1 名前: ◆svDXdcR9Gw [] 投稿日:2008/01/15(火) 03:02:02 0
とある剣と魔法の幻想世界は、今、異世界からの侵略者―――悪の大魔王の侵攻を受けている。
大魔王軍はあまりにも強大で、その武力で各国の首都が次々と陥落してゆく。
民は怯え、前線で戦う兵士達には絶望の表情が浮かぶばかりであった。
しかし、予言書にはこう記されている。
絶望が異界より来るならば、希望もまた異界から来ると。
世を憂う賢者達は予言に従い、異界の勇者達の助力を得んが為、召喚魔法の儀式の準備にとりかかった。
果たして希望は生まれるのか?
それとも、新たな災厄を呼び寄せてしまうのか?

【ルールとかお約束】
・よくあるTRPGスレというヤツです。
・基本は3日ルール。それ以上待たせる場合は事前連絡をきちんとしましょう。
・決定リールは無し。
・GMはスレ主◆svDXdcR9Gwがやります。
・世界観説明では異世界からの召喚が前提みたいになってますが、そんなことはありません。
 現地の戦士達も、皆必死に魔王と戦っているのです。
・版権キャラも他所のスレのキャラも全く問題はありませんが、元ネタの明記はきちんとしましょう。
 知らない人にもちゃんとわかるように説明をするとベターです。
 キャラクターの能力は、特に明確かつ具体的に記述するのがベストです。
 そうすると幸せになれる気がします。
・パワーバランスはきちんと考えて。
 大陸を消し飛ばしたり、星を壊したりとかするような輩がやるようなスケールの戦いはありません。
・雑兵は良いとしても、敵役コテを圧倒しないようにしましょう。死闘を演じるとカッコイイ
・敵(魔王軍)がどんなに強くても、怯まず立ち向かえば必ず勝てるはず!

自己紹介の紙です
【名前】
【性別】
【種族】
【年齢】
【容姿】
【特技】
【持ち物・装備】
【キャラ紹介】

2 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:03:37 0
にやにや

3 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:05:06 0
悲惨の参!!

4 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:05:30 0
4さまのケツげっとw

5 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:06:33 0

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6 名前:刹那[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:08:42 O
俺が召喚獣だ

7 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:09:08 0
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8 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:09:47 0
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9 名前:プロローグ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/15(火) 03:10:26 0
邪悪なる大魔王は突如として異界より現われ、武力によって世界を蹂躙し始めた。
だが、この世界には広く言い伝えられている事がある。
すなわち、異界から災厄が訪れたとき、それに立ち向かう勇者もまた異界から現れるという。
この言い伝えを信じる魔術師達は召喚魔法の儀式を行い、異界の戦士を呼び出そうとした。
術により、勇敢で正義感溢れる英雄が現われることもあれば、新たな災厄とも言うべき輩が召喚されたこともあった。

ただ一つ言えることは、大魔王は未だ健在であり、世界の危機は未だに去っていないということ。
大魔王とその軍勢は、今なお世界の平和を脅かしているのだ。

10 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:11:11 0
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11 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:11:52 0
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12 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:12:28 0
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13 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:13:00 0
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14 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:13:34 0
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15 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:14:01 0
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16 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:14:25 0
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17 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:15:04 0
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18 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:15:25 0
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19 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:15:52 0
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20 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:16:13 0
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21 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:16:41 0
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22 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:17:29 0
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23 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:18:04 0
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24 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:18:35 0
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25 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:19:26 0
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26 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:19:55 0
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27 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:21:07 0
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28 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:21:43 0
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29 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 03:22:52 0
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30 名前:プロローグ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/15(火) 03:30:46 0
大陸の北の端にあるオロッパスの城でも、王の信頼の篤い魔術師の主導によって、大規模な召喚魔法の儀式が行われていた。
城の地下室の床には丸い魔法陣が描かれ、陣の中心に正八面体の石のような物体を据えて、その周りを魔術師達が囲んでいた。
術師達のリーダーと思しき老人が、感慨深げに語りだした。
「この国で大規模な召喚魔法の儀式ができるような施設は、もはや限られている。
 悪くすれば、これがわたしの生涯最後の召喚魔法になるやも知れぬ。
 今回の召喚で、魔王の野望を打ち砕く勇者が現われることを切に願う」
老魔術師は手を合わせて、呪文を唱え、強く祈った。
彼の弟子であろう若い術師達もまた、儀式魔法の触媒となる、正八面体の石のような物体に祈りを捧げている。
老魔術師の祈りに反応して、石のような物体はオレンジ色の淡い光を放ち、床に刻まれた魔法陣が光輝く。
だが、魔術師達の祈りに異世界の何者かが応えて、姿を現す様子はまだ無い。


魔術師達が儀式を暫く続けていると、轟音と共に城が大きな揺れに襲われた。
城の外がたいへん騒がしい。どうやら敵襲のようである。
兵士達の雄叫びと、魔王の手下の怪物の恐ろしげな咆哮、魔法による爆発の音などが、交じり合って聞こえる。
「魔王め。やはりこちらの動きを察知して、先手を打ってきおったか。
 皆の者、守りを固めろ!魔術師達を守るのだ!」
魔術師達の護衛兵のリーダーと思しき男が号令をかけた。
魔王軍には、空間転移で一気に国の急所に突っ込んでくるような輩だって居る。
そのため、暗殺された要人は数知れない。
兵士達はそれを痛いほどよく知っているので、いつもよりも厳重な警戒を布いている。
早速戦いの狼煙が上がった。

31 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/15(火) 03:41:20 O
早速荒らしとるのう
まぁ折角得た力、使わなきゃ損だものね

32 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 12:33:05 O
応援させてもらうぞ
まだ参加は様子見だけど

33 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/15(火) 13:19:34 O
俺も参加予定
首尾よく参加者が集まればね

34 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/15(火) 13:25:22 O
結局みんな他人任せなんだな
自分では作ろうと考えてもいない

35 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/15(火) 13:42:40 O
正直あの民度の低い避難所から出てきた企画ってだけで荒れる事が確定してるし

36 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 14:58:27 0
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37 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:00:15 0
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38 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:00:52 0
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39 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:01:28 0
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40 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:01:56 0
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41 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:02:30 0
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42 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:03:22 0
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43 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:03:42 0
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44 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:04:23 0
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45 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:04:52 0
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46 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:05:21 0
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47 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:05:42 0
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48 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:06:29 0
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49 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:06:52 0
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50 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:07:22 0
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51 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:07:47 0
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52 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:08:09 0
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53 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:08:57 0
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54 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/15(火) 15:09:56 0
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55 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/15(火) 20:57:25 0
一番乗り!参加希望させてもらうぜ。


【名前】 大魔道士ポップ
【性別】 男
【種族】 人間
【年齢】 15歳
【容姿】 格好良くはない
【特技】 数々の攻撃呪文
【持ち物・装備】 ブラックロッド、法術で編まれた服、黄色いバンダナ
【キャラ紹介】
大魔道士。元の世界では勇者パーティの一員として大魔王に立ち向かい、世界に平和を取り戻した。
それから数ヶ月、それなりに平和な時を過ごしていたが、ある日突然こちらの世界に召喚されてしまった。
臆病者のヘタレだが、勇者と旅をするうちに勇敢な若者へと成長していった。でもヘタレ。
ある極大消滅呪文が最大の必殺技だが、召喚の影響か現在は使えなくなっている。

56 名前: ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/15(火) 23:23:45 0
儀式が行われている部屋の近くを警戒していた兵士達が、空間が歪みを目撃した。
「これは、術が成功したのか……いや、違う!」
魔術師達を見守る護衛兵達に動揺が走る。
これは明らかな敵の気配だ。
闇の中から1人の少女が姿を現した。
彼女は邪悪なオーラを纏っている。人ならざる物の怪の気配がする。
兵士達は、直感的にこの少女が敵だと認識した。

兵士達の直感は間違っていなかった。
すぐさま、真っ黒な球体が弾丸のように飛び、1人の兵士を吹き飛ばした。
「魔術師達は我が国の命綱!ここは通さんぞ!」
兵達は、目の前のただならぬ気配を纏う少女に果敢に立ち向かった。
そのとき、少女が前に手をかざすと、彼女の掌から光線が照射された。
「うわーだめだー」
でも駄目だった。精鋭兵達は光線で薙ぎ払われてしまった。

>55(召喚されるシーン。ところでダイの大冒険のポップだよね?)
悲鳴を聞いた魔術師達に、絶望の表情が浮かんだ。
「うわーだめだー」。この手の悲鳴を聞くのは何度目だろうか?
魔術師達が諦めかけたそのときだった。
石のような物体が、一際強い光を放ち始めた。
「おお、この土壇場で……」
魔術師達は、光の向こうに人影を見た。
召喚魔法が成功したのだ!多分。

57 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 00:01:17 0
【名前】フェル・エクスティム
【性別】男
【種族】人間(?)
【年齢】24歳
【容姿】切れ目でツンツン頭、細マッチョ。
【特技】龍覇轟撃拳(詳しくは【龍覇】で) どこでも寝られる。

【持ち物・装備】体を動かしやすいように作られたコートを羽織り
           他の装備も布にしては非常に耐久力に優れる
           炎とか防ぐのは無理。斬撃などももちろん防げない。
           ただ少し殴られた時の衝撃を和らげるだけである。
【キャラ紹介】
闘拳士、元の世界は非常に混沌としており力こそが全てであり凡ての世界。
彼の世界はもはや平和や安息、安穏などは存在しない。
日夜如何なるところで戦いが繰り広げられ多くの人間が戦いの果てに消えていく。
弱者は生きる資格さえない、そういう世界である。
彼自身は龍覇轟撃拳という流派を伝承された1人であり。覇道を目指す者に将を任せられている一人である。
なおフェル・エクスティムは非常に好戦的で強さだけを求め、弱き者は死ぬのが当たり前という考えを持っている。

ちなみに彼の世界にも魔法というものがあるが、拳で戦う拳士からは臆病者と見下されがちであり、
剣などの武器を使うのは最も恥じるべき行為の一つである。
あくまでも自らの拳や覇気、精神力による魔法などで戦うことが恥じる事なき神聖な戦いだと思われている。

【流派】
「龍覇轟撃拳」
フェル・エクスティムの学んだ拳。数多くある流派の中でも上位の13の流派の一つ。     
重く鋭い一撃を繰り出すその姿は見るものに龍が轟く様を彷彿させることからこの名が名づけられた
真に極めし者の一撃は幻影や錯覚でなく真の龍が垣間見えるというがその域まで達したものは少ない。

それとどの流派であっても技を使うとき、戦う時は覇気という自らの精神力(MPみたいなもの)と体力(HPみたいなもの)を使う。
ちなみに覇気の大きさは肉眼で見えるオーラのようなもの(覇気)に比例する。
ちなみにオーラの色(覇気の色)は人によって千差万別であるが、一番多いのは無色であり。
色を持っているものは何かに秀でているものである。ちなみにフェル・エクスティムは深い青であり誇りと相手を砕く決意を感じさせるものとなっている。
例えば右腕にかなりの量のオーラのようなもの(覇気)が出ていた場合その右手の一撃は岩をも砕くだろう。
ちなみにフェル・エクスティムは相当の使い手のため並の拳士の覇気とは比べ物にならない。
全身に纏うことも可能である。

58 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 00:03:51 0
大魔王が没して数ヶ月。
ポップは平穏な日々を過ごしていた。

魔王軍との最終決戦ののち行方不明になった勇者。
相変わらず振り向いてくれない片思いの女性。
魔王軍との死闘に疲弊した世界に復興は進んでいるものの、ポップの身の回りに特に変化はない。
しかし、それも今日まで。ポップの生活は、これから変わろうとしていた。
「今日こそ、今日こそ…!この微妙な関係を終わらせてやるぜ!」
そう、ポップは、片思いの女性についに正式に告白することに決めたのだっだ。
正式にというのは、すでに彼女は自分の気持ちを知っているからである。
しかし、返事は依然保留中。このままでは何年経っても返事をもらえる気配がない。
我慢の限界を迎えたポップは、ついに自ら動くことに決めたのだ。

「大丈夫だ、大丈夫だ…大丈夫に決まってる…」
バラの花束を手にブツブツ言いながら廊下を歩き、彼女の部屋の前に辿り着いたポップ。
ノックをして、ぎこちない声で自分だと告げると、入っていいと返事が返ってきた。
(覚悟を決めろ!行けポップ!勢いで押すんだ!)
ポップは一度深呼吸をして、目を思い切り瞑って覚悟を決め、そのままドアを勢い良く開けた。
「マアム!お前が好きだ!俺と付き合ってくれ!」
しかし、向こうからは一言の言葉すら返ってこない。
まずかったか?いや。さすがにおかしいと思い、おそるおそる目を開ける。

そこは戦場だった。

>>56(出展書き忘れちまった、すまねえ。それであってる。)
「あれ?」
まずは自分の目を疑った。
そこにいたのは愛する女性ではなく、期待に顔を輝かせたオッサン達。
慌てて差し出していたバラの花束を後ろに隠す。
あたりには傷付いた兵士達が転がっており、どうにも修羅場の雰囲気だ。
「な、何だここは?何が起こったんだ??」
ポップはキョドキョドと辺りを見回しながら、誰にともなく訊ねる。

59 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 00:11:00 O
「フェンドスーッ!」
仲間の名を呼びながら、鬱蒼とした森を歩く騎士が一人。
「グリッソム様ーッ!」
もう、どれだけ歩いただろう?
声だけが、深い森に虚しく響きわたる。
「はぁ……」
最悪だ。こんな森の中ではぐれるなんて……。
ランカムは深く溜息をつき、近くの木に背を預けた。
その時、辺りが光に包まれた。
「な、なんだ…?」

【名前】聖印騎士ランカム
【性別】男
【種族】人間
【年齢】青年
【容姿】全身鎧。赤い前掛けを着用。
【特技】なし
【持ち物・装備】
レイピア…聖印騎士団の標準装備。細身の刺突剣。
キュアルート(3個)…体力を回復させる薬草の根。
【キャラ紹介】
「ベイグラントストーリー」に登場。
世界観は中世風ファンタジーだが、魔法文化は過去に滅び、
一般人にとっては、御伽話の世界の物となっている。
一部の権力機関の上層のみ、失われた“魔”を操る術を所有・隠匿している。

「聖印騎士団クリムゾンブレイド」…法王庁直属の精鋭騎士団。
指揮官らは“魔”に精通しているが、下役はその存在を知らされていない。
その為、魔都探索行では魔物との遭遇に混乱。大きな被害を出している。
ランカムは作中、森で仲間達とはぐれた所を召喚された。

60 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 00:36:52 O
【名前】 上条当麻
【性別】 男
【種族】 人間
【年齢】 高校一年生
【容姿】 黒のツンツンヘアーの少年
【特技】 料理
【持ち物・装備】男子校生の着るTシャツとズボン、携帯電話、財布
【キャラ紹介】
゙超能力開発" をカリキュラムに組み込んだ教育機関「学園都市」の学生寮に住む少年。
能力判定では無能力者(レベル0)として認定されているが、その右手には
あらゆる魔術、超能力問わず、あらゆる超常現象、『神様のシステム』でさえ打ち消す『幻想殺し』(イマジンブレイカー)が宿る。
幻想殺しが自分にやってくる運気の力すら打ち消すのか、とにかく災難に巻き込まれやすい
不幸体質であるのに加え、困っている人を放っておけないという行動原理のおかげで、
彼に降り懸かる不幸は、偶然でなく必然の域にまで達している。

61 名前: ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 01:41:24 0
>58
老魔術師は言った。随分慌てているようである。
「今は時間がありません。
 簡潔に言えば、われわれは魔王に立ち向かうため、異世界の勇者の助力を得ようと、召喚魔法の儀式を行っていたのです。
 ―――ですが、この城も長くはもたないでしょう」
老人が話している間にも、建物は小刻みに揺れ、爆発音や悲鳴が聞こえてくる。
魔術師達も応戦しているが、戦況は芳しくない。
襲撃者によって破壊された扉の近くには、土煙が立ち込めている。
ついに喉元まで喰いつかれた感がある。敵はすぐそこに迫っている。

「今更そんな貧弱そうな奴を呼んでも無駄だろー」
棒読みの、間延びした少女の声が聞こえた。
煙の向こうから現われた少女は、兎の耳を模った帽子を被っている。
「これだけ大規模な儀式をやって、その石の力まで使って、こんなのしか召喚できないとは。
 まあどのみち、お前達はもう駄目だろー」
少女はポップを見遣って、馬鹿にしたように吐き捨てた。
そして、もう用は無いとばかりに、ポップと魔術師達に光線を放った。
この魔法はリブレイドという。
ちゃんと光速で飛ぶ破壊光線を無数に放つこの魔法攻撃を避けるのは至難である。

62 名前: ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 02:32:47 0
ウサコが今まさに破壊光線を撃とうとしたそのとき、石のような物体が放つ輝きが更に強まった。
幾つもの人影が光の向こうからやってくるのが、ウサコには見えた。
召喚されたのは、彼だけではなかったらしい。
「む、やはりその石の力は凄まじい。早いとこ始末せねば」


【名前】ウサコ
【性別】女
【種族】侵魔
【年齢】?
【容姿】ショートカットのボーイッシュな美少女。ウサギの耳を模った黒い帽子を被っている。
【特技】冥/天属性の魔法、空間転移
【持ち物・装備】服、帽子
【キャラ紹介】
ナイトウィザードシナリオ集『オーバーナイト』収録のシナリオ『石コロの勇者』に出てくる異次元魔王。
フザけた名前だが、その元ネタはソロモンの72の悪魔の1人『ウァサゴ』で、ウサギは一切関係ない。
陰謀家気取りで、台詞は概ね棒読み。
wikipediaのナイトウィザード関連の項目には『ウサミミを模った帽子を被った少女』と書いてあるが、イラストの彼女はどう見てもウサミミではない。
時間と空間を操る能力を持つとされ、過去に戻って歴史を変えようとしたこともあった。
主に空間転移で距離をとりながらリブレイド(破壊光線)やヴォーテックス(闇の魔力の弾)といった魔法で攻撃する戦法をとる。
こいつこそが、世を騒がせる魔王だと思われているが……

63 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 14:28:36 O
「うだーっ!!ちくしょうなんなんだよ今日は!!不幸過ぎますよーっ!!?」

「待ちやがれコラァ!!」
「テメェ、絶対ぶっ殺してやっからな!!」

「うるせぇIQ80(サル並)野郎!そこまで言われて待つ奴なんていねぇよ!!」

『学園都市』。東京西部に存在する人口230万人程の巨大都市、その裏路地を、上条当麻は全力疾走していた。
彼の背後20m程の距離には数人の、どう見ても善良な学生ではない方々。
彼等は、それぞれ手にナイフや鉄パイプの様な物を持って、怒りに顔を歪めながら上条を追走している。

そう、端的に言えば、上条当麻は追われているのだった。

事の始まりは今から30分程前。
帰宅した学生寮で居候中の腹ぺこシスターに冷蔵庫の中身を侵略された事を確認した上条が、
頭を抱えつつ近くのコンビニへ食材補充に行くと、制服を来た少女が武装無能力者集団(スキルアウト)に囲まれていた事から始まる。
少女を助ける為に、上条はスキルアウトを挑発して囮となった。そこまでは、上条当麻にとってはまあよくある事だ。
しかし、今回相手にしたスキルアウトは何故か無駄に高い根性を発揮し、
いつもなら振り切っているであろう距離を走っても未だ追走を諦めない為、上条は今だに走り続けているのであった。

「ったく、その根性をもっと別のベクトルに向けろっつーの!」
上条は走りながら後ろ振り返り、付いて来ている数人のスキルアウトを確認して悪態を付く。

――――ところで、上条当麻は『不幸』な少年である。
仮にこの時、彼が振り向かなければ、あるいはもう少しだけ足元に注意していれば、それに気付けたのだろう。
コンクリートで作られた地面、そこに現れた妙な魔法陣。その中央に踏み込んだ上条当麻は、
硝子の砕ける様な音とともに、落とし穴にでも落ちたかの様に、

学園都市から、消えた。

64 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 17:07:57 O
「こ、ここは…?」
気づいた時には、辺りの森は消え失せ、ランカムは石畳の上に立ち尽くしていた。
眼前には奇妙な帽子の女、周囲には数人の、負傷した衛兵達。
内装の造りから、何処かの城の一室だという事だけは理解できる。
「これも、邪教徒どもの“幻覚”なのか…?」
理解を越えた状況に警戒し、腰に吊されたレイピアの柄に手をかける。
自然、背筋に緊張が走る。まやかしとは違う。
目の前の女から発せられる気配…幻覚などではない、本物の殺気だ。
「わ、私は聖印騎士ランカム! お前は何者だッ!
 邪教の者なら、容赦はせんぞッ!」
沸き上がる怖れを抑えつけ、柄に手をかけたまま少女に問いかける。
落ち着いてみれば、隣の若い男も周囲の者とは異質な服装をしている。
彼もまた、私と同じく状況を把握しかねているようだ。
背後の魔法陣の石が、光を増した気がした。

65 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 18:08:27 0
激しい雷雲の中で俺はとある男と拳を交えていた。そう、勇猛で相当な強者であるアルティスという男と。
戦いはすでにかなり前から初まっており、互いに消耗している。
「ほう、この私にこうまで戦えるようになっているとは…強くなったなフェル」
「黙れ!俺は貴様のそういう見下した態度が前々から気に喰わなかったんだ!
 その俺の全てを見透かしたような気になっているその目もだ!!」
そうだ、俺は子供の頃からこいつが嫌いだった。まるで俺の全てを理解しているような
顔をするこの男が!!今でも昔はこの男の弟だったと思うと反吐が出そうになる。
だから俺はこの男の下を去った。そして俺はひたすら技を磨き、我が王と出会いこの男の敵国の将へとなった。
そうだ。どこかで俺はこの日を待ち望んでいた。いまこそ俺の足元にこいつを跪かせてやる!!
「……私は別にお前のことを見下しているつもりなどない。誤解だ。」
「フンッ、問答無用だ!いくぞッ!!」
俺は限界以上の覇気を出す。そして我が兄であるアルティスも俺の本気を知ってか体全体から紅い覇気が溢れる。
一瞬の沈黙、それを破ったのは俺!地を蹴り一機に距離をつめる!
「でええりゃあッ!!うおおおおっ」
そして打つ、打つ!打つ!!打つ打つ打つ打つ!!!!
ひたすらに凄まじい攻撃を放ち続ける!素早くそれでいて重い拳。
振るう度にまるで大地が轟くかのような衝撃!
そう、これが俺の拳!龍覇轟撃拳だ!!勝てるものは我が王以外いるはずもない!!
「っぐう!!ぐはっ!!」
アルティスが膝をつく。そうだ、これぞ俺の欲していた光景だ!
「フッ……本当に強くなったな…この私よりも……私の負けだ。認めよう。
 …さあ、負けたものには死あるのみ…止めをさすがいい。」
「言われずともそのつもりだ。さらばだ我が兄アルティスよ!!」
そう言い覇気を溜めた右腕をアルティスに振り下ろそうとした時。
凄まじい眩しい光が目を眩ませる!!地に立ってないような不思議な感覚が俺を駆け巡る。




そして、俺の眼を眩ませていた光りが弱くなっていくのと
同時に先ほどいた雷雲の草原ではない、どこかの城の一室が広がっていく。
「……なに?なぜ俺はここに……」
俺の目の前には知らない人間ばかり。それも武器などというものを持つ
卑怯者ばかりが目に入ってくる。
「ふざけるな!ここはどこだ!おいそこの女!!なぜ俺はここにいる答えろ!
 それとも貴様が俺をこんなところへ遣したのか!?」
とりあえず頭に動物の耳をつけているふざけた女に叫ぶ!

66 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 22:54:45 0
【名前】 ムーミン大佐
【性別】 雄
【種族】 トロル
【年齢】 28
【容姿】 二足歩行のカバ。
【特技】 妖精召喚
【持ち物・装備】シルクハット、パイプタバコ、ステッキ
【キャラ紹介】
ムーミンパパの若かりし姿。
戦闘妖精部隊【オーケストラ】の隊長。
シルクハットは母船オーケストラ号であり、さまざまな戦闘妖精を収めている。
必要に応じてシルクハットから部下の能力を召喚し使用。
また、自身も妖力を用いての戦闘をする。

67 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/16(水) 22:54:51 0
>64
戦闘の混乱の中、次々に召喚される異界の者達。
ランカムが名乗りを上げながら気勢を上げる。
その足元に転がる拳大の黒い物体。
直後、爆発が起こった。
「邪教?傲慢な言葉だ。」
広がる爆炎と共にウサコの横に現れたのは二足歩行のカバだった。
いや、カバではなく、妖精トロル。
シルクハットにパイプタバコ、そしてステッキを片手に佇むムーミン大佐。

>65
「応えてやるよ。
お前さんをここに連れてきたのは後ろにいる貧相なじい様さ。
この世界は今戦争中でね。
助っ人として手当たり次第に強い奴を呼び寄せているのさ。」
攻撃したランカムには目もくれずにムーミン大佐はフェルの疑問に答える。
ふーと煙を吐き出しながら更に続ける。
「私も違う場所で同じように呼び出されたわけだがね、連中の頭はお花畑だったようだ。
呼び寄せた者は弱きを助ける正義の味方か、無条件に従う奴隷程度にに思っていたようでね。
交渉の結果、私はこちら側についた、というわけだ。」
飛び交う攻撃魔法を最小限の動きだけで躱しながらにやりと笑い一歩踏み出す。
まるでフェルの醸し出す闘気を味わうように。
「さて、私がこうして話しているのは・・・見たところ、君は『こちら側』のように思えてね。
こちらに来るかね?それとも・・・私と戦うかね?」
妖気を迸らせながら更に一歩踏み込んだ。


68 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/17(木) 00:26:29 0
>64
「お逃げくだされ、魔術師殿……その者は……ぐはっ!」
重症を負いつつも何かを伝えようとした兵士の背に、止めの闇の魔力弾―――ヴォーテックスが叩き込まれた。
そして、ヴォーテックスを放ったウサコは眼を細め、ランカムの問いに答えた。
「問うならば答えよう。私はウサコ。26の軍を率いる魔王だろー」
ウサコは自己紹介した。相も変わらず、間の抜けた、棒読みの口調で、「だろー」という変な語尾まで付けて。
だが、魔王という単語を聞いた魔術師達、および兵士は狼狽した。
「ま、魔王だと……」
「魔王自らが攻め込んでくるとは、なんという……」
まさか、自分達の宿敵たる魔王が、自らこの場に攻めてくるとは、思いもしなかったのだろう。
兵士達および魔術師達の絶望の表情が、より色濃くなった。
負傷兵や歳若い未熟な魔術師などは、もう駄目だとばかりに逃げ出す算段をしている。

>67
「おっと、そいつらは大したことなくても、その石のようなものには気を付けた方がいいだろー。
 それのパワーは計り知れないだろー」
ウサコはムーミンパパに警戒を促した。
ウサコの注意は、新たに召喚された者達よりも、むしろ召喚魔法の儀式の触媒となった、あの石のような物体に向いている。
そして、彼女は可能ならば、この石のような物体を極力傷付けずに、自らのものにしようと目論んでいる。

>65
攻撃の手を止め、魔王ウサコは語りだした。
「そいつの言うとおり、お前を呼んだのはそいつらだろー。
 そいつらは、自分達だけではこの魔王ウサコとは戦えぬというから、お前達みたいなのを異世界から召喚しているのだ。
 自分達の力で苦難を何とかしようという気概も無いとは、なんという腑抜けだろー」
ウサコは眼を細めて微笑み、更に言葉を続ける。
ムーミンパパの問いに、更に念を押すような言葉だった。
「お前は強さこそが唯一の真理と考えているだろー。そんな顔をしている。
 お前の後ろに居る連中は、異世界の戦士に頼らなければロクに戦争もできない弱者だろー。
 お前にとって、そいつらに価値はあるのか?」

69 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/17(木) 01:10:25 0
>>61
「んなああぁっ?」
ポップは鼻水を垂らしながら絶叫する。
異世界だとか召喚だとか、いきなり訳が分からない。荒唐無稽すぎる。
しかし、その言葉を信じる信じないの選択の自由は残されていないようだ。
どのみちここは攻め込まれており、人が殺されており、修羅場である。

>「今更そんな貧弱そうな奴を呼んでも無駄だろー」
>「これだけ大規模な儀式をやって、その石の力まで使って、こんなのしか召喚できないとは。
> まあどのみち、お前達はもう駄目だろー」
そんな中、ウサミミをつけた少女がポップを馬鹿にしたように言う。
「あんだとてめぇっ!」
コケにされ、条件反射のように威勢を張る。
そのまま何か言い返そうとしたが、すぐに嫌な勘が働き、ほぼ無意識のうちにポップは呪文を唱えていた。
「重力呪文(ベタン)!」
それは敵の放ったリプレイドと同時だった。
ポップ達の正面に重力フィールドが発生し、直後に放たれた無数の破壊光線の軌道を下に逸らす。
「あ、危ねえ…!」
最悪の直感のお陰で助かった。この速さと数、撃たれてからでは回避も相殺もまるで間に合わなかっただろう。
滝のような冷や汗をかきながら、ポップはウサコを睨みつける。
この敵は危険すぎる。

>>68
そしてどうやら、自分の他にも召喚されたらしい混乱した男たちがいるようだ。
爆発とともに、今度はモンスターのような風貌の新手が現れる。
その話を聞くに、彼も自分たちと同じように召喚されたが、人間でなく魔物の側についたらしい。
さらに、ポップが睨みつけている少女は自らを魔王と名乗った。

>「お前は強さこそが唯一の真理と考えているだろー。そんな顔をしている。
> お前の後ろに居る連中は、異世界の戦士に頼らなければロクに戦争もできない弱者だろー。
> お前にとって、そいつらに価値はあるのか?」
「うるせえっ!」
ポップは召喚されたらしい男とウサコ達の会話に割り込み怒鳴る。
「てめえら、このカバ男とウサギ女!さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって!
 こいつらだって、自分たちの世界を守りてえけど自分の力じゃ足りねえから俺たちを呼んだんだろうが!
 なんだか分かんねえけどな、こいつらはこいつらなりに一生懸命てめえらに対抗しようとしてんだよ!
 こいつらが価値もねえ弱者かどうかは俺たちを倒してから判断しやがれってんだ!」
怒りに任せて喋るうちに、ポップは自分のやるべき事を自分の言葉に気付かされた気がした。
魔王の軍勢によって人間たちが虐げられている。ならば、異世界も何も関係ない。
自分は勇者のパーティの一員だったのだから。

「おい、切れ目のあんちゃん!こんな奴らのいう事に耳を貸すな!
俺たち皆で力を合わせて、こんな連中バシっとやっつけてやろうぜ!」
幸か不幸か、目の前にいるのは魔王。いきなりラスボスだ。
こいつさえ倒せばすぐに終わりのはずだとポップは踏んでいた。

70 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/17(木) 22:37:12 0
>>67
「応えてやるよ。お前さんをここに連れてきたのは後ろにいる貧相なじい様さ。
この世界は今戦争中でね。助っ人として手当たり次第に強い奴を呼び寄せているのさ。」
俺の叫びに反応したのは女ではなく物の怪の類だった。
俺をここに呼び出したのは後ろのジジイだと!?
俺は振り向くとそこには神官のような格好をした慌てふためくジジイの姿がある。
「余計な真似をしてくれたな糞ジジイ!!」
俺の怒号の声にビクつくジジイ、俺はこんなカスのような奴に呼ばれたというのか!?
沸々と怒りが沸き上がってくるのと比例し俺の覇気も無意識のうちに高まってくる。
「私も違う場所で同じように呼び出されたわけだがね、連中の頭はお花畑だったようだ。
 呼び寄せた者は弱きを助ける正義の味方か、無条件に従う奴隷程度にに思っていたようでね。
 交渉の結果、私はこちら側についた、というわけだ。」
「なに?ということは貴様も元が違う世界が住人ということか?
 フンッ、道理で貴様は人間とは違うわけだ。」
すると目の前に物の怪はニヤリと口元をゆがめ飛び交う魔術を避けながら
こちらに近づいてくる。身のこなしから俺の後ろのカスや武器を持ってる卑怯者どもとはデキが違うわけだ。
後ろのカスへの怒りはだんだんとこの眼前の違う世界の生物に対する興味に変わっていく。
どんな技を使う?俺の拳は通用するのか?こいつは強いのか?
試してみたい。俺の拳は異界の闘士とも渡り合えるものなのか…!!

「さて、私がこうして話しているのは・・・見たところ、君は『こちら側』のように思えてね。
 こちらに来るかね?それとも・・・私と戦うかね?」
戦いたい!!俺は拳士だ!ただひたすら強さを求め拳を振るってきた!
修羅へなるために師すらも打ち倒し!一切の情を捨ててきた!戦いこそが俺の血を熱くさせる!
しかし、元の世界に戻りたい気持ちもある。こいつと戦うということは結果的に後ろのカスに力を貸すということだ。
俺が望んでなくてもこいつ等と敵対する限りはな。ならばこいつ等と手を組み元の世界に戻る方法を探すほうが…
そうだ、少なくとも俺を呼び出したという後ろのカスに任せるよりもこいつらに任せたほうが元の世界に戻れる確率は高い!
「そいつの言うとおり、お前を呼んだのはそいつらだろー。
 そいつらは、自分達だけではこの魔王ウサコとは戦えぬというから、お前達みたいなのを異世界から召喚しているのだ。
 自分達の力で苦難を何とかしようという気概も無いとは、なんという腑抜けだろー」
どうするべきか迷っているとき、動物の耳の女が喋り始める。
その言葉は俺の考えとすべて同じと言ってよかった…動物の耳の女は更に続ける。
「お前は強さこそが唯一の真理と考えているだろー。そんな顔をしている。
 お前の後ろに居る連中は、異世界の戦士に頼らなければロクに戦争もできない弱者だろー。
 お前にとって、そいつらに価値はあるのか?」
そう言われ俺は後ろを…辺りを見回す。
この状況にどうすればいいか錯乱している者達……あまつさえ武器を放り出し逃げ支度をする新兵。
「確かにな…守る価値など少しもない。」

その時、俺と同じように異界から召喚された男が怒声を浴びせる。
「てめえら、このカバ男とウサギ女!さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって!
 こいつらだって、自分たちの世界を守りてえけど自分の力じゃ足りねえから俺たちを呼んだんだろうが!
 なんだか分かんねえけどな、こいつらはこいつらなりに一生懸命てめえらに対抗しようとしてんだよ!
 こいつらが価値もねえ弱者かどうかは俺たちを倒してから判断しやがれってんだ!」
俺の心は正直どちらでもよくなっていた、どのみち俺は後ろにいるカスのような人間は守らん。
いや、だれも守らん!自らで自らを守れないような弱者は滅びるがいい!!
「おい、切れ目のあんちゃん!こんな奴らのいう事に耳を貸すな!
俺たち皆で力を合わせて、こんな連中バシっとやっつけてやろうぜ!」
そろそろ話に嫌気が差してきた俺はコインを取り出し上へと投げる!
「分かった。もう面倒だ!このコインが表なら異界の物の怪…貴様の側につく
 コインが裏なら……黄色いバンダナをつけている人間…貴様の側につく!」
そして……コインが落ちる……コインは………裏!!
「いいだろう…おい黄色いバンダナの人間……俺は貴様の側につく!!」
そして溜めていた覇気を爆発させ一機に天上まで達するかという覇気が全身を覆う。
「おい、異界の物の怪…試してやる!!この俺の龍覇轟撃拳でなぁッ!!」
そして俺は眼前の異界の物の怪に一撃を浴びせようと加速した!!

71 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/17(木) 23:53:20 0
>68
ウサコに警告され、視線を石へと移す。
確かに見ただけでもそのパワーを感じることができる。
「ふうむ。しかしいくらパワーがあっても所詮は道具。使う者さえいなければ・・・。」
警告の言葉と石を見比べ、ウサコの意図を把握しながら応えた。
城の警備兵も魔術師もこの混乱の中であの石を召喚以外に使用できる事はないだろう。
異界から召喚された者達は論外といっても言い。
だが、異界から召喚された者たちが自分達を抑え、隙を作るとなる事だけに注意すればいいと結論付けた。

>70
双方からの勧誘に考えるのが面倒くさくなったのか、フェルがコインを取り出す。
その様子を見ながらムーミン大佐はくっく、と押し殺すように笑い声を漏らした。
そして結果は・・・裏。
フェルは決断し、ムーミン大佐に向かい一撃を浴びせようと加速する。
対するムーミン大佐は微動だにしない。
「判っていたよ、そうすることは。
君と私は同種だからね。血と闘争を好み、常人ならば躊躇する最後の一線でブレーキよりもアクセルを踏む種だ。
そうそう、異界の物の怪では呼びにくかろうに。自己紹介がまだだったね。私の名前はムーミン大佐!」
自己紹介を終えたところでムーミン大佐の顔面をフェルの拳が捉えた。

めり込む拳、舞い上がるパイプタバコ、そして吹き飛ぶムーミン大佐。
床に叩きつけられ石畳を砕き壁まで転がるが、土煙でその姿は見えない。
もっとも、土煙がなくともその姿は見えなかっただろうが・・・その身体は壁にめり込んではいないのだから。

「いいパンチだ!しかと味わった。しかしまだ若い!」
土煙の中、先ほど立っていた場所とさほど変わらぬ場所からぬっと手が出てくる。
そして落ちてくるパイプタバコを受け止め、そこでようやく全身が露になった。
頬にくっきりと拳の跡が残り、全身に打ち身・擦り傷がある。
パイプタバコを咥えようとし、一旦動作を止め、口の中の血を吐き出した。
確かにフェルの拳をまともに受け吹き飛んだ証拠だ。にも拘らずムーミン大佐はここに立っている。

「私の部下に悪戯好きな者がいてね。紹介しよう。ジャック・オ・ランタンだ。仲良くしてやってくれたまえ。」
ステッキで示しながら言葉を綴る。
その示されたフェルの足元には、ランカムの足元で爆発した物と同じ黒い塊がいくつも転がっていた。
良く見るとそれは黒い南瓜。「ケケケケ」という耳障りな笑い声と共に一斉に爆発。フェルを包み込んだ。

「この程度でどうこうなるとは思っていないがね、私も仕事がある。」
言葉通り、これでフェルがどうなると思ってはいなかった。
ランカムに使った時のように、完全なる不意打ちではない。
覇気を纏ったフェルを見てそれは判っている。ただ、数瞬の足止めにさえなればいいのだ。

>69
そうしてポップへと向きかえる。
「幼いな。善悪で語るその単純さがある意味羨ましい。だが戦場には千の正義という名の狂気だけがあるのだよ?」
そう言うや否や、爆発で吹き飛んできた兵士の首根っこを掴む。
「ほら、君の守るべき人だ。」
「う・・・うあわああ!助けてくれええ!」
そのままポップへと投げつけた。
と同時に、ムーミン大佐も投げられた兵士の後を追うように加速する。
「先程の魔法は素晴らしかった。が、随分と効果範囲が広いようじゃないか。
優秀で優しい君にはこんな戦い方が有効ではないかな?」
悲鳴を上げながらポップに投げつけられた兵士の背後にぴったりくっつくようにムーミン大佐は間合いを詰めるのだ。

そして兵士越しにポップへと手刀を繰り出す。
間近に迫った兵士の腹を突き破り現れた手刀がポップへと迫る。

72 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/01/18(金) 01:59:17 O
【名前】東條ルミナ
【性別】女
【種族】人間
【年齢】24
【容姿】髪:水色のストレートロング、瞳:青、服装:ジーパン、Tシャツ、革ジャン、
     その他:巨乳、右目に火傷の痕
【特技】推理、喧嘩、魔術
【持ち物・装備】煙草、ライター、魔銃、特製ガントレット
【キャラ紹介】
異世界の都市「東京」にて探偵業を営む魔術師
探偵としてはそこそこの腕前なのだが、気性の荒さから「暴力探偵」「蒼髪鬼」と恐れられている。
実は、某スケベ仙人に憧れ、今でも「○め○め波」の会得を目標としている。

73 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/18(金) 02:19:57 O
「うぁっ!!」
唐突な爆発。紅蓮の炎が身を灼く。
鎧を身につけていた事が幸いし致命傷は避けたが、爆発の衝撃が身体を蝕む。
「新手…モンスター!?」
ランカムは霞む目で、ムーミン大佐の姿を認める。
言葉を話し、正装に身を包んだ姿は、
ランカムが魔都で見てきた“魔”の者達とはまた違う。
更に、原理はわからないが先程の爆発を操る力…。
知能の高さは、獣のそれではない。
「戦争…? 異世界だって…?」
にわかには信じ難い言葉。だが一つ、わかる事がある。
…何もわからぬまま、死ぬ訳にはいかない。
震える手で袋から取り出した回復薬・キュアルートを一気にあおる。

明瞭になった視界でウサコを油断無く見据える。
「“魔”の者か。…ならば、その魔を浄化するのは、聖印騎士団の役目ッ!」
毅然と言い放つと、腰のレイピアを抜き払う。
だが、言葉とは裏腹に、表情に余裕は無い。
コイン・トスでこちらについた男…相当に腕が立つようだが、
相手もまだ全ての力を見せてはいないようだ。
正面から戦っては、万に一つも勝ち目が無い。

ランカムが手を出せずにいる横で、ポップがウサコの魔法を弾き、見栄を切る。
最初は頼りない男と見えたが、この状況に折れない、強い意志がある。
「少年に遅れを取っては、騎士の名折れだな」
ランカムはポップの横顔に、名高い騎士達にも劣らない凛々しさを見た気がした。

と、フェルに向けられた爆発が不意に室内を赤く染める。
「来るかッ!」
ムーミン大佐は流れるような動作で、ポップに迫る。
「このまま、好きにさせるかッ!」
横合いから突き出したレイピアが、ポップに迫るムーミン大佐の手刀を捉える。

74 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/18(金) 03:06:51 0
>69>70>73
「なるほど、挑むというのかー。この魔王ウサコに!
 そこの爺どもと違い、腰抜けでないところだけは褒めてやろう」
ウサコは今度は右手を前にかざし、バレーボールほどの黒い球体を作り出した。
先ほども見せた、重力の弾丸を発射する攻撃魔法『ヴォーテックス』だ。
「だが、魔王に挑む事が正気の沙汰でないことを、すぐに身をもって知ることになるだろー。
 私の『ヴォーテックス』で、まとめて消し去ってやろう」
目の前でこれを喰らった兵士の凄惨な有様を見るに、これが直撃したら相当なダメージになることは想像に難くない。

だが本来、ヴォーテックスそのものはそれほど強力な攻撃魔法ではない。
威力も命中精度も攻撃範囲もリブレイドには及ばず、間違っても集団をまとめて吹き飛ばせるような魔法ではない。
だが、魔王ウサコの超絶魔力によって、本来あるべき威力を超えた、まったく別の魔法と化している。
「今のはメラゾーマではない。メラだ」という、某大魔王の言葉が思い起こされる。

だが、本来ならば滅多なことでは防がれない筈のリブレイドを防いだポップの魔法と、フェルの徒手空拳の強烈な一撃を目の当たりにしたウサコは、驕った考えを改めている。
いくら自分の魔力が強大であっても、普通に『ヴォーテックス』を撃つだけでは、この二人には通用すまいと。
「お前たちの力は第八世界のウィザードどもに勝るとも劣らないだろー。
 だが、これならどうだろー」
ウサコの右手から、まだ発射されていない目の前の重力弾に向けて、力のオーラを流し込んでいる。
オーラに包まれた重力弾は、みるみるうちにその大きさを増してゆく。
そう、自らの生命力をも魔法の破壊力につぎ込んでいるのだ。
「こいつを受ければ跡も残らないだろー。たとえ避けても、後ろの爺どもが粉々になるだけだろー。
 そこの龍使い(ナイトウィザードにおける気を操る格闘家達のこと)はともかく、魔術師の小僧は受けざるをえないだろー。あっはっは」
ウサコの高笑いと共に、まとめて敵を薙ぎ払うようなサイズの巨大化な黒い球体が放たれた。
先ほど兵士を挽肉にした重力弾よりも、遥かに強力な魔法攻撃である。

75 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sageすまねえ、長くなったから2レスに分けるぜ] 投稿日:2008/01/18(金) 15:39:54 0
>>70
フェルはどちらに付くかをコインで決めた。
結果的にはこちらの味方になったようだが、微妙に複雑な心境のポップだった。
同じ確率で敵になっていたかもしれないのだ。
「なんか釈然としねえな〜。ま、いっか」
どうせこの一戦限りの共闘だし、敵なのか味方なのか良く分からない存在には慣れている。
ポップの仲間には元々は敵だった者も多いのだ。

そして戦いが始まる。
まずはフェルの拳がムーミン大佐を捉え、吹き飛ばした。
「おお、やるじゃねえか!」
歓声を上げるポップ。捻くれた態度は伊達ではないらしい。
しかし、ムーミン大佐は何事もなかったかのように元の場所に立っていた。
そしてフェルの足元に転がるカボチャ状の爆弾。直後、爆風が包む。
「あんちゃん!」
駆け寄ろうとしたポップを、彼に向けられた殺気が止めた。
ムーミン大佐だ。

>>71
>「幼いな。善悪で語るその単純さがある意味羨ましい。だが戦場には千の正義という名の狂気だけがあるのだよ?」
「うるせぇ!」
ポップは一喝した。
「平和に暮らしてる人達と、それを脅かす奴らがいるんなら、てめえらが悪いに決まってんだろが!
 狂気が正義なんて馬鹿げた話を受け入れてたまるかよ!」
ムーミン大佐の言うとおり、ポップの正義は幼かった。
それは彼自身の年齢的な幼さはもちろんだが、
彼の経験してきた戦場――正義を自覚する防衛者と悪を自覚する侵略者との戦い――に起因するところが大きい。
しかし、正義とは得てして幼ければ幼い程に真に近く、強く、そして揺るぎ無い。
だがそれと共に、同じだけ真に揺るぎ無い弱さも内包していた。
ポップは兵士を投げつけられる事で、ただそれだけで、
ムーミン大佐の思惑通りに行動選択の自由を完全に失ってしまったのだから。

>>73
間合いを詰め、兵士の体ごしに手刀を繰り出される。
ポップには防ぐ手段も回避する手段も残されていなかった。
(やべええぇっ!)
しかし、その攻撃はギリギリのところで止まった。ランカムが防いでくれたのだ。
「サ、サンキュ!助かったぜ!」
だがまだ助かってはいなかった。ポップはウサコが莫大なエネルギーをヴォーテックスに溜め込んでいることに気付く。
あの大きさでは自分だけが避けるわけにはいかない。ポップは歯噛みする。

76 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sageすまねえ、長くなったから2レスに分けるぜ] 投稿日:2008/01/18(金) 15:41:11 0
>>74
「レイピアの兄ちゃん!ちょっとこいつを足止めしておいてくれ!」
ポップはムーミン大佐をランカスに任せ、ウサコの前に立ち塞がった。
(ちぃ、どうすっかな)
見る見るうちに大きくなっていく、凄まじいエネルギーの塊。あれを迎撃できる呪文が果たしてあるのだろうか。

最初に思い浮かんだのは、絶対無敵の究極攻撃呪文、極大消滅呪文(メドローア)だ。
炎と氷の正反対のエネルギーを等しく混じらせる事で、万物を無条件に消滅させる無のエネルギーが生まれる呪文。
しかし、ポップはこれを本能的に候補から除外した。
自分でも何故かは分からないが、この本能の選択が正しかったことは後ほど知る事になる。
極大閃熱呪文(ベギラゴン)や極大爆裂呪文(イオナズン)ならどうか?
いや、あのエネルギーの前では全くお話にならないだろう。
先ほど使った重力呪文(ベタン)も、あの規模の魔法にはまるで効果はあるまい。
そうなると、ここは五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)を使うしかないかもしれない。
五指から同時に五発の最大火炎呪文(メラゾーマ)を放つこの技なら、破壊力はイオナズンをゆうに超える。
禁呪まがいのため術者の生命を削る危険はあるが、今はそんな事も言っていられない。
(いや、やっぱり駄目だ。俺のメラゾーマなんかあれの前じゃメラも同然、5発あっても大して効きやしねえ)
あれを相殺できる威力の呪文はやはり存在しないのだろうか。人間には不可能なのだろうか?
しかし、そこでポップは思い浮かぶ。
(俺のメラゾーマがメラも同然…そうだ、あれなら!)

あれなら、間違いなく押し負けることはない。しかし、使えるのかどうかが問題だ。
五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)も充分な離れ業だったが、これはそれすら遥かに超える。
そもそも『奴』だから可能だったのであり、人間に出せる出力の魔法ではないからだ。
だが、可能不可能を気にしている段ではない。やるしかないのだ。

高笑いとともに、ウサコがヴォーテックスを放った。
ポップは魔力を一気に爆発させるように高める。
(もっとだ!足りねえ、もっともっと集中しろ!)
迫り来る重力弾。そのプレッシャーを感じながら、ポップは出せる限界の力を右手に集める。
出来るはずだ。死闘の中で何度も見て、急所に指を突っ込んで解体するまでに知り尽くしたあの技は!

「だらあぁーっ!」
ポップは右手の魔力を一気に解放した。そこに現れたのは、炎に包まれた大きな不死鳥。
「で、できた!よっしゃあ、いっけえぇーっ!」
ポップは重力弾に向けて不死鳥を放つ!
「カイザーフェニックス!」
彼の世界の大魔王の得意呪文が、この世界の魔王の得意呪文に戦いを挑む。

77 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/18(金) 20:04:02 0
>73>75
狙い違わずポップは反撃することも、防御することもできずにいた。
もはや回避することもできない必殺の間合い。
しかし、その攻撃は意外な形で防がれることとなる。
「これはこれは・・・驚いたね。」
ムーミン大佐は二つの意味を込めて簡単の言葉を吐いた。
一つは完全なる不意打ち攻撃を喰らって、もう回復してきたこと。
そして、もう一つは細い刀身のレイピアで手刀を防いだことだった。

兵士の腹を突き破り迫る手刀はレイピアで手首を貫かれ止っていた。
ランカムがムーミン大佐の手刀を串刺しにしている隙に、ポップがウサコへと立ちはだかる。
意外な横槍に小さく舌打ちすると、貫かれていたムーミン大佐の手刀が歪み、形を失っていく。

ここで考えてほしい。
ムーミン大佐の体型を。
柔らかな曲線を持つフォルム。
大きな頭部にずんぐりむっくりの三頭身。
そこから伸びる手足はあまりにも短い。
帽子を被ることはできても、頭頂部やお尻には決して手が届かないであろう。
そんな短いリーチで大の大人の兵士を突き破ってその向こうのポップに致命傷を与えるほどの長さがあるだろうか?
いいや、あるはずがない。
ならばこの伸びている手刀は何か?
それは妖気を纏って凶刃と化した物に他ならないのだ。
つまり、妖気さえ収めれば実態としての手刀は保たれなくなる。
「その判断力、そしてレイピアの扱い。驚嘆に値する。
敬意を表して・・・薄汚い花火だが受け取ってくれたまえ。」
兵士の背中から手を抜きつつ、ランカムに笑いかけ跳躍。
直後、兵士の体内に残されたジャック・オ・ランタンが爆発して兵士はランカムの目の前で四散するのだった。
爆発によるダメージというよりも、目くらましの意味が強い行動だった。

そしてムーミン大佐はというと、ウサコの援護にポップを追う、というわけではなかった。
着地した場所は部屋の中央に置かれた正八面体の石の上。
「やれやれ、これだから子供に過ぎた力は困るのだ。
ここが地下と言う事もわかっていないとはな。」
ウサコの超ヴォーテックスに対し、ポップがカイザーフェニックスを放ったのを見て呆れたように首を振った。

元々ウサコが超魔法を完成させるまでの前衛だ。
本来なら一人二人殺しておきたかったところだが、役割は十分果たしたと判断。
そして今、次なる仕事へと取り掛かる。
「煙界妖壁陣!」
パイプタバコを大きく吸い、煙を吐き出した。
それはただの煙ではない。
妖力を持ち、あらゆる衝撃から守る結界陣なのだ。

如何に広かろうが所詮は地下空間。
二つの超魔法がぶつかれば無事ではすまないだろう。
強大な余波から魔法陣の石を守るために結界を敷いたのだ。

78 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/18(金) 22:09:34 0
>>71
俺の息がすでに近くまでかかっているというのに目の前の異界の物の怪は
まだ余裕といった雰囲気で俺に自己紹介を始める…くだらん。
余裕を見せるものほど己を過信し死ぬ!俺はそのようなことはない!!
「ふん、呼びにくかろうが構わん!なぜなら貴様は俺のこの一撃が屠るからだッ!!
 名前など覚える間もなく滅ぼしてやるッ!!」
そして俺の拳は奴にめり込む。衝撃は体を伝わり吹き飛び床に叩きつけられる。
手応えはあった!俺のこの拳は完全にあの物の怪に直撃した!
おそらくもはや立てもしまい……フッ…いくら異界の者といってもこの程度…
「いいパンチだ!しかと味わった。しかしまだ若い!」
「なに!?」
そして先ほど奴がいたとこにまた奴はいた……莫迦なッ!!
確かに傷はある。まともに受けたのは分かる。しかし、なぜこの短時間で眼前にこいつは居る!?
「私の部下に悪戯好きな者がいてね。紹介しよう。ジャック・オ・ランタンだ。仲良くしてやってくれたまえ。」
そして奴はステッキを使い何かを綴るといくつもの黒い南瓜が俺の足元に転がっている。
「なんだこれは!?」
そう言った時だった。この黒い塊が俺を嘲笑ったあと次々と塊から光りが漏れ爆発したのは…
「ぬおおっ!!」
普通の人間なら致死量の爆発が俺を包む!!

>>71>>73-76
「ク…クククク……ハァーッハッハッハッハ!!
 面白い!こんな戦いがあるのならば異界というのも悪くはない!!」
無論俺は無傷といっていい状態だった。纏っている覇気は結構な量を
持っていかれたが特に目立った外傷はない。覇気とは防御膜の役目もする。
しかし、あの動物の女の術を喰らったらこんな量の覇気などたちまち消し飛ぶだろう。

だが、そんなことはどうでもいい。どうだったいい!
不死鳥もヴォーテックスも今は俺の興味をそそらない。
そう…久しぶりに俺に攻撃をあてたあの化け物…ムーミン大佐!!



79 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage テンプレだけでまだ参加してない人にキッカケ!] 投稿日:2008/01/18(金) 22:11:49 0
>>77
「煙界妖壁陣!」
ムーミン大佐は魔方陣の石を覆うように結界を張る。
どうやらあれは異界の者達を呼び寄せるための媒介のようなものか。
俺は逃げようとしていた兵士の首を掴む。
「な、何をするんだ!」
「決まってる。あの結界に貴様を投げ込んでどういう性質かを解き明かす!
 貴様のようなカスでも役に立てるんだ!俺に感謝するがいい!」
そして俺は兵士をほうり投げる。結界に触れた瞬間兵士がまるで消し炭のように黒ずみ倒れる。
「ほう。なるほど……そういう効果も持つわけか…余計面白くなってきた!!」
そして俺は限界の限界まで覇気を絞りだす!今まで以上の覇気をッ!!
「さあ………俺の覇気に応え真価を発揮しろ龍覇轟撃拳!!」
俺の体力と精神力を極限まで使い果たした覇気はもはや俺の周りだけにはとどまらず
地面を抉りはじめている……そしてその覇気を俺は片手に集めていく……
「ぐっ!うぅぉぉおおおおおッ!!」
覇気が集められている腕から血飛沫が上がる…そう。
今からやる技はまだ俺が完全には会得できていない技!
「でえりゃああああああッ!!」
そして一機に覇気が収縮し……腕から龍が現れる!!龍は天井を…そして床を削り取りながら暴れ周る!
「キシャアアアアアアッ!!!」
そう、これは幻などではない!覇気ではあるが確かに龍だ!
自らの意思すら持つ!覇気を練り龍を具現化させる……そう、これこそ奥義!轟覇龍槍撃!!!
「蝕む……たとえそれが神であろうと!!いくぞ!!!」
龍は結界に凄い勢いでぶつかっていく……龍のぶつかる力と結界の反発する力…
そのぶつかり合いの衝撃で脆くなっている天井に亀裂が入っていく……
「でえええええええぇぇぇぇぇいッ!!」

―――――轟 覇 龍 槍 撃 !!――――――

かたや不死鳥とヴォーテックス…そしてこの強大な結界と龍…
二つの凄まじい力のうねりに魔方陣の石の光りが最高潮に達した!




80 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/18(金) 22:33:59 O
レイピアを通して伝わった手刀の衝撃が、手首を軋ませる。
−−止めたッ!
相手がこちらを警戒していなかった故の、偶然に近かった。
だが状況は、ランカムが次の一手を考える暇を与えない。

貫いたムーミン大佐の手刀は、形を変えレイピアの戒めを逃れる。
「ダメージはないのか…」
現実離れした光景に、ひきつった苦笑を浮かべる。
「不死身の怪物なんて、おとぎ話の中だけにしてくれ…」

瞬間、爆散した兵士の血肉が降りかかる。死体を煙幕に利用したのだ。
ポップの危機を感じたランカムは、とっさに
ムーミン大佐とポップの間を塞ぐように転がる。
「……そちらが狙いかッ!」
顔を挙げた時、ムーミン大佐は、ポップ達とは逆方向に間合いを離していた。
その先には−−魔法陣。召喚の石は今再び、光を増している。

フェルの技が、ムーミン大佐の結界に食らいつく。
ウサコとポップの術の激突まで、あと数瞬も無い。
「う−−」
脚が、ズキリと痛んだ。爆散した兵士の鎧の欠片が刺さったらしい。
周囲の衛兵も、多くが負傷しているようだ。そして老魔術師−−。
「!!」
−−ここで老魔術師に死なれては、帰る手段もわからなくなる。
ランカムは老魔術師の服を掴み、もつれ込むように地に伏し、衝撃に備えた。

81 名前:東條ルミナ ◇Yw2bVAsGtAの代理投稿[sage] 投稿日:2008/01/19(土) 01:15:32 0
「あんたがこの石を守るってこたぁ…つまり、それだけの価値があるってことでいいんだよなぁ」
ムーミン大佐の背後、正確に言えば石に寄り掛かる形でその女はそこにいた。
「…でさ、悪りぃんだけど火貸してくれねぇかな」
ポケットから煙草を一本取り出し、ムーミン大佐に向ける。

この女の名前は東條ルミナ、「東京」と呼ばれる異世界の都市で探偵をやっている魔術師である。
もちろん、彼女もここにいる皆と同じく召喚された者の一人のようだ。
ただ、彼女は他の召喚者とは違い、好戦的な態度をとり、ウサコと目の前にいるムーミン大佐に戦いを挑む真似は
せずに、召喚儀式の媒体になったと思われる、この石を調べていた。

「…まぁ…確かにコレはそれだけの価値があるものだけどな」
他世界に干渉し、尚且つ、そこの住人を自分らの世界に連れてくる芸当をこなしたのは伊達ではなく。
この石の魔力量は凄まじく、底が見えない。そして、その膨大な魔力を制御するための魔術回路の量も凄まじい。
これさえあれば、どんな魔術だって容易に発動させることが可能であろう。
そう、世界を崩壊させるような禁忌すら…

「どうした?…喫煙家にしちゃ案外ケチだな」
なかなか火を貸してくれないので、ルミナは煙草を引っ込める。

82 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/19(土) 02:04:26 0
>76
火の鳥と重力弾は暫く拮抗した後、重力弾の魔力が火の鳥に呑まれた。
確かに威力は増強されているが、超絶魔力分は見掛け倒しだったらしい。
「なんだってー、私のヴォーテックスに打ち勝っただとー。
 くっ……ダークバリアー!」
自分の身に襲い掛かる火の鳥に、ウサコは闇の障壁を張って受け止めた。
ここまで来てもやはり台詞が棒読みなので、本当に慌てているかは察しかねる。
闇の障壁は火の鳥の凄まじい威力に悲鳴をあげており、ヒビが入っている。
辛うじて受け止めているという状態だ。
それでも完全に威力を打ち消した訳ではないようで、あちこちに火傷を負っている。ダメージは確かにある。

火の鳥を障壁で受け止めながら、ウサコは笑みを浮かべて言った。
「だが、お前たちは今の『ヴォーテックス』が私の本気だと思っている。そうだろー?」
この攻撃さえ凌げば自分の勝ちだと言わんばかりだ。半分やせ我慢だが。
「お前たちは知らないだろうが、今の『ヴォーテックス』よりも、さっきの『リブレイド』の方が、攻撃魔法としては強力だろー。
 故に、次の攻撃こそが全力全開だろー。今度こそ防げないだろー」
『リブレイド』は攻撃範囲も破壊力も命中精度も、『ヴォーテックス』を上回る攻撃魔法だ。
『ヴォーテックス』と同じく、『リブレイド』もウサコの超絶魔力によって強化されうる。
そして、ウサコの魔法の破壊力を増強するのは、自らの生命力だけではない。
彼女の『大いなる怒り』のエネルギーは、あらゆる攻撃の威力を爆発的に上昇させるのだ。
ただ、『リブレイド』は『ヴォーテックス』に比べて詠唱時間が長く、しかも至近距離の対象に撃てば自分まで巻き込まれる危険があることが欠点だ。

「たぁー」
ついに火の鳥を打ち払ってかき消して、ウサコはリブレイドの詠唱に入った。
呪文詠唱の間は完全に隙だらけだ。防壁を張ることも、相手の攻撃を避けることもできない。彼女は天地魔闘みたいな真似はできない。
だが、ウサコは聖印による苦痛耐性があり、重症を負っても問題なく動く。
どのような攻撃を喰らおうが、生きて立ってさえいれば、ウサコのリブレイドの詠唱は完了し、魔法は発動するのだ。
ウサコの口が呪文を紡ぐたびに、彼女の右手に全てのパワーが集中してゆく。言葉どおり、全力全開だ。
魔術師達は固唾を呑んで、戦いの様相を見守っている。

83 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/19(土) 02:07:58 O
>>82
ダークバリアwww
ダークバリアwww
ダークバリアwww
ダークバリアwww
ダークバリアwww
ダークバリアwww

84 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/19(土) 02:36:06 0
>>82
カイザーフェニックスは超ヴォーテックスに打ち勝ち、ウサコ本体にまで襲い掛かった。
さすがは大魔王の呪文である。
「へっ、悪党の技で格好悪りぃがよ、威力は折り紙つきでぇ!」
相殺分と障壁による防御で倒すまでには至らなかったが、多少のダメージは与えたようだ。

しかし、ウサコはまだ今以上の攻撃があることを示唆する。
今度はさっきの光線魔法を強化すると宣言したのだ。
いかに強力なカイザーフェニックスといえど、無数の光線全てをカバーすることはできない。

「そうかよ!でも今度はさっきみてえに溜めの時間はやんねえぜ!」
そう、さっきはムーミン大佐に翻弄されていたためにみすみすチャージの時間を許してしまったのだ。
今度はそうはいかない。
「こっちの方が早ええぜ!極大閃熱呪文(ベギラゴン)―っ!」
ポップは呪文を唱える。
しかし、それは発動しなかった。それどころか急激に力が抜けていく。
ついに膝をついてしまった。
「あ…あれ?」
ポップはすぐに気付く。カイザーフェニックスにより、人間の限界を超えた魔力を引き出した反動だ。
いくら大魔道士でも人間なのだ。大魔王の呪文出力をタダで引き出せるはずもない。
しばらくはまともに呪文は使えまい。少なくとも、この戦闘中は。
「や、やべぇ!誰か、あいつの呪文を阻止してくれぇっ!」
ポップは叫ぶ。

85 名前: ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/19(土) 03:34:05 0
>81
「気をつけてくだされ!そやつは邪悪なるトロル族です!」
老魔術師が叫んで警戒を促した。
元ネタの北欧神話ではともかくとして、トールキン系列の話やら一般のRPGやらでは、確かにトロル族はオーク族に並ぶ邪悪な人型生物の代表例みたいなものである。
トーベ=ヤンソンのムーミン・トロールが邪悪なトロル族のカテゴリに入っているかどうかは不明だ。

石のような物体は静かに沈黙を守っている。
だが、内側には、確かに魔王ウサコが求めつつも警戒するのも納得できるほどのエネルギーを秘めている。
これは、今立っている場所とは全く別の世界のエネルギーだ。
恐らく、この石のような物体もまた、異世界から来たことは間違いない。
ともすれば、この石は異世界とこの世界を繋ぐ絆だと言える。
それ故に、召喚魔法の儀式で重要な役割を果たしているのだろう。
また、寄りかかると、かすかに鼓動のようなものを感じる。

86 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage テンプレだけでまだ参加してない人にキッカケ!] 投稿日:2008/01/19(土) 15:58:06 0
「……なに!?この奥義でも駄目なのか!?」
勝てると思っていた…我が拳が負けるはずはないと…
しかし俺はどうやら自惚れていたようだ……
ここしばらくの戦いは常に圧勝であったがためなのだろうか?
いや、それは関係ない、ただ実力差があったからなのだろう…
俺の轟覇龍槍撃は勢いを見せたもあっけなく結界に飲み込まれていった…
「…くくく…なるほど、上には上がいる…我が王の仰った通りというわけだ…」
そして俺は倒れこむ。先ほどの轟覇龍槍撃を使うために俺の全ての覇気を使った…
覇気とは精神力であり生命力、大量に失うことは死すら意味する…もはや俺には蚊ほどの力も残されてなどいない。
いや、残されていても無理だろう。龍を出した利き腕の健はズタボロのようだ、どちらにせよ指すら動かない。
戦えるような状態じゃない…

「ムーミン大佐…貴様の……いや、貴殿の勝ちだ。
 この俺の最大の攻撃は貴殿の結界にすら無力だった…」
そう、それはすなわちどうあっても俺はあのムーミン大佐には勝てないことになる。
俺の全身全霊の一撃をもっても打ち破れぬ結界を余裕の表情で張る…すでに勝敗は決定している。 
「完敗だ……ふっ……まだまだ俺も未熟だったというわけだ。」

>>84
「や、やべぇ!誰か、あいつの呪文を阻止してくれぇっ!」
冷静になった今考えると俺の轟覇龍槍撃はあいつの呪文を打ち消すのにとっておいた方が良かったかもしれない、
いや、無理だ……どうやら俺の想像以上の強者が多く居たらしい。
「ふっ…まさかこんな場所で朽ち果てるとはな……」
すでに俺は生還を諦めた、弱者はいつの世も無様に死んでいくのみ。
そして俺にその番が回ってきたというわけだ……

87 名前:ツインテール[] 投稿日:2008/01/19(土) 19:37:45 O
相談募集中(はあと)

88 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/19(土) 20:07:11 0
>79>81
煙に包まれた結界の中でムーミン大佐は石の解析に全力を尽くしていた。
正確に言えば解析ではない。使用法である。
「すまないがお嬢さん。今、取り込み中でね。」
急ぎすぎていたせいか、結界内にルミナがいることにまったく気づいていなかった。
声をかけられて初めてその存在に気づく。
タバコの火を求められるが今はそれどころではない。
結界の外でフェルが極限まで力を貯めている事が判ったからだ。
敵意の感じられないルミナに注意を払うより、フェルへの対抗手段を持つことが先決。

超ヴォーテックスとカイザーフェニックスの激突の【余波】から守るだけなら結界で事足りるだろう。
だが、フェルがこれから放とうとしている攻撃を防ぎ切れそうもない。
対抗するために、石の膨大な魔力を使用して結界を強めようというわけだ。

しかし石の使用法がわかるよりも前にフェルの轟覇龍槍撃が放たれた。
覇気を練り具現化された龍。
その暴れまわる姿を一目見てムーミン大佐は悟った。
   無 理 !
暴れ狂う竜のパワーはムーミン大佐のパワーを遥かに超越している。
ぶつかり合って止められる代物ではない。
「・・・が!だからといって手がないわけではないぞ!」
荒れ狂う龍は目標を結界に定め突進してくる。
そして激突の瞬間、煙界妖壁陣がまるで竜巻のように回転を始めた。

無限にも思えるような数秒間。
火花を散らす激しい衝突の末、煙界妖壁陣は打ち破られた。
そして露になったムーミン大佐に龍は喰らいつき、そのまま天井を突き破っていく。
口からはムーミン大佐の血が零れていた。
残されたのは石とルミナのみ。

カイザーフェニックスと超ヴォーテックス、そして荒れ狂う龍と煙界妖壁陣の激突で起こる魔力の奔流。
あまりの強大な奔流に地下室全体が悲鳴を上げるように軋んでいる。
その音に混じりフェルは聞いたであろう。
小さなベルの音を。
そして首筋にトンと当てられるムーミン大佐のステッキ。
「種明かしをするとだね、我が部下ティンカー・ベルの能力だよ。
彼女の持つ小さなベルの音が届く範囲に限り、瞬間移動ができる。」
フェルの背後にはムーミン大佐が立っていた。
最初の攻撃を受けたにも関わらず殆ど立ち位置を変えずに戻れたのもこの力のおかげだった。

