1 名前: ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/03(木) 23:05:11 0
解き放たれた世界は、終わらない物語を紡ぐ

それは人と龍と獣の…果て無く続く闘争の叙情詩


【物語は】ETERNAL FANTASIAU避難所【続く】
http://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1174484819/l50
参加に関してはこちらで相談をお願いします

2 名前:在全[] 投稿日:2008/01/04(金) 00:36:28 O
クキクキ…!

3 名前: ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23:53:48 0
ありったけの精神力を持って魔剣ジェネヴァの奪取を試みるラーナ。
しかし、レシオンの力はそれを許さないほど強力だった。
「くっ……なんて手強い」
よろめくラーナにリオンが声をかける。
「女神様だいじょうぶ?」
帰ってきたのは、弱々しい呟き。
「私は神などではない……」
「え?」
「こうなったのは私達の責任、彼は私達の身勝手な計画の犠牲者なのです。
私の仲間に危険な遺伝子変換を施されてかろうじて生き残った実験体。
それだけでは飽きたらず、私の仲間は、監視のために彼に世界樹の書を刻み込んだ。
全てが裏目に出ました。
人格が崩壊して暴走を始めた彼を誰も止める事はできなかった……。
その上、私たちと同じ身体構造になったために世界樹の書の情報を引き出して
あの力を手に入れてしまったの……」
「ねこぱーんち!!」
リオンは、長い話を最後まで聞かずに右フックの猫パンチを叩き込んだ。
「「「「えぇえええええ!?」」」」
文字通り神をも恐れぬ態度に周囲が騒然とする中
ラーナをびしっと指差して叱咤激励するリオン。
「しっかりして下さい! 誰がなんと言おうとあなたは神様です!
だってみんな信じてるんだから今更仕方ないじゃないですか!
信仰は最強です信じる事信じ続ける事が本当の強さなんです
信じれば救われるんです怪しいカルトだって信じてる人にとっては真実なんです!」
よく分からない方向にいってしまった話を、ラーナがさらに盛り上げる。
「確かに信仰はの力は強い。でもあなたはもっと大切なものを見逃している。
世の中で最強のものは……愛です!」
そして、彼女は後ろのモニターをびしっと指差した。
「見なさい、あの少女の愛の勝利です!」

4 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/01/08(火) 18:12:12 0
荘厳な作りの通路をひたすら道が続くまで音楽隊の面々は歩き続けた。
誰もがまた無限回廊なのではと疑問に感じたあたりで、広いホールの様な場所に一行は辿り着いた。
「まるで・・・・闘技場じゃの・・・・」
シャミィがそのホールを見渡せば確かに、中央に広いすり鉢状の箇所があり、その周りを囲む様に壁が立っていた。
「あそこに誰かいますね」
アーシェラが指を指した先には、確かに人がいた。
一見、その髪が白髪だったせいで老人かとも思ったがそれは違った。
次にその逞しい体つきと身なりからまだ若い事が解った。
最後に彼は音楽隊を見て、警戒したのか臨戦態勢をとっている最中だった。
瞬間、ブルーディは、シャミィは、アーシェラは、レジーナは、レベッカはその場を飛び退いた。
2テンポ程遅れて衝撃音、そしてさらにもう1テンポ遅れて皆が飛び退いた場所が爆破四散した。
「うおおおおおりゃあああ!!」
白髪の青年が絶叫する、その肢体が膨れ上がる 追撃の一撃を放つ為にその目線を相手に移して、
「あれ?人だ?」
「「「「ぐぉおおおおおおらああああ!!またんかい!!」」」」
アーシェラが思わず青年、リッツの胸倉を掴む
「じゃあ何か?間違えました御免なさい言ったら怪我させてもOKなんか?おお?」
「ちょ、や、やめるのじゃ、あまりの怒りにキャラ自体が変わっておる?」
「逃げてーーー、そこの白い人逃げてーーーーーー」
「ごめんなさい!!謝るから力技で毛抜くの勘弁してくださ・・・いったあーーーー!!」
途中、色々あったがどうにかこうにかアーシェラの怒りが収まった頃に異変は起きた。
「空気が震えている?」
それは最初は微かな震えだった。それに気がついたのは絶対音感を持つブルーディだった。
次に時空の歪みを二人の賢者が気がつき、最後に、皆が気がついた。
けたたましい轟音をたてて背後の空間が崩れてゆく。地面が激しくうねる。
「は・・・走れーーーー」
誰が叫んだのかは解らない。だがその声と共に全員がまだ破壊の始まっていない方へと走り始めた。



5 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:30:31 0
『異端者よ。ラーナよ・・・。』
モニターを見つめるラーナの背後から呼びかける声に全員が驚き、振り向いた。
確かに注意は前方に集中していた。
だが、そこには誰もいなかったはず。
にもかかわらず、それはそこにいた。

  黄金の仮面。

「え、ちょ?お知り合いにしては雰囲気違いすぎるんですけど???」
その異様な雰囲気にトカゲの尻尾団がそろって三歩後ずさり、リオンは動くことできずにいた。
呼びかけられた当の本人、ラーナの表情は一変していた。
あまりの変わりようにレーテが突っ込めずにいるほどに。
「お前は・・・!まさか、あの計画はこのセフィラでも続いていたというの!?」
二人の間に緊張の微粒子が満ち、辺りの風景を歪ませ始める。
変態であってもレトの民。
そして異端でありながら・・・否、異端であるからこそ愛を司る神となったラーナの真なる力の一端である。
二人の気の圧力に、人間であるリオンたちはただそこにいるだけで力が消耗されていく。

それを救ったのはレーテであった。
五人をかばうように前に立つと、まるで保護膜に包まれたかのように消耗が止まった。
「見た感じ招かざる客のようだけど、手を貸しましょうか?」
一歩前に出ようとするレーテをラーナが振り向く事無く片手を挙げて制する。

そんなやり取りがまるで目に入っていないかのように・・・、いや、実際に目に入っていない。
黄金の仮面にはこの場でラーナしか認識していなかった。
それ以外は認識する必要すらないのだから。
黄金の仮面は厳かに言葉を紡ぐ。
ラーナだけに理解できる言葉で・・・そう、レトの民の言語で、だ。
『異端とはいえそなたもレトの民。そして【プロジェクトエターナル】の初期研究主任。
既に蝕の時は近い。
違えた道を再び交わらせることは・・・?』
『否!それは愛ではない!私の意思は変わらない!』
『・・・・・・・・。』
黄金の仮面のいざないを即座に、そしてきっぱりと断るラーナ。
ラーナの言葉もまた、黄金の仮面だけが理解できるレトの民の言語でだった。
その後、無限とも思えるような数秒の沈黙の後、黄金の仮面は唐突に消えた。
現れた時と同じように。

6 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:30:59 0

「ちょ・・・なにあれ!なにあれ!大概の事では驚けないと思ってたけど、なによあれ!!??」
「何言ってたの?いきなり聞き取れないんですけど???」
黄金の仮面が消えてたっぷり数十秒の後。
ようやく動き始めたときとともに蜥蜴の尻尾団が我先にとラーナに詰め寄る。
あまりの唐突さに、そしてあまりの意味不明さに聞かずに入られなかったのだ。
ラーナはゆっくりと、その問いに答える。
「あれは・・・どこにでも存在し、どこにも存在しないもの・・・
私達レトの民のセフィラを襲った大罪の魔物を滅し、セフィラをも焼き尽くしたもの。
私達が・・・つくりしもの・・・です・・・。」
「あほかぁああああ!なんつうもの作ってんだ!!!!」
儚げに目を瞑り告白するラーナだが、そんなシリアス路線は許されるわけもなかった。
十分に反動を効かせてのレーテパンチが炸裂する。
血反吐を吐きながら三回転して壁にめり込むことになる。

レーテの怒りももっともである。
いや、正確に言えば紅星龍イルヴァンの怒りでもあった。
紆余曲折を経たとはいえ、最終的には龍は新しき神、すなわちレトの民に駆逐されているのだから。

元々なかったが、血反吐を吐きながら壁にめり込んでしまっていては女神の威厳もあったものでもない。
「ああっ!」
にじり寄るレーテとリオン、蜥蜴の尻尾団の四人を前に、突然レーテは声をあげる。
モニターで動きがあったのだ。
その声にラーナににじり寄っていた六人の視線もモニターに戻った。


そんな六人を傍目にラーナは思い出していた。

まだ自分達のセフィラにいた頃・・・ラーナは優秀な研究者だった。
レトの民は一つの理念のために壮大なプロジェクトを行っていた。
    【世界を一つにする】
あらゆる差別も、争いもない、そんな世界にする為に。
しかし、やがて巨大な計画は一人一人の気持ちを歯車として巨大な生物のように蠢きだす。
その歯車のひとつであるラーナは、巨大な計画を前に畏怖を覚え、道を分かつのだった。
そこにあったはずの愛が感じられなくなったがために。

ラーナが道を違えたあとも、計画は続いていた。
それが故にセフィラは大罪の魔物に蹂躙され、結果、己が作り出した禁断の炎でセフィラをも焼き尽くしたのだ。
禁断の炎はセフィラだけでなく世界樹にまで及ぶ。それを防ぐために断罪の使徒がセフィラを世界樹から切り離した。
そしてレトの民のセフィラは消滅し、箱舟計画が実行されることになる。

それで終わったはずなのだ。
だが、箱舟計画すらプロジェクトエターナルの一部に組み込まれていたと、黄金の仮面を見てラーナは悟ったのだった。

7 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/09(水) 12:15:46 0
魔剣ジェネヴァが宙を舞い、空間に不思議な文字を描く。
セイファートは、致命的だった傷が嘘のように消えていくのに気付いた。
神官が行使していた奇跡と同じ、しかし何倍も強い治癒の力。
魔剣は、何か言いたげにジンレインの前に浮かぶ。
『ごめん……ひどいことしたね』
聞いたことも無い声。でもずっと側にいた。
『これからはずっと君の味方だよ』
「あなたなの……?」
戸惑いながら剣にそっと手を伸ばすジンレインに、セイファートが頷く。
「そうだよ。やっと……やっと認められたんだ」
「おいヘタレと小娘! それどころじゃないぞ!!」
リリスラが叫んだ時には、すぐ後ろまで空間の崩壊が迫ってきていた。
「うああああああああ!? パルメリス様助けてー!!」
「ええ!? でもあの人触角付けてないお!」
「もうこの際誰でもいいから助けてー!」

「助けてって言われても!」
後ろから迫り来る空間崩壊。こうなったら後先考えずに強行突破するしかない。
レシオンが向こうに行ったらややこしい事になるがその時はその時だ。
レシオンが雨のように降らせてくる重力球を粉砕しつつ足元に全ての属性を司る魔法円を展開する。
平たく言うと白銀に輝く巨大な時計盤のようなもの。
「巡れ、廻れ、運命の輪《Wheel of Fortune》」
呪文を唱えると、魔法円の針が高速回転を始める。
両手を掲げ、力を空間に収束させていく。それは巨大な光球となった。
「そこをのけええええええええッ!!」
チャンスは一回、一気に解き放つ極彩色の光の束。
狙うはレシオンではなく、その後ろにある扉。
「あっあれは……六龍閃の二倍バージョン!?」「いや、違うだろ!」
意外なことに、光の束は狙って無かったレシオンにもぶちあたり、そのまま扉へと突き進む。
扉が開いたついでにレシオンも一緒にその向こうに吹き飛ばされていった。
「ああっ! レシオン行ってしもた!」
それだけではなかった。色んなものが扉に吸い込まれるように飛んでいく。
「そうか……不安定な空間にあるものは自ずと安定した空間に……
あぁあああああああ!!」
ゆっくりと解説をしている暇があるわけもなく、もちろん人も飛んでいく。

8 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/01/12(土) 20:16:18 0
「走れーーー巻き込まれたら死ぬぞーーー!!」
走る、走る、ひたすら走る。
後方からは容赦なく空間の破壊が迫ってくる
「うーん 馬鹿弟子と会ってから最近走ってばかりじゃのぉ」
「美容にはいい事ですわね」
先頭を走るのは2人の賢者、続いて
「ぎゃあーーーなんでこんな事にぃ!?」
色々な事でだいぶ鍛えられたレベッカが病み上がりとは思えない走力を見せる
「お、、おもテェぞ!!こいつ」
「ちょっとあんた走りなさいよ!!楽器は私が持ってるんだから!!」
「すまん・・・・オレは音楽以外の体力は凡人並みなんだ・・・もう無理」
リッツに抱えられて楽器はレジーナにあずけたブルーディが青い顔で呻く
「ぜぇ・・はぁ・・・しかし二人とも早いなぁ」
「ああ、まるで年齢を感じさせない走りだ」
「関心してないであんた自分で走りなさいよ!!」
そうこうしてる内に
「出口じゃぞい!!」
目の前に明るく光る扉が入って来た。
「飛び込みますよ!!」
アーシェラがシャミィが飛び込む。
「うわああああん」
続いて半泣き状態のレベッカが飛び込む
「どりゃあああ!!」
「おりゃあああ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・(顔真っ青で死に欠け)」
そしてレジーナ、リッツ、ブルーディの三人が飛び込む

「「「「「うわっぁああああああ!!??」」」」」
そこに足元は無く、皆 落下していくのだった。


9 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 00:17:22 0
吸い込まれるに身を任せてゲート内から脱出する。
目が回るような感覚がして、出た場所はまっすぐな道だった。
周りを見渡してみると、みんながこっちを見ていた。みんな無事に脱出したようだ。
ハイアット君が駆け寄ってきた。
「本当に……パルスなのか!? 幽霊じゃないよな!?」
「ラーナ様に作ってもらったんだ、ほら」
僕が差し出した手をハイアット君が恐る恐る握る。
「ホントだ、本物だーー!」
その時、ラヴィちゃんがくいくいと服の裾を引っ張ってきた。
「そこでロマン戦法の人がボロ雑巾みたいになってるよぅ!」
「わーーっ!?」
慌てて回復に取り掛かる。
そうしている間に、ザルカシュさんの空間解析結果が出た。
「あっちや!」
少し先で場所が開けていそうな方を指し示す。
「レシオンはどこにいったんだ?」
「案外さっきの一撃で微塵になったんじゃないか?」
長い回廊を走り出す。
しかしすぐに、走っても走っても進まないルームランナーのような状態になってしまった。
「やっぱり生きてたみたいだ……」
「いらん置き土産設置して行きよった!」
予想していたとはいえ焦燥感に包まれる一行だったが、ジンさんが唐突に進み出た。
「行くのよ、ジェネヴァ!」
魔剣の刀身が文字を描き、空間に輝きが走る。
「急ぎましょう!」
自信に満ちた声に促され、走り出すと前に進めるようになっていた。
絶滅が解除されたようだ。

10 名前: ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/13(日) 13:53:06 0
レシオンは最深部へと歩みを進める。
「ククク……私の勝ちだ……!」
本来なら一瞬で消し飛ぶほどの攻撃を受けたにも拘らず、生きていた。
わざと吹き飛ばされたのは油断させておいて先行するための策。
念のために道の途中に絶滅を設置しておいた。
もはや追いつくことは不可能だと確信し、歓喜の笑みすら浮かぶ。

その頃、祖龍の間では、調度ギュンターが果てた直後だった。
「死んじゃったね……」
「ええ」
哀れな龍人王の冥福を暫し祈り、顔を上げるドゥエル。
その瞬間、とんでもないものを目撃してしまった。
「ね、姉さん……あれ……!」
「どうしたのよ!?」
震える手で指差して、それにしてははっきりとした説明口調で告げた。
「満身創痍で怪しい笑みを浮かべた母さんがさりげなく背景を通過してる!!」
「ふざけないで頂戴!」
そう言いながらも、恐る恐る振り返るディアナ。直後。
「……きゃあああああああああ!?」
ドゥエルでさえ聞いた事も無いような絶叫が響いた。

11 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/14(月) 22:58:00 0
今日のレシオンはついていなかった。
せっかく邪魔者を振り切ったと思ったら目的地寸前で人外魔境が大集結していたのだから。
「こんな所を散歩しておるのは誰じゃ?」
「あれは触角エルフさんです。でもかなり雰囲気違うです」
「陛下、口調が戻ってる!」
本当は完璧に気配を消しているのだが、ここにいる者達には即バレであった。
「なんでよ!? なんで母さんがここにいるのよ!?」
「知らないけど……とりあえず保護しなきゃ!」
目配せをして二人で同時に飛び掛るディアナとドゥエル。
しかし指一本触れることもかなわなかった。
「邪魔だ!」
二人は強烈な衝撃波で吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。
普段なら何ともないような攻撃だが
今は消耗しきっている上にあまりにも予想外の出来事に対応できなかったのだ。
「あんまりですわ……!」
ディアナは震える声で抗議し、ドゥエルに至っては衝撃のあまり言葉を失っている。
しかし、持ち前の勘で相手の正体を見抜いたクロネが二人に声をかけた。
「二人とも、よく見てみよ! そやつは莫迦君ではないぞ!」
「「ええ!?」」
少し冷静さを取り戻した二人が、改めて母親の姿を見てみる。
全身から発するは怖いほどに強烈な意志。瞳に宿すは冷たい狂気の炎。
確かに母親ではない誰かだった。それも、二人がずっと戦い続けた人物。
「レシオン!? じゃあ母さんは……」
「そんな……ウソよ……!!」
別の意味で再び衝撃を受ける二人。
そうしている間に、レシオンの前にスターグが立ちはだかる。
「何人タリトモ行カセハセン」
その前に躍り出て、ゴンゾウが剣を抜き放つ。
「こいつは片付けよう、お前は俺と戦うんだからな!」
「虫けらどもが……悪いが全員消えてもらおう!」
レシオンはレトの民の呪文を紡ぎ、虚無の力を収束させ始めた。
双子はこの攻撃を正体を知っていた。
だからこそ、今はそれを防ぐだけの力は残っていない彼らは、慌てふためくしかなかった。
「どうしよう!?」
「まずいですわ!」
調度その時。
「見つけたぞレシオン! 鬼ごっこは終わりにしよう!」
響き渡る聞き覚えのある声。現れたのは全員が必要以上に個性的な一行。
ディアナは本日二回目のレアな悲鳴をあげた。
「きゃあああああ!? 今度こそお母さん!?」

12 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/14(月) 23:35:02 0
虚無の力を収束させるレシオンに迫るパルス達。
それを見てレシオンはにやりと笑みを浮かべてそれを放った。
自分自身に!
パルスの力を持ってすれば、原始分解すら阻まれてしまう。
ならば・・・!
全てのものを無に帰すその力はレシオンを飲み込み、消滅してさせる。
「え・・・なに?自殺?」
「こんな呆気なく・・・いいの?」
あまりのことにあっけに取られる全ての者の思考を引き戻す叫び声が響き渡る。

「ぎゃああああああああ!!!!!」
呆気にとられた一同を引き戻した絶叫の主はイアルコ。
己を抱え込み、内なる何かに耐えるように丸まりながら叫びを上げる。

イアルコの金鱗はイフタフによって半ば強制的に発現させられたものである。
ギュンターへの祖龍の加護を減らし、自ら死を選ばせる為に。
本来イアルコの身体はまだ金鱗に耐えられるほど成長していないのだ。
しかし、ギュンターが死を選んだことにより祖龍の加護を一身に受けることになる。
不完全な金鱗に、未成熟な身体。
祖龍の加護を受けるにはまだ早すぎたのだ。
だが、それ以上に拒否反応を引き起こすのはイアルコの意思。
龍人ならば抗えぬ祖龍の強大な意思を無理やり拒んでいるのだ。

「ぎ・・ぎ・・・ぎがああああ!メリイイィイぃー!余を・・・殴れ!このままでは引きずり込まれる!!」
イアルコが必死に絶えながらメリーに命ずる。
このままでは正気が保たれなくなる。
そうなれば肉体的にはどうであれ、強力な加護の下、第二のギュンターになるのは必至。
「しかし、それではイアルコ様が・・・」
今イアルコは内部より肉体的にも精神的にも限界までの苦痛が襲っているのだ。
その上、殴れば・・・メリーにはその結果がありありと見えてしまっているのだ。

天上天下唯我独尊、たとえ祖龍が相手であろうが己の意思は曲げぬ。
「かまわ・・・ぶばあ!?」
が、イアルコは間髪いれずきっぱりと言う・・・はずだった。
イアルコは間髪いれずに応えるが、メリーはイアルコの返事を待つまでもなく応えるのだった。
拳を以って、だ。
吹き飛ぶイアルコを追撃し、間合いを開けることはない。
メリーは無表情に次々と拳を叩き込んでいく。
「ちょ・・・メリ・・・やりす・・・」
イアルコが何か言っているようだが、拳の弾幕にかき消されてしまった。

13 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/14(月) 23:35:10 0
イアルコの絶叫に正気を取り戻したディアナは冷静に自分が何をすべきかを整理していた。
レシオンの消滅により、スターグの攻撃対象はパルス・・・すなわち母達に向かっている。
何者であろうとスターグは祖龍へと近づける事は許さないだろう。
一方ゴンゾウは焦れに焦れていた。
最初の戦いはゴウガに水を挿され、更にこの期に及んで次々と邪魔が入る。
最強の武を持て余したこの武人は、あらゆるものを向こうに回し闘争に入ろうとしている。

「ドゥエル、母さんを守ってあげて!」
「え・・・一人で?」
悪魔と最強の武とが限界水域を越えてぶつかり合おうとしているのだ。
その余波だけでもあらゆるものは粉砕されるであろう。
この二人の戦いに巻き込まれぬよう、守るものが必要なのだ。
本来なら二人でもどうになかるか判らないが、それでもディアナは他にやるべきことがある。
それに自分と違い、弟は守るものがあってその真価を発揮するとわかっていたから。

アニマを発動させ戦闘体制を取った弟を見て、ディアナは己の成すべき事を始める。
それはイアルコの抹殺。
このままでは程なくしてイアルコは第二のギュンターとなるだろう。
その前に・・・殺す!
短い間とはいえ、共に旅した仲だ。
優しい性格のドゥエルではできない事だろうから。

イアルコは壁に叩きつけられ、倒れることもできずメリーに殴られ続けている。
上体を8の字に回転させ、遠心力も使いながらの攻撃。
デンプシーロールの拳の嵐に晒されているのだ。
祖龍の加護を拒否している今なら確実に殺せる。
ディアナは駆け寄ると、必殺の一撃を繰り出した。

これによりイアルコの首は刎ね飛ぶ・・・はずだった。
が、その一撃はイアルコの首に届くことはなかった。
数センチ手前で、メリーにがっちりと手首を掴まれてしまっているのだから。
「どうして・・・止めるの・・・?」
手首を掴まれたまま問いかける。
問いかけられたメリーはあくまで無表情に無感情に言い切った。
「イアルコ様をお守りするのがメリーの役目ですから。」
「このままでは第二のギュンターになるのよ!そうなればもう手が付けられない!」
ギリギリと手首を締め上げられながらディアナは更に問う。
その問いに、初めて・・・初めてメリーの声に感情が宿る。
「・・・イアルコ様はそれ程弱くはございません!」
力強い言葉に気圧されながらも、ようやく掴まれた腕を振り解くことができた。
掴まれた部分は熱を帯び、手形に凹んでいる。
だが程なくして腫れ上がってくるだろう。
その骨に亀裂が入ってしまっているのだから。

「そう・・・なら貴女も一緒に始末してあげる・・・!」
一旦は気圧されたディアナだが、直ぐに瞳に光が戻る。
こうなると骨の一本など負傷には入らぬだろう。
血だるまで呻くイアルコを巡ってメリーとディアナの戦いが始まろうとしていた。

14 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/14(月) 23:35:14 0
イアルコを巡る戦いが始まる一方、祖龍を巡っての戦いも始まろうとしていた。
「さて、イフタフ老、もう時間ですかな?」
「うむ・・・しかしその前に・・・のう。」
パパルコに問いかけに応えるように巡らす視線の先には、クロネとアルフレーデが立ちはだかっていた。
共に得物は抜いていないが、強烈に発せられる気がその意思を伝えていた。
「アルフレーデ様、ここに来てなぜなぜどうして??」
おどける様に尋ねるシファーグに、アルフレーデは応える言葉を持たない。
ただ変わらぬ気の奔流を持って応えとしていた。

「それぞれ思うところはあろうが、今更言葉を繰り広げても仕方がにゃいじゃらし〜?」
ゆっくりとクロネが腰の斬龍クロ助を抜きながら言う。
間合いを詰め始める五人の間に無遠慮に割って入る者がいた。
クラーリア王国王子ライランス。またの名をチェッカサ。
「やれやれ、我が城の地下にこれほどの賊が入り込んでいるというのに。
我侭な部下を持つと苦労する。」
愛剣ヘリオガバルスを振り抜きながら祖龍を囲む一角となる。
チェッカサのスターグとドゥエル、そして新たな一団と対峙するゴンゾウの姿があった。

五角形がジリジリと間合いを詰める中、それは突然起こった。
祖龍を中心に影が広がり、その中から鋭い刃が五人を同時に襲う。
五人がそれぞれに注意が集中した中、必殺の間合い、必殺のタイミングでの攻撃。
にもかかわらず五人は恐るべき反応を見せ、間合いをはずし、兇刃をなぎ払う。

そこに広がるは影帝ゴウガ!
そして祖龍の直上に佇めしは黄金の仮面!
「おぬしは・・・・!」
「ワルプルギス師!」
「サン・ジェルマン!」
クロネの言葉にかぶさるように二つの声、二つの名前が呼ばれる。
チェッカサに呼ばれたそれは、クラーリア王国建国からの宮廷魔術師の名前。
新王都にナバルを選定し、六星結界を作り上げた者。
イフタフに呼ばれたそれは、イフタフにギュンター抹殺方を示した占星術師の名前。
ギュンターとミュラーの動向を伝え、そしてイアルコの利用法を伝授したもの。

『金鱗の者は死したか・・・真に重畳・・・。』
荘厳なる響きと共に黄金の仮面が言葉を綴る。
この出現、そしてこの言葉。
それだけでチェッカサは察していた。
宮廷魔術師として、クラーリア王国建国から王を補佐し続けていた者が、倒すべき敵である、と。
「そうともさ、全ては計画通り。
もはや祖龍は蘇る!我等龍人の世が蘇るのじゃ!」
興奮気味に語るイフタフの脳裏には祖龍の心臓に突き刺さるグラールロックが粉砕される光景がありありと映っていた。
だが、それに応えるのは嘲り笑う声だった。
『くくくく・・・くははは!龍よ、獣よ、人よ・・・!良きかな、良きかな!
これで全ては揃った・・・!』
「再構築!」
その声と共に、祖龍の前にレシオンが現れた。
原始分解と再構築を使ったテレポーテーションによりレシオンは祖龍の前に立ったのだ。

15 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/17(木) 11:47:56 0
ここは地下なのだろうか、はたまた存在しない場所なのだろうか。
どこまでも広がっているように見えるほど広い不思議な空間。
その中心にあるのは尋常ではないオーラを放つ謎の箱。
いろんな人が一触即発みたいな空気になっている中、レシオンは再び現れた。
「よくここまで来たな……だが私の勝ちだ」
思わず一歩進み出て話しかける。
「レシオン……あなたは……」
「危なーい!!」
その声に振り向くと、突如として知らないハーフエルフが飛び掛ってきた。
次の瞬間には彼に抱えられてかなりの距離を移動していた。
さっきいた場所を見ると、風圧が凄まじい速度で通り過ぎていくところ。
何やらごつい人が刀を振ったらしい。というか振っただけであれなのか!?
「気をつけてください、一瞬でも気を抜くと即死ですから!」
顔を見て驚いた。
太陽の光のような金髪をしているからすぐには気付かなかったけど、僕にすごく似ている。
「誰!?」
「親戚のような者です!」
ハーフエルフの親戚はいるはずがないという疑問が浮かぶが、考え込んでいる暇は無い。
彼のガントレットが放つ色が切り替わる。それは紛れも無い精霊の力。
黒い何かが高速で突進してくる。よく見ると巨大なカブトムシ!?
まるで瓶の中に入れられてシャッフルされているような揺れが襲う。
「来ないでください!」
カブトムシを迎え撃つ自称親戚のハーフエルフ。火柱が渦を巻きながら聳え立つ。
が、何事もなかったかのようにカブトムシはそれを抜けてくる。
「「「きょえええええええ!!」」」
当然、阿鼻叫喚の事態となった。
続いて、足元に巨大なひび割れが走って真っ二つに割れ、カブトムシが溝にはまった。
地形変動を起こしてしまった剣を翻しながら
ごつい人が体格に似合わない無邪気な笑みを浮かべて迫ってくる。
「お前、強いんだろ? 俺と戦え!!」
「全然全く滅相も無い! カブトムシより弱いです!」
親戚のハーフエルフは必死で首を横に振って断るが、問答無用で戦闘突入してしまった。
そうしている間にもカブトムシが溝から這い出てこようとしている。
「スターグはん頼むから勘弁してやー!!」
「落ち着いて話し合いましょう!」
口ではそう言いながらザルカシュさん達が集中砲火を浴びせる。
言葉と行動が一致していないのはきっと気のせいである。

16 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/17(木) 11:50:05 0
その頃僕たち一般人はというと、部屋の隅を右往左往して逃げ回っていた。
「怖いよぅ! 死んじゃうよぅ!」
「あわわわわ!」
が、ジンさんが言ってはいけない真実を言ってしまった。
「あなたは化け物組でしょ! さりげなく一般人に混ざってるんじゃないわよ」
救いを求めるようにセイの方を見る。彼は爽やかな笑みを浮かべてこういった。
「パル、君ならできる!」
全くの逆効果だった。友達甲斐のないやつである。
こうなったら最後の砦、お父さんの方を見てみる。
「パルメリス……私が出来なかったことを成し遂げてくれ!」
「意味分からん……うわ何するやめ!!」
「「行ってらっしゃーい!!」」
背中を力強く押され、妖怪大戦争に放り出されてしまった。なんたる親と幼馴染だ!

