、
ページと対面している槍兵は脇腹を割かれて内臓を飛び散らせ、その延長線上にいた
シモンの目の前の槍兵は突き出した槍ごと上半身を吹き飛ばされた。
そのままシモンはナイフを魔法兵の方に投げ、一人の腹に貫通させて絶命させた。

281 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 00:33:24 0
「な…っ!馬鹿な…こんなことが…」
驚嘆の声を上げ、動けなくなっているピラルに、シモンは一気に肉薄した。
残った魔法兵から大量の”氷の刃”が放たれ、同時に弓兵からも矢が放たれた。が…
それらはシモンが手を一振りしただけで全て、弾き落とされてしまった。
暗器”コカトリス”である。それはまたたく間にシモンを覆う竜巻となり、
弓兵たちに襲いかかった。
「ひぃぃぃっ!」
紐に括り付けられた無数の刃が敵を切り裂き、一人、また一人と切り刻んでいく…
あっという間に弓兵三人とピラルの脇にいたフードの男が顔がどこかも分からないような
亡骸となった。

「シモン、貴様っ!」
血飛沫を浴びたピラルが、シモンが武器を下ろした隙を狙って
二本の刃を振りかざし、飛び掛ってきた。が、シモンにはその軌道がはっきりと見えた。
「ぐぅぉッ…!」
両腕が一瞬で斬り落とされ、シモンによって羽交い絞めにされる。
全身に”コカトリス”が巻きつけられた。
「知っている限りのことを話せ。王国の財宝のありかも、”ゲート”についても…全部だ」
声を荒げながら脅すシモン。

一方で残った魔法兵が殺されると思ったのか、報告に向かったのか、大図書館の方へと逃走していった。
動かなくなったミアを介抱するページ。
あたりには十の死体とその周囲の血糊が、異質な臭いと雰囲気を放っていた。


282 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 01:00:24 0
【リフレクティア商店・酒場側】

向こう三代に渡り揺り篭通りの軒並みに庇を連ねるリフレクティア商店は、青果店とトラディッショナル・バーの両方の顔を持つ。
昼は青果、夜は酒。両者を分かつ夕刻にはその両方の暖簾を下げ、質のよい果実酒を呑ませる隠れた穴場として地元民から愛されて止まない。

魔導ランプの照り返しに顔を染める一人の男が居る。よく磨かれたバーテンダー・テーブルに腰掛けて開店準備に勤しむ姿は
精悍ながらも若干の無精髭と肉付きを得ていて、その青年と言っても差し支えない相貌に適度な貫禄を与えていた。
澄んだような金属音。鳴らされるにはやや早い時間の呼び鈴に面を上げたのその顔が、驚愕と歓喜に破られるまで一瞬もかからなかった。

「レク坊?お前レク坊か!よく帰ってきたな連絡ぐらいよこせよ寂しかったぞお兄ちゃん寂しかったぞ!!!」

カウンターをひらりと飛び越え肉迫する先でレクストは倒れ臥せった状態で妹に牽引されたままであった。

「うわばばばばば来んな来んなって踏むよねその速度で俺のとこまで来たらぜってー踏むよね俺のこと!」
「ああ踏むさ!踏むともさ!かれこれ一年越しの弟を余すとこなく足の裏まで使って味わってやるさ!」
「ナチュラルに気色悪い宣言してんじゃねェェーーーッ!!」

踏まれる前にリフィルの右足が男の僅かに丸い腹へとめり込む。ぐえ、と漏らすような呼気音と共に弾かれるようにして吹っ飛ばされる様子は、

「――なんというか、嫌なぐらいに兄弟だな。お前さん方」

団長が洩らした感想に、嫌なぐらいによく似た兄弟が同時に反応した。

「「だろ?だろ?――俺もかねがねからそう思ってる!!」」

ティアルト=リフレクティア。"酒場側"のバーテンダーでありリフレクティア家の長男、レクストの兄であった。



「――そうかぁ、レク坊が従士になる的な戯言のたまってこの街飛び出して帝都の教導院に行ってもう7年かぁ。歳とると時間早いなぁ」

「兄貴もそんときゃまだ14くらいだったろ。つうか毎年長期休暇にゃ戻ってきてるし手紙のやりとりもしてるじゃねえかよ?
 おっさん知ってるか、こいつこんなナリで手紙じゃ乙女文字なんだぜぇ。夏場に読むといい感じに鳥肌立って涼しいんだ」

「おいおい冷却術いらずだな?流石俺だけあって環境にも優しい。そろそろ世界に惚れられやしないかと期待に満ちた生活を送っています」

「おいおい相変わらずイカれた思考回路してんな。その"帽子置き機"の中で脳味噌の酒漬けでも作ってんのか?」

「ごめんなさい、いつもこんなだけど今日は輪をかけて酷い。――一刻も早く死ぬべき」

臨時休業の札を下げた店内では四人の男女が談笑している。
リフレクティア三兄妹と団長はそれぞれが飲料の注がれたグラスを傾けながら、ときに指差しときに嘲笑しときに感涙する。

「お前さん――兄のほうだ、一人でこの酒場を切り盛りしてるのか?青果の方もお嬢ちゃん一人だったようだが」

「青果はリフィルが一人でやってる。本当は男は夜、女は昼って感じに分担が決まってるんだけどもな、
 七年前に母親が死んでそれからだ。例の――『ゲート争奪戦』の折に」

「ああ、そりゃすまんことを聞いたな。――ってことは、酒場には親父さんが?」

その名前を聞いたレクストが跳ねるように椅子から飛び上がる。たった今思い出したように青ざめガタガタと震えながら兄に聞く。

「そ、そうだぜ兄貴!親父の姿が見えないけどどこ行ったんだ?俺ゃさっきからガクブルでよ、そろそろ小便垂れ流す段階に入るぜぇ?」

「母屋に居るよ。夕方前にどっかからやたらデカい坊さん背負ってきてよ、その介抱につきっきりだ。自治会長ってなぁ損な役割だよなぁ。
 なんでも"幽霊街"のガラマホフ横丁辺りで大規模な地盤崩落があってよ、その坊さんはそれに巻き込まれたらしい」

へぇ、と反応してレクストは再びアルコールの殆ど入ってない"ほぼジュース"を流し込んだ。
神の野朗、またやりやがった。信心も糞もあったもんじゃない。


283 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 01:01:38 0
酒場の奥には扉があり、その先にはもう一つの玄関がある。
リフレクティア家とリフレクティア商店とを分かつ昇降口。母屋への入り口である。

木造二階建ての天然うぐいす張りを軋ませながらレクストは客間へと進んでいく。
その表情は憮然とした中に確固たる畏怖が根付いており、ある種の気まずさすら孕んでいた。

帰ったなら親父に顔出してけよ、とティアルトの提案である。陰鬱な心持ちだった。7年前に勝手に家を飛び出して、教導院を卒業した後も
まともに顔を合わせることのなかった父親。厳格一徹という言葉に手足が生えたような人間である彼は当然次男の出奔を簡単には赦さなかった。

事実上の勘当。
それは酒場を継ぐというリフレクティア家の家戒を放棄させ、一切のしがらみから解き放ってやらんとする親の愛情なのかもしれなかった。
わかっているのだ。
そうんなことはわかっている。それでも家業の全てを兄に押し付け、妹の力にもなってやれない、"最低"の自分を最も見られたくない相手。

客間の扉を空けると、父がベットの傍で藤椅子に腰掛けていた。
深く皺の刻まれた眼差しが見据えるのはベッドの上にある薄毛布で包まれた小山のような怪我者。
備え付けのブランケットだけでは足りなくて、彼の衣服であろう赤い袈裟も主への掛け物として借り出されているほどの、大男だった。

「あー、その、ただいまかえりました……」

その一文を発するのにレクストは実に三回も舌を噛んだ。
父親がゆっくりと振り向き、その視線がこちらを射抜く感覚だけで心臓が萎縮する。
そうだった。親父の攻撃で一番痛いのは罵声でも体罰の拳でも蹴りでもなく、視線。目は口ほどにものを言うが、拳ほどにも言うのだろう。

