ライトファンタジー

赤と黒・ ◆gCP4pMI0TA#############################

201 名前: ◆gCP4pMI0TA [sage] 本日のレス 投稿日:2008/12/26(金) 03:11:34 O
【赤と黒】
死霊皇帝の根城付近の森、その森の奥にその村はあった。
その村は戦う力の無い者の為に作られた村ではあるが、それは建て前で
実のところはゴミ捨て場となんら変わらない
本来ならば、死体の山が出来ていても不思議ではないが、ある男の気紛れのお陰で村人は生活することが出来ていた

朝焼けと共に男は村にやってくると、護衛として置いた番と村人らに笑顔で挨拶し、日課を始めた。

だが、丸一日かけて行う日課はその日に限って、たった二時間を終わることになった。
来客である。身なりは紳士ではあるが、その眼孔は血に飢えた獣を連想させるほど殺気に溢れている
彼の名は獄炎のバルトール、六武神の内の1人だ。

村から少し離れた所にある湖の畔にて、バルトールと男は腰を下ろし、葉巻をふかしている
「よく続くな」
初めに口を開いたのはバルトールからだった。
「初めは貴様が、また似合わないことをやり始めたと思ってたが」
「まぁな…」
男は静かにそう答えるとそのまま、続けた
「嬉しくってな…」
「嬉しい…?」
疑問に眉を歪ませるバルトールを尻目に男は続ける
「死に物狂いで戦ってきて勝ち取れなかったものを手にしたよ」
「…?」
「信頼……」

[続く]


202 名前: ◆gCP4pMI0TA [sage] 本日のレス 投稿日:2008/12/26(金) 03:12:17 O
男は静かにバルトールに話す。
「何気ないことに力を貸す俺を、あいつらはただ信じてくれる…
 感じるんだ…老い傷ついた手から俺への全幅の信頼…その手応え…」
「……」
「力では手に入れられない…どういうわけか力じゃ手にできなかったな」
「…なるほど………下らんな」
煙を吐き出しながら、バルトールは男の言う「信頼」を軽く否定した
確かに、魔族としては当然の解答に違いない。それほど、男は変わり者であるのが再認識できた。
「ところで疾風の…あの女に連絡はつくか…?」
その時、男の表情は一変した。
「え……みつかったのか?」
「無論だ…まず『器』がぴったり、境遇も好都合…人間にしておくには惜しい資質もありそうだ
 ほとんど、あの女の意向にぴったりさ」
「……ふーん…
 信頼するにたる男ってわけだ…」
「……そうとも言えんがな。利を与えている限りは充分使える」
「ためしていいかい…?」
「何を…?」
「あの女に会わせる前に、俺も確認しておきたいんだ
 そいつが本当に信頼できるかどうか…?」

[続くッ…!]


203 名前: ◆gCP4pMI0TA [sage] 本日のレス 投稿日:2008/12/26(金) 03:15:06 O
徐々に悪人顔が露わになる『疾風』の名を持つ男は続ける
「これはなにも、その男が裏切るとか…そんなことをいっているんじゃない…!
 さっきの怪我人達を霊に出すとわかりがいいさ…
 あいつらは間違いなく俺を信頼してくれているんだが…
 その信頼の根っこを支えているのは、俺の心とか善意とかじゃなく『力』…自分らを十分に守れるってことだろ…
 つまりは、能力だ…!
 どんな奴が手助けしても、どうしようもない屑ならば彼らにとってこんなに心細いことはない
 俺はその男の能力を計りたいんだ
 わかるだろ?獄炎の…!」
「フンッ能力か…」
「今、ちょうどうってつけの『仕事』があるんだ
 その人間の腹ん中、器量、全部計れる最高の『仕事』俺が口をききゃあ仕事には加われる
 頼むよ獄炎の…!
 その男

 計 ら せ て く れ ……!」