「あわわわわ!! ……って何アレ!?」
流れ弾に右往左往しながら、目を疑うような光景を目撃してしまった。
「坊ちゃまには! 指一本! 触れさせません!」
「諦めが! 悪いですわ!」
すぐ隣ではメイドとゴスロリがその服装に似合わない壮絶な戦いを繰り広げていたのだ。
その後ろには傷だらけの少年が転がっている。もう何がなんだかさっぱり分かりません!
「隙アリですわよ!!」
ゴスロリがメイドの横をすり抜けて傷だらけの少年に肉薄する。
と、それより一瞬早くメイドが少年を突き飛ばした。
「そいやああああ!!」
「え!?」
少年はありえない距離を飛び、まるで狙っていたかのように目の前に落ちてきた。
遠目で見ても傷だらけだったが、近くで見てみると、さらに酷い状況になっている。
「……大変!!」
このままでは死んでしまう。慌てて少年を抱き上げて右往左往しながら治療を始める。
「ああっ、お母さん! それはダメよ!!」
ゴスロリの美女がこんな事を叫んだ気がするがきっと気のせいである。

17 名前:『裏方』 ◇d7HtC3Odxwの代理投稿[sage] 投稿日:2008/01/19(土) 01:13:48 0
「「「うわああぁぁああああ」」」
「やれやれ騒がしい連中じゃのぉ」
「まったくですねぇ」
シャミィとアーシェラは落下しながらお茶などを飲んでいる。
いったいどこから出したのかは勿論不明だ。
ちゃぶ台や座布団なんかもしっかり出してるし
「いったい何処まで落ちるんだ コレーーー!?」
「知らないわよーーー」
一応、このメンバーの中では(思考は)良識派のレベッカとリッツは多少パニックに陥っていた。
「おーい、生きてるかーい」
「ママン・・・・ごめんよ・・・・焼きなすびで歯を磨くなんて知らなかったよ」
「あ、軽くヤバイかも」
落下している状況よりも軽く珍妙な走馬灯を見始めてるブルーディの方がレジーナには気がかりだった
「しかし、随分落ちますねぇ」
余裕たっぷりのアーシェラがちゃぶ台の上の饅頭を食べながら呟く
「まぁ、空間が安定し始めておるからのぉ、そろそろ終着駅じゃないかの」
お茶をすすりながらシャミィが答えを返した 何気にちゃぶ台がコタツに進化してる
「じゃあ、そろそろ着地準備したほうがよろしいのでは?」
いつの間にかこたつに潜り込んだレジーナ
「あら?ブルーディさんは?」
「あそこ」
指を指す先には布団を空中に敷かれその布団の中で唸るブルーディがいた
「私が出しておきました」
平然と言い放つアーシェラ、そして
「お前ら!!余裕すぎっぞ!!」
「まぁ、予想の範囲内ですしね」
「きゃーーーーいーーーやーーーーー」
どうやらどこでも非常事態にはどうやら良識派は貧乏くじを引く事になるらしい
「そろそろ着地するぞー」
「では、まいりましょうか」
それだけ言うと賢者二人は強力な浮力を生成し始める、やがて落下の速度は弱まり、
地面に着地する頃には軽い羽がふわりと落ちる程となっていた。
「た、助かった・・・」
「こういう事出来るなら最初から言って下さい!!」
「ごちゃごちゃ言わんとさぁ、最後の幕にいくぞ」
「そうですね」
ごちゃごちゃ言いあいながらも最終決戦の場へ向かうのだった
「・・・・・・OH・・・・ダディクール」
一人走馬灯を見続けている男を連れて・・・・・・

18 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/21(月) 20:26:01 0
スターグとゴンゾウ、メリーとディアナが凄まじい戦いを繰り広げている中、祖龍を巡っての戦いも始まっていた。
祖龍を中心に広がる影帝ゴウガ。
その影からあらゆる間合い、タイミングで繰り出される凶刃は熾烈の極地ではある。
が、祖龍を我が物にせんと寄る五人もまた超人の域の者達。
それでも寄り付けないのはそれぞれ五人がお互いに牽制しあっているところも大きかった。
激しいやり取りの中、ただ一人祖龍へと歩み寄るものがいた。
それは満身創痍のレシオン。
ゴウガの攻撃はレシオンだけは避けて繰り出されているからだ。

「いつからにゃ?」
クロネが繰り出される刃を払い、避けながらゴウガに尋ねるが答えは返ってこない。
そうしている間にもレシオンは悠々と祖龍へと近づいていく。
「おのれ!させるかぁ!!」
業を煮やしたイフタフが防御を捨ててレシオンに巨大モーニングスター激突號を放った。
単純明快。巨大質量かつ超スピードの鉄塊は阻止せんと繰り出される刃を尽く粉砕し進む。
だが、レシオンに対しては無力であった。
進行概念を歪められ、勢いをそのままにそれていく。
「ぐああああっ!?翁!」
突如進行方向を変えた激突號に不意をつかれたパパルコが叫ぶのは我が身のためではない。
防御を捨てたため、イフタフの身体を無数の刃が貫いた事に対してだった。

崩れ落ちるイフタフにチェッカサがとどめの刃を振り上げたとき、ゴウガの身に異変が起こる。
不意に波打ち震える影から何かが吹き出てきたのだ。
それは落下してきた者達。そして噴出して現れた者たち。
アーシェラ・シャミィ・レベッカ・レジーナ・ブルーディ・リッツの六人だった。
突然の事に一瞬動きが止まる五人。
一瞬ではあるが、それぞれに邂逅の時が凝縮された一瞬。

「重い腰を上げておったか。」「状況が状況じゃからし〜。」
二人のニャンクス、剣聖と賢聖の交わった視線で交わされた言葉。
「・・・アンティノラ・・・・」
万の時を越え、再び逢いまみえた祖龍と古の龍人の女王。
「チェッカサ???」「・・・・」
ライラック商店の受付とお忍びの王子。お互いは今の立場を知らず。
「君は・・・ブルーディ!」「げっ・・・!道楽候!?」
芸術と享楽を愛し、庇護をしたものとされた者。

それぞれの邂逅の一瞬を経て、彼女の一言が時を動かす。
「ちょっとディオール!なに逃げ回ってるのよ!そんな奴ら蹴散らしちゃいなさい!」
「いきなり現れて勝手な事を!相手はロイヤルナイツ筆頭ゴンゾウ・ダイハンだぞ!うぉっ!?」
「だからどうしたって言うの!?貴方は公国最強の黒騎士の称号を持つ男でしょう!しゃきっとしなさい!」
ゴンゾウの攻撃にドゥエルと共に防戦一方だった黒騎士ディオールにレジーナの檄が飛ぶ。
繰り出される全ての技が一撃必殺のゴンゾウを相手にしているディオールとしては、いきなり現れて無茶な注文をするレジーナに文句の一つも付けたくなるのは人情。
だがそんな文句もピシャリと断ち切るのはいつも通りなのだ。
「ふふふ、そうだったな!」
そんな無茶苦茶に懐かしさを覚えずにいられないディオールが構えなおす。

19 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/21(月) 20:26:05 0
それを見て今まで縦横無尽に剣を振るい続けていたゴンゾウの動きが止まる。
「ケツに敷かれているな。だが・・・。」
小さく笑いながらゴンゾウが構える。
今まで戦っていたディオールは手応えのある相手だった。
確かに強い。だが、それだけだ。
しかし、一瞬にしてディオールは強き相手と変わったのを感じ、ゴンゾウの全身に歓喜が駆け巡る。
ゴンゾウは飢えていたのだ。
戦いに。戦いに!戦いに!!
その強さゆえに、戦いはすべからく殺戮となってしまう。
しかし今この目の前にいる黒騎士ディオールはギラルクやスターグと同等。
ゴンゾウ自身にも勝敗の読めぬ【戦いを】ができる相手と変貌したのだから。

全身から湯気が立ちその体が一回り大きくなったように充実した気と共にゴンゾウは床を蹴る。
戦いの愉悦に身を任すように!

20 名前:『裏方』 ◇d7HtC3Odxw (代理)[sage 代理投稿スレgt;gt;149より] 投稿日:2008/01/23(水) 22:33:12 0
闇から飛び出してきた人々を見て、ソーニャは目を見開いた。 
「・・・・・・・リッツ?」 
「・・・赤毛か?感じ変わったな」 
瞬間にリッツの顔面が吹き飛んだ。 
「・・・ふざけるな!!ばかやろう!!どれだけ心配したと思ってるんだ!!」 
右に左にリッツの顔が吹き飛ぶ 
「ばかやろう!!ばかやろう!!ばか・・・やろう!!」 
最後に一際大きく振りかぶってソーニャはリッツを吹っ飛ばした。 
「この・・・大馬鹿野郎がっ!!」 
「・・・・っつてぇ・・・・・・・・おい赤毛」 
「なんだよ」 
「その・・・悪かったな」 
「っつ・・・」 
それだけ言って二人は向きを直した。向かうは最後の厄災 レシオン 

一方、もう一つの邂逅が別の場所でもおこっていた。 
「おお、、、おお!!なんと!!なんと美しい事か!!」 
もう一つの邂逅、それはイフタフ翁とアーシェラの出会い 
古代文明の権威でもあるイフタフ翁が追い求めた永遠の憧れが今、目の前にいる 
それだけで、古老の血はさらに熱く滾る 
「わしの悲願!!龍人の復権、セレスティアの再興!!今、その時よ!!」 
流れる血など気にならない、痛みなぞとうの昔に無くした 
見ろ、あの美しく気高い姿を、あれぞ若き頃より求めた永遠の憧れよ 
今、古老が盲執とも言える情念を持って戦鬼と化す。 
それを見るアーシェラの目は悲しみに染まっていた。 


21 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 11:25:41 0
「私のせいでたくさんの人が死んでいった……それでもあなたは、美しいと言うの?」
アーシェラはイフタフを見て独り言のように言葉をつむいだ。
脳裏によみがえるは、魔法王国滅亡の日の忌まわしい記憶。
その記憶を振り払うように、祖龍に捕らわれた少年のほうに向かう。
これ以上、かつての自分のような者を犠牲にするわけにはいけなかった。

「おにょれ祖龍……」
少年は酷くうなされていた。
この大怪我だから当然といえば当然なのだが、それにしても何か変な感じ。
「祖龍……?」
「お母さん、その子から離れて!!」
その声に振り向くと、ゴシック調のドレスのハーフエルフが今にも飛び掛ってきそうな構えをとっていた。
それを阻止するメイドが必死の形相でこっちに声をかける。
「坊ちゃまが祖龍に打ち勝つまで……死なない程度に痛めつけてやってください!」
二人から意味不明な要請をされて、混乱するしかなかった。
「この子が何をしたっていうんだー! そもそも僕は母さんじゃないし!」
「黙らっしゃい!!」
ハーフエルフが、僕に向かって怒鳴りながらどさくさに紛れて目の前の相手に必殺の一撃を放つ。
拳に宿っているのは、ルールーツの力。こんなものをまともに受けたらただではすまない。
が、破壊の拳撃が叩き込まれたのは、突如として現れた魔法の盾。
二人の視線が、それを生成した女性に向く。他でもない古代セレスティアの女王。
「アーシェラ……!」
僕の事を母親だと思い込んでいるハーフエルフが、構えをとく。
アーシェラさんは毅然とした声で告げ、こっちに歩み寄ってきた。
「もうやめて。その子は私が護ってみせるから」
「アーシェラさん!?」
アーシェラさんは少年を引き取りながら、僕に言った。
「この子は私に任せて……レシオンを止めて!
彼が祖龍に到達したら取り返しがつかないわ!」
なんとなく分かった気がした。
きっと、アーシェラさんは全てを見通してこの時代に生まれ変わってくれたんだ。
僕たちが恐ろしい危機を乗り越えられるように。

22 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 11:27:21 0
『龍人王はすでに手にかけてしまったのですね……』
『ああ、彼は本当によくやってくれた。手にかけたとは人聞きが悪いぞ』
アーシェラは精神統一し、祖龍アンティノラと心を連結する。
読心術ともテレパシーとも違う。完全なる同調とでもいうべきものだった。
彼女達は、元は魂を同じくするものだから。
『もう終わりにしましょう……アンティノラ……いえ、お母様!』
『アーシェラよ、愛しい娘よ……我が一部でありながらなぜ分からない?
お前が反抗さえしなければこのようなことにはならなかったのに』

その昔、アーシェラは祖龍の祝福の証である黄金の龍鱗を持っていた。
彼女は、アンティノラが自らの魂の一部を与え傀儡として人の世に送り出した存在だった。
卓越した英知と類まれなる魔術の才能を持つ女王となって魔法文明の全盛期を築き上げる。
途中までは、全てが祖龍の計画通りだった。
ただ、傀儡としておくには少しばかり英知を与えすぎたのだ。
少しずつ、しかし確実に、世界は祖龍の手を離れていった。
アーシェラは、祖龍を封印するための六星都市の建造を命じる。
やがて六星龍までもアンティノラの手をはなれ、アーシェラに従うようになった。

『確かにそうかもしれません。
あなたは悔しかったのでしょう、世界が自分の手から離れていくのが。
でも……人はあなたの道具じゃない!』

アーシェラの命を受けた六星龍がイルドゥームを作った本当の理由は、祖龍の復活を阻止するためだった。
結果、精霊王の強大な力を抑えきれず、多くの人が犠牲になることになってしまった。
たくさんの犠牲と引き換えに世界は精霊という名の法則で支配され、祖龍は永遠に封印されたかと思われた。
古代文明崩壊の日、アーシェラは祖龍に精神を支配されつくす前に、自らの命を絶つ。
来るべき危機の時に、必ず生まれ変わると誓って……。

23 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 22:40:07 0
その頃、地上。
王都ナバルから程遠くない森林地帯。
聳え立つ岩山が一つ。
頂に幻獣王グラールが居城【金獅子の宮殿】をすえるグラールロック。
ここは幻獣の聖地と知られているが、それ以上の意味を持つことを知るものは少ない。
祖龍の心臓を穿つ杭!
動きを止め封じ込める六星都市の結界とはまったく異質なる物。

そこに紫電を纏う天空都市ライキュームが影を落とす。
中枢に佇めしは蠢く者。
迫り来るグラールロックを前に、その者たちは何も思うことはなかった。
このまま落下し、激突すればライキュームごと消滅するとわかっていても。
プログラムを実行するだけの存在。
実体を持たず、個と個の融合を可能にしたエネルギー生命体。
それはレトの民のプログラムエターナルの産物なのだ。
レトの民は龍人に祝福を与え人間とし、更にエルフを作った。
それはこのセフィラの種を自分達と同じように作り変えるために。
同様の目的で別アプローチとして作られたのだ。
その形態、能力、共にレトの民に最も近い存在ではあるが、結局は完成品に至るまでの経過の産物でしかない。
この場この時この瞬間に天空都市ライキュームをグラールロックに落下させるためだけに!

そしてそれは実行される。

ライキュームの巨大質量と成層圏からの落下エネルギーは巨大な槌となってグラールロックに打ち付けられる。
その衝撃エネルギーは凄まじく、荒らしを呼び起こし莫大な衝撃波を広げていく。
崩れていくライキューム。
崩壊するグラールロック。
岩が吹き飛び、爆発する向こうに銀色の杭が姿を現す。
これこそが祖龍の心臓に突き立てられた巨大な剣。
ライキュームによってゆっくりと沈み、祖龍の心臓を貫いた。
それは祖龍の肉体の死、すなわち大陸の消滅を意味した。
断末魔のような轟音と共に地軸は歪み、大陸全土に亀裂が走っていく。


ライキューム墜落、祖龍の肉体の死の衝撃はジオフロントにまで伝わる。
ダレもが地に伏せる凄まじい振動の中、レシオンは狂気の笑いと共に最後の封印を剥ぎ取った。
ここに祖龍アンティノラの魂は自由を得た。

凄まじい振動の中、断末魔のごとき轟音にイフタフは異変に気づいていた。
「ど、ど、どういうことだ!祖龍の心臓に突き立てられたグラールロックを破壊したのではないのか!?」
身動きを封じる六星都市の結界を全て解き、心臓に突き立てられたグラールロックをライキュームによって破壊する。
それによって自由を得た祖龍は肉体に戻り、龍人の世界を作るのだ、と。
しかしイフタフが感じるのは復活ではない。
真逆のもの。
【死】そのものなのだ。
『良く踊ってくれた。龍の老人よ。』
黄金の仮面は振動と轟音を心地よさそうに味わいながらイフタフに応える。
六星都市の結界は祖龍を封じ込めるものではなく、その魂を守る為だったのだと。

24 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 22:40:20 0
太古の昔、創生の果実を喰らった祖龍だが、世界樹はそれを許さず、祖龍を討った。
とどめに心臓に剣を打ち込まれるとき、龍たちは世界樹に許しをこうたのだ。
祖龍の動きを封じ、魂を閉じ込めることでの救命措置。
剣が祖龍の心臓に達する直前にその願いは聞き入れられた。
既に仮死状態にあり、魂が肉体から抜けていたのだから。
肉という器で実界に固定されていない魂は非常に不安定であり、六星都市の結界に守られていなければ早々に消滅してしまうのだから。

今、祖龍の肉体は滅び、魂を守る六星都市結界全てが取り払われたのだ。
次なる肉体となるはずだった金鱗の祝福を得ていたギュンターは既にいない。
同じく金りんの祝福を得てはいても、イアルコは器としてあまりにも未成熟。そしてアーシェラは既に金鱗を失っている。
それが何を意味するか?
 世界の破滅
魂のよるべき肉体は既に残っておらず、龍の加護が消えうせる。
イフタフを支えていた全てのものが崩れ去った瞬間だった。
傷も、老いも、全てをなぎ払いこの場に立っていた身体に一気に襲い掛かる絶望と現実。
急速に老いた姿へと変化していき、地に伏せる。

「そうだ、破滅だ。だが安心しろ、私が新たなる世界となるのだからな!」
崩れ落ちるイフタフを見下ろしながらレシオンは祖龍へと手を向ける。
あらゆる障害も、結界も取り払われた。
祖龍の魂が帰るべき肉体はもはやない。
『良くやった、レシオン。いや、プログラム進行ユニットレシオン!
プログラムエターナルはこれより最終フェーズへと移る。』
「進行ユニット・・・?」
あと少し、手を伸ばせば祖龍に触れられるところでレシオンは動けなくなってしまった。
黄金の仮面の言葉に衝撃を受けてはいた。
だがそれ以上に物理的に体が動かないのだ。
黄金の仮面のマントから伸びた小さな手を添えられているだけで。
『三百年前、戦争を起こしたのは本当にお前の意思だったか?』
「なに?どういうことだ!?」
不意の問いかけに驚くが、そんな反応を無視して黄金の仮面は続ける。
『お前は私を作った。だが覚えていないのはなぜだ?』
応えられない。
更に問いは続けられる。
『お前に預けた奈落の大聖堂。なぜ大人しく預かった?危害を加えようと思わなかったのはなぜだ?』
自分でも疑問に思っていたことを次々と問われる。
しかし問われているうちに、頭の奥のほうでその答えが朧気に頭をあげる。
その答えにたどり着いてはいけない。
必死に辿りつかない様にするのだが、残酷にも黄金の仮面は言い放つ。

『それはお前がそのように【作られて】いたからだ!』
そう、遺伝子操作により全ては組み込まれていたことなのだ。
自分の意思と思っていたことはあらかじめ予定されていた命令。
自覚のないままそれにしたがっていただけなのだ、と!

厳然たる事実を突きつけられ、もはや言葉を出すこともできない。
ただパクパクと口を開け閉めするしかないレシオンに黄金の仮面は最後の言葉を継げる。
『安心せよ。お前もまた世界の一部となるのだから。』
「・・・帰滅」
マントの奥から漏れる言葉とともにレシオンの体が光る。
体から溢れ出た光の粒子は手に吸い込まれて消えていった。
残されたのはレシオンだったもの。
もはや何も残っていない、パルスの肉体だった。

25 名前:『裏方』 ◇d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 23:56:12 0
大地が崩壊を始めるなか二人は対峙していた
「君はいったいここで何をしているのかね?」
シファーグは物腰優雅に杖をブルーディの方へ指す
「ふぅ・・・・公の言い方をすればちょっとした酔狂ですかね・・・」
対するブルーディは肩をすくめておどけてみせた
「じゃあ・・・・・君の言い方をすればどうなるのかね?」
あくまでも気を緩めない、道楽公らしからぬ慎重さがそこにはあった
そしてブルーディも無造作にだが自分の唯一無二の武器、『ローラ』を手に取る
「自分の言葉ですか・・・・」
「そう・・・自分の言葉・・・それが何より大事なのではないのかね?」
「以外と公はお熱い方だったのですね」
「私自身も以外だよ」
一歩、二歩、三歩、間合いが動いて縮んで伸びて、戻った
「自分の言葉で言うとしたら・・・・」
「言うとしたら?」
瞬間、二人の間に衝撃が走った、それは空気の弾ける音、それが幾重にも響き、衝撃となる
衝撃が収まるとローラを構えるブルーディと杖を手の平で優雅に舞わすシファーグが対峙していた
「ほぉ・・・・・これは驚いた」
今起こった事はさして問題ないとでも言わんが如く呟くシファーグ
そしてそれとは対照的に顔面蒼白で息があがらんばかりのブルーディ
「そんなに驚きかい?」
シファーグはやはり優雅に自分の杖の先端を回し、その部分を引き出すそこから現れたのは
「・・・・・フルート?」
「そう、フルート、銘は『魔笛・ハーメルン』色々使える便利な笛さ」
今度は逆にシファーグが肩をすくめておどけてみせる。
「さて、そこで傍観をしているワンコちゃん」
不意にシファーグは体をブリッジさせて背後にいたゴウガに杖をむける
闇に紛れ背後に近づいていたのに気がつかれたにも関わらずゴウガは感情を一切見せなかった
むしろ見つかって当然の顔すらしている
「悪いが今は僕の優雅なお遊戯の時間だ、しばし傍観願えないかな?」
何を考えたのかゴウガは黙って闇に溶けた、これをシファーグは肯定と受け取った
「さぁ、邪魔者は消えた 楽しいお遊戯の時間だ」
十二貴族に相応しいとも言える狂喜の光が宿る ブルーディは体の中から血が凍る様な錯覚に捕らわれた
「安心したまえ、君のフィールドで遊ぶつもりだよ その為の魔笛だからね」
十二貴族が一人、シファーグ どこまでも道楽者であり、貴族の中の貴族 そして
「ベット(賭け代)はお互いの命だけどね」
どこまでも、誰よりも冷酷に愉快を求める男 それが彼 シファーグ

26 名前:パルス ◆jwJQtwo.9k [sage] 投稿日:2008/01/30(水) 00:42:37 0
最後の瞬間、レシオンは僕を救いを求めるような目で見た。
彼も僕の体に入っているからだろうか。精神が同調してしまった。
その時、知ってしまった。世界になろうとした破滅の使者の真実の姿を。

まだ新しき神が地上にいたころ、生贄と称して実験体を供えさせていた忌まわしい歴史。
自然を愛した優しい少年が、エクスマキーナの同調者となるべく選ばれてしまったこと。
実験は成功してしまい、その日から全てが狂っていったこと。
訳の分からないものにせきたてられて、恐怖に脅えていた。
世界の全てを敵に回して、孤独に震えていた。
何を手に入れても満たされる事は無く、救われる方法は世界になることだけだった。

「だめだ……やめろおおおおおおお!!」
気付くと、力の限り叫んでいた。
レシオンは世界を滅茶苦茶にした張本人だということに変わりは無いのに。

目の前であまりにもあっけなく倒れた自分の姿を前にしばし呆然と佇んでいた。
どれぐらいそうしていただろうか。
『エルフの女王よ、なぜ泣く?』
「酷すぎる……!」
そう言ってみて気付く。
耳をすましても何も聞こえなかった。周りのものは何一つ動いてはいなかった。
時は止まり、黄金の仮面だけが僕の目の前に佇んでいた。
『レシオンは崇高な使命を果たしたのだ……
世界を一つにするための計画を実現するために』
「そんなの……信じない!!」
どんなに聞きたくないと思っても、両手で耳を塞いでも、頭の中に直接響いてくる声。
『お前は本当にこの世界を守りたいのか?
新たに作られるのは何の争いもない永遠に平和な世界……
無意味な戦乱が繰り返されるだけの狂った世界を守る事に意味はあるのか?』
「違う! この世界じゃないと意味がないんだ!!」
狂ったように絶叫する僕に、黄金の仮面は手を触れる。
『ならば……これを見てもそう言えるか?』
「触る…な……!」

それは、草一つ生えない荒廃しきった世界だった。
「戦うためだけに生まれてくる生命なんて……あったらいけないよ!!」
「お願い分かって! それしか方法はないの!」
何があったのか、泣き叫ぶ僕。それを必死に説得しているのは……レベッカちゃん?

続いて、密談するエドさんとレベッカちゃんの姿が見える。
「大統領、どうでしたか?」
「ええ、やっと説得に応じてくれたわ。本当にうまくやってくれるんでしょうね?」
「無論、最強の生体戦闘兵器にしてみせますよ」

場面は移り変わり、見えたのは培養液の中に眠る双子。
僕とレベッカちゃんは、並んでそれを見つめていた。
「パル……情を移したらいけないわよ」
「うん、わかってる。この子達は最後の希望なんだ……」

「な……何これ!?」
『それは未来だ。狂った世界の末路にお前達が選ぶ道だ……
災厄の種ならいくらでもある。事実は変わっても歴史は変わらないのだよ』
「これが……未来……」
自分の中で何かが壊れていくのを感じた。
もうこの世界はお終いだ。新しい世界に賭けてみるのもいいかもしれない。
本気でそう思った。

『それで良い、パルメリス。お前にも少しばかり働いてもらおうぞ』
その声と同時に、時は流れ始める。

27 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 00:32:14 0
「パル! 大丈夫!?」
激しい揺れの中、レベッカがパルスに駆け寄る。
「終わりだ……」
「え?」
耳を疑うような呟きに、親友の顔を覗き込んだレベッカは驚愕した。
こんな表情をするなんて想像さえできなかったような、悲しげで暗い瞳をしていた。
「もうどう足掻いても無駄だよ……次の世界のために……滅ぶ時が来たんだ……!!」
無造作に転がっている剣を拾い、レシオンに乗っ取られていた自分の前に立つ。
地面に棒でも立てるように、少しのためらいもなく突き立てる。
「い……いやぁああああああああああ!!」
親友の突然の狂乱に、レベッカは悲鳴を上げた。
鮮血が舞い散る。ただ、その色は赤ではなかった。眩いばかりの輝きを放つ金色。
もはや人のものではない血を操り、形作るのは巨大な魔法陣。
それが光を発し、少しずつ空間が歪み始める。
「パルちゃんどうしちゃったの!?」
「ふざけた冗談はやめなさい!」
仲間達の必死の呼びかけは少しも届かなかった。
パルメリスは、アニマを発動させて姿を変えていく。
「あかん、洗脳されとる……! どうにかならへんか、師匠!?」
ザルカシュが祈るような気持ちでシャミィに尋ねる。
だが、賢聖もこの時ばかりは他の者たちと同じように声をかけることしかできなかった。
「パルメリス……それだけはやめるのじゃ!!」
「そう、間もなく央への門は開く……。
でも安心して、君たちはここで何の苦しみもなく死ぬんだから」
輝く翼を広げ、妖艶に笑うは銀の輪の女王《アリアンロッド》。
その姿はさながら、壊れゆく世界に降臨した破滅の女神……。

28 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 20:36:39 0
音と音がぶつかりあえばどんな音がするのだろう 答えは・・・・・・
強烈な破裂音と共に部屋に衝撃波が広がる 
「ぐぅ・・・・」
強烈な音による眩暈がブルーディを襲った とっさに耳を塞がなかったならば鼓膜は破けていただろう
それはいかに人間の遥か上の身体能力を持つ龍人も同じようでシファーグも耳を押さえ蹲っている。
「ちょっと想像以上だったね」
まるでちょっと気になるから実験しましたと言わんばかりにシファーグは二、三度、耳をポンポンと叩いた
それに対してブルーディは地面に日本の足で立っているのがやっとの状態 

パチパチパチと場違いな拍手がしたのは数秒の沈黙の後の事、拍手の主はゴウガ
「良き、芝居・・・・・・也」
それはその場で聞いた全員が驚いた一言だった
ある物は初めて聞いたその声に、ある物はその言葉の内容に、ある物はその存在に始めて気がつき
だが、中には表情を崩さぬモノもいた、
その仮面に覆われ表情をうかがい知れぬモノ、感情の欠落してしまったモノ、
そして、確信を突かれ笑う二人
「いやぁ・・・・ばれたか」
「公の酔狂には困ったものです」
ブルーディは深くため息をつき、シファーグは肩をすくめておどけて見せた
「まぁ、軽く挨拶って事ですかねぇ」
「酔狂も極めれば武器か?・・・・友よ」
ゴウガのその言葉にまた驚愕が走る しかしシファーグは忍び笑いで答えるだけだった
「シファーグ君!!どういう事かね!!」
パパルコが詰め寄ろうとするがそれはゴウガの刀に阻まれた
「いやぁ・・・・パパルコ殿、長く生きると奇妙な友人が増えるものでしてね」
そして今度はゴウガが笑い出す、初めは押し殺して、次第に大きく、最後に堪えきれなくなって
「よく、言ったものだ、この・・・・・・極悪人が!!」
「僕は愉快の為だったらなんでもするよ、そう君と同じくね」
その言葉にゴウガは今まで誰も見た事の無い、狂気の笑顔で答えるのみだった。

29 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 23:14:25 0
輝く翼を広げ、妖艶に笑うは銀の輪の女王《アリアンロッド》。
開くは央への門。
『そうだ、それでよい。』
「ワルプルギス師!」
レシオンの躯を踏みにじるように祖龍に近づく黄金の仮面にチェカッサが声をかけた。
その言葉に振り向いた黄金の仮面の眉間に黒い穴が開き、仮面全体に皹が入る。
『・・・』
「今更何者かは問わぬが、獅子を甘く見すぎだよ。」
眉間に風穴を開けられ動きを止めた黄金の仮面にチェカッサが冷たく言い放つ。
その肩越し、遥か後方にそれはいた。
銃口から煙の立つ長距離狙撃用の魔道ライフルを構えたヒロキが!

