1 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/19(日) 21:59:14 0
人類が、地球という一つの星から、その生存圏を宇宙全体へと広げてより数百年が経過した。
しかし、どれだけの時が経とうと、人類のやることは今も昔も変わらない。
銀河暦707年、とある領土争いから端を発した小国同士の小競り合いが、徐々に大国同士が介入する総力戦へと発展。
後に「第一次銀河大戦」と呼ばれる、50年もの間この宇宙全体を巻き込んだ人類史上最悪の戦争の結末は、
四つの国と、およそ2400億の人命を失わせることで決着がついた。
しかしそれから200年後の銀河暦911年、200年前の国々に代わって宇宙を二分していた二つの巨大国家は、
再び人類に泥沼の惨劇を繰り返させた。時は銀河暦931年──戦争は未だ果てしなく続いている。

@オリジナルキャラのみのTRP形式で進行していきます。絡んだ相手を待たせるのは三日までにしましょう。
A参加可能な国家はフィール帝国、ロゼアン連合の二つです。
B階級は二等兵〜准将(帝国側では准将の位がないため少将)まで。それ以上の階級では戦闘に参加できません。
C軍艦(戦艦、巡洋艦、駆逐艦、航空母艦など)、二足歩行兵器コンバット・ウォーカー(5m〜10m)
  などの兵器が登場します。核兵器などの大量殺戮兵器は使えませんが、ミサイル、ビーム兵器は使えます。
D参加志願者はプロフィールを、搭乗兵器の紹介が必要な方はそちらもお願いします。

(キャラ)
名前:
階級:
役職:
性別:
年齢:
身長:
体重:
容姿:
出身惑星:
人物紹介:

(兵器)
名前:
全長:
武装:
兵器紹介:

2 名前:レオニード・アレフティナ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/19(日) 22:01:14 0
名前:レオニード・アレフティナ
階級:中佐
役職:フィール帝国宇宙軍所属・アレフティナ独立艦隊司令
性別:女
年齢:27歳
身長:175cm
体重:59kg
性格:容姿の割りには口が悪く勝気に見えるが、実は気は弱い方。
容姿:青い瞳に背中を覆い隠すほどのロングの金髪。周りが羨むほど端麗な顔立ちをしている。胸はそこそこ。
出身惑星:帝国領ナーム星系第四惑星カチン
人物紹介:帝国の平民出身。兄弟には一人の兄と一人の姉がおり、アレフティナは次女。
       元々軍人志望ではなかったのだが、貧しい家系を救うために高給を得られる士官となることを志し
       士官学校に入学する。というのは建前で、実は家系につけ込んだ貴族に買われることを嫌い、
       軍隊に入ることで彼らの手の届かない場所に逃げたかったというのが本音である。
       六年前の中尉時代、エズン星の敵基地攻略に部隊の小隊長として参加。
       敵基地司令を捕らえるなど結果的にだが勝利の立役者と評価されて昇進。
       二年前の「エルフリーデの戦い」では、首脳部を失い壊走寸前の艦隊を当時少佐の身ながら
       司令官代理を務め、見事逆転勝利をもたらした英雄として昇進を果たしたこともある。
       帝国ではアレフティナを「勝利の女神」として宣伝。英雄として一躍有名となる。
       ……が、そうやって騒ぐ周りとは裏腹に、本人は至って冷めている。
       本人曰く、「エズンやエルフリーデでの武勲は全て偶然」であり、また自身を「凡才」と評している。
       事実、エズンやエルフリーデは偶然が重なって得たタナボタ勝利であるのだが、それを知る者は少ない。

名前:クラスナーエ
全長:700m
武装:高出力三連装ビーム砲、単装ビーム砲、対空砲、前部・後部ミサイルなど
兵器紹介:アレフティナ独立艦隊の旗艦。10年ほど前に帝国によって造られた標準型戦艦。
       ただし10年の間に改修・改造され、攻撃力、防御力、移動能力は旗艦級戦艦のそれと比べても遜色はない。
       突出した能力こそないが、程よくバランスが取れており非常に扱いやすくなっている。
       艦全体が赤く塗装されており、長い間眺めていると目が疲れるのが欠点か。
       アレフティナの搭乗艦となったのはつい最近のことである。

3 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/19(日) 22:08:40 0
名前間違えてました……orz
こっちが正しいプロフィール

名前:アレフティナ・レオーノフ
階級:中佐
役職:フィール帝国宇宙軍所属・アレフティナ独立艦隊司令
性別:女
年齢:27歳
身長:175cm
体重:59kg
性格:容姿の割りには口が悪く勝気に見えるが、実は気は弱い方。
容姿:青い瞳に背中を覆い隠すほどのロングの金髪。周りが羨むほど端麗な顔立ちをしている。胸はそこそこ。
出身惑星:帝国領ナーム星系第四惑星カチン
人物紹介:帝国の平民出身。兄弟には一人の兄と一人の姉がおり、アレフティナは次女。
       元々軍人志望ではなかったのだが、貧しい家系を救うために高給を得られる士官となることを志し
       士官学校に入学する。というのは建前で、実は家系につけ込んだ貴族に買われることを嫌い、
       軍隊に入ることで彼らの手の届かない場所に逃げたかったというのが本音である。
       六年前の中尉時代、エズン星の敵基地攻略に部隊の小隊長として参加。
       敵基地司令を捕らえるなど結果的にだが勝利の立役者と評価されて昇進。
       二年前の「エルフリーデの戦い」では、首脳部を失い壊走寸前の艦隊を当時少佐の身ながら
       司令官代理を務め、見事逆転勝利をもたらした英雄として昇進を果たしたこともある。
       帝国ではアレフティナを「勝利の女神」として宣伝。英雄として一躍有名となる。
       ……が、そうやって騒ぐ周りとは裏腹に、本人は至って冷めている。
       本人曰く、「エズンやエルフリーデでの武勲は全て偶然」であり、また自身を「凡才」と評している。
       事実、エズンやエルフリーデは偶然が重なって得たタナボタ勝利であるのだが、それを知る者は少ない。