「一点集中といえば聞こえがいいが、私に言わせれば隙だらけになるに過ぎない。
君は格闘のプロであるかもしれないが、戦闘に関しては素人同然だ。」
力を使い果たしたフェルの首を刈るのはたやすいことだった。
だがステッキを当てるだけで、ダメージを与えようとはしない。
その理由はムーミン大佐の口から語られることになる。
「君は戦士だ。死など恐れはしまい。敗北も戦った結果とあれば受け入れられよう。
・・・だから、君には屈辱を与えようじゃないか!君は私に【生かされる】のだよ!」
残酷な言葉と共にステッキを振り、フェルの首に『13』の文字を刻み付ける。
擦り傷程度だが、死より、敗北より、何ものよりも耐えがたい屈辱の刻印を。

89 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/19(土) 20:07:23 0

「くははははっ!このまま朽ちるもよし、刻印を消しにくるもよし。好きにするがいい。
だが覚えておきたまえ。私と戦うことは安楽なる死すら許されぬということを!」
邪悪な笑い声と共にムーミン大佐は身を翻し、石の元へと戻る。
それを待っていたかのように石は不可視の力により上昇を始める。

石の上に立つムーミン大佐の右腕はなく、ただ血が流れ続けたいた。
龍が結界に激突した瞬間、煙を高速回転させ僅かにその軌道をずらす。
更に己の右腕を囮にして龍の軌道を完全に逸らすことに成功したのだった。
「お嬢さん、すまなかったね。
これからシガータイムだが、できれば一緒に来て肩を貸してもらえるとありがたいのだがね。
代わりに火は貸そうじゃないか。」
上昇する石の上でふらふらとなりながらルミナに声をかける。
余裕を持った姿を保っていたが、その実最初の一撃と龍に食いちぎられた右腕の傷のため、実際には限界に近かった。

辺りを見回せば魔力の大奔流で皆地に伏せ、無防備とはいえウサコの邪魔をする者もいないだろう。
それ以前にもはやこの地下室は持たない。
その前にフェルの龍があけた穴から石を回収し脱出するのだ。
「石は確保した。先に行っているよ。」
ムーミン大佐はウサコに一言かけて上昇を続ける。

90 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/19(土) 21:33:53 0
『ゴスッ!』
という嫌な音と共に少年、上条当麻は石からかなり離れた
所にある石畳に、頭から落下した。

「ぐおおお!!な、何なんですか一体!?」
上条は強打した頭を押さえ、ぶるぶると震えながら周囲の様子を確認する。
周囲にいるのは、数人の見知らぬの服装をした人々と、三沢塾で見たローマ聖教
の騎士団が着るような服を着た幾人かの人々。
そして、何故か獣耳っ娘。
(……どこだよ、ここは。学園都市……じゃないよな?
 なんで俺はこんな所に……つーか、ウサミミ?)
混乱しつつも様々な事を考えていた上条は、しかし
砂埃の向こうに『ソレ』を見て固まった。
「な……んだよ、これ」
それは、何かをを奪おうとしている人外でもなければ、
膨大なエネルギーを蓄積している獣耳少女でもない。

上条当麻の視線の先にあるのは、石畳に倒れている多くの人々。
彼等は血を流し、息も絶え絶えといった様子の者が殆どだ。

傷つき倒れている人々、それに害意を向けている魔術師であろう少女。
今ここを訪れたばかりの上条当麻には、何が起きているのかも
何故彼等が戦っているのか、その理由も解らない。

ただ、やらなければならない事は解った。
――――あの人達を助ける。
そう考えた瞬間、混乱で固まっていた上条の体は動いていた。

恐らくだが、あの少女は目の前の彼等や倒れている人達を攻撃するつもりだ。
上条当麻は魔術師では無いので、あの攻撃がどれ程の威力かは解らない。
だが、状況から目の前の少女が振るうのは異能の力であり、
それが想像も付かない程膨大なエネルギーである事は理解出来る。

身体能力が平均的なの高校生並の上条では、当たれば消し飛んでしまうかも知れない。
それに、倒れている人々の方が悪人という可能性もある。だが、
(それが、どうした!)
上条当麻は、右の拳を握り締め、
膨大なエネルギーを溜めつつあるウサコに向かって疾走する。
例えどちらが悪であろうと、相手の命を奪って目的を達成するという
やり方が正しいなんていうことは、絶対にない。

イマジンブレイカー
『幻想殺し』上条当麻の右手に宿る唯一の能力。
触れるだけで魔術や超能力、たとえ『神様のシステム』であろうと、
それが『異能』であれば問答無用で消し去る力。

「テメェが何をしたいのかは知らねえ!けど、あそこにいる
 誰かを犠牲にするつもりでソレをしようとしてるなら、
 そのふざけた幻想は絶対に食い止める!!」

ウサコに正面から走りこんだ上条は、そう吼えると、
収束しているエネルギー体に、その右手、『幻想殺し』を叩き込んだ。

91 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/20(日) 01:12:46 O
瓦礫の山から、体を起こし状況を確認する。
鎧を着ていた事から傷は浅いが、出血で意識が朦朧とする。
床は塵と破片にまみれ、天井にはムーミン大佐が激突した穴。
室内は辛うじて形を保っているような状態だ。

−−女性?
ランカムの視線は一瞬、彼の世界には無い、水色の髪に繋ぎ止められる。
ムーミン大佐は彼女に、勧誘の言葉をかける。
「ま、待てッ…! “魔”の者の誘いなど…!」
不意の痛みに、言葉は中途半端に途切れた。
「う…!」
足に刺さった金属片を除き、回復薬・キュアルートに手を伸ばす。
最初に一個を使用したため、残りは二個しかない。
ふと、手が止まる。

ウサコの新たな詠唱は、佳境に入っている。
魔法言語のわからないランカムにも、確かに
肌に刺さるような“魔”の疼きが感じとれた。
対して、抗戦していたポップとフェルは、戦闘力を失っている。
…手の中のキュアルートを見る。

−−私だけなら、逃げられる?
幸いにも出口は近く。回復すれば魔法の発動に乗じて、逃げる事も……。
「…神よ…!」
迷いを振り払うように、握った回復薬・キュアルートをフェルに投じる。
回復量は、決して大きくない。だが、彼が逃げる位の力にはなるだろう。

果たして、神への祈りが通じたのか。救い手は唐突に訪れた。
降ってきた少年が、ウサコに向けて拳を振る。
そこで、ランカムの意識は途切れた。
気を失う寸前、ランカムは妙な幻聴を聞いた。
−−相談募集中? …な、なんの事だ?
そして今度こそ、ランカムは気絶した。

92 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/20(日) 03:03:19 0
>89
「おおー、でかしたぞムーミン」
リブレイドが放たれる直前の光球を掌の上にかざしながら、石のような物体をまんまと強奪したムーミンの手腕を褒め称えた。
「その『石のような物体』を大魔王様に献上すれば、悔しいが手柄はお前のものだろー。
 わたしはこいつ等を始末してから後を追うだろー」
ウサコはポップ達に向き直った。
完全に油断している。余裕の表情さえ見せている。

>84>86
傷付き、倒れ付す戦士達を見るや、ウサコは勝ち誇ったような、残酷な笑みを浮かべた。
「勝負あったな。
 その程度の力でわれわれに挑もうとは片腹痛いわー。
 少し、頭冷やそうか」
無慈悲にも『リブレイド』を放ち、全てに決着をつけようとした、そのときだった。

93 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/20(日) 03:08:32 0
>90
上条の突然の出現が、逆転のチャンスをもたらした。
「む、新手だろー。だが関係ない!」
どのような相手が立ち向かって来ようが構うものか、怒りのオーラが込められた『リブレイド』が発動すれば、全ては同じ事だ。
ウサコはそう考えていた。しかし……
今まさに『リブレイド』が発動しようとしていたそのとき、相手はウサコ本人ではなく、今まさに放たれようとしている『リブレイド』のエネルギーの塊に触れた。
「はわ、何を……」
彼の右手が手の前で収束していた『天』属性の魔法エネルギーの塊に触れると、魔法の発動は完全にキャンセルされてしまった。

「なんだってー!」
彼女の表情に、明らかな驚愕と焦りの色が見え始めた。
無意識のうちに後ずさってすらいるほどだ。
自分の全力全開の攻撃が、修練を積んだ戦士や魔術師にも見えないただの学生に、こうも容易く防がれるとは、信じられなかったのだろう。
そうでなくても、ここまで寄られた状態で『リブレイド』を撃てば、自分もその破壊力の餌食になる。
いや、目の前の相手の能力からして、『ヴォーテックス』ですら撃たせてもらえるかどうかはわからない。
ウサコにはまだ魔力が満ち溢れているが、魔法は封じられたも同然と言って良い状態だった。

だが、ウサコは未だに諦めていない。
「私が魔法しか能の無いアホの子でないことを知るが良いだろー。
 ダブルインパクトォー。ふぁー」
ウサコは空間転移で距離を離し、上条に向かってダッシュし、勢いをつけて右の拳で殴りかかった。
主に魔法で戦うウサコには、空手や中国拳法のような格闘技の技術は一切無い。ただ力任せに殴るだけである。
その拳には、先ほどのリブレイドと同じように大いなる怒りのエネルギーが込められていた。
しかし、魔法攻撃に比べると、明らかに威力も命中精度も見劣りする。
有体に言えば、全く大したことはなかった。

94 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/20(日) 19:01:01 0
>>88-89
「さあ、この一撃に俺の全てをかけた!!もし破られるようであったら
 俺はお前とは肩を並べられるほど強くない!!勝負だ!!」
言葉ではそう言ったが俺には確信とも言える自信があった。
まだ未熟とはいえこの技が破られることなど満に一つもない!
そして激突、その衝撃の激しさはこの龍を操る腕まで伝わってくる。
「ぐっ……確かに強い結界だな、だが…だが打ち破るッ!!」
そして確かに俺の龍は結界を穿ちそのままムーミン大佐に喰らいき。
そのまま上へと登り天井を突き破る!確信した!俺の勝利だ!!
「……ははは…久しぶりだった、こんな血沸き肉踊る戦いは…」
そして俺は倒れる…全ての力を使い果たしたのだ、まだ俺の実力では
この技を使ったあとで動き回るのは不可能、ましてや先ほどまで戦っていた。
もはや指先一つ動かすような気力はない……その時、ベルの音がし後ろに気配を感じる。

「……な、なにッ!?」
そう…ムーミン大佐の気配…何故だ!!轟覇龍槍撃は完璧に奴に喰らいついた!
俺に失敗らしい失敗などなかったはず…そしてすぐに少し前を思いだす。
そう、初めて俺が拳をムーミン大佐に与えたときも奴は吹っ飛んだにも関わらず俺の前に居た!?
「どういうからくりだ!?」
「種明かしをするとだね、我が部下ティンカー・ベルの能力だよ。
 彼女の持つ小さなベルの音が届く範囲に限り、瞬間移動ができる。」
なるほど…それで俺の龍から逃れたというわけか………
「一点集中といえば聞こえがいいが、私に言わせれば隙だらけになるに過ぎない。
 君は格闘のプロであるかもしれないが、戦闘に関しては素人同然だ。」
なるほど…そうなのかもしれん……ムーミン大佐のいう戦闘とやらは俺の全く知らないものだ。
どうやら俺はまだまだ未熟だったようだ…上には上が居るという言葉を忘れていた…

「フッ……弱肉強食…弱き者は強き者の生贄。さあ、早く俺を殺せ。
 弱い者は生きている資格さえない!今すぐに俺の首を刎ねろ…」
俺の世界の掟…敗北した弱き者は死ぬのみ…勝利した強き者こそが先に進める権利を持つ。
曲げられぬ絶対の真理…いつもと違うのはただ勝者と敗者が入れ替わった事のみ…真理は真理だ。
しかし、死を覚悟する俺にムーミン大佐はただステッキを当てるのみ…そして言った。
「君は戦士だ。死など恐れはしまい。敗北も戦った結果とあれば受け入れられよう。
 ・・・だから、君には屈辱を与えようじゃないか!君は私に【生かされる】のだよ!」
そしてステッキを振り俺の首に何かを刻み付ける……
「ふざけるなッ!!俺を殺せ!今すぐに!!生き恥など俺は御免だ!!」
俺を見下した目!くそッ!!くそッ!!!俺は奴に生かされるのか!?



95 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/20(日) 19:03:37 0
「くははははっ!このまま朽ちるもよし、刻印を消しにくるもよし。好きにするがいい。
 だが覚えておきたまえ。私と戦うことは安楽なる死すら許されぬということを!」
敗者の烙印…それを刻まれるなどッ!俺は今までに味わったことのない屈辱を覚えた!
「き、貴様ぁ!!……この俺を……この俺を生かしたことを後悔させてやる!!
 いいか!覚えておけ!次会ったら貴様を粉々に粉砕してやるッ!!覚悟しろ!!!」
大声で吼える俺を冷ややかに見つめムーミン大佐は石を奪い上えと向かっていった。
指一本動かない己が身を俺は呪う……なんという無様な姿だ……
そして更に問題がある…この状態ではいつ崩れるか分からないここから脱出などできない。
敵に情けをもらってまで得た命が生き埋めなど笑い話にもならん!
どうすればいいかと考える俺の体に何かが当たる割れる……その時、俺の体が急に楽になる。
覇気を使えるほどには回復してはいないがそれでも動くには十分だ。

「なぜ…そういえば何かが当たった…これか…!?」
俺の足元にある割れた小瓶のようなもの…これがおそらく俺の体を回復させたに違いない。
周りを見ますと同じ小瓶を持ち倒れている男を見つける。
「おいお前、なぜ他人を助けた!俺に施しなど……」
呼ぶが返事がない、どうやら気絶しているようだ…
「…自らを治すことをせずに俺を治すとはな。お前のような奴が真っ先に死んでいく…
 愚かな男だ…だが、そんな男に借りができるのは俺は御免だッ!」
金属を纏っている男の重量はかなり重いが脱がしている時間もない。
俺はそのまま男を背中に抱え出口に向かって歩いていく…しかし、その途中であのフェニックスを放った男が膝をついているのを見つける。
さっきまでは戦いに夢中で全く周りが見えていなかった。どうやらかなり深刻な状態になってるようだ。
「チッ……借りるぞ!」
俺は先ほど俺を回復させた小瓶をあの魔導師らしき男に投げる。
「おい、ここはもうすぐ崩れる…死にたくないなら出るんだな。お前もだ!」
新しく来て魔王とやらと戦っている男にも叫ぶ。
「チッ……本来なら放っておくというのにどうしたんだ俺は……」

96 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/21(月) 00:58:46 0
>>93
ポップの呼び掛けに応えてか、新たなる戦士が現れ、ウサコの魔法をかき消してくれた。
「おお!助かったぜ!」
しかしウサコは魔法しか能のないアホの子ではないらしい。
後方に瞬間移動し、距離を取る。おそらく助走して肉弾戦を挑むのだろう。

>>95
そのとき、何かが投げつけられる。見ると、どうやら回復薬のようだった。
投げたのはフェルのようだ。
>「おい、ここはもうすぐ崩れる…死にたくないなら出るんだな。お前もだ!」
そう言い、ランカムを背負って出口に向かっていく。よく見れば二人とも随分負傷しているようだ。
ムーミン大佐が逃げていったのは見ていたが、察するに二人が勝ったというわけではなかったらしい。
「サ、サンキュ!ありがたく使わせてもらうぜ!」
回復薬は大した効果ではなかったが、逃げる体力としては充分だ。
当麻がウサコを引き付けている間にここを逃げ出せば、自分は助かる。

(すまねえ、頑張ってくれよな)
ポップは出口の方に振り返り、走って逃げ出そうとした。
少女のようでも魔王は魔王、肉弾戦でもどれだけ恐ろしいかは分からない。
屈強の戦士には見えない当麻では、何か接近戦用の能力がない限りは勝ち目は薄いだろう。
だが、ポップはこんな所でこんな分の悪い戦いに付き合って死ぬわけにはいかない。
元の世界では、散々苦労して平和の時を手にしたのだ。そしてようやく意中の女性に告白するところだった。
それなのに、異世界だか何だか知らないが、こんな所で死んでたまるか。
この地下室も最早いつ崩れるか分からない。
この場は逃げて、この世界は見捨てて、自分が元の世界に帰る方法だけを何とか探そう。
こんな世界がどうなろうと、知ったことか。

「なんて言ったらもう二度とあいつらに顔向けできねえじゃねえかよおぉーっ!」
ポップは絶叫し、敵の方に振り向きブラックロッドを構えた。
この場にダイがいたら、マァムがいたら、ヒュンケルがいたら、レオナ姫がいたら。
元の世界の仲間達なら、きっと誰もこの死地を捨てはしなかっただろうから。

「俺だってなあ、魔法だけしか能のないアホの子じゃねえんだよ!」
ポップの武器ブラックロッドは、伸縮自在の杖だ。
地面について伸ばすことで緊急回避に用いたり、先端の形状もある程度自由に変化させたりもできる。
魔法力を攻撃力に変換する効果もあるのだが、あいにく充分な打撃力を生み出すほどの魔力は残っていない。

ポップはブラックロッドをアーム状に変形させ、走り出したウサコの足首目掛けて伸ばした。
「スッ転びやがれっ!」

97 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/21(月) 01:17:29 O
>>95
そのとき、何かが投げつけられる。見ると、どうやら爆薬のようだった。
投げたのはフェルのようだ。
>「おい、ここはもうすぐ崩れる…死ね!」
そう言い、ランカムを串刺しにして出口に向かっていく。よく見れば二人とも随分負傷しているようだ。
ムーミン大佐が逃げていったのは見ていたが、察するに二人が勝ったというわけではなかったらしい。
「サ、サンキュ!ありがたく逝かせてもらうぜ!」
爆薬は大した効果ではなかったが、死ぬには充分だ。

98 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/21(月) 02:40:00 0
>>93
>彼の右手が手の前で収束していた『天』属性の魔法エネルギーの塊に触れると、
>魔法の発動は完全にキャンセルされてしまった。

(……っ、セーフか)
エネルギーの塊を消し去り、ウサコの前に堂々と、余裕すら
見せつつ立ち塞がる上条だったが、その内心では冷たいものを感じていた。
上条当麻の持つ『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の効力は右手首から先のみ。
仮にあの攻撃が全方位から襲い掛かる様な物であったならば、
上条は、それらを全て打ち消すことは出来ず、倒れていた事だろう。
そして、この敵がそれを出来ない保障は無いのだ。

(このままじゃ不味い、考えろ……ステイルの野郎も、『魔女狩りの王』
 みたいな高レベルの魔術には媒体を使っていた、だったらこれだけ馬鹿げた
 大きさの魔術を使うコイツも、何か媒体があるはずだ、
 まともにやり合おうってなら、まずそいつを破壊しないと相手にならない!)

ウサコとの距離を測りつつ、上条はそう考察したが、ここは異世界で、
更にウサコは魔術師ではないのだから、上条の世界の魔術師の規則が当てはまる筈は無い。
今回、その考察はかなり的を外れていた。
彼は今までに天使や聖人といった類の相手を敵に回した事はあるが、
魔王という類の異能に遭遇した事はなかったのも原因の一端だろう。
あるいは、実物が混ざっているにせよ、ウサコが天使の様に異能で構成されているのならば、
幻想殺しは触れるだけで、ウサコの破壊を行えたのかもしれないのだが、
結果として上条は、そのチャンスを逃す事となってしまった。

>>95
>「おい、ここはもうすぐ崩れる…死にたくないなら出るんだな。お前もだ!」
> 新しく来て魔王とやらと戦っている男にも叫ぶ。
先ほどまで負傷していた男に声をかけられ、上条は無事だったという
安心と共に、建物の崩壊という危機感を覚えた。
「……分かった、アンタは先に行っていてくれ!それから、出来ればその人たちを頼む!」
振り向かずに告げる、この場を動けば、目の前の少女が標的を変えるという可能性も
有るからだ。

99 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/21(月) 02:40:34 0
>>93
>「私が魔法しか能の無いアホの子でないことを知るが良いだろー。
>ダブルインパクトォー。ふぁー」
>ウサコは空間転移で距離を離し、上条に向かってダッシュし、
>勢いをつけて右の拳で殴りかかった。

(!? こいつ、テレポートも出来るのか!!)
思考していた上条は驚愕しつつも、瞬間移動と加速により放たれた
ウサコの拳を、しかし後ろに飛び、体を捻ることでかろうじで交わした。
ウサコの拳端が肩を霞め、それだけで上条の皮膚が焼けるような熱を感じる。
上条当麻が喧嘩で勝てるのは一対一、一対二ならあやうくて、一対三以上なら迷わず逃げる。
今回上条がウサコの攻撃を交わせたのは、単にウサコが喧嘩慣れた動きでは無かったからに
過ぎない。学園都市最強のLv5『一方通行』と戦ったときと同じ原理だ。
幾ら早くても、動きが見えれば攻撃を避けるのはそう難しくは無い。
だが、体の横を通り過ぎたその拳圧にはゾッとするものがあったのも確かだった。
(くそっ、なんて威力だよ!あの一方通行(アクセラレータ)みたいに
 本体が貧弱って訳でもなさそうだし、長期戦は不味いか……!)
視界の端には、逃げおおせる人たちの姿が確認出来る。
平静を装っているが、しかし、上条当麻には現状、短期でこの相手を倒す方法は
思い浮かんでいない。このまま交わし続けるにしてもいずれ限界は来るだろう。

(……落ち着け、俺の手札を整理しろ。恐らくだけど、あいつは幻想殺しの
 正体に気付いてない。それに、さっきの様子だとあのエネルギー体は結構な
 大技だった筈だ……なら!)

「ククク……ハハハハハ――――!!!!」

ウサコの攻撃を交わした上条は、突如、狂ったように、愉快そうに笑い出した。
そして、口の端を凶悪に歪めながら右拳を握り締め、ウサコの方へ向きなおし
、俯きながら、告げる。

「おいおい、なんだよその攻撃は。テメェ、それは冗談でやってるのか?
 まさかその程度の攻撃で、俺の幻想殺しを潰せるとか思ってたんじゃねえだろうなァ!? 」

バキリ、右拳が音を鳴らす。
その上条の姿は、底知れない凶悪な強者。上条当麻は、全霊で圧倒的な強者を『演じて』いた。

そう、上条当麻が考えた策、それは『ハッタリ』だった。

上条の勝利は、目の前の相手を倒すことではない。戦いを避け、怪我人を人を助ける事だ。
そしてその為には、目の前の獣耳少女に分が悪いと思わせ、退却させる事が
最短にして、最良の選択だと判断したのだ。
俯いて歪めた唇だけ見せているのは、表情から悟られる要因を減らす為。
無論、余裕なんて言う物は無い。震えずに振舞えるのは、上条当麻という少年が
これまでいくつもの、自分より遥かに強力な敵を前にした死線を潜り抜けて来たからだろう。

「さっきは魔法だ……どうする?次は右腕を喰い千切るか?」

だが、やはり正直分の悪い賭けである事は否めない。
相手が、未知とはいえ自分一人だけを相手に引いてくれるとは限らない。
魔王という強大な存在感を前に、精神は急速に消耗していく。

それでも上条当麻は、ウサコの前に立ちふさがり続ける。

>>96
>「スッ転びやがれっ!」
その時、視界の端から何かがウサコに向かって伸びていくのが見えた。

100 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/21(月) 03:17:10 0
>95
拳を放ちながら横目で見ていたが、敢えて彼を見送った。
立ち向かわないものは、いつでも殺せるものと油断しているのだ。
それよりも厄介なのは、目の前に居る、得体の知れぬ能力を持った少年だった。

>99
かわされた!目の前の相手に最も有効だと思っていた攻撃だっただけに、ウサコは焦った。
「むむむ、確かにお前の力は認めてやろう。
 お前の魔法無効化能力も、私の魔法とは相性が悪いだろー」
ウサコは科学の常識の外側に居る『非常識』だ。
『幻想殺し』。その言葉は、ウサコに激しいプレッシャーを与えた。
もし相手の能力が、単なる魔法無効化ではなく、『常識』の外側のモノ全てに効果を発揮するとしたら?
ウサコは思わず身震いし、たじろいた。
それでも闘志は消えてはいないようだが、かなり怯えの色が見える。

「だが、お前の能力は手で触れなければ効果は無いのだろー?
 だったら……こうするまでだろー」
『ヴォーテックス』の詠唱時間は、全ての攻撃呪文の中でも特に短い。
適切な距離をとれば、呪文の詠唱を完成させることができるかも知れない。
少し厳しいが、相手の反射神経を超える速度で打ち出せるなら、この敵を仕留められよう。
そう考えて、すぐに空間転移で距離を離そうとしたが……

>96
ウサコは空間転移ができるとはいえ、非常に反応が鈍い。
回避能力はスライムやゾンビよりも低い(※)という、信じられない運動音痴である。
『リブレイド』はおろか、重装備でフラついているような戦士の大振りな攻撃ですら避けられない。
しかも、先のダークバリアーは魔法攻撃にしか効力を発揮しない防御魔法だ。
つまり、ウサコは肉弾戦ではほぼノーガードという訳ことになる。

「はわっ」
そのため、このように、足払いなんかには簡単に引っかかる。空間転移を行う前に転んでしまった。
ウサコは仰向けに倒れ、背中を思い切り強く打った。
先ほど、カイザーフェニックスで多少ダメージを負ったうえ、『ヴォーテックス』を撃つときに生命力を消耗している。
見た目はそれほどでもないが、実はかなり消耗している。
また、今の一撃でも足にもかなりダメージを負ったのか、さっと飛び起きることができないでいる。
千載一遇の好機に見える。

101 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/21(月) 19:17:36 0
そこでほちゃんがウサコの首を飛ばす!!

102 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/21(月) 20:18:34 O
という夢を見たのだった

103 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/21(月) 20:57:21 0
ここでほっちゃんの反撃だ!

104 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/21(月) 23:48:28 0
これ置いておくは
つ【RPG銃】

105 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/01/22(火) 01:32:10 0
「………」
ムーミン大佐の誘いを受け、ルミナは沈黙しながら暫し考え込んだ。
正直言うと、元の世界に戻れるならどっち側につこうが問題は無い。
しかし、この石が元の世界へと戻る鍵であるならば、この石は死守すべき代物である。
だが、この段階でこの目の前にいるムーミン大佐を叩き落し、石を死守するべきか?
それは不可能に近い…先ほどの戦いを見てかぎりでは、ムーミン大佐の実力は相当のものだ。
全力で向かっていっても勝てる可能性が見えない。もし、勝ったとしても満身創意の身でウサコをどうにか出来る自信が無い。

>「ま、待てッ…! “魔”の者の誘いなど…!」
鎧姿の男がこちらに声をかけるが、ルミナは沈黙を続ける。
いや、ルミナもそのことについては重々理解している。

考えが定まったのか、ルミナは先ほど引っ込めた煙草を加えると、浮遊する石に飛び乗った。
「………口説き文句としちゃ物足りねぇが…まぁ良しとするかな」
そう言ってルミナは左手をムーミンに差し出す。

自分の命と石を優先するならば、この方法が一番いい。
とにかく今は虚に虚を重ねてもいいから、この石の近くにいることを優先するべきだ。

106 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/22(火) 18:36:05 O
>>100
>「だが、お前の能力は手で触れなければ効果は無いのだろー?
> だったら……こうするまでだろー」
(――!? やっぱり駄目か!!)
尚攻撃の意思を放棄せず、更に『幻想殺し』に対して、予想であろうが
真実に近い解答と対策を出したウサコに対し、上条の生存本能が警告を鳴らす。
背中に嫌な汗が伝い、この場所から逃げろと伝えてくる。

だが、上条は逃げ出さない。

仮に今上条が此処から逃げ出せば、生き残る可能性はそれなりだろう。
運がよければ、無傷で逃げ切れるかもしれない。
しかし、その時は上条以外の、他の誰かが犠牲になるのだ。
上条当麻という少年は、そんな「幸運」を望んでいない。

「テメエが何を勘違いしてるかは知らないけどな、『手で触れないと駄目』なんて、誰が言った?」

再度、ウサコの推測を混乱させる為にハッタリを言い、
恐怖を意思で捻じ伏せ、意を決し、来るであろう攻撃に対し上条が身構えた瞬間

>「はわっ」
ウサコが、転んだ。

「……は?」
突然の事に上条が呆けた声を上げながらも、ウサコの足元を見るとそこにはアーム状の何かがあった。
どうやら、そのアームがウサコを転倒させた様だ。

そして、そのアームの先には、上条と同年代程の少年の姿が見えた。

この状況で相手をじっくり眺める余裕は無い筈だ。だが、上条は一瞬、その少年と交差した気がした。

>また、今の一撃でも足にもかなりダメージを負ったのか、
>さっと飛び起きることができないでいる。
>千載一遇の好機に見える。
相手の獣耳少女は、先の少年の足払いで足を負傷した様に見える。
それを見た上条は、先の助けてくれた少年や、逃げ出している最中の兵士達に向けて、怒鳴る様な大声で言う。

「怪我してる人達を、頼む!」

そう言うと上条は、地を蹴り、ウサコのいる方向へ再び疾走する。
あの少年が作ってくれた隙を、無駄にしたくはなかった。

ウサコとの距離を詰め、倒れているウサコに対し『幻想殺し』の右掌を向けた上条は告げる。

「アンタの負けだ、降参しろ」

107 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/22(火) 19:29:37 0
>105
石に乗り左手を差し出すルミナにムーミン大佐は笑みを浮かべる。
「賢明な判断感謝するよ。さすがにこれ以上は赤字になりそうなのでね。」
やわらかくルミナの手を握った。
パイプから立ち上る紫煙がルミナの咥えたタバコの先端に絡みつき、火をつける。

>90>92
>「その『石のような物体』を大魔王様に献上すれば、悔しいが手柄はお前のものだろー。
> わたしはこいつ等を始末してから後を追うだろー」
「はははは。臨時ボーナスを期待したいところだね。」
ウサコと一言二言交わしそのまま石と共に上昇していく。
天井付近まで上昇した時、当麻の幻想殺しが炸裂した。

それまで、下の様子を何気に見ていたムーミン大佐の目が見開いた。
「見たかね?今のを・・・!」
思わず隣のルミナに尋ねずにはいられぬ光景。
放たれる直前の超リブレイドが消されてしまったのだ。
そこにまったく魔力の流れはない。
この流れがないことこそ、ムーミン大佐を驚愕させた事だった。
相手のエネルギーを消滅させる手段は難しくはあるが可能だ。
大別すると、拡散させるか、吸収するか、だ。
しかし、当麻が行った行為はどちらでもない。
唐突にエネルギーが消滅してしまったのだから。

恐るべき能力に戦慄を覚えながらも、助けにはいることはなかった。
なぜならば、それでもウサコの勝利を疑っていないからだ。
魔法を無力化させられたとて、それだけで勝てるほどウサコは甘い相手ではない。
それに、もはや地下室は崩壊寸前。
ウサコには空間転移があるので崩壊しても問題ないだろうが、相手はそうも行くまい、という事もある。

戦いの結末を見ずに、石はフェルの龍が穿った縦穴を上昇していく。
「やれやれ、彼の技はパワーはあるが、いかんせん大味なのが欠点だな。」
縦穴を上昇し始めてしばらくすると、上のほうから大きな岩が落ちてくる。
それに向かい、ムーミン大佐はステッキを振るう。
するとステッキは鞭のように伸び、岩を削り粉砕した。

降ってくる瓦礫や岩を打ち砕きながら上昇を続け、ついに地上に出ることに成功した。
「ご苦労、サンドマン。」
地上に出ると、ステッキは見る間に縮み元に戻っていく。
間近で見ていたルミナには判っただろう。
縮む時に見えた独特な模様なものと音から、ステッキ自体が伸びていたのではない、と。
ステッキは磁気を帯びており、そこに砂鉄を這わせ鋭く振ることによってあらゆるものを削り取る鉄の鞭としていたことを。
そして、もし誘いを断っていたらそれは自分に向けられていただろう事も。

108 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/22(火) 19:29:42 0
地上に出ると、上空には巨大な竜が舞っていた。
竜といっても、骨だけのスケルトンドラゴンであるが・・・
肋骨の部分に石ごとムーミン大佐とルミナを収容し、飛び立っていく。
「さて、ゆっくりとシガーを楽しもうじゃないか。なかなかの眺めだろう?
別に味方になってくれなくても結構なのだよ?敵対さえしなければ、ね。」
ムーミン大佐はくつろぎながら煙をくゆらせ、ルミナに語る。

この世界の者達は別世界から一定以上の力を持つ者を助っ人として召喚している。
【誰を】召喚するのではなく、【一定の力を持つ者を】召喚しているのだ。
相手の都合や意思は一切関係なく。
手当たりしだい召喚しているので、それぞれがどんな世界からやってくるかまで彼らも把握していないのだ。
それは元の世界に変える手段がないも同然だった。
「しかし、召喚媒体となったこの石にはそれぞれの世界の座標が記憶されているかもしれない。
私が君を誘ったのは、あの状況で石の分析を最優先にしたその見識を見込んでなのだよ。
解析に協力することは君が元の世界に戻る近道になるだろうさ。」
そう、ムーミン大佐から言えば、他者との関係は三つしかない。
敵・味方・無関係、だ。
敵でさえなければ手を出す理由はない。
無関係ならば元の世界に戻してしまえばいい。その為に協力はしてもらうが・・・

そういいながらムーミン大佐は思い浮かべる。
元の世界に戻るためのもう一つの鍵。
異世界を繋ぐ術を持つ者。
魔王軍が追っているダークエルフの存在を。

109 名前: ◆/Q.vnlAVN. [sage中途半端なネタふりすみません・・・] 投稿日:2008/01/22(火) 22:23:02 0
>>96>>106
上条当麻が右掌をウサコに向けたその時だった。
突如部屋の中に一匹の白い鷲が通常のものより少し大きめな宝箱を持って入ってきた。
そしてその鷲は大魔道士ポップの前に宝箱を落とすと、
なんと上条当麻の後頭部に蹴りを一発くらわせると遠くへと飛んでいった。
ポップの前に置かれた宝箱には一言『この世界を守る勇者様へ』と掘られている。

110 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/22(火) 23:21:24 O
−−夢を見ていた。
それは、この世界に呼び出される前の事。

私…聖印騎士ランカムは、法王庁直属の聖印騎士団に属する騎士である。
神を信じ…、法王庁を信じ…、目に見える世界だけを信じてきた。
…だが、それは“事件”を境に揺らぎ始めた。
我々、聖印騎士団は、カルト教団の根城となった廃都市へと、足を踏み入れた。
−−簡単な仕事だと思った。

仲間が、何も無い空間から生じた炎に焼かれ、一握りの灰になった。
仲間が、爛れた皮膚から骨の覗く死体に、生きたまま臓腑を引きずり出された。
そこで見た物は、世界の理を歪曲する“魔法”
あらゆる既知の生物を越えた“モンスター”
仲間は次々に減っていった。
そして私は行軍の途中、仲間達とはぐれ、この世界に呼び出された。

−−どこか遠くで、誰かが囁いた気がした。
≪殺せ≫
−−誰だ?

「ほ…ほっちゃ……んん?」
間抜けな声を挙げ、私は意識を取り戻した。
気を失っていた時間は、短かったようだ。
何か夢を見ていたような気もするが、思い出せない。
段々と思考が明瞭になってくると、自分が誰かの背中にいる事に気がついた。
「す、すみません…」
彼は…そうだ。気絶する間際、回復薬を渡した男だ。
彼も万全ではないのに、自分を気遣ってくれたのだろう。
細身とは言え、全身鎧はかなりの重量の筈。
助けるはずの相手の足手纏いとなっていれば、世話はない。

「私はもう、歩けます。…私はランカム、あなたは? 現状は…」
少しふらついたが、心配をかけまいと気を張り、しっかりと立ってみせる。

111 名前:大魔道士ポップ ◇bTJ1y4hkoYの代理投稿[sage] 投稿日:2008/01/23(水) 00:09:55 0
>>106
狙い通り、ブラックロッドでウサコを転ばせることができた。
「よっしゃあ!」
その時、上条が一瞬こちらを見る。
ポップは親指を立てる。見えたかどうかは分からないが、意思は伝わったような気がした。
>「怪我してる人達を、頼む!」
「おっしゃあああ!」
どこにそんな元気があったのやら、ポップは急にしゃきんと立ち上がって走り出した。
仲間がいれば、ポップはどこまでも頑張れるのだ。
部屋を駆け回り、手当たり次第に魔術師達を引っ掴んでは引き摺り、一箇所に集めていく。
視界の端にはウサコを追い詰める上条の姿が見えた。

ウサコは上条に任せるとして、ポップは本格的に逃げ出す方法を考えねばならなかった。
全員を連れて逃げ出す方法があるとすれば一つ、瞬間移動呪文(ルーラ)だけだ。
これは術者と周囲の仲間を光で包み、高速で飛行して目的地に向かう呪文である。
空を飛んでいくため本来地下では使えないのだが、ここでは幸いにもフェルの龍が空けた大穴があった。
「おーい、兄ちゃん達!今からじゃ多分地上まで間に合わねえ、こっちに集まってくれ!俺に考えがある!」
ランカムとフェルにも声を掛ける。

ただ、この作戦にも二つ問題がある。
もう空っぽに近い魔法力が地上まで足りるかどうかと、上昇中に降って来る瓦礫や落石をかわせるかどうかだ。
しかし他に方法がない以上、その辺りは何とか頑張るしかない。
「げっ!」
その時ポップの足が止まった。
もっと重大な、致命的な問題があることに気付いたのだ。
ルーラは一度行った事のある場所を思い浮かべてから発動する呪文だ。
しかしポップはまだこの世界のどこにも行ったことがない。ルーラを唱えてもここに戻ってくるしかないのだ。

おそらく、もう急いでも地上まで全員は連れ出せない。
万事休すか。
ポップの脳裏に絶望が過ぎりかけたその時だった。

>>109
どこからともなく現れた白い翼。
純白の鷲だ。
「な、なんだぁ?」
鷲は大きめの宝箱を携えていた。それをポップの前に落とす。
そして何故か上条を蹴飛ばし、またどこかへ飛び去っていった。
ポップは少し呆然と見送ってから、正面の宝箱に目を落とす。
>『この世界を守る勇者様へ』
見るからに期待が沸いてくる文句だ。これはきっとこの世界の神が勇者を助けるために寄越した秘宝に違いない。
そうならば間違いなくこの現状を打破できるはずだ。
絶望に塗りつぶされかけていた心を、一気に希望が彩る。
「神様仏様天使様!サンキューな!代わりに世界はきっと守ってやるぜえっ!」
ポップは勢いよく宝箱の蓋を開いた。

112 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/23(水) 02:49:03 0
>106
「降伏だって?冗談じゃない。
 そんなことしたら、今この場で殺されてしまうかも知れない。
 大魔王様は恐ろしい御方だろー」
第八世界を狙う魔王の多くは、本来は裏界に封印されている。
地上に現われるのは劣化コピーとも言うべき移し身だ。
だが、その移し身が倒されると、本体の力も大きく削がれることになる。
その場では滅びこそしないが、裏界では常に権力争いが絶えず、よほど強大な魔王でない限りは下克上もよくあるので、事実上致命的である。
「それに、それで私を追い詰めたつもりなら、勘違いもいいとこだろー。
 私の能力を見なかった訳ではないだろー?」
この魔王は空間転移を行うことができる。今この体勢からでも。

>109
そこに、何か鷹のようなものも近付いてきている。
この鷹の動き次第では、逃亡のチャンスくらいはあるかもしれないと考えている。
例えば襲いかかるとか。
だが、逃げた後は?そんな事は考えてはいない。
「さらばだ。また会う日もあるだろー」

113 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/23(水) 21:11:23 0
>>112
>「降伏だって?冗談じゃない。
>そんなことしたら、今この場で殺されてしまうかも知れない。
>大魔王様は恐ろしい御方だろー」

「だい、まおう?」
ウサコに掌を突きつけたまま、上条は怪訝な声を出す。
上条のいた世界において、魔王という物はゲームやオカルトな昔話の産物で
現実的な物ではない。少なからずそのオカルト側に関わってきて、天使や
吸血鬼といったものの存在の端くらいには触れた事のある上条だが、やはり
その存在は認知していなかった。
(魔王っつうと、あの神話とかに出てくる奴だよな?
 なら、やっぱりこいつは魔術側の人間って事なのか?けど、魔術師は
 教会を信仰してる奴らなんじゃあ……)
疑問への思索と推測を重ねながらも、上条は全集中力をウサコに向けている。

>「それに、それで私を追い詰めたつもりなら、勘違いもいいとこだろー。
>私の能力を見なかった訳ではないだろー?」
(こいつ、長距離移動も出来るのか!?)
次のウサコの台詞に、上条は小さく舌打ちをする。先の使い方からウサコのテレポートは
短距離移動の能力なのかと思っていたが、それは大きく外れた推測だった様だ。
そして理解する。この状況を維持していても、建物が崩れれば上条は
巻き込まれて終わりだという事を。

114 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/23(水) 21:12:48 0
ここで上条に取ることの出来る選択肢は二つ。
一つ目は、このままの体制で瓦礫に押しつぶされる事。
二つ目は、幻想殺しで霊装を破壊し、ウサコを無力化して此処から脱出する事。

一つ目は却下。ここで上条が死んでも、ウサコは脱出し他の人たちに襲いかかれる。
可能性は消えない。そうなってしまえば、上条の行為は無駄死にに等しい。
二つ目、ウサコを倒す事も出来(上条はウサコが霊装で魔術を用いていると思っている)、無事
脱出する可能性もある手段だ。これは最良の策と言えるだろう。だが

(馬鹿か俺は!ここでコイツを犠牲にしたら、意味無いだろうが!!)

上条は、自分の中に浮かびかけた答えを即座に打ち消す。
確かに最も確実な手段だ。だが、それをすれば、恐らくウサコは瓦礫の下敷きになり、
重量と圧力の犠牲になってしまうだろう。
上条には、誰かを犠牲にする事で誰かを助けるという発想は無い。
ましてや、ウサコが何故こんな事をしているのか解らないならば尚更だ。
願うのは、誰も倒れる事のないハッピーエンド。
だから、上条は三つ目の選択肢を選んだ。
そして、ウサコに告げる

「来い!アンタを逃がす気はねえけど、見殺しにするつもりもない!」

上条の選択、それは、ウサコの霊装を破壊し、彼女を担いで此処から脱出する事。
上条が幻想殺しで礼装を破壊、或いはウサコに触れていれば、ウサコはテレポートを封じられ、
ここから脱出して逃げた人々を襲う事も、魔術で上条を攻撃する事も不可能になるだろう。
可能性の低い選択肢だが、それは決して不可能では無い筈だ。
そう考え、上条が幻想殺しではない左手をウサコに伸ばすと

>>109
「んなっ!!?」
突如、上条の後頭部に衝撃が加わり、上条は前のめりに倒れてしまった。
ウサコの挙動へ精神を集中させていた為、上条は鷲の接近に全く気付けなかったのだ。
「〜〜!? な、なんだよ今の……は……?」
そこまで言って、倒れた上条は妙な胸騒ぎを覚え、自分の状況を確認する。

Q1.『さっきまで上条はどこに立っていた?』
A.【倒れているウサコの目の前】

Q2.『そこで後ろから打撃を受ければどうなる?』
A.【倒れて、押し倒す様な姿勢に見える】

Q3.『左手にある感触は?』
A.【柔らかい】

冷や汗が流れ、体がブルブル震える。上条の生存本能が、先程とは別の種類で、
かなり慣れ親しんでしまっているソレが、警鐘を鳴らしまくっている。

「ふ、不幸だ……」

上条は、無意識に口癖であるその言葉を漏らしていた。

115 名前:リーベル ◇fbsB0QAAho [sage代理投稿スレ143] 投稿日:2008/01/23(水) 21:47:22 0

魔王軍に攻め入られたオロッパス、その戦の光景を一望できる場所に
一つの影があった。神々の時代、闇を信奉し暗黒の使徒となった
黒き妖精、ダークエルフであった。まるで絵画から飛び出して来たかのような
神秘的な美しさはその存在の儚さをも表しているよう。
真紅の瞳には憂いと悲哀が浮かび、戦で失われる命の多さに目を背けがちだ。

リーベルは長らく魔王軍に追われている。その追っ手は回を重ねる毎に
質が高まり、数が増え、執拗になり、一人で捌くのも限界に近かった。
今までは自分に関わる事で人が犠牲になったり、情が移ってそれを利用されたり
するのを恐れて逃げ回っていたが、捕まってしまったら今より更に酷い事が起きる。
最悪なのは儀式魔法の知識だけを抜き取られて殺されてしまうこと……
少なくとも、現状では自分の死はそれだけで済まないのだ。どうあっても死ねない。

>107-108
思えば、トロルと言うことでつい昔を思い出して
気を許したのが間違いだった。うっかり口を滑らせてしまった時の
あのトロル……ムーミンと名乗った、奴の表情は今も忘れられない。
不安は的中し、次の日には魔王軍が私の知識と力を狙ってやってきた。
あの日のあの場にはムーミン以外にも何人かいたし、奴が言ったのでは
ないのかも知れないし、いまさら言った所で、またいくら奴を呪おうがそれで私の
迂闊さが帳消しになるわけではないのだから……気は進まないが、戦うしかない。
そう、不毛にして不当な命の奪い合いをしなければならない……

「……フッ、フフフ……戦が嫌い、か。だから私は裏切り者と呼ばれる。
 命は、殺し合うために生まれてくるのじゃないのにね……んっ、これは……
 いるわ、あそこに。まだ戦ってる……今行けば、まだ間に合う。」
戦場の喧騒に消されかかってたわずかな音に気づき、
急ぎ光の精霊ウィル・オ・ウィスプを召喚する。
「私の姿を隠してくれる?そう、少しの間で構わないの……ありがとう。」
ウィスプの力を借りて姿を隠し、崖を駆け下りて城へと向かう。
風の精霊シルフの力で、先程から戦場を飛び交う様々な『声』を拾っていた。
地上へと通じる大穴が開いたことで地下からも『声』が聞こえるようになったのだ。
地下の声はまだ生存者がいて戦っていることを教えてくれるものだった。
そこに絞って集めた音から、かなりの実力者同士の戦いらしいとも――――。
一縷の望みと多くの不安を胸に、リーベルは不可視状態で戦場を駆ける。

116 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/23(水) 22:30:52 0
>>110-111
「す、すみません」
どうやら俺の背負っている男が目を覚ましたらしい。
男は俺の背中から降りるとふらついてはいるものの立つ。
「私はもう、歩けます。…私はランカム、あなたは? 現状は…」
「……フェル・エクスティム。現状?見れば分かるだろう。
 ここから逃げないと生き埋めになるぞ。」
そう言った瞬間、出口が崩れ落ちる!最悪の事態だ!
チッ、黙って俺に背負われていれば下らん時間など取らなかったものを!
クッ、仕方が無い。違う出口を探すしかないか…
「おーい、兄ちゃん達!今からじゃ多分地上まで間に合わねえ、こっちに集まってくれ!俺に考えがある!」
バンダナの男が叫ぶ。どうやらここから出る方法とやらがあるらしい。
まあ、どのみち八方塞だ。この際少しでも可能性があるのならばそれに掛けるしかあるまい。
「………チッ、行くぞ…あいつに良い考えがあるらしい。」
そうだ、今はあいつの考えに乗るしかない。だが…屈辱だ!!
今日というこの日は屈辱の連続だ!他人に頼っている時点で俺は既に弱者。
さっき薬を俺に投げられたことも、こうして逃げる方法を違う奴に頼るのも…全て俺が弱いからに起因している!!
俺がもっと圧倒的に強かったらそもそもムーミン大佐に無様に負け、しかも情けを受けることもなかった!
「くそっ!!なぜ俺はこんなに弱い!!くそぉっ!!」

自らへの怒りに震えながらバンダナのとこまで行くと鷲が宝箱を持って飛んでくる。
落とした宝箱には『この世界を守る勇者様へ』と書いてある。
「これがお前のいうここから出ることができるものなのか!?」
>「神様仏様天使様!サンキューな!代わりに世界はきっと守ってやるぜえっ!」
そう言ってバンダナは宝箱を勢いよく開ける、
何が入っていても今の俺達はそれにすがるしかあるまい……
「だが覚えていろ…ここを出たら強くなってやる。首を洗って待っているがいいムーミン大佐!!」


117 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 00:41:28 0
>111
ポップが宝箱を勢いよく開けるとそこにはただ暗闇が広がっていた。
闇、闇、闇、真っ黒な闇。
そして2、3秒間を開けてから、闇から一つか細い綺麗な声がポップに問いかけた。

「貴様が勇者か?」

その問いの答える間も与えず次の瞬間ぬっと暗闇から二本の白い手首が出て宝箱の縁を掴む。
細く貧弱でとても戦闘に使えそうにないその手に力がぐっと入ると次の瞬間無表情な子供の顔がぬっと出てきた。
そして次の瞬間宝箱の中からぴょんっと飛び出てくる。
見た目13くらいのその美少年と言っても過言ではないその子供は、黒いワンピースを着ており着地ど同時にふわりと揺れた。

「ふう・・・実に窮屈な宝箱であった。」

そう一言言うとその少年は軽くスカートを叩いた。
見た感じではこの状況を打開できるような感じはない、無論雰囲気も大物めいた感じでもなければ、
殺気もやる気の有無も何も感じない。
ただひたすら無の状態のその少年はぐるんとポップを見、鼻を二、三回ひくつかせた。

「ずいぶんと小便臭い餓鬼だな僕様の名はパラシエルこの世の宝を司る天使様だ。
天界の神から命令があったものでなわざわざ下等生物共を守りに異世界からやってきた糞餓鬼共のサポートに来てやった。」

ポップを見つめながら、暴言混じりに早口でしかも息継ぎほぼ無しで自己紹介をし終える。
少年は天使を名乗るが少年には翼もなにもない。
パラシエルはポップの近くに居る負傷者に目をやった。

「さて、文句質問等は今の状況を打開してからにしよう。
話は宝箱の中で聞かせて貰った。だからやる事はわかっている。」

パラシエルはまたもや早口で言うと今度は目を閉じ指笛を吹いた。
すると先ほどパラシエルを運んできた鷲が再度Uターンして戻ってきた。
今度は見事にウサコと上条を避けきり、パラシエルの前に止まる。
するとぐんぐんと大きくなり、人二人分を乗せられる大きさになると次の瞬間負傷者達を頭から次々と飲み込んでいった。

「安心しろ。この鷲は僕様の優秀な翼。少しばかるこの荷物共を胃の中で治療してやるだけだ。
まあ代償として魔力は根こそぎ吸われるだろうがそれくらいどうって事もないだろう。」

そう言うとパラシエルは鷲に乗りポップの手を掴んだ。

「ほれ、とっとと行くぞ。間違っても振り落とされるなよ、餓鬼。」

そして青い空を目指し白い鷲を発射させる。

118 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 00:42:28 0
.

119 名前:異次元魔王ウサコ ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 01:07:09 0
>113-114
「……魔王に情けをかけるウィザードなんて、初めてだろー」
何とも言いがたい表情を見せた。
普通、魔王の不倶戴天の敵たるウィザードはこちらに情けをかけないし、魔王もまた敵に情けはかけない。
そのとき、上条の手がウサコの胸に触れた。薄い。揉むほどは無い。
「な、何をするー。そういうことは大魔王様にやった方が良いだろー。
 大魔王様の方がふかふかふかで気持ちいいぞー」
胸を揉まれたウサコの反応は、一切の色気が無い。
そう、ウサコは魔王の中でも特に色気に欠ける部類に入る。
恐らく、ファミ通文庫から出ている『赤い月の巫女』でボスキャラを務めた、あの魔王アスモデート(男、イケメン)よりも色気が無い。

「あっ」
そうこうしているうちに、影がさし、辺りが少し暗くなった。
仰向けに倒されているウサコには見えている。
大きな瓦礫が、すぐそこまで迫っている!
「私は一足先におさらばだろー。他人の胸を気安く触りよった罰を嘆いて死ぬがよい」
ふっとウサコが消失した。

120 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 02:21:53 0
密偵がオロッパス方面の戦況の報告をするために、大魔王の居城にやってきたのは、
ウサコが空間転移で行方をくらました直後だった。
大魔王の玉座の間は、大理石の床に赤い絨毯が敷かれているように見える。
「大魔王様はお休みになられている。要件は私が取り次ごう」
密偵に応対したのは、大魔王の直属の部下と思しき、インコに似た怪鳥だった。
その場には、魔王軍の将軍や、食客と思しき者達も集まっており、密偵の報告に静かに耳を傾けている。

玉座の周囲にはカーテンがかけられており、そこには大魔王のシルエットが映っていた。
しかし、それはきわめて奇妙な形のシルエットで、その姿を想像することは難しい。

大魔王の姿を直接見た者は、ごく限られた者だけだと言われている。
此処に集まっている者達でも、実際に姿を見た者は少ない。

「報告いたします。
 オロッパス城地下にて、ムーミン大佐が『石のような物体』の確保に成功したとのこと」
密偵がまず報告したのは、ムーミン大佐の活躍についてだった。
側近達は『石のような物体』の重要性をよく理解しているようで、歓声をあげる者も居た。
「なるほど、それは吉報だ。して、ウサコの方は?」
「は、それが……この映像をご覧ください」
密偵は投影魔術で密かに撮影していたのだろう。戦いの一部始終を収めた映像を見せた。
『大魔王様の方がふかふかで気持ちいいぞー』
ウサコが上条に胸を揉まれて、そんな事を言っている辺りで、密偵は映像を切った。

「このように、ウサコは大魔王様に関する貴重な情報を敵方に流しただけでなく、
 そのまま行方をくらましております!」
魔王軍の幹部達の間にどよめきが走った。
手触りがふかふかで気持ちいいことも、『大魔王様に関する貴重な情報』らしい。
将軍達は、ウサコが謎めいた主君に関する情報を握っていたことに、驚きを隠せない様子だった。
実のところ、此処に集まった大魔王の配下の将軍達の中でも、大魔王の姿を直接見た者は少ないのだ。

121 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 02:52:54 0
「……漏れた情報がこの程度だったのは不幸中の幸いか」
裏界の魔王達は、第八世界ファー・ジ・アースに侵入すると、その力を大きく減じられる。
故に、力よりもむしろ、様々な策謀を巡らせて世界を破滅させようとする。
狡猾な性格が多いのはそのためで、裏切ることは多々あるどころか、最初から裏切る心算で接触してくることも多い。
その素性をよく知っていれば、信用しないのが普通である。

「ウサコの裏切りは確かに大きな損失だ。
 しかし『石のような物体』が手に入ったのは、それを補って余りある利益だ」
怪鳥は暫く押し黙ったあと、これからのことについて話した。
「もはやオロッパスの城などは落ちたも同然。今はアヨガン国の対処を考えねばならぬ」
アヨガン国は、オロッパスの南西に位置し、海に面しており、魔王城に最も近い位置で徹底抗戦を続けている。
国としての規模でこそオロッパスと同程度だが、兵の精強さではアヨガンの方が遥かに上である。
更に、この国には大魔王が唯一恐れる封魔の宝玉があるという。
魔王軍にとって、目の上のコブと言って差し支えない。

魔王軍の将軍達は、どのようにしてアヨガン国を攻め滅ぼすかについて話し合っている。
『石のような物体』が手に入ったことは、将軍達の士気を大いに盛り上げたようで、
『石』の力を利用し、その勢いに乗じて一気に攻めるべきだという意見が多かった。
明日にでも出撃するぞ、などと張り切っている者も居る。

122 名前:大魔道士ポップ ◇bTJ1y4hkoYの代理投稿[sage代理投稿スレ153] 投稿日:2008/01/24(木) 20:09:49 0
>>116
呼び掛けに応え、ランカムを背負ったフェイがやって来た。
宝箱を見て言う。
>「これがお前のいうここから出ることができるものなのか!?」
「へへっ、これこそ神様がこの大勇者ポップ様に寄越してくれた秘密兵器よ!そら御開帳ぉ!」
得意気に調子のいい台詞を吐き、箱を開ける。

>>117
しかし、宝箱の中には、ただ闇が広がっていた。
「あれ?」
話が違うぞ神様の助けなんじゃねえのかよ、と思いかけた時、中から声が聞こえてきた。
>「貴様が勇者か?」
そして応える間もなく中から手が伸び、そしてその手の主である子供が中から這い出してきた。
「なあっ…」
美少年ではあるが、それだけだ。とても頼れそうには見えない。
むしろ一緒に生き埋めになりそうだ。

>「ずいぶんと小便臭い餓鬼だな僕様の名はパラシエルこの世の宝を司る天使様だ。
>天界の神から命令があったものでなわざわざ下等生物共を守りに異世界からやってきた糞餓鬼共のサポートに来てやった。」
「お、おい!小便臭いとはなんでぇ!お前の方がよっぽど餓鬼じゃねーか!」
とりあえず悪口には条件反射で反応してしまうポップだった。
「しかも宝を守る天使って何だよ!こんな修羅場じゃ全然役に立たねえよ!もっとマシな天使を寄越してくれってんだよ!
 大体お前、本当に天使なのか?天使って羽とか生えてたりするもんじゃないのかよ?」

>「さて、文句質問等は今の状況を打開してからにしよう。
>話は宝箱の中で聞かせて貰った。だからやる事はわかっている。」
ポップの文句質問等は軽くあしらわれてしまった。
パラシエルはさっきの鷲を呼び寄せ、巨大化させ、負傷者達を飲み込ませていく。
ポップは少し不安になった。
「お、おい…」
>「安心しろ。この鷲は僕様の優秀な翼。少しばかるこの荷物共を胃の中で治療してやるだけだ。
>まあ代償として魔力は根こそぎ吸われるだろうがそれくらいどうって事もないだろう。」
そう言うとパラシエルは鷲に乗りポップの手を掴んだ。
>「ほれ、とっとと行くぞ。間違っても振り落とされるなよ、餓鬼。」
そして地上に向けて鷲を飛び立たせる。

>>119
「ちょ、ちょっと待ってくれ!もう一人いるんだ!」
そう、まだ上条がウサコを取り押さえていたのだ。
ポップが目をやると、ウサコは既に消えていた。倒したのか逃げられたのかは分からない。
しかし、そこに瓦礫が落下している事だけは分かった。
「爆裂呪文(イオ)っ!」
ポップはすかさず球状の魔法弾を放った。それは瓦礫にぶつかると爆発し、四散させていく。
そしてポップは上条に向けてブラックロッドを伸ばした。
「脱出するぞ!捕まれーっ!」

123 名前:東條ルミナ ◇Yw2bVAsGtAの代理投稿[sage代理投稿スレ154.155] 投稿日:2008/01/24(木) 20:10:34 0
「あぁ……見たよ」
真剣な目つきをして、ルミナはそう返す。
とはいえ、ルミナはムーミン程この能力に戦慄を感じてはいなかった。

元の世界にいた頃、勉強してだか、風の噂で聞いたか細かく覚えてはいなかったが
万物の死の線が見える魔眼を持つ者がいるらしく、その者に線をなぞられただけでもその物は死を迎えるそうだ。
「まぁ…少々やっかいな能力だが…付け入る隙はあんだろ?」
その死の能力がある者にもそれなりに弱点はあるのだ…不透明な部分さえ判れば、対抗する策も、封ずる策もあるはずだ。
もう一度、一服するとルミナは黒く微笑いを浮かべた。

「……あぁ確かにそうだな…それに周りが見えてねぇ…下手したら全滅してたんじゃねぇのか?」
ルミナから見たら、結界を破るだけにあの技は大きすぎる。
それに、ただでさえいつ崩壊してもおかしくない状況下であんな技をだしたら、一気に崩落するかもしれない。
たった一時の勝利の快感の為に自分の命を犠牲にする戦い方は愚者としかいえない。
「まぁ…私にゃ関係ねぇけどな」

そのとき、ルミナの視野が暗くなった。
地層が脆くなっているのか、それとも地上にいる何者かが落としたのか判らないが頭上からは大きな岩が落ちてくる。
その間、詠唱し腰についている魔銃を抜き、岩に打ち込むことが出来るだろうか?
ルミナが考えている一瞬、ムーミン大佐のステッキが岩を粉砕する。
その後、ステッキは地上に出るまで上から降ってくる岩を砕きつづけた。

地上に出るとムーミン大佐はステッキを収めた。
「ッ!!!…………なるほど…なぁ」
一瞬、険しく表情を見せた後、ルミナは大きくため息をつく
今まで色んな客を見てきたが、ここまで掴めない者は初めてであり、
魔術師としてもルミナと同等、それ以上の実力者だと改めて実感したからだ。

巨龍に収容された後、ルミナは適当な場所に腰を下ろし煙草をふかす。
「……まるで、RPGの登場人物になった気分だよ…ホント」
空から見下ろす景色はまさしくそうだった。
険しい山、深い森、石造りの街に城…「東京」とは一回転半違う世界に来てしまったことを再認識してしまう。

一通り、ムーミンの話を聞き終えると…ルミナは先ほど返答しなかった質問の答えを言った。
「利害が一致している以上、私もあんたと同じような考えさ…だが、まぁ……雇いたいってんなら話は別だがな」
クスクスと笑いながらルミナはムーミンにそう言った。
「…ところで、これからどこにいくつもりだ?…宿屋につれこんで大人の話し合いってんならまた別の話になんぜ」

124 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 21:14:55 0
>123
大魔王の城へ向かうスケルトンドラゴンの中で、ルミナとこれからのことについて話していた。
元々意に拠らずに呼び出されたのだ。
石のようなものの解析に協力し、元の世界に戻ることを希望すると思っていた。
が、ルミナからは意外な申し出がなされる。
「ふふふふ、実に魅惑的な話だ。ぜひとも大人の話し合いといきたいところだが・・・」
笑みを浮かべたムーミン大佐だが、すぐにブルブルと震えて首を振る。
「だが、やめておこう。
そのようなことをすれば『彼女』に廃人になるまで追い込みをかけられて殺されるだろうからね。」
力ない笑みとともに肩をすくめて見せた。

『彼女』が誰とは言わなかったが、それはウサコでも、大魔王でもない。
実はムーミン大佐、これでいて妻帯者なのだ。
そして妻は現在妊娠5ヶ月。あと31ヶ月もすれば第一子が誕生することになる。
ムーミン大佐を怯えさせたのは、兇禍と呼ばれる生きながらにして伝説となった暗殺者。
後にムーミンママと呼ばれる妻であった。

「私も雇われている身でね。採用不採用の権限はないが、口添えくらいはさせてもらうよ。
ご同輩となれば力強い。」
気を取り直して応えるムーミン大佐の右腕からは、新緑の芽が生えてきている。
妖精ドライアード。植物の生命力をもって再生を司るのだ。


####大魔王の城####

夕日が全てを赤く染め上げる頃、大魔王の城に到着した。
石のようなものを城のものに引き渡し、玉座の間へと向かう。
「既に報告は密偵方から届いているとは思うが、期間の挨拶と紹介をするので着いてきたまえよ。
本格的に雇われるのであれば交渉は自分でやってくれ。望む報酬はそれぞれ違うだろうからね。」
玉座の間に向かいながらルミナへ告げる。
そう、まったくの異世界からやってきたのだ。価値観も何もかも違う。

ムーミン大佐の場合は、報酬は自動的に決まっている。それは世界を構成する力。
本来妖精は決まった世界を持たない流浪の民なのだ。
あらゆる世界を渡り歩き、その世界にある強き願望を叶える。
時として靴を作ったり、時として哀れな少女のマッチに幻を見せたり。
それと同様に、ムーミン大佐は己の能力をフルに生かすことのできる戦闘を生業としている、だけの話だ。

妖精は決して気まぐれで仕事をするのではない。
呼ばれた世界の力をその報酬として得るのだ。
そして世界を持たぬ妖精は得た世界を構成する力を使い、世界の狭間に自分達の住処を作り維持する。
ムーミン大佐も同様に、いや、それ以上の目的があった。
あらゆる世界と接する谷間に自分の世界を作る、という。
その為に多くの世界を駆け、世界を構成する力を集めているのだ。

「一つ注意して欲しいのは、敵対意思表示は示さないことだ。
皆が皆私のように紳士ではないのでね。
下手に力があると戦いたいと言い出すものがでてくるかもしれん。」
最後に警告をしておく。
最近仲間になったあの男。闘いに渇いているその姿を思い浮かべながら。
とはいえ、あまり心配してはいない。
きっとフェルの事を話せば喜ぶだろうから、と。

玉座の間につく頃にはムーミン大佐の右腕には立派な木が生えており、一つ実をつけている。
これが熟れれば中から再生された右腕が出てくるのだ。
少し右腕の樹を見て、ムーミン大佐はゆっくりと玉座の間の扉を開く。

125 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 21:44:53 O
「確かに、危険な状況のようですね」
互いに名を交わし合った矢先、崩れた天井が完全に出口を塞いでしまった。
背を向けたフェルは、苛立ちを隠さずに悪態をつく。
不器用だが、根は悪い男ではないのだろう。
「怪我人は任せて下さい」

瓦礫に身体を挟まれた者達を助け起こしながら
ポップに目を移すと、彼はなにやら宝箱を掲げ大見得を切っている様子だった。
しばらく見守る内に宝箱の蓋は開けられ、中から一人の少年が出てくる。
少年はポップを勇者と呼び、自らを天使パラシエルであると名乗る。
「“魔王”の次は“勇者”と来たか…」
−−ならば騎士の役目は、その勇者達を守る事か。
彼の言動に面食らいつつも、どこかこの状況を
自然と受け入れかけている自分に、一つ苦笑した。
魔王が実在するのならば、勇者も実在するのだろう。
それは、小さな希望であった。

さて、ある程度の事には驚かないつもりでいたのだが、
流石に巨大鷲の口に入るなどは、想定外の事である。
巨大鷲が負傷者達を飲み込んでいく様子は、
ファンタジーを通り越してシュールである。
「世界は広い物だ」

そして、本格的な崩壊が始まった。
「…生き埋めは御免だな」
もたついていた負傷者を、半ば投げ入れるように鷲の口に放り込む。
上条は、ポップが懸命に救おうとしている。
−−彼を信じよう。
そして自らも鷲の口に入る寸前、召喚石のあった場所を振り返る。

私が気絶した後、あの青い髪の女性は、どうなったのか…。
誰に聞くまでもなく、想像はついている。
名も知らない人間だが、自らの手が届く範囲で、
また一人“魔”の軍門に下ったのかと思うと、心が重くなった。
−−神よ、私は無力だ。
《力が欲しいだろう》
意識の底で、雑音が聞こえた。

126 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 22:54:40 O
玉座の間に黒い帽子とスーツに身を包んだ人間の男の姿があった。
そう、彼こそが史上最低にして最悪の運び屋、赤屍蔵人。
彼もまた、召喚されし者の一人。
しかし彼は今魔王軍側に着いている。
それは何故か?理由は簡単。魔王軍側に着けば、沢山の強者と闘えると聞いたから。
彼にとっては金や名誉なんて無価値に等しい。
強者との闘いが最高の報酬であり、喜びなのだ。
このバトルマニアを呼び出したまでは良いが、敵に回してしまった召喚者たちはさぞ後悔しているだろう。
さて、前置きはこの位にしておいて、彼は今、とてつもなく退屈していた。
ウサコ達がオロッパスの城に行くと言った時、付いて来るかと聞かれたが彼は断った。
行ったとしても強者と闘える気がしなかったからだ。
しかしオロッパスの城では赤屍の相手に相応しい強者達が続々と召喚されていた。
「付いて行けば良かったかもしれませんね…。」
退屈そうに佇んでいると密偵の報告が始まり、ムーミン大佐の活躍とウサコの裏切りを知る。
それでも赤屍は何の反応も示さなかった。
それよりも密偵が映し出した戦いの一部始終の方が興味深かったらしい。
「やはり失敗でしたか…。」

127 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 22:56:42 O
周りの幹部や将軍達は大魔王の情報流出にどよめいている。
が、『石のような物体』を確保した事により将軍達の士気は上がったようだ。

>>124盛り上がっている玉座の間で一人浮いたように黙りこくっているとゆっくりと扉が開いた。
扉を開いたのはムーミン大佐だ。そしてルミナの姿もあった。
「おや、今お帰りですかムーミンさん?…その腕……相手はなかなかの強者のようですね。」
ムーミン大佐の腕を心配そうに見ながらも嬉しそうな表情を隠せないようだ。
「どうやら随分活躍したみたいじゃありませんか。この通り、皆さん大変盛り上がってますよ…。
ところで…」
そこまで言って一旦言葉を切り、ルミナに視線を移す。
「そちらの女性はどなたです?新しいお仲間ですか…?」

128 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/24(木) 23:36:29 0
>>117の後半を訂正
パラシエルはまたもや早口で言うと今度は目を閉じ指笛を吹いた。
すると先ほどパラシエルを運んできた鷲が再度Uターンして戻ってきた。
今度は見事にウサコと上条を避けきり、パラシエルの前に止まる。
するとぐんぐんと大きくなり、人三人分を乗せられる大きさになると次の瞬間負傷者達を頭から次々と飲み込んでいった。

「安心しろ。この鷲は僕様の優秀な翼。少しばかるこの荷物共を胃の中で治療してやるだけだ。
まあ代償として魔力は根こそぎ吸われるだろうがそれくらいどうって事もないだろう。」

そう言うとパラシエルは鷲に乗りポップとフェルの手を掴んだ。

「ほれ、とっとと行くぞ。間違っても振り落とされるなよ、餓鬼共。」

そして青い空を目指し白い鷲を発射させる。

129 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/25(金) 00:30:38 0
>>119
>「な、何をするー。そういうことは大魔王様にやった方が良いだろー。
 大魔王様の方がふかふかふかで気持ちいいぞー」

「ま、待て!待ってください!状況を冷静に考えろ、これは……そう、事故!不可抗力だ!!
 いや、ふかふかとか関係ないしRPGのラスボスっぽいのにセクハラする趣味も無いから!
 つーか上条さんにはいきなり女性の胸にタッチする趣味はありませんよ!?ゴメンナサイ!」

記憶には無いが、体が覚えている過去の様々な経験から来るのであろう何かによって
固まっていた上条は、ウサコの台詞を聞いてからハッとし、飛びのくように左手を離す。
そして、全身から汗をダラダラと流しながら、挙動不審なボディーランゲージをも用いて
全身で事故である事を訴える。
反応に一切の色気がないウサコと、逆に全身全霊で弁明しながら慌てている上条、
端から見れば随分と滑稽な眺めだろう。

>大きな瓦礫が、すぐそこまで迫っている!
>「私は一足先におさらばだろー。他人の胸を気安く触りよった罰を嘆いて死ぬがよい」
「……は?」
慌てていた上条が、ウサコの言葉に反応し後ろ振り向くと
天井から崩れ落ちたのだろう、真上から巨大な瓦礫が上条に迫ってきていた。
「な――――!?」
上条が慌てて視線をウサコに戻すと、既にウサコの姿は無かった。
だが、今はウサコを逃がして閉まった事を気にする余裕は無い。
上条は歯を食いしばり、飛び跳ねるように瓦礫の落下地点から遠ざかるよう走り出す。
上条の右手に宿る『幻想殺し』は、それ異能の力ならどんなものであろうが消去できるが、
銃弾や斬撃といった普通の物理法則で起きる現象には何の効果も無い。
巨大な瓦礫などに潰されれば一巻の終わりなのだ。
全身の筋肉を限界まで酷使し疾走する上条、
しかし、瓦礫の重力落下速度は上条の足を容易に上回っていた。
(畜生っ!間に合わねえ!!)
上条がそう思った時

>>122

>「爆裂呪文(イオ)っ!」
声と共に、突如瓦礫が爆砕した。

「ぐっ!?」
突然の爆発の余波で、数m程吹き飛ぶ上条。
体を石畳にしたたかに打ち付けるが、瓦礫に潰された感覚は無い。
「ゲホッ!ゴホッ! ……助かっ……たのか?」
そう言って、打ちつけた箇所を摩りながら起き上がる。

そして見た。
粉塵が何かの羽ばたきの様な物で晴れたそこには、瓦礫では無く、
巨大な鳥に乗った、先程上条を助けてくれた少年の姿があった。

>「脱出するぞ!捕まれーっ!」
目まぐるしい情報の変化に脳の処理が追いつかなくなりつつあった上条は、
だが、少年の言葉を聞き、思考を回復し、様々あった疑問を吹き飛ばす。
今必要な事は、目の前の少年を信じる事だと感じ取った。

そして上条は、延ばされた杖を左手で――――掴み取った。

130 名前:大魔道士ポップ ◇bTJ1y4hkoY[sage] 投稿日:2008/01/25(金) 19:30:12 0
上条がロッドを掴むと、ポップはロッドを縮めて引っ張りあげる。
(うお、重てえっ!)
魔法に関しては一流でも腕力はてんで大した事のないポップに、人間一人分の体重を支えるのは辛い。
必死に体とロッドを支え、何とか上条を鷲の上に引き上げた。
「ぷは!ぜぇ〜ぜぇ〜、大丈夫か?そんじゃ、ちょっくら上まで頼むぜ天使さんよ」

131 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 00:05:04 0
>>122>>125
聖騎士ランカムとその他の戦士達を鷲の胃の中にいれ飛び立った矢先、
ポップはいきなり叫んだ。

>「ちょ、ちょっと待ってくれ!もう一人いるんだ!」

パラシエルはポップの目線の先を見た。
するとそこには先ほど運悪く鷲に蹴られていたツンツン頭の男が居た。
どうやらポップはその男を助けるらしい。
宝箱を開けた勇者に従えというのがパラシエルに課された使命である。
パラシエルはポップに従った。

「とっととすませろ、死ぬぞ。」

そう一言言うと天使は鷲にブレーキを掛けると二、三回鼻を動かした。
そして先ほどまで居た人間達の臭いをその一瞬で覚える。
例えその場に居なくても臭いという物はいた場所に残る物なのだ。
嗅いで少しも立たないうちに自分の鼻にパイプ煙草のわずかな臭いと別の煙草の強い苦い香りとともに、
どろりと甘いあめ玉のような臭いを感じ取った。
しかもそれは今までパラシエルが滅多に嗅いだことの無いようなとろけそうな甘い甘い香りである。
パラシエルの目に一瞬生気が戻り輝く。


132 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 00:06:49 0
>>129>>130>>115
そんな時に鷲に少しの重みがかかりまた上へと動き出した。
どうやらポップの杖に上条が捕まったらしい。
パラシエルの目はまた元の半分死んだような目になる。

>「ぷは!ぜぇ〜ぜぇ〜、大丈夫か?そんじゃ、ちょっくら上まで頼むぜ天使さんよ」

ポップが上条を引き上げ終わったのを横目で見ると、パラシエルはため息をついた。

「全く・・・重量オーバーぎりぎりだ。
万が一翼が折れたら貴様等を殴り倒す。ウェザード(鷲の名前)!急げ!」

そう言うと鷲のスピードがぐんぐん上がり、
可憐に落ちてくる瓦礫を避けながら一変に地上へ出た。
が、鷲は地上に出たとたん地面に落ちた。
どうやら重量オーバーぎりぎりで走ってたのがわるかったらしい。
パラシエルは鷲から落ち、地面に叩きつけられた。
鷲の中から数人治療中だった人間が飛び出る。

「・・・・もう二度と人間は乗せん。・・・む?」

パラシエルはまたもや鼻をひくつかせた。

「誰か来るな。しかも相当癖のある臭いの奴が。」

そう言うとパラシエルは起き上がり臭いの元を見つめる。

133 名前:オロッパス城周辺の近況 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 14:39:51 0
オロッパス城の近辺に、オロッパスの友軍と思しき兵士の一団がやってきていた。
その旗を見るに、どうやらアヨガンという国の兵士のようだ、ということがわかる。
「何ということだ!
 救援を求めに来たというのに、こちらも敵の奇襲に遭っているとは!
 この有様では、むしろ、こちらから救援物資を送らなければならないくらいだろう」
彼等は、破壊されて見る影も無くなったオロッパス城を見て唖然としていた。

オロッパスの大地には怪我人、死人、瓦礫といったものばかりが転がっており、
まともな建物や生存者を探すのにも苦労する有様であった。
死人にしても、死体が残っている者は、まだ弔ってもらえる分だけは幸いだったと言えるかも知れない。
魔王軍の暴虐な振る舞いと恐るべき力により、それほどの悲惨に見舞われているのだ。
「誰か、誰か生きている者は居らぬか!」
兵士達は大声で呼びかけている。
中には呼びかけに応じる負傷兵や、幸運にも一命を取り留めた一般人も居り、各人、傷の手当てを受けていた。

「しかし、酷い有様だ。
 オロッパスは決して寡兵ではなかったというのに……
 一体、どのような敵が襲ってきたというのだ?」
隊長と思しき男は辺りを一瞥し、この惨状の原因を分析していた。
魔王軍の本隊と長年戦い続けているアヨガン国の兵士達が見るに、
自分達でも未だに戦ったことのないほどの強敵が現われたのは間違いなかったのだろう。
隊長の顔面が蒼白になった。
「むむ、これはゆゆしき事態。
 ここの先ほどの襲撃のときよりも強靭な軍を組織して向かわれては、われわれでも対応できまい。
 いち早く報告に帰らねば……」

134 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 18:10:37 O
>>133
「とうっ!」
オロッパス城の周りを視察していた隊長の前に、紅竜は三回転ほどしながら落ちてきて華麗に着地した。
城の残った壁の上から、登場のタイミングを見計らっていたのだ。

「おおう。やはりアヨガンの兵士どもが、のこのこ出てきおったか。
他の奴らが帰った後も、残っていたかいがあったというものよ」
魔王軍から攻められる事を知っているはずのアヨガン軍は
必ず情報を手に入れるために、オロッパスに援軍を出すだろう。
そう考えた紅竜は、仲間が引き上げた後も待ち伏せの為に残っていたのだ。
予想より敵の到着が速かったが、待つ必要がないぶん好都合といえる。

「貴様等が帰って報告できる事など、何一つないわ。
なぜなら‥‥貴様等全員ここで死ぬのだからな!!喰らえぃ!紅竜天才波!」
問答無用とばかりに、兵士達に向かって魔力弾を放つ!