『・・・無駄な足掻きよ・・・奈落にて、大聖堂の鐘は鳴り響く!蝕の刻は来たれり!』
砕けゆく仮面と共に崩れ落ちる黄金の仮面は愉悦に満ちた言葉を残す。
仮面は完全に砕け、マントが落ち広がる。
広がったマントで見えないが、中には何かがいることがそのフォルムでわかる。
高さからして黄金の仮面の半分ほどの大きさのもの。

ゆっくりとマントを払い、出てきたのは縦目仮面をつけたアビサルだった。
いつも身に着けていた太極天球儀、日輪宝珠、月輪宝珠は既になく、すっきりとしたいでたちで。
姿を現したアビサルは周りが一切見えていないかのように手を差し伸べる。
魂を守る結界は全て失われ、帰るべき肉体もない祖龍へと。
今ここに奈落にて、大聖堂の鐘が鳴り響く!
「「「「帰!滅!!!」」」
「ヒロキ!」
数十の声が重なったようなアビサルの言葉と同時にチェッカサの号令が響き渡る。
命に応え、放たれる銃弾。
刹那、祖龍は光の粒子となり吸い込まれていった。

ヒロキの放った弾丸はアビサルの縦目仮面の眉間に黒き穴を開ける。
「ア、アビサルーーー!!!!」
リッツの元の駆け寄っていたソーニャがそれに気づき炎の化身と化すが、それをリッツが制する。
判っていたのだ。
本能のレベルで。
あれはもはやルフォンで行動と共にしたチビではない、と。
それでも振り切り、アビサルの元へと駆け寄ったソーニャが見たものは・・・
亀裂が入り、真っ二つに割れた縦目仮面。
額に接する直前で止まった弾丸。
そして何もない眼窩。
黒より昏い青色で満たされたその視線にソーニャは思わず身をのけぞらす、が、遅かった。
「「「「共に世界に・・・」」」」
ソーニャは光の粒子となり、抜け殻の肉体だけがそこに伏す。
それと共に、アビサル身体は劇的に変化していく。

細く小さかった少女の身体が膨らみ、徐々に大きくなっていく。
顔は老若男女かまわず次々と変化していく。
その中にはレシオンの顔やソーニャの顔、そしてジーコをはじめ既に死んでいった者たちの顔が・・・
最終的に納まったのは誰の顔でもなかった。
逞しい体に精悍な顔つき、背中まで伸びる髪。
太く長い両腕を掲げ、アビサルであったものは叫ぶ!
「「「「大!帰!滅!!!」」」」
数十の声が重なり合う言葉に応えるかのようにどこからか光の粒子が流れ込んでくる。
それは渦を巻き、アビサルへと吸い込まれていくのだ。

30 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 23:14:32 0
「・・・おぬし、何者にゃ?」
押し殺すように問うクロネにアビサルだったものは応える。
「「「「問いに答えよう。我が名はメルキゼデグ!第八の大罪の魔物『正義』!そして新たなる世界そのもの!!」」」」
高らかな宣言と共にメルキゼデグは語る。
レトの民の歴史を。プログラムエターナルを。

レトの民は差別も争いもない、死すらない世界を作ろうとしていた。
それは世界が一つになるということ。
抽象的な意味ではなく、物理的に世界を一つにすることを。
世界の成り立ち、世界樹、大罪の魔物システム、創生の果実を研究して辿り着いた結論。
命の統合!精神の融合!
道半ばでセフィラは滅したが、『壁』を越え、新たなるセフィラに来てもその研究は続いていた。
いや、このセフィラに来たことすら計画のひとつだったのだ。
創生の果実を喰らった原罪の魔物、祖龍アンティノラの存在は計画に必要不可欠のものだったのだから。

レトの民は龍を駆逐し、祝福を与えて人間とエルフを作った。
それは命と精神を融合しやすい種への品種改良なのだ。
全ての生命はやがて星に還る。そうしたら目に見えない想いの粒子のような物になって いつかまた新たな生命の源になる……
エルフ達に伝わる口伝は、このことを表していたのだ。
「う、嘘だ!僕達エルフが・・・!そんな・・・!」
エルフとしては変り種と自他共に認めるところではあるが、それでもセイファートは叫ばずにはいられなかった。
己の、そして種としてのアイデンティティーが粉砕されたのだから。
しかしセイファート自身否定しようとも、それが真実だとわかってしまっている。
だからこそ否定せずにはいられない。
が・・・黄金の仮面は残酷なまでにその答えを口にする。
『汝が中に翼乙女が溶け込んでいること、それが全てではないか?
他にもいよう、他者との融合を果たした者が。』
冷たく何もない眼窩はセイファートを射抜き、獣人達へも向けられる。
その視線が語るものこそそれが八翼将の秘密。
1つの種族全ての魂を共有する秘術だった。

そして黄金の仮面の言葉は続く。

品種改良を行うと共に、それを纏め上げる存在の作成も着々と進んでいた。
纏め上げる存在。
それが新たなる大罪の魔物、正義、だった。
300年前、レシオンが戦争を引き起こしたのはまさにその為だったのだ、
苛烈な戦争の中、あらゆるものがある一点にその『想い』を集中させる。
討つ者も討たれる者も、あらゆる者が願う唯一つのこと【争いのない世界を】
その瞬間、第八の大罪の魔物【正義】は発生した。
しかし、戦争の終結の瞬間生まれた【正義】は同時にその瞬間からあらゆる【正義】に枝分かれをする。
全てのものの中に宿った【正義】一つ一つが大罪の魔物だったのだ。
生まれた瞬間霧散した大罪の魔物は世界樹にその存在を知られることなくあらゆる者の想いの中に潜むことになる。

世界を一つにするその瞬間まで、静かに、深く、深く・・・・

周到に準備され起こされた新たなる戦争。
戦いに疲弊し、大陸崩壊という未曾有宇野天変地異を前に再びあらゆる者の想いは重なる。
争いで、災害で、死んだものたちはその肉を脱ぎ捨て純粋なる想いの粒子となり、統合される。
この光の粒子一つ一つが大罪の魔物【正義】を構成するものなのだ。

31 名前:アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 23:14:37 0
「ヒロキ!」
浪々と語るメルセデギグの言葉をさえぎりチェカッサが叫ぶ。
だが、狙撃は実行されることはなかった。
その手に持つ魔道銃が形を崩し、消えていくのだから。
「「「「無駄だ。既に分岐の刻は過ぎ去った。あらゆる未来は消えうせ、唯一つの時が流れる。」」」」
その言葉を証明するように起こる数々の異変。
「姉さん!」
「そんな・・・こんなことって・・・・」
自分達の体が薄れていくことに声を上げるディアナとドゥエル。
エドワードもその異変に気づいていた。
時の分岐は閉じ、祖龍がギュンターとして復活するディアナたちの未来も、レベッカが世界連邦初代大統領となった未来も消えていっているのだ。

「ぬがああああ!よくもレシオンを!!!」
咆哮をあげるグラールが元の姿を取り戻しながら踊りかかる、
確かにかつては友だった。
だが、道をたがえ、お互い殺しあわずに入られない関係。
だったはずなのに、なぜかグラールの心を占めていたのはレシオンへの惜別の念。
そしてレシオンを利用し、道を違わせた物への復讐の念だけだった。

剣を持たずともその力は凄まじく、一振りで影から現れるゴウガの刃をなぎ払う。
ふた振り目でメルセデギグを捉えたのだが、不可視の力が働き触れることすらできずに硬直する。
「「「「無駄だ。お前達十剣者、そして使徒は大罪の魔物を狩るために作られている。
だが、それは既定された大罪の魔物に対してだ。
つまりは、新たな大罪の魔物には対応していないのだ。たとえ剣を持っていたとしても変わらんよ!
スターグ!誓いを果たす時ぞ!」」」」
硬直したグラールの吹き飛ばしたのはスターグだった。
獣人の祖であるグラールに手を上げる。
本来ならばありえない行動である。
だが、それができたのはスターグゆえにだった。
クラックオンの種族特性として、あまりに強く純粋な想いを抱いてしまっているのだ。
それは強力な力となるが、逆に言えば柔軟性がなく黄金の仮面にすれば御しやすい相手だった。

スターグとアリアンロッドとなったパルスを従え、一歩踏み出す。
それを見送るのは狂気の笑みを浮かべるシファーグ、そしてゴウガ。
その踏み込みは世界そのものの踏み込み。
絶え間なく流れ込む光の粒子を吸い込みながら無人の野を歩くがごとき姿で。
「「「「残念だがお前は新たなる世界の一部にはなれん。古き世界と共に朽ちるがいい。
他のものは受肉を終わらせる。恐れるな、世界の一部となるのだ!」」」」
ジオフロントは光の粒子で満ちていく。
それはこの戦争で、そして大陸の崩壊により肉体を失い死した人たちの想いの結晶・・・

32 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/03(日) 00:36:14 0
「ちょ! 何あれ!? 世界を一つにするとか訳わかんないんですけど!」
「パルメリス様が狂ったーー!?」
「触角ーー!!帰ってこーい!!」
ジオフロントでの出来事を目の当たりにし、騒然とする一行。
「今は彼女を信じるしかありません。それより……」
にわかに揺れが始まり、足元が崩れていく。大陸崩壊の影響が及び始めたのだ。
ラーナはレーテに声をかけた。
「紅星龍! 皆を連れて逃げてください!!」
「分かりました」
レーテは巨大な紅き龍イルヴァンの姿となって一行を背に乗せ、周囲に防護壁を張る。
飛び立つイルヴァンの姿を見送った直後
ラーナは転移の術を唱え、その場から姿を消した。

辺りに満ち満ちる光の粒子、それは人々の想いの結晶。
何よりも綺麗だと思った。
「やめろ!! パルメリス!!」
パルメリス? ああ、自分はそんな名前だったっけ。
でも名前なんてもういらないんだ、世界は一つになるんだから。
「全てはこの時のためにあった。何の苦しみも争いも無いただ一つの世界……
永遠の平和が始まる……」
「それは違うよ!! 偽りの平和なんていらない!!」
ギターの少女が何か叫んでいる。
なんでこの人たちは必死で妨害しようとするのだろう。
「パルメリス! こっち向け!!」
そう言って銃を向けつつあるのは確か特殊弾の使い手で……誰だっただろう。
思い出そうとしてやめた。誰だろうと同じだ。
邪魔する人達には早く大人しくなってもらえばいい。
「堕ちろ、射抜け、聖凛の星《The Star》」
無数の光線が辺りを撃ちぬく。

33 名前:『裏方』 ◇d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/04(月) 21:24:17 0
地面は砕け、海は割れ、大気は乱れに乱れ、人は崩壊する大陸に飲まれてゆく
人々の願いの声も助けを求める声も、種族も性別も無くただ飲み込んでゆく
「ジェシカ!!」
「お母さん」
再び、津波が親子を襲い、
「ひぃひぃ、わしは死なぬぞ、誰ぞ助けぬか」
「ひゃははは、終わりじゃ!!この世の終わりじゃよ」
人心を無くした教皇を見て、老人は笑い、教皇府の崩壊に消えた

次々と建物が、街が、国が崩壊してゆく
「村人達ノ批難ハ出来タカ?」
「長、安全ナ場所モウドコニモ無イ、皆、生マレタコノ村デ運命迎エル」
「ソウカ・・・・」
湿地帯のリザードマン達は運命を受諾した

「ぐぉおおおお!!これ以上俺の店は壊させないぞ!!」
必死で酒場の主は自分の作り上げた居城を崩壊から救おうとした
「走れ!!協会までもうすぐだぞ」
「はぁはぁ・・・きゃあ!!」
キャメロンとアリスはラーナ協会を目指して走っていた、その時に地面に巨大な裂け目が走った
そこにアリスは落ち込みそうになった
「ぐぉおおおお・・・・おりゃああ!!」
間一髪、キャメロンがアリスを引き上げる、安心した瞬間の事だった
キャメロンの足元が崩れ、今度はキャメロンが地面に飲み込まれていった
奈落に続く暗闇にアリスの駆け寄った時には既にキャメロンの姿は無くなっていた

鐘が鳴る、大陸の全ての協会がこの崩壊に鐘を鳴らす
人々は祈る、神に、大地に、そして運命に、
崩壊する大地で、街で、人々の祈りは、やがて大きなうねりになって大陸を包む
神官が、司祭が、修道女が、ひたすら祈りを捧げる、口からは吐血し、目から血涙を流し、
ひたすら祈る、祝詞は歌となって世界を駆け巡る

ーそれでも世界は崩壊を止める事は無いー

34 名前:『裏方』 ◇d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/04(月) 21:25:06 0
「シファーーーーグ!!」
パパルコの絶叫が響く 還って来る答えは無い
「貴様!!我々をたばかっていたとは、なんと愛の無い事か!!」
だがやはりかえってくる答えは、あった しかしそれはシファーグでは無くゴウガの声
「愛だ、正義だと、つまらない奴らだ」
シファーグが相槌をうつ
「まぁ、そう言うな悪友、人それぞれの価値観だろう?」
言葉ではもう何を言っても無駄だと踏み、パパルコがその巨体を跳躍させる
「どうする?」
「時間は大事だよ、ゴウガ君」
その会話を交わした瞬間に二人の姿はその場から掻き消えた
「何!?」
刹那、パパルコの体中から鮮血が噴出す
チン・・・とやけに澄んだ音が二つ鳴り響いた 
「闇とは光の移し身・・・・・」
静かにゴウガが囁く、
「光は闇がなければ光として存在しない」
シファーグがやや芝居がかった喋りで続く
「「我々は表裏一体の悪鬼羅刹也」」
光と闇の双鬼がにやりと笑って獲物を見る
「ぬぅ・・・・がぁ嗚呼ああああ!!ふん!!」
気合と共にパパルコは全身の筋肉を膨張させて、止血した
「この・・・・悪童どもが!!しっかり愛でしつけてやるわ!!」
さらなる闘志を燃やしてパパルコは双鬼にむかった

35 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/05(火) 00:14:29 0
人機融合を果たし、ナバル外壁で暴れ狂う火炎魔人《ムスペルベルヘイム》。
その内部は意外にも静謐に包まれていた。計器の音だけが規則正しく聞こえてくる。
ソフィーは消えかけている意識の片隅でお母様はうまくやってくれたかな、と思う。
もとより自分は敵の気をそらすための囮。そろそろ散ってもいいよね。
どうせなら最後は打ち上げ花火のごとく派手に自爆攻撃で。
まさにその指令を出そうとした瞬間。
小さな変化が起こった。ひとりでにモニターがついたのだ。
「ソフィー、時間が無いからよく聞いて!」
映ったのは、見慣れたはずの母親の顔。でも何かが違う。どこかが違う。
ソフィーはその違和感の正体に本能的に気付いた。
「お母様……死んだの!? 伯父様は倒せたの!?」
「ええ、でも本当の敵はもっとずっと性質の悪いものだったの。
私たちがやってきたこと全てが無駄になってしまうわ……!!」
聞き返す必要は無かった。大陸が崩壊しつつある事に否が応でも気付いてしまったのだ。
足元で、今の今まで戦っていたロイヤルナイツ達があっさりと地割れに飲み込まれていく。
「うそぉ……」
「驚いてないで早く秘密の隠し形態に変形しなさい!」
「えー!? そんなの聞いてないし!」
死んでなお無茶な注文を突きつける母親に、消えかけた意識も戻ってきてしまう。
「もう! 仕方ないわねえ!」
マリオラの亡霊がそういい残したのを最後にモニターが消えたかと思うと
轟音が鳴り響き、視界がぐるぐる回り始める。
「「「あぁああああれぇええええええええええええ!?」」」
何がなんだか分からないうちに秘密の隠し形態とやらに強引に変形していく!

36 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/05(火) 23:12:38 0
崩壊したガナンにて。
オペラはスターグとの戦いで重傷を負って以来、生死の境を彷徨っていた。
ガナンを護るために全ての力を使い果たし、今にも命は尽きようとしていた。
しかし、彼女の元に神秘的な雰囲気をまとう女性が現れた。
(あなたにお願いがあります、音楽の女神よ)
意識の底に語りかけてきた存在、それは女神だった。
例えや比喩ではなく、この世界に人間やエルフを生み出した正真正銘の女神。
(私に何ができましょう?)
そう問い返しながら、理性は信じることを拒否していた。
今となっては新しき神が存在するはずは無い。
いたとしても、人間の守護者である神が龍人の自分の元に現れるはずは無い。
(出来ます、いえ、あなたにしかできません)
女神は、龍人が聞いた事のあるはずの無い言葉を紡ぐ。
不思議な力が渦を巻きながら流れ込んでくる。

「護りの歌を今一度……今度は世界のために」

オペラが目を覚ました時、女神の姿はどこにも見当たらなかった。
『お目覚めか? 嬢ちゃん』
代わりに話しかけてきた者は、緑色の巨大な龍だった。
彼女は、飛行する翠星龍の背に乗っていた。

37 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 00:03:55 0
容赦無く降り注ぐ破壊光線。
アーシェラとシャミィが出来うる限りの魔力を注ぎ込んだ防御魔法を展開する。
それでも防ぎきれなかった光線の一部が肌を焼いた。
「ジェネヴァ……始末しなさい!!」
ジンレインが震える声で魔剣に指令を出す。ハイアットが慌てて止めにかかる。
「頼む、やめてくれ!!」
「だって……仕方ないでしょ!」
飛び交う懇願するような叫び、悲鳴のような怒声。
騒然とする一同と対照的に、メルセデギグの荘厳な声が響く。
「「「案ずる必要はない、この者は新たな世界の女神となるのだ!」」」
「そんなの……許さない!!」
ハイアットは叫んでいた。その言葉の意味を理解してしまったから。
メルセデギグが新たなる世界そのものならアリアンロッドは創世の女神。
命と精神が統合された世界に確固たる形を与え、揺らがないように守り続ける存在。
ただ一つの世界が決して朽ちる事の無いように。終わりなき時を、永遠に……。
そんなことは絶対にさせない。ハイアットは銃を構えて、一歩踏み出した。
心の中を見透かしているように、メルセデギグが嘲る。
「「「無駄だ……パルメリスはもうどこにもいない!!」」」
「やってみなけりゃ分からないだろ!」
銃にセットしてあるのは、特殊弾頭コードNo.00『memory』。
正面から額にあてなければ効かない上に、正直効く保証はどこにも無い。
アーシェラが悲痛な叫びをあげる。
「ハイアット! もう無理よ、危険すぎるわ……!!」
そうしている間に非情にも、パルメリス、否、アリアンロッドの呪文が紡がれる。
「穿て、狂え、破壊の力《Force》」
不可視の魔力が収束し、全方向に衝撃波が解き放たれる寸前。
響いたのはモーラッドの呪文の声。
「【ニュートラライズエレメンタル】」
収束した魔力が掻き消える。
「今のうちだ!」
モーラッドが辺りに展開しているのは、精霊力を打ち消す最高位霊法。
エクスマキーナの全てを喰らう魔性が世界を破滅させる力なら
アリアンロッドのあらゆる属性を生み出す魔性は世界を形作る力に他ならない。
こうなったのは、《アニマ》の魔性を知っていたのに止める事ができなかった自分の責任。
だけど、今はハイアットの特殊弾に賭けるしかないのだ。
アリアンロッドは相も変わらず妖艶に笑う。
「フフ、それで勝てると思ったか?」
虫でも掴むようにさり気無く腕を振るだけで、真空刃が舞う。
その手に閃かせる剣は、美しく不気味な輝きを放っていた。

一方、メルセデギグに対峙するのは、消えかけているディアナだった。
「そんな……勝手な事が許されると思って!?」
「「「威勢のいい事だ……間もなく消える定めだというのに!」」」
ディアナは少しのためらいもなく跳躍する。
「三分あれば十分!! 受けなさい、人の想いの力を!!」
「姉さん!?」
新たなる世界になる者に真正面から飛び掛るディアナに、弟が驚くのも無理は無い。
いや、本当は姉も弟もありはしない。
ディアナは知っていた。弟は知らない真実を、自分達の半分は生き物ですらないことを。

38 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 20:09:25 0
「はぁ・・・はぁ・・・・まったく・・・・冗談じゃねぇ!!」
片膝をついてブルーディが呻いた その視線の先には目にも止まらぬ速さで攻防を繰り広げる物達がいる
「・・・・ったく、洒落にもならねぇ・・・・」
そう言って静かにローラを奏で始める 演目は特に無い 思いつくまま、気の向くまま
時に激しく、時に優雅に、時に哀しげに、そして力強く
音を武器にする者はその旋律で気がついただろう その旋律が体を癒し、心を高ぶらせ、絶望を希望に変える旋律だと
「・・・・・・やっぱりよ、俺にはこれがあってるんだよ」
明日への希望の旋律を奏でるブルーディをゴウガの影が襲う
僅か数ミリの所でその影の刃は何物かの豪腕に掴まれ砕けた
「せっかくのええコンサートを邪魔すんなや」
その豪腕の主はリーヴ、その顔にはすでにいっぺんの曇りも無し
「ったく、傭兵転じて救世主って笑えん冗談やで、ホンマ」
頭をかきながらやれやれと言った感じで目の前のゴウガとシファーグにおどけてみせる
「別にわいは他の皆さんみたいに『世界を守る』とか『誰かを守りたい』なんて高尚なもん持ち合わせておらへん」
パパルコも手を止めその言葉を聞く、
「でもなぁ・・・・思うんや、自分を貫く事ぐらいは出来るやないか・・ってな」
作られた外骨格の右手を握っては離し、握っては離す そんな動作を何度か繰り返して前を、見据えた
「お前らのやり方が気にくわんからぶん殴る!!」
その一言と共に辺り一面を爆風が包む
「そうだねぇ!!あたしもこいつらは気にいらない!!」
「せめてもの罪滅ぼしだ・・・・・・暴れるぜぇ!!」
リッツとソーニャが闘志むき出しで構える、パパルコが笑う、ゴンゾウがその目を輝かせる 黒騎士がその力を解放させる
シファーグが、ゴウガが口元を吊り上げ牙を剥く

誰かが言った

さあ・・・・・おもいっきりやろうぜ

39 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 22:06:57 0
大陸全土が鳴動し、そこに住む人々は飲み込まれていく。
人だけではない。
木も山も川も、全てが断末魔を上げるように崩壊し、光の粒子を溢れさせる。
それは大陸だけに収まらず、全世界、そして星界にも及んでいく。
全てが光の粒子となって、一点に流れていこうとしているのだ。

あまりにも美しい滅美の光景であった。

ジオフロントに、そしてメルギゼデグに無尽蔵に流れ込む光の粒子。
その美しき光景を見るものはどこか懐かしさを感じろだろう。
なぜならばその光はあらゆる想いの剥き出しの結晶。
全てのものが己が内包するものなのだから。

「三分あれば十分!! 受けなさい、人の想いの力を!!」
真正面から渾身の力で拳を振るうディアナ。
力と想いが同一した最強の一撃は、何の抵抗もなくメルキゼデグの腹にめり込んだ。
そう、何の抵抗もなく、だ。
「「「「人の想いの力・・・確かに受け取った。」」」」
平然と応えるその言葉に、ディアナは恐るべきものを見るだろう。
自分の腕がメルキゼデグの腹に融合しているその光景を!
「「「「汝が一つの想いの元、作られたのは疑いようはない。
だが!そこは我々が300年前に到達した地点なのだ!」」」」
ディアナの半分が思いによって構成されているのと同様、いや、それ以上に。
メルキゼデグは【想い】そのものなのだ。
あらゆる想いの集合体、そしてそれを統合せし者なのだから。
「う・・・うああああああ!!!」
徐々に侵食されていく恐怖に上げられた叫びは、衝撃によるダメージを受けた叫びへと変って行く。
横に控えていたスターグがディアナの顔を掴み、力任せに薙ぎ払ったのだ。
結果的に片腕を失ったが、侵食から逃れることができた。
しかし、それで危機が去ったわけではない。
「誓イヲ果タサン!」
吹き飛んだディアナに追撃をかけるスターグ。
その迫る姿が歪んで見えるのは、獄震を纏った必殺の追撃であることを表しているのだから。

「「「「融通のきかぬ・・・まあいい・・・」」」」
スターグはメルキゼデグの支配下にあるわけではない。
その強すぎる想いのベクトルを少しずらしているだけなのだ。
故にあくまでスターグは誓いの為、祖龍を倒す為と思い込んでいる。
実際にはまったく違うように操られていると自覚すらできずに。

結果的に邪魔をされた形になったのだが、どうすることもできず。
不機嫌そうに視線を移した瞬間、視界に影が落ちる。
「美味い餌を前に邪魔をされるのが一番腹が立つんだ!!」
最強の敵との戦いを邪魔され続けたゴンゾウの雄叫び!
そこから繰り出されるは最強の一閃!
避ける事も防ぐことも許さぬ一撃が繰り出された。

40 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 22:07:11 0
***パキーーーン***
渇いた音と共に宙を舞い、床に突き刺さる刃。
刃渡り十尺の呪い刀《不砕折》。
切れ味適当、威力大味、ただ決して損なわれないというだけの大太刀があっさりと折れたのだ。
何をされたわけではない。
ただ単純に振り下ろした。
だが、メルキゼデグの皮一枚斬ることも叶わず折れたのだ。
「・・・無念だ・・・。まさか、武の通用しない世界があるとは・・・。」
中ほどで折れた太刀を見ながら呟くゴンゾウの目からは一筋の涙がこぼれる。
そしてゴンゾウはその人たちで全てを悟ったのだった。
たとえ実体のない幽鬼といえども、その力で強引に切り伏せた。
その武が完全に折れたのだから。
「「「「最愛に比べて最強など・・・!」」」」
ゆっくりと額に手を当てられるが、ゴンゾウはもはや抵抗しなかった。
「これ以上、武が通用しないのを見るには耐えん。」
その言葉を最後に、ゴンゾウから光の粒子が溢れ、躯となった肉体は力なく床に倒れた。


凄まじい戦いの中、部屋の片隅で一つの変化が現れようとしていた。
満身創痍でなおも蝕まれ続けていたイアルコがその身を起こそうとしていたのだ。
「にゅにゅににに!!!余がいつまでも唸っていると思うなよぉ!!!」
雄叫びと共に立ち上がるその身体は、以前より一回り大きくなっていただろうか?
だが体の大きさ以上にその身に纏う雰囲気が変っていた。
「メリー!良くぞ余を信じてくれた!礼をぶげぎゃあああ・・・・!」
金色の光を纏いながら立ち上がり、メリーに礼を言うその口に重厚なる右ストレートがめり込む。
壁にめり込んだイアルコに容赦なくパンチを打ち込み続けるメリー。
「ちょ・・・メリ・・・もう大丈夫・・だから・・・信じ・・・」
まさに貼り付けのサンドバック。
イアルコの命のともし火がかき消される時は近いのかもしれない。


光の粒子満ちるジオフロントで、レベッカ、リリスラ、ブルーディ、アーシェラ、シャミィの脳裏にラーナの声が響く。
(力では・・・力ではメルキゼデグに勝てないのです。
もう少し持ちこたえてください。ジンレインを守って・・・)

41 名前:愛の女神ラーナ ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 22:58:55 0
漆黒の闇にただ一人、ラーナは姿を現した。地上三万メートル、星界。
周辺の星はエクスマキーナによって食らい尽されたため、何も無い空間が広がっている。
そこに、圧倒的な存在感を持って蠢く異形の化け物がいた。
星界に追放された二機のグレナデアの成れの果て。
分割されて二機の動力源となっていた
龍の世の創世記に十剣者との戦いで死んでいった星の龍の魂達。
それが暴走した状態で星界で出会ったことで融合を遂げてしまったのだ。
「やはり……」
ラーナは決意と哀れみを込めた目で異形の怪物を見つめる。
化け物と成り果てた彼らは何も覚えてはいない。
覚えているのは自分達を駆逐した十剣者、そして世界樹に対する恨みだけ。
魂を鉄の檻に閉じ込めて利用した龍人達に対する憎しみだけ……。
∵何ヲシニキタ? 異ナルセフィラノ民ヨ∵
それは目の前に現れたラーナに向かって言葉を発した。
化け物に成り果てていても僅かながら龍の知性が残っているのだ。
「決まっているでしょう? 今すぐ新しい世界率を解放しなさい」
ラーナは凛とした声で言い放つ。彼女は突き止めていた。
これこそが、グラールが書き換えた世界率が発現しない原因。
世界樹に対する恨みから、破滅に手を貸そうとしているのだ。
∵ククク……愚カナ……! 嫌ダトイッタラドウスル?∵
「消えてもらうまでです!!」
ラーナはレトの民の呪文をつむぎ、特殊なフィールドを形成していく。
命と引き換えにしてでも倒す覚悟は出来ている。全ては最後の希望を繋ぐため……。
∵面白イ、受ケテ立トウ……我ガ名ハ《リヴァイアサン》!∵
異形の龍は、全セフィラに轟くばかりの咆哮をあげた。

42 名前:銀の輪の女王アリアンロッド ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 23:56:40 0
「「「まずは魔剣の姫からだ、アリアンロッド!!」」」
銀の輪の女王アリアンロッドにメルキゼデグの指令が飛ぶ。
レシオンに施された遺伝子変換は三代先までも完璧に計算されていた。
それぞれが計画完遂のための駒として動くように。
操られていることにすら気が付かず、決して逆らうことは出来ない。
上空に舞い上がり、ジンレインに真っ直ぐに剣を向ける。
それは一瞬で息の根を止める死の宣告。ジンレインは悟った。避けられない――!
そうか、これはつまらない嫉妬心を燃やして醜い事を考えていた自分への罰だ。
アリアンロッドは胡蝶のように優雅に、それでいて獲物を捕らえる隼のように舞い降りる。
ジンレインは薄く自嘲の笑みを浮かべながら目を閉じた。
次の瞬間、金属音が鳴り響いた。
目を開けると、ラヴィが弾き飛ばされて転がるところだった。
以前暗殺を依頼して殺そうとした相手が自分を守っている。
なんでこんなにもバカでお人よしで……真っ直ぐなんだろう。
さらに驚くことに、ラヴィは涙を流しながら、声を枯らしながら訴えていた。
「お願い、元に戻って……そんなパルちゃん……見たくない」
バカだけど、バカだからこそ死んで欲しくないと思ったから、ジンレインは叫んだ。
「やめなさい、殺されるだけよ!!」
しかし、ラヴィには聞こえない。
そしてアリアンロッドはなぜかすぐに殺そうとはしなかった。
狂気の奥に哀しみと哀れみを秘めた瞳でラヴィを見つめる。
「次なる世界に進む時が来たんだ……なぜ分からない?」
「分からない! 分かりたくもないよぅ!」
何かを振り切るようにラヴィに止めを刺そうとするアリアンロッド。
「ダメよ!!」「やめろ!!」
それに、ジーナとセイファートが左右から飛び掛って羽交い絞めにしようとする。
当然出来るわけはなく、ただの腕の一振りで弾き飛ばされた。
「私が知ってるパルス君はこの世界が好きだったはずだよ!」
「君は全部乗り越えてきたじゃないか! ここまで来てどうして!?」
アリアンロッドは再び動きを止める。
ハイアットには、瞳が僅かに戸惑いに揺れているように見えた。
「パルメリス……殺すなら私を最初に……!」
アニマによる砲撃を封じるために最上位の霊法を展開し続けているモーラッドが膝を突く。
再び砲撃が始まったら正面から狙うチャンスは無い。
ハイアットは意を決し、銀の輪の女王の前に身をさらす。
「パルス……最初に会った時、僕のトンデモ話をちゃんと聞いてくれたよね。
エスノアに食われた時に飛び込んでくれて……あと……
バナナの皮作るのも手伝ってくれて……それから……」
「うるさい……!! 全員黙れ……説教は嫌いなんだあああ!!」
錯乱するアリアンロッドに、メルキゼデグの非情な声が突き刺さる。
「「「惑わされるな!!銀の輪の女王!」」」
それは遺伝子に刻み込まれた定めにより、抗う事さえも許されない声。
剣の切っ先がハイアットに向けられる。ハイアットは避けようとはしなかった。
避けようと思えば避けられるはずなのに、ただ真正面から銃の狙いをつける。
たとえ自分の命と引き換えでも、元に戻してみせるという決意と共に。
アーシェラには向かい合う二人が動き始めるのがスローモーションのように見えた。
「嫌……やめて――ッ!!」
アーシェラの絶叫が響きわたる。

43 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/02/10(日) 18:06:58 0
な・・・に?