名前:クラスナーエ
全長:700m
武装:高出力三連装ビーム砲、単装ビーム砲、対空砲、前部・後部ミサイルなど
兵器紹介:アレフティナ独立艦隊の旗艦。10年ほど前に帝国によって造られた標準型戦艦。
       ただし10年の間に改修・改造され、攻撃力、防御力、移動能力は旗艦級戦艦のそれと比べても遜色はない。
       突出した能力こそないが、程よくバランスが取れており非常に扱いやすくなっている。
       艦全体が赤く塗装されており、長い間眺めていると目が疲れるのが欠点か。
       アレフティナの搭乗艦となったのはつい最近のことである。

4 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [age] 投稿日:2008/10/19(日) 22:51:34 0
──艦橋の司令席の背もたれに寄りかかり、手を天井に向けながらぐっと背伸びをする。
硬直していた背骨が小気味のいい音を立てて鳴り、なんとも言えぬ快感が文字通り背中を駆け巡る。
気持ちよさのあまり、私は思わず声を漏らしてしまう。

「……っ!」
「お疲れでしたら、しばらく艦長室でお休みになっては如何ですか?」

私の隣で、私に直立不動の姿勢でそう勧めるのは戦艦クラスナーエの艦長であるセドリック少佐だ。
今年で30歳になったばかりだという、軍ではまだ若手の部類に入る将来の幹部候補だ。
身長190cmの長身で少しやせ気味、そして短髪で三枚目な顔をしているが、
年下の私にも礼儀正しいし事務処理能力に長けていて、面倒な業務は率先して行ってくれる。
だから私の副官も兼任してもらっている。何かと頼りになる男だ。

「目的地到着までの時間は?」
「およそ一時間ほどです」
「なら、大人しくここで待つさ」

私は司令席に置かれた既に冷め切った紅茶をすすった後、大きく溜め息をついて目を閉じた。
私達の目的地──そこは激戦区アミューズ星系。そこの惑星ホンに敵が大規模な基地を建設する為、
大量の物資が運び込まれるという。私はその輸送船団を殲滅するという任務を帯びて、
こうして小規模な艦隊を率いて遠路はるばる向かっているというわけだ。
けど、あまり気乗りはしない。英雄だ女神だなんだと騒いでいる連中が聞いたら意外に聞こえるかも
しれないけど、元々私は戦いには向いていないのだ。
私は安全な後方勤務を望んでいたのだけれど、戦場で二度も運に命を救われたことが、皮肉にも
私の寿命を縮める結果になるとはね。軍は私の意志など気にもせず激戦区に回すだけなんだもの。

たまに、あのまま家にいて軍に入らなければと思わないこともないけど、
カラダ目当ての貴族に売られるなんてまっぴらごめんという気持ちは今も変わっていない。
女だからほとんど戦場に立つことはないとを頭に入れて、
辺境の惑星でのほほんと紅茶でもすすって暮らせればと計算したのに、上手くいかないものね。

「艦隊司令……かぁ……」
「は?」
「うん……なんでもない……」
「はぁ……」

つい最近まで一艦隊に所属する巡洋艦艦長でしかなった私が、艦隊司令という肩書きをもらったのは
二週間ほど前のことだ。他の人達は栄転とか言ってたけど、あの時の落胆ぶりといったらなかった。

5 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/19(日) 22:52:54 0
──二週間前、帝都星ホルニー──

「『──なお、艦隊をアレフティナ独立艦隊と呼称することを許可する』……これは?」
「読んでの通りだよ。君には新設の艦隊司令の任に就いてもらう。できるね?」

私の前で席に腰を下ろし、私の体を嘗め回すようにジロジロと見つめる、
この二重アゴで頭髪の薄さが目立つメタボな老年男性は、軍の人事部長だ。
人柄は良いとの噂なのだが、目つきが少々いやらしいのは女として不快感を禁じえない。

「ですが……艦隊司令といえば本来将官が就くものなのでは?」
「だからこそ、分艦隊より更に小規模な分艦隊の司令の椅子を用意したのだよ?」
「……」

通常、帝国では中将から上級大将の高級将校が軍艦1000隻、兵員20万人という規模で一個艦隊を形成する。
それより階級が下の少将で軍艦100隻、兵員2万人あまりという小規模な艦隊、すなわち分艦隊と呼称される
艦隊を指揮する身となる。私に用意された指揮権というのは、その分艦隊の更に半分の軍艦50隻、
それも駆逐艦が全体の5割を占める、兵員7000人ほどの規模のものだった。
しかし極度に偏ったこの艦隊編成では、精々敵に嫌がらせを与えるだけのものだ。

「正々堂々と戦って勝利する女神には不本意かも知れんが、まぁ工作要因とでも思ってくれたまえ。
 戦場での君の素早い動きは上層部でも高く評価されているんだよ」
「……あの、後方への転属という話は……?」
「後方勤務を希望する者は多くてね。悪いが貴族階級の者達が優先されるんだ。平民出の君ではねぇ」

この国では貴族階級と言われる人種が特権を握っている。
戦争が長引いて人材不足になりつつある昨今では貴族出身の軍人も一兵隊として前線に赴くことは
珍しくなくなったが、政治的にも強力な権限を持つ大貴族の息子達は、未だに優先的に後方勤務に
就くのだという。給料だけもらって安全に暮らす……あんたらこれ以上楽してお金集めてどうするのよ?