「リフィルから聞いた。よく帰ってきたな、レクスト」

それだけ言って父は再び介抱に視線を戻してしまった。再び訪れる針のような沈黙。
どういう意味での「よく帰ってきた」なのだろうか。「よく帰ってきたね!おかえり!」なのか、「よくもまぁおめおめと帰ってこれたもんだなクズが」なのか、

「前者だ」

「よ、読みやがったな俺の心!」

「読まれて困るほど複雑で腹黒な心でもないだろう。俺はそのように育ててきたし、お前もそのように育ってきたはずだ。違うか?」

「そ、それ褒めてんのか?評価してんのか?称えてんのか?つうか7年来の息子だぞ!アンタが思ってるよりずっと大人だぜ俺は」

「子供だよ、俺にとっちゃ7年だろうが70年だろうがな。現に今だってお前の考えが読めただろう」

レクストは二の句が継げなくなった。無視されるか、母屋に入ることすら禁じられるとさえ覚悟していたのに。
父親は、今でもレクストの父親だった。否、今だからこそ、大人になって帰ってきた今だからこそレクストは息子に成れたのだ。

「……怒ってないのかよ?7年前のあの日、母さんの亡骸が埋葬される前に俺は帝都に旅立った」

「そんときは怒ってたな。逃げるのか、ってな。母親の死から逃げ出して、その先に答えなんか在るのか――在ったか?」

「未だに見つかんねえよ。『七年前』の答えを探し当てるには、ちょっと逃げ方が足りなかったみたいだ」

知識が足らないと思った。理解不能で不可視の恐怖、七年前母親を奪い去った『魔の流出』。抗い方を知るために、戦い方を知るために、
――逃げ方を知るために。帝都の教導院で学を修めれば何かが解ると信じていた。成し遂げるだけの執念もあった。

「逃げ出した先に答えなんかない。だから俺はそろそろ前を向くことに決めたぞ。退路しか見えてない、七年前の貧弱なレクスト坊やじゃない」


前を向くだけの強さを持った従士レクスト=リフレクティアとして。


284 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 01:02:25 0
日が落ちる寸前となったの揺り篭通りを駆ける。
レクストは息を切らしながら来た道を遡っていた。一歩跳躍するごとに不平不満が口から零れ落ち、溜息も1セット。
向かう先は図書館だ。事の顛末はこうである。


「まずいな、長居しすぎた。図書館に搬入伝票を届けねばならなかったんだが」

団長が思い出したように懐から羊皮紙を取り出した。父親の元から無事帰還したレクストにそれを手渡しながら、

「確かもう半刻もしないうちに閉館だろう、俺が走ったって間に合いっこない。すまんがお前さんひとっ走り行ってきてくれないか」

レクストは大いに固辞したが近道知ってるだろというティアルトの指摘とリフィルの無言の圧力と、
団長の提示した未施術オーブ三つの報酬に根負けし、そして現在に至る。


「クソっクソっ、なんでエリート様様の俺がこんな使いっパシリなんぞっ!雇用制度の闇を垣間見た気がするぜぇ!」

軽々と人々の間をすり抜け、ダストボックスを足場に商店の屋根に飛び乗り、レンガの屋根伝いに揺り篭通りを逆走する。
子供の時分にはよくこのようにして街を駆け巡ったものである。あのころのリフィルはお兄ちゃんっ子で、よく後ろをついて回ったものだ。
可愛かった。今じゃ何を考えてるのかさっぱりな毒舌暴力少女になってしまったが。

仄暗い思い出に浸りながら噴水広場に出た。進路を西へととり、見えてきた大図書館へと向けて疾走する。
途中で何か銀色の物体を追い越した。四足歩行の、犬にしては硬質な気配で、魔物にしては如才ない雰囲気の生物。

(狼……か?おいおい街中だぞ、どっかのペットか家畜が逃げ出したか?)

ともあれ今はそれどころではない。西の大通りは図書館の客とそれを相手にした商売人で混雑しているため、
多少遠回りになるが裏路地から迂回して先を目指すことになる。石畳をブーツが噛み、レクストは疾駆の方向をさらに変えた。

刹那、"異質"を感じた。路地に入った途端、感覚が危難を訴えかけ、否がおうにもレクストの脚が止まる。
それは匂いだった。血の匂い。そして大気のざわめき、尋常ならざる気配の発露。第六感。

「や、やべぇ!なんなんだあいつ!強化魔法でもあそこまで強くなるかよ!?」
「馬鹿な……小隊全員で囲んで死者十名だと……!?報告、報告ーーー!!」

"異質"の渦中から数人の男が飛び出してきた。皆一様に驚愕と恐怖を顔に張り付かせ、今にも腰を抜かしそうなよたよたした走りでレクストの
脇を駆け抜けていく。戦闘服だった。ヴァフティア守備隊の、魔法術式師の隊服。彼らが尻尾を巻いて逃げてきた根本から沸き立つどす黒い気配と血の匂い。
導き出される結論など、一つしかなかった。

弾かれるようにレクストは駆け、バイオネットのブレードを展開し、戦闘用加護術式を発動し、路地の曲がり角を左折する。

そして見た。

路地に散らばる人の骸、壁にまで迸った鮮血、腕、脚、首、骨まで見えた人のパーツ。
腰を抜かしたようにへたり込む男、腹を貫かれて倒れた少女、その中心で屹立する二つの影。

鎖のように連なった刃を身体に巻きつけられ、血の気を失ったように呻く男。両腕が無い。足元に剣を握ったままの手首が転がっている。
鎖のように連なった刃を手繰って相手を戒め、獰猛に息を吐きながら尋問する男。血に染まった顔は逆行で表情が解らない。

あまりにもイレギュラーな状況。突然すぎる非日常。むせ返るような死臭と血臭に胃の中から何かがせりあがってくる。
それでも、この状況に立たされた自分が何をすべきかレクストは明確に判断できた。教導院での教育の賜物である。

「な、何やってるんだお前!今すぐその人を放せェェーーッ!!」

バイオネットの砲門を展開し、"爆発"の属性をもった魔導弾を発射する。狙いは武器、戒めの刃を繋ぐ紐目がけて、小規模の爆発を喚起する。
射出と同時にブレードを伸展し、魔導弾を追うようにレクストは疾駆した。


285 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 23:14:28 0
>283
レクストが部屋から去った後、ベッドに横たわる巨漢がすっと目を開ける。
「あれがお主の希望か・・・?」
「希望?いいや、単なる放蕩息子だ。」
リフレクティア父子のやり取りの間、ピクリトも動かなかったディーバダッタが唐突に口を開いた。
が、そのことが事前にわかっていたかのようにリフレクティアは静かに応える。

そして暫しの沈黙の後、更にディーバダッタが言葉を紡ぐ。
「・・・今なら拙僧を殺せるぞ?」
その言葉にリフレクティアの雰囲気が一変。
室内の空気が凍りつき、窓に一筋のひびが入る。
だがそこから流れ出る言葉は極めて穏やかなものだった。
「昨日までならそうしていたかもしれん。
だが、今日はそうするには年を取りすぎた。
放蕩息子の答えを俺が横取りするわけには行かないからな・・・!」
そういうとリフレクティアは立ち上がり、部屋を出る。

扉を潜る際、振り向きもせずに付け加える。
「親から子へ、子から孫へ思いを託し続いていく。
あんた達には理解できないだろうが、それが定命の者の定めだ。
俺の想いは放蕩息子がキッチリ継いでくれたからな。」
「それもまたよかろう・・・。」
お互い見向きすることもなきやり取り。
その言葉を最後にリフレクティアは無人となった部屋の扉を閉めた。


286 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 23:16:31 0
>281>284
大図書館へと通じる路地裏は凄惨な殺戮の場と化していた。
足元に転がる肉塊と広がる血の領域。
むせ返るような死臭の中、二人は立っていた。

両腕を切り落とされショック状態に陥りながらも倒れることを許されぬピラル。
全身に脂汗をかきながら呼吸は浅く速い。
「ち・・・ちきしょう・・!俺の腕がああ!殺してやる!殺してやる!」
しかしそんな呪いの言葉もシモンには届きはしない。
全身に巻きつけられたコカトリスが絞るように動くと容赦なくその刃が同時に数箇所を刻んでいく。
>「知っている限りのことを話せ。王国の財宝のありかも、”ゲート”についても…全部だ」
「ぎゃあああ!やめろ!話す!話すからやめてくれ!
財宝はこの町にある。王国の財宝だけじゃねえ。各地から集められたもの全部だ!」
夕日が最後の光を地平線から放ち、夜の帳が下りようとする中、シモンの尋問が続く。