44 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/10(日) 21:23:29 0
アリアンロッドとハイアットがぶつかりあう刹那、その銀の突風は巻き起こった
「ぐぅ・・・」
「何事だ」
その銀の突風はやがて一人の女性の姿をかたちどる
その姿はハイアット達がよく知っている しかし、もういないはずの女性
「パルスさん・・・・いいえ・・・今はアリアンロッドでしたね」
その女性は高々と右手を天に上げる
「そ、そんな馬鹿な、あの時に確かに死んだはず」
ハイアットも驚愕の表情を隠せない
「ええ・・・・私も・・・ソーニャさんも確かに・・・・死にました」
その女性はしっかりと前を見据えた その先に写るは アリアンロッド そして メルキゼデグ
「ですが私たちはあなた方と一つになる事に反発したから・・・・追い出されて」
天に上げられた手がアリアンロッドの頬を思いっきり引っ叩く
「目を覚ましなさい!!それでも一緒に旅をした仲間ですか!!」
「「「アクアさん!?」」」
それは確かに先の大罪との闘いで傲慢の魔物と相打ちとなって消滅したはずのアクア・ウーズ
メルギゼデグの顔が瞬間 歪んだ
「何故、一つになる事を拒む?何故また現れる?」
「・・・・・・・あなたのは本当の愛では無い」
アクアの答えにメルキゼデグの顔が更に歪む
「まぁだ わかってないのか?お前に融合する事を拒んだ魂はお前からはじき出される」
いつの間にかソーニャがアクアの横に立っていた
「そしてあなたは言ったではありませんか・・・・覚えてないのですか?」
「『他のものは受肉を終わらせる』ってな!!」
ソーニャの体にヒビが入る、そこから光の粒子があふれ出る
「・・・・・そんなにもちそうにありませんね」
「殴るだけなら数秒もてばいいさ」
そのソーニャの言葉で二人は動いていた ソーニャはメルキゼデグに向かって
アクアはアリアンロッドに 向かって

すでに死んだはずの二人は今の世界率 思いの力 と メルキゼデグの新たな世界の狭間から生まれた幽霊である 
その身を留めて置けるのはもって数分程度だった

「目ぇ覚ませ!!この馬鹿!!」
ソーニャがメルキゼデグに殴りかかる がその拳は届く事なく拳の先からまた光の粒子になって消えてゆく
「いるんだろ、アビサル・・・・アビサーーール!!」
そして完全に消え去った 一人たたずむは無感情のメルキゼデグだけ

そしてアクアもまた消え去ろうとしていた アリアンロッドの胸に拳を突きつけて
「思い出してください・・・・あなたは・・・貴方の歩んだ道は、貴方が友と歩んだ道は決して決められてたものか
 違うはずです、どうか思い出して」
そして彼女もまた粒子となって消え去っていった



45 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 23:07:49 0
打撃、打撃!、打撃!!打撃!!!
轟音が鳴り響く、そして、それを受け止めるのは狂気の使途たち、シファーグとゴウガ
「ぬぅええーーーーーい」
パパルコの豪腕が血しぶきを上げながら振り下ろされ、シファーグはそれを片足で受け止める
「オーラオラオラオラ!!」
何百ものリッツの拳を何百ものゴウガが避ける

突如、闘いの均衡が破られたのはシファーグとパパルコだった
「ぐがぁ!!」
パパルコの腹部中央に大きな穴が開いていた
「チェックメイト」
くるりと杖を一回転させるシファーグ、刹那 ヒュゴ と言う風きり音がし、パパルコの四肢から鮮血が噴出す
「・・・・・・む、愛が足りなかったか」
そのままどさりとパパルコは倒れ、彼もまた光の粒子となった

「さて、ブルーディ君、またせたねぇ・・・・」
シファーグがその瞳に次なる獲物を写す ブルーディは演奏する事に今尚心をさいているせいで気がついていない
「皆に等しく絶望を!!」
シファーグの凶刃がブルーディを再び襲う

シファーグの凶刃はブルーディに届く事は無かった その凶刃、ステッキの仕込み刀は黒騎士の手に捕まれていた
「これは驚いた・・・・」
「それはこちらの台詞ですよ、シファーグ公」
バキリと音をたててシファーグのステッキが砕ける
「・・・・・気に入ってたんだがね」
黒騎士の回し蹴りを避けながらいつもの調子でかっこをつけて見せた

「ゴウガ君、そろそろ疲れてこないかね?」
「・・・・・・・・・・仕留めるか」
ゴウガとシファーグがリッツと黒騎士に対し構える、その身に黒い闘気を纏わせて
その闘気がのたうつ蛇となって地面を空を駆け巡る
「喰らって死ぬといいよ」
「・・・・・・・闇に滅せよ」
リッツと黒騎士がその闇の蛇に飲まれた


46 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 23:38:11 0
最初に感じたのは違和感だった。僕はなにをしているんだろう。
ここまで一緒に来た仲間になんでこんな事をしているんだろう。
その違和感は、後悔に変わっていった。
自分自身の意志だったのか、操られていたのかはよく分からない。
でも全て覚えている。全てを諦めて、みんなを殺そうとして。
なのに、みんな僕を信じて必死で呼びかけてくれて。
僕の目を覚ますためにアクアさんが来てくれたんだ。

最後の言葉を残し、光の粒子となって消えていく女性を前に
アリアンロッドは、消え入りそうな小さな声で、だけど確かに呟いた。
「アク…ア……さん……」
全身から発せられていた美しくも破滅的な妖気が消えていく。
「パル……これが何だか分かる?」
レベッカが進み出て、暁の瞳をおもむろに差し出す。
「レベッカちゃん……」
差し出された横笛を恐る恐る受け取ったのは、新世界の女神ではなく
叱られた子供のように今にも泣き出しそうな顔をしたエルフの女王だった。

47 名前:ラーナ ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 23:38:55 0
異形の魔龍《リヴァイアサン》の六つの頭から同時に吐き出されるブレス。
それぞれが惑星一つ消し飛ばす程の威力を持つ力の奔流。
全てが絡み合い漆黒の虚無となってラーナに襲い掛かる。
「【分解消去】」
それに飲み込まれる一瞬前、ラーナは自分自身を原子レベルまで分解して姿を消す。
虚無の奔流は、不可視の壁にぶつかって消え去った。これが最初に展開した呪文の効果。
この戦いが三万メートル下の地上に被害を及ぼさないようにバリアーを張っているのだ。
∵ドコニ消エタ……!?∵
「【再構築】」
ラーナは、密かに怪物の頭上に体を再構成して現れた。
エルフが精霊を操るがごとく、レトの民は物質を自在に操る。
ラーナの呼びかけに応じ、粒子と呼ぶには大きすぎる眩い光の塊が無数に舞う。
それは星界にのみ存在するエネルギー体。
「【エーテルストライク】!」
発動の鍵言葉と共に、練り上げた力の結晶を一気に叩きつける。
超新星爆発と見まごう程の閃光が炸裂し、衝撃波が駆け抜ける。

48 名前:レーテ/リオン/蜥蜴の尻尾/暁旅団 ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 23:18:37 0
紅星龍に乗せられて飛ぶリオンと蜥蜴の尻尾と暁旅団の面々。
凄まじい速度で流れていく眼下の景色は、世界の終わりと呼ぶにふさわしいものだった。
いくつもの光の粒子が聖地に向かって飛ぶのを見て、トムが声を上げる
「何だ……!?」
『死んだ人達の想いの結晶……この世界亡き後新たな世界の元となるものです』
「そんな事させないんだから!」
リオンの力強い声に、全員が頷く。
やがて彼らは唯一姿を留めている六星都市、海上都市マイラに降り立った。
聖地に向かって飛ぶ光の粒子が先ほどより多くなっているように見える。
降り立つと同時に紅星龍はレーテの姿になる。
「入ったら危ないのでそこで待っていてください」
こう言い残して、レーテは遺跡内部に入っていった。
「ちょ!? 何するの?」
悠長に説明している暇はなかった。しかし、その答えはすぐに分かった。
程なくして、遺跡が動き始めたからだ。
「え!?」
中央管制室から飛ばされたレーテの声が聞こえてくる。
『今から聖地上空にこの都市を持っていきます! 落ちたりしないでくださいよ!』
それを聞いて、辺りを観察していたレミリアがあることに気がついた。
「もしかして……都市自体が魔力増幅装置になっているの?」
彼女の推測は当たっていた。
それも、暴走したグラナデアの星界追放を可能にした程の強力なものだ。
そうしている間にも、遺跡は速度を上げていく。
向かう先は、世界の央にして果て、ナバル上空。

49 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 23:41:07 0
上空三万メートル。
閃光と衝撃波が駆け抜け、爆炎が立ち上る。
レトの民の生き残りであるラーナとリヴァイアサンの超絶なる戦い。
凄まじい爆発にあらゆるものが消し飛んだかに思われた。
が、妄執に捕らわれた魔龍の力は想像を絶する。
爆炎を突き破るように現れた巨大な顎がラーナを一飲みにせんと迫る。

しかし迫る牙は寸断され、巨大な顎は不可視の力によって弾かれ仰け反る。
「ラーナよ、お前が命を賭ける場所はここではない!」
ラーナの背後から声をかけるのは光臨を背負いし断罪の使徒。
そしてリヴァイアサンの周囲には十剣者達が展開していた。

「黄金の仮面・・いや、無間の剣に一杯食わされてしまいましてね。」
ヒューアが剣を振るいながらヒューアがラーナに説明をする。
黄金の仮面の策略にはまり、時空の狭間に飛ばされてしまった断罪の使徒と十剣者達。
元に戻った時には既にメルキゼデグが完成していたのだ。
グラールで証明されたように、新たなる大罪の魔物『正義』には対応していないため、戦っても勝つことができない。
最深部に戻ろうにも央へ至る門があるジオフロントが既に押さえられている。
そしてセフィラごと世界樹から切り離すにも、アリアンロッドによって強制的に繋げられているため、それもできないのだ。

このままではアリアンロッドの繋げた門を通り最深部に至る。
そうなれば今ある世界樹は枯らされ、メルキゼデグが新たなる世界樹になるだろう。
ここに至っては、もはやジオフロントにいる者たちに賭けるしかない。
そしてその為にも新たなる世界律を発動させ、ラーナを救わなければならないのだ。

######################################################

ジオフロント
想いの光の粒子が満ちる中、パパルコは倒れ、その一部となった。
そしてリッツとディオールも闇の蛇に飲み込まれる。
その様子を無表情に眺めるメルキゼデグの前に現れたのは、アクアとソーニャ。
二人とも確かに死んでいるはずにも拘らず、だ!

「「「「愚かな。大海の流れに一滴の水滴が逆らおうとて・・・」」」」
悲痛なる叫びと共に崩れていくソーニャを無表情で見送った。
そして向けられる先はゴウガ。
「「「「ゴウガよ。滅美の刻は堪能しておるか?しかし、やはり手に余ったようだな。」」」」
「・・・?」
その言葉をゴウガは理解できなかった。
ルフォンで回収したリッツの死体が蘇ったことは確かに誤算であった。
だがそれも今となってはどうでもいい事。
既に闇の蛇に飲まれたのだから。
「「「「奴をただの人間だと思うたか?人の身でありながら修羅双樹八世御門を使う・・・それが何を意味するか・・・!」」」」
意味が理解できぬまま、ゴウガは異変に気づいた。
リッツとディオールを飲み込んだ闇の蛇が苦しげに蠢いている事に。

50 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 23:41:19 0
そして決定的な一言が叫ばれる。
「ディオール!龍が蛇に飲まれてどうするのよ!これから一生ネタにしてやるわよ!!」
響き渡るのはレジーナの叫び。
既に涙声だが、声に込められた叫びは強く突き刺さる。

それをよそに、メルキゼデグは淡々と語りかける。
「「「「修羅双樹八世御門・・・プログラムエターナルの副次産物。命の統合システムの過剰暴走。
いわば奴は我のなり損ない。ロストナンバーなのだ!」」」」
メルキゼデグの宣言と同時に闇の蛇は破裂し、そこからリッツとディオールが飛び出してきた。

「黒星龍レプツェンの加護を受けし最強の称号黒騎士を冠する私に闇の蛇とは笑止千万!」
飛び出た勢いそのままに、驚くゴウガを吹き飛ばすディオール。
だがそれで勢いが収まることはない。
リッツと共に突き進むはメルキゼデグ!
「くぅおのクソチビ!赤毛がどんな気持ちで来たか!いい加減目を覚ましやがれ!!!」
叫ぶリッツの姿は既に人のそれではなかった。
修羅双樹八世御門の八門全てを開いた禁断の姿。
八魁!
鬣と牙、そして爪。異常隆起した筋肉。半透明・半実体・・・幽星体となった体。
世界に満ちる命を喰らいながら力に変える禁断の業!
本来ならば即座に周囲の命を喰らい尽くし強制解除されるのだが、今ジオフロントには命が満ち満ちている。
そう、全世界の命が!

単純な拳撃であるにもかかわらず、凄まじい衝撃音と共に立ち上る爆発。
最強の二人が織り成す一撃だった。
が・・・その爆炎から弾かれるように吹き飛ばされ出るディオール。
そして爆炎の中、歪むシルエットは首を掴まれ宙を浮くリッツ。
「「「「・・・リッツ・・・さ・・・」」」」
一瞬、メルキゼデグの顔が歪み、アビサルの顔が浮かび上がるが、それも直ぐに沈んでいった。
元通りになったメルキゼデグは無言でリッツの首を掴む手に力を入れる。
***ボキリ***
決して大きくはないがジオフロント内にはっきりと聞こえる嫌な音。
手を離すと、首がありえない方向に曲がったリッツは糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

不機嫌そうに首を動かし、アリアンロッドの異変を睨む。
そして初めて、メルキゼデグが現れてから初めて一歩を踏み出した。
「おお・・・見える・・・星龍の躍動が・・・アーシェラ様、先にいっておりますぞ・・・・」
その一歩は朦朧と呟くイフタフを踏み潰し、光の粒子へと変えていく。
しかしメルキゼデグにはそんな事はまったく目に入っていなかった。
見つめる先はただ一点。

51 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 23:41:26 0
「「「「この期に及んでイレギュラーを起こすのはやはり貴様か!」」」」
進む先にはジンレイン。
突然目を向けられたジンレインが驚き、魔剣ジェネヴァとともに身構える。
「「「「我が完成した以上、もはやお前は不要なのだ!」」」」
「ど・・・どういうこと?」
後ずさりながら尋ねるジンレインにメルキゼデグはその出生の秘密を語る。

「「「「お前は私の予備として生まれたのだ。
不思議とは思わなかったか?生まれて直ぐ世界樹の書たる魔剣ジュネヴァを与えられたことを!」」」」
そう、それは遠大なる計画の一部。
アビサルの一族は人格転写を繰り返しながら代を重ね、その知識と情報を重ねる。
当主は代々太極天球儀と日輪宝珠、月輪宝珠を与えられた。
それこそがプログラムエターナルの進行表である世界樹の書なのだ。
計画は順調に進み、一族はただ一点へと収束していく。
アビサルが最後の一人になったのも計画されていたことなのだ。
しかし、何らかのイレギュラーが起こり、アビサルが失われた時、計画を頓挫させない為に。
その時の為に『予備』が用意されていた。
同じ年齢、同じ体格、同じ性別。
そしてトーテンレーヴェとシャミィを利用し、世界樹の書を魔剣ジュネヴァに刻み込ませた。
常に魔剣ジュネヴァが付き添っていたのも、全ては予備としていつでも計画に入り込めるように、だ。

すなわち、一歩間違えばこの場にメルキゼデグとして立っていたのはジンレインだったかもしれなかった。
予備とはいえ、メルキゼデグとなるように作られている。
無意識の内にも僅かながらその力を使い、ソーニャやアクアを現出させたのだった。

「予備・・・私が・・・予備・・・?」
語られる秘密に愕然とするジンレインをまるで押し潰さんといわんばかりに影が覆っていく。
「「「「そうだ。もはやお前は不要!」」」」
突きつけられる言葉と、迫る死を運ぶ腕。

指先がその額に触れる瞬間、無数の煌きがそれを弾き飛ばした。
「そう聞いては黙っておられんにゃぁ〜。」
「いいように使われてしまったが、ここらで帳尻あわせをさせてもらおうかの。」
二人の間に割って入ったのは二人のニャンクス。
剣聖と賢聖。クロネとシャミィ。
「セイよ、ラーナの真意、今わかった。ジンを歌姫達のところへ。我らの最後の希望ぞ!」
シャミィがジンレインをセイファートに託し、複雑な印を結び始める。
向かう相手は人の形をした世界そのもの。
最後の希望のために絶望的な戦いが始まった。

52 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 23:07:20 0
「くくく・・・闇の蛇では喰らわれぬと言うか」
殴られ壁にめり込んだ体を引きずり出しながらゴウガは楽しげに笑った
「我らが主よ、滅びの宴 堪能さてていただいておりますぞ」
シファーグがゴウガに歩み寄った
「我、狂喜狂乱也」
ゆっくりとゴウガがその右手を自分の心臓付近に持ってゆく
「おや?ゴウガ君、もう退場するのかね?」
「影で打ち滅ぼせぬなら光にまかす」
そう言ってその右手を自分の心臓につき立てた
「グ・・・ググ・・グハハハハ!!我、回天歓喜セン!!」
ゴウガがその心臓を自ら引きずり出す、その心臓をシファーグが受け取った
「我も主と一つに・・・・」
ゴウガの体が光となって消えた
「さて、置き土産のりんごはどんな味なのかね」
おもむろに、シファーグがゴウガの心臓を食べた
シファーグの体が変化する激しく筋肉が盛り上がり、尋常ではない事が伺える
「成程、人任せか、彼にしては随分と大胆なやり方だ」
その体に光の蛇を纏わせてシファーグは獰猛な笑みを浮かべた

53 名前:ソフィー ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 00:36:46 0
――後は頼んだわよ! ソフィー!!
澄み切った意識に響くマリオラの声。変化を遂げる機体と共に、研ぎ澄まされていく感覚。
その時ソフィーは、刹那にして全てを見たような気がした。壊れゆく世界、死にゆく人々。
央にして果てで繰り広げられる新たなる世界になろうとする者との対決。
遥かなる上空には、最後の希望を断ち切らんとする憎しみの魔龍……。
それを知ったソフィーはというと、勇壮な使命感に燃えるでもなく。
増してや悲壮な決意を固めるでもなく。
「ふふふ……やってやろうじゃない!」
狂気の血脈のなせる業か、期待に心を躍らせていた。
ずっとこの時を待っていたような気がする。
公国最高の軍師に不足のない、人生で最高の舞台だ。
「レッツGOOOOOOOOOOOOOO!!」
号令をかけると同時に、ソフィーの意識は機体と完全に連結した。
いや、すでに機体というべきものではなかった。
今の彼女の姿は、全身に炎を纏った幽玄にして勇壮な巨鳥。
無機物ではありえない翼を広げ、星界へ向かって飛び立つ。
これこそが戦艦《ニヴルヘイム》の最終形態、聖なる炎まといし霊鳥《フェニックス》。

54 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 00:44:30 0
スターグが狙いを定めるは、祖龍に最も近い波動を持つ者、イアルコ。
それに気付いたイアルコは、自らをサンドバックにしている張本人に命令を出す。
「フンコロガシを追い払えええ!!」
「はい、坊ちゃま!!」
メリーは一瞬にして攻撃方向を転換し、回し蹴りを叩き込む。
しかし崩れ落ちるように倒れたのはメリーの方だった。
イアルコが初めて見た、メリーの敗北に他ならなかった。
恐怖も何もかも忘れてメリーに駆け寄る。
「メリー、変な冗談はよせ!」
メリーが冗談など言わない事は一番よく知っているのに、叫びながら抱き起こすイアルコ。
「坊ちゃま、申し訳ありません、お仕えできるのはここまでのようです……」
イアルコには、メリーが目を閉じる間際、自分に向かって僅かに微笑んだように見えた。
「メリィイイイイイイイイ!!そなたが死んだら誰が余を守るのじゃ!!」
絶叫するイアルコを始末しようとするスターグの影に、一本の矢が突き刺さる。
「何ノツモリダ……」
「やれやれ、やっと捕まえましたよ」
捕らえたら微動さえ許さない、草原の王者の影縫いの矢。
弓を構えたアオギリが静かな声で告げる。
「気付いてください、祖龍は死んだのです」
その少し上には、リュートを構えたリリスラが滞空する。
「スターグ! 誓いなんてもういい……目を覚ませえええ!」

「僕……僕……」
何をどう説明していいのか分からない僕を、ハイアット君がそっと抱きしめる。
「いいんだよ、後で男祭りだけどね!」
いつものように笑いかけてくれるハイアット君を見て思った。
やってしまった事は仕方がない。大事なのは今からどうするかだ。
最前線で迎え撃つクロちゃんの剣が閃き、後ろでミィちゃんの術式が展開されていく中
メルキゼデグが再び僕に指令を出した。
「「「阻め……アリアンロッド!! そなたは新世界の女神ぞ!!」」」
それは、僕の中の自分では何かを呼び覚ます声。
今思えば、ずっと昔から自分でも制御できない破滅的な衝動を抱えていた。
大切なものが欠けているような気がして、それが何かは分からなくて。
レシオンと同じように、ずっと呪縛され続けていた。
全てはこの時のために生命の設計図に刻まれていた事だった。
だからきっとこれを乗り越えた時、本当の意味で解き放たれる。
「確かに……僕は呪われた女王で……アリアンロッドの使い手だ……」
今度は大丈夫。創造を司るアニマを発動させる。
「でもッ! これはみんなと今まで歩いてきた世界のために使う!!」
相手に、みんなに、そして自分自身に向かって、力の限り言い放ちながら。
「「「ラーナめ……小細工をしてくれたか!!」」」
忌々しげに僕を見るメルキゼデグ。調度その時、ミィちゃんの魔法が完成した。
「【座標移転】――!!」
響き渡る力ある言葉と共に幾重にも広がる複雑な魔法陣。
辺りは眩い光に包まれ、何も見えなくなった。
ほんの一瞬の後。足元と周囲は何もかもそのままで、央に至る門は相変わらず開いている。
だけど遥か遠くには、壁ではなく連なる山が見えて、上には空が見える。
他でもない地上だった。そして、あらゆる精霊力の化身となった僕は風を紡ぐ。
「莫迦君、それは効かぬぞ!!」
それに気付いたクロちゃんが剣を閃かせながら叫ぶ。
確かに精霊は事象が持つ想いそのもの。だけど僕は確信していた。
彼らは善や悪という概念とは無縁。だから決して【正義】とは相容れないはずだ。
「踊れ、舞え、烈風の刃《tempest》!」
白銀の波紋が空間に広がる。
全ての方向からただ一点に向けて解き放つは、精霊力そのものでできた不可視の刃。

55 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 21:59:10 0
シャミィの座標転移によってジオフロントごと地上に転移。
連なる山々に、空。
それは見慣れた風景だった。
だからこそ、チェカッサには信じられなかった。
この場に合ったはずの王都がなくなっていることに!

ジオフロントにいてもあれだけの振動。
無事ではないとは思っていたが、既に桁が違っていた。
崩壊した廃墟というレベルではない。
何もない、何もないのだ。
ただ光の粒子が満ち溢れている限りない平原。
見慣れた山々がなければ、ここがナバルだと判らなかっただろう。
「ナ・・・ナバルが・・・!私の国が・・・!」
王として、国を導く者として、宮廷で過ごした日々はチェカッサの内を確実に変えていった。
王族の義務が、時に非常の鬼となることすら厭わせなかった。
なのにその支えたものが全てなくなっていたのだ。
「・・・しっかりしてよぉう。」
全てを失い、崩れ落ちようとするチェカッサを支える小さな身体。
それを見て初めてラヴィの存在に気づいたように驚いた。
「ラヴィ!なぜここに・・・?
いや・・・もういい・・・ロイヤルナイツとも連絡がつかん。国も滅びた。
最後にまた二人でいられるのなら・・・」
驚きもすぐに収まり、チェカッサは全てを諦めたようにラヴィに身を任せる。

二人は共に城を抜け出し旅をした時の事を思い出していた。
全身に纏わりつくしがらみ、立場を嫌い、共に城を抜け出した。
本当の意味での自由なひと時だった。

同じ事を思い出しながらも、同じ結論に至っている訳ではないのが人の面白いところ。
身体を預けられたラヴィはホビットとは思えぬ力でチェカッサを投げ捨てる。
「はぁ!?こんなときに何諦観してんだオイ?
自分に酔っ払うのも大概にしとけよ!!
あたしらが城から抜けて見たもの忘れたのかよ!
国も!種族も!そんなん関係ねえ!生きるものの営みだったろうが!」
ぶちきれモードのラヴィの言葉と共に加わる鉄拳制裁にポカンとするチェカッサ。
徐々に晴れ上がってくる右頬と共に、今まで形相を変えていた険が消えていく。

###################################

ゴウガの心臓を喰らったシファーグは既にその面影を残していなかった。
筋肉の異常隆起により、その風貌すらも変えたのだ。
だが、問題はそんなことではない。
もっと本質的な変化。
それはシファーグの持つ享楽の部分が完全に消え去っていたのだ。
たとえ肉体的な変化がなくとも、そこに面影を見つけることはできなかっただろう。
その身体から醸し出されるのは圧倒的な狂気。そして、酷薄なる凶暴性だった。
「ぐがぁああ!」
獰猛なうなりと共に駆け出し、拳を振るう相手はディオール。
闇の蛇を破った黒騎士を、そして同じ十二貴族たるディオールを・・・・
最初の標的に選んだのはゴウガとシファーグの想いの一致するところだったからだ。

56 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 21:59:16 0
「させないわよ!兎ちゃんパンチ!」
メルキゼデグに吹き飛ばされまだ起き上がれぬディオールを庇うように立つのはレジーナ。
白龍の加護を受け、肉体を最大限に強化してシファーグの一撃を迎え撃ったのだ。
鈍い音と共に二つの拳は重なり、二人は動きを止める。
そのまま拳での押し合いになるかに思えたが・・・
ゴキボキバキ・・・・
不吉な音の直後、レジーナの右腕がはじけ飛ぶ。
拳・尺骨・上腕骨、そして鎖骨に至るまで、完全に砕け、筋は寸断された。
「く・・・うああああ・・・!」
体制を崩した直後、容赦なく繰り出される第二撃。
確実の頭部を粉砕するその拳は、レジーナの顔に当たる直前に止められた。

「ステッキならばまだ替えは効きましたがな・・・」
押し殺した声でレジーナの背後に立っていたのはディオールだった。
シファーグの左手首を握り、押すも引くもさせなくしていた。
ボキリ、と左手首が折れる音がするも、まだその手を離そうとはしない。
それどころか、更に力は強められていく。
「私の最愛の人に手を上げたのだ!万死を持っても償えぬと思え!!!」
豪雷の如き叫びと共にシファーグの左手首は完全に握り潰され千切れてしまった。

古代セレスティアにおいては女王に付き従った最強の黒騎士。
それが現代において黒騎士の称号を冠した一人の男が、愛の力で完全に覚醒したのだった。

#######################################

パルスの洗脳が溶け、地上に戻ったことでレベッカたちは沸き立っていた。
その勢いのまま、最初に口火を切ったのはリーヴ。
「よっしゃア!これでもおえぇな。ほな逃げよか!」
シュタ!っと手を上げ逃げようとするリーヴをハイアットが慌てて羽交い絞めにした。
「ちょ!なにいってんのさ!」
「なにいってんのさ!じゃあれへんわい!
お前らも見たやろ?ワイらが手出しもでけへん化けモンバトルやっとった連中を瞬殺した怪物が相手やねんど!?」
そう怒鳴るリーヴが指差すメルキゼデグはちょうどパルスの烈風の刃によって刻まれたところだった。

あら?と固まる一行だが、それは切り刻まれたことによる驚きによったものではない。
切れたところから即座に再生していくその姿に畏怖したのだ。
その再生速度の速さゆえに、まるで不可視の刃がただ素通りしただけのようにしか見えなかったのだ。
「「「「愚かなり。既に世界は一つになる。そう・・・我が世界なのだ!我が命は無限!」」」」
場所を変えたとて、このセフィラにいる以上、全てがメルキゼデグの命であり、精神なのだ。
セフィラの生命全てを殺しつくさねばメルキゼデグの命も消えることもない。

何事もなかったように後ろに詰めていたアルフレーデの顔を鷲掴みにし、そのまま帰滅を放つ。
その光景にクロネの毛が総逆立つ。
先程から斬ろうとも斬ろうとも全く効果がない理由をまざまざと見せられたのだから。
「ほれえええ!見たやろ!?今度こそちゃんと見たな?逃げるが勝ちやでえ!」
慌てるリーヴにレベッカが力なく諭すように語る。
「逃げるって・・・どこにさ・・・。」

「「「「もやは良い。お前も我が一部となれ。個にして全、全にして個。その環にアリアンロッドも含めてくれよう。」」」」
パルスにゆっくりと近づいていくメルキゼデグ。
大帰滅の力により既に大地も、空も光の粒子で満たされていく。
ただ一点、空に黒点が近づいてくるのを除いて。