「君の活躍しだいでは昇進と共に増員させ、列記とした分艦隊の司令とすることも考えているのだ。
 君専用の旗艦も与えられることだし、そう悪くはない話だと思うがね? んん?」

人事部長は顔をぐっと近づけてくる。私は落胆した様子をおくびにも出さずに、静かに命令を受け入れた。

「……謹んで拝命いたします」

6 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/19(日) 22:55:48 0
──いつの間にか眠っていたのだろうか、私はセドリック少佐に起こされ目を開けた。

「"提督"、そろそろ目標のポイントに到達します」
「え? あぁ、そうかい。……それよりさ、"提督"ってのやめとくれよ。背中の辺りがむずかゆくなるさ」
「いずれ慣れると思いますよ」

艦橋に設置されたメインモニターを見ると、小さな小惑星群が映っていた。
事前に得た情報ではこの小惑星群の横を敵の輸送船団が通過するということだった。
私達はこの小惑星群に身を潜めて、悠然と通過する敵の横っ腹を突く、という作戦を執る。
だが戦いとなれば、敵も恐らく護衛船団を送っているだろうから、恐らくこちらも無傷では済まないだろう。

「コンバット・ウォーカー(以降、CWと呼称)を出しておいて。旗艦の護衛はさせなくていいから、
 全戦力を全て攻撃に向けるように」
「了解しました」

私の命令を聞いた通信士は早々と各艦に命令を伝え始めた。
そして各艦が準備を整え終わった頃──レーダーが複数の艦影を捕らえた。
咄嗟にオペレーターが声を張り上げる。

「レーダーに反応! 艦数、およそ200! その内半数は護衛艦かと思われます!」
「まだまだ、敵をもう少し引き付ける! そんで一斉攻撃、手はずはわかってるだろうね?」

静まり返った艦内──。身を潜めた小惑星の前を敵艦が悠然と通過していく。
敵の数は倍……か。奇襲で減らしても、恐らく半数以上は残るだろう。
本当の戦いはその後になる……かな。あ〜、心臓がさっきから高鳴りっぱなしじゃない!
私って意外と気が弱いのよね……だからリーダー役ってのは嫌いなのよ。

色々と愚痴りながらも、敵船団は調度中心を我々に曝け出す所まで来ていた。
──今だ!

「全艦、エンジン再始動!! 主砲斉射ーーーッ!! 撃ェーーーッ!!」

こうして、小規模ながらも両将の命をかけた戦いが始まった。

(とりあえず戦いを始めました。あまり硬く考えず気軽に参加してください)

7 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/19(日) 23:06:48 0
ふと思ったんだけど、銀河英雄伝説みたいなノリにしたいんだったら中将クラスが参加できないと話が成り立たないんじゃ…

8 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/19(日) 23:13:44 0
>>7
過去スレ確認したら前にも似たようなスレは沢山あったようですが
高級将校が絡むと戦術的にも政治的にも難解な話になるケースが多かったので
ここでは敢えて外すことで行動を限定することにしました。

9 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/19(日) 23:19:41 0
メインキャラで将官の使用は控えてちょんまげ、
あんまり難解な話もやめて
政治的な話もやめて

くらいでいいのでは?
やっぱり将官でてこないと戦闘そのものが成り立たない場合あるし

10 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/19(日) 23:28:28 0
>>9
戦闘には参加できないとあるだけで、キャラとしての参加は可能です。
またNPCで登場させることも制限を設けてありませんので可能です。
お偉方には戦地を決めて前線に兵士(キャラ)を送り込むようなネタ振りの役割を期待しています。

駄目ですかね?

11 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/19(日) 23:40:20 0
ダメとは思わんが、たまには将官クラスが艦隊率いてドカドカやってくるってのもいいと思う
頻発されるとわけわけめーになるから多少なりとも制約はいるだろうけど

12 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/20(月) 00:08:33 0
>>11
戦闘可能の上限を100隻単位を指揮する准将、少将レベルまでにしたのも
キャラは戦局を左右しないような規模の戦闘が基本とした方がよいかも
と考えたのもあります。

ただその意見も一理あるとは思うので、まだルール改正の余地はあるでしょう。
混乱させることのないような制約をつけた妙案があれば随時受け付けます。

13 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/10/20(月) 00:39:05 O
中将以上はメインにできないというのは
ある意味じゃ目の付け所がいいからいいと思う
無能な指揮官の下で生き抜く二等兵物語なんか面白そうだ

14 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/20(月) 18:50:35 O
階級が国によって微妙に違うのか
違う部分を知りたいな

15 名前: ◆ojH9XuT2Sg [age] 投稿日:2008/10/20(月) 19:46:47 O
(規制に巻き込まれたので携帯から失礼します)

>>14
実はあまり深く考えてませんw
二等、一等、上等、兵長、伍長、軍曹、曹長、准尉、少尉、中尉、大尉、少佐、中佐、大佐
まではどちらも変わらず、基本は将官だけに違いがあると考えてますが
ただ戦時階級でこの中にない階級を使うというのもネタ的にありだと思うので
そこら辺は自由にします

16 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/20(月) 21:56:56 0
帝国の将官以上については

准将 少将 中将 大将 上級大将 元帥 大元帥

ってことでよくね?

ロゼアン連合って今で言う国連みたいなもんでしょ?
国ごとで色々と違うってことでいいんじゃね?

17 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/20(月) 22:05:28 0
コンバット・ウォーカーは、ガンダムで言うモビルスーツの事?

18 名前: ◆ojH9XuT2Sg [] 投稿日:2008/10/20(月) 22:27:29 O
>>16
元帥はともかく、将官の階級は四つが限度ではないかなと
上だけが階級の数で膨れ上がるのも不自然ですし

国連の発展型というか
複数の国家統合体とイメージしてますね
国ごとに様々としてしまうと後々に混乱をきたさないとも限らないので
できる限り統一しておきたいと考えます

>>17
そうですね。
大きさから言えばボトムズのATに近いかもしれませんが

19 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/20(月) 22:44:35 0
上級大将は戦時階級みたいなもんだとすればよくね?
権限は大将と殆ど変わらんぐらいにしておくとか

貴族用にちょっと箔がついた階級が欲しかった、あるいは
元帥ほど功績は立ててないけどちょっと功績立てた大将へのご褒美的な意味で

20 名前: ◆ojH9XuT2Sg [age] 投稿日:2008/10/20(月) 23:00:42 O
>>19
帝国側に准将を採用しなかったのは連合との区別化をはかった意味でもあったのですが、
なるほど、上級大将は貴族用の階級とするのは面白いですね。
それなら区別化の意味でも階級数の意味でも准将を入れて不自然ではなくなる。
ご意見ありがとうございます。これからそうさせてもらいましょう。