ピラルの口から離されたのは、財宝はこの街に乱立する尖塔に一つずつ隠してある。
ゲートを迎え入れる為に。
全ては終焉の月の指示に従ったこと。

苦しみながら吐き出すピラルだったが、徐々にその呼吸は整い始めている。
夜闇の濃さに呼応するように徐々に回復しつつある事に気付いただろうか?
気付いたとしても遅かった。
その時には乱入者が現われたのだから。

>「な、何やってるんだお前!今すぐその人を放せェェーーッ!!」
突如現われたレクストの叫びと共にコカトリスが爆発を起こす。
放たれた魔導弾は狙いを違わずその効果を発揮する。
戒めを解くまでには至らなかったが、緩ませるには十分だった。
そしてその緩みをピラルは見逃しはしない。
「ギヒヒヒヒヒ!シモン、貴様もこの世ももう終わりなんだよ!
今のこの町で!夜!そしてゲートの近くなら恩恵に授かれる!」

羽交い絞めをしていたシモンの腕にぬめりの感触と共にピラルがずるりと滑りぬけることが判っただろう。
代わりに突っ込んでくるブレードを伸展したレクストが眼前に迫る。
そしてその視界の隅に捉える事が出来ただろうか?
切り落とされた腕や各所の傷口から、まるで蛞蝓のような触手が這い出ているピラルの姿を。
月明かりに照らされ異形をその身からはみ出させたピラルがページとミアに迫っていく姿が!

程遠くない場所から重装であろう大勢の足音が近づいていた。


287 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 01:01:54 0
>「ち・・・ちきしょう・・!俺の腕がああ!殺してやる!殺してやる!」
ピラルは酷く悔しがった。恐らく、あれだけの周到な手を使えば負けるとは
まさか思ってもいなかったのだろう。

シモンが刃をさらに首に近づける。
>「ぎゃあああ!やめろ!話す!話すからやめてくれ!」
さすがに死ぬのは怖いのだろう。思えば、この男は他の”月”の連中に比べれば
まだ人間的な部分が多く残っているともいえた。
シモンは財宝がヴァフティアに乱立している尖塔に隠してあり、
それらが”ゲート”を迎え入れるためのものだということを知った。
しかしそこまで聞いたところで叫び声が耳に入った。

>「馬鹿な……小隊全員で囲んで死者十名だと……!?報告、報告ーーー!!」

(ぐぁっ!しまった…!)
ピラルを羽交い絞めにしながら横目で見ると、茂みから現れた三人の男が突如、
騒ぎながら街の方へ駆け出していくところだった。
どうやら先ほど逃がした魔法兵の女のさらに後ろに潜んでいたらしい。
このままでは、増援が来るのも時間の問題だろう。

仕方がない、とシモンは刃をピラルの脇や首に一気に食い込ませて脅迫する。
「もう一つだ…お前らの頭目の居場所を話せ!早くしろ」

その時、突然魔力の気配を感じたと思うと、特殊な鎧を纏った若い男が現れ、
魔法武器をこちらに向けて走りこんできた。
>「な、何やってるんだお前!今すぐその人を放せェェーーッ!!」

武器から魔法の弾が放たれる。
「しまった!」
このままでは巻き添えになる、と思ったシモンは慌てて”コカトリス”を引き払い、
後ろに仰け反った。
「ぎゃあああ!!」
その魔法弾は弱っていたピラルを直撃し、爆風によりシモンはページのいる方へと弾き飛ばされた。
辛うじて大きな打撃を受けずに済んだシモンは起き上がると特殊鎧の男に向き直ったが、
その直後、その注意は完全にピラルの方にひきつけられる。

「ぐおぉぉぉぉぉおおぅぅぇぇええええ!!」
致命傷を受けたと思われるピラルが、この世のものとは思えないうめき声を上げながら立ち上がったのだ。
斬られた両腕、割れた頭蓋骨、全身の生傷から、
触手のようなものが次々這い出してきたのだった。
みるみる内にそれは巨大化し、あちこちに鋭い歯のついた口のようなものが
浮き出してきた。そして、崩れた顔面から顔の三倍はあると思われる
悪魔のような顔が浮き出て、喋りはじめた。
「ギヒヒヒヒヒ!シモン、貴様もこの世ももう終わりなんだよ!
今のこの町で!夜!そしてゲートの近くなら恩恵に授かれる!」

明らかにピラル本人のものとは違う声。鎧の男も既に、そちらに注意を殺がれていた。
(な…何だ…これは…!)
無意識のうちにシモンの足はページたちのいる後ろへ、後ろへと動いていた。
これほどの恐怖を覚えたのは恐らく生きてきて数えるほどしかなかったはずだ。



288 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 01:02:40 0
やがて、金属音が響いて、敵の増援が到着した。先ほどの三人と魔法兵、
七人の槍兵、これらは全て自警団員の格好をしていたが、一人、明らかに異様な格好の男がいた。
長身で細身、新月を象った紋様の入った漆黒のローブを纏ったその男は、明らかに”終焉の月”を彷彿とさせた。
「おぉ…早くも実験の成果が拝めるとは…」
重厚で、なおかつ透き通った声が異質さを際立たせている。
全員が”月”のメンバーと見て間違いないだろう。
「ピラル!こ、これはどういうこと…」
ピラルの変わり果てた姿を見て、魔法兵の女が叫んだ。
よく見ると、酒場でピラルと話していた女のようだ。仲間意識があったのだろうか。

彼らが何かをするより早く、こちらは動きだしていた。
「さて、まずは腹ごしらえといくか…」
”かつてピラルだったもの”の触手が素早く周囲の弓兵の死骸を次々と掴み、
その各々が口に入れて咀嚼をはじめた。さらに禍々しい妖気が高まっていくのが分かる。

「逃げるぞ…急げ」
ミアをかついだページ、そして割り入った特殊鎧の男に声をかける。
少なくとも話しぶりからして、”月”に関係があるとは思えなかったためだ。
(有用な情報は得た…だがこの状況はまずい…!)
街に向かえば自警団に扮した敵に良いように捕まってしまうだろう。
返り血を浴びているシモンなら逃げ場はない。
ひとまず、人気のない道を探りながら逃亡を試みることにした。

289 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 17:57:21 0
>>284
近い―――

背後から近づく気配に片耳だけ向ける。人のようだ。
やがてその人間が派手な音を立てて隣の石畳を踏み、一瞬、視線が合う。

一見スレているようだが―――奥には川の中から眺める太陽を想わせる明るさを宿した瞳。
・・・悪くない。嫌いではない。あの野郎の瞳を思い出す。

そこまでで狼の興味は尽きた。
向こうもそのまま勢いを緩めず角を駆け抜け、図書館の方へ―――だが、違う道を。
おそらくは、近道。この街を知り抜いていなければ気づき得ない隙間だ。

ほんの一瞬立ち止まり、空気の匂いを嗅ぐ。勿論、ここは風下だ。
その路地の向こうから漂ってくる匂い―――

―――血、肉、闘争、恐怖、死、その他諸々―――男、女、それ以外の"何か"。それに、"ゲーティア"。

少しだけペースを上げ、先程の男が抜けて行った路地へと体を滑り込ませる。
その鼻先を、重装備の兵士達が駆けてゆく。向かう方向は問うまでもない。

血相を変えて走るその一行の背後に降り立った時、狼の足音が完全に消えた。

290 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 17:58:37 0
>>288
その空間は既に異世界と化していた。
棒切れのようにそこここに転がる死体。むせ返るような血の臭い。
異形と化し、周囲の死体を貪る人間だったモノ。
そしてそれに対峙する人々。

>「おぉ…早くも実験の成果が拝めるとは…」
>「ピラル!こ、これはどういうこと…」

声が錯綜したのは一瞬の事。
それと同様に、次に起きたのも一瞬の事。


―――"かくして幕は上がる。さあご覧あれ、運命はかのモノを舞台に上げる"