57 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/18(月) 21:27:39 0
「ディオールぅ・・・・・・」
シファーグは黒騎士に握りつぶされた左手を気にはしない
異常に高まった残虐性と狂気が痛みと言う概念を無くしていた
「でぃおーるぅ・・・・」
黒騎士の拳がシファーグの体を穿つ、何度も穿つ、
肉が吹き飛び、骨が折れる、それでもシファーグは止まらない
「ぬぇええええいい!!」
気合と共に黒騎士の拳がシファーグの心臓を貫いた
「公・・・・これで終りにしましょう」
シファーグがゆっくりと黒騎士を見つめた
「これで・・・終り?・・・・ナマイッテンジャネェゾ・・・コノガキ」
瞬間に黒騎士が後方に吹き飛ぶ、口元からは血が垂れていた
シファーグがおぼつかない足取りでゆっくりと黒騎士に迫る
「こぉろぉすぞぉ、かぁくゴハイ・・・イイ・・ッカァア!?」
すでにシファーグの体には黒騎士が開けた大穴が何発も開いてる上に心臓までもが壊れている
だが狂気に走ったシファーグはまだ戦う事を止めようとはしない
黒騎士は一つ息を吐いて最大限に引き絞った拳をこれで最後と言わぬばかりに放った
その拳はシファーグの残っていた肉体のほぼ全身を拳圧で破壊した
「公・・・・・さようなら」
首のみを残してシファーグがゆっくりと目を閉じる
その姿を確認して黒騎士はその場を離れた

「キッヒャアアアアアア!!」
突如首のみのシファーグが奇声をあげる。
最後の手だと言わんばかりの光線がシファーグの口から放たれた。
光線を放ちながらその光線に焼かれ自らも消滅していくシファーグ そして、その光線は黒騎士を大きくそれ、
「え・・・・きゃああああ!!」
その光線の先にはレジーナがいた 黒騎士もレジーナを助けるべく走る

大きな爆音が鳴り響いた

58 名前:真紅の霊鳥《フェニックス》 ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 00:52:58 0
異形の龍と十剣者との戦いは総力戦となっていた。
なぜなら、十剣者こそが六頭の星龍達を亡き者にした張本人。
積年の恨みを晴らすがごとく憎しみの魔龍は猛り狂う。
∵忌々シイ人形共メ……皆殺シダ!!∵
六の頭から縦横無尽に吐き出されるブレス。
「消し去りなさい、《アルティナ》!」
コクマーの剣の特殊能力が、そのうちの一つを完全に消し去る。
その場所に待ち構えるはメイ。
「削り取れ、《アカマガ》!」
メイの剣が無数の繊維状の刃に変化し、リヴァイアサンに襲い掛かる。
触れたものを根底から否定するその力により、消滅を開始する。
が、その直後。一度消えた部分が何事もなかったかのように現れた。
同時に、巨大な爪の一閃が辺りを凪ぐ。
「囲め、《シャルタラ》!」
ティフェレトが最大出力の防護壁を展開し、矢継ぎ早の攻撃を防ぐ。
∵無駄ダ……スデニ世界ハオ前達ノ手カラ離レツツアル……!∵
魔龍のあざ笑う声が、認めざるを得ない真実を突きつける。
世界樹の防衛システムたる十剣者がこれ程苦戦している事
それ自体が、世界樹がメルキゼデグに乗っ取られつつあることの証明。

繰り広げられる戦闘風景を見て、ラーナは断罪の使徒に向かって断然と抗議する。
「全然大丈夫そうじゃないじゃないですか! こんなの放っといていけません!」
断罪の使徒も、予想以上にただ事ではない様子に気付いていた。
「確かに……これはまずいな」
暫し気まずい空気が流れるかと思われた時。戦況に変化が現れた。
最初は、巨大な翼が横切ったように見えた。
そして突如として、リヴァイアサンを真紅の炎が包み込む。
初めてあがる苦悶の声。今まで十剣者の攻撃がほとんど通じなかったにも拘らず。
∵貴様ラ……何ヲ!?∵
一同の前に現れたのは、一羽の巨鳥。
漆黒の闇の中、美しき霊鳥は、聖なる炎纏いし翼広げ、異形の龍と対峙する。
透き通るような声が響き渡る。
『あんたねえ、昔の事をいつまでも根に持つんじゃないわよ!!』
声は綺麗だが、荘厳な雰囲気は一瞬にしてぶち壊れてしまった。
「黙りなさい!」「怒らせてどーすんだ!?」
十剣者達が一斉にツッコミを入れる。
現在の世界率においては精神エネルギーによる戦闘力の変化は侮れないからだ。
案の定、リヴァイアサンは今までにも増して怒り狂う。
∵ヨクモソノヨウナ事ヲ……!!∵
戦闘開始の直前、真紅の霊鳥は突然ラーナに話を振った。
『と、いう訳でこれは私に任せて……妹達をお願いね♪』
「ええ!? ちょっと待ッ……あぁああれぇええええええええ!?」
翼の先で軽くはたいただけ。だがそれは飽くまでも彼女の主観。
尋常ではない力に弾かれたラーナは地上に向かって隕石のごとく一直線に落ちていく。

59 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/21(木) 00:01:24 0
凄まじい再生能力を見せ付けられて、初めて恐怖を覚えた。
洗脳に失敗した以上、僕、というよりアリアンロッドを取り込もうとするのは当然。
メルキゼデグはまるでスローモーションのようにゆっくりと近づいてくる。
だけど決して逃れられないと本能が悟ってしまう。なぜなら相手は世界そのもの。
どうにかしなきゃ、無理でも逃げなきゃ!
せっかく正気に戻ったのに瞬殺されるなんてまっぴらだ。
頭では分かっているのに瘴気にあてられてか、全身が凍りついたように固まっていた。
「来…るな……」
せめて絶叫しようと思ったのに、それすらかなわない。
もう少しで死の腕が届いてしまう程近づいた時。予期せぬ出来事が起こった。
僕とメルキゼデグの間に、何かが凄まじい勢いで落下してきたのだ。
あまりの衝撃に爆音のような音が鳴り響き、土煙があがる。
落ちてきたのは人らしい。上半身が地面にめり込んでいる。
そしてほんの一瞬後、僕は歓喜した。
地面に埋まった状態から目にも留まらぬアクロバット的な動作で立ち上がったのは
綺麗だけどかなり不思議な女性、愛の女神ラーナ様だったからだ。
もしかしたらこれを本当の奇跡というのかもしれない。
さらに次の瞬間には、何事もなかったかのように浮遊してメルキゼデグに対峙していた。
「「「やはり……来たか!!」」」
「はい、強制的に送られて来ましたが上はもう大丈夫でしょう」
ラーナ様は剣の柄だけのようなものを一振りする。すると、柄から光の刀身が現れた。
僕は嬉しさのあまり思わず声をかける。
「今一瞬地面に埋まってたよね!?」
「それは気のせいです!」
僕の軽口を軽い調子で受け流した後、ラーナ様は有無を言わさぬ凛とした声で告げた。
「この者には力では勝てません……歌姫達と共にステージへ!」
ステージなんてどこにあるのかと思い、辺りを見回すと、あった。
圧倒的な存在感を持ってこっちに向かってきていた。
それは、ここにはないはずの六星都市、海上都市マイラ。

60 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/21(木) 23:22:38 0
「レジーナー!!」
黒騎士が絶叫した 光の束にレジーナの身が焼かれてゆく
その光が終息したそ先には全身に火傷を負ったレジーナが倒れていた
その身を黒騎士が抱き起こす
「加護が・・・なかったら・・・即死だったわね」
「いい・・・しゃべるな、傷口が開く」
黒騎士の襟を掴んでレジーナは続ける
「いい・・・・負けたら承知しないわよ・・・お仕置フルコースだかんね」
「ああ、わかった、だから休んでろ」
黒騎士の言葉にレジーナは安心したのか目を閉じた
一瞬光になるのではないかと黒騎士は肝を冷やしたがその様な事は無く安心した
レジーナをそっとおいて黒騎士は最大の相手を見据える

メルキゼデグの前に立ちはだかるのは愛の女神ラーナ 
そして自分の仕事は今はメルキゼデグを止める事、漆黒の弾丸となって黒騎士はメルキゼデグへと向かう

「なんてこった・・・・」
ブルーディは今日、何度目かのこの言葉を呟いた
それはシファーグの死に対してでもあり、マイラの登場にもである
「これが・・・・最高のステージってのかよ」
しばし呆然となるブルーディしかしその顔は段々と覇気の漲る顔となっていった
「ブルーディ!!レジーナを頼む!!」
漆黒の弾丸となった黒騎士がブルーディの横を通り過ぎてゆく
片手でローラを片手でレジーナを抱え呟いた
「さぁて、最高のショーを見せてやるよ」

61 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/22(金) 00:36:48 0
アオギリの矢に繋ぎとめられたスターグが拘束を振り切ろうとする。
「誓イヲ忘レタカ!?」
アオギリはゆっくりと首を横に振った。
「いいえ、この300年一度だって忘れた事はありません。
この前まで獣人族の世を取り戻す事しか考えていませんでした。でも……」
そこまで言った時、スターグを留める影縫いの矢が砕け散った。
「逃がしませんよ」
アオギリは何本もの矢を束ねて放ち、スターグを繋ぎとめた。
そして頭上のリリスラに声をかける。
「リリスラ……レベッカ達と共に歌を!」
「お前がそんな事を言うとはな」
現れた巨大ステージを見上げ、リリスラはレベッカの方に振り向く。
「小娘、出番だ!!」
しかし、期待した反応は返ってこなかった。
何も聞こえていないように放心状態で佇んでいた。リリスラは驚いてレベッカに詰め寄る。
「どうした!? お前らしくもない!」
「無理だよ……あんなのに勝てっこないよ……!」
リリスラはレベッカの肩を掴んで叫ぶ。
「この私を負かしといてそれはないぞ。
悔しいけどお前は世界一の楽士だ! しっかりしろ!!」
リリスラが何より衝撃を受けたのは、レベッカが泣いていたこと。
「だって……みんな死んじゃったんだ! 帰る所だってもう無いんだ……」
「レベッカ……」
誰もが忘れがちだったが、レベッカはここにいる他の者達とは違い
楽器店の跡取りとして何不自由なく暮らしてきたごく普通の娘なのだ。
リリスラはかける言葉が見つからず途方にくれた。

「うーむ……」
イアルコは迷っていた。本当に迷っていた。
それは、メルなんとかという長い名前の敵と戦うかどうかである。
世界が一つになるなんて、好き勝手出来なくなるから嫌だ。
頼みの綱のメリーは倒れてしまった。
しかし強そうなものに自分から立ち向かっていくなどという行動は彼の辞書にはないのだ。
それでも、一歩を踏み出そうとする。踏み出したもののやっぱり怖くて二歩下がる。
一人でそんな不毛な戦いを繰り広げているのであった。

泣きじゃくるレベッカに、ジンレイン躊躇いがちに話しかける。
「諦めるのは早いわよ、まだ最後の希望があるらしいから……」
レベッカが力なく聞き返す。
「最後の……希望って?」
「それは……私なんだって」
ジンレインがそう自分に言い聞かせるように言った時。
その言葉を証明するかのような出来事が再び起こった。
巻き起こるは、金色の風。それが人の形を成し、現れた者は……
「ギュンターあああ!! 性懲りも無く現れよったかあ!!」
イアルコの絶叫につられ、レベッカもその方向を見る。
そして驚きのあまり目を見開いて、呟いた。
「タード……?」

62 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/02/23(土) 18:35:25 0
ノウ!

63 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 23:41:09 0
ナバル上空へと進む海上都市マイラにて、リオンは涙していた。
空域全体に満ちる光の粒子に。
それが奏でる荘厳な音に。
それは音楽と呼ぶにはあまりにも原始的で、そしてあまりにも圧倒的過ぎる。
有史以来数多に奏でられたどんな音楽よりも根源に響く音に涙していたのだ。

「こんな・・・こんな事・・・私たちは・・・【これ】に挑むというの?」
本能的に跪き、祈りをささげるリオンに蜥蜴の尻尾団のトムが駆け寄ってきた。
「こぉんの!バカチンがぁ!」
泣き祈るリオンに鉄建制裁を加えたのだが、鼻血を出して倒れたのはトムの方だった。
いきなり現れたトムに思わずカウンターを放ってしまったのだ。
「あ、ごめ・・・」
「ぞ・・・ぞんなごどより!」
愉快な仲間達に支えられたトムが懐からバンダナ・オブ・パンダを取り出した。
これは装着したもの同士のパワーがリンクするマジックアイテム。
送り込まれるパワーは友情度に比例する。
すなわち、想いの力に作用するものなのだ。
そのバンダナ・オブ・バンダが鈍く発光している。
「リオン、この光は・・・」
「ああ!俺の台詞!鼻血まで出したのに!」
トムの抗議もむなしく、レーテが説明を始めた。

そんなマイラに近づくものが・・・
それは一頭の龍。
その背には龍人最高の歌姫を乗せて。

64 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 23:41:17 0
光満ちるナバルの地にて。
メルキゼデグとラーナが対峙していた。
「「「「我が母よ、ここに至ってもまだ立ちはだかるか!」」」」
「ええ!これは愛ではない!
メルキゼデグ、あなたを設計した者の一人としてあなたを倒す!」
「「「「それができるとでも?」」」」
「私にはできなくとも・・・倒し方は知っているわ。
この剥き出しの想いの粒子があなたの最大の武器であり、弱点である!」
「「「「それをさせるとでも?」」」」
分の悪い賭けである。
予備として、同一の機能を持つジンレインもせいぜい一人か二人の想いを取り出すのが精一杯なのだ。
世界全体の想いを統合するメルキゼデグに抗えるはずがない。
最後の希望を打ち砕かんと、ラーナの肩越しにジンレインを見るが・・・
その視線をさえぎる影が立ちはだかるのだった。

「しゃあないやんけ!逃げる場所があらへんのなら前に出るしか!窮鼠猫を噛むって奴を見せたるでえ!」
半ば泣き出しそうな声だが、毅然として立ちはだかるリーヴ。
「父と娘の為・・・そして運命に翻弄されてきた全てのものの為に!」
モーラッドがそれに肩を並べる。
「お父さん、愉快な娘さんをありがとう!」
こんなときまで場違いな言葉を吐いてしまうのはハイアットであるが所以。

三人が立ち並ぶのを見て、クロネとシャミィが小さく息をついた。
「これで少しは時間が稼げそうじゃらしぃ。」
クロネがそういいながら愛刀断龍コロ助を地に打ち付けると、半ばで入っていた亀裂が大きくなり、そこで折れてしまった。
折れた刃から吹き出る白き刃。
クロネの研ぎ澄まされた想いの刃であった。
「断龍コロ助・真打!推して参る!」
想いの統合体であるメルキゼデグに対抗しうるのはまた想いの刃しかありえないのだから。
漆黒の弾丸と化して襲い掛かるディオールに併せてクロネが飛び掛る。
そしてリーヴ、モーラッド、ハイアットもそれぞれに動き出す。
「セイよ、いってやれ。パルスとジン、両方をちゃんと送り届けるのじゃぞ!」
セイファートを促し、シャミィもまた術式を展開し始めた。


「ヒロキ、エドワード・・・もういいぞ。」
メルキゼデグと戦うクロネたちを少し離れた場所で見ながら、チェカッサが呟くように言う。
その言葉の意味が判らず、動かぬ二人に更に続ける。
「もはや王国はなく、私はただの一人だ。
獅子ではなく、王族の義務でもなく、私は一人の人間として・・・戦う!」
すらりと愛剣ヘリオガバルスを抜き、見据える先は・・・
「メルキゼデグとはレトの民の言葉で調和の王の事。
全ての調和の前に足掻きは不要ではないですかな?」
そこにはレオルの姿があった。
ロイヤルナイツ第二席。
謎多き魔導師だったが、今やその正体を隠す事無く佇んでいる。
半透明の幽星体はレトの民の身体構造と同一のものである。
「なるほどな、レオル・メルキド!
メルキゼデグが調和の王ならメルキドは調和に縋る亡者というところか?」
「あながち否定はしませんよ。」
吐き捨てる言葉と共に一閃をさせるが、その刃は不可視の力によってそれていく。
微動だにせずチェカッサの攻撃をかわしたレオルが術式を展開し始める。
「ラヴィ!お前は仲間達のところへ!行くんだ!」
有無を言わさぬ言葉を残しレオルとの間合いを詰めていく。
言葉に込められた意思は諦めではなく、勝利への意思。
それを感じ取ったラヴィは振り返らず走っていった。

65 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 23:41:24 0
攻撃を受ける直後、メルキゼデグは宣言する。
ごくごく当たり前のことを。
「「「「お前達は万に匹敵する力を持っている。
だが、想いの力は全ての者と同じ一でしかない。
深き愛情、強き想い、それが汝らの特別なものと思うな!
名もなき民にもその強さは劣る事はない!
全ての者が平等に持つもの。それが想いなのだ!」」」」
ディオール達の一斉攻撃を受けたメルキゼデグは粉々に砕け散っていた。
が、誰一人それで勝利を感じたものはいない。
敵は世界そのもの。
それを証明するかのように、世界全体からメルキゼデグの気配を感じていたのだから。
「「「「なぜ判らん!お前達の根源にも同じ想いはあるはずだ!!!
匂陳上宮!月妖日狂!極星天瀑剣召喚!!」」」」
空間が歪み、光の粒子が渦巻き形作っていく。
それは巨大な腕。握られたるは巨大な剣。
ルフォンでグレナデア試作機を蹂躙したモノが出現したのだ。
星界で実験的に作られたものとは違い、溢れ出る想いの結晶によって作られたそれは更なる力を持って振るわれる。

#####################################

上空3万m。
猛り狂えるリヴァイアサンの動きが止まっていた。
断罪の使途にも、十剣者にもひるまなかったリヴァイアサンが。
フェニックスと化したソフィアの前に。
そしてソフィアの後ろに並ぶ四頭の星龍を前に。
∵何故ダ、古キ朋ヨ!∵
∵我ラガ子ラガ望ム故ニ∵
リヴァイアサンの問いかけに白星龍ラハツェンが応える。
レトの民であるラーナや断罪の使徒たちとの戦いは不干渉であったが、龍人であるソフィアがその意を示した事により、星龍たちが動いたのだ。
∵イルヴァン、モグホーンハ地ニ降リタ∵
∵全テハ我ラ子等ノ為ニ∵
∵朋ヨ。今コソ解キ放タレヨ∵
星龍たちがリヴァイアサンに書ける言葉には哀悼が篭っていた。

∵ウ・・・ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!∵
リヴァイアサンの雄叫びとともに、ソフィアには星龍達の力が注ぎ込まれていく。
龍達の龍達による龍達の為の決着の為に。

66 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 00:25:16 0
「パル、行こう!」
背に純白の翼を実体化したセイが、僕を抱える。もう片方の腕にはジンさんを抱えて。
ジンさんだけ連れて行けばいいのに何を勘違いしているのだこの人は。
「いーから! 自分で行くから!」
抗議するも、その時にはすでに飛び立ってどうしようもなかった。
すぐ隣にはジンさんがいる。洗脳されていたとはいえ、あからさまに殺しかけた相手。
聞こえるか聞こえないかの小さい声で謝るのがやっとだった。
「あの……さっきはごめんね」
「いいのよ、あなた達の奇行にももう慣れたわ」
言葉は相変わらず辛辣だけど、口調に嫌味は無い。それどころか親しみすら感じる。
僕とジンさんはどちらからともなく笑みを交わす。
それは、言葉にするまでも無い、勝利の誓い。

現れたギュンターに、イアルコが駆け寄る。
白星龍の加護を受けた拳を手加減無用で突き出しながら。
「死ねやぁあああああああ!!」
「いい拳だ、少しも迷いが無い」
容赦なく猛攻を加えるイアルコを蹴り飛ばす。
「迷うかボケエエエエエエエエ! 余はもう迷わんぞおおお!!」
「頼んだぜ、クソガキ」
メルキゼデグの方に飛んでいくイアルコを見て呟き、最初に向かい合うはアーシェラ。
かつて天を司り地を統べる力を授かった者同士が、時を超えて出会った瞬間だった。
「女王さんよ、母ちゃんの敵討ってやってくれ!」
アーシェラの手の甲が輝き、白く輝く龍鱗が現れる。
それは、作り物の体では受ける事は叶わないはずの、六星龍の加護の証。
「ええ、必ず」
頷くアーシェラの一言は、勝利を誓う固い約束。
そして、話しかけられるのを待つまでもなく、レベッカは進み出た。
「タード……なの?」
ギュンターはその問いには答えずに、問い返した。
それは、レベッカにとって、忘れるはずも無い言葉。
「なぁベッキー、歌で世界をひっくり返すことが出来ると思うか?」
レベッカは身も蓋もない答えを返す。
「はぁ?そんなの出来っこないでしょ、常識的に考えて。あんたバカ?」
唖然とするギュンターを前に、言葉を続ける。満面の笑みを浮かべながら。
「でも……アタシなら出来るかもね!」
その言葉を聞いて安心したように、ギュンターは光の粒子となって溶けていく。
「あとさ……」
「何よ!?」
思わず掻き抱こうとして差し出した両腕。だけど触れる事はかなわなかった。
「ベッキーって修理の腕も最高なんだな!」
敬愛してやまない師匠の姿は完全に消え去り、レベッカは呟く。
「ありがとう……」
その時、レベッカの体は何者かに持ち上げられた。
「ほら、行くぞ!」
リリスラが細腕からは想像もつかない力でレベッカを担ぎ上げ、一気に空に舞い上がる。
少し下では、リリスラの足につかまれた顔面蒼白のブルーディが叫んでいた。
「ひぃいいいい! 鳥に捕まれて飛んだ事なんてないんだぁあああ!」
「普通ねーよ!」
そんな中、浮遊の術で少し先を飛んでいるアーシェラが何かを見つける。
「あ、あれは……」
龍人の歌姫を乗せて、マイラに降り立つ翠星龍の姿だった。

67 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/26(火) 00:29:39 0
「いけるか?いや、いかさへんといかんやないか・・・・・」
ザルカシュは既に転移してマイラの遺跡上部に移動してきていた
見つめるのは巨大な腕
満身創痍の体でその腕を見つめる
「・・・・・・こんなん、自分のキャラやないで ホンマ」
そう言って、複雑な呪文のスペルを唱え始める
(師匠・・・すんません 先に逝きますわ)
ザルカシュの周りに大小様々な魔方陣が展開される
地面に、空中に、そしてザルカシュの体自体にも
魔方陣のスペルを読める物が読めばそれは古今東西様々な場所の守護を司るモノだとわかるだろう

「むぅ・・・・・・」
シャミィがその膨大なザルカシュの魔力を感じ取ったのは数秒だけだった
(不出来な弟子が先に逝きおるなぞ・・・・・・すまぬ)
その数秒でザルカシュが何をしようとしているかを感じたシャミィは
心の中で次の手のために駆けつけることの出来ぬ自分を詫びた

どんどんとザルカシュの体が半透明となってゆく
それと同時に輝きを増してゆく方陣群
すでにザルカシュの口から出てくる言葉は呻きに近いものになっていた
そして、滅びの腕は剣を振り下ろす
それと同時にザルカシュの目が、赤く、血よりも赤く染まった
「大守護方陣結界、完成・・・・・・や」

その結界は本来ならば数百人もしくは数千人単位で唱える守護結界陣である
大量の人員を動員するこの業はただでさえ成功率も低く、
ある致命的な欠陥を持っていたので歴史の闇に封印されていた業だった 
その欠陥とは・・・・・・
術者全ての命と引き換えに発動する事・・・・・・・・・・・
とは言っても本来なら参加者の寿命が縮むぐらいなのだが、
ザルカシュはその方陣をたった一人で唱えたのだ
その体と命には想像できない負担がかかってくる
それでもザルカシュは耐えた、全ては最後の希望を死守する為に

「ガアアアアアア・・・・・・・クソガキ共、ハヨ歌ったらんかい!!」
目から、口から体中から血が吹き出す
全身全霊を賭け、押さえつけるのは振り下ろされる光の腕と剣
だが少しずつだが押されているのをザルカシュは感じていた
「まだ・・・・か・・・まだなんかぁーーー!!」
ザルカシュの絶叫が木霊した

68 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 01:08:19 0
振り下ろされた破壊の剣を阻む大守護方陣結界。
それをたった一人で展開するのは、大祭司ザルカシュ。
崩れ落ちそうになるザルカシュに、駈け寄る者たちがいた。
片や万年見習いの神官リオン。もう片方は暁旅団のあまり目立たない魔術師マリク。
とはいっても二人とも世間一般の感覚では最高位に位置する術者だ。
「お願い、もちこたえて!!」
退魔士であるがゆえに生命に関する術を知り尽くしたリオンは
持てる限りの精神力を注ぎ込んでザルカシュを支える。
「パルメリス様、早くッ!」
無茶な団長の援護をいつもしてきたマリクは、最大魔力を使って結界強化の術を行使する。
スケールが大きすぎる戦いの前では自分達が何をしても
ほとんど変わりは無いと分かりながら、一秒でも長く希望を繋ぐために。

マイラに降り立つと、凄惨な事態となっていた。
僕達に全てを賭けてここまでしてくれたんだ。失敗は許されない。
レベッカちゃんが、少し先に来ていた龍人の女の人のリュートを見て驚きの声をあげる。
「《ストラディガロス》……!」
その女の人はというと、リリスラちゃんと顔を見合わせていた。
「お前と歌う日が来るとは思わなかったよ」
「私もです」
一段高い場所に降り立ったアーシェラさんが、一同に声をかける。
「いきますよ!」
彼女が奏でるのは、巨大なグランドピアノ。
その音は何よりも繊細で美しく、しかし何よりも強い意思が宿っている。
みんなそれぞれの楽器を構えて視線を交し合う。
前奏が終わり、僕は暁の瞳を奏で始める。持てる全てを音にのせて。

69 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 01:10:05 0
〜♪〜♪KIZUNA♪〜♪〜
守り抜きたい人がいて 忘れられない場所がある
流れゆく時の中に 変わらないものがある

暗くて深い 闇に堕ちた時さえも
信じて 手を差し伸べてくれる
そんな絆があると 知った時
何かが 変わり始めた

形あるものは いつか朽ち果てる
何もかもただ一つ 掛け替えがなくて
いつか終わりが来ると 分かっているから
見るもの全てを 愛しく思う

誓いの剣 掲げるこの手は あまりに小さいけれど
世界を敵に回してでも 譲れないものがある
砕け散った魂達の 届かなかった願い
叶えてみせると 決めたんだ

負けないよ 揺るがない絆があるから
どんなに残酷な真実 突きつけられたとしても
逃げないよ もう裏切りたくないから
記憶に刻まれた 数え切れないほどの想いを

心に刻まれた 数え切れないほど絆を――
〜♪〜♪〜

70 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 22:06:15 0
ナバル上空に辿り着いたマイラにて。
ジンレインは自分を抱きしめるように両腕を回し、震えていた。
「ふ・・・ふふ・・・情けないわよね・・・。」
自嘲気味に吐き捨てる言葉も、いつもの調子ではない。
17歳でありながら世知に長け、周囲とは必ず一線を画してきた。
冷静沈着な傭兵のジンレインの顔はそこにはなかった。

「ほんの半年前まで、私はどこにでもいる傭兵だった。
しがらみを恐れ、恨みと嫉妬を抱いて、きっと戦場で十羽一絡げで死んでいく。
そんな傭兵だったのに・・・
・・・いの・・・。怖いの・・・。」
そこにいるのは少女趣味で子供と絵本が好きな、17歳の女の子と素顔。
誰にも見せた事のない表情を無防備にセイファートに晒していた。

いきなり世界を背負わされた重みに、その小さな身体は押し潰されそうなのだ。
「ジン・・・大丈夫。
僕も、共に往こう。いつでも側にいるよ・・・。」
ジンレインの背中をそっと抱き、光の翼で身体を包む。
「お願い・・・離さないで・・・ね。」
包まれる心地よさと背中の温かみにジンレインはそっとジュネヴァを自分の胸に当てる。
なぜそうするのかは判らない。
だが、それがごく当然のことのように身体が動く。
レトの民の書である魔剣ジュネヴァがジンレインの内に入っていく。

マイラでは獣人、龍人、人間、エルフの種族も時も超えた歌姫達による演奏が開始されていた。
奏でられる音楽にあわせ、ジンレインの澄んだ歌声が流れる。
〜♪〜♪KIZUNA♪〜♪〜
強く、美しい想いを乗せた歌がマイラに、大陸に、セフィラ全体へと広がっていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・だが・・・変化は現れない。
命を削り振り下ろされる滅びの巨剣を食い止めるザルカシュとリオン、マリクの吹き出る血も止まらない。
天地を埋め尽くす想いの光の粒子も変らない。
その中で一人天を見上げるはラーナ。
「今!!!ここでやって見せなくて何が愛よ!!!!」
絶叫と共にラーナは見た。
光の粒子のその向こう。
遥か上空で6色のオーロラが輝く事を。
それは上空3万メートルの戦いの成果。
新世界律発動の輝きでもあった。

71 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 22:08:29 0
歌が半ばまで来たとき、その変化は起こった。
結界を維持するザルカシュたちを助けるのではない。
歌が動かしたのは想いの力。
強く、美しく、優しく思いを込められた歌は、想いの光の粒子のうねりを変える!

「「「「ば、ばかな!これはどういうことだ!?」」」」
突如として拡散し始める巨剣と腕。
ありえない事に世界が、メルキゼデグが呻く。
その呻きに応えるのはラーナ。
「新しき世界律が発動したのよ。
それは【諦めなければ何度でも立ち上がれる!】。」
それはアクアの言葉の通り。
メルキゼデグの強力な統合能力で融合していた融合を拒んだ魂が、弾かれて拡散し始めているのだ。

新しき世界律。
融合を拒む魂。
種族も、時をも越えて初めて実現した世界を一つにする歌。
それらがジンレインという変換制御を経てメルキゼデグの統制能力に対抗したのだ。

「「「「こ、これ以上!!!させるかああ!!!」」」」
世界が震え、巨剣に更に力が込められる。
拡散しつつあるとはいえ、このまま押し切り歌そのものを断ち切ろうというのだ!