135 名前:リーベル ◇fbsB0QAAho[sage] 投稿日:2008/01/26(土) 19:43:23 O
城まであと少しの距離まで近づいたところで大きな揺れを感じた。
まさか……と、風の精霊シルフと土の精霊ノームを呼んだ。
シルフには音を、ノームには地下の様子を伝わせるために。

ノーム曰く、人間が掘った地下の空間は完全に埋まってしまったらしい。
隙間と言える物もほとんどないほどみっちりだと言う……間に合わなかった?
しかしシルフによって届けられた音は、地下にいた生存者が無事だと
言う事と大きな鳥のような物が羽ばたいている事を伝えていた。
誰かがロック鳥でも呼んだのだろうか?
「どちらにせよ無事なのは確かと言うことかしら……
 魔王軍も退いたようだし、姿隠しは解いてしまいましょう。」
生存者に会うため、姿隠しを解いて瓦礫の中を歩いていく。
その歩調は聊か急ぎ歩きで、心の安定を欠いている事を伝えていた。

>131-132
果たして、その目に飛び込んできたのは奇妙な光景だった。
巨大な白鷲とその周囲に見慣れぬ装いをした負傷者が何人か。
先ほどの羽ばたきはこの鷲のものだろう。そして、この凄惨極まりない
戦場にはまったくもって不釣合いな格好をした少年が、まるで自分が
来るのが分かっていたかのようにこちらを見つめていた。
振り落とされたのか、打ち身が何箇所かあるようだが一番軽傷に見える。
リーベルは少年を気にかけながらも、重傷を負った者へと近づき、とりあえず
フェルとランカムに宿る名も無き生命の精霊を活性化させ傷を塞がせた。

>133
その時、遠くから大声が聞こえてきた。
視線を向けると、そこにはアヨガン国旗を掲げた兵士の一団がいた。
アヨガンと言えば、長らく魔王軍本隊と戦い続けている国だ。
そのアヨガンの兵士がここに来たと言うことは、オロッパスに
援軍でも求めに来たのだろう……アヨガンには魔王の恐れる
封魔の宝玉があり、アヨガンの陥落は人の敗北を意味すると言えよう。
フェルとランカムの傷はもう少し大人しくしていれば完全に塞がるので、
彼らの事は周囲の人々に任せる事にした。
「もし……アヨガンへ行くのでしたら、ご同行させて頂けますか?」

136 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 21:11:35 O
「……ん?…まぁ心配すんな…商談はスマートに済ませる主義だからな」
少しばかり引っ掛かる箇所はあったが、そのことは気にせずにルミナはそう返す。
元々敵対意識などは持ち合わせていない訳だし、仮にあったとしても露骨にそのことを出すほど愚かでもない。以前、同じようなことをして、命を狙われたことがあったからだ。

広間につき、2、3歩足を進めた瞬間、ルミナにまるで心臓を掴まれたような悪寒が走った。
一瞬、その大魔王に自分の考えが読まれたかと思ったがそうでもないようだ。

赤屍の声を聞いた瞬間、その悪寒が増したからだ。
「(成る程、だからあんなこと言ったのか…)」
心の中で、軽く舌打ちをし、ルミナは呆れ顔を見せた。
「ナンパなら勘弁してくれよ…これから仕事の話すんだからよぉ」

137 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 21:42:48 0
>>122>>117>>128>>130-132
大見得きって宝箱を開けたバンダナ…しかし
宝箱の中には何も無いどころかただ暗い闇が広がっているだけ。
>「あれ?」
「あれ?…じゃないだろう!!意気揚々に開けてみればただの箱じゃな…」
全て言う前に宝箱から手が伸びだし…ずるずると子供が這い出てきた。
こんな気持ち悪い登場の仕方はいまだ見たことがない…
それにしても…なんとか細い奴だ…ホントにこいつがここを出してくれるのか?
そして口を開いたかと思ったら天界から来ただの訳の分からんことを並べ立てる。
信用できないのは俺だけではないようでバンダナも天使気取りのガキにキレる。
>「さて、文句質問等は今の状況を打開してからにしよう。
>話は宝箱の中で聞かせて貰った。だからやる事はわかっている。」
「フンッ、お前が何をしてくれるっていうんだ。」
俺は腕を組み悪態をつく、全く役に立たない者を呼んでくれた……
しかしその時鷲が降り立ちどんどん巨大化し、負傷者を飲み込んでいく。
「おい、俺には関係ないが負傷した奴を飲み込んで喰うつもりじゃないだろうな!?」
>「安心しろ。この鷲は僕様の優秀な翼。少しばかるこの荷物共を胃の中で治療してやるだけだ。
>まあ代償として魔力は根こそぎ吸われるだろうがそれくらいどうって事もないだろう。」
天使を名乗るガキは俺の手を掴み鷲に乗る。
>「ほれ、とっとと行くぞ。間違っても振り落とされるなよ、餓鬼共。」
ガキに餓鬼呼ばわりされイラっとくるが助けてもらっている以上は何も言えん。
一体このわずかな時の間に俺のプライドは何度傷つけられた?

>「ちょ、ちょっと待ってくれ!もう一人いるんだ!」
「放っておけッ…余計な労力など使うな!」
しかしバンダナは魔術を使い瓦礫を粉砕し男を助ける。
なぜだ?俺には全く理解できない。なぜ他人を助ける?
鷲の中に入っていったあの鎧の男もそうだ、なぜ俺など助ける?
他人など放っておけばいいものを…使命でも命令でもなくなぜ……
「………気に喰わん……」
必死で男を引き上げるバンダナを見ているうちに俺の中に怒りが湧き上がる。
いや、怒りとは違う…怒りとは違う…だが腹立たしい…どうにも俺はおかしい。
この世界に来てから苛立ってばかりだ。
そうしているうちに鷲はスピードを上げていき…外の世界が見えてくる。
このまま飛び続けどこかに降ろすのかと思いきや…地上に出たとたんに鷲は力なく落ち
天使を名乗るガキは地面へと叩きつけられる。
>「・・・・もう二度と人間は乗せん。・・・む?」
「安心しろ、俺ももう乗る気にはなれん。」



138 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/26(土) 21:44:15 0
>>133>>135
周りを見回すとあちこち破壊されておりおびただしい死人と怪我人がいることが分かる。
援軍に来たのか知らないが兵士たちが怪我人などを治したりしている。
兵士たちは凄惨な光景だと口をそろえて語るが、俺にはどうとも感じられなかった。
それも当たり前だ。前のここを知らず、またこういう風景が当たり前の世界に俺は居たからだ。
魔王を倒し世界に平和を…というのが俺達が呼び出された目的らしいが…実際全く明確な平和のビジョンが見えない。
「チッ…魔王側についていればよかったぜ。平和といわれても分かるはずもない。無法で混沌とした世界の方がはっきりしてる。」
>「誰か来るな。しかも相当癖のある臭いの奴が。」
そう言われてガキの向いている方に振り向くと女が居た。
俺は無意識に身構える。こちらに向かってくる奴を見かけたらまず敵と認識した方が良い。
女はこちらに近づいてくる。殺気は感じられないが…そんなもの達人となればいくらでも消せる奴はいる。
しかし、女は攻撃するわけでもなくただ近くに来ただけ。
「…なんなん……!?」
言いかけた時自分の体の異変に気付く…さっきよりもどんどん体の調子が良くなっている。
服を脱いでみるとあちこちの傷がふさがっていくのが見える。
「…まさか…お前が?……クッ!!」
だんだんと引いていた苛立ちがまた燃え上がってくる!
そうだ、この恩着せがましい感じが俺はむしょうに嫌なんだ!
なぜバンダナといいあの鎧の男といい…この女といい他人を助けようとする!
「…おい…俺は放っておいてくれ。助けてもらう道理などない…」
そう女に言い俺はあの面子から離れ瓦礫を歩く…これ以上俺はあいつ等とは居る道理もない。
「俺は好きにさせてもらう!短い付き合いだったな!!もう会う事もない!」
そうさ…今後はお互いに自由行動を取れば良い、助けてもらうなどもう御免だ。俺は1人で生きていく。
俺の生も死も俺のものだ。戦って…戦って…戦うだけ、今までもこれからも同じ。
仲間になる?論外だ。仲間など居ればいるだけ面倒なだけだ…どうせ言葉だけの拙い絆だ。
そんなものなら最初から無いほうがいい。1人ならば誰にも裏切られることもない!

>>134
変わり果てた街中を歩いているとき…なにやら戦っているもの達が見えた。
>「貴様等が帰って報告できる事など、何一つないわ。
>なぜなら‥‥貴様等全員ここで死ぬのだからな!!喰らえぃ!紅竜天才波!」
「クククッ……そうだ。俺にはこっちの方が合っている!!」
そして俺は走りだし兵隊長たちと黒ローブの男の間に立ちふさがり魔力の弾を手のひらで掴む。
手のひらは焼け付き皮が剥ける…こげた匂いが鼻をつき痛みが広がっていく…
覇気を使わなかったのはこの攻撃で相手の実力を知るためだ。
「ふん、弱いものを倒して面白いか?俺が相手をしてやる!」
そして俺は意識を集中させ覇気を爆発……
「…な、なに?………」
出ない…覇気が…かけらほども出ない…そ、そうだ!
そう…俺は忘れていた。本来覇気とは生命力と精神力を使うもの。
そして地下の戦いであれだけ消耗した俺に出せるわけなどなかったのだ。
いくら薬とあの女の施しで体力は回復してようと数日間は覇気は出せない。
体力とはなんの関係もない…今俺の心身はボロボロ……
「し、しまった……クッ…いいだろう!覇気などなしでもやってやる!!」
そして俺は構える。こうなったら引っ込みなどつくわけが無い。
大丈夫だ、当たらなければどうということはない!!

139 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 01:26:09 0
>>130
「っと……すまん、助けてくれてありがとう」
引き上げてくれたポップに対し、上条は礼を言う。
呼吸が乱れているのは、先ほどから全力で動き続けていたのと
『幻想殺し』がどの様な効果を与えるか解らなかったので
杖や鳥に触れることなく、左手一本でよじ登ったからだろう。
(……ん?)
と、そこで上条はポップ以外にも数人、巨鳥に乗っている人間がいる事を認識する。
(助けてくれたこの緑の人の仲間か?……だったらお礼言うべきだよな)
何となくそう思い、自己紹介と状況確認を兼ねて、礼を言おうと上条が口を開けた瞬間
>>132
「俺は上条tぐあっ!!?」
突然懸かったGにより、盛大に舌を噛んだ。
「ぬおおおぉ!!?」
顔の下半分を右手で押さえつつ悶える上条。不幸にも乗っていた鳥が飛翔した
タイミングで喋ってしまったのが原因だった。
涙目で悶えながらも上条はバランスを取ろうと、鳥の背中に捕まるが
「なああああ!!?」
やはり片手では支えきるのに無理があったようだ。
地上に出た瞬間地面に落ちた鳥の発生させた慣性により、その背中から
吹っ飛び、地面に叩きつけられる上条。
「ぐぅぅ……ふ、不幸だ……今日は不幸のバーゲンセールか……?」
倒れながらそんな事を呟き、周囲の風景を見て
「……ここ、何処だ?」
疑問の声を上げる。そこは言うなれば中世のヨーロッパのような情景だった。
壊れてはいるが城があり、日本では見かけない種類の樹木や草がある。
上条は、自分が学園都市にいない事は薄々感ずいてはいたが、
実際に見てみると、やはりその考えは当たっている様だった。
ローマ正教の魔術師にヨーロッパ付近にでも飛ばされたのだろうか?
などと、まだ痛みでぼやけている思考で思っていて、そこで違和感を覚えた。
(……待て、おかしい。そもそも、俺が転送されるなんて事は有り得ないんだ)
上条はその違和感の正体に気付く。上条当麻の幻想殺しは、それが
異能の力であれば、上条の意思とは関係なく消し去ってしまう能力なのだ。
それは、例え自分を治癒する力だろうと、テレポートだろうと、例外では無い。
故に、本来上条が何処かに「移動させられる」という事はありえないのだ
上条は今の状況の異常さを感じ、痛む体を置き上げる。
そして、現状確認の為に先の少年達のいる所へ向かい
「さっきは本当に助かった、俺は上条当麻って言うんだが……」
そこで一呼吸置き、尋ねる。
「なあ、悪いんだけど、此処が何処で今がどういう状況なのか教えてもらえるか?」


140 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 01:31:59 O
城は、廃墟のように荒れ果てている。
よく見れば、柱だった物の欠片には名匠による物と思われる、精緻な彫刻。
灰と血に覆われた絨毯の華麗な装飾は、その歴史が偲ばれる。
…かつてはこの城も、自分達の世界でのそれと同じように、
平和な統治が行われ、絢爛な舞踏会が行われ、栄えていた筈だ。

「こうも徹底して破壊されているとは…」
自分達の世の、最新の攻城兵器でも、このような破壊には至るまい。
鷲から吐き出された後、周囲を警戒して見渡していたランカムは、
改めて怪物達の力を知ると同時に、自分が震えている事に気づいた。

「“恐怖を支配せよ”」
ぽつりと、口をついて出る言葉。
「さもなくば“魔”に魂を食われる、か…」
元の世界の、敬愛する騎士団長の言葉だった。
先程の自分は、危うく恐怖に飲み込まれそうになった。
あるいは上官達なら、こんな状況でも、自分のように迷う事は無いだろう。

異変に気づいたのは、パラシエル。
「“臭い”?」
彼の言葉に振り返ると、一人の女性がこちらへ歩いてくる所だった。
印象的な銀の髪が、瓦礫の中で浮き上がるように輝いている。
−−いつの間に?
今居る場所は、周囲に遮蔽物も少なく見通しが利く。
近付く者がいれば、視認できただろう。…“透明”にでもならない限りは。

女性が自分達の前で立ち止まると、不意に体の奥が暖かくなった気がした。
「これも“魔法”なのですね」
感心したように漏らす。一時的に、代謝が高まっているようだ。
安静にしていれば、傷はじきに全快するだろう。

顔を上げると、女性は赤い瞳で一方向を見つめていた。
視線の先には旗を掲げた、他国の使節と思しき一団。
聞けば、女性はあの使節を派遣したアヨガン国を目指すと言う。
自分達はこの世界に着いたばかりで、地理には暗い。
−−彼女と同行したい所だ。
同意を求める為に、ポップ達を見る。

「…まず、治療の礼を言います。私はランカム。こちらは…」
言葉が終わる前に、フェルはリーベルと自分達に対し、
拒絶の言葉を発し、そのまま一人で歩いて行ってしまう。
「…すみません」
慌ててリーベルに一礼し、フェルを追って駆け出す。
先の青髪の女性との失敗もあり、不安定な彼を一人にはしたくなかった。

使節団の方へ近付くに連れ、その様子がおかしい事に気付く。
「…襲撃者ッ!?」

141 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 02:18:38 0
>>132
定員オーバーだったらしいが、鷲は上手く落下物を避けて地上まで運んでくれた。
しかしそこで力尽き、すぐに落下してしまう。
ポップは衝撃で地面に放り出され、したたかに頭を打ち付けた。
「ぐあーっ!痛ってえーっ!」
頭を押さえてゴロゴロのた打ち回る。

>>139
そこへ、上条がやって来た。
>「さっきは本当に助かった、俺は上条当麻って言うんだが……」
>「なあ、悪いんだけど、此処が何処で今がどういう状況なのか教えてもらえるか?」
「お、おう。痛ちちち…俺はポップ。よろしくな。ここは…」
ポップは召喚された時に魔術師に聞かされた情報を話す。
ここが魔王とその配下に侵攻されている世界で、自分たちは対抗戦力として異世界から召喚されたこと。
「…つーわけだ。聞かされた当初は俺も眉唾だったが、事ここに至っちゃもう疑う意味もねえ。
他人の世界のドンパチに巻き込まれるなんて、お互いとんだ不幸だったなあ」

>>135
「幸い、仲間は何人かいるみたいだぜ。とりあえず、あそこにいる変なのが天使のパラシエル…」
パラシエルを指そうとしたポップは、彼が明後日の方向を見ている事に気付いた。
見ると、そちらから耳の尖った色っぽい女性がやって来ている。
遠めに眺め回し、鼻の下を伸ばすポップ。即座にパラシエルに駆け寄って馴れ馴れしく肩に手を置く。
「うひょお、美人じゃねえか。あんたの知り合い?」
女性はやって来ると、ランカムとフェルの傷の具合を見咎め、魔法のような何かを使う。
すると二人の傷が塞がっていく。回復呪文の一種だろうか。
「はいはーい!ここにも重傷人が一人いるぜー!」
ポップは元気一杯に手を振ってアピールする。全然重症でもないのだが、美人に構ってほしいのだった。

>「もし……アヨガンへ行くのでしたら、ご同行させて頂けますか?」
二人を回復した後、リーベルが申し出る。
「アヨガン?」
ポップは首を傾げ、ランカムの同意を求める視線をさらにパラシエルに受け流す。
とりあえず、アヨガンが何処かどういうところかも分からないうちは、容易に判断はできない。
それが分かっていそうなのは、この中でパラシエルだけだ。
「なあ、パラ…」

>>138
しかし、その時フェルの怒声が聞こえた。
>「俺は好きにさせてもらう!短い付き合いだったな!!もう会う事もない!」
フェルはそう怒鳴ると、向こうへ歩き去っていってしまう。
ランカムがその後を慌てて追いかけていく。
「なんだぁ?あいつ。何ふてくされてんだ?」
頭を捻るポップだったが、やはり理解できない。
だが、フェルも召喚された身のようなので、本当に自分たちと別れて一人になることはないだろう。
頭が冷えた頃にランカムの説得に応じ、戻って来るに違いない。ポップはそうタカを括っていた。
そして、パラシエルに向き直る。
「まあ、あいつの事はランカムに任せるとしてよ、パラシエル。
俺達はこれから一体どうするべきなんだ?戦うにしろ、何か拠り所はほしいところだぜ。
差し詰め、アヨガンとやらには行くべきなのか?」

142 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/01/27(日) 15:53:31 O
ここで阿部さん召喚


アッー

143 名前:リーベル ◇fbsB0QAAhoの代理投稿[sage代理投稿スレ171] 投稿日:2008/01/27(日) 20:56:52 0
>134>137-138>140-141
>「これも“魔法”なのですね」
「魔法?……いいえ、あなたの中に宿る生命の精霊に呼びかけて
 活力を高めただけです。傷が塞がっていくのは、あなたの命の力が
 満ち溢れているから。私はきっかけを与えたに過ぎません。」
恩を着せるような事をリーベルは好まなくなっていた。
ダークエルフゆえに、裏があると痛くも無い腹を探られた事も一度や二度ではなく
その度に傷ついてきたのだから。それでも見捨てられないのがリーベルだった。

>「俺は好きにさせてもらう!短い付き合いだったな!!もう会う事もない!」
>「…すみません」
しかし男は礼を言うでもなく、苛立ちを隠そうともしない口調で
訣別を口にしその場を去って行った。男を心配したランカムがそれを追いかける。
だが、リーベルは男の後ろ姿から精神の精霊の気配の異常に気づいてしまった。
「……あれは……どうして、あれほどに……」
その時のリーベルにはランカムが追う男の後ろ姿を痛ましそうに見送る事しか出来なかった。
同じように後を追ったところで心を閉ざした男に自分の声は届かない……
長く生きて、知識と力を蓄えても人の心までは救えないと、無力感に打ちのめされる。

>「はいはーい!ここにも重傷人が一人いるぜー!」
そんな鬱屈した気分の時に聞かされる元気な大声と言うのは一種の拷問だ。
眉を顰めたまま自称重傷人の方を向く。見た目には目立った外傷はなかった。
しかしよく見ると、魔力の源ともなる精神の精霊の働きが鈍っている。
魔道士らしく、相当高度な魔法を使って魔力を消耗したのだろう。
「……あなたの場合は、肉体ではなく精神力の方が重傷のようですね。
 ですが、私の知る魔法には精神力を回復させるものはないのです……
 今の私に、あなたにしてあげられる事はありません。」
申し訳なさそうに頭を下げるとその場を後にした。


144 名前:リーベル ◇fbsB0QAAhoの代理投稿[sage代理投稿スレ172] 投稿日:2008/01/27(日) 20:57:14 0
>問答無用とばかりに、兵士達に向かって魔力弾を放つ!
アヨガンから来た兵士の一団へと近づき、同行を申し出る。
もはやオロッパスには戦略上の価値は無く、魔王軍も総力を挙げて
アヨガン攻めを始めるはずだ。ここにいても、出来ることと言えば
死霊魔術で死体を操って自分達の穴を掘らせて埋葬するか火に飛び込ませて
荼毘に付するかぐらいしかない。そして、そこまでの魔力は残ってなかった。
しかし長命種特有の悪癖、先の事を考えて周囲への警戒を怠ると言う愚行をここでも犯した。
ちょうど兵士の近くに寄っていたリーベルにも容赦なく魔王軍の攻撃が襲い掛かった。

>そして俺は走りだし兵隊長たちと黒ローブの男の間に立ちふさがり魔力の弾を手のひらで掴む。
だがそれを、先ほど立ち去った筈の男が防いだ。
生命の精霊の活性度はまだ高く、火傷も程なく癒えるだろう。
それよりも……先ほどの言動が気にかかる。
>「…おい…俺は放っておいてくれ。助けてもらう道理などない…」
>そう女に言い俺はあの面子から離れ瓦礫を歩く…これ以上俺はあいつ等とは居る道理もない。
戦いが始まった途端水を得た魚の様に生き生きとし始めたフェルに向かって、
「先ほどあなたは自分の好きにすると言った。私も自分の好きにしただけです。
 それが私の道理、否定される謂れはありません。特に、自分の心一つ意のままに出来ぬあなたには。」
と言い返すが、本心は飲み込んだ。戦いが始まろうと言うのに口論をするほど愚かではないつもりだ。
しかし、後ろ髪を引かれる思いを抱かせた相手が戻ってきたのは、ある意味幸運なのかもしれない。

>「し、しまった……クッ…いいだろう!覇気などなしでもやってやる!!」
「本調子ではないようですね……文句はお互い生きていたら
 後でいくらでも聞きます。あなたはあなたの好きにしなさい。
 私も私の好きにしますから。」
相手は遠距離攻撃出来るがフェルは出来ない(と思っている)。
ハンデを埋める為、シルフを呼んで被術者を遠距離攻撃から守る風の障壁を付与する事にした。
その効果は周囲の兵士達にも有効で被害の拡大は防げそうだが、
代わりに更に魔力を消費してしまい息が上がり始める。もう一回使って打ち止めだろう……

145 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 21:52:53 0
大魔王の配下の将軍達は、あーでもないこうでもないと、襲撃の際の計画を練っている。
そうしていると、群青色の光が二つ、カーテンに浮かび上がった。
「おお、大魔王様がお目覚めになられた!」
怪鳥が叫んだ。
すると、集まっていた将軍達がその光に注目し、敬礼の姿勢をとった。
群青色の光はある決められた周期で点滅しており、何かを訴えかけるようだった。
怪鳥は大魔王の意を汲み取り、声を張り上げて、その場に居る者に伝えた。
「皆の者、よく聞け!次のアヨガン国との戦には『地獄の帝王』を参加させるとのことだ!
 この意味がわかるな、諸君!」

『地獄の帝王』の名は、魔王軍の内外に知れ渡っている。
そいつは異界から召喚された魔王や邪神の類だったが、大魔王によって知性を奪われ、完全な奴隷にされたと言われている。
強大な力を持ちながらも、完全に大魔王の意のままに動く、大魔王の懐剣―――
『地獄の帝王』は、そのような存在として知られ、この世界の人間達に恐れられている。

大魔王が『地獄の帝王』を出撃させるということは、
「アヨガン国に総攻撃をかける」と、大魔王自らが宣言したのも同然だ。
大魔王の意向を聞いた将軍達から歓声があがり、早速戦の支度を始める者も居た。
伝令の悪魔は、オロッパス周辺に残った軍団に大魔王の意向を伝えるべく、再びオロッパスへと飛び去った。

146 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 22:13:12 0
>127>136>134
玉座の間に入ると、大魔王以下主だった者が揃っていた。
その中をムーミン大佐は歩み、カーテンの前で一礼。
「まっすぐ帰ってきたのだが流石に密偵方の足は速いですな。」
そう前置きをして帰還の挨拶、そしてルミナを一同に紹介する。
口上を終えた後、ムーミン大佐はウサコの裏切りを知る事となる。

その事実を不審には思うがあまり驚いた様子はなかった。
元々魔王達は忠誠で繋がっているわけではない。
利害関係や、お互いを利用する為に繋がっている側面が大きいのだ。
だからこそ、ムーミン大佐は初めて会ったルミナをもこうして玉座の間へと連れてきたのだ。
必要なのは信用ではなく、利害と力、なのだから。
しかしそれと同様にウサコの裏切りには不審を抱かずに入られなかった。
あのときからの状況でウサコが裏切らなければならない理由はないはず。
たとえ戦いに敗れたといっても空間転移があるのに・・・何故?

更に周囲が『石のようなもの』を手に入れて事で意気が上がってる事を見て一言付け加えておく。
「個人的なあの『石のようなもの』に秘められたパワーは底知れない。
意気が上がるのが判りますが、数日かけて解析してから利用するほうが賢明でしょうな。」と。

考えを巡らせながら下がり、椅子に座ろうとすると赤屍とルミナが言葉を交わしている。
その驚きを素直に口にする。
「驚いたね、Drジャッカル。君はこのような軍議は興味がないと思っていたのに。
すると私の土産話も既に映像として見たわけか。」
残念そうに肩をすくめて赤屍の隣の席に身を沈める。
だが、折角話すことを楽しみにしていたのでやはり一言話さなければ気がすまなかった。
嬉しそうな赤屍に更に言葉をかける。
「喜びたまえよ。何しろ私の右腕を持っていくほどの者だ。
朽ちていなければ・・・きっと君の渇きを癒してくれるはずさ。
他にも今回は粒ぞろいだったからねえ。ん?そういえば、彼はまだ帰ってきていないのか。」
軍議が続く中、赤屍と会話を交わし、きょろきょろと辺りを見回す。
ムーミン大佐が探したのは、共にオロッパスの城へと向かい城攻めを担当した紅竜だった。
高い野心を持つ男が、軍議で自分の戦果を高らかに報告すると思っていただけに、赤屍の参加とは逆の意味で驚いていた。

>「そちらの女性はどなたです?新しいお仲間ですか…?」
「ああ、壇上で言ったとおり、ね。我々の同輩になる確立は高い。
君にとっては残念だろうが、分別は付けてくれたまえよ?」
そういいながらルミナに目配せをした。(これが先程の言葉の意味さ)と。
バトルマニアではあるが、その分別はつく男。
そうは判っていても改めて言わずにはいられない赤屍から醸し出される気に苦笑しながら。

>145
そんなやり取りをしていると、大魔王が目覚めたと怪鳥が声を張り上げる。
そして大魔王の代弁を始めた。
>「皆の者、よく聞け!次のアヨガン国との戦には『地獄の帝王』を参加させるとのことだ!
その言葉を聞き、ムーミン大佐の咥えているパイプから立ち上る煙が少し濃くなった。
『地獄の帝王』を出す。
それは総攻撃であると同時に、それだけアヨガン攻略には骨を折る、という事を現しているのだから。
「着任早々大仕事だねえ。」
ルミナに語りかけるムーミン大佐の顔は愉悦に歪んでいた。
ムーミン大佐の報酬は完全歩合制。この世界で戦い成果を挙げればあげるほど報酬も大きくなるのだから。
そして、赤屍にも声をかける。
「さて、出陣までに再生が間に合うといいが。
Drジャッカル。腕ができたら結合手術をお願いできるかな?」

147 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 22:43:02 O
>>146ムーミン大佐からフェルの話を聞いた赤屍は久々の強者の出現を喜んでいた。
「実に楽しみですよ…ここ最近ずっと闘っていなかったものですから…ホントに楽しみです…。
ああ、紅竜さんならまだお帰りになられておりませんが…まあ、彼なら大丈夫でしょう。」
そしてムーミン大佐は赤屍に分別をつけるようにと警告する。
「ええ、分かっていますよ。私は無差別に人を殺したりはしません。」
口ではそう言っているが、説得力はあまり感じられない。

>>136赤屍はなんとなく勘づいていた。
ルミナが100%こちら側の人間ではない、いわゆる中立的な立場の人間であるという事に。
だが赤屍にはそんな事どうでも良かった。
赤屍もまた、100%魔王軍の味方という訳では無いのだ。
強者と闘う為に魔王軍に着いているだけで、魔王に協力する気なんてさらさら無い。
むしろ一戦交えたいとも考えている。
結局は強者と闘えればどちら側でも良いのだ。
「クスッ…ナンパですか…失礼しました。
私は赤屍蔵人、運び屋を営んでおります。以後お見知りおきを…。」
赤屍は笑顔で自己紹介をする。
しかしこの男ほど笑顔が不気味な男は滅多に居ないだろう。
非常に胡散臭いというか裏がありそうな笑顔だ。

148 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 22:44:48 O
「話相手が居なくて退屈していたんですよ。
それに…貴女は私と近い立場の人間だと思いまして…」
>>145と、ルミナとの会話の途中に怪鳥が大魔王の代弁を始めた。
「ようやく動き出しますか…私の出番もそろそろですかね…。」
嬉しそうに呟くと、ムーミン大佐から縫合手術を依頼される。
「よろしいですよ。片腕じゃ何かと不便でしょうからね。腕が出来たら教えて下さい。」

149 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 23:33:24 0
>140>141>135

>「“臭い”?」

ランカムの一人がパラシエルの見ている方向を見た。
パラシエルもまたじっと無表情で見つめ続けている。
すると目線の先に美しい一人のエルフ、リーべルが現れる。
しかしエルフといってもただのエルフではない。
ダークエルフである。
ポップが浮かれた声で話しかけてくる。

>「うひょお、美人じゃねえか。あんたの知り合い?」
「馬鹿か、僕様は任務以外で人間とは付き合わない主義だ。」

一方パラシエルは軽くポップを馬鹿にすると立ち上がる。
すると左手に取り付けられた装置から三本の大きな銀の爪が出てきた。
戦闘態勢である。
ダークエルフはその性質上魔王側に付いている事が多い。
もし敵であったらこのエルフを拷問に掛け情報を引き出せるだけ引き出そうと思ったのだ。
パラシエルは敵に情けを掛けるほど慈悲深い天使ではない。
しかし、パラシエルの爪は使われることはなかった。
そのエルフが話しかけるよりも先に怪我人の治療を始めたからだ。
ひとまず戦う気は無いらしい。
しかし暫くパラシエルは戦闘態勢を解かずじっとリーべルが治療しているのをみつめる。
が、パラシエルはすぐに飽きてしまい、爪をしまうとあくびとけのびをし、地面に体育座りをした。


150 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/27(日) 23:35:07 0
>138>140>141
暫く地面に転がる石で遊んでいると急に怒声が響いた。

>「俺は好きにさせてもらう!短い付き合いだったな!!もう会う事もない!」

パラシエルはぐるんと声のする方を見ると、すでにフェルが歩き出していた。
奴もどうやら勇者側の人間らしいがこちらと一緒に行動する気は無いらしい。
フェルが歩み出した途端慌てて一人の騎士、ランカムも後を追う。
確かあの騎士、ポップの近くにいた男である。

「・・・全く、人間とは何故こうも後先考えずに行動したがるのだろうか。
まあいい、僕様には奴らが死のうが生きようが関係ないことだ。」

そう言うと再度あくびをして石を積み始める。

「しかし僕様にはこういう緊急時に単独行動を好む人間の気持ちがわからんな。
それについて行く人間の気持ちも。」

>「まあ、あいつの事はランカムに任せるとしてよ、パラシエル。
>俺達はこれから一体どうするべきなんだ?戦うにしろ、何か拠り所はほしいところだぜ。
>差し詰め、アヨガンとやらには行くべきなのか?」

ポップの問いかけにパラシエルは顔を上げると少し考え言った。

「・・・まあここにはもう用はないだろう。
何やらアヨガン方面から匂うものがある。言ってみて損は無いと思う。
それに時間があればできればゆっくりと今まで起きてたことを話して貰いたいしな。」

そう言うとポップを見てから上条の方を見た。
先ほどからこの男の臭いを覚えようとしているがまるでこの男から臭いを感じ取ることができないでいた。
まるでパラシエルの力が拒否されてるかのように。
パラシエルは鷲のクビを左手で持ち上げ猛烈にビンタし起こし鷲の上に乗った。

「ほれとっとと乗れ。チビ勇者ご一行。」

そう言うと鷲を動かした。
二種類の強く甘い臭い、即ち宝の臭いがするアヨガン方面へ。

151 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/28(月) 02:33:09 0
>>141
「ちょ、ちょっと待ってくれ!ここは地球のヨーロッパ付近じゃないのか?
 異世界とか召喚って……流石に突拍子無さすぎる。第一、異次元ならともかく
 平行世界なんてモンがあるなんて話、聞いた事ねえぞ?」
ポップというらしい少年が教えてくれた内容を聞いた上条は頭を抑え、
混乱した様子で対応する。だが、上条が混乱するのも無理は無い。
オカルトに関わっている人間とはいえ、上条の生活するのは基本的に科学側の学園都市だ。
魔法やモンスターが身近に存在するポップのいた世界と違い、物事が科学的に解明されている
故に、ファンタジーへの状況処理の速度には差が出てしまう。
(……そうだ!)
上条は、何かを思い出し、ポケットから携帯電話を取り出してみる。その表示は、圏外。
学園都市製の携帯電話が、これほど開けた場所で圏外になる可能性はかなり低い
(さっきの鳥といい携帯といい、じゃあ、ここは本気で異世界って事なのか?)
>「幸い、仲間は何人かいるみたいだぜ。とりあえず、あそこにいる変なのが天使のパラシエル…」
ポップの言葉で迷走している思考を一時中断し、指し示す方向を見ると
そこには先ほど鳥の上で見た少年(?)と、先ほどはいなかった女性が一人。
上条はポップの説明が途切れたので、続きを促すために視線を戻すと
「なあポップ…っていねえ!?」
>>143
ポップはそこから既に消え、女性の方に向かい何やらフレンドリーに話しかけていた
>「はいはーい!ここにも重傷人が一人いるぜー!」
「どこの世界にも青髪ピアスみたいなのはいるんだな……」
上条は学園都市の友人の一人を思い出し、ポップ達の方を複雑な目で見て呟くと、
>>138
>「俺は好きにさせてもらう!短い付き合いだったな!!もう会う事もない!」
そんな怒声が聞こえてきた。
怪訝な表情で上条が声の方向を向くと、二人ほどの青年が離れていく所だった。
(なんだ?何か揉め事か?)
場合によっては仲裁に入ろうかと考えたが、周囲の様子を見るとどうも違うらしい
先頭を行っている青年が集団から離脱するとか、そんな感じの問答の様だ。
青年達と、先の女性は結局離脱していった様だ。

152 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/28(月) 02:35:06 0
>>150
>「しかし僕様にはこういう緊急時に単独行動を好む人間の気持ちがわからんな。
>それについて行く人間の気持ちも。」
パラシエルの台詞に、上条は圏外を示し続ける携帯をいろいろ操作しながら、何となく返事をする。
「まあ、確かに皆でいる方が楽しいとは思うけどさ、こんな風にいきなり知らない場所に
 連れてこられたら混乱してどう行動すればいいか解らないってのは普通だと思うぞ?
 つーか、今現在の上条さんがそうですから」
実際、ポップに話を聞けなければそうなっただろう。うだー、とため息を付きながら
上条は携帯を閉じる。少なくともここがどこか遠い世界だという事は認識したようだ。
それに、と前置きを置き、当たり前のように続ける。
「それに、着いて行く奴は心配だったんだろ。」
遠目に青年の一人と女性の表情が見えたからこそ、
何となく嫌な予感はあったが、上条は彼らを心配することはしていなかった。

>俺達はこれから一体どうするべきなんだ?戦うにしろ、何か拠り所はほしいところだぜ。
>差し詰め、アヨガンとやらには行くべきなのか?」
>「・・・まあここにはもう用はないだろう。
>何やらアヨガン方面から匂うものがある。言ってみて損は無いと思う。
>それに時間があればできればゆっくりと今まで起きてたことを話して貰いたいしな。」

『戦う』という言葉を澱み無く出すポップに驚きを覚えながらも、
しかし、現状ではどうする事もできなさそうなので、上条は促された通りに
鳥に乗ろうとするが、そこでパラシエルに尋ねる。
「なあ、勇者って誰……じゃない。えーと……そういえばアンタ何て名前か聞いて無いな。
 っつーか、ちょっと待ってくれ、ここに残ってる人達は大丈夫なのか?
 随分怪我してる人達がいるのに、またさっきの獣耳っ娘みたいなのに教われたりしたら」
上条が見ているのは、先の戦闘に巻き込まれたと思われる多くの負傷者。
正直、上条はまだ異世界に来たという事を全ては信じきれていないが、例えどんな目的の為に
どこに行くにしても、目の前の人達が危険に晒されるのを解っていて、
そして、自分がそれを助けられる可能性を持っているのならば、上条はそれを見捨てる事は
しない。彼らが危ないのならば、上条はここに残る事を選択するだろう。


153 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage生意気ですみません;] 投稿日:2008/01/28(月) 15:22:30 0
>152
>「なあ、勇者って誰……じゃない。えーと……そういえばアンタ何て名前か聞いて無いな。
>っつーか、ちょっと待ってくれ、ここに残ってる人達は大丈夫なのか?
>随分怪我してる人達がいるのに、またさっきの獣耳っ娘みたいなのに教われたりしたら」

上条の問いにパラシエルは一つため息をつき答えた。

「全く面倒な奴だ、僕様の名はパラシエル、
この世界にやってきた勇者達を助けに来てやった宝箱の世界からやってきた宝の天使様だ。

ここに残ってる奴らは恐らくもう大丈夫だろう。援軍が来た臭いがする。
漂ってくる臭いの方向からして恐らくアヨガン方面の騎士達。
そこら辺の騎士はそこそこ強いからな。多少の魔物が来ても太刀打ちは出来るだろう。
負傷者の手当もある程度やってくれるはずだ。それに・・・まだ先ほど去った二人とダークエルフがまだここに居るらしいしな。
なににせよこの半瀕死状態の国を守ったってなんの価値は無い。
この国を守る暇があったらとっとと別の事をした方が良いだろう。」

どうやらパラシエルは上条とは逆の正義をもっていた。
目の前の負傷者よりも未来の負傷者、取りあえずなんでもいいから早くこの仕事を終わらせたいのだ。
どんな人間にも生きているだけで価値がある等という考えも特になかった。

「それから勇者について聞き出そうとしたな。勇者の詳しい定義については僕様もよくわかってない。
ただ神からはこの世界を守る意志のある異世界人と言われた。なのでお前を助けたこのチビ助も勇者だ。
無論その意志があるのなら・・・貴様も勇者、単独行動を始めたツンツン頭らも勇者である。

なので、本来あのツンツンらもサポートしなければならない立場かもしれないのだが・・・
わざわざ単独行動を好むつっぱった奴らのサポートを必死でするほど僕様はやる気のある天使では無いものでな。
このチビ勇者の近くが一番やりやすそうだと見た。一番あほそうだしな。」

154 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/01/28(月) 16:56:05 O
紅竜の放った魔力弾は、兵士たちを守ろうとしたのか飛び込んできた男の手にとめられた。
>「ふん、弱いものを倒して面白いか?俺が相手をしてやる!」
「おおう。英雄気取りの愚か者がきおったか」
ニヤリと余裕の笑みを浮かべてみたが、この男の技の破壊力を知っている以上、内心は穏やかではない。
地下の戦いには参加していなかった紅竜だが、戦いの状況は把握している。
ウサコやムーミン大佐との戦いの傷が残っていないのも問題だし、
そもそも自分の拳法が通用するかどうかも疑わしい。とそこまで考えたのだが‥‥
相手の行動は予想外のものだった。

>「…な、なに?………」
>「し、しまった……クッ…いいだろう!覇気などなしでもやってやる!!」
その言葉、その慌て方。間違いない。こいつはあの強力なオーラを使えなくなっている!
横にいる黒肌の女が男になにか話しかけているのが聞こえたが、
地下での戦いにいなかった女など警戒する必要もない。
「くくく‥‥貴様どうやら覇気とやらを使えなくなったようだな。
まあ、仕方あるまい。
あんな二足歩行のカバに負けたら、恥を知る人間は死にたくもなるだろうからなぁ」

だがフェルはまだ闘志を失っていないようで、構えは崩さない。
それでいい。こんな所で挫折してもらっては困る。
世界征服の野望のためにも、大魔王に立ち向かう英雄は多い方がいいのだ。
大魔王と英雄たちが戦いの末共倒れになった隙に、魔王軍の全権を握るのが紅竜の筋書きなのだから。
戦果の報告もせず残ったのも、召喚戦士達をアヨガンに行かせるお膳立てをする為。
あの強大な力を持つ石に加えて封魔の宝玉まで大魔王の手に落ちれば、魔王に対抗できる者がいなくなるのだ。

>「…襲撃者ッ!?」
声が聞こえた方を見れば、聖印騎士と名乗っていた男がこちらに駆け寄ってきている。
1対2ではさすがに分が悪い。
「遅いわ!黒竜波動拳!!」
援軍到着の前に一撃は打ち込んでおこうとフェルに向かって両手から気弾を放つ。
が、気弾は風の障壁に軌道をそらされてあらぬ方向に飛んでいってしまった。
「おおう?魔術士がいたのか」
リーベルが魔法を唱えていたのを完全に見過ごしていたのだ。
そういえば、魔王軍の手配書に召喚石の秘密を知るダークエルフとやらの事が書かれていたが、
あれはこの女の事だったのかもしれない。
石ころの秘密なぞ自分で解き明かせるが、いざとなれば下僕アンテナを使って協力させる必要があるだろう。

そこへ魔王軍の伝令が飛んで来て、大魔王の意志を告げた。
「おおう!そうか!次のアヨガンとの戦いには『地獄の帝王』が参加するのか!」
わざわざ大声で伝令の内容を叫び、兵士や勇者様御一行に聞かせてやる。
ここまですればお人好しの奴らは必ずアヨガンに行くだろう。
「ふはははは!それならばもうこの城に用はないわ!さらばだ!
この悪の天才紅竜と戦って生きていられることを幸運に思えい!」
紅竜は忘れずに自己紹介を済ませると、転移魔法を発動させる。
特に妨害がなければ、先に指定している離れた場所に移動できるだろう。

155 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/01/29(火) 18:49:09 0
>149>154
>援軍到着の前に一撃は打ち込んでおこうとフェルに向かって両手から気弾を放つ。
>が、気弾は風の障壁に軌道をそらされてあらぬ方向に飛んでいってしまった。
魔力を練り切れないまま発動した風の守りだったが、相手の攻撃の
威力がそこまで大きくなかった事も手伝って期待通りの効果を発揮した。
しかし、敵からは戦意を感じない。まるで手加減しているような、奇妙な
感じだった。エルフ特有の鋭敏な感覚は目の前の敵の力はこの程度でないと
はっきり伝えてきているにも関わらずだ。

>「おおう!そうか!次のアヨガンとの戦いには『地獄の帝王』が参加するのか!」
敵は伝令と思しき使い魔からの指令を、まるでこちらに聞かせるかのように
大声で言い放った。表情から見て間違いなくわざとだ。魔王軍も一枚岩では
ないと言う事なのか……敵も召喚者、だとすれば頷けなくも無いが。
だとすると、目の前の敵の目的は……?

>「ふはははは!それならばもうこの城に用はないわ!さらばだ!
>この悪の天才紅竜と戦って生きていられることを幸運に思えい!」
そう捨て台詞を残して敵、紅竜は転移魔法で離脱した。
実力ある者が自分から天才と名乗ると言うのは、自分本位な言動を
当然の事として捉えている証拠だとリーベルは思っている。
ダークエルフと言う種族の選民思想に相通ずる物があるその考えを、
リーベルは許す事が出来ない。それゆえに追われたのだから。

だが今のリーベルに出来ることはない。転移魔法を阻止できるだけの
魔力は残ってないし、そもそも発動した転移魔法の転移先を操作する事も出来ない。
(「自分勝手な存在が多すぎる……何故そんな生き方が出来るの……」)
ダークエルフでありながら他者を傷つける事を良しとしないリーベルには
未来永劫理解できない思想。それは相手も同じだろう。

二度あることは三度あると、いまだ警戒を解かないままリーベルは
先ほど自分にあからさまな警戒心を見せた少年の行動を思い返していた。

>すると左手に取り付けられた装置から三本の大きな銀の爪が出てきた。
あの少年は自分を見ただけで爪を展開させた。
それはつまり、ダークエルフと言う存在を知っていると言う事だ。
周囲にいた他の人々はそんな行動は取らなかったし、そのいずれもが
見た事のない装いだったのを考えるとあそこに固まっていたのは
全員召喚者なのだろう……あの少年は、自分がいた世界から召喚されたのだろうか?
それに、少年から感じる気配は自分の種族としての属性とは真逆に位置するもの。
どのような存在か……その辺りまで考えて、急に視界が回り始める。
度重なる魔力の消費と精神の酷使で限界が来たらしい……程なく、リーベルは意識を失った。

156 名前:オロッパス周辺の状況 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/29(火) 19:33:18 0
部隊が紅竜の襲撃を受けているとき、忍者みたいなものが影の中から現われ、アヨガン国の報告をした。
「アヨガン本国が大魔王軍の総攻撃を受け、苦戦を強いられております!
 至急、本国にお戻りください!」
もう襲撃が始まっているとの報告だった。
忍者みたいなものは全身を激しく回転させ、タケコプターの要領で空を飛んで本国へと引き上げていった。
「むむむ、魔王軍め。相変わらず行動が早過ぎる。
 しかし、此処で退いては負傷兵や一般人が……くそっ、どうすれば!」

>154
報告が来たのとほぼ時を同じくして、魔王軍が引き上げていった。
「む、魔王軍が引き上げてゆく!」
これはどうしたことかと思いつつも、とりあえず危機が去ったことに安堵した。
だが、今度は自国の危機とあって、隊長は事を急がねばならぬと判断したようだ。
「お前たちは此処に残って、住民や負傷兵の救護を続けろ。
 私は報告に戻るが、くれぐれも警戒を怠るな」
隊長が部下にそう指示を出して踵を返し、馬に飛び乗った。
「『地獄の帝王』……話には聞くが、一体どのような怪物なのだ?」
馬を走らせる隊長は、1人そんなことを呟いていた。

157 名前:生き残りの魔術師 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/29(火) 20:44:33 0
1人の魔術師が、瓦礫の山の中から這い出てきた。
しかし、もはや立っているのもやっとの状態である。
「力及ばず国は破壊され、『石のような物体』も奪われてしまった。
 民には酷だが、今はこの国を守るよりも、アヨガン国の救援が先決だ。
 アヨガン国の『封魔の宝珠』が魔王軍の手に渡ってしまえば、
 もはや魔王を倒す手立ては無くなってしまう。
 そうなれば、いずれこの世界そのものがこの国のようになってしまうだろう」

死に瀕した魔術師は、まず平らで広い場所を探した。
そして、自らの血を使って魔法陣を描いた。
アヨガン国との連絡用に使われていた転送用の魔法陣と同じものだ。
先ほどの戦いで崩れてしまったことを知っていた彼は、あえて描き直したのだ。。
魔術師はその作業で体力と魔力を使い果たした。
『勇気と力を備えた者がこの転送の魔法陣を見つけることを望む』
魔術師は最後の力を振り絞り、魔法陣の近くにそう書き記した。
「ぐふっ……」
魔術師は息絶えた。

158 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/01/29(火) 21:45:42 0
>>150
>「・・・まあここにはもう用はないだろう。
>何やらアヨガン方面から匂うものがある。言ってみて損は無いと思う。
>それに時間があればできればゆっくりと今まで起きてたことを話して貰いたいしな。」
「何だ、天使っつっても何でも知ってるわけじゃねえんだな」
ポップは両手を広げた。
神の使いだから、何でも知っていて都合よく旅をナビゲートしてくれるものだと思っていたらしい。
「じゃあ、行くだけ行ってみっか。どうせアテもねえんだしな。誰かさんも思ったより頼りにならなさそうだしよ」
ポップはパラシエルに嫌味な笑みを向ける。
小便臭いとか糞餓鬼と言われた事へのみみっちい仕返しだった。

>>152
そしてパラシエルはさっきの鷲にまたがり、ポップ達にも乗るように促す。
上条はそれに対し、ここの怪我人達を放置して、さっきみたいな連中に襲われたらどうするのかと問う。
しかし、パラシエルは最早自分たちがここを守る必要はない事を説明する。二人の考え方は正反対だった。

>>153
>このチビ勇者の近くが一番やりやすそうだと見た。一番あほそうだしな。」
「うっせえこの穀潰し天使!さっきからチビチビっておめーも大して変わんねーだろうが!」
ムキになって唾を飛ばして反論した後、上条に向き直って言う。
「…上条、口は悪いがこのアホ天使の言う事も一理あんぜ。いや、守る価値がないっていうんじゃねえよ」
くるりと辺りの惨状を見回してみせる。
「言いたかねえけどもう壊滅状態だ。今さら、あのレベルの奴らが先陣切って攻める価値がないとは思わねえか?」
幹部が目的もなくほぼ壊滅済みの国へわざわざ出張ってくるとは考えにくい。
石を奪取したムーミン大佐があっさり退いたことからしても、目的は国の壊滅でなくあの石だったのだろうから。
言葉にはしなかったが、つまりここは自分達の戦力で守る場ではないということだ。
「怪我人の治療も今の魔力じゃできねえし、ここにいても俺達に出来ることはあんまりねえ」
怪我人はアヨガンの騎士達が看てくれるだろう。自分達にも多少の手伝いはできるだろうが、それだけだ。
一騎当千の戦力を持つ召喚戦士達には、きっと他にやるべき事がある。

「でもよ、せっかく目的地のアヨガンの騎士が来てるっつうんだし、ランカム達もまだ戻ってきてねえ。
そこで頼みたいんだけど、ここでちょっと警備や救助の手伝いをしながら情報を集めておいてくれねえか?
俺はこのトンヌラ天使と先に行ってちょっとアヨガンの様子を見て来っからよ。
向こうで落ち合おうぜ。ランカム達を連れて後から来てくれ。何かあったら瞬間移動呪文ですぐに戻って来るからよ」
ポップはそう言って、鷲の背中にひらりと飛び乗ろうとして失敗し、結局よじ登った。

159 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/01/30(水) 01:04:26 O
−−これも“魔法”か?
いつの間にか、周囲を包む気流。
…いや、彼女流に言わせれば“精霊”の力なのだろう。

逸れた黒竜波動拳の着弾が、近くで砂煙を上げるが、
“風”の加護ゆえか、視界は保たれている。
−−よしッ。この位置なら、彼を支援できる。
紅竜を挟んで、フェルと対角線上に立つ。
挟撃は、騎士団の基本戦法だ。

しかし、その状況はすぐさま、敵の伝令によって水を差される形となった。
−−侮られているのか?
男にはもはや、戦闘継続の意思は無いと見えた。
“紅竜”そう最後に名乗りを上げ、男は転移魔法を発動させる。

挟撃の状態で、伝令と対話する剛胆さだ。
“天才”の自称も、強ちただの慢心ではないか。
「見事な引き際だな」
苦々しげに言い、抜き身のレイピアを鞘に収めた。

いつの間にか、部隊長の傍らには、影のような男がいる。
伝令がもたらした報告は、魔王軍侵攻開始の報だった。
これは予想以上に、動きが早い。
事前に予定されていたと考えても、侵攻までの動きに、淀みが無い。
よほどの命令系統が構築されているのが、あるいは−−
−−魔王軍の中でも、全軍に直接指揮をとれる程の者が出向くのか。
「それが、“地獄の帝王”という訳か…?」

この世界に来てから、遭遇する事はわからない事だらけだ。
−−ならば、自分の眼で確かめるしかない。
固定観念に囚われた想像が、真実に辿り着く事は無いだろう。
今は眼に見える物を、疎かにしてはならない。

「フェル殿、その方をッ」
疲労からか意識を失った女性を示しながら、道具袋の中を探る。
最初、持っていた回復薬・キュアルートは三個だった。
最初の襲撃時に一つ使い、二つ目はフェルに使い…三個目は?
−−気絶中に落としたか。
実際にはフェルが、ポップに使用していたのだが。

「…皆の所に戻りましょう」
他の者達なら、彼女に適切な処置を施せるかもしれない。
フェルは不安定でも、無防備な彼女を見捨てるような男では無い。
そう信じた。

160 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/01/30(水) 17:57:07 0
>>144>>154>>155>>159
「本調子ではないようですね……文句はお互い生きていたら
後でいくらでも聞きます。あなたはあなたの好きにしなさい。
私も私の好きにしますから。」
そう言い女は勝手に風でできた防御膜のようなものを俺や周りの雑魚に張る。
俺は女を睨みつける。なぜ他人など助ける!?それも息まで切らしてすることか!?
「遅いわ!黒竜波動拳!!」
しまった。この女に気を取られすぎてあいつの動きを見れてなかった。
しかし、気弾は勝手に俺から逸れていく。これがこの女が張った術か!
「貴様!いい加減にしろ!!俺に構っている暇があったらそこら辺の雑魚を守っていればいいだろうが!!」
向こう側に見えるランカムといい、なぜこいつ等は援護したがる!?

その時、敵の伝令を受け取ったフードの男がわざとらしい大声で叫ぶ。
「おおう!そうか!次のアヨガンとの戦いには『地獄の帝王』が参加するのか!」
アヨガン?地獄の帝王?よくは分からんが近いうちに戦いがあるらしい。
それだけ聞ければ俺は十分だ、戦いがあればあいつも出てくるかもしれない。
そう…この首の刻印を刻んだ奴であるムーミン大佐に!
そうだ、この前の男にしろ地獄の帝王にしろ…ムーミン大佐に勝つ価値に比べれば微々たるものだ。
この傷がある限り俺はあいつに生かされているのだ!それがまずガマンならん!
こいつ等に助けられるよりもガマンならんことだ!