その増援の兵士達の隙間からぬっ、と頭を出した銀色の狼に、束の間人々の思考は停止する。
傍らに立った兵士達ですら、目を見開いて狼を眺めるだけで、微動だにしない。
反射の前段階。野の動物にはない間だ。本当に束の間、その路地の時間が停止し、静寂が落ちる。
やがて、それは鈍重とも言える動きでゆっくりと口を開く。
その瞬間、時が動く―――いや、動かされた。


―――"哀れ、ああ哀れ。かのモノは望まぬ運命に慟哭する"


「・・・グガァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」

空間が砕け散ったかのような轟音がほとばしり、人々の反射が始まる。
咆哮に満たされた路地全体がビリビリと異常な振動に包まれた。
すぐ傍のガラスがいくつか砕け、混じっていた女性魔法兵が気を失って倒れる。
動き出したほかの兵士は口々に叫びだし、慌てて傍らにいた獣を刺し殺そうとする。

「ひ、ひぃぃ!!何だこいつは!?ば、化け物ッ!!」

"吠える"という行動は本来威嚇を目的としている。
遠吠えにより縄張りを主張し、目の前の相手を威嚇する事で直接の争いを避ける。
人ですら、その本能に刻み込まれた記憶により、威嚇に対し硬直と言う反応を見せる。

―――だが、兵士達にとって不幸な事に、その狼は野生の獣ではない。
その獰猛さを具現化した肉体の中に、知性を宿した存在。
咆哮が絶えた時、いや絶える前からすでに狼はそこに居なかった。


―――"哀しみは怒りへ、恐怖は憎悪へ、他人への羨望は血の渇望へ"


291 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 17:59:58 0
グシャッ―――

鈍い響きと共に、槍を持った兵士の兜がひしゃげ、血に染まる。
それを見て叫ぼうとした兵士の首がへし折られ、自分の死を理解できないとでも言うようにがくりと落ちる。
次の兵士も、その次の兵士も。

狼は噛みつくつもりなどなかった。その必要もなかった。
鋭い刃や矢尻を恐れ、甲冑に身を固めた兵士達にとって、最も恐ろしく最も有効な攻撃―――
鋼の如き筋肉のバネを使った、殴打。それだけだ。

次の兵士は脚の防具の隙間を叩き割られ、短い悲鳴が上がった。
その兵士の脚をくわえると、勢いもつけずに半回転し、ボウガンを持ち上げた男に投げつける。
それを追うように直後に襲った、破城槌さながらの突進を胸に受け、男の心臓が破裂した。
ごぼっ、と湿った音を立て、狼の毛皮にドス黒い血が飛び散る。

わずか、数秒。
その間に、後から駆けつけた槍兵、それに生き残り連中の6人が血だまりの中に倒れていた。
残っているのは腰を抜かした数人、それに、漆黒のローブの男。
その男のローブに描かれた新月の紋章を見て、狼の眼が細く鋭くなる。


―――"記憶は怒りを呼び、憎しみへと姿を変え、かのモノを飲み込んでゆく"


「貴様…まさか。いや…クク、フハハ!そうか、貴様はあの時の!
 そうか、我が深遠なる研究の成果がここに二つという訳か!クハハハハ!!」

狂気を宿した笑いが響き、ローブの男が仰け反る。
それに応じるかのように狼が再度吠えると、男の腕に噛み付いた。
鈍い音が響き、男の腕がひしゃげ、血に染まる。

「が、ぎッ…ひ、クハハ!ヒハハハハ……!!」


―――"しかし真に哀れなるは、かのモノがどうしようもなく人であった事―――"


利き腕を砕かれながらも狂ったように笑う男を噛み付いたまま振り回すと、
そのまま触手を蠢かせる化け物に向けて投げつける。
その結果を確認せず、自らも走り出すと奥の一団の下へ駆けた。
結果などどうでも良い。いずれにせよ、あの化け物の存在が、後にこの通りの惨状の格好の説明となるだろう。

そこでは若い男――先程通りで追い越していった男だ――が、別の、返り血を浴びた男と向き合っているようだった。

292 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 22:04:15 0
阿鼻叫喚の地獄絵図。
それは先ほどまでの路地裏だった。
足元には多数の肉塊が転がり、血の河が出来ている。
正にそう呼ぶに相応しい光景。
しかし、それでも所詮は比喩でしかない。

今はそれすらも相応しくない光景が広がっていた。
文字通りの人外魔境。
突如として現われた魔狼に増援の兵はなぎ倒され、肉塊を増やす。
その骸を貪る巨大な蛞蝓。
そこに振り回し投げつけられた痩身長身の男もまた、異形と化していた。

噛み砕かれた利き腕は単なる腕の一本と成り果てている。
ローブの裾からは節くれだった異様に長い腕が数本伸びている。
その長い数本の腕は投げつけられた勢いを完全に殺し巨大蛞蝓に着地しカサカサと這い回る。
キキキキと鳴き声とも笑い声ともつかぬ不快な音を鳴らしながら蛞蝓と共に魔狼とシモンたち一行に向き直る。


裏路地反対側から巨大なプレッシャーと共に金色の光りが場に差し込んだ。
黒いローブの巨漢。
フードから見え隠れする眼帯は終焉の月の幹部の証。
「ふふふふ、赤い騎士のみならず魔狼もまた【門】に惹かれ現われたか!」
身体を発光させながらディーバダッタが立ち塞がっていた。

293 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 01:42:21 0
放った魔導弾は狙いあやまたず刃の鎖へ――しかしその鋼鉄の戒めを破壊することは叶わなかった。
大声で警告したが故か、レクストの存在に気付いた武器の繰り手は自ら拘束を解き刃を引き戻す。

「――やべっ」

思わず洩らしたレクストの呟きは炸裂音に飲まれて消える。
牽引された勢いで拘束されていた男が繰り手側に引かれ、そこへ飛来した魔導弾に被弾したのだ。
極彩色の閃光と割れるような爆砕音が轟き、低威力ながらも爆風の煽りをまともに受けた男は横殴りに吹っ飛ばされた。

「てめぇぇぇぇぇッ〜〜!ド三流コメディみたいな流れになっちまったじゃねぇかッッ!!」

裂帛の勢いで振り抜いた銃剣は空を切り石畳を砕く。爆風によって繰り手もまた後方へと飛ばされていた。
追撃をかけようと繰り手へと向きなおすが、背後で尋常ならざる魔力の奔流が立ち昇るのを感じ、振り向き、

吐いた。

拘束されていた男だった。そしてそれは、既に人としての原型を留めていなかった。全身のありとあらゆる傷口から触手を生やし、
放置したバターのような劇臭を放ちながら路地に斃れた仲間の死肉を貪るその姿は、教導院の外法魔術の教本でよく知るものだった。

「"降魔術"――!!       ……オエッ」

えずきながら記憶を辿る。魔獣や魔物といった類にはいくつかの種類がある。元来からこの世界に生息していたものもあれば、
この世界の物体を依り代として魔界や冥界の魍魎がこの世に受肉したもの――『降魔術』とは、そういった魔物を人為的に作り出す禁術指定の魔法である。

「しかも素材は人間かよ……!!依り代の自我が強いほど降魔し辛いって聞くぞ?――裏で誰か糸ひいてやがるのか!?」

触手男が繰り手に何かを喚く。固有名詞が多くて内容を掴み難い。しかし繰り手が青ざめたのを見て重要案件と判断する。
なんにせよ、護るべき対象はそうでなくなったことだけは理解できる。詳しいことは解らないでも、見るからにモンスターな触手男を野放しにするわけにはいくまい。

いくつもの気配が重複する。ぞろぞろと足跡を響かせて路地へと駆けつけるのは守備隊の増援。
渡りに船だ、ばかりにレクストは視線を向けるが、すぐにその眼を細めることになった。

「おお……こうも早く実験の成果が拝めるとは……」

増援の中心に立つのは長身痩躯の黒装束。その外套に刻まれた文様は、

「新月――"深淵の月"の紋章……!!どういうことだよ!?こいつらみんなグルなのか?」
「逃げるぞ…急げ」

思わず繰り手に意見を求めてしまう。帰ってきた答えは解答ではなく提案だった。
追い詰められた裏路地で、目の前にはグロい魔物と化した元・人。そしてその後ろに両手を使わなければ数え切れない敵の増援。
背後では肩で息をする盗賊風の繰り手と、腰を抜かしたらしき青年に腹部を貫かれた少女。繰り手が少女を庇うように立っていることから察するに彼の仲間。

大賛成である。全ての思考を放棄してYESにチェックを入れたい。土地勘のあるレクストならば彼らを連れての遁走は容易だろう。
だが、

「あの化物はどうする、あんなもん野放しにすんのかよ?確実に血の海だぜ。この街のオンボロ石畳に真っ赤な塗装はいささか前衛的過ぎだな!」

故に立つ。バイアネットのブレードを展開し、少女を庇う繰り手をさらに庇うように立ち、構える。
ブレード側面に術式紋章が描かれ、強化魔術を剛性及び切断力に補正する。

「俺は従士。庶民の護り手――なぁ化物よ、お前が街に牙を向けるってんなら、摘むぜその芽!!」

そして、
戦う覚悟を決めたとき、路地裏に新たに飛び込んできた影は、銀色をしていた。



294 名前:レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 02:55:28 0
(さっきの犬……!血の匂いにでも釣られて寄って来たのか?)