################################

「・・・アビサル、待ってな・・・!」
上空で巨大な腕が拮抗している姿を一人の女が見上げ、呟く。
燃えるような髪の毛を持つ『炎の爪のソーニャ=ダカッツ』。
帰滅により強制的に光の粒子と化し融合していたが、その統合力が薄れた事により肉体に戻ってきたのだった。

################################

他にも変化は起こっていた。
結界を維持するために命を削っていたザルカシュ・・・。
彼の周囲に光の粒子が集まり、その内に入っていく。
「ど、どういうこっちゃ?」
ザルカシュ自身も驚きを隠せなかったが、力がみなぎるのが判る。
そして内から叫ばれる声を聞く。

八翼将の種族の魂の連帯システム。
レトの民による命と魂の融合システムの実験の為に与えられた能力。
その能力が今、メルキゼデグと同じように想いの力を統合し、力としているのだ。
本来同一種族限定の共有システムではあるが、今、種族の壁を取り払い想いの力はザルカシュへと集まり力を貸していく。


同様の事はイアルコにも起こっていた。
金鱗を持ち、祖龍の祝福を受け得る器。
ある意味この場の誰よりも想いの力を受けられるのだ。
イアルコの内より響くのは・・・
『クソガキ!ウダウダしてねえでお前の本気を見せてみろよ!』
『小童めが!我らの力、存分に使わんか!』
『イアルコ・・・我が夫!共に往くぞ!』
「ううううおおおお!いわれんでもやってやるわい!!!」
龍の若き覇王の咆哮が響く!

72 名前:ソフィー ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 00:21:26 0
星界での戦いが始まってからどれぐらいの時がたっただろうか。
最強の人機融合形態《フェニックス》は、この姿をとる事さえも困難を極める。
すでに、人の身で持ちえる精神力の限界をとうに超えていた。
それでもソフィーは戦い抜いて見せた。
そして今、星龍達の加護を受け、最後の一撃を放とうとしている。
最初から生きて帰るつもりなどなかった。
だから、哀れな龍達の魂と共に逝ってあげよう、彼女はそう思った。
――悲しかったよね、辛かったよね……でも今日で終わりだよ――
ソフィーは星龍の加護の光をまとい、リヴァイアサンに向かって一直線に飛ぶ。
全身を聖なる炎と化しながら。
漆黒、純白、真紅、深青、黄土、深緑。
鮮やかに輝く眩いばかりの炎が、憎しみも悲しさも、全てを包み込んでいく。
その時響いたのは、恨みのこもった断末魔ではなかった。
瞬く光の粒子。鳴り響くのは、煌くような美しい音。
――ありがとう……この時をずっと待ってた――
星龍達は、救われた魂達の声を確かに聞いた。
幾星霜もの間、憎しみにとらわれ続けた龍の魂達は今ここに解き放たれた。
六色のオーロラが辺りを覆い、全セフィラに広がっていく。
そして、聖なる炎が消え去った後。
その場所には、気を失ったソフィー達が優しく抱かれるように浮かんでいた。
『我が子よ、よくやった……』
ラハツェンが両腕にそっと抱きとめる。そして、まだ息があることに気付いた。
本来なら生きているはずは無いのに。
『そうか……きっと奴らが助けたのだな』
星龍達は、古き友を偲びつつソフィー達を背に乗せて、地上に向かって降りていく。

73 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 00:23:55 0
「アーシェラ! 次の曲次の曲!!」
「はいっ!」
形勢は明らかに変わり始めている。しかし尚、メルキゼデグは力で押し切ろうとしている。
「レベッカちゃん、僕はやることがある」
みんなが次の曲の準備をする中、レベッカちゃんに声をかけて、ゆっくりと前に進み出る。
「パル? どこに行くの!?」
「分かった気がするんだ……僕がアリアンロッドな意味が!」
それは、僕がエルフの女王で、生まれながらにして身に余る力を持っていた本当の意味。
《アリアンロッド》を銀の十字架から取り外し、空に向かって投げる。
思ったとおり、世界と同調して、12色の輝きとなって溶け込んでいく。
普段はあまり気付かないけど、想いを持つのは人だけじゃない。
この世に存在する全てのものが想いを持っている。
物言わぬ木も、草原を駆ける風も、流れる水も、動かぬ大地も全て。
それが、気まぐれで我侭で、善も悪も知らない精霊という名の想い。
だけどこの戦いには必ず力を貸してくれる。彼らは不自然な事が何よりも嫌いなのだ。
「な……なんやそりゃあ!?」
破滅の剣を抑えているザルカシュさんが、横に来た僕に驚いて声を上げる。
正確には、僕が従えた力に驚いて。
セイや暁旅団のみんなには見えていることだろう。
人にあらざる者たちの想いそのもの、世界に満ち満ちる精霊達が!

74 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 23:43:04 0
「くぅのぉお、このイアルコ様の本気、見せてけつかるわ!!」
様々な力に後押しされてビシリとスターグに人差し指を突きつけるイアルコ
「ミセテモラオウカ・・・・ソリュウ!!」
対峙するスターグはいつもの如くその巨体を構える
「ふっ・・・・退却じゃあ!!」
言うが早いかイアルコ坊ちゃまはメリーを抱えて回れ右してもの凄い速度で逃げ出した
流石に呆然とスターグとアオギリはその様子を眺めるだけだったが、
「マ、マテ、ナンダソレハ」
再起動したスターグがイアルコに追いすがる
「ふん!!いちいち肉弾戦で相手していたら痛いだけじゃい!!」
そう言いながらもイアルコ坊ちゃまは頭の中で様々な計画を立て始めていた
ちなみに彼の心の中では、
『お前!!加護受けて逃げるってフザケンナ!?』
『ちょ・・・いきなり逃げの一手って』
『また悪巧みでもしてるのであろう』
『『『オマエナァーーー』』』
『カァちゃん、悲しいわ』
などと散々な言われようだった
「やかましいわい!!卑怯結構!!臆病上等!!生き抜いてこそ結構!!それがこのわしの覇道じゃ!!」
はたから見ればもう滅茶苦茶な言い分ではあるがなぜかこの言葉がアオギリには嫌なものには聞こえなかった
「ぷ・・・・くくく、た、確かにそうかも知れませんね」
イアルコ坊ちゃま、逃げる、逃げる、目指すは大きく天井の開けた剣の見える場所
そこまで辿り着いてようやく坊ちゃまは足を止めた
「ヨウヤク・・・タタカウカクゴガデキタカ?」
スターグがやっと追いついたイアルコに歩み寄る
「うむ、貴様を倒す算段がついたのでな」
自信たっぷりにスターグを見るイアルコ坊ちゃま

75 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 23:44:16 0
「ナラ、ミセテモラオウカ!!」
スターグが飛び掛る と同時に何かの影がスターグを横から吹き飛ばす
「坊ちゃまはメリーが守ります」
それは鉄壁の守護メイド メリー 
逃げ回っている間に回復させていつの間にか別行動で待機させておいたのだった
不意をつかれたスターグはそのバランスを大きく崩す
「影縫い!!」
さらに追い討ちをかける様にアオギリの影縫いがスターグの動きを止めた
「これで仕舞いじゃあ!!」
イアルコがその金鱗の力を最大限に発揮してスターグをブレスで持ち上げる
もともと竜巻すら打ち消す程の威力の強力なブレス、ゴットブレスに金鱗の力が加わったのである
いくらスターグとて空高く持ち上げられた その行く先は滅びを運ぶ剣
「フンコロガシ・・・貴様の敗因はただ一つじゃ、それはの」
ブレスを行使しながらスターグを見つめる坊ちゃま
「力、執念、年季、その他全てお主が勝っておったわ」
スターグも黙ってイアルコを見つめる
「だが一つだけ一番大事な物が、わしがお主に勝っておった、だからわしの勝ちじゃ」
「ホォ・・・・・ソレハナンダ」
まるで憑き物が落ちたかの如く静かなスターグ
「それはな・・・・・悪運じゃ!!わしがお主よりも運が強いから勝った!!」
ブレスで空に、滅びの剣に向かってゆくスターグが笑う、
「ソウカ!!運ノイイ方ガ生キノコロル、自然ダ!!」
今までの事が嘘かの様に清清しく笑うスターグ
「心優シキ新タナ龍ノ王・・・・・・・・サラバダ!!」
その言葉と同時にスターグは剣にぶつかり文字通り消滅した

「本当は彼も理解してたんでしょうね」
アオギリが空を見上げ、スターグの死を見届け感慨深げに呟いた
「祖龍が消え去った事、運だけでは勝てない事とか」
イアルコ坊ちゃまはその呟きには何も答えない
「最後まで憎まれ口で言われても、彼は満足していったと思いますよ」
「ふん、憎まれ口は地じゃい」
二人で空を見上げる、剣がその巨体を拡散し始めていた
「新しい・・・世界率が始まる」
「その様じゃのぉ・・・」
「イアルコ様、お茶のお時間で御座います」
こんな時までもお茶の時間だと言うメリーに苦笑しながらもカップを受け取ってそのお茶をすする
あとはあいつらの仕事だとそこらに転がっている適当な岩に腰掛けた
不思議とお茶がいつもよりもお茶が美味く感じた

76 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/02/29(金) 00:40:00 0
「リオンちゃん! マー君!」
精神力を使い果たし気を失っていたリオンとマリクがハノンに揺り起こされ、目を覚ます。
聞こえてくるのは、美しい歌声。空に輝くは六色のオーロラ。
「良かったあ、みんな死んじゃうかと思った」
拡散して光の粒子となっていく滅びの剣。
目の前では、なぜか瀕死から復活したザルカシュが次の術を唱え始めていた。
「よっしゃあ、こうなったらとことんやったるで!!」

チェカッサの刀が何度もレオルの体を通り抜ける。
星幽体ゆえに物理的な力では傷つけることが出来ないのだ。
「王子様、何度やっても無駄ですよ」
しかし、六色のオーロラが空を覆った時、レオルの余裕の嘲笑に変化が現れた。
「バカな、世界率が……!?」
チェカッサはその僅かな隙を見逃さなかった。
「はッ!!」
一気に間合いに飛び込み、裂帛の一撃を切りつける。今度は確かに効いた。
「ぐあ……!!」
油断していたところを突かれ、よろめくレオル。
「残念だったな……お前たちの計画は失敗です!!」
二つの口調が混ざったような言葉でレオルに啖呵を切るチェカッサ。
レオルの顔が怒りに歪んでいく。
「我らの崇高な計画が失敗だと……!? ふざけるなああああああ!!」
凄まじい瘴気にチェカッサは吹き飛ばされ、レオルはレトの民の呪文を展開し始める。

77 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/29(金) 22:59:39 0
拮抗状態を続ける大守護方陣結界と滅びの巨剣。
拡散を始めながらもその力は凄まじく、ついには結界を粉砕した。
そのままの勢いで振り下ろされる巨剣。
空中に浮かぶマイラに何の抵抗も感じる事無く大地に突き刺さる。
大地に突き刺さった巨剣と腕は霧散し、その姿を消したのだった。

だが、マイラは切り裂かれてはいなかった。
巨剣は拡散し、既にマイラを傷つけるほど形を保っていられなかったのだ。
ザルカシュはその事を見越し、結界維持を取りやめ次なる術を唱えていたのだった。

###############################

一方、地上ではレオルの詠唱が終わろうとしていた。
「我が主よ!完全なる調和の王よ!今こそ私も一つに!!!!」
狂気の笑いと共にレオルは取り出した短剣で己の胸を突く。
それと共にレオルに流れ込む光の粒子。

あまりにも強き光にホワイトアウトが起こり、光が収まったとき。
既にそこにレオルはいなかった。
代わりにメルキゼデグが佇んでいたのだ。
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
呆然と佇むように何も発しないメルキゼデグをクロネたちが取り囲む。
「もうこれまでやでぇ!こんな力の塊やったとはな!そりゃ無敵なわけや!」
「周到な計画が裏目に出たの。同じ土俵に上がらせてもらった。勝ち目はないぞ?」
リーヴとシャミィの言うとおり、今やメルキゼデグと同じ土俵に立っていた。
歌姫達とジンレインの力により、リーヴたちもまた、世界の想いの力を得ているのだ。
そして大部分の想いの光の粒子はメルキゼデグとジンレインによる統合支配力に引き合いにあい、動けずにいる。

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
だがメルキゼデグは応えない。
飄々と歩を進め、しゃがみこむ。
拾い上げたのは黄金の仮面。
いつの間にか柄がついており、それを手に向きたった。
まるで剣を持つかのような体制だが、柄と鍔はあっても刀身のない。
奇妙な姿で。
「「「「・・・なぜ・・・お前達は正義を受け入れない・・・?
争いも、差別も、貧困も、苦しみも・・・何もない世界を望んでいるはずだ!!!」」」」
ようやく紡ぎだされた言葉。
徐々にその音量は大きくなり、やがて空間すら振るわせる意思が込められた。
だがそれで怯むものはもはやいない。

「あほんだら!そんなもん世界とちゃうわい!
苦しんで足掻いて精一杯生きる!苦しみがなけりゃ喜びもあらへんやないかい!
一番気に入らんのは自分自身がなくなることや!
そんなもん正義やあらへん!」
リーヴが怒鳴り返すと、メルキゼデグは即座に視線をリーヴに向け応える。
「「「「矮小な自我の物差しで正義を語るな!
正義とは!生存欲に基づく能動的意思そのもの!生命の中全てに正義の因子は存在する!
我は正義に基づき正義を求める生命の組織化であるぞ!!!」」」」

「そう、確かにあなたは全ての生命の正義・・・その理想によって作られた。
でも・・・違うのよ・・・私たちレトの民は大きな間違いをしていた。
その間違いを正さぬままあなたを作ってしまったのは私の罪・・・」
ラーナが応える。
もはや決着をつける方法は一つしかない。
その悲しさに涙をしながら。

78 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/02/29(金) 22:59:46 0

「「「「これは使いたくなかったが・・・」」」」
チェカッサに振るうは刀身のない剣。
「い・・・いかん!」
見えない刀身だとしても、チェカッサは避けられた。
何かを飛ばしたとしても同じだ。
だが、メルキゼデグの持つ剣には何もなかったのだ。
そう、なにも【無い】。

それに気付けたのは400年にわたる戦闘経験による【勘】に過ぎなかった。
クロネがチェカッサを庇い突き飛ばす。
そしてクロネの左腕と、想いの力で形作られた剣が地に落ちた。
「な・・・なぜですか?」
「この戦いも・・・重要じゃが・・お主はその後に必要じゃからしぃ。
古い者は、ここで消えてもいい・・・!からにゃ。」
吹き出る血をそのままに全身の毛を逆立たせ、チェカッサにクロネが応える。
いつもは糸目で見えぬ目を見開きエメラルドグリーンの瞳を光らせながら。

「無間の剣!」
ラーナが悲鳴に似た叫び声をあげる。
それはレトの民が作り出した剣。

【無】とは概念上の存在であり、本来存在し得ないものなのである。
あらゆるものを無くし、最終的には時間も空間も消滅させる。
すると【無】になる。
だが、それを知る者もないのだ。
どれだけ【無】の期間が続こうとも、時間すらない。
結果、時間と空間が消滅した瞬間、新たなる時間と空間が現れる事になる。

だが、レトの民はそれを取り出した。
【無】そのものを取り出し、形成維持をした。
それが刀身の無い、しかしあらゆるモノを、そして想いすらも本当の意味で【無】とする恐るべき剣を作り出したのだ。
それは自身の存在すら無とし、見る事も感じる事もできぬのだ。
これが黄金の仮面の正体。
あらゆる調和の特異点としてメルキゼデグの手にあるのだった。

「「「「想いすら完全に無としてくれる!!!!」」」」
あらゆる存在、あらゆる想い、あらゆる法則を消し去る【無】の具現の刃が縦横に振るわれる。

79 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 19:34:46 0
メルキゼデグは止まらない それは彼の信念なのか、遥か古代からの怨念がそうさせるのか
無、そのものだと言う無間の剣、それを振るい、メルキゼデグの歩みは止まらない
様々な思いを、モノを無の彼方へと消し去りながらその歩みを止めない
「まったく次から次へとはた迷惑なモノばかりだしおって」
無間の剣を振るうメルキゼデグにぽつりともらす
それを聞きつけたメルキゼデグはその無間の剣をシャミィに向けて振るった
「ひゃお!!あっぶなかっしいのぉ」
「「「全て無に帰れ」」」
間一髪一段高い岩の上にシャミィは着地した
「さぁて・・・・賢聖シャミィ 一世一代の大仕事じゃわい」
そう言うとシャミィはオリジンスキャナーを自分の眼前にかざして呪文を唱え始めた
「そういう訳じゃからして、しばらくそやつを引き止めておいてくれんかのぉ」
しれっと他の対峙していた他のメンバーに言い渡す
「無茶言わんといてーーー!!無理無理!!あかんて!?」
リーヴの言う事ももっともである なにせ触れればそこから消滅するのではたまったものではない
「5分あれば十分かにゃ?ご婦人」
真打刀を口にくわえてクロネがメルキゼデグに立ちはだかる
「それだけ稼げれば行幸じゃ」
短い答えと返事の無い了解 瞬時に事は成り立った
シャミィが術式を唱える、体中に紋様が浮かび上がる
禍々しいその紋様を体に刻み込んだまま次はオリジンスキャナーを使用して純粋な魔力のみを集める
その間にクロネはその見事な体裁きで無間の剣を感のみでかわしながらメルキゼデグを足止めした
シャミィの眼前に作り出された純粋な魔力のみの塊それはオリジンスキャナーを介して純粋なエネルギーへと変貌する
「ぐぅうううう」
シャミィの苦しそうな呻き声が聞こえた時、
「「「ぬぅええい、小賢しい!!」」」
ついにメルキゼデグの無間の剣がクロネを捕らえた
「ぐぅああああああ」
クロネの左足が消し飛ぶ
「終り・・・だ」
クロネにむかって剣が振り下ろされようとしたその時だった
純粋なエネルギーの塊がメルキゼデグにむかって発射される
「「「ぬぅええい 無駄な事だ、この無間の剣は全てを飲み込む」」

迫り来る純粋エネルギーを無間の剣は吸い込む 
「それはまさに行幸」
呟く様にシャミィは一言いっただけだった
吸収されるエネルギーを追ってもの凄い勢いで駆けて来るシャミィ
そしてそのままシャミィは無間の剣に飛び込んだ!!
「「「気がふれて自ら死を選ぶか?」」」
メルキゼデグはたいして気にも留めずに無間の剣を振るおうとしたが・・・
「「「な・・・・何だと」」」
そこにメルキゼデグは信じられないものを見た

80 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 19:36:37 0
仮面の真ん中から伸び出ている『目に見える刀身』を

「「「ば・・・馬鹿な・・・・無間の剣は無・・・・存在するわけが無い!!」」」
流石にメルキゼデグも狼狽する
「教えたろか?なんでその剣、目に見える様になったか」
静かに声が響いた 声の主は大司祭ザルカシュ
マイラから遠隔で声を飛ばしている様だった
「「「何を・・・何をしたぁーーーー」」」
激昂するメルキゼデグと対象的にザルカシュは冷静な口調で答えた
「世界樹すら生まれるもっと前、そう、それこそ無の世界の時の話やで」
マイラで遠隔送話しているザルカシュは泣いていた
「無の世界でいきなりものごっつい爆発がおきたんやて、それで、世界が始まった」

シャミィが無間の剣にむかって突撃する少し前
シャミィとザルカシュは念話で最後の会話をしていた
(師匠!?あかん それはあかん)
シャミィのこれからしようとしている事をその魔力の流れで理解したザルカシュはシャミィを止めようとしたが
(この 馬鹿弟子がぁ!!)
しかし逆に怒られた
(なぁ・・・し、師匠・・・・・・)
(ザルカシュよ・・・・今一度、お主に問う、力とはなんぞや?)
(力とは・・・・・)
幾星霜の年月越えての安らかな師弟の語らいだった
(わしもまだわからんわ)
(ししょお・・・・)
(でもな、目の前で出来る事をせぬ、それは力を持っているとは言わぬのじゃ)
一呼吸置いてシャミィが喋り始めた
(お主は最後の最後まで手のかかる馬鹿弟子じゃったのぉ)
ザルカシュは何も答えない、答えられない
(まだまだ卒業するには早いがこれをくれてやるわい)
ザルカシュの前にシャミィのお守りにしているアンクレットが転送された
(では・・・さらばじゃ!!)
その言葉を最後にシャミィはその存在をこの世から消した
「師ぃ匠ぉーーーーーーーー!!」
ザルカシュの絶叫がマイラに響いた

81 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 19:38:22 0
「エネルギーなんか目くらましや、本命は師匠自信だったんや」
シャミィはエネルギーの塊を目くらましにそれ以上の爆発力のあるモノを用意していた
それは 『呪怨弾頭』 呪われた人間そのものを爆弾とする禁断の業
普通の人間ですら破壊力はもの凄い威力がある それを賢聖と言われるシャミィが弾頭となったのならば
その威力は想像する事も難しいだろう
無間の剣とのインパクトの瞬間、シャミィはその巨大な爆発を起こした
それは無に吸収されながら無を揺るがし、無から有を生む大爆発を起こす引き金となる
無から有へ、それこそがシャミィの狙い、無間の剣の破壊方法だった
そしてそれは無ではない刀身が現れるという形で成功を示した

「「「馬鹿な!?嘘だ!?無が消える!?」」」
流石にメルキゼデグも狼狽を隠せない
「くくくく・・・・・当たり前だにゃあ・・・」
満身創痍でやっと立ってるだけのクロネはその姿を見て笑った
「「「何が、何が可笑しい!!」」」
「所詮・・・壊せぬ事、倒せぬ事は無かったって事だにゃあ」
その慟哭ともいえる獰猛な笑みがメルキゼデグを睨み付ける
「なんだかんだ言ってお主もその無の剣とやらも所轄人の手の業」
爛とその目が輝いた
「ならば 壊せぬ、倒せぬ などあるわけなかろうなのにゃあ!!」
その言葉と同時にメルキゼデグの手刀がクロネの心臓を貫いた
その顔に勝利の確信と満面の笑みを浮かべ
『断龍 クロネ』 その生を閉じる

82 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/03(月) 00:58:56 0
「「「貴様……勝ったと思うなあ!!」」」
倒れたクロネの亡骸を前に、メルキゼデグは絶叫する。
最大の武器は逆手にとられ、最後の切り札も封じられた。
それでもメルキゼデグは突き進む。争いの無い世界、【正義】を実現するために。
「どうする!? もう後はないで!」
剣が現れてしまえばしめたもの、全員で取り囲み一斉に斬りかかる。
「「「……こうするまでだ!!」」」
すでに無ではなくなった無間の剣を振るいながら、メルキゼデグは呪文を紡ぎ始める。
「往生際が悪い!!」
ハイアットが世界中の想いの力を宿した銃弾を撃ちこむ。
しかし、メルキゼデグが一閃した無間の剣だったものに触れた瞬間に、跡形も無く消えた。
「な!?」
唖然とする一同に、衝撃の事実が告げられる。
「「「出来損ないのビッグバン……
世界の源とは程遠いが……このセフィラを取り込むには調度良い!!」」」
よく見ると刀身の周りの空間が歪んでいるように見える。
それは、剣から生まれ出でた異質の空間。
「「「よくぞここまで苦労させてくれた。その強き想い……取り込んでくれよう!!」」」
振るわれる剣より出でる、異質の空間が世界を侵食し始める。
しかし、侵食は加速度的には広がっていかない。
先刻から辺りに満ちるは《アニマ》。
世界を侵食する無から有への変換を妨害するのは、やはり無から有への変換の力。
レトの民の技術を元に、世界を形作るために作られた存在。
メルキゼデグは憎しみを込めて、マイラに立つ人影を見つめた。
ここに至ってまた、周到な計画が裏目に出たのだから。

ザルカシュは理解した。師匠が命を使ってまでした事が利用されてしまった事を。
シャミィが自らの命を使って行ったのは、無から有への変換。
世界は無から生まれ出でると同時に、加速度的に膨張を始めた。
先刻の呪文は、世界と同じように現れた剣の実体に膨張のきっかけを与えたもの。
そして一度膨張を始めてしまえば何も手を加えなくても加速していく。
ザルカシュは持てる知力の限り考えた。
師匠の死を無駄にするようなことだけはあってはならない。
行き着く答えは、危険すぎる賭けしかなかった。

「レベッカちゃん、僕は行く……だから歌って!!」
全世界の事象を従え、マイラから飛び降りようとした時、後ろから声がかけられた。
「受け取っていきいや!!」
ザルカシュさんの魔法が僕を包む。
融合を拒む光の粒子が集まってきて、剣に集結していく。
元から想いで出来たものだから、何よりも想いを取り込みやすい。
眩しすぎるほどの輝きを放つ剣を手に、風に乗って飛び降りた。

83 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/03(月) 22:44:09 0
輝きを放つ剣を手に、風に乗るパルメリス。
その加速に風景が滲んだ刹那、それを感じた。
懐かしく、憎く、近しいその気配。
「パルメリス・・・」
「レシオン!どうして!?」
その声に強張った声で応えるが、レシオンの口調は不思議なほど穏やかだった。
レトの民の計画に取り込まれ、そして今開放されたのだ。
もはや憎しみも、何も宿ってはいない。
「私も想いの粒子となりメルキゼデグに取り込まれていたのだ。
お前達のおかげで想いの粒子は開放されている。
肉体の損傷が少ない物は元の身体へと戻っていくだろう。」
そう、レシオンだけではない。
ソーニャのように肉体の損傷がそれほど無ければ帰滅や大帰滅によって光の粒子となった者は復活しつつある。
「え・・・じゃあ・・・!」
「あ、私は無理。無事だった肉体をお前にざっくり貫かれたから。」
「う、ごめ・・・」
一瞬の期待をあっさりと否定され、しかもそれが全面的に自分の行いのためと言い切られ言葉が出ないパルス。
「いや、いいのだ。私は250年前・・・いや、もっと昔に既に死んでいたのだから。
それより・・・」
言葉は最後まで続かなかった。
続かせる必要はなかった。
パルスの中にレシオンの想いの力が満ちてくるのだから。

−−−−共に往こう−−−−

と。

##########################################

「「「「無駄な足掻きを!同じ土俵に立った?元々のスペックが違いすぎる事を思い知れ!!」」」」
一斉に切りかかるチェカッサたちを吹き飛ばしながら暴れるメルキゼデグ。
無間の剣が無くともその力は圧倒的だった。
そして世界の侵食に加速的な勢いは無くとも、確実に広がりつつある。

そんな戦いを見守る二人の女。
「アビサル・・・可哀想なもう一人の私・・・。」
涙を流しながら見守る一人はジンレイン。
ジンレインの本体はマイラにてメルキゼデグの統合支配に対抗している。
ここにいるのはジンレインの想いの姿。
光り輝く身体で、メルキゼデグを見守る。
運命の歯車がほんの一つ狂えばあそこにいるのは自分だったのだから。
「・・・あなたなら、助けてあげられる・・・」
そう言いながら、もう一人の女の内へと重なっていった。

「ああ・・・任せておきな。」
力強く頷き、歩み寄るは燃えるような髪の毛を持つ【炎の爪】ソーニャ・ダカッツ。
激しい戦いの渦中にも拘らず、まるで無尽の野を行くかのごとく無防備に近づいていく。
「メルキゼデグ。あんたの一部となって判った事がある。
言いたい事は山ほどあるさ・・・だけど・・・」
そう、ソーニャは一度帰滅によってメルキゼデグの一部となった。
個は全であり、全は個である。
抽象的な意味ではなく、物理的にそうなったのだ。
あらゆる情報を共有し、共に溶け合っていた。
その中で得たものがあったのだ。

84 名前:メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/03(月) 22:46:26 0
「「「「寄るなあ!」」」」
振るわれる手刀にもソーニャは無防備。
ラヴィが手刀の軌道を逸らさなければその上半身は跡形も残らなかっただろう。
だがそんな事お構いなしに近づいていく。
「あらゆる正義も、理想も、理屈も、全部どうでも良い!唯一つ・・・!」
とうとうソーニャはメルキゼデグの必殺の間合いに入り込んだ。
もはや助けることすらできぬ必殺の間合いに!
「ちいいい!いい加減いけるな!」
その姿を見て叫んだのはディオールだった。
光の粒子に満ちる中、限界まで消えうせた影を使い、ブレスを発動させる。
それは攻撃ではない。
想いを託したのだ・・・・

「あったりまえよ!メルキゼデグ!お前のご自慢の命の統合システムを舐めるなよ!
首を追った程度で今の俺が死ぬかああ!
赤毛!手間のかかるチビを連れ戻してやれ!」
影から現れたのはリッツ。
一瞬の隙を突きメルキゼデグを羽交い絞めにする。

動けないメルキゼデグの胸にソーニャはその腕を突きつけた。
生命の頂点を極めたツワモノ達の剣すら寄せ付けなかったその胸に、ソーニャの腕は何の抵抗も無く突き刺さる。
まるで溶け合っているかのように。
そして・・・
そして肉薄するまで近づいたとき、ソーニャは叫ぶ。

「アビサル!いや、違う!【奈落の大聖堂】なんて計画の一ページなんかじゃない!
帰って来い!ナユタ!」
それが情報を共有し溶け合った時に得た名前。
アビサルが聖星術師としての名前【アビサル・カセドラル】を与えられる前の名前。

力いっぱい腕を引き抜くと、最初に現れたのはソーニャの手を掴む華奢な【左腕】。
そのまま一気に現れた。
ようやく肩まで伸びたぼさぼさの髪の毛、青い瞳。
大きな瞳に涙を浮かべた少女が
「・・・おがあざん・・・!」
星見曼荼羅のローブも太極天球儀も、日輪宝珠も月輪宝珠も、何もない。
聖星術師アビサル・カセドラルになる前のただの少女・ナユタ。
大粒の涙を流しながらソーニャの胸に飛び込んだ。

「「「「お・・おお・・・・おおおお!!!!」」」」
アビサルを引き抜かれたメルキゼデグは絶叫を上げ、暴れ始める。
その凄まじさは、羽交い絞めにしていたリッツが軽く吹き飛ばされるほどだった。
「「き・・きさ・・・きさああ・・・・!!!」」
「「何をしたかわか・・・わ・・わわ・・・」」
「「「わかっている・・の・・・か!?」」」
暴れ苦しむメルキゼデグの輪郭が徐々にぶれていく。
情報生命体であり、あらゆる生命の統合体のメルキゼデグ。
そこから最後の要であるアビサルというパーツが抜けたのだ。
メルキゼデグという存在自体の統合ができなくなり、身体が分裂暴走し始めているのだ。

「「「なぜだ!お・・お前達の内ににも我はある・・はずなのなの・・に!
なぜ・・判らぬ!なぜ・・調和を・・のの望まぬ!!!」」」
メルキゼデグたちの叫びがこだまする!