「ふはははは!それならばもうこの城に用はないわ!さらばだ!
この悪の天才紅竜と戦って生きていられることを幸運に思えい!」
「おい貴様!アヨガンの戦いに参加しろとムーミン大佐に言っておけ!!
 本当なら貴様も倒しているんだが…そのために生かしてやる!」
なにはともあれ面白くなってきた。とにかくアヨガンとかいうところに行く必要がある。
「おい女!アヨガンとかいう場所を知っているか?」
返事はなく。振り向くと女は気を失っていた。他人に気を配って自分が倒れるなど馬鹿な奴だ…
「フェル殿、その方をッ」
「…チッ、なぜ俺が!!」
そういい女を抱かかえる…本当なら無視するがこの女にもまたランカムにも一応助けられている。
だから恩着せがましい手助けを受けて借りを作るのは嫌なんだ!
必死で薬を探しているランカムに少し苛ついた口調で言う。
「あの薬ならあのバンダナに使った、勝手に使って悪かったな。
 それで?この女はどうすればいい?正直いつまでもかかえられるほど軽いものでもないんだ!」
「…皆の所に戻りましょう」
少し考える、俺はあの時声高々に決別を口にした…
今更恥ずかしくて戻れるわけもない…まさかこいつ俺に恥をかかせるために言っているのか!?
だが…俺1人ではアヨガンについての行き方が分からないのも事実…
ましてや俺はそういう情報収集のような真似は嫌いだし苦手だ……
「…………いいだろう、だが勘違いするなよ。戻っても別にあいつ等を助ける気もないし、
 助けられる気もない!そしてこの女を助ける気もない!仲間になる気など更々ない!
 ただ俺は1人ではアヨガンについての情報を集めるのが難しいと判断したから戻るだけだ!」
 

161 名前:兵士達の会話 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 00:21:38 0
アヨガン国の兵士の話題は、『地獄の帝王』の噂で持ちきりだった。
何せ、『地獄の帝王』は、大魔王の軍団で最も恐ろしい怪物だと言われている。
紅竜によってその名を聞かされ、震え上がる者も居よう。
状況が状況なだけに、明るい話題など聞こえてこない。

「聞く話によると、『地獄の帝王』は見上げるような巨体の怪物だという。
 本国が苦戦しているという報告はあるが、今のところ、『地獄の帝王』らしい奴が現われたとは聞かぬ」
「見上げるような巨体?」
「ああ。小屋くらいあるらしい。
 そのせいかは知らんが、篭城策をとった城の多くが、ヤツによって落とされているという報告もある。
 どれだけ城門を硬く閉ざしても、すぐに破られてしまうんだと。
 それどころか、城が丸ごと破壊されることだってあったらしい」
「なるほど。確かに、そんな奴が来てたら、いくらなんでも報告が来るだろうな」
「うむ。敵さんがこのままの勢いで攻める分には、あと半月は篭城できるとのことだ。
 しかし、これ以上攻撃が激しくなれば、どれだけ耐えられるかわからんな。
 まして、何人もの召喚戦士が大魔王の下についている以上、『地獄の帝王』以上の奴が居ないとも限らん」

また、随分とネガティブな方向に話を進めている兵士達も見られた。
「向こう側の召喚戦士も、まだあまり多くは出撃していないらしい。
 向こうも『切り札』は幾つも残しているようだな」
「何言ってるんだ。こっちだって『封魔の宝玉』がある」
「だが、それは向こうにも知れ渡っていることだろう。
 その証拠に、奴等はそれを狙って我等が祖国に進軍しているではないか」
「それに対して、こちらは向こうの切り札とも言うべき『地獄の帝王』についても、
 向こう側についた召喚戦士にどんな奴が居るのかも、われわれはよく知らない。
 何より、大魔王自身が戦った記録が無い以上、ヤツがどんな力を持ってるのかを知る術が無い」
「確かに、向こうの戦力は未知数だ。
 それに対してこっちの切り札は既に割れている……かなり厳しいな」
兵士達の表情は、一様に険しかった。
それだけ戦況が厳しい事が伺える。

162 名前:兵士達の会話〜アヨガン国の状況 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 01:05:40 0
更に、オロッパスの負傷兵―――先の戦いの場に居合わせた者が、
怪我の手当てを受けているときに、アヨガン国の兵にこのような事を語っていた。
「カバみたいなのに襲われたんだ」
「カバ?」
ムーミン・トロールという種族は、直立するコビトカバのような姿をしている。
そう、あのムーミン大佐のことに相違なかった。
オロッパス産負傷兵は頷いた。
「ああ。カバにしか見えなかったが、圧倒的な強さだった。
 われわれの国防の切り札たる『石のような物体』を持ち去ったのもそいつだ。
 しかし、引き上げたときにはかなりの重症を負っていた」
「なるほど。 敵側の召喚戦士は、まだそれほど姿を見せていないと聞くし、
 本格的に主力を投入するのは、そいつの傷が癒えてからかも知れんな」
「しかし、『地獄の帝王』だって?
 さっきのカバみたいなバケモノが、まだ他にも居るのか?
 そうだとしたら、我々だけでは、ますますどうしようもないではないか……」
時間が経つにつれ、兵士の士気は下がっていく。
古来より、士気の低下は戦況に重大な影響を及ぼすと言われている。

話題がループし、新しい話題もなかなか出てこない。
アヨガン国の王城が落ちたとか、『封魔の宝玉』が奪われたとか、そういった凶報が無いだけマシなのだろうが……
だが、そうして数日たったある日のことだった。

163 名前:アヨガン国の状況 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 01:31:21 0
アヨガン国の王城を囲む魔物達と懸命に戦っている一団が居る。
彼等は城壁から少し離れた場所に物見櫓を築き、
有事の際に光で信号を送って本国に連絡を送ってる任務も負っている。

その日は、物見櫓の兵士達が騒がしかった。
騒ぎを聞きつけた将軍が、この事態の説明を求めた。
「将軍、大変です!『地獄の帝王』が姿を現しました!」
見張りの兵士が叫んだ。
「何だと!貸せ!」
将軍は見張りの兵士の持っていた双眼鏡を分捕って、物見櫓の上によじ登った。

双眼鏡覗き込み、『地獄の帝王』の姿を確認しようとした。
「なんと……あれが『地獄の帝王』……なんと禍々しい姿!」
この世界にもドラゴンやグリフォンのような幻獣は存在する。
だが、この世界に本来生息するどんな幻獣とも異なる、見たこともない異形の怪物だった。
大きさも、報告にあった「小屋くらいの大きさ」どころではないことがわかる。
「全軍、守りを固めよ……むむ!」
更に将軍の顔が引きつり、驚きの声をあげた。
視線は、『地獄の帝王』とは別の部隊だった。
「あの異様な風体の連中は、紛れも無い召喚戦士!
 魔王軍め、いよいよ本気ということだな!
 皆の者、心してかかるのだ!」
将軍は片手で光源を操作して、王城に『地獄の帝王』の来襲を告げつつ、現場の兵士達に指示を出した。

164 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 21:32:10 0
>>153
パラシエルが自分を天使と言ったのを聞いて、一瞬、うわ、ひょっとして関わっちゃいけない
 類のヒトだったか!?などと思った上条だったが、話を聞いていると嘘を言っているよう
には見えなかったので(かなり理解不能な単語が混じっていたが)上条はこの自称天使の言う
事を信じてみようと思った。しかし、話を聞いているうちにパラシエルの言った
>なににせよこの半瀕死状態の国を守ったってなんの価値は無い。
という台詞に、上条は眉を潜める。その考えは上条にとって論外だったからだ。
だから、上条は言う。

「ふざけんな。目の前に助けを求てる奴がいて、手を延ばせば助けられる力を持ってるのに、
 そいつを助けないで何が天使だ、勇者だ。何かを見捨てて誰かを助けるのが勇者っていうなら、
 んなモンに価値なんてねえよ。」
上条にも、パラシエルの言っている事に理があるのは分かっている。
しかし、それは未来の為に今を切り捨てる選択肢だ。そして、
上条当麻は現在の為に未来を捨てる事も、未来の為に現在を捨てる事も認めない。
現在も未来も笑ってって迎えられる結末、それが上条の願いだった。
だからこそ、自分達を助けてくれたこのパラシエルという少年に、現在を諦めた様な事を
言って欲しく無かった。

>>158
>「でもよ、せっかく目的地のアヨガンの騎士が来てるっつうんだし、ランカム達もまだ戻ってきて>ねえ。
>そこで頼みたいんだけど、ここでちょっと警備や救助の手伝いをしながら情報を集めておいてくれねえか?
>俺はこのトンヌラ天使と先に行ってちょっとアヨガンの様子を見て来っからよ。
>向こうで落ち合おうぜ。ランカム達を連れて後から来てくれ。何かあったら瞬間移動呪文ですぐに戻って来るからよ」

「分かった、気をつけろよポップ」
暫く考えてから「ハァ」と息を吐き、頷く。上条はポップの提案に乗る事にした。
上条当麻は、『幻想殺し』以外は普通の高校生に過ぎない。
魔法で治療も出来なければ、超能力で遠距離を移動することも出来ない。
故に、ポップ達に着いて行っても出来る事はないだろう。
それに、上条は誰かを殴って終わる程戦争が単純な物ではないと知っている。
何より、自分の信念の為に上条はポップ達に着いて行く事よりも、此処の人達の手伝いを
する事に決めたのだった。上条は、パラシエルの方へ向き直り、
その目を真っ直ぐに見て言う。
「ポップと、アヨガンって国に人たちの事を頼む。」

165 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 21:49:09 0
>163
咥えたパイプタバコをゆっくりと掴み、指先でくるくると回す。
パイプタバコをまた咥えると、その手はクッパ、グッパと何かを確かめるように握られる。
「流石はDrジャッカル。斬るのもくっつけるのも見事だ。」
満足そうに笑みを浮かべるのはムーミン大佐。
再生した腕の接合手術を終え、完全回復していた。
まるで居室でくつろぎながら話しているようではあるが、ここは大海原真っ只中。
そして目前には戦場となっているアヨガンの城が見える。
水の妖精ケルピーの力により大地に佇むが如く水面に立っているのだ。

オロッパスの城で石のようなものを奪取した翌日、魔王軍はアヨガン攻めを開始した。
その決定の早さ、用兵の速さは見事としか言いようがない。
しかし敵も然るもの。
堅牢な城に篭り徹底抗戦を続けている。
そこで活躍する白い鷲に乗る二人の少年の話も耳に入っている。
とはいえ、今まで攻めていたのはいわゆる雑兵だ。

主力を温存している理由は二つだろう。
一つは石のようなものの解析がまだ終わっていない。
そしてもう一つ。
これはムーミン大佐の想像、いや、嗜好でそうであって欲しいという願望でもあるのだが・・・
希望を持たせた方がより深い絶望を与えられるからだ。
数日間の篭城戦で何とか戦える。そんな実感を与えた瞬間に圧倒的な力で叩き伏せる。
そのとき人は何を思うだろう。
一瞬でも勝てるかもしれないと思った自分を呪い、絶望の内に死ぬのだろうか?

そんなことを想像していると、知らず知らずのうちに笑みが零れてしまうのだ。
「なんにしても腕が間に合ってよかった。向こうも始まったようだし・・・。」
遠めに見えるは『地獄の帝王』の巨体。
存分に暴れてくれるだろう。
それに応えるようにムーミン大佐は城へと向かい歩き始める。
微かな希望を絶望で塗りつぶす為に。そして『封魔の宝玉』を奪う為に。

166 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 23:47:52 O
>>165>「流石はDrジャッカル。斬るのもくっつけるのも見事だ。」
「それはそれは…お気に召して頂いたようで何よりです。」
手をグッパグッパしながら満足そうに笑みを浮かべるムーミン大佐に対し、赤屍も嬉しそうに笑みを浮かべる。
そして遠くに見える地獄の帝王を眺め帽子を深く被る。
「それでは…私は一足お先に行かせてもらいます。
少しでも数を減らしておきますよ…。」
そう言って他の召喚戦士達よりも少し早く城の方へと向かった。

>>163最後の砦とも言えるアヨガンを守る兵士達は懸命に魔物達と闘っていた。
「……ブラッディ・レイン。」
>「ば、ば、化けm…うわあぁぁ!!」
次々と現れる兵士達を躊躇なく殺してしく赤屍の表情は非常に退屈そうだった。
そして赤屍の攻撃を受けながらも一命をとりとめている若い兵士に尋ねる。
「あなた方が召喚した人達は何処に居るのですか?
正直に答えて下さればすぐに楽にしてさしあげますよ?」

167 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 23:55:52 0
>158>164

>「うっせえこの穀潰し天使!
>さっきからチビチビっておめーも大して変わんねーだろうが!」

「おー怖い怖い。」

そう一言言うが、実際は全く怖がってない様子である。
その後アホ天使等嫌味を言われるが表情はぴくりと変わらない。
先ほど上条がパラシエルの言葉に憤慨した時もパラシエルはきょとんとしていた。
パラシエルは嘗て2回ほど今回に似た任務をこなしてきたが
とある戦士にぶちぎれされ殴られた時があった。
その時パラシエルは自分の治療をしていた女魔術師からこんな事を言われたことがある。

「貴女は顔は良いし言ってることはそこそこ正論を付くときがあるけど、
・・・けどまるで人の心が無いわね。そんなんじゃ駄目だわ、人と接するときは人の心を持たなきゃ何も通じあえないわよ。」

まあその言葉を聞いたときもパラシエルはきょとんとしていた訳だが。
ポップの話を聞き終わると、彼がよじ登ってる途中で鷲を発射させた。
そして南西へ向かって鷲は優雅に羽を動かす。


168 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/01/31(木) 23:58:12 0
>161-162
しばらく鷲を飛ばしているとパラシエルは鼻を動かした。
先ほどから感じ取っていた甘い臭い、即ち宝の臭いがより強くなっていたのに気づく。
パラシエルの鼻は力のある宝に敏感だ。
パラシエルの鼻に強い甘い臭いがするほどその宝は強い力を持っているという事である。
現在パラシエルの鼻には大きく二種類の宝の強い臭いを感じていた。
一つは先ほど城の地下室で二人の煙草好きに持って行かれたであろう宝、
もう一つはアヨガン国内にあるであろう宝の臭いである。
パラシエルは二つもの大物の予感に上機嫌そうだったが、
急にパラシエルは舌打ちをした。
何故なら海の塩っ辛い臭いと同時に魔物とともに火薬や鉄の臭いが鼻についてきたからだ。

「戦ってるな。戦況はよく分からないが。」

そうパラシエルは一言言うと鷲をアヨガンの地に着地させた。
着地してからすぐにパラシエルは再度鼻を動かす、やはりこの甘い臭いアヨガンの城から漂ってるものだ。
近くから漂ってくる猛烈な戦の臭いは耐え難いものがあるが、やはりこの甘い臭いはどうしてもパラシエルの機嫌を上々にする。

「おい、勇者。とっとと情報を集めるぞ。」

そう言うとポップの手を引き兵士達に話を聞きに行く。
どう見ても先ほどまでのやる気のない様子とはうって変わっていた。
アヨガンの兵士達はポップ達が召還戦士だと知るとほいほいと情報をくれるものだった。
『封魔の宝玉』の話、『地獄の帝王』の話、そしてまだ敵側の召喚戦士が来てないと言うことを聞きだす。

「なるほどな『封魔の宝玉』に、『地獄の帝王』か。」

そう言うとポップの方に振り向く。

「勇者様様、これからどうする?『封魔の宝玉』、『地獄の帝王』。
恐らくこの二点はこの戦の行方を左右させる重要なキーワードだろう。
二手に分かれて行動してみるか?又は一つに絞って叩くか・・・
今のうち城の者に話をつけて『封魔の宝玉』をこちらが預かるというのもありだと思うが?」

169 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/01(金) 01:10:10 0
>>168
妙に活き活きとしたパラシエルに引き連れられ、情報収集に回るポップ。
ひとしきり話を聞くと、パラシエルは今後の動きについてポップに問うた。
「へへッ。ま、ここはこの勇者ポップ様に任しときな」
ポップは得意気に笑うと、早速行動を開始した。

まず、城に乗り込んで王様にお目見えし、味方の召喚戦士である事を説明した。
最初は王様も、彼らが敵か味方か半信半疑だったために宝玉までは任せてもらえなかったが、
魔力を回復し攻めてきている敵を鮮やかに倒してのけると、思っていたよりあっさりと信頼を得る事ができた。
いずれやって来ると噂される『地獄の帝王』に備え、味方と思しき召喚戦士は何物にも代え難いのだ。
それから宝玉を確認すると、
「これはお前に任せる」
ポップはパラシエルにそれの管理を任せた。
「お前の言うとおり、『封魔の宝玉』『地獄の帝王』この二つが今回の戦いのキーワードだ。
だから基本的には宝玉を守るんだが、その『地獄の帝王』とやらがもし攻めて来たら、その時俺達は二手に分かれる。
片方は俺と一緒に『地獄の帝王』を倒す。もう片方はお前と一緒に『封魔の宝玉』を守る」
『地獄の帝王』を倒した時、敵味方双方の戦意への影響は計り知れない。
「俺が思うに、『地獄の帝王』って奴はオトリだ。
きっと、そいつが派手に暴れ回ってる隙に小回りの利く主力が宝玉を奪取に来る。頑張って守り抜いてくれよ」
前回の戦いでも、経緯は知らないがあっさりと主力に目的の石への接近を許していた。
今回も、もしも正義の召喚戦士全員が『地獄の帝王』にかかりきりになれば、
きっとその隙をムーミン大佐あたりにあっさり出し抜かれてしまうだろう。
敵の目的は戦い自体ではなく、あくまで『封魔の宝玉』なのだから。

そして、それから『地獄の帝王』が動くまでの日々は攻めてくる雑多な軍勢の処理に奔走した。


数日後。
ついに『地獄の帝王』の姿がアヨガンの物見櫓から確認された。
その報告を受けたポップは、他の召喚戦士達に言う。
「ようやくお出ましみてえだぜ。つーわけで、鬼退治に行きてえ奴は俺に掴まってくれ」
そしてポップは呪文を唱える。
「瞬間移動呪文(ルーラ)!」
触れている仲間と共に移動する瞬間移動呪文で窓から飛び出し、城門前までワープした。

170 名前:◆epq5bqnqsM [sage] 投稿日:2008/02/01(金) 15:39:50 O
ククク・・・・・楽しい・・・・・いや・・・楽しめそうな者達じゃあないか・・・・・

171 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/01(金) 16:33:42 0
>>146-148
「東條ルミナだ…探偵兼魔術師…呼び方はまぁ、わかりゃなんでもいい」
微妙な顔で赤屍にそう返し、椅子に腰をかける。
>「話相手が居なくて退屈していたんですよ。それに…貴女は私と近い立場の人間だと思いまして…」
「…確かに…いろんな意味で近いからなぁ」
軽くため息をして、この赤屍という男について考えてみる。
確かにコイツのいった通り、自分と赤屍には他の連中よりも共通点が多い。
まずは、名前、顔立ちからいって日本人だと判断できるし、仮に同じ世界にいるとしたら
一度ぐらい一緒に仕事をすることになってもおかしくない職にお互い就いている。
しかし、それだけで「近い立場」という言葉は使うだろうか?
背筋が凍りつくような殺気を放つだろうか?
NOである。赤屍は理解しているのだ。自分が中立であることを、そして、赤屍自身も中立であること
だが、1つ違うことがある。目的だ。
自分は元の世界に戻りたいだけ、まぁその過程で報酬が貰えるのなら貰いはするが…
だが、赤屍は逆、仮定だがコイツは報酬とかそんなことは二の次、大佐の口ぶりとアレから察するに
求めているのは「死線」…いつ死んでもおかしくはない…そんな状況、戦いを望んでいるのだ。

>「皆の者、よく聞け!次のアヨガン国との戦には『地獄の帝王』を参加させるとのことだ!
>「着任早々大仕事だねえ。」
「…探偵がやる仕事じゃねぇが…まぁ…良しとするか」
気だるげにそう答えた。


>>165>>166
「大佐…ちょっと提案というか少しアドバイスして欲しいんだがいいか?」
ムーミン大佐の背後にあるボートにて胡坐をかいていたルミナが聞く
「この作戦の目的ってのはその「封魔の宝玉」を奪うってことなんだろ?
 つまりさ、真正面から戦わなくても奪えればそれで言い訳じゃん?まぁ、勢いで壊滅させてもいいわけだけど…
 それは置いといて、どっかから忍び込めねぇかなって…」
大怪盗の手段として、よくあることだが敵の意識を一転に集中させ、その間に目的の品を盗むという手がある。
しかし、状況が状況な上に、ルミナは戦争未体験者だ。兵隊の考え方というものが理解できない以上
単独でこの策を進めるのは危険だ。だからこそ、それがわかるムーミン大佐にそのことを聞いたのだ。
「駄目なら駄目っていってくれ、大人しく真正面から攻めるつもりだからな」

172 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/01(金) 21:11:02 O
「他の方は? 一緒では、無かったのですか?」
上条に対し、疑問の言葉を口にする。
あれから元の場所へ戻った所、そこには上条の姿しか無かったのだ。
ふむと頷き、フェルと、その背の女性を見やる。
「ひとまず…その方の為にも、宿をとりましょう」

不意に、瓦礫の崩れる音がした。
反射的に振り向くと、そこには、瓦礫に挟まれた
兵士の遺体にすがりつく子供の姿があった。
「…このままには、しておけませんね」

遺体を覆った瓦礫をどけながら、先ほどのフェルの様子を思い返す。
彼から感じた物は、強い憤り。
それは、己の弱さに向けられていた。己の強くない全てに。
…本当は自分も、彼と同じなのだ。

そして薄々、気がついていた。自分はフェルの強さに、憧れているのだと。
力だけではない。この状況にも、己を失わずにいる彼に。
たとえ如何に強大な敵に敗れたとて、彼は彼のまま死ぬだろう。
−−自分はどうか?

先程の自分は恐怖に負け、逃げようとさえした。
更に強大な悪魔を前にした時、自分を保てるのか…?
フェル…彼は立派に強いのだ。本当はそう伝えたかった。
《どうする、力が手に入るとしたら》
意識の底で、自分とは別の何かが蠢動する。

程なくしてどけた瓦礫の間に空間が姿を現し、
そこに魔術師の遺体と転送の魔法陣を発見する事になる。

その夜、子供に案内された宿で、ランカムは一つの提案をした。
「…あの魔法陣は、アヨガンに転送できる。という事でしたね」
短く確認する。あれから情報を総合した結果、
決戦までは数日の猶予があるとも予想されていた。
「私自身は決戦までの時間を、この地での情報収集に使いたいと思います」
その方が情報は効率良く集まると、判断したのだ。
ふと、上条と目が合う。
−−この城の者達を見捨てる事も、できませんしね。

そこで一端、言葉が染み渡るのを待つように一息置き、その先の言葉を続ける。
「そしてできれば…貴方に、闘いの指導をお願いしたいのです」
真剣な面持ちで、フェルを見据える。
「私も知りうる限りの戦術を、貴方に授けましょう」
突飛な提案である事は、承知の上だった。

「今のままで、勝てるでしょうか?」
かすかな自嘲を込め、あえて辛い質問を振る。
数日で急激に強くなれる筈はない。
だが、出来る事を残して死にたくもない。
そんな思いから出た言葉だった。

173 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/01(金) 23:17:03 0
>166>171
先に行く赤屍の背を見送った後、ゆっくりと振り返る。
その視線の先にはボートで胡坐をかくルミナがいた。
問いかけにムーミン大佐の表情に笑みが浮かぶ。
「素晴らしい。数日だが君と接してその素晴らしさには感動するよ。
養成学校なら満点の提案だね。」
ルミナの提案は元々ムーミン大佐が取ろうとする行動そのものなのだから。
上機嫌にこれからの行動を話し始めた。

ルミナの言う通り、この戦いは、封魔の宝玉さえ手に入ればいいのだ。
それ以外は何とでもなる。
というより、地獄の帝王だけで十分全滅させられる。
だが、パワーは桁はずれていても、いかんせん知性がない。
間違って破壊されたり瓦礫に埋もれさせて回収不能になると厄介なのだ。
そこでムーミン大佐が宝玉を回収に向かう算段だった。
説明を終えると、ムーミン大佐はルミナに手を差し伸べる。
この世界で初めての戦いとなるルミナには、制限をつけずに自由に戦ってもらうつもりだったのだ。
が、その発想と適性さえあれば共に回収に回るか?と。

海を歩きながら更に細かい話を進める。
「宝玉を守る者達が馬鹿者なら全軍を持って地獄の帝王に当たるだろうから仕事は楽だろうね。
ただし、二手に分かれているようなら、その者は・・・大馬鹿者だよ。」
にやりと笑いかけるムーミン大佐の表情は地獄の帝王の力の凄まじさを物語っていた。
生半可な戦力ではまったく太刀打ちできずに全滅。
そして戦力を割いた故に宝玉も守れず、最悪の結末を迎えるだろう、と。

「さて、ウサコがいた時は移動が便利だったのだがね、彼女がいないから色々と手間を折らねばならん。」
そういいながらムーミン大佐は複雑な印を結び始める。
実のところ、封魔の宝玉が城のどこにあるかわかっていないのだ。
オロッパスの城で石の様なものの位置が簡単にわかったのは、召喚にその力を発していたからだ。
力が発動されればその力の大きさゆえに場所も感じることができるのだが、今回は殆ど感じない。
ただ、城のどこか、という程度にしか。
そういっている間にムーミン大佐の周りには霧が立ち込め始める。
「ケルピー、クー・シー。海霧で城を覆い、探すのだ。
そしてピーター、頼むよ?」
立ち込める霧はゆっくりと城へと移動していく。

ケルピーは水の妖精で、海霧を発生させる。
クー・シーは長靴を履いた猫事ケット・シーの犬版。鼻が利き、索敵を担当する。
この霧全体がムーミン大佐の索敵可能領域となるのだ。
やがて霧は城を覆いつくし、あらゆる隙間に入り込み封魔の宝玉を捜すだろう。

霧が進む中、それを追うようにムーミン大佐とルミナが宙に浮く。
物体浮遊能力を持つ妖精ピーターの力だ。
「大聖堂か宝物庫、謁見の間辺りだとは思うがね。」
見据える先はアヨガンの城。そしてその脳裏には絶望の色を浮かべる人々の表情が思い浮かべられていた。

174 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/02(土) 17:05:15 0
ポップ達の向かった後、上条は瓦礫の撤去や救助をしようと動いていた人たちに合流し、
その手伝いを申し出た。
しかし、異世界から来たばかりで、こちらの住民から見れば妙な格好をしている上条は
不振がられ、しまいには魔族の類ではないかなどとの疑いが発生してしまい、一時は剣を
もった兵士達に囲まれるという危険な状況になりかけたのだが、上条を囲んだ兵士の中に、
先程ウサコと戦っていた所を目撃していた、
先程地下から逃げ延びた数人の人々がおり、彼らから上条の事が説明されて、上条は
どうにか難を逃れる事が出来た。
それからの展開は早かった。誤解の謝罪と礼を言われ、上条の頼みは驚くほど
すんなりと受け入れられた。召喚戦士に雑用をさせるのには悪いという人もいたが、
上条は「あんた達は自分じゃどうにも出来ないほどに困ってるんだろ。
だったら言ってくれ、助けてくれってさ。」と、その意見を突っぱねた。
>>172
そして、作業を始めようとした所で上条は青年達が戻ってきた事に気付く。
尋ねられたので、上条はポップたちがアヨガンに向かった事を説明することにした。
「っつー訳で、俺は暫くここに残って、ポップたちはアヨガンって所に
 行く事に行く事になった……それより、その人は大丈夫なのか?」
上条は背負われている少女の事を心配したが、外傷は無く、命に別状も無い事を知ると
ホッとした様子を見せた。
>「…このままには、しておけませんね」
と、青年の一人が移動する。どうやら瓦礫をどけようとしている様だ。
上条が手伝おうと近くに行くと、そこには瓦礫の隙間から出てきた遺体と、それに泣きつく少年の
姿があった。
「……ッ!!」
歯噛みする。助けられなかったという現実に、上条当麻は怒りを覚える。
命がこんなにも理不尽に奪われる事などということなど、あってはならない、そう思い。
―――
その夜、上条はランカムというらしい青年が泊る宿を訪れていた。
情報の整理と、今後の指針を確認するためだ。
>「…あの魔法陣は、アヨガンに転送できる。という事でしたね」
(転送……こっちに来たときは知らねえけど、魔法なら俺は使えないんだろうなー。
 だったら移動手段は馬になるのか。あれ?でも異世界に馬っているのか?)
一日中が瓦礫を動かしていた疲労と、無意識下での混乱からぼーっとしながら、
そんな事を考えていた上条だったが、ランカムと目が合い、慌てて姿勢を正す。
>「私自身は決戦までの時間を、この地での情報収集に使いたいと思います」
そして、次に出たその言葉を聞き、上条はこのランカムという青年が
人の事を想える人間なんだろう、とそう思った。
「ありがとな」
だから、本来上条には係わり合いの無い事であるのに、言う事にした。

「俺は、もう暫くここの復興を手伝っている事にさせてもらう。
 正直、正面からやり合う戦争なら俺が役に立つとは思わねえし、
 どの道魔法なんていう便利なモンは使えないから、俺がアヨガンって所に行くまで
 時間も掛かるだろうからな。」
話が闘いの指導に入った時、上条はそう言って部屋を抜け自分の泊る事になった家に
向かう事にした。数日で付け焼刃をしても、それは逆に危険だと考えたからだ。
上条の友人に土御門という少年が要る。彼は戦闘に置いての
裏技や禁じ手をマスターしている様な魔術師である。恐らく彼程度に武術を覚えれば
戦場でも生き残れる確立は高くなるのだろうが、数日でその域まで達せられると考える程
上条は楽観的ではなかった。
それ以外に、上条自体が戦争が嫌いなのもある。殆どの場合、戦争なんていうものには
善悪などというものは無い。上の部分には有るだろうが、少なくとも参加する兵士の大半は
は誰もが自分が正義と思い行動する。だから起こるのが普通なのだ。
上条は戦争を止める為、誰かを守る為なら全力を尽くすだろう。
だが、この場合どうすれば戦争が止まるのかも、どちらが正しいのかさえ解っていない。
どちらかを滅ぼし尽くすなんて選択肢は馬鹿げている。
だから上条は、アヨガンで起きるという戦争に向かう事より、ここの城や怪我をした
人々を守る事を取ることしか出来なかった。

175 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/02(土) 17:55:39 O
「おおう!!この私をメッセンジャーがわりにしようとは無礼な奴め!
私が世界を征服したら、貴様なんぞトイレ掃除係にしてくれるわ!」
オロッパスから少し離れた森の中で、紅竜は一人で叫ぶ。
それでもフェルへの怒りは収まらず、懐から【いつか殺す奴のメモ】と書かれたメモを取り出し、
『○月×日、脳味噌筋肉の男に馬鹿にされた。一億年許さん!』と書き加えた。
しばらくメモを見ながらうひゃひゃ笑いをしていると、ようやく怒りの気持ちが落ち着いてくる。
「おおう。いつまでも笑っている場合ではないな。
次のアヨガン攻略の準備に取りかかるとするか」
使える下僕の選定に、敵に回った召喚戦士たちの情報集めなど、やるべき事はいくらでもあるのだ。

それから数日後、魔王軍の総攻撃時には、すでに紅竜はアヨガン内部に潜入していた。
裏切る寸前までは、自分の有用さを大魔王側に印象付けておく必要があるからだ。
敵に攻め込まれる国には、金目当ての傭兵達が集まってきている。
つけひげかつらに偽名を使えば、傭兵達に紛れ込むのはそれほど難しくはなかった。
やがて紅竜たちの配置された部隊にも、地獄の帝王の出現報告と共に、出撃命令がだされる。
色めき立つ他の傭兵達を横目に、紅竜はトイレを口実にその場を抜け出した。
すでに城内に敵が侵入しているのか、騒がしい周囲は気にせず変装を解いて歩き出す。

>「……ブラッディ・レイン。」
>「ば、ば、化けm…うわあぁぁ!!」
しばらく歩くと、見覚えのある顔がアヨガン兵を殺戮しているのがみえた。
「おおう。赤屍ではないか。お前ももう中に来ていたのか」
退屈そうに人を殺す赤屍に声をかけながら近づく。
まあ、この強すぎる男からすれば、こんな雑魚と戦っても満足なぞできまい。
>「あなた方が召喚した人達は何処に居るのですか?
正直に答えて下さればすぐに楽にしてさしあげますよ?」
「ふん。こんな奴を尋問する暇などあるまい。ここは私にまかせておけい。」
下僕アンテナを取り出し、若い兵士の頭に取り付ける。
「おい貴様。封印の宝玉はどこにある?」
先に宝玉のありかを聞いたのは、召喚戦士たちは宝玉の護衛にまわっていると考えたからだ。
「はい〜宇宙の支配者紅竜様〜宝玉は召喚戦士の誰かが持っていましゅ〜」
あっさり紅竜の下僕になった兵士から貴重な情報を得るのに成功する。
「よし!では召喚戦士の所に案内しろ。
行くぞ赤屍よ。我が魔王軍の恐ろしさを奴らに見せつけてくれるわ!」
ふらふら歩き出す兵士を見ていると、ゆっくりと城内を霧が埋めていくのがわかった。
「そういえば、ムーミン大佐と仲間になった女の姿が見えないが、別行動中か?」
深くなっていく霧に不信感を抱きながら、赤屍には別のことを尋ねる。

176 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/02(土) 20:14:28 0
>>172>>174
「っつー訳で、俺は暫くここに残って、ポップたちはアヨガンって所に
 行く事に行く事になった……それより、その人は大丈夫なのか?」
「フン、どうせ魔術を使いすぎただけだろう、別にここに放り出してもいいぐらいだ!」
こいつも人の世話か、よくもまあ飽きずに他人の世話を焼きたがる。
しかし、この女…見かけによらず重いな…脱力してるからか?
「ひとまず…その方の為にも、宿をとりましょう」
「フン、まあいいだろう。こうやって抱えているよりは面倒がなくて済む。」
歩きだそうとしたところ後ろで瓦礫が崩れる…振り向くとそこには兵士の遺体と
それに縋りつき泣くガキだった、それを見て俺は過去の自分を思いだしていた。
そう。俺はガキの頃から兄しかいなかった。奴隷だった父も母はまるでボロ雑巾のように扱われ死んだ。
俺は泣いているガキに近づき叫ぶ。
「泣くな!!泣いている奴は弱い奴だ!弱い奴から死んでいく!!
 死にたくなかったら泣くな!強くなれ!!」
俺の怒声に萎縮しながらも泣き止むのを見て…俺は手のひらでガキの頭を軽く数回たたき続ける。
「そうだ。それでいい!辛いならば強くなれ!悲しいならば怒りに変えろ!強い奴が自分を押し通せ生きることができる!!」
そう言った後、ふと横を見るとさっき地下で魔王とやらと戦っていた男が悔しそうにしているのが映る。
「あの兵士は弱かった。だから死んだ。当たり前の理由だ。
 なにをそんなに悔しがる必要がある。死んだ奴は放っておけ。」
そう言い放ちランカムの元に歩いていく…すると何かを発見したのかランカムが地面を見つめている。

――『勇気と力を備えた者がこの転送の魔法陣を見つけることを望む』――

「ふん、なるほど。これがアヨガンとかいうとこにいくための転送用の術というわけか。」
しかし、いまアヨガンとやらに行っても仕方が無い。この女も背負っている。
また色々と面倒なことになると分かっていたので
ランカム達と一緒にガキが案内してくれた宿屋にいくことにした。
宿屋につき女をベッドに寝かせる。そして壁によっかかり生命力を回復するためにじっとしていると
ランカムが今後の自分の考えを言う。
「私自身は決戦までの時間を、この地での情報収集に使いたいと思います」
「俺はどうでもいい。ただ戦闘が始まったらあの魔法陣とかいうのを使い
 アヨガンに向かい敵を1人残らず打ち倒すだけだ。」
俺の目的を言ったとき、ランカムから提案がある、その内容は驚くものだった。
「そしてできれば…貴方に、闘いの指導をお願いしたいのです」
「なに!?」
「私も知りうる限りの戦術を、貴方に授けましょう」
「ふざけるなッ!!!いいか!俺は確かにお前に借りがある。
 だがだからといって俺の技をお前に教える気はない!!
 そして俺もお前に戦術など教わる必要もない!!」
そこまで言い放ったとき、ランカムが自嘲した風にふと言葉を漏らす。
「今のままで、勝てるでしょうか?」



177 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/02(土) 20:15:18 0
―――君は格闘のプロであるかもしれないが、戦闘に関しては素人同然だ―――

……俺の脳裏にあの時のムーミン大佐の言葉が浮かぶ。
「………」
俺はランカムの問いにただ黙る…俺の世界では戦術などない。
ただ己が技をぶつけ合うのみ。むしろ戦術など小賢しいものは卑怯者と称される。
しかし…この世界と俺の世界は大きく違っている…このままでは勝てないかもしれない…
長考の果て……俺は決断を下した…
「………いいだろう…分かった。俺に戦術を教えろ!!
 俺はお前の俺の世界の闘法とやらを教える!!」
あと数日……付け焼刃だろうが構わん。少しでも勝利する確率をあげるために!!
「あと…ランカム……最初に言っておくが…お前は俺の流派は覚えられるわけがない。
 なぜならば俺はこの龍派轟撃拳の門に行くまでに2年もかかった……
 だからお前には俺の世界の闘士の基本である覇気を教えてやる!
 覇気さえ学べば魔術に対する防御やその剣とやらの攻撃力は格段に上がる!!
 あと数日……死に物狂いでモノにしてみるんだな!!」
俺達の会話を聞いていた男は自らは戦争に参加しない意思をつげ部屋を出ていく。
「……フン、魔王の魔術をかきけす程の能力を持った男がわざわざ残ってやることが
 雑魚にでもできる負傷者の手当てと瓦礫の撤去とはな……」

 

 

178 名前:リーベル ◇fbsB0QAAhoの代理投稿[sage代理投稿スレ188] 投稿日:2008/02/02(土) 22:27:55 0
>172>174>176-177
>「ひとまず…その方の為にも、宿をとりましょう」
>宿屋につき女をベッドに寝かせる。
フェルがベッドに寝かせた途端、寝息が乱れる。
何かに魘されている様に顔を歪め、額には大粒の汗が浮かんだ。
数分の間そうしていただろうか、唐突に目を覚まし上体を起こした。
「っ……!!!!……、……?」
元の世界でもこちら側でも、一日とて気の休まる日の無かったリーベル。
満足な睡眠も、心の平静を取り戻す余裕もまったくと言っていいほどなかった。
目覚めたら見覚えの無い部屋の中、限界に追い込まれた精神はすぐには元に戻らない。
周りを見渡す余裕もなく、両腕を抱え、ガタガタと震えだした。
「……うっ…………うっ、うぅっ……っくっ……」
垂れた前髪の端から何かが流れ頬を伝う。
声こそ押し殺してはいるものの、明らかに泣いている。
今まで抑え込んできた感情が堰を切って溢れだしたのだろう。

179 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/03(日) 02:05:00 O
話し合いが纏まり、自分の部屋へと歩いていると、
リーベルの部屋から、物音が聞こえてくる。
−−目を覚ましたのか。
声をかけようと、扉に伸ばしかけた手が止まる。

かすかに聞こえる、か細い嗚咽の声。彼女は傷ついていた。
男と女。性格も正反対なのに、それが先程見た
子供に叱咤するフェルの姿とどこか重なっていた。

「…“神”よ、彼らの救われん事を」
フェルに彼女が目を覚ました事を知らせ、
−−できれば、彼女を支えてやって欲しい−−
そう付け加え、その夜は泥のように眠った。

−−数日が経った。

結論から言えばランカムは、この短い期間では
“覇気”の基礎を理解できたに過ぎなかった。
“世界”が違うのだ。理論を理解できただけでも、良い方だろう。

対して、フェルの上達は、それなりの成果を挙げたように思えた。
才能の範囲に留まらず、驚く程の強い意志が、彼を確実に強くしていた。
敵の観察、隙の無い連携、戦闘陣形、用兵の心構えに至るまで、
自分が知る限りの戦術を彼に教えた。

結局…数日の間に、彼から一本を取る事はできなかった。

調査は…と言えば、崩壊した城の書庫の中から、
読めない文字で書かれた、数冊の古文書を見つけただけだ。
「何かの助けになると良いのだが…」
アヨガンに持っていく事に決め、道具袋の中に入れる。

元の世界に戻る方法も探したが、こちらも成果は上がらなかった。
それよりも、漠然とした予感があった。
もう元の世界に戻っても、敬愛する騎士団長はこの世にいないのではないか、と。
−−バカバカしいッ!
即座に、自分の考えを否定する。

−−“魔”とは実体のないパワーだが−−
ふと浮かんだのは、この世界に来る前、最後に聞いた騎士団長の言葉だった。
−−風邪や黒死病のように、本人の気づかぬうちに身体を冒していく−−
何故かその言葉が、心から離れなかった。

間もなくしてアヨガンより、魔王軍に動きがあるとの報が届く。

「…いよいよ、ですね」
櫓に立ったポップの後ろでそう呟く。
転送陣をくぐり合流した後、情報を交換し、
自分は“地獄の帝王”に当たる事を決めていた。
威容を目の当たりにし、兵士達からは援軍を待つべきとの声も挙がる。
「“援軍”?」
心の中は、不思議と落ち着いていた。
「私達がその“援軍”です」
ポップの魔法により、城門前に降り立つ。

180 名前:『地獄の帝王』 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/03(日) 02:34:29 0
将軍の命で『地獄の帝王』の行動を監視していた兵士が、ほんの数秒、目を離したときだった。
「……あれ?あいつ、さっきは向こうに居たよな?」
見張りの兵士は、同僚にそう尋ねた。同僚の兵士はこくこくと頷いた。
つい先ほどまで、『地獄の帝王』は、双眼鏡越しにやっと姿が見える距離に居た。
それが、僅か数秒で肉眼で確認できるほどの距離まで迫っている。
しかし、土煙と、ムーミン大佐の配下のケルピーが出した霧、
何よりその速さのため、未だに『地獄の帝王』がどのような姿なのかは確認できない。
「馬鹿な!成体のドラゴンでも、あんなに速くは飛ばんぞ!」
将軍の驚きはもっともだった。
あまりにも速い。およそ5メートルほどの巨体が、それに全く似合わぬ神速を備えている。

『地獄の帝王』に篭城は通用しない。兵士達は、その話の真相を垣間見たのだった。
あの大きさの怪物が、あの速さのまま体当たりでもしようものなら、普通の民家くらいなら木っ端微塵だろう。
いや、下手をすれば城や城門も無事では済まないことは明白だった。

>169>179
見張りの兵士達は、土煙と霧の中に何か黒く大きな生き物が居るのを確認した。
城門前に居る者達にも、同じく確認することができた。
何より、肌で感じる異常な妖気は、あのウサコ以上である。
『地獄の帝王』が、すぐそこまで迫っているのは間違いなかった。
それも既に目の前、距離にしてわずか3メートルほどで、既に彼がポップ達を見下ろす形になっている。
霧の中でも、その巨大なシルエットが確認できる。
シルエットから判断するに、それは直立するハリネズミに似ている気がした。
ヤツが目の前に立ったとき、聞いたことも無い、何かの機械の起動音のような音がした。

「ああ!ああ!」
1人の兵士が声を振り絞った。
「ゾディックだ!ゾディックが来た!」

181 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage下準備編です] 投稿日:2008/02/03(日) 15:03:59 0
>169
――地獄の帝王復活の数日前。

ポップと作戦を考えてから二日ぐらい時間がたった。まだ地獄の帝王は復活してない。
ほんの少し数日一緒にいただけでパラシエルはポップが今まで付いていた勇者とは別者である事を少々感じ始めていた。
馬鹿そうに見えて意外にも冷静で決断力があり、何よりも精神面で何かがある。
パラシエルは嘗て何回か勇者に付いたが、そのどれもは一言で言うとポップ達とは別物であった。
自分が勇者であるという事を高らかに掲げ己の欲に走り回る勇者、ある者はパラシエルや女魔術師に日々暴力に走る勇者。
(まあそれでもパラシエルは何とも思わず付いてきたわけだが。)
その点ポップは反論はするが暴力に走ったりはしなかった。これは普通のことのようでパラシエルにとっては非常に珍しかった。

その夜、宝玉を守る事をポップに任されたパラシエルは箱を5個机の上に持ってくるとその一つに宝玉を入れて鍵を掛けた。
鍵といってもただの鍵ではない、パラシエルのみが使える魔法の鍵である。
この鍵を掛けた箱は鍵を使わなければ決して開ける事が不可能になる。
中身の魔力も使用不可能となる為、まさしくただの開封ができない箱の状態になるのだ。
この箱の中に宝玉を入れてしまえばひとまず安心という訳だ。

宝玉を箱の一つに入れ鍵をかけると今度はパラシエルは借りたかまどの場所へ行く。
かまどには鍋が一つあり、その鍋の中からパラシエルは宝玉を取り出した。
といってもこの宝玉は悪魔でも偽物である。本物みたいな力を発揮できる訳では無い。
本物に限りなく質が近いオーラを纏った石である。パラシエルは腐っても宝の天使である。
宝の偽物を作るのもそこそこできる。今回偽物の宝玉は三つ作った。どれもオーラの質の精密さはバラバラだが、
どれも宝玉のオーラを知らない者なら騙せるレベルのものである。
パラシエルはその三つを箱の中に入れると今度は魔法の鍵ではない普通の鍵を掛けた。
そして残った何も入ってない箱に魔法の鍵を掛ける。
こうして5個の箱を作り上げるとパラシエルは自らの翼を呼んだ。

どこかの誰かが天使には欲がないと言ったが、パラシエルには欲と多少の使命感がある。
それはパラシエルが唯一持つ人間の手がかりである。
パラシエルはひとまず戦いへの下準備を終えると少し考えた。ポップや上条達は今までの戦士みたいに欲では行動してないように見える。
という事は彼らは何の為に戦うのだろうか。人のため?世の中のため?
しかしそれらを守るために戦って何の意味があるのだろうか。ましてはここは勇者達には全く関係ない世界である。
パラシエルはそんな事を少し考えると時期飽きてどうでもいいかと言って自分が持つ道具の手入れに入った。


182 名前: ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/04(月) 01:05:57 0
>181
宝玉は金属的な光沢を放っている。
装飾品的な台座などは一切付いていない。
少し解析するだけでも、製作には魔術だけでなく、多分に機械的な技巧も使われていることがわかる。
それは明らかに、この世界の人間にとって未知のテクノロジーで作られていた。
この宝玉もまた、異世界からもたらされた品であることは間違いない。

一説によると、この宝玉は大魔王がこの世界に来たのと時を同じくして発見されたという。
発見されたときは謎の宝玉で、どのような力を持っているかはわからなかった。
しかし何の因果か、ある古文書に封魔の宝玉によって魔物が封印される話があり、
この宝玉はその挿絵にあった宝玉に酷似していたという。
その古文書が無ければ、この宝玉もただの丸い宝玉だっただろう。

しかし、この宝玉は不用意に使うことはできない。
肝心な部分、どのように使うのかが伝わっていないのだ。
アヨガン国の学者達が文献を紐解き、必死になって使用方法を研究している最中なのだ。
しかも、宝玉はこの1個しか無い。
困ったことに、誰も大魔王の姿を見たことが無いのだ。
故に、慎重に保管しなければならない。そう厳命されていた。
また、使用方法が分かり次第返却せよ、という命令も受けていた。

183 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/02/04(月) 01:19:48 0
パティコン

184 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/04(月) 21:45:54 O
「ええ、彼等はきっと私達とは別の目的があるのでしょう。
私は召喚された方々にお会いしたくて一足早く乗り込んだ、という訳です。」
にこやかな笑顔で歩きながら紅竜に返す。

「霧が濃くなってきましたね…。こちら側の方の仕業でしょうか?」
少しずつ霧が濃くなっていく中、ゆっくりと歩く兵士の後ろを歩く。

どれほど歩いただろうか?
なかなか赤屍の求める召喚戦士達に会えない。
表情には出さないがどうやら赤屍はイライラし出してきたみたいだ。
「……紅竜さん…もしかしてとは思いますが…。
このまま召喚された方々に会えないで終了…なんて事はあり得ませんよね?」
顔は笑顔、だが赤屍から発せられるオーラは決して穏やかな物ではなかった。

185 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/04(月) 23:10:31 0
>>178-179
どうやらあの女が目を覚ましたようでランカムがドアへと近づく。
そして開けようとドアノブに手をかけはしたがすぐにやめる。
「どうした?起きたんだろ?今後の一応の目的を話すべきじゃないのか?
 …まあ俺はあいつが来ようと来まいと関係ないがな!」
そう言う俺にランカムは神とやらに祈りあの女の支えになってやってほしいと俺に言い部屋に入っていった。
「俺が支えるだと?勝手に言って寝やがって……チッ、だいたいなにを急に言い出すんだ。」
俺は苛立ちながら女の部屋のドアノブに手をかけたとき、
中から声を押し殺しながらすすり泣く声が聞こえてくる…チッ、
面倒なことをまた押し付けられた…だいたいなぜ俺が泣いている弱い奴の支えにならなければならない!
そもそも俺にそんなことを言っても無理なことぐらい分かるだろうが!
他人に対し気を使うなど俺の世界では誰もやらないことだ……

「……おい女、泣くのはやめろ!泣くなど無駄なことだ!」
扉に背を向け女に向かって俺は叫ぶ。しかし全く一向にすすり泣く女……
どうしていいか半分途方にくれる。このまま放っておくというのが一番楽だが…
あの男には命を助けられている…借りは返したが……どうにも奴の頼みには弱い…
「…なんか知らんがランカムにお前の支えになれと言われた……
 お前は一体どうすれば泣き止む?俺にはどうしていいかさっぱり分からん…」
全く返事がないのに今度はだんだん苛立ってくる……俺は許可も取らずに勝手に部屋に入る。
すると両腕を抱えて震えているあの女が居た…わずかに覗かせる顔からは「憔悴」の表情が見て取れる。
どこかで見たことがある表情だ…どこでだったかは思い出せないが……
「…おい、泣いていても仕方が無いだろ。いいからもう寝ろ……少しでも休むんだな。
 不安ならば俺がここでだれか来ないか見張っておいてやる…どうせ追手など来るわけも無いがな。」
俺はなぜこの女のために見張りなどしなければならないんだ…?
泣いているのが鬱陶しいからか?…ならば俺が部屋を出ていけばすむことだ…
なぜだ?分からない。別に俺は他人などうなってもいい…ならばなぜ?

自分でもなぜこんなことを言ったのか分からないまま俺はずっと朝まで見張り続けた……


186 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/04(月) 23:18:16 O
「職業柄そういうのにゃ慣れっこでな、別に褒められるようなことじゃねぇさ」
当然のことのようにそう返し、ルミナは大佐の説明を聞く
どうやら、ハナから『地獄の帝王』は囮に使うつもりだったらしい。
一先ず、そう納得し大佐の手を掴み、ルミナも海に立った。

「でもよぉ大佐、馬鹿デカイ能無しってのはちょいと頭を捻れば簡単にヤられるってのが相場だぜ?そこまで信頼していいのかよ」
皮肉っぽくそう大佐に言ってみせたが、大佐は不敵な笑みを浮かべる。
そのことは百も承知であるのか、それとも、『地獄の帝王』はそれほどまでに強大であるのか…笑み1つだけでは把握できなかった。

「まず、宝物庫は無いと考えていいんじゃないか?戦争で負けりゃ奪われるような物をこんな状況で守る奴がいるとは思えねぇ」
城内に侵入出来たのを確認すると、ルミナは腰のホルスターに収まっている魔銃を抜き、自分の考えを話した。
「なら、守りが固そうな謁見の間ならどうだ?魔王殺しの唯一の切り札な訳だ…そんな物を何処の馬の骨だか知らん奴に任せるとは思えねぇ」

187 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/05(火) 23:59:18 0
>179>185
>声をかけようと、扉に伸ばしかけた手が止まる。
外から足音が聞こえる。
エルフゆえに良すぎる聴覚を持ったリーベルはその精神状態も手伝ってか
部屋に近づいてくる音を聞き逃すことは無かった。
まさか追っ手が、今来られたら抵抗らしい抵抗など出来ないだろうと
恐怖を顔に浮かべながら扉を凝視していたが、戸は開かなかった。
僅かな安堵の後はやはり自分の殻に閉じこもるだけ。

>「……おい女、泣くのはやめろ!泣くなど無駄なことだ!」
泣くのは無駄と、聞き覚えのある声が言う。
普段のリーベルならその通りと思うのだろうが、今は違う。
泣かずに過ごす事など出来ないのだ。それどころか、フェルの怒鳴り声に
肩を一際大きく震わせて、まるで叱られている子供のように縮こまってしまう。

>「…なんか知らんがランカムにお前の支えになれと言われた……
> お前は一体どうすれば泣き止む?俺にはどうしていいかさっぱり分からん…」
>「…おい、泣いていても仕方が無いだろ。いいからもう寝ろ……少しでも休むんだな。
> 不安ならば俺がここでだれか来ないか見張っておいてやる…どうせ追手など来るわけも無いがな。」
どうすればいいのか、教えて欲しいのはむしろ自分の方だ。
止めようとしても止まらない……一度切れた堰はそう簡単には直らない。
返答する事も出来ずに震えていると、男が部屋に入ってきた。
自分を見た男の顔には明らかな戸惑いの表情が浮かんでいる。
その口から、先ほどの怒声を張り上げたとは思えないほど穏やかな、
宥めるような言葉が流れてきた。それを聞いた瞬間、瞬きも満足に行えないほど見開いた
リーベルの瞳が細まったかと思うと、普段は決してしないようなぐしゃぐしゃの顔になり……
「……お願い…一人に、しないで……傍にいて…………」
それだけ言って、まるで気を失うかのように眠りに落ちていった……

翌日目を覚ますと、昨夜と同じように男が傍にいた。
記憶が曖昧だが、確かに目の前の男に傍にいて欲しいと言った。
意識が覚醒するにつれて顔が熱くなっていくのを感じる。
「……先日は、見苦しいところを見せてしまいました。
 約束、守って下さったのですね。ありがとうございます……
 まだ名乗っていませんでしたね、私はリーベルと言います。
 よろしければ……お名前を伺えますか?」
普段の調子が戻ったようで、落ち着いた物腰でフェルに名前を尋ねる。

188 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/06(水) 00:27:49 0
―――時は更にたちついに地獄の帝王が復活の時を迎えた。

パラシエルは東条の予想を裏切りアヨガンの城の宝物庫に居た。

「ほほう・・・これは良い年代物のフランス人形だな。」

そう言うと宝箱の山上に座り脚をのんびりとぶらぶらさせながら勝手に城の宝箱の中から人形をとりだしほっぺをちろりと一つ舐める。
宝を愛しい人のように扱うパラシエルの姿は無表情ながらもどこか妖艶だった。
フランス人形の頭を三回撫でると近くの鷲の剥製を取り出し一人ごっこ遊びを始める。
まるで外で地獄の帝王が復活しているようには思えないくらいパラシエルは呑気である。
ポップがルーラで地獄の帝王の所へいって少したった今、まだパラシエルの元へは誰も来てない。
外に響く鈍い爆発音を聞きながら、パラシエルは静かに必ず来るであろう敵を待つ。
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
しばらくして来客の気配が現れた。
宝物庫に付いている三個ドアの隙間から妖しい霧が忍び込んできたのだ。パラシエルは手に持っていたフランス人形を置いた。

「来たか。」

呟き真っ直ぐに閉ざされた扉を見つめる。
近づいてくる、誰かが近づいてくる臭いがする。
10、9、8。パラシエルは頭の中でカウントを始めた。7、6、5、
4、3、2、1…扉がゆっくりと開く。

「やあ・・・迷子にでもなったのか?泥棒ネコさん。」


189 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/06(水) 21:29:33 0
>188
ゆっくりと開いた扉から現れたのは一人の兵士だった。
その顔に生気はなく、そのまま音を立てて倒れてしまう。
「迷子?いやいや、ここが目的地だよ。」
倒れた兵士の後ろからムーミン大佐が不敵な笑みを浮かべて現れた。

######################################

>186
「もっともな意見だ。まあ順番にいこうではないか。」
不可視の力によって海上を飛ぶ二人。
やがて岸に着き、少し離れた場所の古井戸へと降下していく。
城全体を覆った海霧によって、索敵作業を行っている。
あらゆる隙間に入り込んだ海霧はその抜け道すらも的確に把握しただのった。
古井戸から地下道へ。
そして城地下の王墓へというルートで潜入に成功。
「これを持っていてくれたまえ。巻き添えを食らわせたくないのでね。」
王墓で、ムーミン大佐がルミナにBB弾ほどの玉をいくつか渡す。
それは電気を喰らう妖精ニョロニョロの卵だった。

身を隠しながら謁見の間にたどり着いたのだが、そこには誰もいなかった。
暫く探索をした後、一人の兵士に遭遇することになったのだった。

######################################

「彼に聞いたら封魔の宝玉は宝物庫にいる召喚戦士が持っているということだったのでね。
案内してもらったのだよ。
早速だが、人質を助けたければ封魔の宝石を渡してもらえないかな?」
単刀直入にパラシエルに話すムーミン大佐。
だが倒れている兵士は、どう贔屓目に見てももはや生きてはいない。
海霧の立ち込める中、ムーミン大佐の足元には白く短い触手のような生物ニョロニョロが無数蠢いていた。

######################################

>175>184
城内を行く紅竜と赤屍の前で異変が起きていた。
立ち込める霧の一部が歪み、二足歩行の犬の姿へと変っていく。
「戦闘妖精部隊所属、クー・シー少尉であります!」
二人の前で敬礼をするきりの犬は二人にムーミン大佐からの伝言を伝える為に現れたのだ。
「『城外で戦闘を楽しんでいると思っていたが、意外だったね。
電撃による攻撃を予定している。放電範囲はこの海霧の立ち込める領域全体。
すなわちこの城、丸ごとだ。友軍動向による予定変更はないので、各自耐電対策を。』
以上であります!」
伝言を伝え終わると、犬の妖精クー・シーは形を崩し、元の海霧の一部へと溶け込んでいった。

190 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/06(水) 22:33:53 0
>>187
「……先日は、見苦しいところを見せてしまいました。
 約束、守って下さったのですね。ありがとうございます……
 まだ名乗っていませんでしたね、私はリーベルと言います。
 よろしければ……お名前を伺えますか?」
俺が丁度うつらうつらし始めた頃女が起きてくる。
「俺に…礼など言うな、俺はただランカムに言われたことを守っただけだ。
 名前?そういえば名前を聞いていなかったな…リーベルか。
 …俺の名前はフェル・エクスティム…フェルで構わん。」
そして俺はリーベルに背を向け部屋を出ようとしたが一つ良い忘れていたことを思い出し伝える。

「どうやらあと数日のうちにはアヨガンで戦争が起こるようだ。
 一応移動するための魔法陣はランカムが探した。
 ランカムはどうやらアヨガンに行くようだ。無論俺も行く。
 お前も行きたいのならば一緒に来るんだな……だが、今後は自分の身を心配するんだな。
 この前のように無理して人を助けるのは止めろ。でなければ今度は命などないかもしれないぞ。」
そして部屋を抜ける。一睡もしていなかったので若干眠いが……時間がない。
今すぐにでも鍛錬を始めないとムーミン大佐には勝てん……俺は来るべき戦いの時のために
ランカムの元に戦術を学びにいった……

―――数日後―――

この数日間…俺はランカムとの訓練の末にいくつかの戦術という概念は理解できた。
どうやら俺の世界とは全てが違うようで効率などを求めているようだ。
まずランカムの世界の戦いとは1対数人を基本とする……
他にも戦術的に有利に進める方法を教わった……実践するかどうかは別にして
この世界の基本というものを理解した。
対するランカムも俺の世界の知識をどんどん吸収していった……
覇気は本来だれしも持っている精神力と生命力を使い出すもの。
確かに覚えるには相当の時間を要するが生命の危機になればなるほど会得できる可能性も増す。
おそらくランカムは覇気を完璧に覚えるだろう。少なくとも俺の世界の兵隊長クラスには易々となるはずだ。







191 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/06(水) 22:34:45 0
他人に力を与える…複雑な気分だった……
この俺が…他人などどうでもよかったこの俺が。
他人に教えを乞うぐらいならばいっそのこと死を選ぶ俺が…
なにか分からないが俺は今嫌な予感がしている。
なにか重大なほつれが俺の中に生じているような嫌な予感が…

そしてアヨガンより魔王たちが動いたという知らせが届いた。

魔法陣にのりアヨガンに移動した後も俺はランカムたちとは合流しなかった。
あの黄色いバンダナとも合流はしなかった………
なぜかは分からない、戦術も学んだ…確かに多い方が有利なのは分かる。
俺が生き残る確率があがるのもわかる……だがあいつ等に関わっているほうが危ないとどこかで判断し離れることにしたんだ。

>>184>>189
「彼に聞いたら封魔の宝玉は宝物庫にいる召喚戦士が持っているということだったのでね。
案内してもらったのだよ。
早速だが、人質を助けたければ封魔の宝石を渡してもらえないかな?」
ムーミン大佐がそう余裕の表情でパラシエルに言ったときだった。
「ならばまず人質を返してもらおう!!」
ムーミン大佐の後ろから一陣の風が吹き…一影がムーミン大佐を通り過ぎる。
そして腕が伸び人質をそのまま掻っ攫っていく。
そう、この俺だ。俺は極限まで集中力を高め悪意ある殺気を放つ奴を見張っていた。
「おいガキ、この兵士は虫の息だが生きている。治せるなら治してやれ。」
そういい兵士を寝かせる。確かにこの兵士は雑魚かもしれんが。今はないよりもましだ。
「久しぶりだなムーミン大佐……どうやらまた何かを企んでいるようだがそうはいかん。」
俺はムーミン大佐の足元の謎の生物に目をやり睨みつけ覇気を刃状に伸ばし何発も投げ飛ばす。
死んだかどうかわからない。だが反応を見れば少なくとも今後の対策をとりやすい。
ランカムから教わったこと…それはまず相手の性質などを見極めること!


192 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:35:46 0
「お、重いなこれ……おーい、この瓦礫はどこに置けばいいんだー?」
『ああ、それは向こうの方に捨てておいてください』
『カミジョー、材木どこにあるか知らないか?』
「それなら確か、裏手に置いてあったぞぬあ!?ぐっ、あ、足に瓦礫があ……!」

この数日の間、上条はオロッパスでの復興作業に従事していた。
腕力や作業面でこそ一般人と大差ない上条だったが、魔王と渡り合ったという
異世界の戦士の存在は、作業を行う人々に対し大きな安心を与え、結果、作業の
能率をグンと上げる事となっていた。

「うだー、この復興作業っていつまでかかるんだよ……上条さんはそろそろ基礎体力が
 レッドゾーンに入りそうですよー」
『上条殿。貴方は指示以外の事をやりすぎだからそうなる。そもそも、分担された作業だけを
 やっていればその様な負担は残らないのだ。』
「いや、だってまだ怪我してる奴とか、女の人に作業をさせるのは変だろ?」
『それぞれが出来る事を行っているだけだ。動ける者が作業をするのは、当然だろう』
「まあ、そうかもしれないけどさ。それでも、手伝ってやれるなら手伝いたい」
『……貴方は、いつか詐欺にあう気がするぞ』
「不吉な予言かまさないでもらえますかっ!!?」

呆れたように言い、上条の怪我(大した事はない)に包帯を巻いているのは、
異世界の戦士であるという上条の世話を任された、オロッパスの騎士団中隊長の女性である。
彼女は、召喚の儀式の時に最期のまで地下に残ろうとしていたことから、ウサコと
戦っていた上条の事を目視しており、その恩義からか、
自ら上条がここにいる間の世話係に志願していた。
最初こそ上条に恭しく接していた彼女だったが、上条と一緒に行動しているうちに
馴染んでいき、僅か数日にして砕けた会話をするにまで至っていた。

だからこそ彼女は、先程アヨガンの旗色が悪くなったという情報が届いてから、
上条の様子が妙な事に、真っ先に気付いた。

193 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 02:36:19 0
『上条殿、貴方はアヨガンへ行きたいのだろう?』
「……なんでそう思うんだ?」
『ここ数日の様子を見ていれば、貴方がどういう人間かは、私にも解る』
「俺、そんなに読まれやすいの!? ……ハァ。まあ、そうだな。正直戦争なんてモンに
 関わるのは勘弁して欲しいし、俺一人でどうにかなるもんじゃないとも思う。
 ……けど、あっちには友達がいる。だから、少しでも助けになれるなら、行きたいって思ってる」
『……』
「でもな、俺はポップ達と同じくらい、ここの人達も助けたいと思ってるんだ。
 だからここに残――――」

『……なあ上条殿、あまり我々を侮ってくれるな』

中隊長の強い言葉に、背を向けていた上条は振り返る。
そこには、言葉よりも強い中隊長の表情があった。

『確かに、今の我々では魔王や魔物を相手にするのは厳しいかもしれない。
 けれど数日前、城が崩壊した直後のように、容易に押しつぶされる程脆くも無いのだ。
 復興、その為に必要な一歩は、貴方達が貸してくれたのだぞ。上条トウマ 』

『今度は私達に手伝わせてくれ。貴方が進みたい方向への道案内くらいはできる筈だ』

そう言い切った中隊長を見て暫く固まっていた上条だったが、
やがて、ニヤリと笑い返事をする。

「頼む、俺をアヨガンまで連れて行ってくれ」
『――――心得た!』

中隊長が口笛を吹き、呼んだ生き物は『グリフォン』。
転移魔法の効果が無い上条が馬で向かうにはアヨガンは遠いが、この霊獣に乗っていけば
戦局が最悪に向かう前に、辿り着く事が出来るだろう。
『さあ、私にしっかり捕まれ上条殿――――んな!?ど、ど、どこに捕まっている!?』
「へ?どこって腰……あれ?何だこの感触、最近どこかで覚えがあるような不幸だぶはあっ!!?」

194 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:08:41 0
>189
そしてついに扉は静かに開いた。
パラシエルの目線の先に真っ先に入ってきたのは一人の兵士。

>「迷子?いやいや、ここが目的地だよ。」

そう言うと兵士の後ろからムーミン大佐が現れた。

「・・・泥棒ネコというより泥棒カバと言った方が正しかったかな?
何はともあれなんのマネだ、人形劇のつもりか?それは。」

>「彼に聞いたら封魔の宝玉は宝物庫にいる召喚戦士が持っているということだったのでね。
>案内してもらったのだよ。
>早速だが、人質を助けたければ封魔の宝石を渡してもらえないかな?」

そう静かに言うと足下から小さな触手が動き出す。
しかしそれを見てパラシエルは少しキョトンとすると、あっさりとこう言った。

「無理な話だろうな。それは。」

その言葉とほぼ同時にムーミン大佐の背後から風が吹いた。


195 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:10:44 0
>191
>「ならばまず人質を返してもらおう!!」

そう叫びムーミン大佐の人質を見事に掻っ攫う一つの影。
その正体はフェル。パラシエルは可憐に宝箱の上から飛び降りた。
パラシエルの鼻はムーミン大佐の臭いと共にフェルの臭いもとらえていたのだ。
フェルは兵士をパラシエルの前に差し出す。

>「おいガキ、この兵士は虫の息だが生きている。治せるなら治してやれ。」

「了解した。ガキ。」

そう一言言うと兵士を片手で抱き上げた。
そしてフェルの目を見る。
明らかにパラシエルが前回見た時よりも変わっていた。
力とかそういう肉体的な話ではない。胸に宿るモノの気配が変わったのだ。
パラシエルはふと服の胸元から宝箱を一つ取り出すとフェルに投げ渡した。

「渡しておく。」

そしてムーミンの方をむき直し言った。

「おい、泥棒カバ。貴様の目的はこいつに渡しておいた。
嘘だと思ったら研ぎ澄ましてみろ。僅かながら感じるだろ?今まで感じたことのない特別なオーラを。
こいつにこんな大事な物を渡す理由を教えてやろう。お前じゃこやつに勝てないからだ。
こやつには百獣の王である獅子が宿ったのだ。もうカバ如きには負けはせんだろう。尻尾を巻いて逃げるなら今のうちだぞ?」

そう叫ぶと今度は再度フェルの方にむき直した。

「奴の目的はそれだ。全力でそれを守れ。
・・・僕様の期待を裏切るようなマネはするなよ?」

そう言った途端パラシエルはフェルに向かって天使のような笑みを浮かべた。
かと思うと次の瞬間顔が歪み、足下からぐにゃりと折り曲がると
あっという間に粘土状になり「めた〜」と妙な鳴き声を出した。
そしてその粘土状の生物は兵士をつれ宝物庫の鉄格子破りどこかへ行ってしまった。

196 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 03:59:28 0
>186
――――場面は代わり城の地下にある王家の墓

そこは地下というだけあって、薄暗く、非常に冷たい空気の流れる場所である。
まさしく幽霊が化けてでそうな雰囲気のその部屋にはいくつも棺桶が並んでおり、
それには様々なアヨガンの王族の名が刻まれている。

パラシエルははなっから本物の宝玉を城の中に隠そうという考えはなかった。
なのでパラシエル、否、パラシエルの秘密の宝の一つである
『クレイ・フェイカー』を使って作ったパラシエルの偽物が渡した宝玉は偽物である。
では本物の宝玉はどこにあるのかというと、今現在アヨガンの上空をぐるぐると優雅に回っている。
パラシエルは本物の宝玉を自分の翼である鷲の胃の中に隠したのだ。
では何故今パラシエルは城内に居るのだろうか?
パラシエルは>181で言ったとおり欲がある天使だ。特に宝に対しての執着心はかなり強い。

東條の背後の棺桶が静かに開くと東條のうなじに銀で出来た爪を当てた。

「動くな。」

その正体はパラシエルだった。
パラシエルは鼻を動かした。
やはり間違いなかった、この煙草の臭いは宝玉とは別の獲物、即ち石のような物体を奪った者の臭いである。
パラシエルが石のような物体を持ち去った者の臭いを嗅いだ時、
煙草の臭いと共に嗅いだことのない生物の臭いと女の人間の臭いがした。
パラシエルは以外と変に慎重な部分がある。訳の分からない生物と戦うより自分に近い人間と戦いたいと思う傾向があった。
なのでパラシエルは煙草の女が一人になることを待ちわびていた。


197 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 04:12:57 0
「初めまして。僕様の名前はパラシエル。」

パラシエルは相変わらずの無機質な声で語りかける。

「どうやら城内に放ってた人形の元へ相方さんは行ってしまったようだ。
城外から貴様らの臭いがぷんぷんしてな。ほんの少しストーカーさせてもらった。
戦闘をする気は無い。僕様は取引をしに来た。」

そう言うとパラシエルは胸元から箱を取り出した。

「ここに宝玉がある。
嘘だと思ったら研ぎ澄ましてみろ。僅かながら感じるだろ?今まで感じたことのない特別なオーラを。
これと引き替えに貴様達が地下室から攫っていった物について色々と教えて欲しいのだ。

正直僕様はこの世界がどうなろうが知っちゃこっちゃ無い。この世界に愛着などみじんもないからな。
ただ貴様らが攫った物は多少ながら興味がある。
もしこの取引を断るならこの爪が貴様を裂く。だが、もしこの取引を受け取るなら貴様は宝玉を手に入れ万々歳。
どっちが得だか赤ん坊でも分かるだろ? 」
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
クレイ・フェイカー
→生物、宝の偽物を作り出すことが出来る粘土。宝玉の偽物作りの時もパーツ作りの時とかに一部使用された。
この粘土の欠点は本物にかなり劣ると言うことと脆いという事である。
粘土で作られた偽物は本当に脆く、人差し指と親指に力を入れるだけで崩れてしまう。
この粘土で生物の偽物を作った場合、その生物が持つ能力も受け継ぐことも出来るが、相当劣化されている。


198 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 17:28:58 O
>184
>「ええ、彼等はきっと私達とは別の目的があるのでしょう。
私は召喚された方々にお会いしたくて一足早く乗り込んだ、という訳です。」
「おおう。ムーミン大佐め、まさか封魔の宝玉の手柄まで独り占めする気ではあるまいな‥‥」
ムーミン大佐が有能な味方なのは心強い限りだが、宝玉奪取に成功されては後々困る。
さりげなく邪魔しに行くかとも考えたが、現実な案だとは思えない。
敵の召喚戦士たちの頑張りに期待するしかないだろう。
それに紅竜にも、赤屍と同じように召喚戦士に会う目的があった。
もちろん無差別に誰でも良いわけではなく、上条と名乗る男に。正確にはその能力に興味があったのだ。

ウサコの強大な魔力を一瞬で、しかも右手で触るだけで消し去る能力【幻想殺し】。
上条の戦い方から超近距離でしか発動しない能力なのは間違いない。
離れて攻撃できるのに、わざわざ接近するバカはいないだろう。
だが効果の方は折り紙付きだ。
さらに、ウサコを脅す時の上条からは余裕が感じられた。
もし幻想殺しがその名の通り、幻想の存在を触るだけで殺す力を持っているなら、
この幻想の満ちた世界では最強の能力と言っても過言ではないだろう。
だから、上条に会ってその力の秘密を解き明かす事を紅竜は望んでいる。最終的に幻想殺しを自分のものにできれば、大魔王をぶち殺して世界を征服する大きな助けになるだろう。
無理なら上条を下僕にして牛馬のように使ってやればいいのだ。