「・・・グガァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」

銀狼が、咆哮した。大気を震わせ鼓膜の奥にまで突き刺さる大音声は、この場の全ての生き物を瞬間的に硬直させる。
囲んでいた増援の数人が気絶して石畳に伏し、弾かれるようにして武器を構えた守備兵が銀狼の命を奪わんと振りかざす。

そしてまたそれも、一瞬だった。槍を振り下ろさんとしていた男の頚が縊り折れ、兜が砕ける。
噴出した血が路地に雨を降らせる前に、隣の男が犠牲になった。連鎖するように、銀の弾丸は鋼で固めた男たちの装甲を紙のように破壊していく。
ついに増援で立っている者がいなくなり、残った黒衣の男に牙が向けられる。痩躯の彼は容易く片腕を砕かれ、触手男のほうへと投擲。

黒衣の男もそれだけでは終わらなかった。触手男と同じように体の至るところから細腕を伸ばし、カサカサと這いずり回るように今度はこちらへ寄ってくる。
視線の先にはレクスト達が居た。正確にはその背後で蹲る少女へと張り出た眼球を向けている。
男は口端を歪めると金切り声で笑い、幾重にも重ねた腕を発条のように曲げ、つんのめり、そして跳んだ。弾丸が如き速度で少女のもとへと飛来する。

「――させるかよッ!!」

弾力のある衝撃音が路地裏に響き、少女のもとへその魔手が迫ることはなかった。レクストがバイアネットを振り下ろし、飛んできた黒衣を叩き落したのだ。
渾身の力で地面へと打ち下ろした衝撃は細腕の緩衝をもってしてなお彼の身体を貫き、石畳を大きく砕いて地面へとめり込んだ。

「おい、『手長』……。アンタこのタイミングで変身してどうすんだよ。うしろに触手男がいるだろ。見てみ?――うん」

たっぷり三秒、黒衣の男が態勢を立て直すまで待って、言った。

「多肢系で完ッ全に被ってんじゃねぇかァァァーーーーッッ!!」

裂帛を込めてバイアネットを叩き降ろした。完璧かつ流麗に唐竹割りの軌道を描き、神速を以って黒衣の脳天に到達する。
しかし黒衣とて人外、一撃では決まらない。大量の腕が高速で頭上へ伸び、打ち下ろされるバイアネットのブレードを受け止めた。
切断強化されたミスリル鋼の刃に受けた腕が数本斬り飛ばされるが幾重にも重ねられた肉と骨は如何なる切れ味を持つ刃物も貫くこと能わず。

「キヒヒヒヒィ!それで終わりか小僧?――私の腕はまだまだあるのになぁ!先刻の一撃で止めを刺さなかったことを後悔するがいい」

外套の下から細腕がさらに追加で伸びる。しかしレクストの方が早かった。バイアネットのブレード固定機構を解除し、肉に埋まった刀身をパージ。
戒めから解放されたブレードより下の部分――砲身が自由になる。腕に掴まれるより早く黒衣の額に押し付け、魔導弾生成術式に火を入れる。
動作は刹那。黒衣の男が自らの置かれた状況を把握し人外のデコに冷や汗を滲ませたころには、既に全てが終わっていた。

「は……な――!?」
「後悔ぃ?冗談だろ。俺が止めを刺さなかったのは、――説教が残ってるからだぜ?こいつを通して聞いてるんだろ"降魔師"、一言言わせろ」

声高に、荘厳に、厳粛に、崇高に、そして不敵にレクストは宣託する。

「たかだか二体でキャラ被ってんじゃねェェェェェーーーーーッッ!!!」

同時、押し付けたバイアネットのトリガーを引いた。ゼロ距離で放たれた『破壊』の魔導弾は閃光と爆音を砲塔から奏で、
連続射出された光の束は神に祈る暇さえ与えず黒衣の唯一の人間部分――頭部を欠片も残さず吹っ飛ばす。

鮮血すら蒸発する破壊術式の光条は黒衣の頭をこの世から刈り取り、黒焦げになった断面から拳大の宝玉が飛び出した。
逃げるように浮遊し自走するそれは降魔術の媒体として使われる魔導オーブである。内包されているのは実体を持たぬ魔界の魍魎。

連射によって砲身が過熱したバイアネットを傍に投げ、司令塔を失ったことで急速に風化していく細腕からブレードを抜き取り、
結合部分を握って一閃。降魔オーブは中心で真っ二つに割れ、小さな小さな断末魔を残して煙のように消滅した。

路地裏に残る敵は触手一体。銀狼の加勢によって盛り返したかに思われたそのとき、新たな影が戦場に差す。
視線を遣ったレクストは驚愕ののち、苦虫を噛み潰したような表情になった。

「あんたは――!!」

路地裏の出口で金色に発光する巨漢を知っている。実家で介抱されていたあの僧侶が、何故か彼らの前に立ちはだかった。

295 名前:シモン ◆71GpdeA2Rk [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 22:17:37 0
逃げようという意志とは裏腹に、状況はとてつもなく不利であるといえた。
ミア小柄であるとはいえ、ページにとっては抱いて走るのがやっとであった。
当然、後ろに注意を払っている余裕はない。

触手男はミアを奪おうという意志はあるようで、移動しながらしきりに触手を伸ばしては
ページに襲い掛かろうとする。
彼らを放置して逃げることも一瞬考えたが、財宝を奪い返すことを考えると
自分一人では動向を掴むことすら難しいとしか思えないのだ。
「この野郎…っ!」
”コカトリス”が伸びてくる触手に絡まり、次々と切り刻まれていく。
しかし、防戦の一方だ。良く見ると増援の兵士にはボウガンを持っている者もおり、
さっそくこちらに向かって構えはじめた。さすがの”コカトリス”も不規則に動く
細い触手相手では真価を発揮できないようである。毒針もあるが、これに効くとは思えない。
(くそっ…!)

そのときである。突如現れた銀色に光る狼男が踊りこみ、兵士に次々襲い掛かった。
「・・・グガァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」
再びその場は阿鼻叫喚となり、情けない断末魔がいくつも響きわたる。
その地獄に長身のローブ男も巻き添えになり、なんと衝撃でこちらに吹っ飛んできた。
それは触手男に当たり、やがて両者とも触手を生やしながら再び襲いかかろうと構える。

しかし、そこからが速かった。先ほどまで敵対していた魔法鎧の男が
新たな触手男に向き直り、魔法銃を構えた。
「俺は従士。庶民の護り手――なぁ化物よ、お前が街に牙を向けるってんなら、摘むぜその芽!!」
男は陽気なお調子者ぶりを披露しながらも、確実に触手男を追い込み、
魔法銃とその剣術を駆使してあっという間に片方を屠ってしまった。
もう片方はその抜け殻に食らい付き咀嚼している。しばらく時間は稼げそうだ。

思わぬ二人の心強い助っ人により、最悪の事態は免れた。
恐らくこいつらがいなければ、危なかっただろう。

後方からさらに強力な魔力が近づいてきた。驚きの連続だったせいか、シモンは冷静に
その方向を見た。
そこに居たのは、あの巨漢であった。
”月の幹部”らしく、黒いローブを纏い、体を発光させている。
こいつとやり合えば、この前のようにはいかないだろう。