85 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/05(水) 00:33:12 0
「もう終わりよ……プログラムを停止します!!」
ラーナは瞬時に、その場にいる全員を少し離れた場所に転送した。
そして、メルキゼデグの方に手を伸ばす。
今ならプログラムを解除できるという確信を抱いて。しかし、一瞬遅かった。
間一髪の距離が及ばず、巻き起こった爆発に吹き飛ばされる。

辺り一帯が爆風で何も見えなくなる。
ようやくそれが収まってきた時、誰がいる場所からも巨大な何かが現れたのが分かった。
正確には現れたのではない、存在するべきものが存在するようになっただけなのだ。
メルキゼデグはプロジェクト・エターナル完遂のために作られた情報生命体。
完璧ゆえに融通の利かないスーパーコンピューターは
予定されていない事態に直面したため、システムの大部分が停止した。
自分自身すら侵食に巻き込んでしまった今、本来の姿をさらけ出し
残った僅かなプログラムが暴走を開始する。
「「「殲滅を開始する!!」」」
鐘を打ち鳴らしたような声が鳴り響く。それはこの世界全てへの死刑宣告。
全にして個。個にして全。自律駆動する無数のコンピューターの集合体。
その配列によって自在に姿を変える、機械の巨人。
これこそが、異なるセフィラから飛来し、自在に時を渡り歴史を操ってきた支配者の正体だった。
無機的な起動音が鳴り響き、発射されたミサイルが空を埋め尽くす。

「あ……」
レベッカは、目の前の光景に圧倒されて声も出なかった。
現れたのは、世界を侵食する力を纏う、見た事も無い巨大な化け物。
そして、とてつもなく危険そうな飛び道具が無数に飛んでくる。

今まで実体の見えなかった敵が、ついに現した正体。
神と呼ばれるレトの民が作り出した超科学の産物。
緻密すぎる計算で世界を牛耳ってきたスーパーコンピューターだった。
僕はそれに、物凄い速さで接近しつつある。
相手がどんなに巨大だろうと、不思議と怖くは無かった。
今の僕には最悪だけど最高の味方がついているから。
たった一言発するだけで、全世界の事象が僕の意思に応える。
「【ミサイル・リフレクション】」
吹き抜けるは烈風。ミサイルが全てUターンして打ち出した者自身に向かっていく。

86 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/05(水) 00:34:34 0
「「「ウボァーーーーー!!」」」
あろうことか自分で打ち出したミサイルに爆撃される機械の巨人。
響き渡るどことなく間抜けな絶叫。レベッカは先ほどとは別の意味で驚いた。
「ねえ、今ウボァーって言ったよね!?」
「ああ、言ったな」
「幽霊の正体見たり、ポンコツロボット」
リリスラが頷き、さらにオペラが格言を披露する。

時同じくして、ハノンは飛んでくるペガサスの一団を発見した。
「ああっ! 愛しのフォルティッシモ!」
団長に拉致されたあげく成り行き上放置されて迷子になっていた騎馬達である。
急にやる気に満ち溢れる暁旅団。彼らが真価を発揮するのは空中からの撹乱だからだ。
「パルメリス様……お手伝いします!」
「みんな……邪魔だけはしちゃダメよ!」
レミリアが先陣を切って、空の戦士達は飛び立った。

そして、遥かな上空より姿を現したのは、星界での戦いを終えた星龍たち。
それと同時に、リオンとトム達の武器が雑誌の付録とは思えない輝きを放つ。
「何だ!?」
リオンが目を輝かせながら答える。
「星龍の祝福だ……。もうただの付録じゃない。
たった今、本物になったんだよ! さあ行こう!」
「行こうって……どこに!?」
「嫌だよ! あんなのと戦うのは!」
『そんなんじゃあパンダのバンダナが泣くぞ!! 守ってやるから安心しろ!!』
翠星龍が有無を言わさず5人を背に乗せ、翼を広げた。

着地したのは、浮遊する無数の機械で出来たメルセデギグ自身の上。
次々と飛び移りながら、光の剣で襲い来る装置を破壊していく。
「「「貴様あっ!! ぶちころす!!」」」
メルキゼデグは巨大な拳を振り上げ、僕を叩き潰そうとする。
敢えて避けずに、影の転移術で移動する。
拳を振り下ろした隙に、語りかけるのは水の上位精霊。
「【メイルシュトローム】!」
大量の水が現れ、巨大な渦がメルキゼデグを飲み込む。

その頃マイラでは、レベッカがすっかりいつもの調子でツッコミを入れていた。
「いくらポンコツでも耐水加工はしてると思うよ!」
アーシェラがそんなレベッカを見て、安堵の笑みを浮かべる。
「良かった、いけるようですね」
「もっちろん!!」
アーシェラが刻み始めるのは、軽快にして力強いリズム。
素晴らしい未来を予感させるような曲調にのせて
レベッカ達は希望に満ちた歌詞を高らかに歌い始める。

87 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/05(水) 00:36:38 0
〜♪〜♪Road of Hope♪〜♪〜
星の導く 歴史が 終わるとき
本当の 物語が 始まりを告げる――

届けどこまでも 君に伝えたい
今この場所に 生きている奇跡!
同じ空の下 君と会えた事
この世の何より ステキな贈り物!

まだ見ぬ未来は 誰にも分からないけど
恐れないで 一人じゃないから!
時には嵐に 会うこともあるけれど
雨があがれば 輝く虹の橋がかかる!

新しい風が 雲を吹き散らし
希望の光が 僕らの道を照らす
固く手をつなげば どこまでも行けるよ
今こそ踏み出す 限りない未知
 
それは 果てし無き
――Road of Hope!!
〜♪〜♪〜

88 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/05(水) 21:10:13 0
その巨大な体を縦横無尽に振り回しメルキゼデグはその怒りを表わす
だがこの場に立っている物に絶望の顔は無かった
暁旅団が空から、メルキゼデグを牽制し、地上では

「合わせろ!!リッツ!!」
「応!!」
黒騎士とリッツが白と黒の閃光となって無数の拳を打ち込む

「こいつで最後や、派手にいくでぇ」
「最大出力っちゅやつや、頼むからきいてくれや」
ザルカシュが最後の魔力を振り絞って砲撃し、リーヴがありったけの力を込めた必殺の一撃の拳で殴る

「いけ・・・・全ての思いを込めて、ジルローヴェンスタン、シューーート!!」
「断空斬りーーー」
ハイアットの銃口が火を噴き、ラヴィの黒包丁が空を斬った

「まったく、往生際の悪い奴じゃ、いい加減にせぬかぁーーー」
「貴方の形見お借りします、吹きとべぇ!!」
クロネの残した刀の柄から光をほとぼらせてチェカッサが斬りつけ
巨大なブレスをイアルコが起こした

「よくも今までアビサル・・・いやナユタを虐めてくれやがったな、オトシマエはつけてもらうよ!!」
「貴方は世界に害悪しか与えない・・・・トドメです」
ソーニャの炎が駆け巡り、アオギリの矢が光となって貫く

「くっそぉ こうなったらヤケだぜ いくぞお前ら」
「「「「了解!!」」」」
星龍の加護を受けた武器を重ね合わせリオンと蜥蜴の尻尾団はファイナルドラゴバズーカを放つ

89 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/05(水) 21:10:50 0
龍が、人が、獣が、新たな神が、古き神が、未来が、過去が、そして今が
全てに仇なす怨敵を今打ち破らんと一つになる
そしてその力は光の束になってメルキゼデグを打ち据える
「「「「ぐがああああああ!!」」」」
真正面からその光の束を受ける 
「「「「まあぁあだぁぁああだぁあ」」」」
強烈なエネルギー波の猛攻を浴び、無数の拳を浴び、魔力で破壊されて、
両手が吹き飛び、顔面を破壊され半分消し飛び、それでもメルキゼデグは存在していた
「「「「吹き飛べ、次元の彼方へ!!」」」」
メルキゼデグが咆哮する、そして空に裂け目が現れる 
これこそメルキゼデグの最後の手段、異次元の扉を無理やりこじ開けそこに全てを飲みこもうと言う物だった
しかしそれが思わぬ結果を生む事になる

「うぉおおおおお!!」
次元の裂け目から巨大な鉄の塊を携えて一人の男が降ってきた
その男は地面の裂け目に飲み込まれた男、鉄の塊はいつしか消えていた男の友人の武器
その武器には前世界率の名残があった そして落下長い落下の際に巨大な力を蓄えていた
男は地面に飲み込まれたと同時に不安定になっていた空間から異次元へと落ち込んだ
そこでたまたま手にしたのがこの武器だった
そしてメルキゼデグの異次元の干渉で彼らは再び元の世界に戻る
 
武器とメルキゼデグが衝突するその腹部に突き刺さるようにぶつかった鉄塊がその溜まった力を解放する
「「「「がぁあああああ!!!???」」」」
様々な思いと力を解放して壊れて砕けて その武器は役目を終えた 
その最後に残った小さな欠片には小さく銘が刻まれていた
『ONSUROTO』と
落ちてきた男、キャメロンを暁旅団が救出した 幸い気絶しているだけで傷らしい傷も無い

メルキゼデグが苦しむ、その巨体をよじらせて、その腹部に巨大な穴を開けて
すでに次元の裂け目も維持が出来なくなって閉じている
皆が叫んだ、心で、口で、目で、

「「「「「「「今だ!!パルス!!」」」」」」

90 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/07(金) 01:21:44 0
無数の機械の集合体であるメルキゼデグを倒す方法はただ一つ
奥深くに隠されたマザーコンピューターまでたどり着き、プログラムを解除すること。
そして、またとないチャンスは訪れた。全ての願いが、意思が、僕に力を貸してくれる。
「これで最後だ!」
「「「貴様……何を!?」」」
恐怖も、不安も無かった。ただ勝利への確信と、未来への希望だけを抱いて、疾風となる。
――《レクス・テンペスト》!
台本なんて無い本当の未来を掴むため、計画に縛られた歴史を今ここで終わらせる!
それは僕自身の意思でもあり、世界の全ての願いでもあった。
一直線に飛び込むのは、メルキゼデグに開いた巨大な穴!

「「「うわなにするやめろおおおおおおおおおお!!」」」
侵入者を排除しようと暴れまわるメルキゼデグに、歌い終わったレベッカが叫ぶ。
「やめろと言われてやめるやつがあるか!」
永遠とも思える数秒間を待つ。
それは祈りや願いではなく、確信。全員が心の底から勝利を信じていた。

メルキゼデグの中に飛び込んだ僕は、少し開けた空間に出た。
思ったよりあっさりと、目の前に一際大きな装置が現れる。
あとはこれを叩き壊せば勝ちだ。分かっていたけど、そうする訳にはいかなかった。
近くに、この期に及んでまだ取り込まれている人を見つけたから。
装置に半分埋まるように捕らわれているのは、幼い少女だった。
今プログラムを解除したら一緒に彼女まで消えてしまうような気がする。
僕はその人の前まで言って、名前を呼んだ。
「ヒムルカさん……!」
姿は違っても、直感で分かった。
目の前にいるのは、他でもないこの手で止めを刺したはずの、人魚の女王。
少女は、僕のことは覚えていないようだった。ただ、僕を見て祈るように呟く。
「……私のことはいいから……早く」
次の瞬間、僕はものすごい剣幕で叫び返していた。
「よくない!!」
少女を縛る何重もの拘束を叩き切りながら。彼女は尚も懇願するように呟いた。
「ダメ……あなたまで捕まってしまう……」
「無理なんかじゃない! 一緒にみんなの所に帰ろう!」
その時、周辺の防衛システムが起動するのを感じた。
僕を捕らえようとする鎖が伸びてくる。少女の懇願は叫びへと変わる。
「お願い、早く行って!!」
何を言われても絶対に見捨てて行くわけにはいかない。
「あなたは生きてる! 敵の策略だろうと何だろうと……生きてるんだ!!」
鎖に絡みつかれそうになり、防衛装置が続々と集まってくる中、剣を振るう。
そしてついに、少女を縛る最後の鎖を断ち切った。

91 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/07(金) 01:23:00 0
解放された少女を抱きとめた時、信じられないことが起こった。
全ての装置が一斉に停止する。辺りに閃光がはしる。
「え……?」
暫し呆然とする頭の中に、声が響いた。
(もう大丈夫だ、パルメリス……)
それを聞いて、やっと気付いた。勝ったということに。
プログラム解除の鍵にされていたのは、ヒムルカさんだったのだ。
これはきっと、メルキゼデグが仕掛けた最後の罠。
「なんてラッキーなんだ……」
急に眠たくなって、そっと目を閉じる。
意識を手放す間際、深い意味はなく、なんとなく言ってみた。
「おじいちゃん、僕頑張ったよね。褒めてくれる?」
(当たり前だろう。ラッキーなんかじゃない、お前の信念の勝利だ!)

マイラから、事態の行く末を固唾を飲んで見守るレベッカ達。
しかし、待てども待てども何も起こらない。
「さすがにヤバくない!?」
「ウソだろ……!」
最悪の事態が脳裏を掠め始めた時だった。メルキゼデグの中心部から眩い光が放たれる。
聳え立つ巨体が風化するように消えていく。
「やった!」
「「「私は……負けたようだ……」」」
最後の言葉は、使命から解放された安堵のようにも聞こえた。
「そんなの最初から分かりきってたわよ!」

やがて、メルキゼデグは、さっきまでの事が嘘のように跡形もなく消え去った。
その場所に、全員が一斉に駆け寄る。
倒れているのは、エルフの女王。その胸に、幼い人魚を抱いて。

92 名前:『裏方』 ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/08(土) 17:02:14 0
メルキゼデグの体が光の粒となって空に昇って世界に降り注ぐ
世界に雪が降る 黄金の雪が静かに降り注ぐ
それは世界の様々な意志そのもの
この後に神話で語られる未曾有の大惨劇を覆い隠す様に
哀しく、優しく、人々を包み込む

大地は崩壊し、空は暗雲で覆われ、それでも人は諦めなかった
生きる事を、帰る場所に戻る事を、そして明日を

新しい世界率はその意志を汲む、【諦めなければ何度でも立ち上がれる】
それは大雑把で曖昧で雄大かつ繊細なモノ
それは人間達の心そのものではないのだろうか

歌姫達が歌を綴る、生命を、すべての命を歓喜する歌を
世界中に充満した思いの力とあふれ出した魔力、そして生命を歓喜する歌
生き延びた人々に活力を、死する運命にあった人々に祝福を、死を運命として享受した人々には安らぎを

大地はついに訪れた死と降り注ぐ黄金の雪で一個の生命では無く無限を育む場所と生まれ変わり、
その姿を変え、崩壊をやめた
いつしか空も遠くまで青く澄み渡っている

人々は生き延びた喜びの先に気がつくだろう、世界の変革を、そしてそれは平坦な道のりでは無い事を
世界は変わってゆく、人はその命を繋いでゆく、傷つけ傷つき、争う事もあるだろう、
それでも人々は信じて生き抜くだろう より良い明日を信じて

そしてそれはこの激戦を戦い抜いた英雄たちもそうなのだろう
きっとより良い明日を信じて、彼らは生きてゆく どこまでも、そうどこまでも

93 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/09(日) 01:02:44 0
皆がパルスの元に駆け寄っていくのを、少し離れた場所で見ている一団がいた。
「余は湿っぽいのは嫌じゃ」
「坊ちゃま、このような時は死んでいないと昔から相場が決まっております」
イアルコとメリーの何事も無かったような日常会話。
黄金の粒子が降り注ぐ中、ディアナが唐突に切り出す。
「帰りましょう、ドゥエル」
「ええ!? 母さんに挨拶ぐらいしていかなきゃ!」
ディアナは諭すようにゆっくりと首を横に振った。
「バカ! そんな事をしたら困らせるだけですわよ!
それにあの人はもうワタクシ達のお母さんではありませんわ。
これから本当の未来を歩んでいくのだから……ワタクシ達の事は忘れた方がいい」
ディアナが正しい事が分かりながらも、しんみりと頷くドゥエル。
「それじゃあ、あの人を元の時代に帰してから……」
「バカ! ヘタレガンマンはもう返さなくていいですわよ!」
当然のことを言ったはずが、またもバカと言われて驚くドゥエル。
「ええ!? それはまずいよ色々と!」
「ワタクシがいいと言ったらいいのです!」

パルスに抱かれていた幼い少女が目を覚ます。
「大丈夫!?」
誰だか分からないながらもラヴィが問いかける。少女は泣きそうな声で答えた。
「お姉ちゃんが……」
一方のパルスは揺すっても一行に目を覚ます気配が無い。
「パルちゃん起きて!!」
「頼む! 何か言ってくれ!」
皆が騒然とする中、女神ラーナの凛とした声が響いた。なぜかハイアットに向かって。
「目を覚ます方法、教えてあげましょうか」
ラーナは有無を言わさず、一方的にありがたい啓示を授ける。
「そ……それはちょっと!」
「ずっと目を覚まさなくてもいいんですか!?」
「それは困る!」
いつの間にか周囲からは応援とも煽りともつかない声援があがっていた。
「がんばれー!」
観念したハイアットは決死の覚悟でパルスの顔を覗き込んだ。

モーラッドは気付いていた。
祖龍の祝福が消え去り、永遠の冬となる運命だった大地に優しい風が吹いている事に。
彼は吹きぬける風の中に声を聞いた。
(息子よ……)
「父さん!? これは父さんの仕業なのか!?」
(さあ、どうだろう、解放されたメルキゼデグの感謝か……
はたまた人の意思に応えた世界率なのか……。今まで済まなかったな)
「もういいんだ」
散々振り回された相手だが、今では心からそう思えたのだった。
(それとパルメリスなら心配要らない、眠っているだけだ)
「良かった……」
しかし、安心しきってパルスの方に視線を向けた瞬間。
「……」
違う意味ですでに手遅れで、本日最大ダメージを受けた。

94 名前:ナユタ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/10(月) 23:02:33 0
ナユタは生まれて初めて、自分の両足で立っていた。
両手で風を感じていた。
そして・・・初めて自分の目で・・・世界を見ていた。

片手片足、両目と子宮を喪失した状態で生まれたアビサルは、ナユタとして生まれ変わり、五体を得たのだ。
全てが新鮮で、全てに感動していた。
その一方で・・・どうにもならない不安も感じていた。

「・・・これから・・・どうなるの・・・?」

マントを羽織、ポツリと呟く。
大地の崩壊は止まり、生きる事を望む者は生き、死することを教授したものは安らぎを与えられた。
だが、この後・・・体制が崩壊した今・・・

「ナユタ。たとえどんな理由で生み出されようとも、生まれた瞬間から生命は生命の力で生きているんだ。
決められてない事を不安に思う必要はない。
決めていける事に希望を持てばいいのさ。」
不安を口に出す必要はなかった。
ソーニャが余す事無くその想いを受け止めたのだから。

その言葉は届いていないはずだが、チェカッサ、イアルコ、アオギリ、三人の若者は空を見る。
向かう視線はばらばらだが、心の向いている先は同じ。
行く先には様々な困難が待ち構えているだろう。
だが、人も、龍人も、獣人も、図らずも想いは一つになることができる事を体験したのだ。
いかなる困難も越えられる。
そんな確信を抱かせるに十分な体験を・・・。

様々な想いの中で、一つ確かに共通する想いをもって・・・
世界は明日へと繋がってゆく。

95 名前:ナユタ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/11(火) 20:43:40 0
「ほな今週の講義はここまで。明日はハレの日やさかい、二人ともおめかししてきいや。」
「はい、ザルカシュ先生。」*2
あれから一年、いろんなことがあった。
各地で急ピッチで進む復興。
大陸間交流。統一連邦構想。
大きな世界の流れの中、私は東部大陸行政顧問となったザルカシュ先生に弟子入りしていた。
忙しい中、週一度はこうやって講義を開いてくれる。

「ナユタ、明日は何を着ていくの?」
声をかけてきたのはジンレイン。
あの後一緒にザルカシュ先生に弟子入りした。
出合った当初はとても大人びた人で近寄りがたかったけれど、今では一番の親友。
「うーん・・・この間ブルーディさんに買ってもらったワンピース着て行こうと思って。
でもびっくりしたね。ハイアットさんはアーシェラさんのことが好きだと思ってたから。」
「判ってないのね。男と女はそんなに簡単なものじゃないのよ。」
ふふんっと笑うジンレインはこんな時は大人びて見える。
だから、ちょっと私も背伸びをしてみるの。
「ふーん。ところで、セイファートさんは帰って・・・き・・・た・・?」
途中まで言いかけて思わず失敗した!と心の中で叫んでしまった。
「あの馬鹿、夏にふらりと出て行ったまま音信不通よ・・・!明日は来るだろうから・・・
いいわよね、あなたはワンピース買ってもらって・・・。」
おどろおどろしいオーラを醸し出すジンレインに私は顔を引きつらせるけど、うまくフォローができない。
軽く触れてはいけない地雷を踏んじゃったと後悔してオロオロするばかり。
「あ・・・そ、それより、メモリアルテディベアは、で、できたの、かな?」
明日二人に渡すプレゼンのと人形の話にしどろもどろしていると、ジンレインの表情が明るくなった。
上々の出来だそうだ。

私は今、生まれたカルダン諸島に一人で住んでいる。
ザルカシュ先生が各所へのゲートを設置していってくれたので生活に不便はない。
ジンレインも同じように、遠く離れて暮らしているけど、おかげでしょっちゅう会えて楽しい。
いよいよ明日。
一年なんてあっという間だった・・・

########################################

私はゲートを通り、ラーナ様の森に来ていた。

ここは花嫁控え室。
真新しいワンピースに身を包み、久しぶりに会う人達に挨拶をしてまわる。
ソーニャさんは色々忙しくて最近リッツさんに会えないって愚痴ってた。
懐かしい人たちの中、今日の主役の一人がいる。
「パルメリスさん・・・綺麗です。」
思わずため息をついてしまった視線の先には、ウェディングドレスに身を包んだパルメリスさんが座っていた。
その表情は・・・生気が無く、目の焦点が合っていない。
「あ・・・あれ?・・・僕はなぜ・・・?」
紆余曲折を経て、怒涛の勢いだった。としか事情を聞いていない私にはパルメリスさんの心境を知る事はできない。
でも、みんなの笑顔を見れば、とてもいいことだと思う。

そうしていると、扉が開き、もう一人の主役がやってきた。
白いタキシードに身を包んだハイアットさん。
なんだか燃え尽きたように白いのは気のせいかな?
「はっはっは、結婚はいいものだぞぉ!」
ハイアットさんと一緒に入ってきたのはディオールさん。
その後ろには、赤ちゃんを抱いているレジーナさんもついてきている。
この二人、一年前に結婚をし、2ヶ月前に第一子を無事出産した。
今回の結婚式の仲人でもある。
愛の女神ラーナ様の立会いの下、教皇となったシスターキリアが取り仕切る信じられない位の結婚式。
あと一時間もすれば始まる、その瞬間に立ち会えるなんてなんて幸せなんだろう。

96 名前:ナユタ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/11(火) 20:43:48 0
「ほれ、どないしたん。こういう時は【綺麗だよ】って言ってやんのが男っちゅうもんやでぇ。」
リーヴさんに背中を押され、パルメリスさんの前に立つハイアットさん。
多くの人が集まり、周囲からは期待に満ちた視線が集中する。
「パルメリス・・・」
「ハイアット君・・・」
二人は見つめあい・・・
「「・・・オカシクネ?コレ」」
二人が声を併せ言った言葉に、一瞬あたりが凍りつく。
でも二人は急速に生気を取り戻したように立ち上がる。
「「相棒!逃げよう!」」
唖然とする周囲を余所に、二人はてと手を取り合って窓から飛び出した!
息もぴったり、駆ける歩幅も一緒に森を走っていく。

「・・・・逃げたああ!愛の女神である私から新郎新婦が手に手をとって逃げるだなんて!
みんな!追うのよ!逃がしちゃ駄目ええ!!!
どうせ二人で逃げるのなら私の祝福を受けてからにしなさあい!」
ラーナ様の号令一家、全員がパルメリスさんとハイアットさんを追っていく。

「久しぶりにやるか!相棒!」
「よし来た相方!」
逃げるパルメリスさんとハイアットさんがどこからか出したかバナナの皮を大量にばら撒いて逃げる。
「お父さんはこんな結婚認めないぞおお!」と吼えていたモーラッドさんがバナナの皮に滑って盛大に転ぶ。
「わははは!余にこんなものが効くかあ!逃走本能なら余の右にでるものはいないわあ!」
「坊ちゃま、全く自慢になりません。」
そういいながらイアルコさんとメリーさんがバナナの皮をスケートに用に利用して加速しながら叫ぶ。
非常事態だというのに追う方も追われる方もなんだかとても楽しそう。

###########################################

私はとても追いつけずに、はぐれてしまう。
元々あの人たちについていける体力もないのだから。
いつの間にか見た事もない草原に出ると、焚き火を前に座る人影を見つけた。
どこかで見たような、何か懐かしい人影。
惹かれるように近づいていくと・・・その人影は振り返り私に笑いかける。
「「「「久しいな、ナユタ。」」」」
その一言で全てを悟った。
でも、驚きはしたけれど、なぜか警戒も危機感も沸かない。
「メルキゼデグ・・・!なぜ?」
驚いた私にメルキゼデグは優しい笑顔で応えてくれた。
「「「「ラーナから聞いていなかったのか。
諦めなければ何度でも立ち上がれる。新しき世界律のおかげさ。」」」」
「え・・・じゃあ・・・」
「「「「いや、諦めなかったのは、この世界の行く末を見たい、という事さ。
全ての調和を拒否してまで掴んだ未来をどう生きていくのか。情報生命体として見ていきたくなってね。」」」」
応えるメルキゼデグは穏やかで、瞳には嘘は無かった。
私は無言で頷き、その場を後にした。

秋風が軽く頬をなで、気持ちいい日差しが注ぐ中、一本の木の下で私は座り込む。
靴を脱ぎ、幹に背を任せ・・・
今まで起きたこと、そして今日起きている愉快な騒動。
そしてこれから起きるであろう日々に思いをはせながら・・・・私たちは歌を歌う。

知っていたわけでもない、誰に伝えられたわけでもない、ただ、口から流れるままに・・・・

97 名前:ナユタ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/11(火) 20:43:58 0

::::::::::::::::::::::::/            {      // /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;. ''´
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::::::/          ヽ. ヽ、   ヾ、ヽ    l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/  永遠なる物語に・・・
/         ヽ.    `'´Y`ー―'::::::::`ー':::::::::::::::::::::::::::::::::/
            \_______j::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
              /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
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               ノ
             ( し
             う (            星があった
           /!  /  !    /
 /し       〆 し    }  ノ  )       光があった
 !/      /         ! f|
  空があり           し' l       r=f::\ 
   ,'   /            |       _|{'- }:::::ヽ、
    〆  深い闇があった!     f´:::/T´ハ:ヾ¨ヽ、
  人/              ヽ    ハ:〈‐、 ,..ヽ::〉  !
、/                  ヽ   l/ }:::〉 !  ///  ヽ
    水 そして岩があり    |  ,イ>/:イ、   〈:{ l!,.rrァ |
              ,,'      |-〈ヽ l/ >ヽ___,.rf>|.!ノ_jー- 、  
        見えないもの 大気があったYシl !;;;:::=''"/ l `:::::ヽ
    "    ,,           ヽ_k  ヾ::) / >'´//      ト、
    ,雲の下に 木があった     し!  `~U´ / / /     !::ヽ
,,"/k;; ''   ,..,:';;::ヽ ,;;  '、      ヽ   ,,. ''   /  木の下に::::::ヽ
フ;;/;/>/;;,./;;;' ..::{ヽ lf! ,,;;'';, ,、     ヽ)''"  /   /     !:::::::ヾヽ
彳''"/",,;;:''/ ,;' /;;;〉ヾl!l:.::;;; :;;:.;;;;,       しヽ/ 息をするものが居た
.;;'/,.,;;''::''ツ   {//;;==!;;!==-;;;;;;;;;;;:;:;:: : :: ..._____)   ヽ、-ー=ーァ、>::ヽ
'"/;;;//」ァ亠 、;;''/-:::::!! !:...__     ................::::三三三ハニニニニ/;;;;;',::::::::::::::::::::::....... .. .
";;;/::/,rニニ、ヽヽ!;;;三!! !三三三二二二二二二二 .::/;;;;;;!三三{;;;;;;;;;!:::::::::::::::::.....
''"三/ /,r ニニ、ヽ', l;;;;三!! !三三三三三二ニニ.:::三三{;;;;;;;;}三三三;;;ノ:::::::::...