>「……紅竜さん…もしかしてとは思いますが…。
このまま召喚された方々に会えないで終了…なんて事はあり得ませんよね?」
「お?お、おおう!!そんな事があり得るはずなかろう!」
笑顔はそのままでも、明らかに怒りのオーラを発している赤屍に話しかけられて我に返る。
知的好奇心の世界を空想の翼で飛んでいたので、赤屍が徐々に不機嫌になっていたのに気づかなかったのだ。
このままだと一番手近な召喚戦士である紅竜の命が危なくなってしまう。
「おいお前!本当にちゃんと案内しているのだろうな!?」
「はい〜間違いないでしゅ〜
この道の突き当たりが宝物庫で、その中で召喚戦士が宝玉を守っていましゅ〜」
通路の先を指さす兵士の前で唐突に霧が歪み、二足歩行の犬が姿を現した。

199 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 17:30:54 O
>189
さては敵の召喚戦士か!?と身構えるが、犬は敬礼して敵意が無いことを伝える。
>「戦闘妖精部隊所属、クー・シー少尉であります!」
「おおう、戦闘妖精部隊だと?」
その単語から連想できるのはムーミン大佐しかいない。
なにか手伝わせたい事でもあって協力を要請しに来たのか、
とも考えたが、伝言内容はそんな半端なものではなかった。

>「『城外で戦闘を楽しんでいると思っていたが、意外だったね。
電撃による攻撃を予定している。放電範囲はこの海霧の立ち込める領域全体。
すなわちこの城、丸ごとだ。友軍動向による予定変更はないので、各自耐電対策を。』
以上であります!」
「なにぃ〜〜!?ムーミン大佐め!仲間まで黒焼きにする気かぁ!!」
思わず叫ぶが、よく考えると先に警告を受けたのは幸運だった。
いまの紅竜には広範囲無差別攻撃を無効化することは不可能なのだから。
そうすると一刻も早く城から出る必要があるが、今度は赤屍にどう言い訳するかが問題だ。
電撃が怖いから外にでていますなどと面子にかけて言えるはずがない。
霧に戻る犬を眺めながらしばらく言い訳を考える。
「ふん、ムーミン大佐め。そんな事の為に警告なぞ無駄な気を使いおって。
‥‥ところで急用を思い出したので私はこれで失礼する。赤屍はどうするのだ?」
兵士に城外への案内を急がせながら、赤屍に尋ねる。
宝物庫に行くなら自分は大急ぎで逃げ出せるし、一緒に外に出るなら強力な護衛になるからだ。

200 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 18:31:04 O
>>199「…急用……ですか…。」
紅竜に尋ねられ、赤屍も考え込む。
何故なら赤屍もまた、広範囲の無差別攻撃を防ぐ術を持ってはいないからだ。

暫しの沈黙の後、赤屍は笑顔で紅竜に言った。
「私は宝物庫に行かせてもらいます。
久々に強者に会えそうというのに引き返す訳にはいきませんので…。」
それでは、と別れを告げ、宝物庫へと向かった。

>>189>>191「おや?これはこれは…。」
宝物庫に入るなり、より一層嬉しそうな表情になる。
そこにはムーミン大佐とフェルの姿があったからだ。
「紅竜さんに感謝しないといけませんね…。
ムーミンさん、彼ですか?貴方の腕を持っていったのは?」
赤屍も感じていたのだ。
フェルから発せられる獅子の如き闘志を。
「しかし残念ですね…彼の闘志は貴方に対して向けられているようです。」
羨ましそうにムーミン大佐をみる。
そしてフェルに対して質問をした。
「一つ質問です。貴方以外の召喚された方々には何処に行けば会えますか?
出来れば強い方に会いたいのですが…。」

201 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 21:28:47 0
>190-191
>「俺に…礼など言うな、俺はただランカムに言われたことを守っただけだ。
> 名前?そういえば名前を聞いていなかったな…リーベルか。
> …俺の名前はフェル・エクスティム…フェルで構わん。」
言われた事を守っただけだから礼はいらない、その言葉を聞いて
すっかり緊張のほぐれたリーベルは思わずクスッ、と笑ってしまった。
「私がお礼を言いたかっただけですから、気にしないで下さい。」
あまり深い部分にまで言及するとフェルはまたむくれるだろう。
何となくだが、フェルと言う人物の事が少しだけ分かった、様な気がした。

>「どうやらあと数日のうちにはアヨガンで戦争が起こるようだ。
> 一応移動するための魔法陣はランカムが探した。
> ランカムはどうやらアヨガンに行くようだ。無論俺も行く。
> お前も行きたいのならば一緒に来るんだな……だが、今後は自分の身を心配するんだな。
> この前のように無理して人を助けるのは止めろ。でなければ今度は命などないかもしれないぞ。」
「やはり、戦いは避けられないのですね……」
リーベルは戦いを好まない。戦争が起こる事によって、多くの命が失われ
それが引き金となって危険な負の精神の精霊が力を強めるからだ。
その事を考えて、ふとフェルを見やると昨日までフェルから感じられた
負の精神の精霊の力が弱まっている事に気づいた。怒りを司る精霊、フューリー。
取り込んだ者を狂戦士に変え、動く物全てを破壊し尽くす忌むべき存在。
ともすればフェルを取り込まんばかりに膨れ上がっていた筈のフューリーが、
今は普通の人間と変わり無いほどにまで影を潜めている。
自分が倒れている間に一体何があったのか……
「ご忠告、ありがとうございます。ですが、私の逃げ場は全て失われました。
 戦い、勝利を収めねば私の、そして全ての世界の未来は無いのです……
 フェルさん、あなたも無理をして命を磨り減らしてはいけません。
 ……私には事情は分かりませんが、きっとあなたにもあなたの無事を
 願っている方がいる筈ですから……その方の為にも。」
自分の言葉がフェルに届いたかどうか、リーベルには分からない。
しかし昨日ならばいざ知らず、今のフェルにならきっと……そう思う事にした。

202 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 21:30:44 0
>189>191>200


―――――数日後―――――


リーベルはいち早くアヨガンへと自前の跳躍魔法で跳んでいた。
オロッパスは戦後処理や復興などで物資にまったく余裕が無く、
リーベルが望んだ水すら満足に手に入らない有様だったからだ。

初めはパラシエルに警戒された様にダークエルフと言う事で先にアヨガンへ渡った
ポップよりもはるかに厳しい扱いを受けていたのだが、前線の味方部隊を
付与魔術で援護したり傷ついた兵士を癒したりと言った献身的な活動により
二日目でようやく信用を勝ち得る事が出来た。来る決戦に備え、リーベルは
高位司祭によって浄化された聖水をいくつか融通してもらい、それに
付与魔術を用いて体力を回復する薬、魔力を回復する薬、死んでさえいなければ
たちどころに傷を癒し活力を取り戻す高等の霊薬を精製した。
戦時中で時間も人手も足りない為それほどの数は用意できなかったが
戦力として期待される召喚戦士の分は確保できたのは僥倖と言える。
もっとも、神官団の覚えは更に悪くなったのだが……

そして決戦の日、リーベルは宝物庫に詰める事にした。
密閉された室内では精霊の協力はほとんど得られないが、
戦況が見える場所に陣取っていたずらに高位魔法を使ってしまって
いざと言う時に役立たず、では困ると判断したからだ。
逸る気持ちを抑え、パラシエルの一人遊びを漫然と眺めていた。
戦が起こっていようとマイペースな、この自称天使を見ていると焦っている自分が
馬鹿馬鹿しくなってくる。不思議なもので、敵が来る頃には気持ちが落ち着いていた。

>「彼に聞いたら封魔の宝玉は宝物庫にいる召喚戦士が持っているということだったのでね。
> 案内してもらったのだよ。
> 早速だが、人質を助けたければ封魔の宝石を渡してもらえないかな?」
入ってきたのは、この世界での最初にして最悪の因縁の相手、ムーミン大佐だった。
リーベルはムーミンがどんな性格をしているか知らなかった。ここまで行動派だと
知ったのは今である。自分の中の疑惑を晴らそうかと思ったが、それどころではなかった。

>「ならばまず人質を返してもらおう!!」
>「久しぶりだなムーミン大佐……どうやらまた何かを企んでいるようだがそうはいかん。」
足元の死に掛けた兵士をフェルが救出しパラシエルに渡した。
その後の口ぶりではフェルもまたムーミン大佐とは因縁があると見て間違いないだろう。
その割にはフェルは落ち着いている……フューリーが少しだけ蠢いている以外は
以前見た時と変わりない。怒りに取り込まれなければ、フェルは大丈夫だ。問題は……

>「一つ質問です。貴方以外の召喚された方々には何処に行けば会えますか?
> 出来れば強い方に会いたいのですが…。」
更にやってきた黒衣の男の方だ……口元に浮かぶ笑みは柔らかながらも酷薄さを
湛えており、一目で危険人物と分かる。この男を他の戦士に会わせる訳にはいかない。
精神の精霊の揺らぎが全く感じられない、リーベルにとっては恐怖の対象とも言える
赤屍を相手に、半分お飾りの真銀で出来た長剣を抜いて切っ先を向ける。
「お答えを知りたければ……私と一曲踊ってくださいますか?
 前座にすらならないでしょうけれど、冷えた体を温める位はお付き合いできるかと……」
身体能力だけで言えば、リーベルに勝ち目は一切無い。俊敏さだけが辛うじて
互角に届くかと言う程度、真っ向から切りあえば一瞬で膾にされるだろう。
だが黒衣の男は自分の能力を知らない。小細工も含めた全ての魔法を総動員すれば……
もしかしたら、退ける位の事は出来るかもしれない。それでも駄目だった場合、
命を賭けた最後の手段に頼らなければならなくなるだろう……

203 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 22:15:04 0
>>179
ランカムと共に『地獄の帝王』の討伐に向かったポップ。
>「…いよいよ、ですね」
「ああ。ま、この俺がいるから心配はいらねえよ。とっておきもあるからな」
ポップはニッと笑った。
何もこの数日間、ただ敵を追っ払って過ごしていただけではないのだ。

>>180
そして城門前。
>「ゾディックだ!ゾディックが来た!」
『地獄の帝王』は…あっという間にすぐそこまでやって来た。
もはや目と鼻の先と言える距離だ。
「んなっ!?」
ポップは驚く。まだまだ接触までは時間があったはずだ。
いくらなんでも早過ぎる。接近された事にすら気が付かなかった。
「イッ、下級爆裂呪文(イオ)ッ!」
ポップはゾディックに向けて十発ほどの接触爆破魔法球を放ちつつ、慌てて飛び退いた。
「なんだこいつ、瞬間移動でもしたのか!?気をつけろよ、ランカム!」
敵から感じる、いわゆる強者のオーラはあのウサコを遥かに上回る。
少し見くびっていたかもしれないと、たったの二人で来た浅はかさを早くも後悔し始めるポップだった。

204 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 22:24:35 0
ブルースフィア、とある名も無き社。

静寂の支配するその広間に、声が響く。
???「黒狐はおるか?」

――御前に。
広間に唐突に現れたのは、巫女装束をまとった巫女である。
唯一常人と違うのは、その頭頂部に生える狐のような耳だろうか。

黒狐「此度の用件は如何なものでしょうか。」
???「うむ、お主の異界渡りの力を活用してもらうことになる。」
黒狐「という事は、異界へ・・・?」
???「うむ、それはな・・・・・・」

――――――――――――――――――――――――――――
黒狐「異界からの召喚に応じ、魔王を退ける手助けをせよ・・・ですか。」
そう呟く黒狐の眼下に広がるのは、魔王の軍勢による地獄絵図寸前の戦場。
ここは、アヨガン城。その上に立つ者のいなくなった櫓の上に彼女は立っていた。

黒狐「さて、何方が勇者か分かりませんがどこかにいるのは間違いないのでしょう。
    ならば、ここは兵士の方々から手助けするのが道理、かしら。」
そう呟くと、巫女は櫓から大地へ向かって飛ぶ。
ゆっくりと舞い降りながら、両手が淡く輝く。その光組み合わせ、着地寸前に地面へと叩きつける!
甲高い音とともに地面に現れるのは八卦の方陣。

黒狐「八卦!四象!」
八卦の方陣のさらに周囲に四角型の方陣が現れる。
黒狐「傷つき倒れ伏す者に、大地よ!力を!」

唐突に現れた巫女の声が響くと同時、傷つく人間達の傷がみるみる内に塞がり
立ち上がる気力も沸き起こる。これが黒狐の持つ力の一つだ。

黒狐「勇者様はどこにいるのかしら・・・?」
地獄の帝王の現れた戦場に、その暢気な声はかき消された。

205 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 22:34:02 0
>191
背後から現れた一陣の風は倒れた兵士を攫っていった。
それはオロッバス城で叩きのめした戦士、フェルだったのだ。
>「久しぶりだなムーミン大佐……どうやらまた何かを企んでいるようだがそうはいかん。」
その言葉に込められた怨念ともいえるフェルの気迫に、ムーミン大佐の表情が愉悦に歪む。
繰り出される攻撃を避ける為、大きく後ろに跳躍。
しかし、床に着地することはなかった。
通路の天井に重力を無視して着地したのだから。
逆さ吊状態になりながら、先程まで立っていた場所に両断され横たわるニョロニョロの躯を見る。
そして瞬時にフェルの変化を見抜いていた。

オロッバスの城で会ったフェルは純粋なる戦士だった。
このように背後を突きながら倒れた兵士を救うことを優先させるなどありえない。
更に、ニョロニョロを攻撃し牽制するようなことも。
この変化に驚きながらも、にやりと笑い首筋に指を当てる。
「やあ。傷の調子はどうかね・・・?」
オロッバスでフェルの首筋につけた敗者の刻印。
大した傷ではない。当然のように傷は治っているだろう。
だがムーミン大佐の指す傷は肉体の傷などではないのだ。
フェルの心に、プライドに付けられた傷のことなのだ。

>195>200>202
そうしているうちにパラシエルは宝箱をフェルに託し、形を崩して逃げていく。
鉄格子を突き破り逃げていくのを阻止したかったが、それをさせなかったのはフェルの尋常ならざる気だった。
床と天井にそれぞれ足をつけ、奇妙な対峙だが、脇をすり抜ける隙を見つけることができなかったのだから。

そこに現れた赤屍。
フェルの覇気がムーミン大佐に一心に向けられている事に、違う相手を探そうとしているようだ。
「くくくく、私もずいぶんと安く見られたようでね。」
赤屍からの問いに答えるでもなく、呟くと、そっとシルクハットをずらす。
その隙間から、黒い光が溢れ出した!

本来、空気とは絶縁体である。
その名の通り、電気を通さない性質を持っている。
雷が宙を舞うのは、その圧倒的なエネルギーで絶縁体を破壊しているのだ。
雷がまっすぐに進まずにジグザグを描くのは、空気の絶縁体性質によってその進行を防がれているからである。
それと同様に、雷撃の魔法も空気中ではその真価を発揮しきることができない。
が・・・それはあくまでも何もない空気中で行った場合である。
現在、城は潮を含んだ海霧に覆われている・・・。
すなわち、電気の通り道が縦横に敷かれている事を意味する。
最小の力で最大の成果を挙げるために下準備をしていたのだった。

黒い閃光と轟音と共に、黒き稲妻が城全体を包む!
遠目で見ると巨大な黒い三つ首の犬が城に覆いかぶさっているように見えただろう。

206 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/07(木) 22:34:15 0

閃光が収まった時、赤屍とリーベルの周囲には無数のニョロニョロが生えており、電撃を吸収し防いでいた。
「ふははは、人質を返してもらった?いいや、人質はこの城に篭る全ての人間なのだ。
多少はできるようになったようだが、戦いとは常に二手三手先を考えてするものなのだよ。」
立ち込めるもやの中、同じように周囲にニョロニョロを生やしたムーミン大佐が笑っていた。
そして赤屍を片手で制しながらリーベルに向きかえる。
「リーベル嬢。久しぶりだねえ。別に害をなそうと言うわけではない。
そろそろエスコートに応じてもらいたいものだ。
でないと・・・首だけにして持ち帰ることになるが?」
穏やかな口調で言葉を綴るが、最後の台詞は凶暴性がむき出しになっている。
赤屍を制していた手を下げ、剥き出しになった凶暴性に見合う視線をリーベルに投げかけた。

Drジャッカルと異名をとる赤屍ならばそれが可能だという事を見越してだ。
協力が得られぬのであれば、綺麗に首を切り落とし、能から直接情報を取り出すつもりだ。

##################################

城全体を包む黒き稲妻。
それは地下王墓も例外ではない。
黒き雷が縦横に乱舞する瞬間、ルミナの持っていたニョロニョロの卵が発芽し、身に降りかかる電撃を吸収する。

稲妻が収まった後、海霧はゆっくりとムーミン大佐の顔を形作っていく。
そして大きな声で話し始めた。
「少年よ!ずいぶんと私を安く見てくれたものだ。
今の一撃で君は死んではいまい。だが、城内に篭る人間達はどうかな?2/3は生きているだろうが、動けもしまい。
ぜひとも先程の話の続きをしたいのでね、戻ってきてくれたまえよ。」
これは地下王墓だけでなく、玉座の間、大聖堂、謁見の間、その他城の至る所で形作られていく。
そして無数のムーミン大佐の顔は一斉にパラシエルを呼びかけるのだった。

確かにフェルに渡された箱からは特別なオーラを感じた。
だが、あっさりと渡し逃げる。安い挑発までつけて。
そこに疑念が生じたのだ。

####################################

宝物庫では立ち込める靄の中、ムーミン大佐がフェルの死体を捜し箱を回収しようと辺りを見回していた。

207 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 00:01:01 O
「なにッ!?」
ポップと驚愕の声が重なる。
−−いつの間にッ!?
櫓の上から見た限り、かなりの距離があった筈だ。
地下でウサコが見せた瞬間移動の能力も疑ったが、
地面に残された足跡がそれを否定している。
−−伝説の獣、オーガにも勝る脚力があると言うのか!

間近に見る“ゾディック”と呼ばれた獣の姿は、
遠くで感じていた物よりも数段大きく見えた。
体躯による物だけではない。その力が発する、威圧感がそうさせるのだ。
“地獄の帝王”とは、名ばかりではない。

後衛の傭兵部隊はおよそ、半数が逃げたようだ。
元の世界でも“傭兵”と付き合う機会はあった。
彼らは瞬時に、そして正確に己の利害を見極める。
…彼らが“勝てない”と踏めば、それは“勝てない”のだ。
出撃前に見た傭兵達の中には、かなりの実力者もいた事を確認している。
−−ランカムが、それを紅竜の変装と気付く事は無かったが−−

自分達は今、目の前の敵から逃げる訳にはいかない。
−−…あの女性は?
兵士達の中に、異国風の装束を纏った女性に目が止まる。
しかし、それを考えている間は与えられなかった。

ポップが幾つもの光球を放ち、こちらに注意を促す。
「承知!」
油断はすなわち、死に直結する。雑念を振り払い神経を研ぎすませる。

次の瞬間、爆発魔法が目眩ましとなり、周囲が光に覆われる。
−−行けるかッ!
ゾディックに向かい、弾かれたように駆け出す。
一見、無謀にも思える接近だが、単なる無策ではない。
いかに驚異的な脚力を持っていても、あの巨体から死角を無くす事はできない。
あえて死中に活を見出す、これは数日の間に、フェルから学んだ事だ。

「いやァッ!」
ゾディックの下腹めがけ、刺突を繰り出す。
−−私の力では、致命傷を与える事はできないが……。
その目的は注意を反らし、動きを止める事にある。
必要なのは、ポップが魔法を発動するための時間だ。

同時に、城の方角から雷のそれを数倍にもしたような轟音が轟いた。

208 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 17:26:10 O
>>202「おや…これは失礼しました。
見たところ貴女も召喚された方のようで…。」
赤屍は長剣を向けられて初めてリーベルの存在に気付いたようだ。
「…貴女は知っているんですね?他の召喚された方々の居場所を…。
…殺さないように気を付けなければなりませんね…。」
赤屍はリーベルから発せられるフェルとはまた違った気に興味を持っていた。

>>205>>206リーベルがどんな能力を持っているのか考えていると、ムーミン大佐の無差別攻撃が発動した。
赤屍とムーミン大佐は無数のニョロニョロが電撃を吸収してくれたお陰で無傷だった。
が、一般の兵士があのレベルの攻撃を受ければまず間違いなく致命傷を負うだろう。
「素晴らしい。実に効率の良い技だ。」
ムーミン大佐の技を賞賛し、次は自分の番だとリーベルの前に出ようとすると、ムーミン大佐がそれを制す。
どうやらムーミン大佐はリーベルに何か特別な用があるようだ。
ムーミン大佐が手を下げると赤屍は改めてリーベルと対峙した。
「さて、どうします?ムーミンさんの言う通り私達に着いて来るのか、それとも…。」
そこまで言ってリーベルに向かい一本のメスを投げた。
メスはリーベルの首をかすめて、壁に突き刺さる。
「…少し遊びますか?」

209 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 22:36:19 0
>203>207
どうやらこの戦場であのハリネズミっぽい敵に立ち向かおうというのはあの二人らしい。
「さて、あの方が勇者様かどうかは分かりませんが・・・。」

両手を構え、高速で印を切る。
「大地よ、勇者達に不倒の生命力を!」
穏やかな光が二人の足元から湧き上がる。《リジェネレイト》とよばれる自動再生の加護だ。
この光は、生物の持つ自己治癒能力を高める。

そして、その光に遅れるように半透明の空間が『地獄の帝王』とポップ、ランカム、黒狐を包む。
巨大な半円は、その4人を除く者を押し退ける。
「私に有利に働く結界を張りました。この中で無機物は壊れても、結界を解除すれば元に戻ります。」

外かられっきとした意思を以って入ろうとしてくる者は受け入れるが中から外へは出そうとしない。
そういう性質の結界だ。

210 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 23:56:06 0
>>205
「やあ。傷の調子はどうかね・・・?」
その言葉…俺は予想していた。おそらくあいつならば
俺を挑発するためにそういうことを吐いてくるだろうとは思っていた。
だが俺には意味などない…なぜならば端から俺のプライドにつけられた傷の
ことを忘れて冷静になろうなどという考えなどないからだ!!
それは俺を包む覇気が物語っている…確かにこの数日間…あの時の覇気に比べると
まだまだ弱い。まだ十分に回復しきっていない…だが俺には覚悟がある!!
「あの時と同じだとは思うなよ!!」
そして俺は構えを深くし力を精一杯込める…そして全ての蒼く光る覇気が腕と脚に集中していく。
この集中法により前回などとは比べ物にならないほどの力が腕と脚に集まっていく。
無論、防御力などというものは皆無に近くなる。
「いくぞッ!!今こそお前を倒し俺は更なる修羅へと進む!」
「くくくく、私もずいぶんと安く見られたようでね。」
俺がムーミン大佐の近くに飛び込こもうとしたとき、ムーミン大佐がシルクハットをずらす。
すると、そこから黒い光りが溢れ出す!俺の中の何かがあれは危険だと告げる。
そして次の瞬間!轟音が耳を貫くと同時に辺り一帯に凄まじい電流が走った!!

>>206
>宝物庫では立ち込める靄の中、ムーミン大佐がフェルの死体を捜し箱を回収しようと辺りを見回していた。
そしてムーミン大佐が箱を発見し取ろうとした時だった。
「どこを見ている。俺はここだぞ!!」
横から強烈な突きがムーミン大佐に迫る。ムーミン大佐は想定していない自体に驚きを隠せなかった。
それもそのはず。全てを攻撃にまわした俺の覇気、発生源であるムーミン大佐の前で雷の直撃を食らえば即死だった。
どうしてくらわなかったか?それは俺の手を見れば分かる。俺の手にはあの白く長い変な生物が握られていた。
この生物は雷を防ぐ力を持っているようだ。

ならばなぜ俺が分かったか。まずあの生物がバチバチッと帯電しているを見たのが考えるキッカケを与えた。
そして次に放った雷術だ…光ったときに気付いた。おそらく敵も味方も関係ない。この術はかなりの大きい術だと。
大きいならば大きいほど大雑把になる。どうやって自らの身を守る?ムーミン大佐は無駄なことをするような奴ではない。
ランカムに教わったが、合理的に動くのが熟練された兵士だそうだ…俺とは違い戦闘というものを熟知した奴は無駄なことなどしない。
奴は術を放つ瞬間にあの白い生物を召喚した。つまり…そうまでして出すこの生物には何かあるということだ。
そして元から俺はムーミン大佐に向かっていた。この白い生物を掴むなどそこまで難しいことでもない…
…見るではなく観ろ…聞くのではなく聴け………状況を素早く判断しろ…
…ランカムめ……癪に障るが中々ためになることを言う。

そしてこの驚きに不意打ちの突き…また箱を取ろうとした動作のせいでムーミン大佐は反応がわずかに遅れた!
だがその”わずか”で優劣が決まることも多い!俺の突きはムーミン大佐を用意に吹き飛ばす。
そして俺は即座に箱を拾う。これは守らなければならないらしい…たしかにムーミン大佐へ追撃しにいく考えもよぎった…!
だがあの男にはティンカーなんたらとかいう部下の能力がある。おそらく追撃に出たら攻撃の瞬間を見切って移動されるだろう。
そして箱を拾われでもしたらまた面倒になる!
そうだ、これでいい……無謀な真似は勝利を遠ざける……次は……どうする。
おれが今知っている奴の能力はジャックなんたらとティンカーなんたら…そしてあの白い奴だけだ。
あいつ自身の攻撃も来るかもしれない……永遠とも思える一瞬の思考の果てに俺は決断する!

「…………」
俺は集中させた覇気を辺りに霧のように拡散させ目を瞑る……
ただひたすらに……殺気も全てを沈め…感情を深く精神の底に沈殿させる。
攻撃力はもちろん防御もあるかどうか怪しい…だがこれが今の俺にできる最善だ。



211 名前:ゾディック ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/08(金) 23:56:30 0
203
ポップのイオはゾディックに直撃した。
どうやら、大魔王に直に操られているコイツは、命令が行き届くまでにわずかなタイムラグがあるようだ。
つまり、動きは素早いが、反応はそれほど速くないということだ。
また、強力な魔法耐性なども特に無いようで、身体はかなり傷だらけになっている。
ただ、イオの爆発でのけぞったそのとき、彼は金色のリングを八方にばら撒いた。
ゾディックがポップの方を一睨みした。

>207
ランカムの槍が、ゾディックの身体をとらえた!
だが、大魔王の操り人形と化したゾディックには、一切の痛覚は無い。
ゾディックは腹部に槍を突き刺したまま走り出した。
彼は散らばったリングのうち、自分に最も近いところに転がっているものを拾いに走り始めた。
それも、凄まじい速さである。振り落とされかねないほどだ。
当然、その進行方向に居た者は踏み潰されることになる。
リングを拾った瞬間、ゾディックの体がみるみるうちに再生してゆく。
進行方向に召喚戦士が居る事もあるだろう。
ゾディックがこのリングを拾うことが出来る状態にある限りは、この行為は攻防一体だと言えよう。

リングを拾いに走り続け、八面六臂の大暴れをした後、立ち止まった跡の彼の眼が赤い光を放っていた。
リングを全て拾い終えたゾディックは、魔王城を背に立っていた。
実際には大魔王の城までは距離があるが、あたかも魔王城を守っているように見えた。

212 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 01:39:57 0
>>211
下級爆裂呪文(イオ)がゾディックを直撃する。素早い割には反応が悪いようだ。
その途端、ゾディックの体からリングのようなものがばら撒かれた。
「なんだありゃ?」
そして続くランカムの槍がゾディックの体を貫いた。
しかし、ゾディックはダメージの色も見せず、体に槍を刺したまま走り出す。
「おわっ!」
その進行上にいたポップは慌てて飛び退き、体当たりを避けた。
そのまま追撃が来るかと思いきや、ゾディックはポップ達には目もくれずにリングを集めて回っている。

「なんだあいつ?…ぐあっ!」
こちらに向かって――というよりポップの向こうにあるリングに向かって駆けてきたゾディックを、
今度は避けきることができなかった。
「がああっ、痛てぇ!」
蹴飛ばされて転がるポップ。アバラが何本か折れたかもしれない。
すぐに患部に手を押し当て回復呪文(ベホマ)を唱える。
上級回復呪文といえどすぐに回復するわけではない。動けるようになる前に次の体当たりが来たらアウトだ。
(あと5秒来ないでくれ、頼む!)
心の中で祈るポップだったが、それは叶わなかった。再びゾディックがこちらに向けて進路を修正する。
「畜生っ!」
ポップは痛む体を押して、無理矢理飛び退いた。
今の回復量ではまだ避けきれないかと思われたが、しかし寸でのところで避けることが出来た。
「あれ?」
痛む体を押したはずが、あまり痛んでいない。
自分の呪文の回復量を間違えるはずはないが、想定していた以上に回復している。
まるで、ベホマ以外の何かの力が体の回復を後押ししたかのようだ。

>>209
そしてよく見れば、この空間を半透明のドームが包み、自分達以外の兵士がそこから除けられているようだ。
余計な犠牲を気にせずに済む分ありがたいが、ランカムの術とは思えない。
>「私に有利に働く結界を張りました。この中で無機物は壊れても、結界を解除すれば元に戻ります。」
そう言いながら現れたのは、ムチムチボインの少女だった。
「あんたは?…っとっととぉっ!」
少女に問いかけた時、再びゾディックの体当たりに掠りそうになる。
その後も数度の体当たりを辛うじて回避したが、ポップは細かい傷と疲労でヘトヘトになってしまった。
リングを拾い終え、改めて聳え立つゾディック。リングを拾う事で、傷はあらかた塞がっていた。
「つ、強ええ……!」
ポップは膝立ちで息を切らしつつ、そう呻く。

213 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 01:40:39 0
決戦前の数日間は、ポップはアヨガンに攻め入る雑兵処理の傍ら呪文の修行も並行していた。
最初は大魔王並みの出力を出すために全魔力を使っていたカイザーフェニックスも、
もう少し消費魔力を絞れる事が分かり、2〜3発は撃てるようになった。
「へへっ、やっぱ俺って天才かも」
だが、修行の中で悪い事も分かった。
ウサコとの戦いで無意識に使わないようにしていた極大消滅呪文(メドローア)が、やはり使えない。
何度試しても上手くいかない。
「おっかしいな。今までこんな事はなかったのによ…」
しかし、使えないものは取りあえず仕方がない。
手痛いロストだが、カイザーフェニックスがその穴を埋めてくれるだろう。
「そうだ、へへ、この機会に俺だけのスペシャル呪文ってやつを開発してみるのもいいかもしれねえな!」

………
……


「姉ちゃん、ランカム!多分あのリングを拾うと奴の傷を塞がっちまう!」
ポップは右手に魔力を溜めつつ、怒鳴る。
「こうなりゃ、リングを落としたら片っ端から破壊するっきゃないぜ!」
ポップの右手に、炎の不死鳥が現れた。
「もっかいばら撒きやがれ!カイザーフェニックス!」
ゾディックに向け、ポップは不死鳥を放つ。

214 名前:東條ルミナ ◇Yw2bVAsGtA[sage] 投稿日:2008/02/09(土) 07:10:32 O
「ん……あぁ、わかったよ」
大佐からもらった玉を摘み、目の前でよく確認するとルミナはそれを革ジャンのポケットにしまいこんだ。
その時、ルミナは背後から何者かの視線を感じ、ルミナは足を止めた。
いくら視線を感じたとはいえ、優秀な兵士でも気がつくかわからないぐらいに微弱なものだ。
大佐はそれに気がついているのか?それとも、見逃してやっているのかは判断できない。
「……ワリィ…大佐ちょっと先に言っててくんねぇか?ヤボ用が出来た。」
すまなそうにそう大佐に告げると、大佐は何も答えずに謁見の間(多分)へ向かった。

「……さてと、どうするかな?」
大佐が向かったのを確認すると、のんびり背伸びし、周りを見渡す。
海霧によってよくは見えないが、そこには今にも吸血鬼が出てきてもおかしくなさそうな御大層な棺おけが規則正しく並んでいた。
「………………遅かったじゃないか」
待っていたかのように呟くと、ルミナは両手を上にあげ、降伏している素振りを見せた。

「………………」
ルミナは沈黙したまま、パラシエルと名乗る輩の話を聞いていた。
確かに背後にそれらしいものの魔力を感じるが、どうだろうか?
本物かどうか確かめる術をこちらは待ち合わせていない以上、真偽については問えないが
一国が死守しようとしている宝にしては安すぎないか?
「なぁ…もしも空想だと思ってたブツ…例えば…なんて例えるかなぁ〜破壊勇者ガァガィガーって知ってるか?」
真偽がわからない以上、こちらも真を教えるわけにいかない。
ちなみに、破壊勇者〜はルミナの世界にて放送されたアニメのロボットである。
「そいつを動かすにはGロックっていう特殊なエネルギー媒体が必要な訳だが…
 …近くで見たときは鳥肌がたったぜ。まさか本物があるなんてな…そんとき電流が走ったね
 もしかしたら、魔王城にもあるんじゃねぇかって…ガァガィガーがな…そしたら…ッ!!!」
悠長に嘘を語る最中、黒い稲妻がこちらに迫ってくる。

刹那、革ジャンのポケットから現れた白いウナギのような生物が稲妻を吸収した。
「……ッ…つくづく恐ろしい奴だなアンタって人はよぉ」
霧で作られた大佐の顔に文句をたれつつ、振り返りパラシエルに魔銃を向ける。
「…知ってるか?陸上に上がったカバってのはライオンも逃げたすぐらいヤバイんだぜ?
 まぁ…んなことはどうでもいいんだよ…ソイツを渡してもらおうか?」
邪悪な笑みを浮かべ、ルミナは詠唱を始める。

215 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 11:42:47 O
>>200
>「私は宝物庫に行かせてもらいます。
久々に強者に会えそうというのに引き返す訳にはいきませんので…。」
「そうか!ではまた後で合おう!さらばだ!!」
赤屍に返事した直後、紅竜は出口に向かって走り出した。
操っている兵士も一緒に逃げ出したのだが、赤屍に傷つけられたためか足が遅い。
「キャーおいてかないで紅竜様!」
「おおううるさい!こんな時はボスは一人だけ助かるのがセオリーよ!!」
ゾディック登場の混乱のためか人気のない城内を爆走し、外に出た瞬間、黒い稲妻が城を覆った。
「ぬおおおっっ!」
転がるようにその場を離れてから、立ち上がって周囲の状況を確認する。
ゾディックの攻撃と電撃に、恐怖にかられた傭兵達が我先にと逃げ始めていた。
恐怖心は病気と同じように伝染するので、もう雑魚に戦意はないだろう。
つまり、まだ敵に立ち向かおうとするものだけ倒せばいいのだ。
城門前に目を転じれば、ゾディックに立ち向かうポップとランカム、それに黒狐の姿が見えた。


「む?新たな召喚戦士か?」
狐耳に巫女服の女が何をするのか気になったが、ゾディックの動きはそんな疑問を吹き飛ばすほど奇妙だった。
体に槍を刺したまま、ぐるぐると走り、敵をはね飛ばす。
よく見るとゾディックはリングのような物を集めに回っているようで、積極的に攻撃を仕掛けてはいない。
だが、召喚戦士たちの注意を引きつけるには十分だ。
「くっくっくっ!!どうやら出番のようだな!
ポォチィィィッ!!!」
紅竜が下僕コントローラーを取り出し、内蔵マイクに呼びかけると、
混乱する戦場の上空に、一匹のドラゴンが飛来した。
その頭の上では下僕アンテナがゆらゆら揺れている。
アヨガンに来る前、紅竜はドラゴンを下僕にし、機会が来るまで待機させていたのだ。
ドラゴンとしては下級だが、その攻撃力も防御力も並みの戦士の歯が立つものではない。

慎重に、カイザーフェニックスを放とうとするポップに狙いを付ける。
あれだけの大技を放った後はろくに回避行動もとれまい。
「行けい!ストロングポチ3号!!」
カイザーフェニックスを打つのと同時に、高空からの一撃離脱攻撃コマンドをコントローラーに入力。
ドラゴンは上空から矢のようにポップの頭上に襲いかかった。

216 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 18:28:31 0
>205-206>208>210
>閃光が収まった時、赤屍とリーベルの周囲には無数のニョロニョロが生えており、
>電撃を吸収し防いでいた。
宝物庫の外から流れてくる精霊の気配が歪んでいる事、その意味に
気づいた時には既にムーミン大佐の一手が打たれていた。霧を使った
大規模雷撃……黒衣の男に気を取られていたリーベルは反射的に
防御魔法を唱えようとするが当然間に合わない。

しかし、雷撃は自分と黒衣の男を襲う事は無かった。
これはムーミン大佐の脅しなのだろう……言うことを聞かなければ次は無いと言う―――。
そう考えていると、声をかけられる。

>「リーベル嬢。久しぶりだねえ。別に害をなそうと言うわけではない。
> そろそろエスコートに応じてもらいたいものだ。
> でないと・・・首だけにして持ち帰ることになるが?」
「……お断りします。」
魔王軍の手に落ちればたとえ生きていても記憶を奪われ、
更なる災いを撒き散らす事になる。そうならない為に今まで逃げていたのだから。
そうさせない為に、戦火に身を投じる決意をしたのだから。何より……
共に戦う仲間達を信じているから、それを裏切るなど到底出来るわけが無いのだ。
それに……最悪の事態になっても保険はかけてある。
エルフの思想とはかけ離れた、自然の摂理に反する保険ではあるが……

>「…貴女は知っているんですね?他の召喚された方々の居場所を…。
> …殺さないように気を付けなければなりませんね…。」
この男の性格は知らない。だが口ぶりから推測するに、殺す事に
少なからず快感を感じるタイプらしい。実力で言えば手加減できるだろうが、
欲を抑え込めるか、そんな事分かる訳が無い……分の悪い賭けだ。

>「さて、どうします?ムーミンさんの言う通り私達に着いて来るのか、それとも…。」
>「…少し遊びますか?」
挨拶とばかりに一本の刃物を投げつけてくる。
掠めた首筋からは黒く濁った液体が流れ出してくる。ダークエルフの血だ。
リーベルの表情に変化は無い。内心はくず折れそうなほどの恐怖を感じているのだが。
「遊び、ですか……いつまでそう思っていられますか……?」
言いながら手を振り、無詠唱で長い鏃のような物を撃ち出しつつ走り出す。
戦乙女の投槍。勇気を司る正の精神の精霊、ヴァルキリーの武器である投擲槍を
一時的に具現化して相手に投げつける精霊魔法である。

精神の精霊は、近似した精神を内包する知的生命体が存在する所には
必ず存在し、その勢力は森羅万象ではなく干渉する生命体の精神状態に左右される。
今のリーベルは恐怖と勇気が五分五分なので、投槍の威力は本来のものではない。
そして、雷撃を自らの機転で回避したフェルを援護する余裕もなかった。
一瞬でも隙を見せれば、本当に首を刎ねられる……それだけは避けたいのだ。

217 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/02/09(土) 19:38:51 O
数日後、そこには首だけになったリーベルの姿が
リーベル「誠君ならそこにいますよ、聞いてみたらどうです?」
それにしてもこのリーベル、ノリノリである

218 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 22:06:45 0
>216>208
靄の立ち込める中、ムーミン大佐は深いため息をついていた。
恫喝紛いの勧誘すらとうとうリーベルの心を折ることができなかったのだ。
となればとるべき道は一つしかない。
ヴァルキリーを召喚するリーベルを横目に、赤屍に声をかける。
「Dr.ジャッカル。なるべく頭部は傷つけずに、首の切断面は綺麗にお願いしますよ。
後の処置が・・・おっと、これは釈迦に説法でしたな。」
戦いを決意したリーベルを前に、ムーミン大佐は赤屍の勝利を疑っていなかった。
リーベルの能力は認めるところであるが、それでも戦闘においては赤屍に絶対の信頼を置いているのだ。
本気で頭部だけ持ち帰るつもりで注文をつけるが、途中でやめた。
言葉通り、その道では赤屍のほうが本職なのだから。
そして赤屍の楽しみを奪わぬよう、自分の仕事へと戻る。

219 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 22:06:54 0
>210
視線を移し、フェルの死体と箱の捜索に戻ると、意外とあっさり箱が見つかった。
箱を取ろうと注意が向いた瞬間、横から声をかけられる。
>「どこを見ている。俺はここだぞ!!」
その声と共に強い衝撃がムーミン大佐を襲う。
まったくの不意打ち。
避ける事も防ぐ事もできず、吹き飛ぶなか、ムーミン大佐は混乱していた。

(攻撃された!?どこから?ダメージは?箱の回収・・・反撃・・・無理・・・!)

吹き飛ぶ間の数瞬、纏まらぬ思考。把握できぬ状態。
それでも戦いを重ねたムーミン大佐は反射的に動いた。
床にワンバウンドして壁に叩きつけられるはずだったが、ティンカーベルの瞬間移動能力を使い回避。
だが、吹き飛ぶ勢いごと瞬間移動したので天井に叩き付けられる事になった。
一方、本来叩きつけられる筈だった壁では、大きな爆発が起こっていた。

張り付いた天井から降り、敵を探すと、そこにへ箱を持ったフェルが立っていた。
実際には挑発に乗ったわけではないが、フェルはムーミン大佐の言葉に答えるように全能力を攻撃にまわしていた。
すなわち防御を捨てた一点集中。
結局は前回と変わりないと黒妖犬の電撃攻撃を繰り出したのだ。
あの間合いでは黒焦げの死体になる他ないというのに・・・
なぜ?
その答えは直ぐに見つかった。
その手に持っているニョロニョロ。
驚くべき事に、こちらの準備を見切りとっさにそれを利用したというのだ。
更には、追撃をせずに箱を確保した事も驚嘆に値する。
追撃していれば瞬間移動で回避した置き土産のジャック・オ・ランタンの爆発を喰らっていただろうに。

この一連の攻防において完全に上を行かれた事を悟った。
攻撃力、防御力、どれをとっても前回とそう変っていない。
だが、戦略眼が圧倒的に違っていたのだ。
「驚いたね。男子三日会わざれば括目して見よというが・・・それ以上だ。」
深く呼吸をしながら落ち着いて感想を述べる。
が、実際のところ、不意打ちで受けたダメージは大きかった。
悟られないようにこみ上げてくる血を少しずつ飲み込んでいる。
恐らく肋が折れ、内臓にもダメージが来ているだろう。
密かにドライアードを体内に発動させて回復させていく。

フェルが攻撃する様子を見せずにただ沈黙していることも幸いした。
が、それはそれで不気味なものだ。
「そう言えばまだ名前を聞いていなかったな。着いてこれるのならば着いて来たまえ。ここは狭すぎる。決着を付けようではないか。」
強い磁性を持つステッキに砂鉄を這わせ、鞭のように振るいながら出口へと跳躍。
想像以上の強さを持つフェルに、ここで戦えばリーベルの脳を傷つける恐れがあるからだ。
なにより、回復するまでの時間稼ぎでもある。

後ろに飛びながら謁見の間まで後退。
その間の通路は砂鉄の鞭が縦横に振るわれ、床といわず壁といわず削り取るように舞っていた。
これで倒せるとは思っていない。
ただ時間を稼ぎ、通路を抜けるフェルを見て、その出方を見ようとしているのだ。

220 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/09(土) 22:25:35 O
「な…」
一瞬にして天地が逆さまになる。
空中に投げ出されたのだと気付いたのは、地面に叩きつけられた後だった。

衝撃に一瞬、呼吸が止まった。
−−体は動く…それよりも!
得物を敵に刺したまま、手放してしまった。徒手では打つ手がない。

ゾディックは嵐のように駆け回り、輪を回収していく。
ポップは何とか避けているようだが、呪文を撃つ余裕は無いようだ。
「ポップ殿ッ!」
見た目以上に戦闘経験が豊富とは言え、
彼がこれ以上攻撃を受け続けるのは危険だ。
痛む体を動かし、ポップの元へ駆け出す。

−−回復している?
高所から叩き付けられたとは思えない程、体が自由に動く。
それは、ポップも同じ様である。

“地獄の帝王”の危険性を改めて実感する。
−−このまま、城内に向かわせてはならない。
向こうも戦闘状態のはずだ。城から響いた、雷音の正体も気になる。
自分達を覆う薄い膜に気付いたのは、その時だった。

「“結界”…?」
−−誰が?
疑問は、すぐに解ける事になった。先程の女性が姿を現す。
この女性の“魔法”だとすれば、体力の回復にも合点がいった。
「どなたかは知りませんが、感謝します」
ひとまず、ゾディックが城に向かう心配は消えた。
−−フェル、信じていますよ。
数日だが共に鍛えた仲間の姿を思い浮かべる。

疾走によって巻き起こされた砂煙と突風が晴れた時には、
爆発によって爛れたゾディックの皮膚は、その痕すら残さず再生していた。
−−不死だと言うのかッ!

その思考を否定するように、ポップが再生の原理を見破った。
「成程、そういう事か」
感心した様に呟く。やはり彼は、頭が回る。
だが楽観はできない。時間と連携、タイミングの勝負だ。

その時、頭上を影が横切った。
…その影には見覚えがあった。忘れようもない。
元の世界で最初に遭遇した“魔”…“竜”である。

「ぶっ…!」
ポップを攻撃の直線上から押し出す。
勢いに乗った一撃が、鎧を紙のように破る。
折れた肋骨が肺を傷つけ、地面に倒れ血を吐き散らす。
…指一本動かない。
既にカイザーフェニックスは発動している。訪れる機を逃してはならない。
「構わず……敵を…!」
絞り出すように言葉を紡ぐ。ゾディックは一瞬で再生する。

−−上条殿に顔向けできんな。
出立前、アヨガンは自分らが守るから安心して復興を進めてくれ、と言ったのに。
ふと、竜の羽音に重なる別の羽音を聞いた気がした。

221 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/10(日) 12:22:53 O
>>218「分かりました…。なるべく期待に答えるように致しましょう。」

>>216「クスッ…交渉決裂ですか…。残念です。」
飛んでくる投槍を当たる寸前の所でサイドステップを使い回避する。
「………。」
投槍を避けた後、赤屍はすぐには攻撃せず、先程の兵士達を殺す時のような、つまらない物を見る眼でリーベルを見た。
「これが…貴女の本気ですか…?
貴女からはもっと強い気を感じるのですが…。
何か本気を出せない理由でも…?」
ため息をつき向かって来るリーベルに、より強い殺気を向ける。
「あまり私を失望させないで下さい。
これでは遊びにもなりません…。」
そして手足を狙い次々とメスを投げつける。
「頭部は傷付けないように言われていますからね。
…さて、そろそろ本気を出す気になりましたか?」
どうやら赤屍はリーベルが本気を出すまで待っているようだ。
「10秒待ちましょう。
それでも駄目だというのでしたら貴女を殺して他の方を探すまでです。
…10…9…8…」
赤屍のカウントダウンが始まった。

222 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/10(日) 19:11:28 0
――――上空
グリフォンの飛行は、気流などが関係する場合もあるが、
馬のように路面に影響される事が無く、平均してその速度は馬の約数倍に達する。
中隊長の駆るそのグリフォンに乗り、上条はアヨガンを目指していた。


「まだか!」
『もうすぐだ……見えたぞ、上条殿!』
上条が凝視した先には、アヨガンの城影があった。何故か霧で覆われているが、
それでも、そこが城なのだという事は認識できる。
「あれがアヨガンの城か」
目的地が見えた事で上条たちを乗せたグリフォンが速度を上げる。
そして、近づいていくにつれ見え始める立ち上る多数の煙と、聞こえる数多の怒号、悲鳴。
それは、アヨガンという土地が戦争という狂気に蝕まれている事を
上条に認識させるものだった。
「……っ!中隊長、だいぶ混戦してるみたいだけど、俺はどこに向かえば……中隊長?」
自分だけではどうする事も出来ない大きな流れに歯噛みしながら、
上条は自分がここで守らなければいけないものの在処を中隊長に聞こうとする。
しかし、問いかけられた中隊長は、信じられないものを見る目で呆然としていた。

『バカな……報告ではまだ半日程の距離が開いている筈では……なぜ、何故ゾディックが……!』

中隊長の目線を追い上条が下を向くとそこには、『馬鹿げたほど巨大な』生物がいた。
「!? なんだよ、あれは!」
『……上条殿、あれが“地獄の帝王”ゾディック。数多の城を潰して来た、バケモノだ。
 本来なら、まだ交戦には入っていない筈だったのだが……』

冷静さを保とうとしているが未だ戦慄している中隊長を気にしながらも、
上条はゾディックを見る。異形の巨体、更に驚くべきはその俊敏性。
生物学的に見て、馬鹿げている。存在する筈が無い。
しかし、ソレは現実に存在している。
そしてあれだけの巨体ならば、攻城兵器と言っても差し障りはないだろう。
しかし、そのゾディックは城に近い位置にいるのにも関わらず、何故かその先に進まない。
(策略……いや、進めないのか? けど何で……)
浮かんだ上条の疑問は、グリフォンが更に進んだ事で視認できるようになった
見知った二つの人影が解決した。
「あれは……ポップ!ランカムさん!」
思わず声を上げる上条。
“地獄の帝王”ゾディック、その巨体の前に立ち塞がっていたのは
ポップとランカムの二人だった。
彼らは、その巨体に似合わず驚くほど俊敏に動き回る“地獄の帝王”に
翻弄されながらも、しかし果敢に立ち向かっていた。
そんな彼らを見て、思わずそちらに身を乗り出す上条だったが、
そんな上条を引きとめようと、中隊長が声をかける
『上条殿、今向かうべきはそちらではない。
 彼ら二人ならば何とかゾディックを引きとめられる。貴方が守るべきなのは』
秘宝である、と中隊長が言おうとしたその時、上条等の更に上空を巨大な影が
通り過ぎた。その影は、まるで操られるかのようにポップとランカムを急襲する。

223 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/10(日) 19:11:49 0
『な……この状況で、ドラゴンだと!!?』
ドラゴン――――最強の幻想種である彼らは、上位のものであれば
人間を遥かに越えた知性や卓越した魔術を操り、鋼の様な鱗は、剣は愚か魔法ですら
弾き飛ばし、そのブレスは金属をも蒸発させる、天災といえる程の生物である。
例え下位のドラゴンであろうとも、余程腕の立つ存在でなければ、単なる人間では
立ち向かうには大きすぎる相手だ。それが、敵側にいる。
現状、地獄の帝王と、それにかなり劣るとはいえ、ドラゴンを相手にして
この城は持ちこたえる事が出来るだろうか……否。
例え秘宝を守れても、人間側の主力のアヨガンが陥ちる事は、決定的な不利を意味する。
人が死ぬ。オロッパスのように、皆死んでしまう。
それを悟った中隊長は、悲壮な表情を浮かべる。しかし、

「……ったく、そんな顔すんじゃねぇよ」

頼もしく告げる声が聞こえた。

「あんた達が命懸けで呼んだ奴らが、あんなモンに負けるほど、弱いのか?そんな筈ねぇだろ」

上条の目に宿っている強い意志。
それを示すように告げる声があった。

「大丈夫だ。今度こそ何とかする。だから、頼む」

その声に、悲壮な表情をしていた中隊長は意思を取り戻す。
現状で最優先になったのは、地獄の帝王とドラゴンを止める事。
そして、今彼女に出来るのは、召喚戦士を送り届ける事。

『解った、貴方を信じよう……全く、貴方は――――』
その先を言わなかったのは、少しだけ上条が羨ましかったからなのかもしれない。
グリフォンは疾駆する、目標は飛行するドラゴン、その背中。
基礎的な速度は遥かにドラゴンが上だが、中隊長は技術でソレを補う。
しばしの追走、そして

『今だ、飛び移れ!!』

その声と共に上条は、ドラゴンの動きと並走するグリフォンから、ドラゴンの
背中に――――飛び移った。
「くっ!」
下手な体制で右手が触れれば、そのまま自由落下する羽目になるかも知れない為、
上条は、左手だけで鱗を掴み、全力を込めて堪える。
風は質量として上条を引き剥がしにかかり、慣性は敵対してくる。
鋭い鱗に掴んだ手から血を滲ませ、しかし、それでも上条は耐え切った。
そして、体制を整え

「歯を食いしばれよ爬虫類」

その背中に振り下ろすのは、あらゆる幻想を殺す右拳。

「――――お前の幻想を、ぶち殺す!!」

上位のドラゴンほど純粋に幻想の存在では無い為、
幻想殺し(イマジンブレーカー)を受けてもこのドラゴンが消滅する事は無いだろう。
しかし、その体を構成する異能の要素は消滅する。
この攻撃が成功していれば、それはドラゴンという生物にとって、致命的なものとなる筈だ。

224 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 00:02:49 0
>221
>「クスッ…交渉決裂ですか…。残念です。」
言葉とは裏腹に、Dr.ジャッカルと呼ばれた男の表情は
残念がるどころかむしろ嬉しそうだった。精神の揺らぎを見ても
確かに歓喜を司る精霊が活発化している。戦い、殺すことに
喜びを感じる性格と確信を得た以上、なおさら他の場所の
仲間達の場所へ行かせる訳にはいかない。

>「これが…貴女の本気ですか…?
> 貴女からはもっと強い気を感じるのですが…。
> 何か本気を出せない理由でも…?」
>「あまり私を失望させないで下さい。
> これでは遊びにもなりません…。」
>「頭部は傷付けないように言われていますからね。
> …さて、そろそろ本気を出す気になりましたか?」
>「10秒待ちましょう。
> それでも駄目だというのでしたら貴女を殺して他の方を探すまでです。
> …10…9…8…」
ジャッカルの洞察は正しかった。リーベルは長きに渡る修練により
語り掛ける事すら危険な負の精神の精霊との交感を可能としていた。
だがそれは、それらの感情の昂ぶりに一般人以上に精霊が反応する結果に
繋がり、感情を制御できなければ取り込まれかねないと言うマイナス面を呼び込んだのだ。
いたずらに力を解放し、制御を疎かにすれば周りに被害を及ぼす……
ダークエルフでありながら平和を尊び、戦いを嫌うリーベルにとって
それは何が何でも避けねばならない事柄の一つなのだ。

だが、目の前の敵相手にはその考えでは通用しない。
メスを紙一重で交わしながら距離を取ると、10秒のカウントダウンが始まった。
「せっかちな方ね……過程を楽しめない様では、遊びとは言えないでしょう……?」
そう強がるが、内心ではジャッカルを倒す算段を考えていた。
(「10秒……高位攻撃魔法では間に合わない。
  ……精霊や死霊では時間稼ぎにもならない……ならば……!」)
無詠唱でありったけの付与魔術を、剣に、体に、腕に、脚に、付与していく。
練りに練った魔力によって発現する付与魔術によって、リーベルの周囲は
七色の光に包まれた。そして、それを完成させる為に語りかける。
(「ただ一度……力を貸して、ベヒモス……!」)

人工建造物である宝物庫だが、地下である事に変わりは無い。
周りには大地の精霊が存在する……その大地を通じて、大地の精霊王である
巨獣ベヒモスと交感し顕現させる。地震や地割れ、噴火などの原因でもある
巨獣の力を借りて、突進の威力を最大まで引き上げるつもりなのだ。
ジャッカルからは背後にうっすらと巨大な獣が見えるであろう。
腰の高さに剣を構え、限界まで力を蓄え……ジャッカルが0を告げた瞬間、
溜めに溜めた力を一気に解放してジャッカル目掛け一直線に突進し剣を突き出す。
その速さは、達人ですら見切れぬほどである。たとえ見切れても、その感覚に
追従できるだけの身体能力が無ければ交わせない、普通ならば正に一撃必殺の
攻撃である。だが相手は凶悪な力を持つ異世界の戦士、当たる保証はない。
しかし今のリーベルには恐怖は微塵も無かった。勇気一色となったその精神に
呼応するかのように戦乙女が援護してくれた。ジャッカルの動きを止めるべく、
ジャッカルの周囲に投槍を配置したのだった。

225 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 00:42:00 0
>>218>>219
深く…深く深呼吸し酸素を肺へと送り込む…
俺の中の復讐の炎と…奴を畏怖する心を抑えるために。
そう…俺は…あいつが怖い……今…対峙して分かった。
さっき俺が考えた結果覇気を散布したのはあいつとの間に壁を作りたかった。
そして眼を閉じたのはあいつの姿を見たくなかった……
「そう言えばまだ名前を聞いていなかったな。着いてこれるのならば着いて来たまえ。ここは狭すぎる。決着を付けようではないか。」
「……分かった。決着の前に名前を言おう。俺の名前はフェルだ。」
決着をつけるか……正直に言おう…俺はまだムーミン大佐には勝てない。
所詮数日修行しただけなのだ。確かにランカムの教えは巧かったが。
やはり経験の差は凄まじく大きい。ランカムの教えを理解すればするほどに分かる。

ムーミン大佐は後ろに飛び謁見の間まで退がる。
もちろん退がったのにも意味がある。謁見の間までの通路には砂鉄の鞭が振るわれ
あちこちを削り取っている…向かったとたんにおそらく俺の皮は剥ぎ取られ
酷い傷になるだろう……体力も消耗するはずだ。
このまま進まずに覇気の一部を飛ばし牽制するというのも手だが…おそらくはかすりもしない。
あの瞬間移動する能力……最初の戦いの時は覇気の勢いに任せて加速できた。
さっきは完全な不意打ちだった……しかし次は何をしようとかわされる。
さっきの移動の速さを観てすでに悟った……俺では捉えられない…どうすればいい。
考えれば考えるほどにムーミン大佐の可能な動きが膨らむ……まるで思考の牢獄のようだ…。

「クッ………なまじ戦術を学んだばかりに奴が遠く見える…」
考えても考えても浮かぶのは避けられ反撃されるヴィジョンのみ…
「…やはり俺は勝てないのか?誇りに傷をつけられ生かされた挙句…
 俺が殺してきた奴らのように…弱者へとなり…無様に死んでいくのか…
 弱肉強食…世界の真理の中で俺は強者ではなく弱者なのか?」
俺は構えをといた……どんどん戦意を失っていく……おかしい。
俺は勝機などなくても決して闘うことを放棄するような腑抜けでは……だが現に俺の心は萎縮し始めている。
そして……完全に覇気が消えた……散布していた覇気も……全部消えてしまった。
「な、なぜだ……おかしい……覇気が……でない。」
そして目の前が真っ暗になった……敗北という二文字が目の前に映る……

「………………………」
まるで生気を抜かれた死人のようにその場に立ちつくす……
すでに闘わずして俺は…俺の龍覇轟撃拳は敗北を認めていた……

226 名前:ゾディック ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 03:25:39 0
ゾディックは防御能力は高くないようで、矢やマスケット銃などでもダメージを与えることができるようだ。
射られる度にリングをばら撒き、ゾディックはそれを拾おうと奔走していた。
だが、兵士達もポップの言葉をよく了解したようだった。
ある者は散らばったリングをある者は狙撃し、ある者は槍やメイスなどでリングを破壊している。
ゾディックがリングに向かって走っている以上、それは大変危険を伴う行為だった。
だがゾディックが死を恐れないのとは別の意味で、アヨガンの兵士達も死を恐れてはいなかった。
異世界の戦士達の奮闘を見て、士気が上がったのだろう。

>213
ゾディックを倒す方法は二つに一つ!
一つは、ばら撒いたリングを逐一破壊し、再生させないこと!
そしてもう一つは……再生の間も無い猛攻で一気に仕留めること!
ゾディックはイオであれだけのダメージを負ったのだ。
ポップの必殺のカイザーフェニックスなら、後者の条件を十分満たすことができるはずだった。

>220
しかし、ゾディックは身体を丸めて転がってきた。スピンアタックだ。
これにより、踏み潰せる範囲が足の面積の分だけだったのが、全身を使って兵士達を押し潰せるようになった。
しかも、スピードも普通に走ったときよりも上昇している。
それだけではなく、高速回転で防御面も向上しており、今までは効いていた兵士達の矢や弾を弾き返している。
しかも、そのまま勢いをつけて重症を負ったランカムに迫っている。

だがそこで、ポップの放った火の鳥がゾディックにぶつかった。
ゾディックは高速で縦回転しながら、ポップが放った不死鳥とぶつかり合っている。
火の鳥がゾディックを焦がしながら押し、ゾディックも負けじと火の鳥を押し返している。
力と力が完全に拮抗していた。あの大魔王の懐剣と!
兵士達は息を飲んでいる。
これを通せば、確実にゾディックは進行方向にいるランカムを押し潰すだろう。
ゾディックはその勢いでスピンアタックで城壁を破壊し、そのまま王宮をも蹂躙することは間違いなかった。

227 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 15:45:05 0
>214
>「………………遅かったじゃないか」

東條はパラシエルの想像以上に冷静だった。パラシエルがこの部屋に居たことを察していたらしい。
そこから見るにやはりこいつもあっさり勝たせてくれないとパラシエルは察した。
しかしやる事は変わらない、パラシエルは石について語るように要求する。
すると東條は口を開いた。

>「なぁ…もしも空想だと思ってたブツ…例えば…なんて例えるかなぁ〜破壊勇者ガァガィガーって知ってるか?」

「ガ・・・?ガォガォガー?」

いきなり出てきた意味不明なワードにパラシエルは困惑した。
そんな困惑を尻目に東條は言葉を続けていく。

>「そいつを動かすにはGロックっていう特殊なエネルギー媒体が必要な訳だが…
> …近くで見たときは鳥肌がたったぜ。まさか本物があるなんてな…そんとき電流が走ったね
> もしかしたら、魔王城にもあるんじゃねぇかって…ガァガィガーがな…そしたら…ッ!!!」

破壊勇者ガァガィガーとはなんなのか少々気になりながら、
以外にも素直にパラシエルが疑い半分にその話を聞いてたそのときだ。
突如自分の頭上から閃光が見えた。パラシエルはそれに衝撃がくるほんのコンマ零零秒前に気づく。
しかし行動を起こそうと考える前に衝撃を受けた。〈バチィ!!〉耳の鼓膜を破くような衝撃音が響く。
その衝撃に軽やかに吹っ飛ぶパラシエル。その時一瞬パラシエルの目の前に少女が映った。


228 名前:パラシエル ◆/Q.vnlAVN. [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 15:49:43 0
>206
パラシエルは地面にたたきつけられた。
パラシエルはすぐには立ち上がれない状況だった。筋肉が痙攣して立ち上がれないのだ。
先ほどまでかかっていた霧が一つの顔へ化けていく。その顔の正体はムーミン大佐であった。

>「少年よ!ずいぶんと私を安く見てくれたものだ。
>今の一撃で君は死んではいまい。だが、城内に篭る人間達はどうかな?2/3は生きているだろうが、動けもしまい。
>ぜひとも先程の話の続きをしたいのでね、戻ってきてくれたまえよ。」

ムーミン大佐の表情は見れなかった。
しかし空気でわかる、きっと民間を虐殺する独裁者のごとく冷酷な表情をしていたのだろう。
>「……ッ…つくづく恐ろしい奴だなアンタって人はよぉ」
東條がムーミン大佐に文句を垂れる。しかしこのときパラシエルにはほぼ何も聞こえていなかった。
パラシエルは震える手で自らの身を持ち上げる。痙攣はとまらない。
東條は魔銃を向けた。

>「…知ってるか?陸上に上がったカバってのはライオンも逃げたすぐらいヤバイんだぜ?
> まぁ…んなことはどうでもいいんだよ…ソイツを渡してもらおうか?」

>邪悪な笑みを浮かべ、ルミナは詠唱を始める。
その次の瞬間パラシエルの下を向いた顔から一、二滴光るものが落ちた。
それはなんと涙だった。

「酷いわ・・・本当に酷いわ・・・。貴方達は。」

しゃっくり交じりに痙攣が若干治まった手で目元を押さえるパラシエル。その胸元を見てみると今まで無かった膨らみが存在していた。
「酷い・・・本当に酷い事をしたわ・・・・また酷いことしようとしていらっしゃるし・・・
私・・・・お母様の仰ったこと通りにしなきゃ駄目だわ・・・・やっぱりお母様の言ったとおりにしなきゃ・・」
そう弱弱しく細い声で言ったとたんパラシエルの胸元からいきなり魔方陣が出てきた。
すると今度はその魔方陣から白い光が〈ビカッ!!〉と光り輝き部屋全体のにパラシエルを中心として強風を巻き起こした。
王家の墓にある棺おけが宙に舞う。


229 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 19:46:05 O
>>224「…!?……素晴らしい…。」
リーベルの剣が赤屍を貫く瞬間、赤屍は左手でブラッディ・シールドを張った。
避けようとしても周囲に配置された投槍により、ほとんど動けなかったからだ。
しかし赤屍のブラッディ・シールドはいとも簡単に吹き飛ばされてしまい、結果ブラッディ・シールドごと左手を吹き飛ばされてしまう。
「クスッ…貴女も意地の悪い人だ。
こんな力を持っていながら出し惜しみとは…。」
左手が無いにも関わらず嬉しそうに笑う赤屍の右手にはいつの間にか血で作られた赤い剣が握られていた。
「…さて、私も反撃といきましょうか…。」
赤屍は周囲に配置された全ての投槍を剣で破壊すると、一瞬でリーベルと間合いを取った。
「…どうやら貴女は私が思っている以上の力をお持ちのようだ。
嬉しいですよ…貴女程の力を持った人と闘うのは久しぶりです…。
それでは…行きますよ。
ブラッディ・サジタリア。」
地面に剣を突き刺し、超高速で4本のメスをリーベルの手足めがけ、投げつける。
どうやら四肢の自由を奪う気のようだ。

230 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 21:34:46 0
>213>220>222>223>226
結界にドラゴンが侵入してきた。結界主はその結界内部の事象を把握できる為なのだが
フォローに入る前に騎士さんがそれをかばってしまう。

結界のその向こう、ドラゴンの更に上を飛ぶ何かを見た黒狐はすかさずポップの後ろへ。
両手をポップの背中にかざし親指同士と小指同士を組み合わせて八卦の陣を手で作る。
「その火の鳥の術式を崩さないようにしてくださいね、いきますよ!《勝機掌握》、《勝利の風》よ・・・!」

巫女服から飛び出していた尾が淡い輝きを放つ。
黒狐の胸元の黒いペンダントが眩い極光を放つ。
「この一撃で決めてしまいましょう。ツクヨミの鏡よ!戦神の力を与えたまえ・・・《ツクヨミ:トール》!!!!!」

ポップの背中にかざした両手から極光が流れ込み、それは火の鳥に伝わってゆく。
光は火の鳥をさらに強大にし、《神》の力の欠片が術を更なる高みへ昇華させる。

上条の乱入によって結界は破壊され、結界の中にとどまっていた極光がその瞬間城外全てを包んだ。

231 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/11(月) 22:05:55 0
>225
どのように砂鉄の鞭が吹き荒れる通路を突き抜け、どのように攻撃するのか。
かすむ目を見開きフェルに注視していた。
が・・・通路の向こうの宝物庫に見えるフェルの姿が、遠近法以上に小さくなるのを感じた。
その異変の正体に気づくのにたっぷり十秒かかった。
そしてその正体に気づくと、ムーミン大佐は大声で笑い始めた。
ステッキを収め、笑いながら通路を宝物庫へと戻っていく。
「ふ・・・ふははははは!そうか、そうだったか。」
笑うたびに口にたまった血が飛び散るのもかまわず宝物庫に戻り、ただ立ち尽くすフェルの前に対峙する。

一刀一足の間合い。
お互いの制空権が交わり、互いにとって必殺の間合いであるにもかかわらず何もしなかった。
「涅槃域に辿り着いたかと思ったが、到達できず虚界へ落ちたか!
フェル君。今の君は強いが故に30手先の自分の敗北を呼んでしまった悲しい将棋指しだ。」
涅槃域・・・それは俗に言う悟りの境地、無の境地といわれる。
魂を不生不滅の地に跳躍させながらも戦いを選ぶその領域に・・・

だがその領域に到達できるものは殆どおらず、虚界に捕らわれる。
そう、今のフェルのように。
「虚(うろ)となった者はいたぶるにも殺すにも値しない。
箱はもらっていくぞ。」

>224>229
凄まじい突きを繰り出すリーベルと、それを嬉しそうに受ける赤屍を横目に、にやりと笑う。
「邪魔はすまいよ。私にはまだ仕事があるのでね。」
本来、目的があり戦いとはその手段でしかない。
ムーミン大佐と赤屍はその意味では決定的に違っていた。
だが、今この場において、ほんの少しだけ赤屍を理解することができていた。
あっけない戦いの幕切れに、落胆する自分がいることに気づいたのだから。
目的さえ果たせば問題ないはずなのに。

そんな自分に笑みをこぼし、視線はどこにいるかわからぬパラシエルを探し始めている。

232 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 00:46:30 0
「涅槃域に辿り着いたかと思ったが、到達できず虚界へ落ちたか!
フェル君。今の君は強いが故に30手先の自分の敗北を呼んでしまった悲しい将棋指しだ。」
涅槃…虚界……確か我が師と兄が言っていたことがあった……
戦い…闘い続けた者のみがたどり着く境地…涅槃……そこには一切の感情はない…
ただ相手と自らの鼓動が織成すだけの空間……そこにたどり着く者こそが真の修羅だと…
そして…そして辿り着けなかったものが堕ちる世界である虚界……
自らの限界を感じてしまったものが住まう場所…そこに俺は堕ちたというのか?