「助かった。話は後だ…早くここから離脱するぞ!」
シモンは触手男から素早く離脱すると、巨漢の足元に毒針を数本投げつけ、
ページ、狼男、鎧の男を伴って素早く街路から路地裏へ、そしてさらに
その奥へと駆け出していった。

図書館前の街路には大量の血液、内臓、脳漿を撒き散らした複数の死体と、
それらを咀嚼する触手男と、体を発光させた幹部の巨漢が取り残された。
その光景、静寂はまるで別世界のような不気味さを放っていた。

296 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 03:51:33 0
>>281>>286
>「知っている限りのことを話せ。王国の財宝のありかも、”ゲート”についても…全部だ」
シモンが男の両腕を帯状の刃物で切り落とし、そのまま拘束する。
彼に対する認識が改まる。ここまで腕の立つ男だとは知らなかった。それに、
(この人、財宝が目当てだったのね)
落胆は無く、むしろわかりやすくて有り難いとすら思った。
彼女にとってはどうでも良い事柄ではあるが。

>ピラルの口から離されたのは、財宝はこの街に乱立する尖塔に一つずつ隠してある。
>ゲートを迎え入れる為に。
>全ては終焉の月の指示に従ったこと。

「……“ゲート”と財宝に何の関係が?」
疑問、そして発声による傷の痛みに額に皺を寄せる。
気遣うページを視線でとどめ、さらに問いを重ねようとする。
増援が来るようだが、この際構いはしない――もう、どうせ逃げ切れない。
そこに意識を集中させていたミアは、直前までその気配に気づくことができなかった。

>>284>>287
角の向こうで、覚えのない術式が膨れあがる気配。
重たげに向けた視線の先には、機械と術の融合した珍しい武器を携えた青年がいる。

>「な、何やってるんだお前!今すぐその人を放せェェーーッ!!」
>その魔法弾は弱っていたピラルを直撃し、爆風によりシモンはページのいる方へと弾き飛ばされた。
ここで、負傷者であるミアが「やめて」と一言口にしていれば、誤解はもう少し早く解けたのかもしれない。
だが彼女は言葉を発しない。発せられない。
彼女の意識は、正面で変貌を遂げつつある男に釘付けになっている。
「どう……して…………?」

斬り落とされた腕や各所の傷口から、蛞蝓のような触手が這い出ているピラルの姿。
見覚えがある――七年前、嫌と言う程。
「…………魔が墜ちた」

>>293
>「"降魔術"――!!」

正面から迫る異形を前にして一歩も動けないままに、考える。
施術者は誰?
私………何もしてないでしょう……?

297 名前:ミア ◆JJ6qDFyzCY [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 03:54:53 0
>「新月――"深淵の月"の紋章……!!どういうことだよ!?こいつらみんなグルなのか?」
>「逃げるぞ…急げ」
「きゃ…………」
視界が回転する。かつがれた。

>「おお……こうも早く実験の成果が拝めるとは……」

――施術者は、月――

その言葉を導いた途端、停滞していた思考が動き出す。
大事なのはそこではない。
銃剣を携えたこの青年は味方についた。諦めていた増援が現れたのだ。
少なくとも、この場だけなら逃げられる…?

その小さな望みをさらに色濃いものにしたのは――孤独な声――銀色の――

息を呑む。
視認に行動が追いつく寸前、その慟哭は地を揺るがした。

>>291
>「・・・グガァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」
>「ひ、ひぃぃ!!何だこいつは!?ば、化け物ッ!!」
獣が、手当たり次第に兵士たちを屠っていく。
最初は理性無く暴れ回っているのかと思った。
だが、そうではなかった。出鱈目のような動きの一つ一つには意志が感じられる。
何より先の慟哭に秘められた感情の揺らぎは確かに、



『貴方の中の人間の心がすっかり消えてしまえば、恐らく、その方が、貴方は幸せになれるでしょう。
しかしやはり、貴方は人間ですね。
その事を、この上もなく恐しく感じているのですね』



……彼、だ。
戦いの中、彼の開ききった瞳孔を目で追い続けていたら――目が合った。
「来て欲しくなかった」
気がつけば、そう口走っていた。
「……来てくれてありがとう」
そして、そんな矛盾するような言葉が続けられた。
それがあの赤い月の下の語らいに関係する言葉であることは、今の彼女には朧気に理解できた。
「彼は味方よ」
行動から明らかなことだが、自分を安心させるように改めてそう口にした。

刹那。悪寒が走った。
その圧力と金の輝きは、裏路地の逆方向から発せられていた。

>>292
>「ふふふふ、赤い騎士のみならず魔狼もまた【門】に惹かれ現われたか!」
喉の奥で引きつるような悲鳴を上げる。恐怖以上に、その強大な魔力に圧倒されかけた。
>「話は後だ…早くここから離脱するぞ!」
担がれたまま、その言葉に頷く。そして、ちょうど手の届くところにいた強化鎧の青年の袖を引き、
「……この町の人?」
こんな状況においても、内心はどうあれ彼女の表情は空っぽのまま。
だが出血と心労でその肌は紙のように白くなり、その眉は僅かに寄せられている。余裕のない事は伝わるだろう。
「…………道を頼むわ。旅の途中よ、土地勘なんてない……」
最後に背後を一度だけ振り返る。
夥しい量の人の部品、その遺骸。美味そうに貪り喰らう異形の男、平然と笑む巨漢。
不気味だと思った。――異質だとは思わなかった。

298 名前:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 06:21:49 0
レクストによって身は爆発し、降魔オーブを割られた異形は崩れていく。
同じ異形が屠られたというのに蛞蝓は全く動じる事もなく蠢く。
転がる死体、流れる血の河。
異様な雰囲気に包まれた路地に瘴気が立ち込める。
それは先ほど蒸発した降魔オーブ。
否、降魔オーブに潜めしモノ。
霧のような瘴気は歪み、禍々しい顔の形となった。
『愚・・・な。既・・・の場にお・・・は現・・・と・・・岸の・・・ない・・・!』
聞き取り難いがその声のおぞましさだけははっきりしている。
そしてそれから起こった事も。
蛞蝓は身体を更に大きくし、転がっていた骸が蠢き立ち上がり始める。
そして河のように流れる血すらも意思を持つかのように泡立ちうねり始める。

異様な雰囲気の中、ギルバート、レクスト、シモンの前に立ちはだかるディーバダッタ。
ギルバートの存在に邪悪な笑みを向けたが、驚愕し搾り出すように声を上げたレクストに対しては無反応だった。
いや、僅かに冷たい視線を向けただけですぐに視線は他に移る。
向けられる先は魔界と化した路地全体。
それだけで巨大な蛞蝓が、蠢く骸が、泡立つ血の河が・・・そして空気すらもその音を失う。
ギリギリと歯を噛む音だけが裏路地に響き渡る。

>「助かった。話は後だ…早くここから離脱するぞ!」
静寂を破ったのはシモンの声だった。
毒針を投げつけると共に仲間を伴い素早く路地裏へと駆けていく。
駆けていく一行を追おうとする人外たちとは対照的に、ディーバダッタは動かなかった。
しかしその怒気は膨れ上がっていく。
「タワケが!門への負荷も考えず合を待たずに引き出すとは!」
路地に響く一喝。

その後、路地からは異界のような雰囲気が消え、蛞蝓も消え、骸は骸となり転がる事になる。
凄惨な虐殺現場ではあるが、それでもそこには人の世の雰囲気があった。
足に突き刺さった毒針を無造作に抜き取り、死屍累々の路地から巨漢は消えていった。


翌朝・・・ヴァフティア中が大騒ぎになった。
大図書館付近での虐殺後が原因だった。
目撃証言も多数寄せられ、新聞は号外が出るほどだった。
それによれば、終焉の月の男達が人狼と共に自警団の一隊を虐殺。そして少女を誘拐した。とあった。
夜半の事で犯人の特徴の事は書かれていない。
そう、あれだけの異形の怪物たちとの激しい戦闘であったにも拘らず、目撃証言は一切その事に触れられていなかった。

市長はこれに対し、怒りの声明を発表。
終焉の月のテロには屈せず祭りは決行。
市の威信にかけて安全は守る、と。
その生命どおり街には衛兵が溢れ市への出入りは厳しく制限され、厳戒態勢並みの警備が敷かれている。

299 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/09/03(木) 01:36:42 0
>>293
何をしている?今がチャンスなのだ、とっとと逃げればいいものを・・・!
通りの奥の一団に向かって駆けつつ、苛立ちを覚える。
と、その時若者が何かを叫んだ。つられて後ろを振り返ると、状況は一変していた。
そこではあろうことか"人であったモノ"が二つに増え、
不気味にうねる触手と節くれだった腕が絡み合うように増殖している。

―――冗談だろ?向こうに化け物一匹、こっちも化け物一匹でお相子だったろうが・・・!