98 名前:ナユタ ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/11(火) 20:44:10 0
             __   、   \  ,-ヘ \ハ  V!    |
  、_  _∠ニコ   └ '    \   \ ⌒ヾ  1   リ|   | ー〜ーァ'   >
 '            ,、  __ \   \rーヘ 」   | |    !  /`ー  /
        ,,. -==ラ'  ̄¬ '   \   \⌒ヽ   |/   |/    /
    _, -〜ァ   /          \   \ |   |    |       /  r'二⌒
__,/`フ       ´       、_  _ 厶ヽ   ヽ!   l    |    /
   \     >─- __,, ,__,、r<_ー─‐' \   |   !    !   厶-、
     `ーヘ  r ァ   ∠ 'ヽ   >    _ヽ 息をするものは心を持ち
    _. --'"ヽ/    /ー--─' ̄  _ -‐<_ーヘ    i    ,'   || , - ' ̄
   _>    `ー-一'〜<´,.. -─ '"     `ヽ!.: i l  生きるものは
  /                ̄ヽ rァ   `⌒ヽ! /l     !   〈!
_ノ       くフ_,==¬     _,r′       | ' 死ぬ事を知った
       〃 ̄      `フ了  ヽ          | i     l    ‖_,rー、
      ̄      r ァ  ー'   ⌒ヽ 〜ヘ_  一滴の涙から 言葉が育った
ー-、         , -‐'´   7  レー`ーァ/⌒ソ-─‐- 、  :     |‐¬ ト、
   7     _,r'"     ,-‐'     ⌒'   /        ヽ     |    ヽ
    `ヘ_,r'⌒7     _/⌒ー〜-ュ      ,'/  i l ! ハ       !
         `ー‐‐'"´      て      i{{  ,イ /ナ! i |    |  i  __ _,.- '
    こうして            _ _,r ヾ/__,. ー1 ||    | |│-' `'
 我々の物語が育った          く   i ヽ. ' _  | |リ   i  ! {
                         ーー1 i>‐ ' | ├r 、  l  ! |
_,.. -ー─‐-ー- .,_  _               /! | i}   || i/  i  !  l│
  大地と共に  '  `´ ̄ `ー- 、      / ハ!r‐f><} リ {  !  i  { {‐-─
___世界と共に__......,,_      `ー-‐ー/  i l      !  l  U ヽヽ
生命とはなんだろうという問いと共に  ァ′  ハ        |  |   |   ヽー─-
                      /   /' / \ヽ.   i  |   |    \
 -────--─ ,.vwy,、 ..,,vy_,._/  / ヽ \_ ヽ  ||  |   |     ヽ
  歌があった 从w ..,_, -'二 --‐─∠ -─ ' ヽ ニミ -=ヽ! |  繋がっていく命と|
       ,rn  ,,,,.v,,  '⌒,..y_,. -‐ '" \\     ,==-、 l |   繋がっていく未来を
        i  i w,,.y  _,. - ''       ヽ ヽ ffinn〃   ヾト,_ ヽ   \紡ぐ歌
       l  ヽ -‐ '"    _w,.-ー──yvヽニ!  `i   ,rニ7!ー'⌒ヽ ,.v\
       ,,.i   ,,._  -‐,vy,...    ,,,...,.     ヽ  i  /'´,rww,.y
        `ー '^  ″″,,′′丶 ,vwy,,.."世界の真ん中でありながら 隅っこである場所に・・・
           ′    ′ ,,,...  ″  yw ミー ',w

  

99 名前:パルス ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 00:28:41 0
あれから一年。
ハイアット君と何でも屋をやったりゴーストバスターズをしたり
酒場でデュエットして缶を投げられたり街頭漫才をして缶を投げられたり
さらには不動産屋を始めて三日で潰れたりと忙しい日々を送っていた。
でも勘違いしてはいけない。
飽くまでも全部ハイアット君が元の時代に帰る方法を探すためなのである。
なのに今どうなっているかというと……

「待たんかああああああ! こんのクソガキ共おおおおおおおお!!」
「二人とも坊ちゃまよりは年上で御座います」
逃げても逃げてもバナナを利用して後ろにぴったり着いてくる追っ手達。
捕まったらきっと恐ろしい事になるに違いない。
ハイアット君がいつになく険しい顔で呟く。
「手強いな……」
「こっちだ相棒!」
僕はハイアット君の手を掴んで、道を逸れ、木々の間に飛び込んだ。
「はぎゃ!?」
坊ちゃま、勢い余って木にぶつかって撃沈。
メイドのメリーさんは坊ちゃまの介抱にいそしむ。
「坊ちゃま、目をお覚ましください!」
「ぎゃあああああ!! 余を殺す気かあああああ!!」
哀れ、サンドバック状態になってしまった坊ちゃまの声を後ろに聞きながら
ハイアット君の手を引っ張って奥に入っていく。
伊達に迷宮の森って呼ばれていた訳じゃない。撒いてしまえばこっちのものだ。
やがて、大きな木の前まで来て足を止める。
落ち着いたところで、僕達は今の状況について冷静に分析してみる事にした。
「ハイアット君、これは何かの陰謀だと思うのだけど君はどう思う?」
「うんうん、具体的には某変態女神様の陰謀だよなあ」
相棒も全面的に同意のようだ。
「だってハイアット君は元の時代に帰らないといけないのにね」
時代を超える方法なんて絶対無いと分かっているから平気で言える。
しかし、ハイアット君が返したのは、予想外の返答だった。
「ああ、それはもう諦めたよ。今まで手伝ってくれてありがとう」
「ええ!?」
僕は解雇を言い渡された従業員のような衝撃を受けた。
僕のそんな様子もお構い無しに、ハイアット君は言葉を続ける。
「帰る場所を見つけたんだ。僕の帰る場所は……」
その時、一際強い風が吹きぬけ、木の葉が揺れる。
囁くような声は、その音にかき消されて聞こえなかった。
僕は雰囲気がぶち壊れになるのも構わずもう一度聞いてみる。
「ごめん、もう一回!」

100 名前:CAST PC ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 00:32:10 0
愛の伝道者  アクア・ウーズ
千年の種子  アビサル・カセドラル(ナユタ)
小さき覇王  イアルコ・パルモンテ
鋼鉄の虎  ゲルタ=ロンデル
黒騎士  ディオール・ライヒハウゼン
剣聖  クロネ・コーフェルシュタイン
不動の砦  ジーコ=ブロンディ
甲殻の戦鬼  ジョン・リーブ
世界樹の剣姫 ジンレイン=ギルビーズ
破滅の翼  トレス=カニンガム
星都の守護者 ハイアット・スタングマン
銀の輪の女王 パルメリス・ディア=メイズウッズ
音界の魔奏者 ブルーディ・ザ・サウンドライフ
黒包丁の申し子 ラヴィ・コッカー
白い牙  リッツ・フリューゲル
星晶の歌姫  レベッカ・ライラック
調和の使徒  レオル・メギド

101 名前:ハイアット ◆uNHwY8nvEI [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 16:49:17 0
僕はパルスのもう一度という言葉を聞いて少し笑い…語り始める。
「実はね…いつの間にか…僕は元の世界に帰るのを諦めていたんだ。
 というか…帰る気しなくなっちゃってね。」
そう…僕は…元の世界に帰るっていうことを願わなくなっていた…あまりにもパルス達との旅の日々が楽しかった…
パルスや皆との時間は1秒すらもまるで黄金のようだった。
最初に君と出会ったとき、君は僕の信じられないような話を信じてくれた……
君と何度も大笑いをして…時には君に支えられて…時に君を支えて…
「もう一度言うよ。僕は帰る場所を見つけたんだ…
 僕の帰るべき場所…僕が居たいと願うところ。」
そうだ、いつからか僕の過去に帰りたいという想いは君との旅で霞んでいたのかもしれない。
「それは君の隣だよ…そう、帰るべき場所は君の隣さ。」
「ハイアット君……」

…もちろん、僕がこの時代に居てはいけないことは分かっている。だからこそ僕は帰りたいと願っていた…全てを精算したかった。
そして、ハインツェル…救うためとはいえ君を殺してしまったのを最後の最後にもう一度会って謝りたいとも思う…
でも、もう戻れない…僕は心の底からパルスの傍に居たいと想ってしまった、願ってしまったんだ。
そうさ、僕はずっとこの人と寄り添っていきたい。この世界を諦めきれない…皆やパルメリスを諦めることができない…

――いいんじゃないか?君がそう思うんだったら――

驚いて声の方を見ると、そこには…居ないはずの人が見える。
僕のたった一人の兄弟が……いつしか離れてしまった兄弟が…笑ってそこに立っていた。
僕の見ている幻影なのか、それは分からない。だけど確かにそこにハインツェルが立っていた。

――君は心を得たんだ。生まれ変わったんだって言ったろ。これからは…君は君自身を生きろ。アーシェラだってそう望んでいるさ――

その言葉に…自然と涙が溢れてくる……
「ハインツェル…いや、兄さん…ありがとう。そしてごめん…あの時…僕は…兄さんを自由にしたかった。
 だけど……ごめんよ……僕は兄さんを殺してしまったことに変わりは…」

――いいんだ、ありがとう開放してくれて…恥じることも責任を感じることもない。誇りを持ってくれ。君は僕の自慢の弟だ――

その言葉を残しハインツェルはどこかへと消えていった。
胸に一つだけポツンと残っていた突っ掛かりがとれた気がした…
今この心はまさにこの青空のように晴れ晴れしていて…どこまでも澄み切っている。
「ハイアット君どうかしたの…泣いてるの?」
「いや、なんでもないんだ…なんでも……」
涙を拭いパルスの方に向き直り微笑む。そう、心がなかったらできない自然な微笑みを…
そして僕はパルスを何も言わずに抱き寄せる。パルスの顔が少し赤く染まるのが分かる。
「…こ、これからどうしよっかハイアット君…」
「そうだね……また旅したいな…時間ならお互い十分にあるし。今まで忙しかったからね。
 これを機に君と共に世界をゆっくり見つめながら決めてもいいと思うんだ。」
僕の言葉にパルスは満面の笑みを浮かべ、お互いに身を寄せ合って歩きはじめる……僕たちの本当の新しい道を……

102 名前:ハイアット ◆uNHwY8nvEI [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 16:50:39 0
しかし、そんなことは知ったことかという怒声が響く。
「やっと見つけたぞおおおおおおお!クソガキ共おおおおおおおお!!」
「ですから二人とも坊ちゃまよりは年上で御座います」
眼が血走り怒りに震える坊ちゃマンとそのメイドメリーの姿…坊ちゃマンなんかもう半分ぐらい私怨で追いかけているとしか思えない。
「あちゃー…忘れてた、まだあの結婚押し付け女神様の刺客がいたんだっけ…」
全く凄く良くキメたのにこんなタイミングで出てくるなんて…とんだ愛の女神の使徒だよ。
「どうするハイアット君?」
「どうするもなにも……決まってるさ。」
僕達は一呼吸したあと、同じタインミングでうなずき歩幅も同じで走り出す!
「「逃げるが勝ち!!さあ行こう!!」」
「待たんかおのれらあああああ!!」
「坊ちゃまそんなに走りますと転びますよ。」
「わははははは!余が転ぶわけ…ぶべッ!!」
「「はははははは!!バーカ!!」」
「お、おのれらああああああ!!洗濯物みたいに日干ししてやるうううう!!」
「「あははははははは!!」

日々は続いていく…きっと明日も、明後日も、この陽だまりのような輝く日々は続いていく……そう僕は信じてる……
だってアーシェラ…君が愛した優しくてとても暖かい日々が…今日この日まで終わらずに続いているように……
きっと僕達の日々は終わることなく未来へと繋がっていく。そして、もしまたとてつもない困難がこの先訪れても、
僕の…僕達の愛した日々は壊せはしない…だって…皆となら…きっと立ち向かえる。

そしてパルス…君となら絶対に乗り越えられる…そう心から信じているから……

103 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/03/12(水) 17:05:15 0
人生は続く

104 名前:CAST NPC ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 22:43:43 0
アーシェラ・ムゥ=セレスティア
アオギリ・コクラク
アスラ
アッシェンプッテル=トーテンレーヴェ
アリス
アルフレーデ=シュナイト
アンナ
イェソド(グレッグス)
イフタフ=パルプザルツ
紅星龍イルヴァン(紅き龍の巫女レーテ)
蒼星龍ウルヴァン
エドワード
オペラ=メルディウス
翠星龍オルホーン

105 名前:アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 22:56:38 0
街道を全速力で私の方へ逃げてくる二人を見つめ私はやれやれとため息をつきました
深く被ったフードの下で呟きます
「壮大な照れ隠しですこと・・・・ですが・・・」
私の脇を通り過ぎようとしたパルスさんとハイアットさんをがっちり、それはもうがっちりと両脇に挟んで捕まえました
「ちょ!?は、離して知らない旅の人」
「僕たちは逃げなければならないんだ 知らない旅の人」
パルスさんとハイアットさんが大騒ぎしております
「そうですか・・・でも・・・・・」
お二人を追って皆様が追いかけてきます
「皆様がお祝いしてくれるそうですよ?」
そこまで言ってお二人の顔色が変わりました
「あの・・・・もしかして・・・・」
「どこかで会った事ないですか?」
「あら、まだ思い出して頂けないのですか?」
そこまで言って私は被っていたフードを振り飛ばしたので御座います
「愛があれば何でも出来る!!結婚だって出来ますかーーー!!」
「「アクアさん!?」」

「それでは夫婦そろっての初の愛の卍固め 入ります ダーーーー!!」
「「「痛い!!いたたたあ!?!?」」

世界率が変わって数ヶ月後、私は約束を信じてくれるシスター・キリアの思いに答える形で融合していた自然と
切り離されました ただ復活した場所が何処だか解らない場所で各地を彷徨っていた所、噂でお二方がご結婚なさる
とお聞きし、今、到着したので御座います

どうやら皆様集まって来たようですね、お二方をす巻きにして結婚式場までつれていくようです
中には私の姿を見て驚かれてる方も大勢おられました、ですがシスター・キリアだけは驚くことなく
ただ一言おっしゃいました

「おかえりなさい」

「ただ今、帰りました」

106 名前:CAST NPC ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 23:07:04 0
披露宴会場では、各自調律や調弦をしていた。
これから始まるであろう、盛大な披露宴を前に準備に余念がない。
そんな準備中の楽隊の耳に入る『新郎新婦逃走』の一報。
「おいおい、何やってんだ?」
呆れたように溜息をつくブルーディだが、その後ろでオペラは笑みを零す。

「ええ〜、ちょっとぅ。仕込みしちゃったのに料理が冷めちゃうよぅ。」
キッチンから飛び出してくるのはラヴィ。
披露宴の食事は仕込から調理、皿出しに至るまで綿密にスケジュールが組まれている。
ベストなタイミングでその一品を出すためだ。
開始が遅れればそれだけ調理作業にも狂いが生じる。
ラヴィが慌てるのは仕方がないのだが、その表情は困ったようでいて笑っているようでもある。
そう、ある種の予感があったのだ。
こうなるであろうと。

「仕方がないですね・・・。」
披露宴会場にいた半人半馬の若武者、アオギリが外に出て、クワッと目を見開く。
千里先の蚊の目玉さえも射抜く神槍天弓の本領がこんなところで披露されるのだ。
「リリスラ、南南西650m!菩提樹の下だ!」
楽隊と共に歌合せをしていたリリスラに声をかける。



アルト=サイカーチス
アミル
イームズ・ギャンベル
エリアス・エンゼルファイア
黄金仮面
ギアルデ・ドラド(黄金の導き手)
キシュー
騎士団長カルナート
キャメロン
ギル
ググさん
クラックオン十烈士
 アント・クラックオン《ジオル》
 マンティス・クラックオン《ザオウ》
 メガボール・クラックオン《ダルゴス》
 ワスプ・クラックオン《ビード》
 ウィーヴィル・クラックオン《ハゾス》
 ロングホーン・クラックオン《キバ》
 ファイア・クラックオン《オウル》
 ビートル・クラックオン《アカイライ》
 ロキュスト・クラックオン《ホンゴウ》
 キャリオン・クラックオン《ユウダイ》
 スカラベ・クラックオン《スターグ》

107 名前:CAST NPC ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 23:07:50 0
「まいた、かな?」
「手強かったね。強敵と書いて友と呼んであげやう。」
笑いあうパルスとハイアットの鼻先を掠め、菩提樹に突き刺さる一本の矢。
そしてバサっという音とともに、菩提樹の枝にリリスラが降り立った。

「私の賛美歌が聴けないってのかい?」
不敵な笑みを浮かべるリリスラ見つめ、パルスがどこからかナイフを取り出す。
その刃の向かう先は・・・
ガリガリガリ・・・
ナイフを木の幹に走らせ、出来上がったのはハートマーク。
中心は先程刺さったアオギリの矢。
ご丁寧に、ハートの隅にはリリスラ’sハートと彫られていた。

「え・・・ちょ、なに彫ってんのさ!おま、、エルフの癖に樹を傷つけて!」
にんまりとしてマークを見せ付けるハイアットとパルスにリリスラは文句をつける。
だがあまりにも顔が真っ赤すぎ、マークによって与えられた衝撃の大きさを物語ってしまっている。
「よし、いまだ!」
うろたえるリリスラを余所に、二人はまた駆け出した。

その先に待ち構える再会へ吸い込まれるように・・・二人は駆けていく。



ケヴィン
ギュンター=ドラグノフ。
“荒天”のエンラ
“轟天”のセンカ
ゴゴ
ゴミムシ
コル・ウーヌム(至上の至福)
ゴンゾウ=ダイハン。
ジェシカ=アムリアスとサラ
ジェマ四兄弟
 ジェダ、ジェマ、ジェラ、ジェナ
シスター・キリア
ジャックス
十剣者のイェソド
十剣者のメイ
執事ジョージ
シャミィ
“舜天”のシバ
スコット
スリダブ流の人々
 マスター・ホースエリア
 マスター・ジンカキノイ
 マスター・エル・サント
 スリダブの中でも最も芸術的な技を持つと称される。
 フランク
 バッドボーイ
 タルツ
 ハイマスター・ファンク・シニア
 ゼーラス・アマーラ 
 グランドマスター・パワーロード・マウンテン


108 名前: ◆K.km6SbAVw [sage] 投稿日:2008/03/12(水) 23:24:32 O
復興進むロイトンの小さな大衆酒場。

「えぇ〜!終わり〜!?その後2人はどうなったの!?」
物語の続きをねだる子供達に困ったような笑みを浮かべ、赤衣の詩人が椅子を立った。
「そうですね…続きはまた今度にしましょう。暗くなってきましたし。」
涼やかな声が、一見すると女性と見紛う詩人の性別が男性である事を物語る。
「じゃあ明日ね!?絶対のぜーったいだからね!?」
「えぇ、それではまた明日。」
駆けて行く子供達に手を振り、詩人は茜色に染まる空を見上げた。

既に明るい星々は、己の存在を主張するかのように輝き始めている。
詩人はハープを片付けると、酒場を後にした。
帰るべき場所へと帰る為に。
在るべき場所に在る為に。

人の形を保てる“太陽が大地を照らす時間”は終わり、詩人は夜空を瞬く“龍”となった。


世界に散らばる数多の物語を、遥か空の高みより集め。
それをまた地上の人々へと環し伝える。

物語は続く
伝える者が伝える限り
聞く者が聞く限り
そこにヒトがいる限り、世界は物語に満ち溢れているのだから



109 名前:CAST NPC ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/13(木) 20:55:26 0
シルフィール

《黎明の翼》、セイファート・リゲル=メイズウッズ

セリガ・ウ-ズ

『炎の爪のソーニャ=ダカッツ』

ソフィー=ハイネスベルン中将

タード

ダズート将軍

老甲鬼 タナトス 

チェカッサ(王子ライランス)

ディラン・マーベリック

トムと愉快な仲間達


「おい、知ってるか?あの触覚が結婚するらしいぜ」
トムと愉快な仲間達が昼間から酒場で談笑する
「まじかよ!?」
「どうせ、式直前に逃げ出すさ」
「「「ははははは」」」

今日も『吼える坑道亭』は人であふれている
「ああ、いた いた」
「おっ、これはキャメロンさんに若奥様、いらっしゃいませ」
店に入って来たキャメロンとアリスを見て愉快な仲間達はこっそりと裏口から逃げ出そうとして、
「なぁにしてるのかしら?」
待ち構えていたリオンにしっかりと捕まった
「さぁ、みなさんお仕事、お仕事!!」

アリスの声が店中に響く、キャメロンが満足そうに頷く、そして、

「なぁ・・・・俺たちって何目指してたんだっけ?」
「多分、冒険者じゃなかったと思うんだけどなー」
「まぁ、いいんじゃね?」
「いいのかなぁ?」

彼らの愉快な冒険は今日も続いてゆく


110 名前:CAST NPC ◆9..WsvGTOM [sage] 投稿日:2008/03/13(木) 21:49:44 0
「ところで、我々はこんなところで湯に使っていていいので?」
「かまやせんわい。のう!」
「わははは!当たり前じゃないか。僕様と裸の付き合いができるなんてめったに無いぞ?」
ここは東方大陸最北端の地、ルフォン。
鉱山は枯れたが、代わりに湯が湧き出し、今や有数の温泉地となっていた。
そこでどっぷり湯につかるのは博乱狂気、万学長の名を欲しい侭にするベルファー・ギャンベル。
共に浸かるのは、“舜天”のシバと“荒天”のエンラ。

盆を浮かべ、酒を交わす三人をいらいらした調子で見つめる男がいた。
湯気にめがねを曇らせハッピを着ているイームズ・ギャンベル。
ベルファーの弟で、この地を統括するものだ。
「ああ、もう、三人で貸切なんてしてないで。
出る気がないのならもういいです。お客様を入れちゃいますからね!」
のんびり湯に浸かる三人に業を煮やしたイームズは勢いよく扉を開けた。
脱衣所から勢いよく入ってきたのは・・・・

「お待たせしました、零嶺幇ご一行様。
先客が降りますが気になさらず【存分に】お楽しみください!」
歓声と共にわらわら入ってくるホビットたち。
荒事に携わっていたが、生来のホビットの気質は抜けるはずもない。
一挙ににぎやかになる温泉だが、さすがはベルファー。
すっかり溶け込みお湯を掛け合いを楽しむのであった。



ドラッド

トーテンレーヴェの姉妹
 シュネーヴィットヒェン・トーテンレーヴェ
 ドルンレスヒェン・トーテンレーヴェ
 ロートケップヒェン・トーテンレーヴェ
 アッシェンプッテル・トーテンレーヴェ

ユウルグ=トーテンレーヴェ

トーマス

二十三代目カリギュラ・モルテスバーデ(暴帝の交剣印)

猫耳神官リオン

ハインツェル

七海十六聖臣
 クラゲ種族のエチゼン
 マーマンのリョウマ
 貝の種族一の使い手シン
 海豹の暴君サムチャイ

111 名前:CAST NPC ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/14(金) 00:13:01 0
ディアナ・D=メイズウッズ

ドゥエル・D=メイズウッズ

ヒューア(ティフェレト)

プランセス・カイ

ブルックリン

ベルダン=レーゼンバッハ

風を切って飛ぶ飛空挺。その甲板の上には、暁旅団の面々がいた。
「今回の収穫は上々だったね!」
ハノンが、所狭しと積んである怪しげな物品を見回しながら満面の笑みを浮かべる。
「少しぐらいパクってもバレなくない?」
「そうだ! パクっちゃおう!」
いそいそと物品の物色に取り掛かるハノンとカノン。
しかし、直後にレミリアのハリセンが炸裂する。
「コラー! それはみんなのものよ!」
「いいじゃないですか、慈善事業やってるんだから少しぐらい!」
実はこの人達、各地に散らばる遺跡に潜って便利なものを発掘する任務を任されているのだ。
セイファートが人差し指をびしっと立ててハノンをたしなめる。
「口を慎みたまえ……慈善事業団体じゃなくて空賊団だッ!!」
「あーはいはい、そうでしたねー」
レミリアがどうでもいいように頷いていると、突然マリクが悲鳴の声をあげた。
「今ザルカシュさんからテレパスが来たんですが……パルメリス様が……」
「パルがどうしたって!?」
親友の身に何が起こったのかと顔色を変えるセイファート。
次の言葉は、予想さえしないものだった。
「結婚するって……あと一時間で式が始まるって……間に合わないじゃないですか!」
「いや、間に合わせてみせる! 操縦代われ!!」
マリクを押しのけて操縦桿を奪い取り、アクセルを全開にして飛ばす。それだけではない。
ある意味素晴らしい操縦技術によるアクロバット飛行に、一瞬にして阿鼻叫喚の事態となった。
「「「嫌あああああああああああああ!!」」」

112 名前:CAST NPC ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/14(金) 00:14:48 0
『吠える坑道』亭マスター

ボボガ族族長

マイケル(ホッド)

ミゲル・デ・ラマンチャ中佐

メイドのメリー

モグラの爺さん(翠星龍)

そして、ラーナの森の上空まで来た時。案の定、爆破空中分解した。
「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」
仕方が無いので【フライト】で脱出する一同。地面に降り立ったレミリアが辺りを見回す。
「約一名除いてみんな無事!?」
約一名というのはもちろんセイファートの事である。したたかに頭を打って気絶していた。
そこまでは想定の範囲内、しかしそれだけではなかった。
「一名じゃありません! 羽の生えた女の人もいます!」
セイファートが目を開けると、そこには懐かしい顔があった。
「あれ……シルフィール? 分離した?」
シルフィールは優しく微笑み、頷く。そして透き通るような声で言った。
「傭兵廃業したか。もうお前の尻に敷かれなくてすむわけだ」
次の瞬間、団員全員の声が見事に被る。
「「「シルフィールがぐれた―――ッ!!」」」

113 名前:CAST NPC ◆d7HtC3Odxw [sage] 投稿日:2008/03/14(金) 23:44:33 0
ルーシー

トーマス

戦乙女ルシフェル

ルドワイヤン 

レイン、ジェリーの兄弟

レジーナ=ハイネスベルン

レニー=カーライル

レミリア・エルメリス=ユニコーンフォレスト

ロシェ

ヒロキ

モーラッド

レシオン




小さなの農村にまた収穫の時期がやってくる
一年前の惨劇が嘘の様に人々は畑を耕し、大地の実りを喜び、感謝する。
全てが同じではないが、いつもと変わらない光景に人々は今日も感謝するのだ
「爺サーーン、コノ箱ハ、ココデスカー?」
「おーーう、そいつが終わったら飯にするぞー ちょうど来たしな」
畑の端で叫ぶ声が聞こえる
「お爺ちゃんーー あなたーー お昼よーー今日はシチューよー」
きっと明日も全てが違う変わらない日々に感謝する日が来る事を願って

114 名前:CAST NPC ◆iK.u15.ezs [sage] 投稿日:2008/03/15(土) 22:58:26 0
愛の女神ラーナ

カールトン=レーゼンバッハ

シファーグ=ハールシュッツ

ベルファー=ギャンベル

マリオラ=ハイネスベルン

ミュラー=アイゼンボルグ

リオネ=オルトルート

アクアさんとの再会を喜ぶ間もなく簀巻きになって連行される僕たち。
僕たちをぐるぐる巻きにしているのは、黒くて平べったい物体だった。
少女の不敵な笑い声が聞こえた。
「フフフ……妾のワカメから逃げられると思うな!」
あれから少し成長したヒムルカさんが大量のワカメを操っている!
これこそ彼女の恐怖の技、無限に増えるワカメ!
この技の恐ろしさを知っている僕は、もはや逃走は無理だと悟った。
「ハイアット君、覚悟を決めよう」
「そうだね、相棒」

115 名前:CAST NPC ◆iK.u15.ezs [sage] 本日のレス 投稿日:2008/03/17(月) 00:48:21 0
ギラクル

ゴウガ

ゴロナー・ゴスフェル

ザルカシュ

スターグ

ヒムルカ・クラド・マーキュス

リリスラ

レベッカちゃんが、ワカメに巻かれて連行されている僕の全身を眺め回す。
「な、何!?」
「すっごく……綺麗だよ! 不思議だなあ、アタシと会った時なんて……」
その先の言葉は大体予想が付いたけど、言われる事は無かった。
「パル!?」
驚かれてはじめて、大粒の涙を流して泣いている事に気付いた。
「あれ? 何でだろう……こんなに嬉しいのに……」
森の中を歩きながら、一年前の、風のように駆け抜けた日々を思い出していた。
酒場の隅で寝ていたハイアット君を叩き起こした事。
それは、本当の未来を取り戻す冒険の始まりだった。
最高の仲間たちと出会って、たくさん笑った。
悲しすぎる出来事に、たくさん泣いた。
何度も死ぬかと思うような目にあって、その度に誰かに助けられてきた。
今となっては何もかもがキラキラ光る宝石のような思い出。
そして、掛け替えの無い日々は、とびっきりの贈り物を残してくれた。
この世の何よりもステキな贈り物。

116 名前:劇中挿入歌 ◆iK.u15.ezs [sage] 本日のレス 投稿日:2008/03/17(月) 00:50:37 0
レベッカ
♪Soul Detonation
♪Morning Star
♪Limit Brake
♪A Happy New World
♪Live to Surviv
♪Over the Rainbow
♪song of life 始まりの唄

アスラ
♪イージスの盾
♪旅人の歌

リリスラ
♪審判の翼
♪キミに伝えたい
♪ただひとたびの奇跡
♪SYMPHONY OF HEART
♪力への意志

アーシェラ&オペラ&リリスラ&レベッカ
♪KIZUNA
♪Road of Hope

ナユタ
♪SANSAARA

――パルメリス……良かったね……
声が聞こえたような気がして見上げると、お母さんが木の枝に座って手を振っていた。
「あ……」
――お前はもう呪われた女王なんかじゃない! 運命に打ち勝ったんだ、自信を持って生きろ!
確かに聞いた言葉を胸に刻みつけ、ゆっくりと歩みを進める。
今はこの世にいないはずの昔の仲間たちが、次々と祝福の言葉をかけてくれる。
――パルメリス様、おめでとう!
――文字通り末永くお幸せに!
――すっごくお似合いです!
「みんな……」
そして、最後に現れたのは、本当の自分を取り戻した旅で、本当に大切な事を教えてくれた人だった。
――泣き顔は似合わないぜ! そいつの隣ならずっと笑ってられるだろうよ!
「待っ……」
思わず手を伸ばす。
次の瞬間、吹きぬけた一陣の風と共にみんな消えていなくなった。
元通りの風景が戻ってくる。一年中緑の葉が生い茂る、昔から少しも変わらない風景。
でも、同じはずなのに昔とは全然違って見える。
暖かい木漏れ日が降り注ぎ、優しいそよ風が木の葉を揺らす。
もう逃げようなんて思わなかった。
ハイアット君と最高の笑顔で手を繋ぎ、式場へと向かう。
ラーナ様の御元で、みんながとびっきりの笑顔で祝福してくれる。
もう閉ざされた迷宮なんかじゃない。忌まわしい記憶の舞台なんかじゃない。
悲しかった事の何倍も何十倍もの喜びに彩られた場所になるだろう。

大好きなキミとの、本当の始まりの場所だから。

117 名前:パルメリス ◆iK.u15.ezs [sage] 本日のレス 投稿日:2008/03/17(月) 00:52:47 0
「パルメリス……」
「ハイアット君……」
僕とハイアット君は、衆人環視の中で、かれこれ30秒ほど見詰め合っていた。
視線でこんな会話を繰り広げながら。
(うわー出来ないよ! これだから結婚式の主役なんて嫌だったんだ!)
(でもやらなきゃラーナ様が許してくれそうにないよ!)
あまりの恥じらいを見兼ねた周囲から声援があがる。
「ちょ! 照れ過ぎ!」
「二人ともがんばって――!!」
決心した僕は視線で語りかける。
(今回は僕からいくよ!)
(今回はって……知ってたのか!? あれはラーナ様が適当な事を言うから!)
これ以上は間が持たない。問答無用で身を預けるように顔を近づけていく。
ハイアット君は抱き寄せるように僕の背中に手を回す。
どちらからともなくそっと目を閉じて。

そして僕らは――――

118 名前:とある参加者(名前は伏せる[sage] 本日のレス 投稿日:2008/03/17(月) 12:51:44 0
これでこの物語は一旦の終演を迎える

だが、これは終りではなく始まりなのだ

人は昨日から今日へ、今日から明日へ、 

過去から今へ、今から未来へ、

親から子へ、子からまたその子供へと、

終わらない物語を綴り続けてゆく、

それはまさに、過去へと遡り未来へと続く


---ETERNAL FANTASIA---

     物語は続く





SPECIAL SANKS 
応援してくれた全ての名無しさん 


今までありがとう


【物語は】ETERNAL FANTASIAU:5【続く】

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