21 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/10/21(火) 16:49:18 O
惑星だけじゃなくコロニーとかありそうだな

22 名前: ◆ojH9XuT2Sg [定期age] 投稿日:2008/10/21(火) 22:05:15 O
>>21
そうしてどんどん世界観膨らませてくれると有り難い。

23 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/21(火) 22:40:19 0
膨らませるのはいいが、膨らませすぎに注意。
纏めは追いついているのかな?
流に加わっていない人も一目でわかるようなまとめが無いと、混乱するよ。
入りにくくなるしね。
世界観を作るスレじゃなくて、その世界観で話を作っていくスレでしょ?
本末転倒にならないように頑張れ。

24 名前: ◆ojH9XuT2Sg [age] 投稿日:2008/10/21(火) 23:01:46 O
>>23
現在までの流れなら一読すれば理解していただけるでしょうから
纏めは>>1にもっと大幅な変更と追加がされた時に機を見て投下するつもりです

25 名前:オカダ少将[] 投稿日:2008/10/24(金) 16:23:03 O
壊滅?そらそうよ

26 名前:名無しになりきれ[Sage] 投稿日:2008/10/24(金) 23:40:09 O
なぜどん様がここにw

27 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/25(土) 01:40:39 0
技術仕官とかやりたいのは有りですか?

28 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/25(土) 05:22:43 0
名前:ヴァイス=パピア=フォン=ゼカルテ
階級:ロゼアン連合所属ノルド共和国軍中佐
役職:機動巡洋艦ブラオ・メーア艦長
性別:男
年齢:25
身長:184
体重:79
性格:よく言えば豪胆。、悪く言えばふてぶてしい。頭痛持ちで機嫌が悪いことが多い。毒舌家。
容姿:深緑の頭髪に、彫りの深いキリっとした顔立ち。黙って大人しくしていれば美形と言えなくも無い。
出身惑星:帝国領ゼクスト星系第二惑星マオアー第五衛星ビオロゲン
人物紹介:もともと帝国の下級貴族の家に生まれたが、家が困窮していたことや、
       貴族に求められる典礼や芸術に興味を抱けないという理由で軍人になった。
       CWのエースパイロットとして勇名を轟かせ、同期の中でも出世頭と呼ばれる。
       「エルフリーデの戦い」では中隊長として奮戦。アレフティナの勝利に貢献した。
       その後、上流貴族縁故の部下の軍記違反を、法に照らして厳格に処分したことで逆恨みされ、
       謀反の罪を着せられそうになった為に家族をつれてノルド共和国へと亡命。
       その亡命経緯から「独裁政治に対する正義の抵抗者」として祭り上げられる。
       彼自身としては不本意な”英雄としての名声”を付与されてオカダ少将の下へ配属された。

名前:ブラオ・メーア
全長:580M
武装:二連装高出力ビーム砲、ミサイル発射口、対CW排撃機関砲、CW格納庫
兵器紹介:”軽巡よりも早くて身軽、重巡よりも硬さと火力を持った船”をコンセプトに建造された帝国軍艦。
        その性能は近年の巡洋艦クラスでは太刀打ちできないレベルにある。
        その青く冷めるような船体は、見る者を引き込むような輝きを放つ。
        ヴァイスが亡命の際に持ち出し、以後は彼の乗艦となっている。

29 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/25(土) 05:24:09 0
>>25-26
オカダ少将、ロゼアン連合軍はもとより、帝国軍でもその名を知らぬ者はいないだろう。

若い頃は勇猛果敢な名うてのエースパイロットとして、
提督に就任してからは老練さと堅実さを持った用兵家としてその手腕を振るっている。
オカダは極めて幸運な人物でもあり、天性の才覚と合わせて輝かしい戦歴を築いてきた。

しかし、彼がここまで来るには決して平坦な道ではなかった。

連合軍は戦争初期の「ゲオルギウス戦役」惨敗の反省から標準規格の統合が進み、
多国籍軍としてではなく、単一国家の軍としての運用が効くような体制を目指していた。
階級呼称の統一、ありとあらゆる兵器の汎用性、互換性の向上、協力体制の確立──
自然、他国の幕僚同士が顔を合わす機会も増えるのだが、その中で彼は他国の参謀とよくイザコザを起こした。
彼が功績の割りに昇進が遅い最大の理由がそこにあったと言っていいだろう。

今回ようやく中将昇進の辞令を受け、惑星ホンに向かう最中であり、
輸送船には要塞建設の資材と、彼が新たに率いることになる駐留艦隊の為の物資が積み込まれていた。

年を重ねても彼は自身の強運を疑っていなかった。だが運命の女神は遂に彼にそっぽを向く。
旗艦ティーゲル・ヘレで制御システムにトラブルが発生。
推進、索敵、防御、通信…必要と求められるおおよその機能を停止させてしまったのである。
旗艦のトラブルによって船団が混乱をきたし始めたまさにその瞬間、
まるで横殴りの雨のように降り注いだ光の矢が羊の群れを蹂躙した。

いかなるものであれ、頭がその役目を果たせなければ無意味である。
輸送船も護衛艦も、濁流に飲み込まれるがごとく光の彼方に消えうせていった。

「壊滅?そらそうよ」

老提督は旗艦の特等席で自嘲気味に呟くしかなかった。
最悪のタイミングで敵の一斉射を受け半数近い艦船を失ったのだ。
ティーゲル・ヘレもシステムエラーの影響でバリアを発動できず大損害を蒙っており、
一度旗艦に回った火が艦艇そのものを焼き尽くすまでに長い時間はかからなかった。

こうして、連合軍は一人の名将を不幸な偶然によって失う羽目になったのである。

30 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/25(土) 05:25:09 0
元々この小惑星郡は海賊の横行する危険区域であり、オカダ少将もそのことは良く承知している。
その為主要な巡洋艦はバリアを張りながら索敵に神経を尖らせていた。
結果、旗艦は不運なトラブルにより失われても、その代わりとなりうる軍艦が複数残されていた。
ヴァイス中佐が艦長を勤める機動巡洋艦ブラオ・メーアもその一つである。