見れば、"ゲーティア"は負傷している。
このままとっとと逃げたい所だが、あの男二人・・・いや、今は二匹となった化け物は、どうする?
四人が逃げる事を期待し、自分が化け物連中とやりあうか―――
そこまで考えた時、黒衣の化け物が飛びかかり―――意外な人間がソレを叩き落した。

>「おい、『手長』……。アンタこのタイミングで変身してどうすんだよ。うしろに触手男がいるだろ。見てみ?――うん」
>「たかだか二体でキャラ被ってんじゃねェェェェェーーーーーッッ!!!」

―――成る程。その発想はなかったわ。

>>292
>>295
>>296
狼が砲撃により漂う黒煙とその臭いに顔をしかめ、前方に注意を戻した時、三人目の来訪者が現れる。

>「ふふふふ、赤い騎士のみならず魔狼もまた【門】に惹かれ現われたか!」

黒いローブに描かれた新月の紋章。
それを確認するまでもなく、この巨漢もまた"月"の一員である事は明らかだった。
"魔狼"と言った―――この男に見覚えはないが、向こうはこちらを知っているらしい。

いずれにせよ、障害には違いないのだ。ちらりと"ゲーティア"に目を向ける。
意外にもこちらを見ていた少女と眼が合ってしまい、少なからず動揺する。
闇の落ちる中でよく光る瞳。その時、その唇が何かを紡いだだろうか?

無理やりに視線を戻し、相手の利き腕を見定める。先程と同じだ。時間を稼げればいい。
覚悟を決め、その巨漢に飛びかかろうと身構えた時、傍らの男が巨漢に針を投げた。

>「助かった。話は後だ…早くここから離脱するぞ!」

ローブの巨漢は無反応だった。どういう事だ?追う気がないのか―――?
もう一人の仲間らしき男が"ゲーティア"を抱え上げ、走り出す。

「ガァァァァァアアアアウ!!!」

飛び道具を持った連中の脅しにもう一度咆哮し、狼もその後を追った。

300 名前:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s [sage] 投稿日:2009/09/03(木) 01:38:33 0
・・・しまった。
より正確には、やってしまった。

先程からの答えの出ない堂々巡りの思考にイラついたか、
無意識の内に前足で床を引っ掻いていたのだ。
これが猫なら良い感じに爪が研げたかもしれないが、相手は凶器としか言えないような狼の爪。
気が付けば床の木材がごっそりえぐれ、悲惨な事になっていた。
ひとまず、体の位置を移して被害を隠匿する。

あれから、この街に詳しいらしい若者―――レクストと名乗った―――の案内でこの家に駆け込み、
とりあえず怪我人の傷の手当に取り掛かったところだった。
狼はひとしきり辺りを嗅ぎまわり、地形を把握してから腰を落ち着けた。

これからどうするか―――あれだけの失態を演じたのだ、
敵は簡単には自分達を街から出そうとはしないだろう。
自分一人ならば容易く出られるだろうが―――勿論、狼にそんなつもりはなかった。
乗りかかった船。毒を食らわば皿まで。何より"ゲーティア"―――いや、ミアと呼ばれていた。
それに、シモン、ページ。自らの過去にも関わる事。しばらくは連中に付き合うつもりだった。

狼が考えているのはそんな事ではない。いつまで狼でいるか、という事だった。
こうしていても、ちらちらと自分に向けられる視線を感じる。
無理もない、同じ立場だったら自分でも不安に思う。

問題はミアだ。それがデフォなのか、無表情で何を考えているのかはうかがえない。
時折こちらに投げる視線に何か含んでいるような何もないような、
何とももどかしい感覚に狼の心中は穏やかでなかった。
話の流れから、彼女が"門"と呼ばれた者であるのは間違いないようだが・・・
―――もし、彼女が"ゲーティア"と呼ばれた者の記憶を持っているとしたら?

だとしたらこれほど小っ恥ずかしい事はない。
かつてがどうであったにせよ、今のミアはどこからどう見てもまだ年若い少女である。
今"人"に戻ったとして、そんなミアと何をどう話せば良いというのか。
しかしかと言って、満月の前後ならばともかく、このまま狼の姿をいつまで保てるか―――
遠からず魔力の供給の限界が来るはずだった。
そもそもこの程度の月の満ちで、これほど長時間自我を保ったまま"変われる"事が―――
―――ああそうか、"門"の近くにいるからか。しかしそうなると、これはミアに余計な負担を・・・

「・・・ガゥウウ」

半ばうんざりし、溜息とも呻きとも付かない声を漏らす。床を掻き毟りたかったがそれは我慢した。
一先ずはそのままでいる事を決め、首をねじって腹に巻きつけていたバッグを器用に外すと、
その場に寝そべって毛繕いを始めた。いい加減こびり付いて固まった返り血が気になっていた所だった。

301 名前:(1/2) レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 本日のレス 投稿日:2009/09/05(土) 00:01:20 0
朝一番で詰め所へ行った。

帝都からの派遣従士として挨拶と認証施術を受ける必要があったし、何より昨夜の情報を一つでも集めたかったからだ。
ヴァフティア独立守備隊総合駐屯庁舎、その隊長室に通されたレクストは守備隊長プリメラ=イーリスと対面に応接されていた。

「君が帝都の従士隊からこっちに派遣されてきたリフレクティア君か。――その姓、この街の老舗に覚えがあるが」

長いキャリアを要求される職にありながら、今なお百戦錬磨の英傑として名高い正漢が書類とレクストの認識表を見比べながら問う。
言われたレクストは隠すことも無く己の出自を述べた。

「ええまぁ、出身はこっちですよ。『リフレクティア商店』。七年前に帝都の方に上京しまして、去年まで王立教導院にいました」

「なるほど、ならばこのヴァフティアは地元だな?土地勘があるに越したことは無い。遠方からはるばるすまんね、
 我々としても自警という形で収めたかったのだが状況が状況だ。加えて昨夜の事件――」

言ってプリメラが遠くを見るように目を細めるのを、レクストは背骨が凍るような思いで眺めていた。
昨夜のことは既に周知の事実となっている。彼らは顔こそ見られなかったものの、昨日市内に入ったばかりという立場は
それだけで疑いの目を向けられる要件を満たしている。正式な要請を受けていたレクストはまだマシとしても、彼の家で匿っている連中は……。

「その昨夜の事件のことなんですけど、殺されていたのはここの守備隊の人たちなんですよね?」

「それがどうにもはっきりしないのだよ。死体は損傷損壊が甚大で個人の判別などつかなかった」

レクストの問いにプリメラは苦虫を噛み潰したようにして答える。記憶の底に封じておきたいような光景を反芻してしまったような表情。
昨夜の路地裏は凄惨を極めていた。死体をさらに冒涜するような、そう――

「――喰われたような。そんな傷痕だった……パーツの数が合わない死体もザラにある。辛うじて装甲の個人認識証が残っていたのを
 照合してみたんだが、唯一無二であるはずの認識証が全て同じものだった。つまり、」

「何者かによって複製されていた。――とまぁそんなところですな」

横から声が飛んできた。見ればいつの間に入ってきたのか、白衣を着込んだ痩身長髪の女性が書類を小脇に抱えて立っていた。
眩しいほどに照り返す白衣はまだ使い込んでいないことの証であり、それを纏う女性もまた若い。レクストとどっこいどっこいではなかろうか。
      アナライザー
「『魔術系技能捜査鑑識課』のメリア=トロイアです。割り込み失礼――イーリス隊長、件の認識証複製魔術ですが。
 もともと『複製』を防止する術式が織り込まれている代物でして。これを解術してさらに『複製』をかけるのは至難の技ですな」