「虚(うろ)となった者はいたぶるにも殺すにも値しない。
箱はもらっていくぞ。」
「……………………」
叫ぼうと思った。叫び今一度魂に炎を灯し闘おうと…ここまで虚仮にされて黙っていられるか。
たとえ勝機などなくとも闘って死ぬのが拳闘士だと。だが動けない…俺の体はまるで石のように戦うことを拒んでいる。
どう動こうが、何をしようが…何千何万と死のイメージしか湧かない……
屍のようにただ黙る俺の精神はすでに打ち砕かれている。

そうだ。立ち向かったところでなんになる…と諦めが頭に浮かぶ。
そう、俺は怖い…死ぬのが……今まで俺が踏み潰してきた奴のように死ぬのは嫌だ……
そうさ、別に構わん。どうせ一度打ち砕かれた誇りなのだ…無様に生きていく方がお似合いだ…
そして…箱を半ば差し出すような形で取られる……あのガキとの会話を思い出すが…
やはりそれでも俺の魂が奮立つことはなかった…・

「フフフ、笑えランカム。俺はこんなにも無様だ」


233 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 17:49:07 O
>>220
「ちぃぃっ!しくじったかぁ!」
必殺のはずのドラゴンの攻撃は、ポップをかばったランカムに防がれた。
さすがは正騎士様と言いたい所だが、かなりのダメージを受けたか、ランカムは起きあがってこない。
見たところ魔法主体の敵召喚戦士たちは貴重な盾を失ったのだ。
ポップが放ったカイザーフェニックスはゾディックの回転攻撃をなんとか押しとどめているが、
このままストロングポチ3号で攻撃を続ければ、それも長くは持たないだろう。
「ふははははは!おおう!思ったより呆気なく勝負がついたわ!!」
勝利を確信して笑う紅竜だったが、ポチに併走するように飛ぶグリフォンを見て笑いを引っ込めた。

>>223
グリフォンに騎乗して戦う兵士がいることは紅竜も知っている。
1対1でドラゴンに勝てる実力は無いことも。
だが、そのグリフォンの後ろに乗っている男に見覚えがあったのだ。
この世界では異質の。だが紅竜には見慣れた服を着た男。【幻想殺し】上条当麻。

幻想殺しを自分の目で見る絶好の機会に、身の危険も封魔の宝玉の事も忘れて上条の方に走る。
上条がドラゴンの背に乗り移ったのが見えたとき、紅竜はポチの消滅を確信した。
しばらくは何も起きなかった。
生物には効果が無いのか、と思い始めたとき、ストロングポチ3号の体が大きく揺れた。
そのまま糸の切れた操り人形のように落ちて地面に激突し、苦痛の叫びがあがる。
その背には、あったはずの羽がない。
鱗も以前のように鋭くとがっていないし、体も縮んでしまったように見えた。
以前ドラゴンだったポチは、大トカゲに変わってしまったのだ。
急いでメモ帳を取り出し、『ポチ完全には消えず。特殊能力のみ消失?』と走り書きする。
詳しくは後でポチを精密検査して調べる必要があるだろう。
今は、ゾディックが兵士や他の召喚戦士の攻撃の的になっている間に、すべきことがある。
紅竜は笑みを浮かべながら上条に近づいて話しかけた。
「おおう。はじめましてだな、上条当麻。
私の名は劉紅竜。いずれ全世界の支配者になる男だ。
早速だが、お前の持っているその【幻想殺し】の力で、私の世界征服の為に協力してもらおうか。
受けるならよし。断るなら‥‥くっくっく」

234 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 21:08:29 0
>229
>「クスッ…貴女も意地の悪い人だ。
> こんな力を持っていながら出し惜しみとは…。」
「オードブルがあるから……メインディッシュが映える。
 何事にも、順序と言うものは必要でしょう……?」
言葉と裏腹に、リーベルの声は弱弱しかった。
それもそのはず、今のがほぼ全力で持てる魔力の9割を注ぎ込んだのだから。
二の太刀は初めから無い物と考えていた以上、あの一撃で決めるつもりだった。
だがジャッカルは予想通りと言うか予想以上と言うか、腕一本で
済ませてしまった。しかも戦意は萎えるどころか益々滾っている。

>「…どうやら貴女は私が思っている以上の力をお持ちのようだ。
> 嬉しいですよ…貴女程の力を持った人と闘うのは久しぶりです…。
> それでは…行きますよ。
> ブラッディ・サジタリア。」
買い被り過ぎだ、と心で毒づく。倒せなかったにも拘らず、
リーベルの戦意もまた萎えていなかった。反射的に体をよじって両腕を守る。
正確無比、ゆえに交わすのは容易い。本来の調子であったならば。
腕を狙いから外すのが精一杯、両足の神経を正確に打ち抜かれて
力が完全に抜けアヒル座りの様な体勢になってしまった。
腰の道具袋に入れてある薬を飲むだけの時間は与えてはくれない、
残った魔力で浮遊の術をかけて足が動かせないハンデを打ち消すが、
事実上打つ手なしのチェックメイトに追い込まれていた。

>231-232
ふと視線を移すと、フェルとムーミン大佐との戦いは終わったようだ。
大佐の言葉とフェルの自嘲の呟きから察するに、フェルは負けた。
それも……大佐にではない、フェルは自分自身の、死への恐怖に負けたのだ。
その姿が、先日フェルに見られてしまった自分自身の姿と重なって目に焼き付く。
……リーベルの中で何かが弾けた。尽きかけた魔力が、活力が内から
湧き上がってくるのを感じる。そうだ、負けるわけにはいかない、
ここで負ける事は自分の全てを、そして信じてくれた仲間を裏切る事だと。
「……Dr.ジャッカル、でしたか。
 私はあなたに勝てるとは思っていません。ですが、勝てる勝てないじゃない……
 私は私に負けるわけにはいかない、死ぬ事を、戦いを恐れた弱い私には、決して。
 だから、あなたを倒します。次が本当の全力です。」
100%の比率だった勇気が200%、300%と膨れ上がり、それに合わせて
魔力が目に見えるほどの高濃度でリーベルに集っていく。先ほどよりも強い付与魔術で
自らを強化しジャッカルに剣戟を打ち込んでいく。その殺陣の周囲ではそれ自身が
力を持った特殊な文字が自動で術式を組み立てていく。その規模と魔力の強さから
相当高度で強力な術だろうと推測された。だがその術の内容をリーベルは知らない。
無意識が術式を紡いでいる、そしてそれはリーベルの知らない文字配列なのだ。

235 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/12(火) 22:06:11 0
フェルから箱を奪った後、ムーミン大佐は赤屍とリーベルの戦いを見ずに宝物庫を後にしていた。
既に第一の目的は果たし、第二の目的は赤屍が成し遂げてくれるだろうから。
第三の目的、パラシエルを討つ為に。

「くくくく・・・もしあのまま戦っていれば・・・負けはしなくとも勝てたかどうか・・・」
溢れ出る血を吐きながら階段を上がる。
弱音でもなく強がりでもなく、客観的な事実。
不意を突かれまったくのノーガードのところに叩き込まれたのだ。
フェルの渾身の一撃はそれ程までにムーミン大佐の身体にダメージを与えていた。

回復用のドライアードを発動させてはいるが、いかんせん地下では効果が薄い。
日の光を浴びてこそその真価を発揮するのだから。

地上に戻り、意識を集中するがパラシエルを感じることはできなかった。
地下王墓で大きな力が振るわれているにも関わらず、だ。
ケルピーの海霧による索敵領域は、雷撃攻撃によって殆ど役に立たなくなっていたのだ。
更に、城の直ぐ側で地獄の帝王ゾディックをはじめとする強大な力が渦巻いているが原因だった。
昼に星が見えないと同様に、力の波動がホワイトアウトしていたのだ。

そこでムーミン大佐の取る次善の策は・・・

################################

城内各所にて靄で形作られたムーミン大佐が声を上げる。
地下王墓にて・・・
パラシエルの巻き起こす強風に形を崩しながらもムーミン大佐の映像が動き始める。
「少年よ!お前の仲間は倒したぞ。箱は確かに頂いた!
だが、この箱がどうしても開かなくてね。もっとも本物かどうかも怪しいものだ。
そこで、だ、もう一度話し合おうじゃないか。でなければ、宝玉は無用の長物となるぞ?
中央尖塔閲兵の間に来たまえ!」
靄はムーミン大佐に首を掴まれるアヨガン王も映し出されていた。
呼びかけに応じなければ、アヨガン王を殺す、ということだ。

封魔の宝玉は確かに人類の最後の切り札である。
だが所詮は道具でしかない。
所有者、そして所有勢力であるアヨガンが陥落すればもはや抵抗できる勢力はなくなってしまうだろう。
封魔の宝玉とアヨガンはセットで人類最後の砦なのだから。

靄で作られたムーミン大佐は繰り返し、パラシエルを呼び出すのだった。

#################################

中央尖塔閲兵の間、ムーミン大佐は玉座に深々と身を沈めていた。
王を始め、多くの重臣兵士が生き残っていたが、電撃により麻痺しており、それを捉えることは造作もないことだった。
眼前の城門前にはゾディックの巨体が見える。
ここで指揮を執っていたであろうアヨガン王は既に躯となって足元に転がっている。
回復を急ぐためじっと身を沈め、パラシエルの到着を待っていた。

236 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 01:55:31 0
>>215
ゾディックに向けカイザーフェニックスを放ったポップの頭上から、ドラゴンが急襲してきた。
「んなっ!?」
ちょうど技を放出した直後、このタイミングでは防御も回避も不能だ。完全に不意を突かれた。
――殺られる?
しかし、ポップは尻餅をつくだけで済んだ。

>>220
「ランカムーッ!!」
飛び出してきたランカムが、ポップは突き飛ばして代わりに攻撃を受けてしまったのだ。
地面に倒れ臥し、血を吐くランカム。
>「構わず……敵を…!」
「ば、ばっきゃろう!見殺しにできっかよ!」
ポップはフェニックスを右手で繰りながらも、左手からランカムに回復呪文(ベホマ)をかける。
師匠マトリフが以前に見せた攻防呪文同時発動の技術だ。
もちろん、簡単な技術でもなければ燃費の悪い。今ドラゴンに追撃を受ければアウトだ。
だが、ドラゴンの追撃はなかった。

>>223
「上条!」
グリフォンに乗って現れた上条が、ドラゴンをその右手で見事に倒し遂せて見せた。
「へへっ、遅かったじゃねえかこの野郎!」
信頼する仲間の登場に色めき立つポップ。そしてゾディックに向き直る。
「さて、じゃあこっちもさっさとケリつけねえとな!」
ゾディックはこちらに向け、回転攻撃を仕掛けてきていた。それを迎え撃つカイザーフェニックス。
両者が今、ぶつかり合う!
「おおおおおおーっ!」
目一杯のカイザーフェニックスだったが、『地獄の帝王』ゾディックもさるものだっだ。
最初こそ拮抗していたが、徐々にこちらが押され始める。
片手間に使っているベホマで、ポップの力が徐々に落ち始めているのだ。
「く、くそっ…!」
このままでは自分もランカムも押し潰され、背後に守ったアヨガンの城はメチャクチャに蹂躙されてしまう。
だがもはや限界が近い。
「うあああ……も、もう駄目だ……!」
カイザーフェニックスが破られそうになった、その時だった。

>>230
>「その火の鳥の術式を崩さないようにしてくださいね、いきますよ!《勝機掌握》、《勝利の風》よ・・・!」
「え?」
さっきの少女が、いつの間にかポップの背後に回っていた。
背中越しに溢れ出す光が見える。
>「この一撃で決めてしまいましょう。ツクヨミの鏡よ!戦神の力を与えたまえ・・・《ツクヨミ:トール》!!!!!」
「うおっ!き、きたあ!」
カイザーフェニックスが一気に強化され、圧されていたポップの負担が激減する。
「サンキュー、ここで決めなきゃ男じゃねえな!いっけえぇっ!!」
最後の力を注ぎ込まれたカイザーフェニックスが、広げた翼で抱き抱えるようにゾディックを包み込む。

237 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 12:35:38 O
>>234「さて、チェックメイトですね……。
残念ですが、ムーミンさんとの約束ですので…。
…おや、どうしました?」
全てを出し切ったリーベルの首に剣を向ける。
が、リーベルの視線は赤屍ではなくフェルに向けられていた。
>「(前略)だから、あなたを倒します。次が本当の全力です。」
「!?……いやはや、貴女には本当に驚かされますよ。
あの状況から復帰してくるとは想定外でした。」
赤屍はリーベルの剣をさばきながら殺陣の中で自動に組み立てられていく特殊な文字を眺めている。
特殊な文字から発せられる魔力に惹かれたようだ。
「さあ、見せて下さい…貴女の本当の力を…!」
赤屍の力なら術が発動する前にこの場から離脱する事は可能だ。
だが、彼は見たかったのだ。
リーベルがどれほどの力を持っているのか、そしてその力は自分の力を凌駕する事ができるのか…。

238 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 23:25:50 0
「ぐあっっ!!」
高高度からの落下の衝撃は、ドラゴンの体の上に落ちた事によって
随分と緩和はされたが、それでも、上条の全身に叩きつけるような衝撃を与えた。
>>236
>「へへっ、遅かったじゃねえかこの野郎!」
「っ……悪い。待たせちまったみたいだな」
痛む体をゆっくりと起き上がらせ、上条はどことなく楽しげに返事を返す。
ポップは、ゾディックに対し強力そうな魔術を使っている所だった。
その魔術は、ゾディックの巨体を確実に押しとどめていた。

そして、直後に自分に近づいてくる何者かの気配を感じた。
>>233
上条が振り返った先にいたのは、男だった。
年の頃は20代半ばだろうか。
RPGに出てくる魔法使いのようなローブを羽織っている。
その男は、上条に向かって言った。

>「おおう。はじめましてだな、上条当麻。
>私の名は劉紅竜。いずれ全世界の支配者になる男だ。
>早速だが、お前の持っているその【幻想殺し】の力で、私の世界征服の為に協力してもらおうか。
>受けるならよし。断るなら‥‥くっくっく」

「アンタ、何言ってやが……」
『劉紅竜』と名乗ったその男の余りに唐突で現実離れした台詞に
眉を顰めた上条だったが、そこまで言って台詞を止める。
(……待て、なんでこいつは俺の事を知っている)
上条が台詞を止めたのは、その違和感があったからだった。
考えてみれば、上条は今までオロッパスにいたのだ。
その上条の顔を知っている人間がいるとすればポップやランカムといった召喚戦士、
あるいはオロッパスの人々だけのはずだ。
それ以外に上条の事を気付ける人間がいるとすれば、
それは――――魔物側の召喚戦士。

上条は、反射的にバックステップで距離を取った。
そして、そのまま警戒の姿勢を取り、劉紅竜の方を睨み、言う。

「ふざけんなボケ。テメェが何者かは知らなねぇけどな、
 いきなり世界征服だの物騒な事言って脅迫してくる奴に、協力なんて出来るわけねーだろうが。
 学校でコミュニケーション能力でも勉強し直してきやがれ」

悪態を付いてきながらも、横目で城の門と自分との距離を確認する。
本来ならこのまま秘宝を守るのを手伝いに行くべきなのだが、
この劉紅竜という男を、召喚戦士達が戦っているこの場所に残したまま動く事はできなかった。

239 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/13(水) 23:57:38 O
「駄目…か」
出血が止まらない。それでも命を繋ぎ、気を失わずにいるのは、
あの女性の回復魔法が持続しているおかげだ。
しかしそれも、猛然と迫るゾディックの前にかき消されようとしている。

死を覚悟した、その時だった。
遠くから聞き覚えのある声が聞こえ、ふと空を仰ぐ。
そして今度は、はっきりと見た。
グリフォンから、ドラゴンに飛び移る上条の姿を。
「上条殿ッ!」
自分でも信じられない程の声が出た。
やがて魔を抜き去られた竜は墜落し、蜥蜴へと変じていった。

痛みが引き、急激に視界が明瞭になっていく。
ポップの治癒魔法が、全身に行き渡ったのだ。
「これは…?」
その事に気付き、ポップの方に顔を向ける。
攻撃魔法を操りながらの治癒魔法は負荷が大きかったのか、
ポップの顔には疲労の色が濃く浮かんでいる。

上条の“幻想殺し”は、結界の消失を伴う。
今や、ゾディックの侵攻を防ぐ結界は無いのだ。
しかしポップの魔法に奮い立った兵士達も、決死の抵抗を見せていた。

ならば、やるべき事は決まっている。
自由になった脚が、自然に駆けだしていた。
「奴の抵抗を抑えます…抑えてみせましょうッ」
救われた命を、全力で返すまでの話だ。
その決意を、ポップへの感謝の言葉にかえた。

兵士達がリングを破壊する毎に、ゾディックの抵抗は弱くなる。
だが回復魔法に力を割いたポップの不死鳥は、少しずつ押されかけている。
−−今、私にできる事…。
降りかかる火の粉の中、ゾディックの懐に入る。

「…あそこかッ」
高速回転するゾディックの腹で、それはキラリと輝いた。
接触のタイミングは、一瞬の内の一瞬。
手が焼ける事にも構わず、余波で熱したそれを、確かに掴む。

「だぁぁあッ!」
全体重をかけ、ゾディックの最後の抵抗を削り取らんと、
下腹に刺さったままの己の得物を、傷口に押し込む。
腕が、脚が、音をたてて軋む。
それもまた一瞬の事。
高速回転の遠心力に弾き飛ばされ、城門に背を打ちつける。

黒狐の力を得たカイザーフェニックスが、膨大な光量を放つ。
光に染まる世界の中、遂に業火の不死鳥がゾディックの全身を包み込んだ。
「…やったのかッ!?」

そこで、ハッとして上条の姿を探す。
彼は異能の使い手だが、肉体的には常人である。
−−あの男はッ!
その眼が、上条の側にいる男の姿を捉えた。
オロッパスでフェルと戦っていた、天才を自称する男。
「…紅竜ッ!」

240 名前:ゾディック ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 02:02:32 0
>230
シャードの加護の後押しが加わった攻撃は、基本的にシャードの力を用いなければ防ぐことはできない。
並みの防御魔法はおろか、炎や冷気に対する耐性などの生来の性質すらも役に立たないのだ。
故に、スピンアタックでカイザーフェニックスと競り合っているこの状態も、
相手にシャードの加護が加われば、当然、ポップが有利に傾く。
元からゾディックに炎の耐性は無いので、有効な攻撃になる事は間違いなかった。
火の鳥は大きく翼を広げ、吼えた。

>236
加護その他諸々によって威力が増強され、攻防一体のスピンアタックの防御を破られたゾディックは、そのまま炎に包まれた。
炎に巻かれる度、ゾディックは夥しい量のリングをばら撒いた。
程なくして回転が止まり、リングをばら撒かなくなり、ゾディックは丸まった姿勢を解いて立ち上がった。
「……」
炎に包まれながらも、彼はそのまま立ち尽くし、ポップを睨みつけている。

>239
だがここでも、ゾディックの反応の遅さは仇となった。
ランカムの得物はそのままゾディックの急所をとらえた。
暫くして、ゾディックは膝をついた。そのまま動かなくなった。
全身が焦げて煙を上げている。傷口から血に似た変な液体が流れ出ている。
ゾディックは間違いなく絶命していた。

241 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 18:21:47 O
>>238
最初、上条はこちらの意図を掴みかねているようだったが、
すぐに紅竜の正体に気づいたのか、距離を取って警戒感を露わにした。
>「ふざけんなボケ。テメェが何者かは知らなねぇけどな、
 いきなり世界征服だの物騒な事言って脅迫してくる奴に、協力なんて出来るわけねーだろうが。
 学校でコミュニケーション能力でも勉強し直してきやがれ」
法を守る陣営に属する者としては当然の反応が返ってくる。
普段の紅竜なら、『ふざけんなボケ』呼ばわりされた時点で、怒りを爆発させただろう。
だが今は幻想殺しへの知的好奇心の方が勝っていた。

「おおう、この紅竜仮にも元教師。コミュニケーション能力など有り余っておるわ。
貴様の事はよく知らんが、この世界でその【幻想殺し】がどれほど強力か、
気づいていないわけではあるまい。
魔法も、ストロングポチ三号の能力までも消し去るその力を、私が有効活用してやろうと思ったまでよ」

話しながら、上条が横目で城の方を気にしているのに気づく。
何か異変でもあるのかと確認した紅竜が見たのは、
国王の代わりに閲兵の間の玉座に座るムーミン大佐だった。

戦ってはいないが、引き上げてもいない。
という事は、城内の戦闘に決着がついたが、封魔の宝玉は手に入れていない事を意味する。
ここでどう動くべきか考える紅竜だったが、周りの状況は大きく変化しつつあった。
ゾディックが戦っている方が強烈に光っている。

>>239
>「…紅竜ッ!」
さらに、重傷だったはずのランカムの声が、倒れていたのとは違う方から聞こえた。
何があったかは知らないが、時間切れが近いことはわかる。
万が一ゾディックが倒されたら、4対1で勝つのは不可能。
だが今なら上条は一人だ。動きからみてフェルのように体術の達人とも思えない。
貴重な幻想殺しの生体サンプルを手に入れるまたとないチャンスだ。

「上条ぉ。どうだ?ここでこの紅竜の特別授業を受けてみるのは?
もっとも‥‥成績が悪ければ私の研究所で補習を受けてもらうがなぁ!!
ウルト・アサシャーン!」
水撃魔法を唱え、上条の頭上から大量の水を降らせる。
元の世界で他人が使っていた魔法を無理に発動させたので、威力はたいしたものではないが、
幻想殺し相手に魔法が通用するとは紅竜も思っていない。
魔法を消されるのは前提で、眼くらましに使ったのだ。
「はぁーっ!黒竜巻旋風脚!」
一気に間合いを詰め、上条に連続回し蹴りを仕掛ける。

242 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 20:25:10 0
>237
>「さあ、見せて下さい…貴女の本当の力を…!」
「あなたには、死を覚悟してもらいます……!
 たとえ、私がここで朽ちようとも、あなただけは……決して―――!」
術式が完成した途端、そこからリーベルに向けて魔力が放たれる。
それを吸収して力へと変え、反撃で受けた傷も瞬時に塞いだ。
途切れる事無く放たれる魔力は目に見えるほど純度が高く、それを受ける
リーベルからは覇気にも似た魔力のオーラが迸っている。

組み立てられた術式は……古代魔法王国の隆盛と滅亡の
原因となった魔導装置『魔力の塔』に使われていた失伝術……『魔力変換』。
フォーセリアとそこに存在する全てを形作った未分化のエネルギー、
万物の源を魔力へと変換し、受信機である魔導水晶を通じてそれを埋め込んだ
魔道士に無限にも等しい魔力を供給する役割を果たしていた魔力の塔、
そのものである。リーベルの額には水晶は無いが、特殊文字がリーベルのみを
対象として魔力を送り出しているのだ。その魔力を自らの強化に全て費やし、
赤屍を打ち倒すべく全ての攻撃を必殺レベルにまで高めて攻め立てていたのだ。

だが、魔力変換はそれだけでは魔力の暴走を招くだけの物でしかない。
対となる『魔力制御』の術式と合わせて初めて魔力の塔は機能するのだ。
しかしリーベルはまだ魔力制御の術式を知らない。
そもそも、魔力変換すら現時点では未完成の代物。
その上リーベルはエルフ族の例に漏れず華奢であり決して頑強ではない。
術式によって供給させる魔力を全て、肉体強化と限界を超えた挙動によって
悲鳴を上げる肉体を修復する生命の精霊への精霊力へと回してはいるが、
それでも既に魔力の許容量と生来の肉体強度の限界を超過し過ぎていた。

未完成であり、制御できない非常に不安定な魔力変換の術式は受け皿である
リーベルの許容量と消費量を無視して盲目的に魔力を供給し続けている。
消費し切れず行き場を無くした魔力は、場の精霊力を乱し摂理に過干渉し
徐々にではあるが宝物庫と言う空間を歪ませていた。

一撃毎に、重くそして速くなって行くリーベルの剣戟ではあるが、
剣を振るう度に体のどこかが壊れていく。外れた剣戟が空間を削ぎ、
そこに存在した精霊を諸共に消滅させ、空間の歪みを増大させていく。
猛毒となった魔力が精霊を狂わせ、そこかしこで鎌鼬や火柱、地割れ、
吹雪と言った異常現象を発生させ……宝物庫を崩壊へと導いていった。
すぐにでも術を止めるなり避難するなりしないと、崩落に巻き込まれるだろう……

243 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 23:14:03 O
>>242>「あなたには、死を覚悟してもらいます……!
 たとえ、私がここで朽ちようとも、あなただけは……決して―――!」
術式が完成し、リーベルに魔力が注がれ、傷が塞がる。
覇気にも似たそのオーラには鬼気迫るものがある。
それだけではない。一撃毎にリーベルの剣は重さと速さを増している。
その重さと速さは赤屍ですらさばくのが精一杯と言ったところだ。
更に空間の歪みにより異常気象が発生し、宝物庫に崩壊の危機が迫る。
(これでは首を取る前に埋もれてしまいますね…。)
剣をさばくのに精一杯で首を取る余裕も場所を移す余裕も無い。
「ブラッディ・ダークネス。」
そこで赤屍は考えた。
ここは一旦場所を変えてから続きを楽しもうと。

リーベルの影からメスを持ったもう一つの影が現れた。
そしてその影は背後からメスでリーベルの両足の腱を切る。
メスには速効性の神経毒が塗られていた為、すぐに全身の自由が奪われるだろう。

予想通りリーベルの覇気は途絶え、その場に崩れ落ちた。
「安心して下さい。私を楽しませてくれたお礼です。
すぐには殺しません。このままでは二人共生き埋めです。
一旦外に出ますよ。」

244 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 23:37:30 O
一足先に先程の影がリーベルを抱き抱え、城の外へ向かった。
当の赤屍はと言うと吹き飛ばされた自分の左腕を探していた。
「こんな所にありましたか。それでは私も避難致しましょう…。」
赤屍が宝物庫を脱出した直後に宝物庫は完全に崩壊した。

赤屍は脱出しながら自分の左腕を縫い付けていた。
(完全に治るまでにはまだ時間がかかりそうですね…。)

>>240宝物庫から脱出し、城の外へ出た赤屍の目に最初に入ったのは絶命したゾディックの姿。
そして数人の召喚戦士達の姿だった。
そして次にリーベルを抱き抱えている影に目をやる。
「降ろして下さい。丁寧に、ね。」
影は消え、リーベルを比較的平らな場所へ寝かせる。

>>239>「…紅竜ッ!」
紅竜を呼ぶランカムの声。
「そういえば城の外へ行くと言ってましたね…。
紅竜さんの実力を少し拝見させていただきましょうか。」

245 名前:ハンター ◆r2OflHFOoA [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 23:42:36 0
【名前】 ハンター
【性別】 男
【種族】二足歩行の爬虫類
【年齢】 不明
【容姿】 トカゲのような肌、全身に軽量の鎧
【特技】 武器を使った戦闘
【持ち物・装備】 槍、鍵爪、捕縛用ネット等
【キャラ紹介】戦いに至上の喜びを見出す種族の出身。性格は冷酷非道。
カメレオンのように姿を消す能力を持ち、冷徹に獲物を狩っていく。


246 名前:ハンター ◆r2OflHFOoA [sage] 投稿日:2008/02/14(木) 23:46:09 0
落雷と共に、戦士はそこへ降り立った。
傍にあった巨木は真っ二つに裂けて崩れ落ちた。
戦士は、不気味な銀の仮面を被っている。その仮面からは表情を見て取る事は出来ない。

(カリノハジマリダ)

戦士は自らを奮い立たせるように大きく吼えると、ゆっくりと歩を進め始めた。


247 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 00:38:04 0
>>240
神・カイザーフェニックスがゾディックを包み込む。
ゾディックの体から大量にばら撒かれていたリングが、ついに出なくなった。
回収する事で失った生命力を取り返すリングが底を突いたという事は、決定的なダメージを与えた可能性が高い。
「よっしゃあ!」
勝利を確信したポップ。だが、それはまだ早過ぎた。
ゾディックはそれでも立ち上がり、ポップを睨み下ろしていたのだ。
「やべ……!」
まだ、最後の一撃が足りなかった。
この距離では、手を出されては反応が間に合わない。

>>239
しかし、そこにランカムが飛び出した。
ゾディックの腹部に刺さっていた得物を掴み、押し込んだのだ。
「ランカムッ!」
それが最後の一押しになった。ゾディックは膝を突き、全身から煙と血のような液体を噴出したまま、動かなくなった。
ついに、不沈の『地獄の帝王』が堕ちたのだ。

ランカムに駆け寄るポップ。
「ランカム!無茶しやがって!」
>「…紅竜ッ!」
ランカムが叫ぶ。ポップはハッとランカムの見ている方向に目を遣った。
ポップには見覚えのない男が、城の上の方を眺めている。
そちらに目を遣ってみると、
「ありゃあ…あの時のカバ野郎じゃねえか!」
パラシエルが殺され、宝玉が奪取されたのだろうか。
いや、ムーミン大佐は目的を終えたらあんなところに留まってはいないはずだ。
あんな所で座っている理由は謎だが、まだ宝玉は奪われていない。
しかし宝玉を捜して城内を駆け回っていないということは、少なくとも守り人のパラシエルの存在には辿り着いている。
パラシエルの身が心配だ。いくらパラシエルでも、ムーミン大佐が相手ではどうなるか分からない。
だが、この場も安直には見過ごせない。ランカムと上条の様子からして、この紅竜という男は明らかに敵だ。
ランカムの負傷の具合も気になるし、手伝ってくれた少女も未だ謎の存在だ。
(くそっ、どうする?)

248 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 00:39:06 0
その時、脳裏に師匠の教えが過ぎる。
――魔法使いは、常にパーティで一番クールでいなければならない。
今すべき事は何か?答えは分かりきっている。
「上条ッッ!」
ポップは叫んだ。そして、勢いよく親指を立ててみせる。
以前、崩壊する城の地下でウサコの相手を任せた時と同じサイン。
他には一言も発しなかった。だが、おそらく充分だろう。
そして黒狐に顔を向け、
「悪りい、上条のサポートをしてやってくれねえか?頼むぜ!」
小声でそう言って、飛翔呪文(トベルーラ)を唱えた。
紅竜の頭上を飛び越した直後、敵が何かの呪文を発動したようだが、ポップは振り返らなかった。
ちょうど出てきた赤屍には気付かず、そのまま適度な高さの窓から城に侵入する。

>>235
城内は、出発する前までとは違い何か嫌な空気が漂っている。
魔性の霧や電撃に晒されたせいだ。
その中を、ムーミン大佐の佇む玉座に向かい全力で駆ける。

数分後、中央尖塔閲兵の間の扉が開かれた。
「やあ待たせたね」
現れたのは、パラシエルだった。
「おや?」
ムーミン大佐の足元に転がる王の骸を見咎め、パラシエルは声を低める。
「…その人は人質じゃなかったのか?」
必死で押さえてはいるものの、パラシエルらしからぬ感情めいた調子だ。
それもそのはず、彼はパラシエルではない。変身呪文(モシャス)で姿だけを変えたポップなのだから。
城内あちこちで霧で形作られたムーミン大佐が放送していた内容から、事情を察している。
実力で劣るポップが勝つにはただひとつ、虚を突くしかない。
パラシエルに化けて接近し、変身を解除して驚かせた一瞬に勝負をかけるのだ。

249 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 02:30:26 0
(よかった、ランカムさんは生きてる。あのデカ物はあいつらが何とかしてくれたみたいだ)
ランカムの声に気付き、紅竜を気にしつつも横目で様子を見た上条は安堵した。
>「上条ッッ!」
>ポップは叫んだ。そして、勢いよく親指を立ててみせる。
ポップの発した声、そして勢い良く立てた親指を見て、自分のするべき事を理解する。
言葉は発しなかった。
代わりに、口の端を笑顔とし、返事とする。
それで十分だと信じたからだ。

(ここで俺が出来るのは、出来るだけ長くこいつを此処に足止めする事)

「お断りだクソ野郎!!
 世界征服だか何だか知らねえが、命を道具みたいに扱う事を当然って顔して
 言う奴に、任せられるもの何て何一つねぇんだよ!!」

>「上条ぉ。どうだ?ここでこの紅竜の特別授業を受けてみるのは?
>もっとも‥‥成績が悪ければ私の研究所で補習を受けてもらうがなぁ!!
>ウルト・アサシャーン!」
紅竜がそう言うと、突如、上条の頭上に大量の水が出現し、
濁流の如く襲い掛かってきた。
(こいつ、やっぱり魔術師か!!)
上条はとっさに上方へ向け右手を構える。
ただそれだけの動作。だが、上条の右手に触れた膨大な量の水撃は
まるで不可視の壁に遮られる様に消滅した。

だが次の瞬間、上条の目の前に紅竜の蹴りが迫っていた
>「はぁーっ!黒竜巻旋風脚!」
「っ!?」
連続で放たれる脚撃。一撃目は、上体を逸らすことでかろうじで回避した。
体制を崩された時に放たれた二撃目は、左腕を盾にする事で受け止めた。
重量のある攻撃に、受け止めた左腕の骨が軋む。が、耐え切った。
だが、そこまでだった。
(しま……ッ!?)
三撃目が上条の右脇腹を直撃した。

ズン!! という重い衝撃が、皮膚を押して体に喰い込む嫌な感触として伝わる。
痛みが爆発する。
衝撃はそのまま上条の体を横にくの字に曲げ、上条は横合いに数十センチほど吹き飛んだ。
「ご、は……ッ!?」
肺から、空気が強制的に搾り出される。
喧嘩慣れしているとは言え、上条当麻の身体能力は一般の高校生と大差無い。
格闘技のプロが行うような攻撃を、そう何度も避けられる筈が無かった。
それでも、直後に足を踏みしめ、型膝を付きながらも倒れずに留まれたのは、
上条当麻という少年が痛みという物に対し、ある程度の経験があったからだろう。
不幸中の幸いか、吹き飛んだ事で、四撃目は上条に当たらなかった。
「これでも喰らっとけ!!」
それを確認した上条は、時間を稼ぐ目的も込め落ちていた石を紅竜の頭を目掛けて投擲した。
そして、そのまま痛む体を圧し、蹴りの射程外に向けて走り出す。。
(くそ、このまま格闘を続けていっても不利、かといって魔術を使わせたら
 もっと危険だ……考えろ……どうする……っ)

250 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 08:57:19 0
>240>248>249
倒れたゾディックを見ながら、黒狐はふぅ、と息を吐いた。
「どうにか倒せたようですね。まさか《トール》が必要になるほどとは・・・。」

が、まだまだ休息はできないらしく新たな人影を見つける。
>>「悪りい、上条のサポートをしてやってくれねえか?頼むぜ!」
「ならこれを持っていって飲んでくださいね。」
と、試験管状のMPポーションをポップの懐にねじ込んだ。

――――――――――――――――――――――――――――――
吹き飛ばされて片膝をつく上条と、紅竜の間に巫女装束が立ちはだかる。
「加勢します。」
とだけ短く告げ、上条に向かって呪文を唱える。
先ほどポップとランカムに放ったものと同じ《リジェネレイト》だ。
もっとも、上条の体に効果があっても《幻想殺し》の手までは及ばない。

「魔王側のスペードのエースはもう落ちました。それでもやるのなら相手になりましょう。」

黒狐がそっと目を閉じると、背後に魔方陣が展開される。
その陣からは、幾本もの何かの柄が頭を垂れるように差し出される。
瞳を閉じたまま、背後に手を伸ばして引き抜くとそこには一振りの剣が握られている。

さらに何かを握るように左手を握ると、何もない筈の空間から短剣が飛び出して手に収まる。
黒狐は短剣の柄を上条に差し出す。
「剣の技術が無くとも、ナイフぐらいなくてはその左手が不安でしょう?」

「さて、始めましょうか?」
紅竜に向かって微笑む黒狐の背後で、魔方陣から現れた無数の柄が反転して刃を向ける。

251 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/15(金) 12:55:29 O
>>246
目の前を二人の兵士が走っていく
「おい、うち合わせの場所がどこだったか知ってるか?」
http://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1200673003/だろ?それぐらい知ってるぜ」
兵士たちは土煙を残して走り去った

252 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/15(金) 13:43:43 O
>>246
目の前を二人の兵士が走っていく
「おい、ハッテン場がどこだったか知ってるか?」
http://same.u.la/test/r.so/etc7.2ch.net/charaneta2/1200673003/だろ?それぐらい知ってるぜ」
兵士たちは白濁液を残して走り去った


253 名前:名無しになりきれ[age] 投稿日:2008/02/15(金) 15:11:04 0
kusomomiage

254 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/02/15(金) 19:17:34 O
245 ハンター ◆r2OflHFOoA sage 2008/02/14(木) 23:42:36 0
【名前】 ハンター
【性別】 男
【種族】二足歩行の爬虫類←なんだそりゃ?w
【年齢】 不明←なんでだよww
【容姿】 トカゲのような肌、全身に軽量の鎧 ←トカゲのような肌ってどんな肌だよwww
【特技】 武器を使った戦闘 ←具体性ゼロwwww
【持ち物・装備】 槍、鍵爪、捕縛用ネット等 ←等って適当だなwwwww
【キャラ紹介】戦いに至上の喜びを見出す種族の出身。←どんな種族だよwwwwww
性格は冷酷非道。
カメレオンのように姿を消す能力を持ち、←カメレオンは姿を消している訳じゃありませんwwwwwww
冷徹に獲物を狩っていく。

255 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/15(金) 19:38:43 O
>>254
突っ込みのキレがいまいち。
突っ込むための突っ込みになっていて、変なところを面白おかしく伝える本懐が全く達成できていない。
それどころか、ほとんどが変でもないのにただ難癖をつけるだけになっている。


まあ、難癖をつけたいだけなんだろうけどな。
そういうのは余所でやってくれ。

256 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/15(金) 20:00:43 O
>>255
カメレオンの箇所の突っ込みだけにするべきだったな

257 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 20:54:33 O
−−勝った…のか?
巨体が地に伏し、周辺に地響きが伝わる。
“地獄の帝王”は、炎と共に地獄へ還ったのだ。
緊張が途切れ、達成感を伴った疲労が押し寄せる。
魔王軍の巨星、ゾディックは地に墜ちた。
誰か一人が欠けても、成し得なかった勝利だ。
「やりましたね」
短い言葉に、全ての思いが込められていた。

だが、戦いは終わっていない。
紅竜を倒し、城の増援に向かわねばならないのだ。
そこで、ポップが紅竜の視線を追っている事に気付いた。
−−何だ、この不安は?
間もなくポップが声をあげる。
そこには、玉の間に座すムーミン大佐の姿があった。

−−…フェル…?
誰よりもムーミン大佐との決着を望んでいたのは、フェルの筈だ。
では今、ムーミン大佐があそこにいるのは何故だ。
まだ、フェルと戦っていないのか。あるいは…。

−−そんな筈は無いッ!
頭に浮かんだ、最悪の仮定を振り払う。
フェルの強さは知っている。彼が死ぬなどという事が…。
−−眼前の敵に集中しろッ。
自分の軟弱さを恥じた。自分がフェルを信じなくて、どうするのだ。

上条とポップの短いやりとりにも、無言の…しかし強い信頼が見て取れた。
城へ向かうポップの背中を後押しするように、声を張る。
「ポップ殿、御武運をッ!」

紅竜に対しては、上条が苦戦を強いられているようだ。
魔法攻撃からの鮮やかな回し蹴りが、上条を吹き飛ばす。
魔術師とはいえ、その格闘能力はフェルにも見劣りしない。
−−助けなければッ!
距離を離す上条を手助けせんと、脚を踏み出す。

だが走りだそうとした脚が、すぐに膝から崩れる。
リジェネレイト効果が持続しているため、外傷は消えている。
…それなのに、右脚だけが思うように動かない。
痛みは無いが、ひきつるような感覚だ。

−−“代償”。
ドラゴンの急襲で一度は死の淵をさまよい、
治り切らぬ間にゾディックに弾き飛ばされたのだ。
魔術とて、失った目や腕を治せる訳ではない。
短時間にダメージを受ければ、それは蓄積される。

「紅竜ッ! フェル殿はどうしたッ!」
それでも何とか注意を自分に向けようと、苦し紛れに叫ぶ。
−−駄目か?
自分のふがいなさに、歯噛みした時だった。

黒狐が紅竜の前に、毅然と立ちはだかる。
そこには、リーベルとはまた違った美しさがあった。
−−今の内に武器を…!
いまだ不自由な脚で歩き出す。
自分の得物は、ゾディックの遺体に刺さったままだ。

258 名前:名無しになりきれ[age] 投稿日:2008/02/15(金) 21:47:38 0
ここって新規に冷たいんだな。
なんかそれだけでスレの程度が知れる。

259 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/15(金) 21:54:07 O
>>258
新規には優しいが
現にあからさまな初心者だったコテも受け入れられて、しっかり馴染んでる
ただスレもろくに読まずに脊髄反射で書き込むような厨コテは当然歓迎されない
その程度で知れた底なら勝手に知っておけばいい

260 名前:名無しになりきれ[age] 投稿日:2008/02/15(金) 22:16:11 0
m9(^Д^)プギャーーーッ
         ___
        /       ヽ
    , -‐ (_).⌒ l ̄| ⌒ |     __o
     l_j_j_j と) ノ─|  ノ        | 二|二''  _
    /   /       ヽ       ノ   |  ヤ   ッ
    〈  ノ         |


           /   /\   __   /\   \
           |          .|   |          | __o
      i⌒ヽ  |          |   |          .|    | 二|二''  _
 |⌒ |⌒ | ヽ_ノ|  .|         ノ__ヽ          |   ノ   |  ヤ   ッ
 |  |   | ヽ_ノ  .\      .  l    l         /


             / ̄ ̄^ヽ   /::.__  .:::::::::::::  __   ヽ_
             l       l / /  ヽ_ヽv /: / ヽ   ヽ
       _ /,--、l       ノ /   ̄ ̄ √___丶 ̄ ̄    |
   ,--、_ノ:: `ー'::   、ミー---‐,,l |      // tーーー|ヽ       |
  ,/   :::         i ̄ ̄  | |      ..: |    |ヽ       |
/          l:::    l:::    l  |       | |⊂ニヽ| |      |
l   .   l     !::    |:::    l  |     | |  |:::T::::| !       |
|   l   l     |::    l:      l \:     ト--^^^^^┤    丿
|   l .   }    l:::::,r-----    l  \::      ̄ ̄^ヽ    丿
ヽ  :l::::   ト:;;;;;;;/-/__...........  /        __o
                              | 二|二゛  ___
                             ノ   |  ヤ

261 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/15(金) 22:34:08 0
中央尖塔閲兵の間。
ここの玉座からは、城門前の戦いが一望できた。
ゾディックがカイザーフェニックスの炎に包まれたときも、ムーミン大佐は動かなかった。
ただパイプタバコから立ち上る紫煙をくゆらせ続けていた。
そしてそれは、地下宝物庫での戦いの影響で、微振動が感じられるようになってからも変る事はなかった。

>248
暫くして扉が開かれた。
>「やあ待たせたね」
紫煙の立ち込める閲兵の間に現れたのはパラシエル。
むくろについて問われても、ムーミン大佐は動く事はなかった。
しかし返事は返される。
それも思わぬところから。
「人質『だった』よ。それが何か?」
声は玉座に座るムーミン大佐からではない。
パラシエルの直上。
そこから声の主、ムーミン大佐が降ってきた。

「流石は正義の味方だ。だが、それ故に愚かだ。
戦場で呼び出すということは、待ち伏せをすると同義なのだよ?」
パラシエルの背後に着地すると同時に、振り向く間を与えずその首筋にステッキを這わせる。
それと同時に立ち込める紫煙が薄れ、玉座に座っていたムーミン大佐の姿が蔦を丸めて作ったその正体を露にしていた。

七割方回復したムーミン大佐は、入り口ドア直上の天井に張り付いて待ち構えていたのだった。
これ見よがしに王の躯をころがし、さらに煙を使った幻術を施して敵の注意を前方に集中させたのだ。

「さて、先程の続きだが・・・君に渡された箱がどうしても開かなくてね。
あけてくれたまえ。それから、本物かどうかも確認したいところだが、素直に言ってくれると助かる。
頭蓋を断ち割って脳に直接聞くのは手間なのでね。」
その言葉は妙な動きをすれば迷う事無く殺すということを示していた。

262 名前:東條ルミナ ◇Yw2bVAsGtA[sage] 投稿日:2008/02/16(土) 01:07:57 O
あ゛………オイオイオイ、何ふざけたこと言ってんだ?ここは戦場、んで、アンタは私に武器を向けた 至極当然の道理、それを泣きながら否定するなんざガキのすることだ…………ブチ殺すぞ」
泣きじゃくるパラシエルの姿が不愉快に感じたのか、その表情からはどす黒い殺意が滲み出していた。
若干様子が変わったことに関しては全く気にしてはいなかったというより、変化前を見ていないのだから当然である。
一呼吸置き、中断していた詠唱を再開しようとした瞬間、ルミナの視野が真っ白に染まる。
無詠唱であったため、止めることも警戒することも出来ずに目を眩ませた。
が、左手を前に突きだし防御魔法を高速詠唱する。

「"……エンシェントウォール発動"」詠唱を終えたと同時に、ルミナの目の前に壁がせりあがり、ルミナの姿を隠す。
まるで、古代遺跡の一部分を切り取ったような壁はルミナが唯一使える防御魔法である。
ただし、結界のような万能さはなく、魔法による攻撃には悲しい程無力であるのが欠点だ。
だが、この強風と飛来する棺桶から身を防ぐだけなら十分事足りる。

壁に背を預け、風がやむのを待っていると後方で大佐の声が聞こえた。
支障をきたさない程度のノイズからして、先ほどと同じ通信手段を用いていることが理解出来る。
大佐の話を聞いたとき、ルミナは閃く。
今、パラシエルが所持している宝玉が入っているであろう箱と大佐の所持している箱が交渉用、囮用の真っ赤な偽物であると
確信ではないが、それだと先ほど感じた疑問にも合点が出来る。

「………どっちにしろ、この状況をなんとかしなきゃ話にならねぇな」
こうして壁に隠れている間、もしかしたら相手は強力な魔法を詠唱しているかも知れない。
それに、壁も所々にヒビが入り初め壊れそうだ。このままでは棺桶に押し潰されて息絶えてもおかしくはない。

「…ショータイムだ!」
壁が砕けたと同時に、パラシエルの足元に魔弾を撃ち込む。
撃ち込まれた魔弾は、その場に魔方陣を描き、先ほどルミナが隠れていたエンシェントウェールを発動させる。
これは、ルミナの魔銃、『二重詩人(ダブルエコー)』の能力、詠唱の復唱によるものだった。
発動方法が若干違うのは、魔術を撃ち出さなくてはならないため、着弾した場所(生物)を対象に発動という条件を組み込まれているためだ。

別に出現した壁でパラシエルを撃つつもりはない。ただの目晦ましだ。
ルミナの目的はひとつ、破壊されるか、壁をよけて姿を現す前に間合いを詰め、動きを封じることだ。

微弱な電流で体を麻痺させる魔術を詠唱し、間合いを詰める。

263 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/16(土) 01:55:36 0
>243-244
>「ブラッディ・ダークネス。」
リーベルからしてみれば、既に一国を滅ぼせるほどの魔力を費やし
万単位の命を容易く奪える攻撃を繰り出しているつもりだった。
しかし、赤屍に一太刀浴びせる事が出来ない。一撃を当てる、
簡単ではないと分かっていたが、これほどに高い壁とは……
その理由に、力を高める事に意識を持っていかれて攻撃の幅が明らかに
狭まっていたと言うのがある。どんなに強い攻撃も、当たらなければ意味がないのだ。
それに気づかぬまま攻めあぐねていると……

>メスには速効性の神経毒が塗られていた為、すぐに全身の自由が奪われるだろう。
>予想通りリーベルの覇気は途絶え、その場に崩れ落ちた。
突如、背後から両足の腱を切られた。その刃物には毒が塗られていた様で、
体から急激に力が抜けていく……糸の切れた操り人形の様に、受身も取れず
無様で無防備な姿を赤屍に晒している。
(「ここまでなのね……時間稼ぎが出来ただけ、良しとしましょ……」)
リーベルには死を恐れる心はなかった。ただ、受け入れるだけだ。
生ある者はいつか死に世界へと還る、それが今だったと言うだけだと。
だが、赤屍から発せられた言葉に耳を疑う。

>「安心して下さい。私を楽しませてくれたお礼です。
> すぐには殺しません。このままでは二人共生き埋めです。
> 一旦外に出ますよ。」
>一足先に先程の影がリーベルを抱き抱え、城の外へ向かった。
一体どういうつもりなのか。殺さずとも無力化できたから
このまま連行するつもりなのか……全身が弛緩して口を動かす事も出来ず、
ただ影に抱えられて城の外へと連れ出される。少し遅れて、赤屍が追いついた。
赤屍の考えている事が全く分からず、疑惑は深まるばかり。
……あの場にはフェルがいた。彼は脱出しただろうか?それとも……
敗北を受け入れられず、宝物庫を墓標としてしまったのだろうか……?

>「降ろして下さい。丁寧に、ね。」
>影は消え、リーベルを比較的平らな場所へ寝かせる。
そんな事を考えていると、平らな場所へと寝かされた。
ますます分からない、誰かに任せるために待っているのか?
……耳に入ってくるのは、正門前で戦っていた仲間達の声と
敵と思しき者との戦いの喧騒。毒によって身動きの取れないリーベルは
ただひたすらその音を聞く事しか出来なかった。


……数十分後、半ば諦めの入った様子で手を動かそうとする。動いた。
首も回せる。上体を起こし、立とうとした所で腱を切られていたのを思い出した。
治そうとして精神を集中させる……そこでようやく、自分に起こった変化に気づいた。
先ほどの暴走気味の戦いの反動と毒の副作用により、リーベルは魔力を失っていたのだ。
しかも肉体のあちこちにガタが来ている状態で……辛うじて体は動かせても、
もはやリーベルには戦う為の力はない。精霊の声も聞こえない……無力、ただ無力だった。

264 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/16(土) 18:02:45 O
>>249
不意打ちに近い攻撃があたるのを確信していたのだが、上条は1、2回目の蹴りを上手く捌いた。
しかし、それも無理をしてのことだったのか、三回目の蹴りが脇腹にクリーンヒットする。
吹き飛ぶ上条だが、倒れずに踏みとどまるのは、戦いの場数を踏んでいる証拠。
さらに、上条は紅竜に向かって石を投げつけた。

>「これでも喰らっとけ!!」
頭を狙って投げつけられた石を避けようとするが、攻撃動作中では不可能だった。
「ぐおおっ!?」
頭に走る衝撃に視界が一瞬暗くなり、紅竜はよろけた。
戦闘で相手の姿を見失うのは、死につながる事もある。
追撃に備え後ろに飛んで体勢を整えるが、見れば上条も逆方向に走っていた。
「ちいいっ!卑怯な手を使いおって!!」
奇襲は二度は通用しない。
次の攻撃で必ず上条をしとめる自信が紅竜にはあった。
間合いを詰めるべく前に歩を進める。

>>257
>「紅竜ッ! フェル殿はどうしたッ!」
ランカムは、オロッパスの時のように加勢には来なかった。
仲間の窮地に臆する男ではない。足でも痛めたのか、走ろうとしながら走れないのだ。
「おおう!城内にいるお前たちの仲間はとっくに皆殺しよ!
あの城がどうなっているか、自分の目で確認するがよいわ!」
悔しがらせてやろうと城の方を指さして、赤屍がこちらを見下ろしているのに気づいた。
ムーミン大佐も玉座に座ったまま微動だにしない。
この天才を働かせて自分たちは高見の見物かと怒りを感じるが、
今は幻想殺し確保を優先すべきだと思い直す。
だが、向き直った紅竜が見たのは、上条を守るように立つ狐耳の女だった。

265 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/16(土) 18:05:16 O
>>250
>「魔王側のスペードのエースはもう落ちました。それでもやるのなら相手になりましょう。」
「おおう。遊んでいるゲームを間違えているのではないか?
これはいわば大貧民。きさまら弱者から、我々強者が全てを奪い取るゲームよ」
相手が大貧民を知っているかはわからないが、言われたからには言い返さなければ気が済まない。

黒狐が後ろに展開された魔法陣の柄の一つから剣を抜き取り、さらに上条にも短剣を手渡した。
素人が武器を持ったところで大したことはないが、黒狐の構えは剣を扱いなれているように見える。
>「さて、始めましょうか?」
黒狐が微笑むと、魔法陣の武器が一斉に紅竜に狙いを定めた。
当然攻撃を仕掛けて来るものと考え回避準備をするが、すぐには刃は飛んでこなかった。
おかげで紅竜にも、大技で反撃する準備が整う。

「おおう‥‥女狐め。この紅竜に脅しをかけるとはいい度胸ではないか。
この宇宙一の天才に凡愚な連中が楯突けばどうなるか、
中国儀式省劉家一門に伝わる、八卦最大の奥義で思い知らせてくれるわ!」

紅竜が印を組むと、上条と黒狐を囲むように八個の石が、八卦で言う八門の位置に空から落ちてくる。
「ふはははははは!【天帝陣八極炉】を受けて異界の塵となれい!」
石に囲まれた空間内に、連続で大爆発が起きた。

266 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/16(土) 19:04:28 O
>>263腱を切ってから数十分、正確には20分経つか経たないか。
リーベルは少しずつ動き出す。
手や首は動かせるようだ。
上体を起こし、立とうとするが腱を切られている為立てない。
「無理はなさらない方がよろしいですよ。
 あれだけ強力な付与魔法を使ったとなれば体にかかった負担は相当な筈。
 外傷はそれほどではなくとも、中はボロボロでしょう。
違いますか?」
一旦間を置いて赤屍は続ける。
「残念ですが、今の貴女に戦う力は無い。
 本来なら貴女の首をムーミンさんに持って行くところなんですが…。
 楽しませて頂いたお礼に生きたままお連れ致しましょう。
 最も、貴女にとってはお礼と言えるものでは無いかもしれませんが…。
 …それにしても…」
>>264>>265赤屍はリーベルから戦闘中の紅竜へ視線を移す。
「見ているだけというのも退屈ですね…。」
一瞬、紅竜と目が合う。
赤屍は笑顔で黙ったまま軽く手を振るが、そっぽを向かれてしまう。
「おや、嫌われてしまいましたか?」
戦闘に参加したい気持ちはあるが、戦闘に参加している間に向こうの召喚戦士にリーベルを奪われては本末転倒だ。
戦いたい衝動を抑え、リーベルの傍で紅竜の戦いを見守るのであった。

267 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/16(土) 20:01:20 0
>266
>「無理はなさらない方がよろしいですよ。
> あれだけ強力な付与魔法を使ったとなれば体にかかった負担は相当な筈。
> 外傷はそれほどではなくとも、中はボロボロでしょう。
> 違いますか?」
>一旦間を置いて赤屍は続ける。
>「残念ですが、今の貴女に戦う力は無い。
> 本来なら貴女の首をムーミンさんに持って行くところなんですが…。
> 楽しませて頂いたお礼に生きたままお連れ致しましょう。
> 最も、貴女にとってはお礼と言えるものでは無いかもしれませんが…。
> …それにしても…」
予想はしていたが、赤屍にあっさりと見抜かれて押し黙ってしまう。
過去、幾度となく限界まで魔力を消耗する事態に遭遇したがその時は
10分程度で魔力は多少なりとも回復していた。しかし今回は違った。
枯渇ではなく消失、目の前の壁を越える為とは言え己の限界を見誤り
無理に無理を重ねた結果がこれとは……笑い話にもならない。

赤屍には今のリーベルを殺す気はないようだが……このまま連行されれば
結局は同じこと。自害しようにも顎に力が入らない、剣を持ち上げられない。
自力で状況を好転させる事は不可能だった。ただ一つ望める事は……
こちら側に属する異世界の戦士の助けだけ。だが上条もランカムも目の前の戦いで
手一杯でこちらにかまける余裕はなく、すぐに事態が動く事はなさそうだった。
……駄目元で、腰袋に仕舞い込んでいた霊薬を取り出そうと手を動かす。
聖水を基に強力な付与魔法で仕上げた、『賢者の石』と同じ名で呼ばれる
霊薬ならばもしかしたら、と言う甚だ情けない期待を込めて……

268 名前:大魔道士ポップ(代理)[sage 千夜万夜gt;201より] 投稿日:2008/02/16(土) 21:35:18 0
問いかけても、ムーミン大佐からは反応がなかった。
さすがに訝しむポップ。
だがその直後、思いもよらぬところから返事は返ってきた。
>「人質『だった』よ。それが何か?」
「なっ!?」
声と共に、頭上から落下してくるムーミン大佐。
完全に虚を突かれ、背後から首筋にステッキを構えられてしまう。
>「流石は正義の味方だ。だが、それ故に愚かだ。
>戦場で呼び出すということは、待ち伏せをすると同義なのだよ?」
目の前では、椅子に座っていた偽ムーミン大佐が元の植物の蔦に戻っている。
>「さて、先程の続きだが・・・君に渡された箱がどうしても開かなくてね。
>あけてくれたまえ。それから、本物かどうかも確認したいところだが、素直に言ってくれると助かる。
>頭蓋を断ち割って脳に直接聞くのは手間なのでね。」

(や、やっべぇ〜〜〜こいつ!)
ポップは内心冷や汗ダラダラだった。
本来ならもう詰んでいる状況だ。単なるポップ対大佐なら、ここで大佐の圧勝で決まっている。
さすがはプロフェッショナルといったところだろう。
しかし。
ムーミン大佐がプロフェッショナルであるからこそ、戦いはここからだった。
パラシエル本人以外には魔法の箱が開けられないという少なからぬ可能性がある限り、
この姿で来ればいきなり殺される事はないとポップは踏んでいた。
ムーミン大佐にとっての宝玉の優先順位は知らないが、
その順位を上回る状況を作らない限りポップの生命は保証されている。

「…馬鹿なことはやめた方がいい」
偽パラシエルはいかにも面倒くさそうな調子で言う。
「僕様の脳に聞いても、それを開けられる者がこの世からいなくなってしまった事が分かるだけだ。
それは僕様にしか開けられない。ああだからって洗脳したって無駄だよ。
悪意で汚されたら僕様たち天使は神秘の力が使えなくなりその箱も永劫に開く事はなくなる」
そこで偽パラシエルは軽く肩を竦めてみせた。
このくらいの微動では殺されない事を確認するためだ。
「しかし安心したまえ。僕様はその箱を開けに来たんだから。ちなみにその箱が本物で合っている」
偽パラシエルは平然と言った。
「僕様はもう面倒になったんだ。考えてみれば地上の下等生物どものために命を危険にさらす必要はない。
お前達に恨みを買って余計な面倒を背負い込むくらいなら、その箱を開けて禍根をなくし天界に帰ったほうがずっといい。
僕様はもうこの戦からは手を引く。君たちの敵じゃない。箱を貸してくれよ、開けるから。
でもその前にこの物騒な物も下ろしてくれ」

269 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/16(土) 23:23:01 0
>268
ポップの変身したパラシエルの首筋にステッキを当てたまま、ムーミン大佐は話を聞いていた。
そして、箱を開けに来たというくだりでピクリとステッキに力が入るのをその感触で知ることになるだろう。
「賢明な判断だ・・・しかし!」
ポップの言葉を吟味するように押し殺した声。
それと共に、首筋に当てられるステッキに込められる力が徐々に強くなっていく。
「宝物庫であれほどたばかった割には随分な変りようじゃないか?ん〜・・・さては・・・」
更に力は込められ、その首筋からは血が滲んでくる。
背後に位置し、その表情が見えなくとも、ポップには判るだろう。
全てを射抜くような視線をその首筋に集中されられている事を。

その後、綴られた言葉でポップの目論見は達せられる。
「さては・・・逃げたに見せかけて宝物庫の戦いを見ていたな!?
君が託したフェル君があまりにもあっけなく折れたのを見て敗北を悟ったか!」
自分自身の言葉に納得したように、首筋からステッキが離される。
そして軍議をしていたであろう広いテーブルの上に箱を置き、自身は玉座へと向かう。

「私は戦いが好きなわけではない。戦いはあくまで手段だ。
目的さえ達成できるのであれば、過程はどうでもいいのだよ。
君は箱を開ける。そして元の世界へと帰るがいい。
私は労力が省け目的が達成できる。お互いめでたい話じゃないか。」
箱を無造作に置いたまま、玉座に腰掛けポップに語りかける。
が、もちろんこれで終わるわけではなかった。

残酷な笑みを浮かべながら、ポップに言い放つ。
「だがくれぐれも妙な気を起こさぬ事だ。
先程君の首の傷から、我が部下ドライアードの種を仕込ませてもらった。既に心臓に達しているだろう。
彼女は寂しがり屋でね。私から10mも離れると不安になって発芽し、君の身体を突き破って私の元に戻ろうとする。
更に言うなら心配性でもあってね。
私の身に危害が加われば、同様だ。
君が危害を加える云々は関係ない。例えば今天井が崩れて私の頭に破片が当たっても、という事だ。
もし君の仲間がどこかから窺っているのであれば、やめさせるべきだ。そんなことないと信じているが、ね。
なあに、安心したまえ。目的さえ果たせば傷つける事無く解放するさ。」
箱を渡し、玉座に寛ぐにはそれなりの準備を終えているからなのだった。

270 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 00:35:24 0
>>257,,264
石は命中し、また、ランカムが注意を逸らしてくれた事もあり
なんとか打撃の射程外の距離は取れた様だ。
>「紅竜ッ! フェル殿はどうしたッ!」
>「おおう!城内にいるお前たちの仲間はとっくに皆殺しよ!
>あの城がどうなっているか、自分の目で確認するがよいわ!」
(く……!)
その時に発された紅竜の言葉に思わず激情で動きそうになったが、
理性でそれを思い留めた。それが出来たのは、ポップやパラシエル、フェルという
見知った召喚戦士への信頼が大きいからだろう。

と、
>>250
>「加勢します。」

負傷した横腹を押さえ、なんとか打開策を見つけ出そうと
していた上条の前に巫女装束の女性が立ち塞がった。

(姫、神……?)
一瞬、上条の脳裏に学園都市で出会った、
吸血殺し(ディープブラッド) という異能を持つ少女の姿が浮かんだが、
すぐに思考を切り替える。
この状況で上条に加勢するということは、この女性も召喚戦士なのだろう。
女性は上条に向かって何か呪文を唱えた様だが、瞬時にそれはかき消えてしまう。
上条当麻の幻想殺しは、全身に干渉する回復魔法の様な物は幻想殺しに触れたと
みなし、問答無用で消滅させる。それがたとえ上条とって有利な効果であっても、だ。

「……悪い。俺は上条当麻。あんたは?」
上条は突如現れた女性が差し出したナイフを握り、紅竜の方を睨みながらも尋ねる。

(骨は……多分、折れてない。使い慣れて無いとはいえ、武器もある。
 この人も魔術師みたいだし、二対一……いけるか?)
ナイフを構え、周囲に展開された武器群を見て突破口を考える。
そして、単純だが自分が考えうる最優の作戦を伝えようとした。
「頼みたい事がある。俺が、アイツの魔術を防ぐ盾になる。だから、その隙に……」

>>265
そして、次の紅竜の攻撃により、上条は自分の考えが甘すぎた事を自覚する。
突如、上空から何個かの石が落ちてきて自分達を囲んだ。
(……不味い!)
直感的にそう思った時には、上条は黒狐を石の陣の外に突き飛ばしていた。
そして時自身も陣の外に脱出しようとするが……遅かった、
突如発生した膨大な量の爆発は、上条を飲み込んだ。

271 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 01:55:51 O
紅竜達に注意を向けながらも、必死に歩を進める。
−−皆、無事でいてください。
傍から見れば、まるでゾンビが歩くような不格好さ。
それは普段、歩くよりもよほど遅い速度だった。

ようやく辿り着いたゾディックの巨体から、己の武器を探す。
半ば炭化した巨体には、未だ炎がくすぶっていた。

−−あった。
グリップは焼失しているが、刃先は変わらず鋭い光を放っている。
カイザーフェニックスの魔力と高温にさらされた為か、
それは伝説の金属“ダマスクス”のように、鈍い金の輝きをしていた。

「…よし」
刃先だけとなった得物に布を巻き、それを持ち手にする。
完全には程遠いが、これで仲間を助けに行ける。
そう思った矢先だった。

紅竜の言葉に時が止まった。
−−こいつは、何を言っているのだ?
確かに、皆殺しと言った。
「ばかなッ!!」
−−騙されるなッ!
仲間達は死んでなどいない。死ぬ筈がない。
しかし、それはただの“願望”だと囁く声がある。

普段ならば、冷静を保てた筈だった。
だが、動かないリーベルを連れた赤屍が現れた事が、
上条と黒狐が紅竜の魔術の石壁に包まれた事が、
ランカムから冷静な思考を奪い去った。

《殺せ…奴らを殺せ!》
今までに無い明確な言葉を伴って、雑音が頭に響いた。
《辛いだろう…悲しいだろう…奴らを殺すんだ!》
それは“魔”の誘い。

“魔”とは、実体の無いパワーである。
それは熱病のように感染し、目覚めの時を待つ。
発症した者は、“負の力”を得る。

だが一度その誘いを聞けば、“魔”に魂を喰われる運命が待っている。

知らず“感染者”となっていたランカムの悲憤に応えるように、
元の世界を離れる事で影響の薄れていた“魔”が、その精神を蝕みつつあった。

「嘘だッ!!」
掌から、紅竜と赤屍めがけて衝撃波が走る。
技としての練り上げも、狙いも無い、未完成な力の放出だ。

そのまま、周囲の様子には目もくれず、脚を引きずるように城へ向かう。
−−確かめなければ。
それだけが、自我を保つための拠り所だった。
でなければ“魔”に魂を売り渡してしまうかもしれない。

272 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 09:33:09 0
>265>270
こちらが吐いた軽口に向こうも同様に返してくる。
伝わってくるのは傲慢さと侮る感情。

>「おおう。遊んでいるゲームを間違えているのではないか?
>これはいわば大貧民。きさまら弱者から、我々強者が全てを奪い取るゲームよ」
「大貧民に例えるなら精精貴方はクローバーのジャックと言ったところでしょうかね。立ち位置的に。」
紅竜の後方に目をやれば、魔王軍と思しき敵が二人。余裕綽々のあの態度を見れば
矢面に立っている紅竜は確かに傍目には重役とは思われがたいだろう。

>「……悪い。俺は上条当麻。あんたは?」
「私は異世界より参りました、黒狐。ただの『名無しの黒狐』です。」
>「頼みたい事がある。俺が、アイツの魔術を防ぐ盾になる。だから、その隙に……」
「そう言っている暇は少なそうですよ?」
当麻の前で黒狐は印を組み始める。紅竜のまわりに集まる魔力を感知した為だ。

>「おおう‥‥女狐め。この紅竜に脅しをかけるとはいい度胸ではないか。
>この宇宙一の天才に凡愚な連中が楯突けばどうなるか、
>中国儀式省劉家一門に伝わる、八卦最大の奥義で思い知らせてくれるわ!」
「雌狐というのは否定しませんけど、女性に対してあんまりじゃありません?」
空中から八門の位置に落下してきた石を見ても黒狐は表情を変えなかったのだが・・・。

>ドン!
防御の力を使おうと前に集中していた為に、すぐ横から来る力には抗えない。
黒狐は陣の外へ吹っ飛ばされていくのだが、ここで彼女は焦った表情を見せた。
「このっ・・・・・・馬鹿っ!」

空中で反転した黒狐は爆発を厭わず当麻に駆け寄る。
接近した黒狐は、《幻想殺し》には触れないように当麻を抱きしめるようにして爆発から庇う。
黒狐の巫女服から飛び出た狐の尾の一本が淡い輝きを放つ・・・。

273 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 09:42:43 0
黒狐と当麻を中心にして、後発の爆発は何かに遮られ逸れてゆく。
爆発が収まった時、そこに居たのはやや焦げた装束を纏う黒狐と上条当麻。
到底爆発が直撃したダメージとしては信じがたい程傷が少ない。

「狐の尾の一本一本には、それぞれ異なる力があるんですよ?
 空間を操る《幽界の尾》・・・100%には程遠いですが、爆風を多少逸らす事はできたようですね。」
再び己の背後に魔方陣を展開する黒狐。背中を向けている為に当麻からはその顔が見えないが
この空気には覚えがある・・・目の前の巫女は怒っている。

「上条さん・・・でしたね。【アナタは後でお説教です】。」
振り向いた黒狐は笑みを浮かべているが、かなり怖い笑みだったとだけ言っておこう。

黒狐が剣に手をかざすと、剣に刻まれた文字が赤く輝き炎が噴き出す。
紅竜に向かって微笑みを浮かべると、その姿が一瞬にしてかき消える。

「《インタラプト》・・・《剣 ノ 原》。炎には炎でお返ししますが・・・狐の炎はかなり痛いですよ。」
次に声が聞こえたのは紅竜のすぐ右手側。
剣を下段に構えた巫女が炎を放つ剣で切り上げを放つと同時、
その背後にある魔方陣から無数の武器が紅竜めがけて発射された。

274 名前:大魔道士ポップ ◇bTJ1y4hkoY[sage代理投稿205] 投稿日:2008/02/17(日) 11:25:53 0
>>269
>「賢明な判断だ・・・しかし!」
>「宝物庫であれほどたばかった割には随分な変りようじゃないか?ん〜・・・さては・・・」
ポップの心臓がびくりと跳ね上がる。
(ま、まさかバレたのか?)
この状況でバレれば100%命はない。
やはりこれでは素直すぎてパラシエルらしくなかったかと後悔が頭をよぎるが、

>「さては・・・逃げたに見せかけて宝物庫の戦いを見ていたな!?
>君が託したフェル君があまりにもあっけなく折れたのを見て敗北を悟ったか!」
「お、おう…そんなところだ」
偽パラシエルの首からステッキが離された。安堵するポップ。
そしてムーミン大佐は箱をテーブルに置き、自分は玉座に腰掛ける。
戦いが好きなわけではなく、目的のために省ける労力は省きたいらしい。
内心気にしていたフェルの生存確率もこの発言で上がる。折れた相手にわざわざとどめを刺す性格ではないだろう。

(へっ、ビビらせやがって。俺の勝ちだぜこの野郎!)
心の中で悪態をつきながらテーブルに近付く偽パラシエルの足が、ムーミン大佐の次の発言で止まった。
さっきステッキで作った傷口から、心臓にドライアードの種を仕込んだというのだ!
(んなああああ!や、やべえじゃねーか!)
再び足を進めながら、必死に対策を考えるポップ。
攻撃どころか逃げ道すらも塞がれてしまった。この状況で使える魔法はないものか?
(即死呪文ザキでドライアードを…いいいやいや!間違って俺の心臓に効いちまったらどうすんだよ!
かといって普通の攻撃呪文なんか絶対に使えねえし…)

そして偽パラシエルは箱の前に辿り着いた。
それっぽい仕草で箱を持ち上げ、ハンニャラーホンニャラーと適当な呪文をブツブツと唱えてみせる。
しかし頭の中はドライアードの除去方法でフル回転していた。
(ななな、何かねえか、都合よく弱い魔物だけを消滅するような呪文…あ!)
ポップは脱力した。
(あんじゃねえか…)
偽パラシエルは箱を大きく掲げ、詠唱が佳境に入ったかのように呪文の声を大きくする。
すると、偽パラシエルの体が一瞬だけ大きく輝いた。

儀式に見せかけ、レベルの低い魔物を浄化・消滅する消滅呪文、ニフラムを自分の体にかけたのだ。
自分のヘタレた心臓が誤って一緒に消滅してしまう可能性は別に考えなかった。

その輝きで儀式が終わったかのように、偽パラシエルはムーミン大佐に向けて足を進める。
「終わったよ。自分で開けてみるといい」
ある程度まで近付いて、偽パラシエルは急に足を止めた。
不敵な笑みを浮かべたと思うとボンと煙に包まれ、一瞬で同じ笑みを浮かべたポップに逆変化した。
「なぁんて、なあっ!」
箱を手放し、溜めていた魔力を両手にスパークさせる。
「極大爆裂呪文(イオナズン)!!」
大型の接触爆発魔法弾が、玉座に向けて放たれた!