「敵影発見!7時の方角です!」

けたたましく警報が鳴り響くメインブリッジにその男は鎮座していた。
表情が険しいのは、彼自身が常に悩まされている頭痛によるものである。
旗艦ティーゲル・ヘレの轟沈が確認された時、その頭痛はいっそう増していた。

「艦長、如何なさいますか?」
「チッ…如何も糞も無かろう。旗艦が吹っ飛んで幕僚チームの大半はデブリの仲間入りだ」

副官の問いかけに不機嫌さを隠さずに応じると、すぐさま残存船団に向けて通信を行うように命じた。
マイクを手に取ると、極めて明朗闊達な声で語りかける。

「諸君、私はブラオ・メーアの艦長ヴァイス=パピア=フォン=ゼカルテ中佐である。
 ご存知の通り旗艦は失われた。司令官不在につき、私が臨時に指揮を取る」

その口上は、緊急事態に行うものとしては非常にふてぶてしい響きがあった。
彼が生来持ち合わせている気質がそうさせるのであろう。
クルーの目から見ても憎らしいほど落ち着いていた。

31 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/25(土) 05:26:50 0
「敵は海賊ではなく帝国軍の艦隊である。我が方は敵の攻撃により著しい損害を蒙った。
 敵戦力を考慮しても我々が勝利しうる可能性は極めて低い。
 よって敵の追撃を振り切るべくこの宙域を離脱せねばならない!」

ここで一呼吸置くと、不意に苦笑いを浮かべて

「残った物資を安全に惑星ホンに送り届ける為に、護衛艦はこれに追随し死守せよ。
 そしてやや酷な言い方だが、 巡洋艦連中は本艦と共にここで盾となってその撤退を補佐しろ。
 身重のマダム達が窮地を脱するまで逃げることは許さん」

受話器からいったん手を離すと、皮肉めいた笑みを浮かべたままクルーに語りかける。

「なんとも因果な商売じゃないか。えぇ?」
「敵、第一波来ます!」

スクリーン上のレーダー表示に敵のCW隊が接近する様子が映し出される。

「全速回頭、こちらも一斉射だ。しかる後にCW隊を発進させろ…3、2、1…てぇっ!」

先ほどのお返しだとばかりに巡洋艦郡の主砲が火を噴いた。

32 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/25(土) 12:41:29 0
>>27
ありだと思うよ。

33 名前: ◆ojH9XuT2Sg [age] 投稿日:2008/10/25(土) 16:57:14 O
>>27
ありです。

34 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/25(土) 17:14:30 0
傭兵とか学徒動員は?

35 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/25(土) 17:20:23 0
ありじゃね?
是非参加してくれ

36 名前: ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/25(土) 18:29:18 O
>>34
いいと思いますよ。

37 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/26(日) 00:54:09 O
艦隊付きの作戦参謀とかは?

38 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/26(日) 00:57:01 0
おkじゃね?
つか参加する気があるなら事後承諾でいいからサクっとやってくれい

39 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/26(日) 16:37:13 0
現時点で参加人数がたった二人だけとは
面白そうだとおもって期待したんだけどねえ

40 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/26(日) 18:14:00 0
>>29-31
強烈な光を発しながらその身を四散させていく敵艦隊──。
これは、アレフティナ艦隊の主砲が文字通り敵の脇腹に命中した証である。
しかし当然全滅とまではいかない。アレフティナの予想通りやはり半数近くは残っていた。

「敵輸送船団及び護衛船団のおよそ半数ほどは消滅しましたが、敵の護衛艦隊の一部が急速回頭!!
 反撃、来ます!!」

オペレーターの声と共に、再び無数の破壊光が戦闘宙域に線を描いた。
同時に一秒と経たずして、煙を巻き上げながらアレフティナ艦艇の艦艇が数隻単位で爆散しいく。
光は旗艦クラスナーエにも襲い掛かったが、艦橋ギリギリのところでかすめるだけで大事には至っていなかった。
艦橋に被弾していたら間違いなくあの世行きだっただろう。
アレフティナの表情にこそ動揺の影はないが、彼女の内心は冷や汗ものの一瞬に違いなかった。
いくらシールドが効いているとはいえ、主砲を至近距離でくらえばひとたまりもないからだ。
彼女は一つ深呼吸をして落ち着かせる。すると、そのタイミングを見計らったかのようにセドリック少佐が口を開いた。

「回頭したのは火力の強い巡洋艦ですな。恐らく身を呈して我々の足止めを計るつもりでしょう。
 古い言い方をすれば"殿"というやつですな」
「全く、人間など命あってのものだろうに……。死んでから勲章を手に入れて何になるのかねぇ」

このように冷めた物言いをするのは、軍人である前に、女であるせいなのか。
この台詞を軍の上層部が聞いたら顔をしかめることは間違いないだろう。
表情こそ変えずに彼女の傍らに立つセドリック少佐でさえ、内心はどう思っていることやら。

「……離脱をはかる輸送船団及びそれに追従する護衛艦隊は首尾よく予定のルートを進行しています。
 放っておいても、この小惑星郡を抜ける頃には更に半数以下に減らされていることでしょうが……
 作戦を完遂する為、敵の"殿"を突破し、輸送船団の背後から殲滅に移るべきではないでしょうか?
 "殿"を務める艦隊は数も多くありませんので、火砲を集中させ突撃すれば容易に突破できると思われますが」

状況を一見したセドリック少佐のこの進言は恐らく正しいものであっただろう。
敵の護衛艦隊は初めの攻撃でアレフティナ艦隊とほぼ同数に打ち減らされていた。
しかもその艦隊を更に分けた上で"殿"を務めさせているのだ。既に数の上で勝敗は決している。
しかし、彼女は意外な言葉を口にした。

41 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/26(日) 18:15:24 0
「ん〜……いや、追い詰められた敵は必死だよ。無理に猪突すればこちらの損害も軽視できないものになる。
 それに……」