「やはりそうか……極めて高度な魔術を行使でき、尚且つそれを悪用せんとする者達が居る。解らんのは何故その『悪用する側』が路地裏で
 惨殺されていたのか、だ。仲間割れか?あるいは、いやこれは考えたくないが――」

「もう一つ、高い戦闘能力をもった勢力がいるか。ですな」

台詞を取ったメリアに眉を平らにした視線を送り、プリメラはレクストの方へと向き直る。

「なんにせよこれはこの街での問題だ。人に害為す者があるならば外へ逃がすわけにもいくまい。リフレクティア君にも協力を願おう」

「ええ。俺もこの街には家族も居ますし、可能な限り力になりますよ。――では」

レクストはぴしりと敬礼を送ると、そのまま踵を返して退室した。"家族"という単語にプリメラの眉が一瞬傾くのには、とうとう気付かなかった。
彼の姿が扉の向こうに消えると、プリメラとメリアは同時に嘆息を吐き出した。プリメラはソファーに腰掛けると、そのまま掌を目の上におき、

「トロイア。――どうだ?彼は」

「はー、気付かれないように『分析』かけるの大変でした。素性に嘘偽りはないようですな。出身もこの街の『揺り篭通り』で間違いないです。
 24時間以内に戦闘の痕跡が見受けられましたが、昨日の夕刻にこの辺りを荒らしまわっていた商団専門の賊を入門管理局に
 引き渡しております。能力は従士隊の中では並、魔術耐性も適正も並――典型的な才能のなさを努力で補ってるタイプですな」

「彼はシロか……ならば信用しよう。ご苦労だったなトロイア、なにせ分析術を術式なしに発動できるのは守備隊でも君ぐらいなものだ」

駄賃代わりに有給票をくれてやり、プリメラは対面を見る。そこに居るはずの占星術師は、今日になって一度も姿を見せていなかった。

302 名前:(2/2)  レクスト ◆VhWYERUtMo [sage] 本日のレス 投稿日:2009/09/05(土) 00:59:52 0
昨夜は散々だった。僧侶の介入によって混沌を極めた状況、暗器使いが先導しての離脱。

『……この町の人?』
『…………道を頼むわ。旅の途中よ、土地勘なんてない……』

引かれた袖の弱弱しさ。白磁のような血の気の失せた少女。
旅人風の青年に背負われて、腹部を自らの血で真っ赤に染めながら、それでも前に進もうとする彼女。

『とりあえずこっちへ――!』

幸い故郷は七年前とさして変化がなく、抜け道近道を総動員してなんとか人目に触れずに遁走することができた。
僧侶がその気になれば追う事もできただろうが、しかして彼はそれをせず、路地裏の入り口で屹立しているだけだった。

少女を護るようについてきた銀狼とともに、リフレクティア商店に戻ってきたのが夜半、そこからが大変だった。
酒場のカウンターでうつらうつらしながらもレクストの帰りを待っていたリフィルが飛び上がり、大急ぎで兄達を呼びにいく。

『大丈夫、急所は外れてる。この程度なら――』

リフィルが治癒術式を唱え少女の腹部を癒している間に、ティアルドに状況を説明して全員を匿える手筈を整える。
重傷者の少女はともかくとして、男二人――特に暗器使いは信用に迷ったが、他者の血に塗れた姿でうろつけば即座に拿捕である。
そうなれば治安の悪いヴァフティアにおいてすべての抗弁は無駄となる。取り返しがつかないのだ。

(後悔はどうであれ取り返しのつく形でしないとな……)

果たしてレクストの懸念は見事に当たった。翌日事件が発覚してからすぐに、市内全域に厳戒態勢が敷かれたのだ。

                                    ――――――――――

母屋から持ってきた食料を抱え、レクストは渡り廊下を歩む。旅人達を匿っているのはリフレクティア商店の倉庫兼離れ。
在りし日のレクスト(思春期)が家族と一緒に眠ることを嫌って過ごしていた部屋でもある。

「よう、お三方と犬一匹!食いモンと地図もって来たぜぇ〜〜!」

扉を勢いよく開けると、中の全員がこちらを見た。壁に寄りかかるようにして座りながら暗器の手入れをしているのがシモン。
ブランケットに包まってじっとしている少女がミア。その傍で介抱しつつ何やら書き物をしているの青年がページ。
そして部屋の隅で寝そべっている銀狼と、四者が四様の視線で返す。
レクストは部屋の真ん中に置かれたテーブルに市街地図を広げた。ページが所望したものだ。

「とりあえずヴァフティアは十字のデカい大通りを基点にして街が広がってるって感じだ。枝分かれみたく増設するから路地が多い。
 中央噴水広場を中心にして、北が俺達の居る『揺り篭通り』、南が繁華街とか露天商の多い『カフェイン通り』。
 西が市立図書館とか魔術師の塔とかある観光地帯で、東が入門ゲートのあるヴァフティアの玄関口だ。ここまではオッケーな?」

頷きを返すページの傍で何故か銀狼までが地図を覗き込んでいた。理解できるのだろうか。

「この中央広場から神殿に繋がる道があって、ラウル・ラジーノ――3日後の祭りの本会場になってる。この祭りはこの辺りじゃ最大規模でよ、
 他の街からも沢山の人が来るんだ。そりゃあもう、ごった返すぐらいに。今は厳戒態勢だからわからんが、
 入門管理局をほとんどスルーで街に入れる唯一の機会。つまり、昨夜の連中――『月』が動くとしたら、その時だ」

放った単語に皆が一様に固唾を呑む。

「明後日の前夜祭。奴らに抗うのならこの時までが準備期間のリミットだ。それまでに必要なもんがあったら街で揃えとくといい。
 幸いなことに俺達の顔はまだ割れてないから、普通に街は歩けるはずだ。あと、ウチで匿ってやれるのも三日後までな」

倉庫は通りに面した場所にあり、見慣れぬ旅人が出入りしていれば必ず守備隊に目を付けられる。三日――それがシラを切れる限界である。

「まぁ硬く構える必要はねぇさ!のんびり観光でもしてればいい。図書館なんかいいぞぉ、なんてったってデカい。
 国境近くだから異国のモンとかいっぱいあるしな――ん?おい犬、なんでそんな無理のある態勢で地図を……あーーッ!!
 あ、穴開いてんじゃねぇか床に!おいおいトイレも躾けられなかったのかよこの駄犬!!」

ラウル・ラジーノまであと三日。深淵なる闇の胎動は、薄い膜の向こうで不明瞭に存在している。

303 名前:コクハ ◆SmH1iQ.5b2 [sage] 本日のレス 投稿日:2009/09/05(土) 06:17:26 0
あれからコクハ達は町中を歩き回った。
「この人知りませんか」
買い物帰りのおばさんに似顔絵を見せ、家を一軒一軒回った。
時には悪質セールスマンと勘違いされ、無視されるようなことまでもあった。
それでも、コクハ達は必死に耐え抜き、とうとう最後に一軒にまで達した。
「全滅・・・」
もう限界と言わんばかり、肩を落とした。
空は赤く染まり、隊員やコクハ達の姿が影を落としている。
皆一様に疲れた表情をし、黙々と歩いている。
PiPi
音が鳴り響いた。
隊員たちが一斉に胸ポケットから薄いカード状のものを取り出し、耳に当てているのが見えた。
コクハもそれに倣い胸ポケットからカードを取り出し、耳にあてる。
―只今…援軍…する
カード越しに相手の声が聞こえるが、その声はノイズ交じりで、よくわからない。
「いったい何?」
ため息をつきつつ帝都の魔法技術を結集して作れたカードを元あった場所に戻した。
急に胸がざわめきだした。
嫌な予感がする。
「コクハさん」
隊員の一人が声をかけてきた。
疲れ切った表情はもうそこにはなく、治安をあづかるものの顔をしていた。
言わんとすることはわかる。
「転送装置はある?」
「ええ。治安事務所に行けば、あります」
あるなら初めからそれを使えよとコクハは思った。
だが、今はそんなことを考えている暇ではない。
愛用の黒い剣を確認し、治安事務所シド支部へと走り出した。


■ダークファンタジーTRPGスレ■

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