275 名前: ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 16:59:49 0
此処は王宮から少し離れたところにある、アヨガン国の王立図書館。
この世界(ゲーム内のね)のあらゆる知識、こと異世界から現われた召喚戦士や、諸々の脅威に関する知識が揃っている。
前線で戦う召喚戦士や兵の奮闘と、魔王軍が王宮にある宝玉に惹きつけられていることから、まだこの場所は襲撃されていない。
地獄の帝王ゾディックが倒れたとはいえ、それも時間の問題ではあるが。
一刻を争う状況には違いなかった。
「こ、コイツはえらいことだ……ッ!」
文献を漁っていた学者が、不意に素っ頓狂な声をあげた。
「どうしたのだ」
「この記述……私は見なければ良かったと思うかも知れんが、見たからこそ予め対策ができる。
 今から言う事を、よく聞いてほしい。とても大事なことだ」
「宝玉の使い方がわかったのですな?」
学者は守衛の兵士の問いに、無言で頷いた。
それから咳払いして、淡々と説明を始めた。

「まず、この宝玉は投げて使い、対象に命中させる必要がある」
学者はわざわざ身振り手振りで実演してみせる。
もちろん、実物はパラシエルに預けたままなので、投げたりはしない。
「次に。この宝玉は大魔王と、それに連なる特別な魔物を封印するための道具らしい。
 人間や普通の怪物に使っても効果は無いということだ。
 従って、当面の脅威とも言うべき、敵の召喚戦士には効かないと思った方が良い」
つまり、そいつらは頑張って倒せという意味だった。
「そして最後に、これが最も重要な事だが……魔物は封印に抵抗する。
 しかも封印に失敗すれば、この宝玉は内側から破壊され、二度と使い物にならなくなる。
 従って、封印の際には抵抗できないほど弱らせる必要がある。
 幸い、一度封印に成功すれば、誰かが封印を解かない限りは大丈夫とのことだが……」
それだけ説明すると、研究を続けていた学者は頭を抱えた。
宝玉は今のところ、あの一個しか発見されていない。
「伝令の忍者を飛ばせ。一刻も早く、国王にお伝えするのだ」


276 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 22:17:32 O
>>267>>271赤屍は腰袋に手を伸ばすリーベルの手を軽く掴んだ。
「気の毒ですが、貴女には自害も回復もさせる事は出来ません。
 貴女に下手に動かれて死なれては私も困ります。
 …仮に、今の貴女が動けるようになったとして、この状況を好転出来ると思いますか…?」
そこまで言ってリーベルの手を話す。
「退屈でしょうが暫くお待ち下さ…」
>「嘘だッ!!」
リーベルをなだめているとランカムの衝撃波が飛んで来る。
赤屍は衝撃波を掌で受け止めた。
「……未完成…ですね。」
掌からは煙が少し出ているが、特にダメージはないようだ。
「城に向かわれても無駄だと思いますが…。」
城に居る兵士の大半はムーミン大佐の全体攻撃によりほとんど動けない状態の筈だ。
そんな状態の兵士達を見たらランカムは何を思うのだろうか…。

>>272紅竜と戦闘中の黒狐が赤屍を見る。
赤屍は紅竜と目が合った時のように笑顔を見せる。
が、紅竜の時同様、すぐに目を逸らされる。
戦闘中なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが…。
暇になった赤屍はリーベルに自己紹介をしていない事を思い出した。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。
 私は赤屍蔵人、運び屋を営んでおります。

277 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 23:02:00 0
>274
ポップがドライアードの除去のためニフラムを自分にかけているのをムーミン大佐はじっと見ていた。
あくまでムーミン大佐にはパラシエルが箱の解呪をしているように見えているのだから。

パラシエルの言葉に従い、箱を受け取ろうと近づいた瞬間、それは起こった。
突如としてポップの姿に変る(本当は戻る)パラシエル。
突然の変化がムーミン大佐の思考が0.1秒の空白を生む。
僅かな時間だが、それは致命の時間でもあった。

手放される箱。
そしてスパークする両手。
極大爆裂呪文が放たれたのだ。
触れれば大爆発を起こすその光、本来ならば避ける事はできたかもしれない。
事実身を翻そうとしたが、フェルに打たれた脇腹の痛みが最後の時間を奪ったのだった。
もはや避けるにはあまりにも距離がなさ過ぎ、そして時間も消費しすぎた。

巻き起こる大爆発は尖塔に向けられた閲兵するための大窓から一気に噴き出しす。
爆炎と共に窓から吹き飛ばされた影が一つ。
それは黒い雷を纏い、全身血まみれになったムーミン大佐だった。
仰向けに吹き飛び、血で濁り霞む目に映ったものは大空とそこを気持ちよさそうに舞う白い鷲だった。

ムーミン大佐を包んでいた黒き雷は次第に犬の形になっていく。
更に閲兵の間から、二頭の黒き雷で形作られた犬が飛んでくる。
そのうち一頭は箱を咥えていた。
「ふむ、まさか相打ち狙いとはな。あれは確か・・・青さゆえにやりそうなことだが、私もまだまだだな。」
ムーミン大佐はイオナズンが放たれた瞬間、黒妖犬を放っていたのだ。
ゼクト・ゴラエス・ランブレツタの三つの首からなる黒き雷の妖犬。
一頭を全身に纏いプラズマ化して爆炎から身を守る。
一頭は箱の回収。
最後の一頭をポップに向けて放ったのだ。
爆炎の中から黒き犬がスパークしながらポップを襲っただろう。
「ドアイアードの反応もない・・・が、当然か。」
会議室もかねる閲兵の間は広いとはいえ、大聖堂や謁見の間には遠く及ばない。
そんな室内であれほどの大規模爆発を起こしたのだ。
ドライアードによって体の内側から破られ、黒き雷に打たれ、爆炎によって消し炭になったと判断をしたのだった。

どの道、フェルの一撃の傷が癒え切らぬ内にこれだけのダメージを受けたのだ。
暫くは動けそうにない。
黒妖犬に付き添われ、煙を引きずりながら緩やかに城の側の森へと落ちていった。

278 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/17(日) 23:53:11 0
>271>276
>「気の毒ですが、貴女には自害も回復もさせる事は出来ません。
> 貴女に下手に動かれて死なれては私も困ります。
> …仮に、今の貴女が動けるようになったとして、この状況を好転出来ると思いますか…?」
「っ……」
最後の望みすらあっさりと消されてさすがに落胆する。
目の前の男は自分にとってあまりにも高すぎる壁だった、分を弁えれば
こんな事にはならなかったのに……男所帯な仲間達との僅かな交流で
当てられたのだろうか?自分でも気づかないほど、感化されやすい性格だったらしい。

だが男の言う事ももっともだ。あれだけの力をぶつけたにも拘らず
まるで柳のように受け流され、一方的に無力化させられた相手に
今一度挑む気にはさすがになれなかった。よしんば何かの気まぐれを起こして
力の戻った自分を男が見逃したとしても、本調子には程遠い状態では
かえって足手まといになるだけ……目の前の壁に視界を塞がれて、冷静さを
完全に失っていた自分のなんと情けないことか。

>「嘘だッ!!」
黒衣の男に掴まれた腕をさすりながら自嘲の笑みを浮かべていると、
ランカムの声が戦場に響いた。同時に衝撃波が黒衣の男を襲うが容易く止められてしまう。
しかしランカムはそれには目もくれずに城内へと姿を消した。
精神の揺らぎを見れなくなったリーベルだが、明らかにランカムの様子は
おかしかった。まるで、何かに憑かれたような……そんな様子に気おされたのか、
リーベルはランカムに声をかける事が出来なかった。

>「そういえば、自己紹介がまだでしたね。
> 私は赤屍蔵人、運び屋を営んでおります。
そんな苦悩を知ってか知らずか、黒衣の男は赤屍と名乗った。
本来なら敵同士のはずなのだが、赤屍にはそう言う概念は無いらしい。
……考えてみれば、リーベルは赤屍には個人的な負の感情を抱いていない。
リーベルが赤屍の戦いに喜びを感じる性格を一方的に危険と判断しただけだし、
そもそも敵対していたのも陣営が違ったからに過ぎない。
いったん冷静になると、長命種独特の落ち着きと言うか達観した部分が
自然と鎌首をもたげてくる。今は流されるしか出来ないのだから、
ならば何が起こってもいい様に立ち回るだけだ、と。
「ご丁寧にどうも……運び屋、聞いた事はありませんが
 その様子ですと、依頼されたモノを無事に受け取り主の所まで運ぶ仕事の様ですね。
 ……今回は、私がその届けモノと言うわけですか?」
赤屍がこんなとりとめもないお喋りにどこまで興じるか分からないが、
他に出来る事もないのだ、と自身を納得させる事にした。

279 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/18(月) 12:57:45 O
>270、272
天帝陣八極炉は伝承通りの威力を発揮し、上条と黒狐の姿が爆発で見えなくなる。
「うひひひひひ!おおう!さすがは最大奥義と言われるだけの技よ!
よもや上条まで吹き飛ばしてはいまいなぁ!?」
いらぬ心配をする紅竜だったが、 高揚した気持ちもすぐに吹き飛んでしまう事になる。
爆発が収まった後には、上条だけではなく黒狐まで生き残っていたのだから。

>「狐の尾の一本一本には、それぞれ異なる力があるんですよ?
 空間を操る《幽界の尾》・・・100%には程遠いですが、爆風を多少逸らす事はできたようですね。」
黒狐が元いた世界の高位司祭か、司祭長クラスの力を持っている術者だとは計算外だった。
「ちょっと、まずいかもしれんな‥」
つい弱気な言葉が独り言のように口から出る。
さらに、なぜか怒っているように見える黒狐の背後に再度魔法陣が展開され、刃が一斉にこちらを向いた。
「ちょっとどころでは、ないかもしれんな‥」
黒狐は持った剣に手をかざし、炎を吹き出させる。
今度は警告だけですませるつもりがないのが、よくわかった。
「おおう!‥‥‥‥まずい」

>271
>「嘘だッ!!」
戦闘中に強敵から目を離す者はまずいない。
ランカムの叫びが聞こえた時も、紅竜はそちらを見る気はなかった。
飛び道具を持たない、魔法使いでもない騎士を、遠い間合いで警戒する必要を感じなかったのだ。
だが、それは結果的に見て大きな失敗となる。

「なぁっ!なぁにぃぃぃぃっ!?」
ランカムの衝撃波を、避けることもできずまともに受けた。
威力自体はたいしたものではなかった。
それでも何が起きたのか理解できず、一瞬混乱する紅竜の右側から、黒狐の声が聞こえる。
>「《インタラプト》・・・《剣 ノ 原》。炎には炎でお返ししますが・・・狐の炎はかなり痛いですよ。」
混乱に追い打ちをかける短距離瞬間移動からの攻撃。
斬撃を完全に避けることができないと判断し、あわてて緊急脱出アイテムを使用するが、間に合わない。
「おおう!いかーーーんっ!!!」

肩口を切られ、さらに大量の刃で串刺しにされそうになってようやく転移魔法が発動。
捨てぜりふを残して紅竜は光の中に消え去った。
「これで勝ったと思うなよーーっ!」

280 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/18(月) 12:59:21 O
>>277
アヨガン城の近くの森の中、また紅竜の復讐ノートに、新たなページが増えていた。
『○月○日。上条当麻と狐耳の女に馬鹿にされた。一億年と二千年ゆるさん!』
気も晴れた所で、紅竜は魔王城への帰還法を考える事にする。
近くに魔王軍の利用する転移魔法陣があるはずだが、負傷した身でそこまで行くのは面倒に感じた。
念のため下僕コントローラーをチェックすると、反応がある。
ストロングポチ3号の下僕アンテナが、まだ効果を発揮しているのだ。
トカゲでも乗っていく事はできるだろう、と呼び出したその時。城の一部が轟音と共に火を噴いた。

閲兵の間の辺りから炎と共に飛び出した、黒い犬のような物が森に飛んでくる。
敵か味方かと思わず身構えるが、よく見るとそれはムーミン大佐だった。
「おおう‥‥一体何があったのだ?」
ともかく確認を取るために、落下地点に向かう。

森の中の少し開けた場所に、ムーミン大佐は倒れていた。
爆発による怪我だけでなく他の攻撃も受けていたのか、全身血だらけだ。この傷では当分動けないだろう。

ストロングポチ3号が草木をかき分けてこちらにやって来た。
その頭の上で揺れる下僕アンテナを見たとき、紅竜の頭に名案が浮かぶ。
挙動不審気味に左右を確認。誰も見ていない。

「おおう、これはひどい傷だ。待っていろ、今味方の所に連れ帰ってやるからな」
ポチの背中に乗せてやろうとして、ムーミン大佐に近づいた。
あくまでもさりげなさを装いつつ、下僕アンテナを持つ手がムーミン大佐の頭に迫る‥‥

281 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/18(月) 20:09:33 O
この日、インデックスはついに餓死した

282 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/18(月) 21:50:35 O
「フェルーッ! 聞こえたら返事をしてください!」
歩けども、城内に動く影は見えない。
多くの兵が気絶している為に、城内は不気味な静けさを保っていた。
その静寂とは反対に、焦燥は深まるばかりである。

この状況には既視感がある。
こうして、仲間を呼びながら仲間を求めて彷徨するのは、二度目になる。
一度目は森の中。この世界に訪れる前の事だった。
−−あの時も私は何も出来なかった。

紅竜の言葉が、ランカムの中で真実味を帯びてくる。
《貴様が仲間を殺したのだな?》
−−…殺したのは魔王軍だ…。
疲労した精神は、仲間の死を否定する事さえ忘れさせていた。
“魔”は精神を苛み続ける。
《違うな》
“魔”は、ぴしゃりと言い放つ。

《神に遣える聖印騎士として、貴様は守るべき者を守れなかったのだ!》
“魔”の声色が変わる。それはフェルの物にも、
リーベルの物にも、パラシエルの物にも聞こえる。
あたかも、彼らが自分を責めているかのように響く。

《騎士としての責務を果たせなかった…お前が殺したのだッ!》
−−!!
意識が、急激に暗闇に落ちていく。

−−数分後の事−−

「ここにいたのですか。探しましたよ、フェル」
ランカムが、フェルに話しかける。
その口調はどこか、自動的に言葉を紡いでいるかのようだった。

玉座の方角から二人のもとまで、爆発音が響く。
「ポップが、あの“カバ男”と戦っているようですね」
そこにはやはり、感情の揺れが無い。
爆発音がどちらの手による物かは、伺い知れない。
だが爆発の規模からいって、戦闘が決着している事は確かに思えた。

「行きましょう」
そう言うと、心身共に疲労したフェルを気遣う事もなく、歩き出す。
「そうそう…リーベルがさらわれました」
一度足を止め、まるで天気を語るかの如く、さらりと言い放つ。
オロッパスでの数日間、宿でリーベルを介抱し
心を通わせたフェルの心情は伺い知れない。

もし、彼女が敵に捕まれば、儀式魔法の知識を抜き取られ
殺される可能性についても聞いていた筈だ。
「パラシエルも探さなければいけませんね…」
呟く言葉は、あくまでも無感情だった。

283 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/18(月) 22:28:56 0
>280
木漏れ日の指す森の中、ムーミン大佐は倒れていた。
とはいえ、ただ力尽きて倒れているわけではない。
確かに傷は多く、ダメージは甚大であったが、それなりの用意はしてある。
戦いとは直接的な戦闘だけを言うものではない。
移動・情報戦・補給・退路の確保など全てを含めての事なのだ。
そしてこの森はムーミン大佐にとって補給所であり退路でもある。

深い森は樹木の妖精ドライアードの力を最大限に発揮させる。
じっとうずくまり、傷を癒す事に専念していたのだった。

そこに近づいてくる影が一つ。
三つ首の黒妖犬が唸りをあげるが、その姿を見て大人しくなる。
同じく森を退路としていた紅竜だった。
>「おおう、これはひどい傷だ。待っていろ、今味方の所に連れ帰ってやるからな」
「ふふふ、私とした事が、ね。まあ最低限の仕事はこなしたよ。」
力なくそっと箱を懐から取り出して見せる。
封魔の宝玉の奪取、敵の召喚戦士の二人、フェルとポップは倒した。
そして赤屍はリーベルを捉えたであろう。
これだけ戦果が揃えば受けた傷に見合うというものだ。

力ない笑みを浮かべながら紅竜に肩を貸してもらった瞬間、下僕アンテナを持つその手を掴む。
「これは・・・何の真似かな?」
ギリギリと締め付けるムーミン大佐の表情が一変していた。
先程の弱々しかった面影は残さず、不敵な笑みを浮かべている。
「ふふふ、ようやく尻尾を出してくれたかね。
私の任務にね、君の様な獅子身中の虫を狩る事も含まれているのだよ・・・!
さて、少々傷が深い・・・悪いが本気を出ささせてもらおう!」
傷ついてはいてもその妖気は衰える事はなし!
シルクハットを脱ぎ捨てたムーミン大佐は劇的に変化していく。
今ここにムーミン大佐と紅竜の戦いが始まった。

#####################################

数分後・・・
「宇宙の帝王は紅竜様ただ一人!
魔王など騎乗がいいところでしょうな!ぬははは!」
紅竜の元に片膝をつき礼を取るムーミン大佐がいた。
元の姿に戻り、シルクハットを被るとちょうど下僕アンテナはすっぽりと包まれ見えなくなっている。
「魔王軍内を食い荒らし突き破るときまでは、せいぜい使えてやりましょうぞ。
さ、これを!呪いがかけられてあり開けられぬとも、我らには関係なきこと。
くれてやり魔王に苦労させてやりましょうぞ。
これで紅竜様の魔王からの信も厚くなり、より動きやすくなりましょう。」
そういいながらフェルから奪った小箱を紅竜に差し出すのだった。

284 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/19(火) 00:51:50 0
「………」
崩れ落ちそうになる宝物庫…リーベルは敵に連れられ脱出していった。
だが俺はここをまだ離れていなかった……
俺はさっき死ぬのが怖いと心底思った…今も思っている。
今すぐにでもここを離れたい…死にたくはない。
だが…足が動かない…いや、俺は精一杯の勇気でここにとどまっていた…

そう…俺の誇りが…折れた誇りだが、なんとか俺をこの場にとどまらせている。
このまま死ねば…少なくとも俺は死ぬのが恐ろしいような矮小な愚鈍ではない。
そうだ、ここで死ねば…ここで死ねば今までの通り…俺は自らを貫きとおせる…
そして宝物庫は限界を向かえ瓦礫が俺に向かい振ってくる…
これだ…これで俺は死ねる…覇気すら出せない弱者へと成り下がったがまだ生き恥をさらすよりもいい。
不思議な安堵感が俺を包み眼を閉じる……そして凄まじい崩壊の音が鳴り響く。

「………?」
おかしい…確かに崩壊するような凄まじい音は俺の耳に入ってきた。
だが俺には何にも物がぶつかったような感じはしない……
本来ならばそのままつぶれて死ぬはずなのに…おかしい…ふいに眼を開ける。
「……」
そう…俺は宝物庫をぎりぎりで脱出していた…
知らないうちに…体が動いていた…?俺の無意識の間に?死への恐怖から逃れるために?
「……はは……ははははは、はっはっはっはっは!!」
何か分からないが笑いが抑え切れなかった……空虚感に満ち満ちた笑いだった。
「はははははははっ!ははははは……ははは……はは……」
あまりの自分の情けなさと…不甲斐なさ…結局は生にしがみつく俺の本能に…
空虚感を感じずにはいられなかった。そして、あまりの自分の滑稽さに笑わずには居られなかった……

>>282
「ここにいたのですか。探しましたよ、フェル」
俺がひとしきり笑い終えてから数分後…
ランカムが俺を見つけたようで声をかけてくる…
「ポップが、あの“カバ男”と戦っているようですね」
「……………」
ランカムの言葉に俺は眉をピクリとも動かさない…
ただ地面に座り込み、顔を俯むかせ抜け殻のような笑いを浮かべているだけ…
爆発音がするが…なぜかどうでもいい、興味すらもてない…

「行きましょう」
「……………」
歩き出すランカム…だが俺は姿勢を全く変えなかった。
なんでか分からんが…なんとも思えない……
ついて行こうとも思わない…ランカムがなにやらいつもと違うような気がしないでもないが…
だがそれもなぜか気にすらならなかった。立つ力すら湧き上がって来ない…

「そうそう…リーベルがさらわれました」
「…………そうか…」
だからどうしたというんだろうか…俺にわざわざ言う理由が分からない。
どうせ俺はもはや覇気すら使えんのだ…殺されて知識を吸い取られるということもあると聞いたが…
だが闘えん男にできることなど…ない。いや闘えるだとか…覇気が出せない以前の問題として…
…俺はすでに根本的な何かを失っていた。

「パラシエルも探さなければいけませんね…」
「……………そう…か…」
すでに俺は魂の抜け殻になっていた……

285 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/19(火) 01:48:22 0
安全圏に黒狐を飛ばしたと思った上条だったが、次の瞬間
黒狐は空中で反転し、戻ってくるという離れ技をやってのけた。
「な!?アンタなんで戻ってむぐっ!?」
戻って来た黒狐を見て黒狐以上に焦った表情をみせる上条だったが、
抱きしめる様にして爆発から庇われる事で言葉は遮られた。

(マズイ、このままだと纏めてやられる――――!)
そう思った上条は、何とか振りほどこうと強引に顔を横に向ける。
そこで、自分の心配が杞憂だったという事を知った。
淡い輝きを放つ黒狐の尾。それが、凄まじい爆発を遮っていたのだ。


爆煙が晴れる。多少のダメージはあったものの、
上条や黒狐の受けたソレは、爆発に巻き込まれたとは到底思えないほどに
軽微なものだった。

>「狐の尾の一本一本には、それぞれ異なる力があるんですよ?
> 空間を操る《幽界の尾》・・・100%には程遠いですが、爆風を多少逸らす事はで>きたようですね。」
とりあえず、自分達が無事だった事に安堵しつつ
(魔術ってこんな事も出来るのか……超能力だとLv4ってとこか?)
などと、黒狐の背中から立ち上る剣呑なオーラに気付かずに考えていたのだが、

>「上条さん・・・でしたね。【アナタは後でお説教です】。」
振り向いた黒狐を見て固まった。彼女は怒っている。それもかなり。
元いた世界において腹ペコシスターやビリビリ少女によって鍛えられた
上条の直感は、それに対し、大量の冷や汗を流す事しか出来なかった。

そして次の瞬間、黒狐は動いた。その手に持つ剣が炎を噴き出し、黒狐は
目にも留まらぬ速度で紅竜へと接近する。その炎剣は、いつか見た上条の世界の
炎を操る魔術師を髣髴とさせる。
更に背後の魔法陣から追撃として無数の武器群が放たれる。

その時、ランカムの声が聞こえた。
>「嘘だッ!!」
出遅れて動けずにいた上条は、思わずそちらを振り返る。
そこにいたランカムは、言葉では言えないがどうも妙な感じがした。
そして、ランカムから放たれた衝撃波の様な物を見て、違和感は確信に変わる。
(確か、ランカムさんは魔術は使えない筈……だよな。何で……)

衝撃波は紅竜に直撃し、更に炎剣が切り裂いた。
>「これで勝ったと思うなよーーっ!」
紅竜の声が聞こえる。どうやら、黒狐は紅竜との戦いに勝つ事が出来た様だ。
いろいろ思うところはあったが、とにかく紅竜が城へ向かうのは防ぐ事は出来た。

「黒、狐さんだっけ……? サンキューな、本当に助かった。」
安堵した上条は、先ほどの事で若干緊張しながらも礼を言う。
そして、妙な様子だったランカムの所に向かおうとする。が、
膝が上がらなかった。緊張の糸が切れた事で、オロッパスでの労働や、
高空から叩きつけられた衝撃、更に、先の紅竜の攻撃といったもので蓄積された
疲労とダメージが一気に現れたらしい。
「っ……この!」
それでも、足にあらん限りの力を込めて何とか立ち上がる。
あんな表情をした人を、放って置ける筈が無かった。

286 名前:大魔道士ポップ ◇bTJ1y4hkoY[sage] 投稿日:2008/02/19(火) 08:45:54 O
>>277
「あつっ!っちくしょお…」
自分に回復呪文(ベホマ)をかけながら、ポップは尖塔の階段をのたのたと降りていた。
ムーミン大佐を吹き飛ばしたと思った瞬間、爆風の中から雷の犬が現れてポップの左腕に喰らい付いたのだ。
何とか退けはしたものの、手酷いダメージを負ってしまった。
「こりゃあ治すのに時間がかかるぞ、あんにゃろう…」
しかも、どさくさに紛れて箱を取られてしまった。どこまでいってもプロフェッショナルな男だ。
箱を持っていったという事は、つまりあの奇襲でも倒しきれていなかったという事である。
あの箱が本物か偽物か分からないポップにとっては、これは敗北と呼べる結果だった。
「ま、いっか。パラシエルは守れたんだしな」
そう、そもそもムーミン大佐に単身で挑んだのは、パラシエルとあの危険な男を対決させないためなのだ。
敗北だろうと何だろうと、一の目的は果たしたといっていい。

「フェルの兄ちゃん、無事かなー…」
黒狐から貰った薬で回復用の魔力を補充しつつ、ポップは呟く。
大佐の言葉を全て鵜呑みにするなら生きている可能性は高いが、まだ分からない。
「パラシエルも気になるしな。あのカバ野郎以外にも敵が侵入してないとは限らねえ」
ようやく体が回復してきた事を確認し、ポップは一足飛びに階段を駆け下りる。

>>282
「あ、フェル!ランカムも来てたのか」
しばらく城内を走り回って、ようやくフェルを見つけ出した。ランカムも一緒にいるようだ。
膝に手を付いて荒い息を吐きつつ、ポップは二人に声をかける。
「無事で良かったぜ〜、フェル。パラシエルの行方は知ってっか?ランカム、体は大丈夫か?外の戦いはどうなった?
こっちは何とかカバ野郎は追い払ったんだけどよ、結局あいつに一個箱を持って行かれちまった。すまねえ。
あれがパラシエルの用意したっつう偽物だといいんだけどよ…。ん?」
勢いで思いつくままに捲くし立て、それからポップは急にランカムの顔をじっと見る。
「えっと、あれ?ランカム…だよな?何つーか、雰囲気がちょっと違わねえか?」

287 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/19(火) 19:57:01 O
>>278「(前略)……今回は、私がその届けモノと言うわけですか?」
「ご名答。正解です。
 私にとって仕事の価値とは、仕事の過程が楽しめればそれで良い…。
それ位のものでしかありませんが、依頼された仕事はきちんとこなさなければなりませんので…。
 ムーミンさんには貴女の首を持って来るように言われましたが…
 実際のところ、貴女の命が目的ではない様でしたし、許して下さるでしょう。」
ムーミン大佐が何故リーベルを必要としているのかを赤屍は知らない。
だがムーミン大佐がリーベルを交渉していたのを見る限りでは命を奪う事が目的ではないと考えていたのだ。

>>279>「おおう!いかーーーっんっ!!!」
>「これで勝ったと思うなよーーっ!」
「おや…?……どうやら負けてしまったようですね…。」
移転魔法を使い消え去る紅竜を見て呆れたように軽くため息をつく。
「どうしましょうか…二人とも処分した方がよろしいですかね…?」
リーベルに目を向けるが、すぐに逸らす。
「クスッ、冗談です。そんな顔しないで下さい。
もし戦う事になったとしても命を奪う気はありません。」

288 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/19(火) 22:08:50 O
ランカムは再度、フェルを振り返る。
今の彼は、まるで先刻とは別人……生ける屍のようだ。

そもそも“死”とは何か。肉体の消滅、確かそれも死の一面である。
今、フェルは生きながら精神の“死”を迎えつつある。
いわば…“不完全な生”と言えた。

「そう、リーベル。彼女は“弱かった”。そういう事でしょう」
フェルに向かって、そう言い放つ。

今のフェルなら、刃を首筋に当てれば簡単に殺されてしまうだろう。
「助けたくはありませんか?」
ランカムは自然な動作で、腰に下げていた剣に手を伸ばしていく。
「なに、あなたは強くなれます。我々の“仲間”として…」
だが、剣に手が届く前に、誰かの足音が近付いてくる。

その内に姿を現したポップは、起こった事を一気に喋ると、
ランカムの様子が妙な事に気付いたようだった。

ランカムはポップと見合ったまま、表情を変えない。
数瞬の沈黙の後、ランカムが口を開く。
「…リーベルがさらわれました」
それは、やはり機械的な口調だった。
「彼女の事は残念ですが、それも“神”のご意思でしょう」
その言葉は暗に、死をほのめかしている。

「外の方もそろそろ、終わっている事でしょう」
ひきつっていた脚は、見たところ普通に動いている。
だがそれは完治したと言うよりも、どこか操り人形のようだ。

ランカムの態度もフェルの様子も、ポップの目には異様な物に映るだろう。
その空気を打ち破るように、上条の足音が遠くから響いてくる。

“魔”は内心、舌打ちをした。上条の能力とは相性が悪い。
現在、ランカムの自我喪失に付け入っているに過ぎない。
魂と同化するに至れば別だが、まだ魂の完全な支配には遠い。
一言で言えば、不安定だ。

「上条は無事のようですね。…パラシエルを探しましょう。この辺りにはいないようだ」
その声には、初めて苛立ちの色が浮かんでいた。
「玉座方面から来たポップが遭遇しなかったのなら、恐らくは…地下王墓です」
墓ならば“魔”の力を発揮できる。そう踏んでの事だった。

289 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 01:49:18 O
嵐が過ぎ去った後ように荒れた王墓にて、タバコをふかすルミナの姿があった。
足元には地に伏せるパラシエルもいる。

エンシェントウォールが破壊された刹那に撃ちこんだ魔術はパラシエルの胸元に着弾し、閃光を放って発動した。
直ぐにルミナはパラシエルのマウントポジションをとり、魔銃を突きつける。
「変な真似したら、同じ奴を脳天にブ……チ………」
ルミナの言葉が止まり、一呼吸置いてルミナは飽きれ顔で立ち上がった。
「気絶してやがらぁ……そういや、魔銃のメンテもしてなかったからな。(魔)力いれすぎた」
一時的に体を麻痺させる魔術とはいえ魔力を過剰に加えれば致命傷を与える危険性がある。
その危険性を下げるために、魔銃のメンテは欠かせないのだが、最近、忙しかった為出来ていなかった。
しかし、これで宝玉の真偽、開かない箱の謎その他諸々について聞き出すことが出来なくなった訳だ。

「クソッ………消化不良もいいとこだぜ!」
パラシエルの頭を軽く蹴りつけたあと、ルミナは王墓を立ち去ろうと出入口に向かった。

290 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/20(水) 03:22:28 O
版権w
本人以外に原作知ってる奴がコテハンの中にいなさそうでイタイ

291 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 03:25:59 0
さて、大魔王の側についた召喚戦士達が報告に帰ると、すぐに大魔王の玉座の間に通された。
玉座の間は少し様変わりしており、以前よりも薄暗く、壁際の辺りなどはよく見えなくなっている。
この前までは居なかった連中が暗がりに身を隠し、息を潜めているのがわかる。
これらは、アヨガン以外の国に遠征に行っていた将軍達だろう。

また、以前と同じく、大魔王本人の姿はカーテン越しで判別が難しいが、
今度は人型の生き物が奇妙な物体を抱きしめているシルエットが見える。
この前のシルエット(>120)と照合すると、抱きかかえられている物体が大魔王に違いなかった。
それは強い力で抱きしめられて変形している。
どうやら、かなり柔らかい身体をお持ちのようだ。

伝令の分も含め、今回の戦果の報告を聞き終えた鳥は、召喚戦士の実力を褒め称えた。
「……なるほど、封魔の宝玉を奪取したか!流石は紅竜とムーミン大佐だ。
 東條に赤屍も、向こうの戦力に大きな打撃を与えたようであるな。
 それに加え、あのリーベルを拿捕できたことも、非常に大きな戦果だ。
 ゾディックを失った事は大きな損失だが、この戦果はそれを補って余りあると言えよう」
鳥は流石にプロフェッショナルだった。
大魔王の状態にツッコミを入れることをせず、淡々と言葉を続けている。
同時に、この鳥は冷酷でもあった。
大魔王の懐剣と目されるゾディックが討ち死にしたというのに、鳥の態度はあまりに淡白だった。

それにしても、大魔王は一体何をしているのだ?
大魔王を恐れる将軍達は、その疑問を飲み込み、口から出す事はなかった。
古参の者ほどその傾向は強く、表情に出す事すらしない者さえ居る。
ましてや、カーテンの向こう側を覗こうなどという、畏れ多い真似をする者が居るはずもない。

292 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 03:52:49 0
「さて、次の戦いでは、今回のアヨガン国での戦に関わった召喚戦士を全て抹殺せよとのことである。
 オロッパス城の攻防戦の土壇場で召喚された者達の能力は、諸君等もよく知っているだろう。
 われわれにとって最大の脅威となる召喚戦士を抹殺することは、この戦において大変な意味を有する。
 今回と違って正真正銘の総力戦となるので、これまで異常に奮闘するよう、大魔王様も激励しておられる」
この後、鳥は更に弁舌を振るい続けた。

暫くすると、戦闘要員ではない召使が現われて、鳥に耳打ちをする。
鳥はそれに頷いて、ぴょんと飛び跳ねて、拍手を打つように羽ばたいた。
「皆の者、よく聞け!
 ここのところ吉報続きなので、大魔王様が宴を催すとのことである!
 食事の用意は既にできている!
 次の戦で全力を発揮できるよう、ここで英気を養っておくように」
それを聞いた将軍達は大魔王達に敬礼した後、順序良く退室した。
部屋の外からは歓声が聞こえる。

その直後、鳥は紅竜の手にある箱を一瞥すると、召喚戦士達を特別に呼び止めた。
「さて、これで禍根は敵の召喚戦士のみということになる。
 箱が空かないそうだが、宝玉が箱の中から出せないのなら、敢えて破壊することもない」
大魔王とその側近の鳥は、どうやら封魔の宝玉の使い方を熟知しているらしい。
封魔の宝玉は対象に投げつけて使わなければならず、そのためには箱から出さなければならないことを知っているのだ。
故に、パラシエルの『鍵』で箱が開かなくなったことは、現時点では大魔王にとって非常に都合が良い。
このまま箱が永遠に開くことが無ければ、誰の手にあったところで大魔王の脅威にはならないからだ。
無論それは、この箱がダミーでさえなければの話だが。
もし、箱の中身が偽物であれば、大魔王は激怒し、紅竜と大佐に厳しい罰を与えるかも知れない。
「ご苦労だった。諸君等は今回の勝利の最大の功労者だ。
 君等の戦果は見事としか言いようが無い。
 その箱はこちらで処理するので、預からせてもらおう」
鳥は紅竜に、箱を自分に預けるよう求めた。

293 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 16:40:51 O
>>283
肩を貸し、油断させたと思いこむ紅竜の手を、ムーミン大佐がしっかりと掴む。
>「これは・・・何の真似かな?」
「おおうっ!?お、おおう。
これは‥‥あれだ。回復を促進するために私が開発した‥‥」
しどろもどろに言い訳を始めるが、ムーミン大佐の次の発言内容は驚くべきものだった。

>「ふふふ、ようやく尻尾を出してくれたかね。
私の任務にね、君の様な獅子身中の虫を狩る事も含まれているのだよ・・・! 」
「くくくくっくっく!!来るときが来たな!!
いかにも!大魔王を倒しその力を我が物にする秘策をよくぞ見破った!」
事の露見を知って見得を切る紅竜の前で、シルクハットを脱いだ本気のムーミン大佐が真の姿を表す。
傷が深いと言いながらもその動きには一分の隙も見あたらない。
さらに万力のような力で締め上げられ、迎え撃とうとする紅竜の手から、下僕アンテナが滑り落ちた。


>「宇宙の帝王は紅竜様ただ一人!
魔王など騎乗がいいところでしょうな!ぬははは!」
「ふはははは!!おおう!
当たり前の事でもそう言われると嬉しいものだな!!ふはははは!」
180秒以上にわたる歴史的戦いの末、ついにムーミン大佐は紅竜の軍門に下った。
理想的な事に、頭に被ったシルクハットのおかげで、下僕アンテナも周囲に見えることはない。

>「魔王軍内を食い荒らし突き破るときまでは、せいぜい使えてやりましょうぞ。
さ、これを!呪いがかけられてあり開けられぬとも、我らには関係なきこと。
くれてやり魔王に苦労させてやりましょうぞ。
これで紅竜様の魔王からの信も厚くなり、より動きやすくなりましょう。」
「おおう。なかなか気が利くではないか。
さすがは戦場を駆けるカバと呼ばれる男よ」

一度封魔の宝玉を見てやろうと箱を開けようとするが、どんな封印が施してあるのか蓋が開かない。
魔王城に戻れば何か方法があるだろうと考え、宝玉を見るのは諦める。
次に考えるのは、自分への疑いを晴らすことと、裏切りを警戒することだ。
ムーミン大佐ほどの実力者なら、自力で洗脳を解きかねない。
「ムーミン大佐よ。私が全世界征服を成し遂げたなら、歩合制などと言わず報酬は望みのままだぞ。
それから、今後の行動は今までと同じでかまわん。
無駄に怪しまれては面倒だからな」
ポチの背中で揺られながら、万一洗脳が解けたときの予防線を張った。

294 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 16:42:35 O
>>291-292
大魔王の玉座の間。
相変わらず大魔王ではなく部下の鳥が話すのを、忠義に聞いている振りをする。
内容からするに、ムーミン大佐の活躍で紅竜も一定の評価を得ることができたようだ。
次の作戦内容も聞き終え、長すぎる話しに多少うんざりしている所に宴の連絡が入った。
しかし、喜んで出て行こうとすると、召喚戦士全員が呼び止められる。
さては下僕の件がバレたかと警戒するが、鳥の関心は宝玉に向けられているようだった。

>「ご苦労だった。諸君等は今回の勝利の最大の功労者だ。
 君等の戦果は見事としか言いようが無い。
 その箱はこちらで処理するので、預からせてもらおう」
「おおう。我ら召喚戦士の命がけの働きにより、大魔王様の優位は揺るぎないものとなりましたぞ。
ささ、どうぞお納めください。お誉めは言葉より特別ボーナスで表してくだされば」
ここで下手に渋れば疑念を抱かせる事になる。
『命がけ』の部分を強調しながら、鳥に箱を手渡した。
密偵を放って戦況を観察していただろうが、恩は高く売りつけた方がいい。
「それから、敵の召喚戦士を倒すならこの城に誘き出すことを進言しますぞ。
こちらの油断を突こうとする奴らを、逆に罠にはめるチャンスとなりますからな」
この作戦が行われたら、敵の召喚戦士たちが大魔王に隙を作ってくれるだろう。
行われなければ今まで通り、機会が来るまでおとなしくしていればいい。どちらに転んでも損にはならない提案だ。


その後、大魔王の用意した宴の場に移動した紅竜は、ルミナの居場所を探していた。
同じ召喚戦士どうし、自己紹介を兼ねてルミナに探りを入れようと考えたのだ。

295 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 17:23:07 0
>287>291-292
>「ご名答。正解です。
> 私にとって仕事の価値とは、仕事の過程が楽しめればそれで良い…。
> それ位のものでしかありませんが、依頼された仕事はきちんとこなさなければなりませんので…。
> ムーミンさんには貴女の首を持って来るように言われましたが…
> 実際のところ、貴女の命が目的ではない様でしたし、許して下さるでしょう。」
「あくまでも過程が主であって結果はついでのような物……と言う事ですか」
正に今のリーベルの心情そのものだった。見透かされたような気分だったが
赤屍の表情から、ただの持論だろうと思い心の揺らぎを落ち着ける。
「果たして、あなたのその見通し通りになるかどうか……
 少なくとも私は彼の言う事を一切信用していません」
そう、ムーミン大佐は目的の為には手段を選ばない。
リスクとリターンを天秤に掛けはするが、どちらであれ結果が同じなら
過程には目を向けない……冷酷非情の素顔を知っているがゆえだ。

>「おや…?……どうやら負けてしまったようですね…。」
>「どうしましょうか…二人とも処分した方がよろしいですかね…?」
>「クスッ、冗談です。そんな顔しないで下さい。
> もし戦う事になったとしても命を奪う気はありません。」
そんな話をしている内に、勝負はついたようだ。
立ち上がれないため視界が狭く、リーベルのいる場所からは詳細は分からなかったが
続く赤屍の口ぶりからその場にいた二人が生きている事は分かった。
「……」
処分、と言う血も通わぬ単語を耳にして思わず赤屍を睨み付けた。
良くも悪くも規格外な赤屍の一挙手一投足にいちいち常識的な感情を抱いていては
心身共に保たないのだが、付き合いの浅すぎるリーベルにそこまで分かる筈も無く―――。
命を奪う気はないと言う言葉もどこまで信用できたものか……殊戦いとなると
赤屍に容赦と言う概念はない。リーベルは身を以って思い知っているのだから、
その言葉を信じる事など到底出来なかった。

やがてアヨガンの戦いも収束に向かい、赤屍に連れられて
リーベルは魔王城へと招待される事になった……

アヨガンの時よりもさらに酷い扱いを受けるかと思っていたが、
用意されていた部屋は以外にも貴賓室だった……赤屍によって既に
力を失った事は魔王も知っているだろうが、それでも自分の持つ知識は
よほど魅力的らしい。華奢なエルフ族に下手に拷問など掛けようものなら
加減を間違えて死なせてしまうかも知れないとかそんな事を考えたのだろうか?
……死んだら死んだでどうせムーミン大佐の元に送られて情報を奪われるのが
オチだと言うのに。懐柔策にしても露骨過ぎる、誰が手を回したのか
囚われのリーベルには分かる筈も無かった。歩けないから逃げられないとは
考えなかったようで、万が一力が戻って跳躍魔法で逃げられては不味いとばかりに、
両腕には魔封じの手枷が付けられ、鉛でコーティングした頑丈な鎖で
繋がれていた。幼子にすら力負けするほど弱ったリーベルには聊か過剰とも思える措置だ。
(「今は耐えるしかない……いつまで耐えれるかは分からないけれど……」)

296 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 21:01:16 O
>>291>>292リーベルを連れ魔王城に帰るとすぐに玉座の間へ通された。
鳥の報告と宴の話を聞き、そそくさと退室しようとするが、鳥にひき止められる。
何の話かと思えば紅竜が得た箱の処分についてだった。
「それでは私はこれで…。」

>>295赤屍はフルーツの入った篭を手に持ち、城内を彷徨いていた。
通りがかった兵士にリーベルの居場所を聞き出し、部屋を探していたのだ。
「ここですか…。」
扉をノックする。
「赤屍です、失礼します。」
部屋に入ると手枷と鎖で繋がれたリーベルの姿があった。
「申し訳ございません。
 もう少し良い待遇をしてもらえるように掛け合いたいのですが…。
 私もあまり権限が無いもので、部屋を用意するだけで精一杯でした。」
苦笑いしながらリンゴの皮をメスで剥き始めた。
「次の戦いで今回の戦に関わった貴女の仲間を全員殺すように言われました…。」
リーベルの顔は見ず、リンゴの皮を剥きながら続ける。
「残念ですが、これが戦です…。諦めて下さい。
 ……リンゴ、食べますか?」
ウサギの形に切られたリンゴをリーベルの目の前に差し出した。

297 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/20(水) 21:38:21 0
245 :名無しになりきれ:2008/02/20(水) 12:26:14 O
最初のFOはパラシエルか。


298 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/20(水) 21:55:48 0
>293
「報酬などと勿体無いお言葉!
宇宙の帝王紅竜様に使えられる事が私の無上の喜びですぞ!うはははは!」
深い森の仲、ポチの背中でムーミン大佐の高笑いが響く。
どうやら洗脳装置はしっかりとその効果を発揮しているようだった。

>292
大魔王の城に戻り、戦果が報告されると盛大な宴が模様された。
アヨガンはほぼ壊滅状態、棘であった封魔の宝玉の奪取成功。
浮かれるのも無理もない。
宴が始まると代魔王の側近の鳥が紅竜とムーミン大佐のところにやってきて、箱を渡すように要求する。
紅竜は箱を差し出し、大魔王の城に敵をおびき寄せる事を進言していく。
そしてルミナを探しにいき、その場にはムーミン大佐と鳥が残された。

「ふふふ、お褒めに預かりありがたいが私はプロでね。
過剰評価も過小評価も遠慮しておきたいところですよ。
色々駆け回りましたが、結局手痛い反撃を受け紅竜さんに救われた。
おこぼれで評価されるのはどうもくすぐったいものだ。」
グラスを傾けながら肩をすくめる。
下僕コントローラーが聞いているのか、なんのかんの紅竜を立てる口ぶりだった。

「将軍、私は心配性なのですよ。その箱が開かない事がどうも気にかかる。
できれば破壊して万が一の禍根を断ちたいのだがね・・・」
箱を視線で指しながら鳥に説明をする。
アヨガンで得た情報によれば、力づくでは開けられないとの事。
力の量の問題ではなく、方向性の問題で、だ。
異世界の力が働いているが故に。
【正しい解除法】でなければ、恐らく大魔王の魔力を以ってしても開けられないだろう、と。
「敵をここにおびき寄せるのは賛成するよ。
色々手間が省ける。
解除法を手に入れたら、すぐに箱を開け破壊してしまいたいのが本音だが、よろしいかな?」
万が一にでも敵の手に渡れば、それは即座に脅威となる。
ならば開封の方がわかり次第箱を開け、壊してしまえるように鳥に渡りを付けておきたいのだ。

勿論、これは表向きの話。
対大魔王の切り札ならば、箱の開け方がわかり次第奪えるようにするための下準備なのだった。
どこに仕舞われたか判らなくならないように、だ。

「本来の仕事には含まれないが、今回の失態を考えると・・・
そのくらいしないと給料分働いた事にならないので、ね。」
そんな内心を表に出す事無く、にやりと笑ってグラスを呷った。

299 名前:アヨガン国の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/21(木) 02:15:25 0
ムーミン大佐の率いる妖精による広範囲の電撃は、アヨガン国の城に居た兵士達に甚大な被害をもたらした。
幸いにして、今回の戦いは『地獄の帝王』が現われるという情報が入ったため、そちらにかなりの数の兵士が動員されていた。
外で戦っていた者達はそれなりに多く、最悪の事態は避けられたと言える。
それに、地獄の帝王・ゾディックも、実際にはアヨガン国の兵達の想像よりもあっけなかったと言えよう。
否、こちら側の召喚戦士が強かったと言った方が正しい。

加えて、ムーミン大佐によって討ち取られた筈のアヨガンの国王も影武者だった。
本人は屈強な体格の男で、戦場で目立つように派手な鎧や飾りを身につけており、肌は日焼けのために色黒である。
身体や顔には多数の古傷だけでなく、かなり新しい傷もある。
それらの傷は、未だに前線で兵を率いて自ら戦っていることを物語っている。
現に、今回の戦においても、こことは別の戦地にて、自ら刃を振るって戦っていた。
彼の直属の部隊も猛者揃いなのだろう、ほとんど脱落者は居ないようだった。

国王は城門を潜り、馬を駆って帰還した。
兵士達は国王と、彼の選りすぐりの精鋭達の姿を確認すると、敬礼する。
「『地獄の帝王』撃破の英雄達に会いたい。
 できるだけ早くこの城に招き、可能な限り丁重にもてなすように。
 次の戦については、彼等とも話し合う必要があると思う」
国王は城へ帰ってくるなり、兵士達にそう告げた。
側近は国王の命に従い、国中に人手を回して召喚戦士達を集めた。
中には、これに応じない者も居たかも知れないが。

300 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/02/21(木) 22:45:59 0
>「これで勝ったと思うなよーーっ!」
「・・・ならば次こそが最後になるといいですね。」

転移呪文で消えた紅竜に対して、そう呟くと
二、三度剣を振り鞘に収めるような動きをする。
すると剣はまるでそこに見えない泉でもあるようにその身を沈めていった。

「・・・・・・敵は、もういないようですね。」
再び城を見上げれば先ほどまでの敵の姿はもう見えない。
予想外の善戦に退く決断をしたのか、あるいは

「『地獄の帝王』は囮・・・・・・といったところですかね。」
振り向いて見れば、兵士達もこの静寂に満ちた幕切れに呆然としている。
学生服の少年も場内に行ってしまったので必然城外にいる召喚戦士は黒狐のみ。

やれやれ、と軽く呟いてから再び地面から今度は両手で持つ長大な剣を引き抜く。
それを両手で持って天に切っ先を向け、叫ぶ。
「戦士達よ!『地獄の帝王』は倒れ、敵は去った。この戦は我々の勝利だ!勝鬨をあげよ!!」

声に呼応するように城外では兵士達の勝鬨が響く。
「(戦は士気が物を言う、だからこそなのですが・・・本当は男の勇者の方が様になるんですが・・・)」
と内心で呟きつつ、負傷した兵士達の救護へ向かう。
彼女の本職は癒し手なのだから。

――――しばらく後、黒狐は城内へ消えた召喚戦士を探しに降りて行った。
あちらこちらと迷ううちにだいぶ時間が経っている。

「これは――」
そこで黒狐の目に映ったのは――

301 名前:ハンター ◆69iNTZKmOE [sage] 投稿日:2008/02/22(金) 19:08:19 O
【名前】 ハンター
【性別】 男
【種族】二足歩行の爬虫類
【年齢】 不明
【容姿】 トカゲのような肌、全身に軽量の鎧
【特技】 武器を使った戦闘
【持ち物・装備】 槍、鍵爪、捕縛用ネット等
【キャラ紹介】戦いに至上の喜びを見出す種族の出身。性格は冷酷非道。
カメレオンのように姿を消す能力を持ち、冷徹に獲物を狩っていく。

302 名前:ハンター ◆69iNTZKmOE [sage] 投稿日:2008/02/22(金) 19:08:58 O
あたしもキリノ先輩もダメですけど……
東さんやサヤ先輩でもダメです……。


303 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/22(金) 20:33:36 0
>296
>「ここですか…。」
>「赤屍です、失礼します。」
傍から見たら実に奇妙な光景だっただろう。
悪鬼羅刹も泣いて裸足で逃げ出すほどの力を持つ召喚戦士、赤屍が
敵の、しかも今では何の力も持たない捕虜であるリーベルが押し込められている
部屋に入る時に律儀にノックして入ったのだから。
戦場での赤屍を知る者ほどその姿は信じがたいものに違いない。
「どうぞ、鍵はかかっておりません」
入ってきた赤屍はフルーツの入った篭を手に持っていた。
差し入れなのだろう。先の死闘を繰り広げた相手とは同一人物と思えないほど紳士的だ。

>「申し訳ございません。
> もう少し良い待遇をしてもらえるように掛け合いたいのですが…。
> 私もあまり権限が無いもので、部屋を用意するだけで精一杯でした。」
今の待遇を上申したのが赤屍と知って内心少し驚いた。
しかし、きちんと入室マナーを守ったり差し入れを持ってきたりと言った行動から
それもあり得なくはない、と勝手に納得したので顔には出なかった。
「あなたが口添えを?……何故です?
 そこまでする義理などあなたにはないはずでしょう」
だがそれはそれ、これはこれ。どうしても聞きたかったので聞いてしまう事にした。

>「次の戦いで今回の戦に関わった貴女の仲間を全員殺すように言われました…。」
>「残念ですが、これが戦です…。諦めて下さい。
> ……リンゴ、食べますか?」
予想通りのお達しだったので別段驚きはしなかった。
「そうですか。自軍の兵力として勧誘する事は諦めた、と。
 ですが、残った戦士達は皆私よりもはるかに手練です。
 言うほど容易く成し得られるとは思わない事ですね……
 あなたにとってはかえって喜ばしい事でしょうけれど。」
皮肉でもなんでもなく、赤屍はそう言う人物なのだからそう言っただけである。
……顔には出さないが、心配事が二つある。一つ目はフェルの事。
大佐に負けたフェルに先日の自分の姿を重ねたリーベルはそれに発奮して
限界を一つ超えた……あの時の言葉は自分だけでなくフェルにも向けていたのだ。
その事に気づいて少しでも活力を取り戻してくれていればいいが……もう一つは
ランカムの事。ひどく取り乱していたのと、それまでのランカムには出来なかった攻撃、
何か悪い事が起きていなければいいのだが……という案件。
「せっかく手間を掛けて下さったのです、ありがたく頂戴しましょう。
 正直、いつ満足な食事を取らせてもらえなくなるか分かりませんから……」
これも皮肉ではない、生殺与奪の権限は今の自分にはないのだ。
煮るも焼くも好きに出来る以上、余計な反抗は無意味なのだから。

304 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/22(金) 20:46:35 O
宴が催されている大広間の端の席で、ルミナは魔銃のメンテナンスをしていた。
もちろん、傍らにはブドウ酒と料理はきっちりキープしている。
「………やっぱりコイツがイカれてたか」
本来なら綺麗な円筒形をしているパーツが熱で変形し使い物にならない状態になっていた。
確か、このパーツのスペアなら上着に入れておいたはずだ。と革ジャンのポケットを探してみるがあるのは、タバコとライターとアレだけだった。
「……ッ、しゃねぇな」
ブドウ酒を一口飲み、静かに詠唱を始める。
詠唱を始めるとパーツはまるで熔けるように形を変え、黒い球状になる。
そこから更に詠唱を続けると、黒い球はまた同じように形を変え、綺麗な円筒形のパーツに形を戻した。
よく確認し、魔銃の組み立てを始めた。

305 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 00:19:50 0
>>288>>286
>「そう、リーベル。彼女は“弱かった”。そういう事でしょう」
「…そして俺は闘いもせずに敗北を認めた臆病者というわけだ…」
ランカムのらしくない挑発的な態度が少し引っかかるが…
しかしやはり俺の魂は抜けがらで……ランカムに問いただす気にもなれなかった。
>「助けたくはありませんか?」
「…それは……どうだろうな。」
分からない…俺は言葉を詰まらせる。そもそも俺は人を助けたことなどない。
家族であろうがなんだろうが俺は気を許した覚えなどない……
生きるために強くならなければならない、それが俺の世界だ。
家族すら信じたことない俺には助けたいという気持ちも分からない…
まあ…もし助けたいと思っても俺にはもはやそんな力などないが…
>「なに、あなたは強くなれます。我々の“仲間”として…」

「……強くなる?……仲間?…」

ランカムの言葉に違和感を感じ俺は振り向いた時、
ポップがこちらを見つけて走ってくる。ポップはこちらに来るなりまくし立てるように喋り始める。
「……そうか、ムーミン大佐を追い払ったのか…ははは…お前は強いな。」
ポップのムーミン大佐を撃退したというその言葉はいっそすがすがしいものだった。
これで戦いを放棄した俺はもはや戦士ではないことが分かったのだから。
>「上条は無事のようですね。…パラシエルを探しましょう。この辺りにはいないようだ」
その言葉に俺はゆっくりと立ち上がる…人探しぐらいならできる…
「地下王墓?…とりあえず行くか……ランカム、道案内を頼む。」

ランカムの案内の元に王墓へと向かうと…そこには倒れたパラシエルの姿があった。
俺はかけよりとりあえず地に伏せるパラシエルを仰向けにさせる。
「……ダメだ、分からん。気絶らしいがどこか損傷してるかもしれん。
 おい、ランカム…この前の薬みたいなのは持ってな……」
そこまできて、なにやら後ろのランカムから殺気のようなものを感じ振り返る。
そこにはやはりいつものランカムとはいえないような別人にも見えなくもない男が立っている。
「…ラ……ランカム?」

306 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 02:54:19 0
>294
紅竜が城へ誘い込む献策をしたところ、鳥は眉一つ(鳥に眉は無いが)動かさずに応答した。
煌びやかな翼を大きく広げている。
「わざわざこちらが誘うまでも無い。
 彼等は必ず宝玉を取り戻しに来る。それ以外に勝つ手段は無いからだ。
 故に、城の周りに居る者の相手をすることより、まずこの城に侵入することを考えるはず」
そう、まさに鳥の言うとおりになることは間違いなかった。
あの宝玉が本物であれば、もはや相手がとれる策はそれ以外に無い。

鳥は更に強い調子で言葉を続けた。
「更に、奴等は宝玉を奪還したその足で大魔王様まで迫ろうと、捨て身の攻撃を仕掛けてくる。
 宝玉を奪った後に退却して体勢を立て直すほどの余裕は、もはや敵には無いだろうからな。
 だが、召喚戦士と国王直属の精鋭が、後ろを全く省みずに向かってくるとなれば、
 どれだけの兵で囲んだところで、1人くらいは侵入を許してしまうだろう。
 故に、こちらが特に何もしなくても、敵は向こうから現われるし、誰かがこの城に侵入する。間違いない。
 が、外でわれわれとお前が、脱落する者も多く居よう。
 考えるのは、城に張る罠だけで結構」

よく喋る鳥だったが、ボーナスを求める要求に対しては、少し言葉を渋った。
「ボーナスか……そうだな。しばし待ってもらいたい。
 こればかりは、大魔王様の気持ち次第なのでな。事が決まり次第通達する」
今回の褒美の内容は、大魔王にどれだけ信用されているかを表す目安になる。
褒賞としての価値以上の意味があるだろう。

307 名前:大魔王城の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 04:22:18 0
>298
紅竜を見送った後、次はムーミン大佐の提案を聞いた。だが……
「……」
紅竜を褒める内容の発言を聞いた鳥は、ほんの一瞬、後ろに控えている大魔王に目配せした。
それに反応して、カーテン越しに見える二つの群青色の光が明滅した。
締め上げられている謎の生き物が、心なしか頷いているように見える。
そして視線を戻すと、大佐の発案に対して、先ほどよりも僅かに冷たさを感じさせる、威圧的な口調で言い放った。
「その辺りは抜かりは無い。箱が開き次第、真贋に関わらず、わたしがこの手で焼却処分する。心配は無用」
心なしか早口でそう言っている。

油断も隙もあったものではなかった。
ほんの僅かに失敗があるとすれば、自分の戦法を明かしていることくらいか。
そう、「焼却処分」という言葉から、この鳥は少なくとも炎を扱うことができることがわかる。
大魔王だけでなく、この鳥も謎が多いが、それだけがわかった。

「ところで大佐殿。密偵の話によれば、敵のパラシエルとかいう天使は、大量のダミーを用意したと聞く。
 実は、私はこの箱の中の宝玉が偽物ではないかと疑っているのだ。
 まあ、間違いは誰にでもあることだし、大魔王様は心の広い御方ゆえ、それだけで罰せられる事もあるまいが……
 ともあれ、まだ開錠に時間がかかるだろうから、後でゆっくり話そうではないか」
一通り要望を聞くと、鳥は自らもパーティ会場へと足を向けようとしている。
それに対し、大魔王はまだカーテンの向こうで人型生物に締め上げられながら眼を光らせている。
「ところで大佐。
 紳士ならば、婦人に挨拶をするときは帽子をとってお辞儀をするものだと聞くが……」

308 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 18:00:43 O
>>304
「おおう。こんな時にまで武器の手入れとは感心なことだな」
ようやく東條を見つけた紅竜は、仁王立ちのまま話しかけた。
「私の名は劉紅竜。大魔王様の忠実な部下であり、やがては国を治める王となる男よ」

紅竜の世界征服の野望は、ムーミン大佐を下僕にすることで一気に現実味が増した。
他にも下僕が欲しいと思うのは、別に不思議でもない。
召喚戦士はその点理想的な相手といえるだろう。
実力は十分な上、大魔王への忠誠心もそれほど高くはないのだから。
下僕化には危険が伴うので、味方として引き入れるだけでもかまわない。
そのためには、他の戦士たちの考えを知らねばならないのだ。
「私はこの戦いが終われば、アヨガンとオロッパスに加え、さらに他の国の支配権をもらうつもりでいる。
それぐらいの働きはしているからな。
お前の望んだ報酬は何だ?」
紅竜は近くのテーブルからワインを持ち上げ、高く掲げた。
「なんにせよ、我らの望みがかなう日も近いというものだ。
永久の夢、大魔王様の支配する新たな世界に乾杯!」

309 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 20:47:08 O
>>303>「あなたが口添えを?……何故です?
 そこまでする義理などあなたにはないはずでしょう」
リーベルの言う事はもっともだ。
敵である彼女に部屋や差し入れを用意するなど普通じゃ考えられない。
しかもつい数時間前までは殺し合いをしていたのだ。
義理など存在する筈が無い。
「私を楽しませてくれたお礼、ただ、それだけです。」
そんな理由で敵にここまでする人間はまず居ないだろう。
だがそれが事実なのだ。

>「(前略)あなたにとってはかえって喜ばしい事でしょうけれど。」
>「(前略)いつ満足な食事を取らせてもらえるか分かりませんから……」
「どうぞ、好きなだけ食べて下さい。その篭に入っている果物も置いて行きますので…。
 …正直、貴女の言う通り私にとっては嬉しい限りですよ。
 貴女以上の手練と戦える機会なんてあまりありませんので…。」
嬉しそうに見せる赤屍の笑顔は無邪気な子供を思わせる。
無邪気、故にタチが悪いのだが…。
「食事については定期的に持って来るように伝えておきます…。
 味はあまり良くないと思いますが、ご了承下さい。
 それでは、私はそろそろ失礼します…。」
帽子を抑えつつリーベルに一礼すると部屋を出て行った。

310 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 20:48:19 O
する事もないので宴の会場へ向かおうと廊下を歩いていると一人の兵士に出会った。
「すみませんが、捕虜の方に定期的に食事を持って行ってはくれませんか?」
兵士は一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに納得したようだ。
>「…承りました。」
「ありがとうございます。」
兵士に一礼し再び宴の会場を目指し歩き始めた。
赤屍が宴に出る理由、それは会場に居る将軍の強さを見極める為だった。

(あまり期待はしていませんでしたが…。
なかなか楽しませてくれそうな方が多いですね…)
宴の会場には赤屍が初めて会う将軍が何人か居た。
その将軍のほとんどが強者のオーラを纏っている。
>>304>>308ある程度将軍に目星を付けたところで話をするルミナと紅竜を発見する。
「どうもお二人さん。今回の戦ではお二人共随分活躍されたようで…。
 紅竜さんの活躍ぶりは私も拝見させていただきましたよ…。」
結果的に逃げはしたものの、召喚戦士二人相手にあれだけ出来れば善戦と言えるだろう。
「ルミナさんも初戦で結果を残すとは、大したお方だ。
私も見習わないといけませんね。」

311 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/23(土) 21:41:34 0
>307
ムーミン大佐の提案に大魔王の側近の鳥は開錠ができ次第焼却処分にすると言い放つ。
それを聞き、にっこりと笑みを浮かべるムーミン大佐。
「それは助かりますな。将軍に任せるのは心苦しいが、おかげで私の心配事が一つ減ったわけだ。」
あくまで深追いをせず、相手に任せる事にした。
だが、側近の鳥は更に一歩踏み込んでくる。
箱のダミーの可能性について、だ。
そこに話が及ぶと、ムーミン大佐の表情は曇る事になる。
「ふうむ。いやいや、信賞必罰は軍規の要。
もしそれがダミーだとすれば私の減俸は免れますまい。」
苦虫を噛み潰したような表情で鳥に反論する。
あくまでプロなのだ。
たとえ自分の不利になる事でも、罰には罪を与えなければ気がすまない、というわけだ。

とはいえ、それほど本気で苦しんでいるわけではない。
「ダミーの可能性は確かにあるが、果たしてダミーにそれだけの厳重な封を施すか、ともね。
箱からもれ出るオーラもそれなりのものだ。
ま、大元私は実物の封魔の宝玉を知らないのでねえ。どの道開くまではなんとも言えんですな。」
言葉通り、真偽の程はわかったものではない。
それに実物を見た事がないのだ。ムーミン大佐に真贋判定ができようはずもない。
それも見越しての鳥の言葉ではあろうが、ムーミン大佐もそれに苦笑を持って応えるのだった。

>「ところで大佐。
> 紳士ならば、婦人に挨拶をするときは帽子をとってお辞儀をするものだと聞くが……」
今まで曇ったり苦笑したりしたムーミン大佐だが、この言葉に表情は一変する。
戦場で見せる猛禽のような鋭い眼光が鳥を射抜く。
「紳士?私が・・・?・・・くはははは!」
持っているグラスの液体が零れんばかりに肩を揺らし大笑いを始める。
一通り笑い終えた後に、隋と鳥との距離を縮めてあたりを気にしながら囁くように言葉を続ける。

「いや、失礼。
これはね、帽子のように見えるが、私の部下を収納している母船・オーケストラ号なのですよ。
そして私の本性を抑え付ける防止装置でもある。これを取ると本性が露になってしまうのでねえ。
奥の手を晒す危険性、お分かりになろう?
そのカーテンの向こうでならばいくらでも晒そうが、それはできますまい。
かといって、ご要望に応えねば非礼に当たる。
そこで2秒だけでよろしければ・・・。」
そういうと、ムーミン大佐はシルクハットを取り、片膝をつき頭を垂れる。
頭には、あるはずの下僕アンテナはなかった。

その直後、爆発的な妖気が謁見の間に広がっただろう。
普段のムーミン大佐の妖気とは全く異質なもの。
剥き出しの凶暴性を予感させずにはいられぬものが。

きっかり二秒後、シルクハットを被り、小さく息をついている。
「これ以上だと妖気だけでは収まらなくなりますのでな。ご容赦を。
次なる戦いでは更なる戦果を約束しますぞ。」
鳥とカーテン越しの大魔王に笑みを送り立ち上がる。