普段の態度とは裏腹な、彼女の消極的な言葉に副官さえ意外な顔をする。
と、その時、離脱をはかる輸送船団の一隻が、突如として爆発を起こし、沈んでいった。
爆発の様子が艦橋のメインモニターに映し出された時、誰もがあの宙域に差し掛かった
のだと思っただろう。

「敵も自分達が進む小惑星郡の中に紛れて、大量の機雷が敷設されてるとは思ってないだろうからねぇ。
 逃げる敵を撃破するのはあれに任せるさ」

事前に得た情報から、敵の進路ルートを想定して予め仕掛けておいた機雷。
それに触れて、一隻、二隻……と、次々と敵艦が爆沈していく様をモニターが生々しく伝えていた。
それを見て、アレフティナが次の指示を出した。

「CW部隊を下がらせな! 後退後、全軍の一斉射を敵"殿"に浴びせつつ、この宙域から撤退するよ!」
「CW部隊後退! 全砲門、発射準備整いました!」

オペレーターの報告を聞くと同時に、
天井に向けて上がったアレフティナの右腕が床へむけて振りぬかれた。
発射の合図を受け取った各艦は、再び強烈な破壊光を敵艦へ向けて発射した。

42 名前:卍帝国[] 投稿日:2008/10/26(日) 20:10:11 O


43 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/26(日) 20:38:54 0
>>40-41
雷光のような号令にもとに連合軍は反撃を開始した。
巡洋艦から生み出された火線が、吸い込まれるように敵艦隊に向かう。

「敵艦隊に着弾を確認!」
「ん、各艦にWC隊を発進させ…」

言いかけたところで、新たな難事が船団に襲い掛かる。
小惑星郡を縫うようにして抜けようとした輸送艦ペリカンが轟沈したのである。

「敵に先回りされたか?」
「いえ違います…これは!」

後方の様子を映し出したディスプレイ上に無数の接触感知型の機雷が犇いていた。
その光景にヴァイスの頭痛も頂点に達しようとしていた。泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目。
これらの諺にも表されているように、悪い時には悪いことが重なるものである。

「輸送艦及び護衛艦、一旦後退せよ!機雷の巻き添えを食うぞ!」

無論、命令が艦隊全体に伝わるまでには若干の時間を要するのは言うまでもない。
その間に数隻の輸送艦がスペースデブリへと姿を変えてしまった。。

ヴァイスは思案する。機雷の可能性を考えていなかった訳ではない。
だが、その為にはあらかじめこの宙域を選定して機雷を設置しなければならず、
工作船無しだと思いのほか長い時間を要してしまうのだ。

見たところ敵に工作船が大量動員されている形跡も無い。
その場合足の速い艦を回して小惑星郡の出口で待ち構えた方が効率がいいのではないか?
輸送船団のルートがあらかじめわかっていなければ機雷を敷き詰めることなどできない筈なのだ。

(情報が駄々漏れじゃないか。無様なこった)

44 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/26(日) 20:41:59 0
内通者か管理の不徹底故かは今の彼には判断しかねるが、いずれにしろ由々しき問題である。
だが今は緊急事態、情報管理に対する不平不満をたれている余裕は無かった。

「このままとどまっていては危険です!撤退するべきです!」
「わざわざ敵が手薬煉引いて待ってるところへ飛び込むか?自殺願望があるとは知らなかったな」

ルートが割れている以上、相手が機雷原の先で待ち伏せされている可能性は高い。
ボロボロになった挙句十字砲火に晒されたらそれこそ目も当てられない。海賊がいる可能性だってある。
逃げ道は絶たれた。この上は耐久勝負に出る他は無かった。

「既に他の艦から救難信号は出ているんだ。それをアテにして待たにゃならんのが癪に障るがな」

少なくとも機雷原には敵も入ってこられない。進行を妨げる罠ということは、見方を変えれば敵の侵入を阻む壁たりうるのだ。

「敵WC隊、後退しつつあります!」
「こちらも可能な限り後退!全部隊、味方の残骸を盾としろ。バリアが張れる艦は張っておけ!」

敵の意図は第二斉射でこちらをそぎ落とすことにあるだろう。やり過ごすのが懸命だ。
味方の半数がやられたのは惨事だが、身を隠す場所が増えたことは不幸中の幸いと言うべきだろう。
まして輸送艦が運んでいたのは要塞の資材である。身を隠すには最適だった。

「損害はどうか!?」
「被弾した艦多数、撃沈は1隻です!」

とりあえず敵の一斉射を凌ぐことは出来たようだ。少しばかり彼の頭痛も治まった。
とはいえ撃たれっぱなしというわけにもいかないので、間隙を縫って反撃するように命を下す。
敵が本格的に殺到してくるまではこのように穴倉にこもりながらの戦いを続けることになるだろう。

「さぁて、救援が来るまで持ちこたえられるか…ねぇ」

45 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/10/26(日) 22:34:17 O
3000億人ぐらい死んだら終了?

46 名前:ヨハン・フォン・シェーンブルン ◆sb1dqdZ74k [] 投稿日:2008/10/26(日) 23:30:10 0
名前:ヨハン・フォン・シェーンブルン
階級:少佐
役職: フィール帝国宇宙軍所属・アレフティナ独立艦隊作戦幕僚
性別: 男
年齢: 24歳
身長:174cm
体重: 63s
性格:生真面目、無愛想、人の好き嫌いがはっきりしている
容姿: 黒髪碧眼、端整な顔立ち。感情が顔に出るタイプである
出身惑星:帝都星ホルニー
人物紹介:帝国の中流貴族(伯爵家)の長男。技術士官を務める姉はアレフテ
ィナの同期である。
官僚志望だったが、軍の中将を努める父の意向に従い、軍人となった。
「高位の者の親族こそ、進んで激戦に身を投じるべきである」という父の考え
によって、多く激戦区を渡り歩き、そこでの武勲によって少佐の地位を得た。
エリフリーデの闘いをアレフティナの指揮下で戦って以来、彼女のことを尊敬
しており、アレフティナ独立艦隊の一員であることを誇りに思っている。
今日はプロフ投下だけで失礼します。