ところで、下僕アンテナはどこに行っていたのか?
それは、シルクハットの中。しかもケルピーの水分操作によって見えなくされていたのだ。
2秒というのは、外してもまだ効果が消えないラグタイムだったのだった。

312 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 01:19:13 O
ランカムは、パラシエルに駆け寄るフェルを、冷ややかに見つめていた。

ほのかな灯火に照らされた玄室の内部には、まだ細かな塵が舞っている。
「やはり戦闘があったようですね」
確かめるように、散乱した人間大の箱の一つに手をかける。
その拍子に、崩れた棺から乾いた音を立てて骸が床に滑り落ちた。

フェルが、気絶したパラシエルの体を仰向けにする。
「…女?」
持ち物や気配から、あの少年に間違いない。
だが今、フェルの手元にある膨らみは、女性の物である。
−−まあ良い。
やる事に違いは無いのだ。

「薬なら、兵舎に残っていましたね」
こちらの異変を察したフェルに、そう答えを返す。
もしもに備え、リーベルが作り置き物した物だ。
「だが、もう必要のない物だ」
それは婉曲な殺害予告だった。

「…聞こえませんか?」
虚空に差し出した手を、水平に動かしていく。
「“魔”の声が」
途端、部屋全体が震え出す。

《フェル・エクスティム》
その声は、直接脳に響くようだった。
急激に、風景が溶けだしていく。そして世界から色が失せる。
遠くから、小さな光が近付いてくる。
“魔”は幻想の中で、フェルの魂に手を伸ばす。

光の中には父が、母が、兄が、幼い頃のフェルがいた。
そして洪水のような怒り、悲しみ、挫折、屈辱、敗北、喪失の走馬燈。

過去の幻影の中で、あらゆる痛みがフェルの心を揺さぶる。
誰かが叫んでいた。泣いていた。罵っていた。嘲笑っていた。
その雑音は、段々と大きくなる。
《失われた過去を取り戻す事はできない》

そして、限界まで大きくなった雑音が消える。
そこに幻想のリーベルが、微笑んでいた。
“魔”の仕掛けた偽りの安らぎが、フェルの心に忍び寄る。

《過去よりも、未来を見つめろ》
フェルの姿をとった“魔”が歩み寄る。
《どれだけ失った? まだ失う気か? …違うだろう?》
“魔”が手を差し伸べる。この手を取れば、力が手に入るのだと。

一瞬前まで目の前で微笑んでいた幻影のリーベルは地に伏し、
胸からとめどなく血が溢れてゆく。
《そんな結末の為に、オレ達は戦ってきた訳じゃない筈だ》
フェルの姿をした“魔”は、唇の端を歪めた。
《我々の“仲間”となるのだ》

この時点で“魔”は、フェルを容易に“喰える”と侮っていた。
その為に一度、意識を現実に集中する。
「さて…こちらの始末をつけましょう」
現実の世界、ランカムが剣の柄に手をかける。

313 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 10:37:59 0
>>288
>「…リーベルがさらわれました」
>「彼女の事は残念ですが、それも“神”のご意思でしょう」
しばしの沈黙の後、ランカムはそう言い捨てた。
言い捨てた、のだ。
「お、おい…?」
あまりの事に、一瞬怒りさえも出なかった。
あの穏やかなランカムが何故こんな態度を取るのだろうか?
一瞬遅れ、カッとなって胸倉を掴もうとした時、背後でフェルが言う。

>>305
>「……そうか、ムーミン大佐を追い払ったのか…ははは…お前は強いな。」
「お……おいおい!」
フェルの調子にいたたまれなくなり、ポップは彼の方を振り向いて両手を広げる。
「どうしたんだよフェル!しっかりしてくれよ!いつもの憎まれ口はどうしたよ!
勝気で自信家で、でもとんでもなく強ええフェルの兄ちゃんはどこ行っちまったんだよ?」
ムーミン大佐が折れたと表現していたが、ここまで打ちのめされているとは。
これでは大佐でなくとも肉体にとどめを刺す必要などなかっただろう。

その時、向こうから上条の足音が聞こえてくる。
様子からして元気とは言えないようだ。
「上条!」
>「上条は無事のようですね。…パラシエルを探しましょう。この辺りにはいないようだ」
>「玉座方面から来たポップが遭遇しなかったのなら、恐らくは…地下王墓です」
>「地下王墓?…とりあえず行くか……ランカム、道案内を頼む。」
そして奇妙な二人は地下王墓へ向かい、歩き出した。
「さ、先に行っててくれ!」
二人の背中に叫び、ポップは上条に駆け寄る。

「無事で良かったぜ。大丈夫かよお前?」
上条に回復呪文(ベホマ)をかけながら、ポップは言う。
「お前だけは変になってなくて本当よかったぜ。実はよ…」
ポップは状況を掻い摘んで説明する。
大佐と戦い、本物か偽物か分からないが箱を奪われてしまったこと。
リーベルがさらわれ、パラシエルは居所不明であること。
フェルとランカムの様子がおかしいこと。
「フェルの方はカバ野郎に負けたショックだと思うんだけどよ、ランカムがとにかく変なんだ。
まるで感情がない…いや違うな。人間らしいあったかみを無くしちまったみてえだ。
何か嫌な感じがする。地下王墓だ、俺達も急ごうぜ!」
回復呪文(ベホマ)をかけ終え、ポップは立ち上がり、走り出した。

314 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/02/24(日) 17:34:21 O
ランカムの中の人の写真
http://n.pic.to/o5n7f

315 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 18:28:56 O
「理解出来ないことが2つあるんだが、いいかい」
気持ち良さそうに語る紅竜に見向きもせず、ルミナはそう尋ねる。
「その忠実な部下がなんで此方に来て語ってんだ?忠実な部下ってのはあそこにいる奴(将軍)らみたいに近くにいるもんじゃないか?
  それと、アンタ…随分自信満々に語るな?いくら、一人で城を落としたとしても傭兵は傭兵…酔狂でも国を与えるなんざ考えられねぇな」
組み立てた魔銃を確認し、ルミナは先ほど口をつけたワインに手を伸ばそうとするが
手を伸ばした先にソレは無く、そのまま後ろへと倒れた。
「…っ!………ったくついてねぇな」
ぶつけた頭をさすりながら、立ち上がり紅竜を睨む。
「質問に質問を返す真似をして悪かったな…東條ルミナ、探偵…っても意味ねぇか。まぁ魔術師もやってる
 報酬として、あの石を調べる権利と元の世界に戻る権利と…まぁ、あとは金、銀等の金目の物ってとこか
 それと…」
紅竜の質問に粗方答えた後、紅竜の手にしているワインを奪う。
「これは私のだ…それに、アンタは少しばかり勘違いをしている…私は帰れればどっちでもいいのさ」
そう言い放ったあと、手にしたワインを煽った。

316 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 19:38:31 O
「偶々だ偶々…それに、あんたがそんな事言うと嫌味にしか聞こえねぇよ」
いつの間にか会話に入っていた赤屍に皮肉をいうと先ほど紅竜からの質問をぶつけることにした。
「ところで、あんたは報酬に何をもらってんだ?アンタのことだから、大魔王との一戦か?」
そう言うと、ルミナはヘラヘラと笑いながら、皿の料理に手を伸ばそうとした。
その時、ルミナの胸元から激痛を伴いながら大剣が生えた。
「………嘘………だ…?」
瞬きした瞬間、生えた大剣も傷口もなかった。
しかし、そのかわりに滝のように流れる脂汗と寒気が残っている。
どうやら、ルミナだけではなかったらしく、先ほどまで騒がしかったのが嘘のように広間は静まり返っていた。

317 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 19:43:09 0
上条は痛む脇腹を押さえ、軋む全身を壁に手を着く事で支えながら
ゆっくりとだが、何とか城の中を進んでいた。
ランカム達の姿は愚か、足音すら既に見失っていた為、
闇雲に進んでいるだけという事になる。
「はぁ、はぁ……くそ、何処行ったんだランカムさんは……」
ぼやく様に言い、角を曲がる。時間の経過で体力は少しづつ
回復してきているとはいえ、やはりダメージは易々と消える物では無い。

>>313
>「上条!」
と、その先から聞き覚えのある声が聞こえた。
上条が顔を上げると、そこには
「ポップ、か……? 良かった、お前も無事だったのか」
見知った顔を確認して、安堵する。信じてはいたが、
紅竜の台詞が頭に残っていたので、やはり不安はあったのだ。
上条はもたれかかっていた壁を背にずるずると地面に座り込む。

「ああ、俺なら大丈夫だ。黒狐って人が助けてくれた。
 ……って、それ回復の魔術か何かか? もしそうだったら、
 やめといた方がいい。俺の右手はそういうのも消しちまうらしいからな」

くそぅ、こういう時他の連中なら一発で治るのに……と、慢性的に
襲っている痛みに、内心でそんな事を思いながら答える。
そして、様子が妙だったランカムの事を話そうとするが、その前に
ポップが口を開いた。
>「お前だけは変になってなくて本当よかったぜ。実はよ…」
>ポップは状況を掻い摘んで説明する

「……ランカムさんの様子が妙になったのは、多分紅竜って魔術師が
 フェル達が皆殺しにされたっていう様な台詞を言ったのを聞いてからだ。
 はったりだったみたいだけどな」

話を聞いた上条の表情が険しくなる。状況は思ったよりも深刻な様だ。
だが、二人の居場所が判ったのは僥倖だった。
「わかった、地下王墓だな……っ!」
上条は休憩によって戻った体力で立ち上がり、ポップの後を追い
よろよろと走り出した。

318 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 22:19:04 0
「…聞こえませんか?」」
そういいランカムはどこに向けるでもなく手を出し水平に動かしていく。
「“魔”の声が」
そして急に部屋が震えだす…まるで何かが起きたように振動を始める。

「…な、何をした……」
そう俺が言ったとき、俺の名を呼ぶ声が聞こえる…
それは俺の中に響き渡るようなどこから呼ばれたか分からない
不思議な声だった…
「な、なんなんだ……ぐっ!!」
そして信じられない光景を目の当たりにする…
景色が溶け出し色が消える…捻じ曲がり溶け合い平行感すらなくなる。
思わず俺は地面に手をつく…立ってられない。
そして不意に俺の中に何かが入ってくるのを感じる。

それと同時に封じ込めた過去の記憶の櫃が開けられ
凄まじい流れとなって俺の中にながれてくる…
「ぐうぅッ!!やめろ!!やめろぉぉ!!」
そうだ…俺が殺した父親…母親…俺に関わった人間との記憶が流れてくる。


―父さんなんで僕を殴るの―

俺は小さいころ親父に酷い扱いを受けてきた…
奴隷のように働かされて…理由も分からず血反吐を吐くまで蹴られ殴られる。
飯など毎日は食えはしない…三日も何も口にしない日もあった。
あいつは俺の恐怖そのものだった…

―母さんは僕のことが嫌いなの―

母親だって最低だった…何も言ってはくれず…
むしろ俺に何の関心もなかった……俺が死のうと生きていようと
どうでもよかったんだろう…家族など…信用できない。血のつながりなど脆く儚い。
あの女は俺の中の冷酷そのものだった。

―なんで誰も僕を助けてくれないの…―

他の奴らもそうだ…俺を助けるばかりか一緒になり俺を殴った。
憂さ晴らし、気晴らし…時には何と無しで俺から奪っていく…
他人はすべからく俺の敵だった…こちらを見る人間全員が憎らしかった

―兄さん…僕を助けてよ―

兄だけが頼りだった…しかし俺は兄に劣等感を抱いていた…
そうだ。あいつは俺よりも強いから俺に施しを与えられる。
俺に手を差し伸べられる…俺は兄に助けてもらうたびに心が痛かった…
兄に依存する俺も反吐が出るほど嫌いだった…弱い自分が恨めしかった…

「やめろ!やめてくれッ!!もうこれ以上はやめろぉ!!」



319 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 22:19:51 0
父親が俺をまるでボロ雑巾のように扱い。
母親が俺を路傍の石ころのように見て。
他人が俺を悪魔のような冷たさで見捨て。
兄が俺をまるで自分が聖者だと言わんばかりに助ける。
そのたびに俺は壊れていく…俺の何かが奪われていく…

「だから!俺は強くならなければならなかったんだ!!」

そうだ、誰も俺を壊せないように強くならなければならなかった。
何も奪われないように…だから父親を殺した。殺してやった!!母親も殺した!!
でないと俺はどんどん奪われていく!そうだ、俺に文句を言う奴。
俺を恐怖する奴。俺に取り入ろうとする奴…俺に手を差し出す奴、
俺に優しい言葉を掛ける奴…すべてを壊していった!
俺はただ奪われる側から奪う側に回りたかっただけだ…
無様に死んでいくのは…嫌だった。

だから闘って…闘って。勝つんだ!…勝たなければ俺はどんどん奪われていく…
俺がどんどん壊れていく…勝って勝って勝って勝って勝って勝ち続けるんだ……!
誰も俺を救いはしない…誰も俺のことを本当に想いはしない…だがそれでもいいさ。
俺は勝ち続けてやる!!そうすれば俺は生きられる!

そしていつしか俺は争いの歴史の中に己が魂を見出していった。



320 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/24(日) 22:35:46 0
《失われた過去を取り戻す事はできない》

……構わないさ……俺はそもそも失ってなどいない…
何も持ってなどいないんだからな…俺は1人だ。
そして次の瞬間、俺の前に微笑むリーベルが現れる。
「やめろ…微笑むな……憎め…恨め…
 そうでないと…俺は……そんな顔をするな!」

俺は叫びリーベルを見ないよう横を向く…
すると俺の姿をした影のようなものが俺に歩み寄る。
《どれだけ失った? まだ失う気か? …違うだろう?》
影が差し出す手を払う……俺は失ってなどいない……
そして失うものなど何もない…俺は1人だ……

ふとリーベルの方に目を向けると…そこには地へと倒れ、血を流しているリーベルの姿があった……
「リ、リーベル!!大丈夫か!?」
そしてリーベルに近づいたとき、触れるのをやめた…
「今…俺は何をした……俺が気遣ったのか?俺が……」
今、俺の中に何か分からない気持ちが湧き上がってきていた……

《そんな結末の為に、オレ達は戦ってきた訳じゃない筈だ》

影からその言葉を言われて、更に俺の中で何かが膨らんでいく……
「なんだ…なんなんだこの気持ちは……そうだ……ムーミン大佐との戦いの時…
 あの一般兵を助けたときも…同じような気持ちだった……それだけじゃない…
 ランカムを背負ったときも…わずかに俺は感じていた……」

《我々の“仲間”となるのだ》

「……仲間!!」
その言葉に俺は解き放たれた……この胸に募る使命感。
この世界に来る前は感じなかった感情……そうか……これが……
「そうか…分かったぞ……俺は……」
影の方へと俺は振り向き鋭い正拳突きを食らわす!
影は掻き消え色がなく捻じ曲がった世界は元に戻りリーベルの幻影は消えていく。

「さて…こちらの始末をつけましょう」
ランカムが剣の柄に手をかけまさに抜こうとしたとき。
ランカムの兜に拳が叩き込まれ衝撃が走る……
「ランカム……やっと分かった……お前が人を救うわけが。
 そしてランカム!今お前に指す黒い影を追い払ってやる!!」
ポップと上条も地下王墓へとやってくる。俺は構え後ろも振り向かずに言う。
「おいポップ!覇気が出ない、お前の援護が必要だ。どうやらランカムは何かに操られているようだ!
 上条だったか?お前の能力はあいつを操っている何かを消せそうか?」






321 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 00:04:12 0
>>317
>「ああ、俺なら大丈夫だ。黒狐って人が助けてくれた。
> ……って、それ回復の魔術か何かか? もしそうだったら、
> やめといた方がいい。俺の右手はそういうのも消しちまうらしいからな」
「おっと、そうなのか?なんだ、体にかけるのも駄目なのかよ」
強力な能力は、その強力故に大きな反作用を持ち得る。
跳ね返されたらその脅威が丸ごとこちらを向く極大消滅呪文のことを、何となくポップは思った。

そして状況説明を終えると、上条が言う。
>「……ランカムさんの様子が妙になったのは、多分紅竜って魔術師が
> フェル達が皆殺しにされたっていう様な台詞を言ったのを聞いてからだ。
> はったりだったみたいだけどな」
「へっ、当たり前だぜ。俺達がそう簡単に死んでたまるかってんだ」
ポップはぶっきらぼうに言い捨てる。
「しかし、結局ランカムに何が起きたんだろうな…。何か嫌な感じがする。地下王墓だ、俺達も急ごうぜ!」
走り出したポップは、上条のダメージが回復していない事を思い出した。
「ああそうだったな……よし!」
気合いを入れると、よろよろと走る上条に駆け寄り、彼を強引に背負った。
(ぐおっ!重てえ!)
大魔道士を自称していても、体力は普通の人間と変わらない。
大の男一人を運ぶのは難儀な仕事ではあったが、
「た、体力は少しでも温存しといてくれよ…!いざって時は頼りにしてんだからな、相棒!」
ポップは奮起し、そのまま地下王墓へ走り出す。

322 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 00:08:15 0
>>320
>「おいポップ!覇気が出ない、お前の援護が必要だ。どうやらランカムは何かに操られているようだ!
> 上条だったか?お前の能力はあいつを操っている何かを消せそうか?」
「ぶはっ!ぜぇぜぇ……へへっ」
上条を下ろし、ポップはまた荒く息を吐く。そして嬉しそうに笑った。
フェルが立ち直っている。それどころか、自分達を頼りランカムを元に戻そうとしているのだ。
以前のフェルからは有り得ない言動である。どうやら何か吹っ切れたらしい。

「分かった、任しとけ!いっちょランカムをバシッと正気に戻してやろうぜ!」
ポップは元気一杯に胸を張った。
だが実際のところ、その残された力は僅かであった。
今回の戦いでの度重なる魔法の使用により、回復薬を使ったにも関わらずもう充分な魔力は残っていない。
ダメージは無理矢理治したが、走りっ放しで体力自体は残り少ない。
そして上条にしろフェルにしろ、万全とは程遠い。
特に上条のダメージは気になったが、ランカムをを元に戻すには、効くかは分からないが上条の右手に賭けるしかない。

ポップは懐から、空っぽの試験管を取り出した。さっき飲み干した、黒狐に貰ったMP回復のポーションの入れ物だ。
それを握り締め、ポップは上条と構えたフェルに短く小声で伝える。
「フェル、なんとかランカムの動きを少しだけ止めててくれ。そしたら俺がとっておきの呪文で隙を作る。
あとは上条、お前の右手を頼りにしてるぜ」

323 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 17:46:49 O
>>315
ルミナが顔も上げずに返事し、質問に質問を返したことに、紅竜は不快感を隠そうともしなかった。
軽く思われていると感じたのだ。
だが周囲には大魔王に忠誠を誓う者もいる。
争い事は避けたいと考えた紅竜は、質問に答える事にした。
「おおう。これだから愚昧な一般人は困る。
来たる戦いに備え、我々が結束して敵に当たるために、友好を深めようとしているのではないか。
その上1つや2つ国を支配できるくらいの働きはしておる。
寛大なる大魔王様は、私の仕事を十分に評価してくださるだろう」
一度後ろに倒れたルミナが、立ち上がって睨みつけてくる。
紅竜も負けずに睨み返した。

>「質問に質問を返す真似をして悪かったな…東條ルミナ、探偵…っても意味ねぇか。まぁ魔術師もやってる
 報酬として、あの石を調べる権利と元の世界に戻る権利と…まぁ、あとは金、銀等の金目の物ってとこか
 それと…」
>「これは私のだ…それに、アンタは少しばかり勘違いをしている…私は帰れればどっちでもいいのさ」
無礼を謝ったので、ワインを奪ったのは帳消しにしてやろうと紅竜は考えた。
今の会話でわかったのは、ルミナが探偵であり、目当ては帰還と金品だということ。
それならば仲間に引き込むのは簡単だ。
帰還方法を先に抑え、金で釣ればすぐにでも味方になるだろう。

>「どうもお二人さん。今回の戦ではお二人共随分活躍されたようで…。
 紅竜さんの活躍ぶりは私も拝見させていただきましたよ…。」
いつの間に近くに来ていたのか、赤屍が話しかけてきた。
活躍と言われたのを紅竜は皮肉と受け取る。
「おおう。お前が女に苦労しているうちに、不覚をとったわ」
目的を聞かれている赤屍に毒づいている前で、ルミナは後ろから大剣で貫かれた。

一瞬後には大剣は消えていたが、ルミナの反応も広間の静まりも、目の錯覚ではない事を証明している。
紅竜には見知った現象だった。
ムーミン大佐が本性を表した時、紅竜も同じような幻に苦しめられている。
あいさつもそこそこに紅竜は宴の会場を飛び出す。
ムーミン大佐が本性を表す時とは、シルクハットを取った時。
つまり下僕アンテナを付けている事が知られてしまう時なのだ。

玉座の間に向かった紅竜は、そこから出てきたばかりのムーミン大佐に話しかける。
「おおう!たった今お前の妖気が膨れ上がったように感じたのだが、
もしや敵の召喚戦士が乗り込んできたのではあるまいな!?」
下僕コントローラーを確認するのを見られると怪しまれる。
ムーミン大佐に直接話を聞いて、アンテナが正常に働いているか確かめなければならない。

324 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 21:25:11 O
−−来る。一人? …いや、足音が重い。二人。上条も来たか。
階上から聞こえてきた足音に視線を流した、一瞬後の事だった。

「おあッ!」
不意の衝撃が頭部を襲う。
予想だにしていなかった、フェルからの攻撃。
覇気の込められていない、ただ肉体の力と技のみで放たれた一撃。
だがそれは、強固な意志の込められた一撃だった。
“魔”には何が起こったのか、理解できなかった。

−−“魔”の誘惑を、振り払ったと言うのか。
導き出された、認めがたい結論。
だがそれを証すように、今やフェルの魂は彼の覇気と同じ色…
誇りの蒼い輝きに満たされていた。

更に間の悪い事に、ポップ達までもが王墓に姿を現す。体勢は立て直せていない。
−−どうする。どうすれば騙せる? 錯乱したフェルに突然攻撃されたと偽るか?

都合の良い事に、フェルも先程まで自失状態だった。
口先だけの嘘だろうと、一瞬の迷いが生まれるはずだ。その隙を突く。

口を開きかけた瞬間、フェルが油断無く二人に指示を飛ばす。
−−チッ、先手を打たれたかッ!
またも、予想外の一手。あのフェルが、仲間との連携を試みようとしているのだ。

人質の選択を考えてパラシエルを横目に見るが、フェルが隙を見せない。
変わった。決定的な何かが。
覇気を使えない状態だと言うのに、フェルの醸し出す気迫は鋭さを増している。

「ぐ…」
地上階への出入口には、ポップと上条が構えている。
自ら選んだ王墓の舞台に、逆に追いつめられた形になる。

「…愚かなッ」
立ち向かう三人を見回し、苦々しげに表情を歪め嘲りの言葉を放つ。
「“力”を受けいれ、“魂”を明け渡せば、何も苦しむ事はない」
その口調は穏やかながら、民衆を誑かす扇動者の物だった。

「さあ、“神”に赦しを請うのです。今ならまだ間に合う」
今度こそ剣を抜き払い、“魔”が傲慢にも神を騙り出す。
「私が神の“代理人”としてあなたがたの罪を赦しましょう」
それを開戦の合図とするかのように、天井付近まで、
常人ではあり得ないほどの跳躍を見せる。
“魔”は、肉体の安全装置を外される事で宿主の肉体が損傷する事も厭わない。

反転して天井を蹴り、更に落下の加速を加えた突きが、ポップの頭上に迫る。
死角からの攻撃。当たれば鋼板をも貫くだろう威力を秘めた突きである。

325 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/25(月) 23:09:00 O
>>316>>323>「おおう。お前が女に苦労しているうちに、不覚をとったわ。」
「申し訳ございません。
私の予想を上回る力をお持ちの方だったので…。」
口では謝っているものの、反省の色は全く見えない。
>「ところで、あんたは報酬に何をもらってんだ?アンタのことだから、大魔王との一戦か?」
「クスッ……ルミナさん…。
あまり滅多な事を口にしない方がよろしいと思いますが…。」
ルミナが言葉を発した次の瞬間、とてつもない妖気で広間が満たされた。
人によってはそれだけで死をイメージ出来る程だ。
一瞬、大魔王の仕業かと思うが、どうやら違うらしい。
(将軍クラス…いや、それ以上の力の持ち主ですね…。)
「…ルミナさん?大丈夫ですか?
顔色があまりよろしくない様ですが…。」
赤屍はゆっくりとルミナに近付き、耳元で囁いた。
「今はまだ…その時ではありません。
ですが、時が来たら私が大魔王の首を頂きます…。
この広間に居る方々の首も、いくつか頂く予定です。
欲を言えば…ムーミンさんの首も欲しいところなんですが…。」
ルミナから顔を少し遠ざけ、周りの将軍達の顔を見渡す。
「暫くは大人しくしているつもりですよ。
今回の戦である程度楽しませて頂きましたし…。」

326 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/26(火) 20:36:59 0
>>320,,322
>「おいポップ!覇気が出ない、お前の援護が必要だ。どうやらランカムは何かに操られているようだ!
>上条だったか?お前の能力はあいつを操っている何かを消せそうか?」
>「フェル、なんとかランカムの動きを少しだけ止めててくれ。そしたら俺がとって>おきの呪文で隙を作る。
>あとは上条、お前の右手を頼りにしてるぜ」

ポップに背負われて辿り着いた地下王墓。
歴史の中に没した王達の墓前には、二つの人影があった。
フェル・エクスティムとランカム。
立ちはだかるのは操られているというランカム、立ち塞がるのは意思を持つフェル。
上条達の仲間、少なくとも上条がそう思っている人々。
今のランカムに幻想殺し(イマジンブレーカー)が効くかはわからない。
そもそも、身体能力が一般人程度で、更にダメージの残っている上条では、
攻撃を当てられるかどうかすら怪しい。

だがフェルは言ったのだ。
自分達の力が必要だと。
その力を貸してくれると。

「当たり前だ。俺達の『友達』がつまんねぇ幻想に捕らわれてるって言うなら」

ギリ、と右拳を握り締め、吼える。

「――――その幻想をぶち殺す!!」

上条は地を蹴り、駆け出す。
フェルとポップによって動きを止めてもらったとしても、
拳を当てなければ幻想殺しは発動しない。
故に、上条はランカムにある程度接近する必要があった。
しかし、
>>324
「な!?」
ランカムが、異常な程の跳躍を見せてポップへ向かい跳んだ。
それは人間の限界を超えている動きだ。
一瞬、ポップの方へ向かいたい衝動に見舞われるが、思い留まる。
(最悪、ポップの事はフェルが何とかしてくれる筈だ。
 それに、ポップだって強い。だったら、俺は俺のやるべき事をする!)
上条は走り、ランカムと一定の距離を保つ。

327 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/26(火) 21:02:48 0
>323
玉座の間から出ると、紅竜が駆けつけてきた。
>「おおう!たった今お前の妖気が膨れ上がったように感じたのだが、
>もしや敵の召喚戦士が乗り込んできたのではあるまいな!?」
その事にムーミン大佐は一瞬きょとんとし、クスクスと笑いをこぼした。

「はっはっは、即座に駆けつけるとは。紅竜さんの忠誠心には感服しますぞ。
ちょっとした余興だったのだがね、少々過ぎたようだ。」
いつもと変らぬ様子で紅竜に応える。
変化は見られない。
「心配をかけて申し訳なかった。戻ってパーティーを楽しんでくれたまえ。
私は一仕事ある。
Dr.ジャッカルが骨を追ってくれた分、仕上げ位はしておきたいのでね。」
紅竜の肩をポンポンと叩き、笑いかけるが、目は笑っていなかった。
その瞳は「これから捉えたリーベルを虜にしにいくので下僕アンテナの用意を。」と語っている。
だがその瞳は一瞬。
ムーミン大佐はすっと紅竜の横を通り過ぎ、リーベルの捕らわれている部屋に向かう。

途中、食事を運ぶ兵士を見つけ、その運搬を代わる。
赤屍の要望を察してか、豪華の食事がカートに乗せられている。
よく冷やしたワインまで入っている気の使いように小さく口笛を吹いてしまった。
豪華な食事とともに、リーベルの部屋へとムーミン大佐は近づいていく。

328 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/02/26(火) 22:25:00 0
>>322>>324
「分かった、任しとけ!いっちょランカムをバシッと正気に戻してやろうぜ!」
その言葉に微笑で返す…お互いに疲れ果てている。
上条に限っては動くことも辛いような状態であり…俺も覇気が使えない。
…だが不思議だ……今までここまで俺の何かを動かすような闘いはなかった
「フェル、なんとかランカムの動きを少しだけ止めててくれ。そしたら俺がとっておきの呪文で隙を作る。」
「…任せろ。俺が何とかしてみせる!」
今一度拳をしっかりと握る…二度と砕けぬように……強く…堅く!
そしてランカムも剣を抜く……そうだ。今は俺しか止められん。
ポップと上条の二人とランカムの間に体を入れ続けなければ……

「私が神の“代理人”としてあなたがたの罪を赦しましょう」
速い!ランカムはここまで速く跳躍などできなかったはず!!
確かにあいつの剣の腕前は買うが基礎としての体力や運動能力は高いにしても…
そこは人間…しかし今目の前のランカムの動きは…覇気などで強化していないというのに
…やはりこいつは……ランカムではない!!

そしてランカムの突きがポップの頭上へと迫る!
俺は考えるよりも先に動き、ポップを突き飛ばしていた。
「ぐうぅッ!!あがぁぁッ!!!」
ランカムの剣が俺の胸を貫く……覇気など出していない体は
用意に刃を通し脈動するように血が溢れ出す……これでもなんとか頭上の直撃は避けれた。
「ラ…ランカム……お前は神の心などを騙って人を裁くような奴ではないはずだ…!!」
俺は自分を貫いている剣を抜かずに逆にランカムとの距離をつめる。
剣は更に俺を貫き激痛が走る……しかし俺はここで引く訳にはいかない!!
「お前は少し前に俺に闘う方法を…教えてほしいと言ったな……」
更に距離をつめる…すでにランカムの剣の柄部分まで俺は自分の体を押し込んでいた…
「きっと、お前は…力がほしかったんだろう。だが…お前は気付いていなかった!!」
そして俺はランカムの肩を強く掴む。おそらく今ここで剣を横になぎ払われたら俺は真っ二つ…
だが!たとえこの剣が俺の胴体を切り裂いてもこの腕だけは離すわけにはいかない…!!
「お前はすでに俺には持ち得ない力を持っていた!!
 そして…それを俺に教えてくれたッ!!お前は弱くなどない!!」
その瞬間、わずかにランカムの動きが止まり、剣に込められた力が緩んだ。
「ぐっ……ポップ!!今のうちにさっきいった…取っておきをやってみろぉ!!」

329 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/26(火) 23:25:43 0
>309-310>327
>「私を楽しませてくれたお礼、ただ、それだけです。」
ただそれだけの理由でここまでするとは……
赤屍という男の事を多少は理解したつもりだったが、その予想を
はるかに超えていたようだ。内心呆れてしまったがそれを顔には出さず
純粋に心遣いに対して礼を言う。
「そうですか……感謝します。」
頭を下げると、ジャラリと鎖が耳障りな音を立てた。

>「どうぞ、好きなだけ食べて下さい。その篭に入っている果物も置いて行きますので…。
> …正直、貴女の言う通り私にとっては嬉しい限りですよ。
> 貴女以上の手練と戦える機会なんてあまりありませんので…。」
自分など大した手練ではないのだが、先の死闘の際に超えた限界など
とっくに超えて一つ先或いは二つ先の限界も既に超えた、化け物と形容する以外に
言葉で表せないような強者達と戦った事も何度かあるようだ。
それでいて今目に前にいる……今更ながら自分の見立てが余りにも都合よく
下方修正を掛けていた事を思い知らされる。
「……そうですか。あなたには、他に楽しみと言えるものはないのでしょうか……?」
そこまで突き抜けた存在との開港は初めてなリーベルにはとても興味深い事柄である。
答えが得られるとは思ってない、ただつい思いついた事を口に出してしまうだけだ。

>「食事については定期的に持って来るように伝えておきます…。
> 味はあまり良くないと思いますが、ご了承下さい。
> それでは、私はそろそろ失礼します…。」
先ほどの言葉の意味を勘違いしたのか、定期的に食事を持ってこさせると約束して
赤屍は退室した。真面目なのか天然なのか、掴み所のない赤屍はリーベルの好奇心を
大いに擽る存在だった。絶望的な状況下にも拘らず、笑い声が漏れる。
「クスクス……おかしい人ですね。
 でも……困りましたね。あのままでは果物は食べられないわ……。」
一頻り笑った後で問題に気づいた。今の自分には
皮付きの果物に齧り付くだけの顎の力もなく、皮を剥く刃物もなく、
歩く為の腱は切られたまま、篭の置いてあるテーブルまではどうしても歩かないといけない。
……数分考えて存外あっさりと諦めた。無理なものは無理!
「……そう言えば、赤屍さんは運び屋を営んでいる……
 そして、彼の望みは強者との戦い…………」
数分考えて、リーベルの頭の中で一つの案が浮かび上がり骨格が出来上がった。
同時に浮かび上がる問題点を念入りに潰して肉付けをしていく。
期待は出来ないが何事も駄目元、分の悪い賭けだが試してみる価値はある、と
結論付けた。その為には……もう一度赤屍に会わなければならない。
この稚拙な企みは、前提として赤屍がいなければ始まりもしないのだから。

>豪華な食事とともに、リーベルの部屋へとムーミン大佐は近づいていく。
そんな企みを考えているとは露知らず、ムーミン大佐が部屋へと近づいてくる。
幸いにして、聴覚だけは聊かの損害も受けていなかったようで、廊下に響く靴音から
その足音の主がムーミン大佐のものだと瞬時に気づいた。一番厄介な相手が
このタイミングで……いや、大佐の性格や言動を考慮するとむしろ遅すぎるぐらいだ。
気付かれる訳にはいかないと、平静を装う事にする。同時に、力を取り戻せていないか
精神を集中させるが……やはり駄目。赤屍の毒は抜けている筈、ならばやはり
肉体と精神の状態が平時にも届いていないからか……

330 名前:大魔道士ポップ ◆bTJ1y4hkoY [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 00:11:39 0
>>324
>「さあ、“神”に赦しを請うのです。今ならまだ間に合う」
>「私が神の“代理人”としてあなたがたの罪を赦しましょう」
ランカムが言い終えた途端、その姿が消えた。
「なっ?」
いや、消えたかと思うほどに速かったのだ。
気付いた時には、ランカムは天井を蹴りポップの頭上から剣を突き立てんと迫っているところだった。
(死っ……)
速すぎて思考すら追いつかない。しかし剣が当たるより先に横から衝撃が走った。
その衝撃に弾かれ、ポップは床を転がって壁にぶつかった。
「あつっ!」

>>328
>「ぐうぅッ!!あがぁぁッ!!!」
一瞬目を回しかけたポップだが、耳に入った絶叫に気を持ち顔を上げる。
そこにあったのは、さっきまで自分がいた位置で、ランカムの刃に胸を貫かれたフェルの姿だった。
「フェ、フェル!そんな、嘘だろ!?何やってんだよ!!」
目の前の全ての光景が、ポップには信じられなかった。
あのフェルが、自分を庇って凶刃を受けるなんて。いや、それどころではない。
あれは致命傷ではないだろうか?
しかしフェルは怯むこともなく、ランカムの正義の心に訴えかけながら、逆に前進して行くではないか。
自らの体が両断されかねないというのに、それすら厭わず。
ポップの両目から大粒の涙がこぼれる。

「ちくしょう、ちくしょお!俺のばっきゃろーっ!!」
ポップは天を仰いで絶叫し、それから決死にも似た表情で場を見据えた。
フェルが命を賭して守ってくれた勝機、決して無駄にはできない。
>「ぐっ……ポップ!!今のうちにさっきいった…取っておきをやってみろぉ!!」
「まかせろ!フェル、お前は絶対に死なせねえからな!」
握り締めていた試験管を、ポップはランカムの足元に思い切り投げつけた。
試験管は派手に割れ、エーテルを僅かに含んだその破片がランカムの周囲に散らばる。

「とっときだ、くらいやがれ!破邪呪文(マホカトール)!」
詠唱と共に、エーテルを含んだガラス片のうち5つが光輝き、五芒星の頂点となって魔方陣を描いた。

マホカトール。それは魔方陣の内側の悪しき力を打ち消し、外側からの侵入も拒む破邪の呪文である。
ただしそれは絶対効果ではなく、強い魔の力の前ではその影響を軽減するだけで終わったり、
さらに強大な魔の前ではあまり効果のない場合もある。動きを止めるほど効くかどうかは一種の賭けだ。
しかし、フェルの魂の声にランカムの正義の心が揺さぶられているのなら。
破邪の呪文は、ランカムの魂が魔の力を押し返す助けとしてより強力な効果を発揮することだろう。
「上条−っ!今だああっ!」

331 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/27(水) 20:35:34 O
魂の奥。ランカムは闇の底に居た。
−−ここは…一体、どこなんだ…?
そうだ。自分は仲間の安否を確かめる為に、城へ向かっていたはずだ。

−−暗くて…よく…わからない…。
手足の感覚が無い。立っているのか、座っているのかすら解らない。
これが、地獄と言う物なのだろうか。

−−…そこにいるのは、フェル……?
ふと、懐かしい気配を感じる。彼といたのは、今では酷く昔のような気がする。

−−待ってください……身体が、思うように動かないんです。
感覚の無い手を、動かそうとする。その手に肉を裂く感触が伝わってくる。
−−フェルッ!!!

現実世界、剣がポップを庇ったフェルの胸を深く貫いていた。
「無駄な事を…。愚かな“ランカム”は死にました」
だが、本来ならそのまま心臓を貫いていただろう刺突は、微かに狙いを逸れていた。
“魔”が、その小さな違和感に気付く事は無い。

「弱い人間だから“神”にすがる。人は、支配される事を望んでいるのですよ」
ランカムの肉体を借りた“魔”が、ランカムを侮辱する。
「ゴミクズのような人生しか歩まないような輩に、“救済”など必要ない」
なおも呼びかけるフェルを嘲笑うように、語調を荒げる。
「必要なのは“選別”ですよ。共通の“価値観”、剃刀の刃一枚入る隙もない完璧な“法”…」

「…我々が愚かな人間に、“神”を与えてやろうと言うのです」
だがフェルは、ランカムへの呼びかけをやめない。
自分の身を犠牲にして、なおも前進しようとする。
「お、おやめなさいッ!」
魂を根底から揺るがされるような気迫に、“魔”がたじろぐ。

フェルがランカムの肩を掴む。その手から、熱い思いが伝わってくる。
「…我々が責められる理由は、何もないッ!」
それを振り払うように、腕に渾身の力を込めようとした。
このままあと数センチ手を動かせば、フェルの心臓を貫き、フェルの命は失われる。

だが、その手が動かない。まるでそれ以上動く事を、手が拒んでいるようだった。
足下で砕けた試験管が、魔法陣を描き出す。
「……フェ…ル…」
その一瞬後、マホカトールの閃光が玄室を光に染めあげた。
《何故だッ! 何故お前たちは戦える? 人間とは、脆弱な存在ではなかったか!》
狼狽と怒りに錯乱した意識が、拡散を始める。

“魔”がランカムの魂と拮抗し、一時的に主を失った全身が、石のように硬直する。

332 名前:上条当麻 ◆dMCq11hv6U [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 01:34:18 0
>>328
ランカムが槍を突き出す。
空気を穿つ人外の速度と膂力。それを用いて放たれた一撃は、
銀の軌跡としてポップへ襲い掛かり――――しかし、彼を貫く事は無かった。

>「ぐうぅッ!!あがぁぁッ!!!」
「フェル!!?」
ランカムの放つ槍が貫いた先、そこにいた人物はフェルだった。
彼はポップを庇い、自らの体でその凶刃を受けたのだ。

フェルは槍に貫かれながら、夥しい量の血を流しながら、
その命を削りながら、それでも前に進んでいく。
一歩、また一歩。ランカムの心へ呼びかけながら。

おそらくは仲間として 友として
フェル・エクスティムはランカムへ進む。

>>330
>「とっときだ、くらいやがれ!破邪呪文(マホカトール)!」
フェルが作り出した好機、それ無駄にしない為に、
ポップが涙を流しながら魔術を放った。
ガラス片が散り、五芒星がランカムを包み込む。

>「上条−っ!今だああっ!」
そのポップの咆哮、それを起点に上条はランカムへ向かい疾走した。
未だに全身は痛む、怪我をした脇腹が無理に動き回ったせいで熱い。
だが、フェルとポップが作り出してくれたこのチャンス、
絶対に逃してはいけない。
待つしかない状態の中、強く噛み締めた下唇からは、血が流れていた。

駆ける。上条がこのままランカムに接近しても迎撃されるだけだっただろう。
だが、フェルとポップ、彼らの意思が、ランカムの動きを止めてくれていた。
だから、出来る。

>>331
>《何故だッ! 何故お前たちは戦える? 人間とは、脆弱な存在ではなかったか!》

「うるせぇ、引っ込んでろ最弱!ここにいる全員が、
 ランカムって人間を大切に思ってんだ!だから――――」

上条は硬直したランカム懐へ潜り込む。その距離は零になり

「とっとと、目ェ覚ましやがれえぇェェ――――ッッ!!!!!」

咆哮と共に、幻想を殺す拳が放たれた。

333 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 16:48:59 O
>>327
>「はっはっは、即座に駆けつけるとは。紅竜さんの忠誠心には感服しますぞ。
>ちょっとした余興だったのだがね、少々過ぎたようだ。」
「おおう。やはり余興だったのか。
知っていたが、念には念を入れようと思ってな。ふははははははは!」
笑いながら紅竜が見る限り、ムーミン大佐に変わりは無いようだった。
これから赤屍絡みの一仕事をする、と言って紅竜の肩を叩く仕草にも。
だがその目を見て、紅竜もムーミン大佐の意図を知る。
悪の天才として悪巧みにも自信があるのだ。
「では私はパーティー会場に戻るとするかな。
せっかくの宴は楽しまんといかん」

ムーミン大佐と別れ、紅竜は自室に戻った。
部屋の中には、この世界に飛ばされてから新しく開発した機材や器具が、所狭しと並べられている。
真ん中の巨大な水槽の中では、データ解析中のストロングポチ3号が静かに眠っていた。
紅竜が魔法石を元に開発した人工知能は、ポチが普通の大トカゲである事を水晶球に表示している。
「おおう‥‥ドラゴンを触るだけでトカゲに変える能力か‥‥
天才である私が手に入れる価値のある力よ」
上条の持つ幻想殺しの力を解明する作業は、まだ始まったばかりなのだ。

人工知能に別の指示を与えた紅竜は、下僕アンテナを持って再びパーティー会場に戻った。
「おおう。そろそろお前たちも退屈してきたのではないか?
今から赤屍が捕まえてきたリーベルとやらを尋問しに行くのだが、見に来てはどうだ?」
会場にいる赤屍とルミナに話しかける。
自分の作ったアイテムの効果を見せて、自慢したかったのだ。

334 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 19:53:49 O
「………」
今まで何度か修羅場はくぐったことはあったが、こんな悪寒を感じることはなかった。
赤屍との初対面時の比では無い。考える余裕すらない。
軽度のパニックに陥っているルミナに赤屍が耳打つ

赤屍の目的を聞いた後、ルミナは一呼吸すると、直ぐ様立ち上がり、近くにあったアルコール度数が高そうな酒を一気に飲み干す。
「……うぇあ…ゴフゴフ……そうか…できりゃそのリストに載ってないことを祈るよ…ところで、奴……紅竜に何か感じなかったか?」冷静になった所で、赤屍にそう訪ねる。
「探偵の勘っつーかなんつーか、何となくだが、奴は嘘をついている筈だ
 証拠は今のところ全くねぇがな…あぁそれとな」

「…いややめとく、ちょっとばかし飲み過ぎてな。部屋で寝てるよ」
姿を現した紅竜の誘いを蹴り、ルミナ若干よろけながら宴会場を後にした。

335 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 21:33:39 0
>329
*コンコン*
リーベルの捕らわれている部屋のドアからノックの音が響く。
そしてドアは、返事を待つ事無く開かれた。
ドアの向こうにいるのは、豪華な食事ののったカートを押すムーミン大佐。
「やあ、リーベル。」
にこやかに声をかけ、親しげに呼び捨てで呼ばれると、かつてのことを思い出すだろう。

以前リーベルはムーミン大佐とは気を許す関係だった。
勿論それはムーミン大佐の策略であり、芝居の上で踊らされての事。
つい口を滑らせた以降、追われる日々を送る事になる。

リーベルにとっては苦い思い出だろうが、ムーミン大佐はまるで気にしていないようだ。
「君の力は戦力面より、戦略・戦術面でこそ生きるものだ。
なのにDrジャッカルとまともに戦うのだから、君にしては随分と無謀な事をしたものだ。」
肩を竦めながら差し出される一粒の種。
二人の間に種についての説明は要らなかった。
ドライアードの種。
体内に入り、回復の力を振るうのだ。
「安心したまえ。小細工はしない。
折角五体満足でいるのだ。できれば同僚となりたいのでね。」
二人っきりで部屋の中。
たとえリーベルの魔力と体力が回復しても、魔力封じの鎖がある。

種を渡すと、ムーミン大佐はワインを抜き匂いをかぎ、「うむ、上物だ。」と満足気に二つのグラスに注いでいく。
「こうやって落ち着いて話すのはどれくらいぶりだろうかね。
再開に乾杯しようじゃないか。」
そして、グラスをリーベルに差し出すのであった。

336 名前:聖印騎士ランカム ◆llczit4Tmc [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 22:55:54 O
上条の拳が、王墓に音高く響いた。全身が熱くなる。
その一撃に込められた思いは、魂までも届くようだった。

ランカムは再び、魂の世界にいた。

−−私は…何を見ているのだ?
“魔”が消え去る、最後の瞬間。
その時になって、ランカムに秘められた力が発現したのだ。

次元を越えて垣間見た光景は、自分がいた世界の事だった。
「やはり、団長は亡くなられたのですね」
どこか納得したように、寂しげに笑う。予感していた通りだった。

もし、この戦いが終わって元の世界に帰ったとしても、
敬愛する騎士団長は、もうこの世にはいないのだ。

後ろを振り返る。
闇が広がっている。そこに、騎士団長がいた。
…理想を持ち、騎士団中の尊敬を集める人だった。
若くして騎士団の一部隊長となった直属の上司がいた。
…神経質だが、仲間を思いやる人だった。
気のいい仲間がいた。自分と同期の騎士。
…士官学校の頃から、共に夢を語り合った。
「“魔”よ−−」

彼らはもう、この世にはいない。
ここには居られない。帰らねばならない。
今、守りたい“仲間”がいるのだ。
そして今度は振り返らずに、光に歩き出す。
「−−去れ」
光が溢れた。

霧状の“魔”が、ランカムの身体から飛び去ってゆく。
それと同時に、全身の力が抜ける。

「上条…殿……ポップ殿……………フェルッ!!」
自分も倒れそうになりながら、慌ててフェルを支える。
「すみません……皆さん…すみません…」
涙で言葉が続かない。

応急にフェルを止血しながら、仲間達の状態を考える。
ポップは今日一日で、相当の魔力を使っていたはずだ。
上条にしても、その疲労は並大抵ではないだろう。

そこで、黒狐の姿を思い浮かべる。
−−正式に仲間に加わって貰えるよう、頼もう。
治癒の力を扱える彼女の存在は大きい。

一方、上条は魔法では治療できない。
−−リーベルの残した霊薬は、幾つあっただろうか。

次に目についたのが、パラシエルだった。
何事も無かったかのように、寝息を立てている。
−−そう言えば、彼の鷲にも治癒能力があったな。
その鷲が、宝玉を胃袋に収めているとは、その時思いもよらなかったが。

急に、城の外が騒がしくなる。勝鬨をあげているのだ。
…勝ったのだ。徐々に、その実感が沸き上がってきた。

337 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 23:30:38 O
>>334>「……うぇあ…ゴフゴフ……そうか…できりゃそのリストに載ってないことを祈るよ…ところで、奴……紅竜に何か感じなかったか?」
「ご心配無く…今のところルミナさんの首を頂く気はありませんので。
…紅竜さん…ですか?いえ、私は特に。」
>「探偵の勘っつーかなんつーか、何となくだが、奴は嘘をついている筈だ
 証拠は今のところ全くねぇがな…あぁそれとな」
「……私は別に構いませんよ…。
彼が私の邪魔さえしなければ、何を企んでいようが関係ありません。
私の妨害にならない限り彼に必要以上に干渉する気もありません。」

>333会話をしている赤屍とルミナに紅竜がリーベルの尋問に付き添わないかと誘ってくる。
ルミナは飲み過ぎた為部屋で寝てると断った。
「……お付き合いましょう。このまま此処に居ても退屈ですしね。」

338 名前:リーベル ◆fbsB0QAAho [sage] 投稿日:2008/02/28(木) 23:52:00 0
>335
>「やあ、リーベル。」
果たして、ノックへの返事を待たずに開かれたドアの向こうには
リーベルの耳が捉えた足音の主、ムーミン大佐がいた。
その気安い調子で名を呼ばれるのはいつ以来だったか……
若さゆえの過ち、そう過去の自分を断じたリーベルはもうその件は
気にしていないつもりだったのだが……改めて古傷を抉られると
顔にこそ出なかったがやはり不快だった。

>「君の力は戦力面より、戦略・戦術面でこそ生きるものだ。
> なのにDrジャッカルとまともに戦うのだから、君にしては随分と無謀な事をしたものだ。」
「そうね、誰かさんと違って小細工の通用する相手ばかり選ばなかったもの。」
かつての様ににこやかに、気安い調子で返答するが言葉の端々に刺々しさが見え隠れする。
発せられた言葉は、大佐への皮肉とも自身への自嘲とも取れる内容だった。

>「安心したまえ。小細工はしない。
> 折角五体満足でいるのだ。できれば同僚となりたいのでね。」
「その言葉を信じろと?私に人の親切を疑うように仕込んだのはあなたでしょう?
 前にも言った筈よ……お断りだって。人を騙す事に何の迷いも呵責も感じない、
 あなたの様な者とは、特にね。」
力がない上に鎖が重いために種を突っ返す事は出来なかったが、
改めて魔王軍に下る意思がない事を表明する。大魔王の目的は依然として知れない、
しかし目の前の存在はその奥底に凶悪な本性を眠らせている。
もし知識を渡してしまえば、それは必ず全ての世界に災いを撒き散らす。
自分のミスでそんな事になるのは耐えられないし、折れてしまったら
自分を信じてくれた全ての仲間への冒涜に繋がるのだ。
孤独な戦いを続けていたリーベルにとって、この世界で出会った仲間達は
何よりも大切なもの。そして恐れるのは死ではなく、憎悪或いは侮蔑からの別離なのだ……

>「こうやって落ち着いて話すのはどれくらいぶりだろうかね。
> 再会に乾杯しようじゃないか。」
ジャラリ、とわざと耳障りな音を鳴らせて肩をすくめる。
「ええ、ぜひとも乾杯したいわ。
 ……この状態で出来ればの話だけれどね。」
赤屍も同じケアレスミスを犯しているのだが、対応と感情には雲泥の差があった。
もっとも、赤屍はその事に気づく前に出て行ってしまったが。

339 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/03/01(土) 08:20:25 0
> リーベル


空気嫁

340 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/03/01(土) 09:10:01 O
空気嫁とまでは言わないけど中の人のミスをまんまキャラのミスにしてしまうのは気遣いが欠けてる
キャラらしからぬミスはフォローしてあげる優しさがほしかった
リーベルも自分の立場なら中の人のミスをいちいち突っ突かれるのは気分がよくないだろうに

341 名前:黒狐 ◆lXU3SERRZI [sage] 投稿日:2008/03/01(土) 14:19:05 0
閃光の走りぬけた地下王墓の入り口で、黒狐は立ち尽くしていた。
味方しかいない筈の場所なのにほぼ全員満身創痍。
何かトラブルがあったのは間違いないが・・・。

「もう少し早めに来るべきでしたか・・・。」
そう言いながら一人一人の傷口を検分する。
「仕方ないですね、これを使うと多少疲れますが。」

黒狐が胸元のペンダントに手をかざすと、漆黒のペンダントから蒼い光が溢れ出す。
その光はまるで霞のようにその場にいる召喚戦士達を包み込む。

「《ガイア》よ、この場に立つもの全てに等しく恩恵を与えたまえ。
 ・・・・・・《ネルガル》、《イドゥン》。」
蒼い光は奔流となってその場に立つもの全ての傷を癒してゆく。
ただ、上条のみがその光をはじいているのだが。

やがて、蒼の光が収まる頃には上条を除く全員の傷、そして魔力が回復していた。
「回復はさせましたが、傷を負った自分の精神までは回復しませんから
 とりあえず今日は皆さん安静にすることですね。神の加護も万能ではありませんし。」
さらに黒狐はよっこらしょ、と何もない空間からデイパックを取り出した。
中には以前ポップにも渡した試験管のようなものがぎっちりと詰め込まれている。

「上条さんは魔法が効かないようですので、ちょっと沁みますけど我慢してくださいね。」
そうまくしたてて座り込むと、上条が抵抗するより早く頭を膝の上に乗せて全身の傷口に
試験管の中身を浴びせてゆく。傷口が白煙をあげてふさがってゆくが、かなり沁みるのだった。

342 名前:紅竜 ◆DuEaAnn9RQ [sage] 投稿日:2008/03/01(土) 16:04:37 O
>>334>>337
>「…いややめとく、ちょっとばかし飲み過ぎてな。部屋で寝てるよ」
>「……お付き合いましょう。このまま此処に居ても退屈ですしね。」
紅竜の誘いにルミナは部屋で寝ていることを選び、赤屍は付いてくる事を選ぶ。
説得工作は1人ずつばらばらに行う方が効果的なのだから、これは紅竜にとっても嬉しいことだ。

「赤屍よ。召喚戦士たちの戦い、お前も楽しめているようだな。
だがもうすぐ強敵との戦いも我らの勝利に終わる。
優秀なる悪の陣営の定めとはいえ、辛いものよ」
リーベルの捕らわれている部屋に向かう途中、紅竜は赤屍に話しかける。
赤屍が強敵との戦いを願っている事はわかっていた。
一度は大魔王に戦いを挑もうとしたほどの男が、戦いの終了を受け入れられるのか?
そんなはずはないと紅竜には思える。
目の前に戦いを置いてやれば、ある程度この危険な男を制御できるはずだ。

「ところで、じつは私はこの後、さらなる強敵と戦う予定があるのだ。
もしお前がよければ、その強敵との戦いに加わって欲しいと思ったのだが‥‥
もしその気があるのなら、ぜひDr.ジャッカルの力を私に貸してもらいたい。どうだ?」
話ながら紅竜は、手元の盗聴監視装置をのぞき込む。
緑色の光は、魔法や誰かによる盗聴が一切無いことを示していた。
それでも念のため、大魔王という言葉は出さないようにしているのだが。

343 名前:ムーミン大佐 ◆PAPA28Te9k [sage] 投稿日:2008/03/01(土) 21:36:35 0
>338
あくまでも反抗的な態度のリーベルにムーミン大佐は小さく息をつき肩を竦める。
「やれやれ、随分と嫌われてしまったね。
もっと早くご機嫌伺いにこればよかったかな?
私も宮仕えの身でね、色々仕事があったのだよ。」
リーベルの言葉の糸をを知りながら話をはぐらかす様に冗談を交えて応える。
だが、それでもリーベルの態度は変わらない。
ワイングラスを二つ片手に持ちながら、リーベルのすぐ前まで歩み寄る。

「鎖が重い?種を飲めば力はすぐに戻るのだが、飲まないのかね?
何なら・・・口移しで飲ませてやろうか!?」
最初は穏やかに語っているが、徐々に言葉は強く、凶暴性が滲み出てくる。
リーベルの顎を掴み強引に上を向かせる。
が・・・すぐに手を離し三歩離れる。
「・・・ふっ・・・やめておこう。私とてまだ殺されたくないのでね。」
身震いをするムーミン大佐の考える事はやはり妻の事だった。
下手な事をして後で知れれば命は無いのだから。

小さく息をつき、呼吸を落ちつかせると、また元の笑顔でリーベルに語りかける。
「まあいいさ。すぐに気が変わるだろう。
ぜひとも君とはご同輩になりたいので、ね。」
そう、焦る事は無いのだ。
もうすぐ来る紅竜に任せればいい。
ムーミン大佐はその到着を待ち、グラスを傾ける。

344 名前:アヨガン国の様子 ◆svDXdcR9Gw [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 02:18:29 0
王家の墓で争いをしていると聞きつけた兵士達が集まってきた。
召喚戦士同士の争いを、何とも言いがたい表情で見ている者も居る。
「まったく、行く先の不安なことだ。
 現状、大魔王軍では内輪揉めをしている様子も無いというのに、こちらが仲間割れをおこしてどうする?
 ただでさえ兵力で劣るのに、これでは付け込む隙まで与えかねん」
鎧も戦場で大いに目立つ立派な鎧を着込んだ男はそのような発言をした。
彼は数名の従者を引き連れている。将軍だと思われる。
「国王がお呼びだ。食事と寝る場所を用意するが故、是非にとのことだ」
将軍らしき男は短くそういい残して、踵を返した。
態度から察するに、どうも召喚戦士に良い印象を持っていない人物のようではある。
しかし、国王自身からは高く評価されているようだ。

召喚戦士達が食事等を済ませた後に通された会議室は、驚くほど質素なものだった。
よほど近しい人物としか話し合いをしないのだろうか?
「古の兵法家は言う」
国王は突然、そのように話を切り出した。
「戦えるときに戦え。それが駄目なら守れるうちに守れ。
 守れぬようなら逃げられるうちに逃げ、それでも駄目なら降伏せよと。
 その後、降伏もできぬ輩は死ね、と続く訳だが……」
王は椅子から立ち上がり、言葉を続ける。
宝玉を奪われたことを知ってなお、その瞳の奥の闘志は、いささかも失われていない。
「戦力的に見て、われわれはまだ戦うことができるが、もはや守ることはできない。
 『封魔の宝玉』が敵の手に落ちた以上、戦略的に守る価値があるものは無い。
 無論、戦う力を持たぬ民を守らねばならぬのは、言うまでも無いがな」

「申し上げます」
初老の家臣が提言した。
「敵に奪われた宝玉は、パラシエルが用意したダミーかと」
そう言って取り出したのは綺麗な丸い玉。
それは間違いなくあの封魔の宝玉に相違なかった。
「むむむ。だが、向こうもすぐに気付くだろう。
 あのとき奪われたものが本物であれば、こちらがなんとしても宝玉を奪いに来ると考えて、罠を仕掛ける迎え撃つだろうが……
 だが、どちらにしても、これ以上、無闇に防衛戦を続けて兵を疲弊させるのは、得策ではない。
 攻めに回らなければ魔王は倒せぬ。事態が解決しない。
 私はそう思うが、お前たちはどう思う?」
国王は召喚戦士たちに意見を求めた。

345 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 02:47:21 O
自室へと戻る最中、ルミナは考えに耽っていた。
その足取りは先ほどの千鳥足が嘘だったかのようにしっかりとしている。
その通り、あの千鳥足はあの場から消える為の演技で、まだルミナはそこまで酔っていなかったのだ。
「………」
ルミナの魔術はこの世界の魔法よりも優れている点もあるがそれ以上に劣っている点も多い。
例えば、空間移動ならば、この世界の魔法使い、またはそれに近い魔法使いならば、どんなに離れた場所でも直ぐに行けるが
ルミナの場合、半径100m無いぐらいの範囲内の何処かに移動出来る程度が限界
始点、終点を確定させれば場所に関してなら融通は聞くかもしれないが
空間移動でそこまで苦労するのだから、平行世界への移動なんて無理難題もいいところだ。
石を調べればどうにかなると思ったが、それも大きな壁にぶつかって困っている。
そんな折りに、捕虜になった召喚魔法に詳しいリーベルの存在は貴重である。
予定ならば、今頃、目の前で話をしているつもりだったがそうもいかない。

警戒している人間の前で、そんな話をしてみろ。後悔するに決まっている。
紅竜の誘いを蹴ったのはそういう理由があったからだ。

346 名前:東條ルミナ ◆Yw2bVAsGtA [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 10:13:42 O
「……だが、このままじゃ」
帰る為のヒントが奪われるのは必至だ。
だからこそ、こうして策を練っているのだが中々いい案が思い付かない。
いっそ、紅竜は謀反を〜と魔王にいうか?
いや、こんな一言でどうにかなるなら、探偵という仕事がどんなに楽か。
とにかく、目立った証拠が無い限り密告は不可能。
「………そうか…待たなくてもいいのか」
何か思い付いたのか、ルミナは周囲を見回し、人気の無いことを確認すると詠唱を始める。
「………"サーフェイス・オフ"発動」
詠唱を終えると、ルミナの姿がボヤけるように消え、紅竜の姿が露になる。
一目見た相手に一定時間変身する魔術を使いルミナは紅竜に化けたのだ。
「…さてと、忙しくなるな」
軽く準備運動をしたあと、来た道を叫びながら走る。慌てているようにしなければ誤魔化せることは出来ない。

「大変だぁぁ!」
宴会場の扉を勢いよく開ける。
呆気にとられる兵士を見回した後、近くにいる兵士に向かって
「おいッ貴様!さっきここに私が来なかったか?
 愚か者!それは敵の召喚戦士だ!先ほどの異変で何もないと思ったか!敵は私の姿でこの城の中にいる」

347 名前:キキ ◆xpIzi22gbg [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 11:11:19 O
「貴様らは先ほど逃げた私を追え!私は大魔王様の元へ行く!」
そう言い残し、宴会場を後にし、直ぐ様人気の無い場所に隠れる。
「"解除"」
紅竜の姿を解き、ルミナの姿に戻り、物陰から兵士が来るのを待つ。
「…さて、鬼ごっこの始まりだ。」
追ってきた兵士に魔弾を撃ち込み、紅竜の姿に変える。
いつの間にか追われているなんて本人らは奇妙な気分だろう。
「………さてと…行くか」
タバコを一服し、リーベルの部屋に向かった。

348 名前:赤屍 ◆jdLx9J.tuQ [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 20:34:30 O
>>342リーベルの部屋に向かう途中、紅竜が赤屍に話かける。
>「赤屍よ。召喚戦士たちの戦い、お前も楽しめているようだな。(中略)
優秀なる悪の陣営の定めとはいえ、辛いものよ」
「ええ、召喚戦士の方々には大変楽しませてもらってます。」
>「ところで、じつは私はこの後、さらなる強敵と戦う予定があるのだ。(中略)
どうだ?」
この発言を聞いた赤屍は一旦立ち止まり、紅竜の顔を黙って凝視する。
数秒凝視した後、口を開いた。
「考えておきましょう。」
そう一言だけ返すと足早にリーベルの部屋に向かった。

ドアをノックし、扉を開ける。
「失礼します。何度もすみません…おや?貴方まで来ているとは、予想外でした。」
部屋にはムーミンとリーベルの姿があった。

そして部屋に入るなり、紅竜に疑問を投げかけた。
「ところで、紅竜さんは彼女に何の用事があって来たんですか?」

349 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 21:45:19 0
>>330->>333
「まかせろ!フェル、お前は絶対に死なせねえからな!」
「ぐっ……ふふ…俺もまだ死ぬ気などない……!!」
俺はニヤリと笑う…そうだ、まだ死ぬ気などない。
ここからだ…ランカムを救ってから俺の新しい闘いが始まる!まだ死ぬわけにはいかない!

「……フェ…ル…」
ポップが試験管を投げた時ランカムが俺の名を呼ぶ……
「ランカム!闘え!お前の中の暗き闇に打ち勝て!!」
そして魔方陣ができあがり閃光が一帯を包む。
聖なる光りとランカムの意思が魔を抑え俺を貫く剣が止まり…ランカムの動きが止まる!
「とっとと、目ェ覚ましやがれえぇェェ――――ッッ!!!!!」
そして上条のその手がランカムへと放たれる!

光りが収まっていきランカムの体から霧のようなものが抜け出る。
そしてランカムの腕から剣が離れる……
「上条…殿……ポップ殿……………フェルッ!!」
倒れ掛かる俺を正気に戻ったランカムが支える。
「やれやれ……やっと本来のお前に戻ったようだな。」
涙を流すランカムを見て若干溜息混じりに俺は言う…
だが心の中では感謝していた……俺を導いてくれたお前を……俺に新しい道をくれた俺を。

「ランカム……お前は」
ランカムに言いかけた時外から大きい声がいくつも上がる……どうやら兵達が
勝利の雄たけびをあげているようだ…丁度よかったので俺は歓喜の声をバックにランカムに続ける。
「見ろ…外の奴らを。ここもあいつらも…俺達が守ったんだ。聞け…奴らの声を…
 お前が、お前が全身全霊をかけてここを守ったんだ…お前は弱くなんかない。
 お前が弱いわけがない!」
勝利の実感を感じ嬉しそうなランカムに俺は力強く言い放つ。
「しかし…それにしても全員満身創痍だな。」



350 名前:フェル・エクスティム ◆apHxuANXac [sage] 投稿日:2008/03/02(日) 21:46:08 0
>>341
「もう少し早めに来るべきでしたか・・・。」
声がし振り向くとそこには知らない女が立っている。
だれかと聞こうとも思ったが…他の奴らが何も言わないところを見ると
面識があるのかもしれないし…攻撃してくる様子もなく一人一人の傷を見ていく。
「仕方ないですね、これを使うと多少疲れますが。」
そういい女はペンダントをかざし呪文のようなことを言い始める。
するとみるみるうちに俺の傷が塞がっていく…体力も回復している。
上条1人を除いてだが……どうやらあいつはそういう能力全てを拒絶する能力を持っているらしい。
だからランカムを戻せたし最初の魔王の攻撃も防げたというわけだ。

「上条さんは魔法が効かないようですので、ちょっと沁みますけど我慢してくださいね。」
そういい上条に女は傷に薬を浴びせていく。かなり沁みるようで上条は叫び声をあげる。
「情けない!男ならそのぐらいの痛みは我慢しろ!」

>>344
そんなやり取りをしていると外から兵士達が集まってくる。
どうやらこの騒ぎに対して集まってきたようだ。
「まったく、行く先の不安なことだ。
 現状、大魔王軍では内輪揉めをしている様子も無いというのに、こちらが仲間割れをおこしてどうする?
 ただでさえ兵力で劣るのに、これでは付け込む隙まで与えかねん」
兵士の中からかなり大柄の男が現れる。どうやら歴戦の兵士のようだ。
動きに無駄がなく顔の表情からしてかなりの実力者だということは見て取れる。

「国王がお呼びだ。食事と寝る場所を用意するが故、是非にとのことだ」
男はぶっきらぼうにそう言い放ち去っていく。
俺も久しぶりに腹が減ったために宝物庫を出て行った。

飯が終わったあと俺達は話し合いのために部屋に案内された。
俺は壁に背中をつけ国王の話を聞く……
どうやらこれ以上防戦に徹していてはジリ貧になり負けるということだ。
確かにその意見には俺は賛同する。おそらく宝玉があろうとなかろうと負ける。
兵士1人の質も数も圧倒的に俺らが不利だからだ…宝玉があっても魔王まで辿り着けなかったら意味がない!!

「攻めに回らなければ魔王は倒せぬ。事態が解決しない。
 私はそう思うが、お前たちはどう思う?」
国王の問いに真っ先に俺が答えた。
「俺もその意見に賛成だ。頭を打たなければ闘いなど終わらない。
 それに、俺はどっちにしろ守りというのはあまり向いていない…
 今まで俺は獣の牙のように敵を倒すことしか知らなかった男だ……」
そう。俺はランカムのように守るのは向いていない。
俺の手はすでに血で染められているんだ…確かに俺はランカムを救いはしたが。
過去は絶対に消せない…俺はすでにどうしようもないぐらい汚れている…だからこそ、
俺はいまここで…新しい誓いを立てるために国王の前に行き後ろを振り向く。
そこには家臣…将軍達…そして集いし仲間達が見える。そして…俺はできる限りの大声で全員に聞こえるように叫ぶ!
「俺は……魔王を倒しにいく!この闇の世界に光りを点すために……俺は牙なき者のための牙になるとここで誓おう!!!」
そう…弱き者を守るための盾にはなれないならば俺は弱き者が闘うための剣になる!!

【版権あり】召喚戦士達の戦い【TRPG】

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