47 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/27(月) 00:49:57 0
>>43-44
急速に後退していくアレフティナ艦隊に敵からの巧妙な艦隊運動による反撃が加わるも、
あまり艦隊を突出して逆撃を受けることを恐れたのか、敵も積極的な攻勢に出ることはなく、
結局、アレフティナ艦隊は大きいといえる損害も出さず安全圏へと退避することに成功していた。
アレフティナは指令席の背もたれに寄りかかり、軍用の煙草をくわえて煙を吹かしている。
そこへ任を終えたセドリック少佐が司令官に報告をしに、再びアレフティナの傍らへと立った。

「我が艦隊の損害をご報告いたします。
 駆逐艦8隻、巡洋艦3隻が大破轟沈。また駆逐艦16隻、巡洋艦7隻が小破ないしは中破。
 CW3機が撃墜されました」

副官の声にアレフティナは加えていた煙草を灰皿に押し付け、
席にもたれかかった格好そのままで聞き返した。

「敵艦隊の損害はどれくらいかな?」
「輸送船団のおよそ七割弱が航行不能、もしくは撃沈。護衛艦隊の五割強が戦闘不能状態へ陥ったかと」
「目標を半分以上は仕留めたというわけね。最低限の成果はあげたのだから、よしとしようじゃないか」
「…………」

アレフティナの言に、副官はただ無言のまま直立不動を保っている。
表情こそ感情は伺えないが、彼女には何を思わんとしているのかを理解しているようだった。

「不満かい? この結果に」
「……あのまま艦隊を直進なされば、敵は機雷原と我が艦隊の挟み撃ちに遭い、
 戦いを我が方に有利に運ぶことができたでしょう。小官はともかく、上層部はいささか消極的と見るやもしれません」

副官の言にアレフティナは溜め息をつきながらことさら髪をかきあげる仕草を見せる。
まるで何かを誤魔化すように。しかし、副官は追及の眼差しを向けるばかりだった。
長く伸びた髪の毛を人差し指で巻きつける子供のような遊びをして一時は沈黙を守る彼女だったが、
納得の行く説明をしてくれ、といわんばかりの副官に根負けしたのか、静かだがはっきりと話し始めた。

「ねぇ……少佐ぁ? 戦場で能力の無い者が長生きする秘結を教えてあげようか?
 それは自分の力を過信せず、身を弁えて能力相応に任務をこなそうとすることさ。
 有利なのは理屈じゃ理解できても、私にゃあれが精一杯。そう……そういうことなのよ」

それだけ言うとアレフティナは軍帽を顔に被せ、傍らに立つ副官を下がらせた。
敬礼をしてその場から去っていく副官セドリックの顔には、
噂と違いどこかつかみどころのない"英雄"の実像を見て、ギャップの差に困惑の色が浮かんでいるようだった。

48 名前:└|∵|┐[└|∵|┐] 投稿日:2008/10/27(月) 01:06:31 O
└|∵|┐ポーッ!ポッ!
(自己紹介)

名前:埴輪00
階級: 不明
役職: 埴輪帝国宇宙軍太陽系直庵部隊直属土隅帝国軍迎撃用決戦兵器
性別: 不明
年齢: 12000歳
身長: 60cm
体重: 10kg
容姿: └|∵|┐
出身惑星: 地球
人物紹介: 長い間地下に封印されてたが土隅帝国が地球侵略の活動を開始したのに合わせ覚醒する
(兵器)
名前: 埴輪レーザー
兵器紹介:目から敵を追尾する事の出来るホーミングレーザーを放つ

名前: 埴輪ボイス
兵器紹介:口から超音波を出しあらゆるものを粉砕する

名前: 埴輪スピン
兵器紹介:体を回転することで磁気嵐を発生させレーダーやセンサーを使用不能にさせる

名前: 埴輪インパクト
兵器紹介:埴輪の体にビームコーティングをかけ亜高速で敵に体当たり

名前: 埴輪ダイナミック!
兵器紹介:レーザーブレードによる一撃必殺のマッハ斬り

名前: 埴輪ランダムアタック
兵器紹介:埴輪の全身から発射されるミサイル攻撃

49 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/27(月) 08:00:58 0
>>47
片方が撃てば片方は隠れ、反撃を行うにせよ守勢を崩さずに互いの距離を保つ。
峻烈な奇襲により火蓋を切ったこの戦いは、このように消極的な応酬に移行し始めていた。
時間の浪費と言い換えても良い状況は、一方の離脱により終息を向かえる。

「敵が引いていきますな」

信じられない、その言葉を顔面全体に表して副官が口を開く。
前門の虎、後門の狼と言う言葉がある。今回は前者が敵艦隊、後者が機雷原だった。
虎が本気で向かってきていたら挟撃される恐れがあったのだ。
口に出そうになって喉で押しとどめている副官の様子を横目で見やり、ヴァイスは軽く応じた。、

「何にせよ残った輸送船団を囮にせずに済んだのだ。行幸と言うべきだろう」
「はっ!?それはどういう」

時間がたてばたつほど、救難信号によりかけつけた援軍が来る可能性は高まる。
寄せ手も大軍ではない。通常の指揮官ならその前にけりをつけようと考えるだろう。
まして、自軍と機雷原で敵がサンドイッチになっている状況であれば尚更だ。

相手が攻勢に転じて殺到してきたなら、こちらは巡洋艦軍も護衛艦群も敗退して上下左右に散る。
そうなると彼奴等の目の前には無防備の輸送船団が、機雷原を背後に横たわっているのだ。

「敵が好餌に目を取られた隙に左右に散った艦隊が後方で終結すれば、数の上で敵軍に匹敵する」
「成る程、敵の主力は駆逐艦。水雷戦という視点で見れば戦力比で自軍は優位に立てますな」

寄せてが気がついた時には背後に敵が出現、敵を突破しようとしても戦力差がある。
かといって輸送船団を突破せんとすれば背後から集中砲火を受ける。
多大な犠牲を払ってそれを成しても、次は自分達が巻いた種ならぬ機雷原が待ち構えているのだ。

50 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/27(月) 08:01:35 0
そのような事態を招かず、目標の半分という成果を持って撤退を決めた敵の司令官はよほど無欲で冷静とみえる。
そもそも今回の戦いで生じていた味方の損害は、彼の頭痛を激化させるに十分だった。敵の勝利と言うほか無い。

「航行不能になった艦は牽引していくしかないな」
「宇宙に放流した各艦の乗員や物資も貴重です、可能な限り拾っておきましょう」

兎にも角にも全滅は免れたのだ。コレだけの戦力が残っていれば海賊に蹂躙されることも無い。

「そうだな…敵軍に俺の名で電報を送ってやれ。”貴殿ノ勇戦ト深謀ニ敬意ヲ表ス 再戦ノ日マデ壮健ナレ”とな」
「…負け惜しみではありませんか?」

言われるまでもない。これは彼なりの余裕を示しておきたいという意地があった。
千載一遇の好機に潜む危険に敏感に反応し、慎重に徹したこの用兵はおそらくアレフティナのものだ。

ヴァイスがまだ帝国軍にいた頃、CW中隊長としてエリフリーデに参戦した時のことである。
敵の層が薄い1ポイントを集中して叩くように進言したが、彼女はそれをにべもなく却下した。
その時は臆病な上に用兵のよの字も知らんのかと侮ったが、結果的にはそこを攻撃した友軍が窮地に陥り、
結果として首脳部の崩壊を招いたのだ。

戦闘後、勝利の立役者が昇進するのにあわせて彼も1個大隊長に任用された。
ヴァイス自身は生兵法に陥っていた自分を恥じ、それと同時に彼女の慎重さに対するリスペクトを抱く。

「今回の敵が彼女である可能性があるなら、俺が挨拶せん訳にもいくまい。ケジメの意味でもな」

かくして戦闘は終結したが、彼自身が泥のように眠るには今少し時間が必要だった。
これだけ甚大な被害が発生したのだ。事後処理は山のようになるだろう。
彼の今後の立場も含めて、頭痛薬の服用で果たしてこの傷みが収まるだろうか?と思うと気が重くなる一方だった。

51 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/27(月) 21:47:11 0
>>50
敵軍からの電報を読みながら、アレフティナは肘を突き、頬に拳を当てながら溜め息をついた。
アレフティナが仕掛けた作戦はただ一つ、それは基本的かつ単純な奇襲。
敵の反撃を受けてから、至高の用兵家が舌を巻くほどの特出した戦術用いたわけでもなかった。
にも関わらず敵軍がこう評するには、恐らく前後挟撃の危機を乗り切る何かしらの策を講じていたからだろう。
そして敵軍の将は、そそくさと退散するアレフティナがその意図を正確に見抜いたからだと考えたに違いない。

「"貴殿ノ勇戦ト深謀ニ敬意ヲ表ス 再戦ノ日マデ壮健ナレ"……か。フ……高く評価してもらったものだわ」

そう思ったアレフティナは、思わず自嘲気味に笑みを浮かべた。
彼女にしてみれば、全面攻勢の絶好の機会を、敵の意図を正確に看破したことで
敢えてその機会を見過ごしたとは言いがたく、敵の"買い被り"と評せざるを得なかったからだ。

彼女が戦闘で指揮を振るう時、まず思案することは常に敵の行動の一点といっても過言ではない。
敵の動きを読むこと、それは用兵家として基本ではあるのだが、
例えどんなに自軍が有利な状況にあり、そこでどんなに理に適った策を部下に進言されても、
彼女にとっては「それが本当にベストなのか」と疑う対象にしかならず、
作戦の成功率の高さよりも、確率としてどんなに低くとも失敗の可能性を過剰に意識してしまうことに欠点があった。
つまり失敗を恐れる為に、部下からも反感を買いかねない消極的戦法を執ることになるのだが、
こうした"ネガティブ"とも言える彼女の独特の思考が、結果として戦果を挙げることになり、
これまでの彼女の出世と命、その下に就く部下の命を助けた要因とも言えるのは事実である。

もっとも、元々戦場では1%でもリスクの無い戦法などありえるはずもないのだが、
他ならぬ彼女自身がそのことを理解している為、これが自身に「軍人向き」ではないと考えさせる所以となっている。
また、敵の反撃の動きを様々に想定しておきながら、いざ敵が想定の内の一つの動きをとったとしても、
積極的に何ら対抗策を講じようとしないその姿勢に対し、本人は自分自身の才覚の欠落として、
とかく必要以上に自分自身を卑下する傾向を生んでいる。
それは生来の気弱な性格が大きく起因してもいるが、普段はそのことをおくびにも出さない表面上の態度から
メディアでの"英雄"、"名将"としての虚像化が進んでおり、それが彼女を悩みの種となっている。
それに気付いているのは、帝国ではアレフティナ艦隊主任参謀ヨハン・フォン・シェーンブルンの姉である、
アレフテ一人であるかもしれない。

「……ヴァイス・パピア・フォン・ゼカルテ中佐?」
「はっ、敵軍の司令官であると思われます。返信いたしますか?」

この時の彼女は、この電報の送り主は単なる亡命者としての認識に留まっていた。
それは貴族であっても、政治的闘争に敗れれば敵国へ亡命する例など珍しくは無かったという事実が
敵将の名から感じる違和感を鈍らせていたからということと、
本国に帰還した時、上官にどう戦果を報告するかで思案の余裕が無かったからである。

「……いや、しなくていい。この広い広大な宇宙で、また再び戦場で相まみえることになるとは限らないし」
「わかりました」

オペレーターはそれだけ言うと踵を返して去っていった。
果たして、次の戦場でも自分は死なずに済むのだろうか。
アレフティナの小さな心臓は、次なる戦闘を予期して再び高鳴り始めていた。

52 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/27(月) 22:15:38 0
×帝国ではアレフティナ艦隊主任参謀ヨハン・フォン・シェーンブルンの姉である、
  アレフテ一人であるかもしれない。
○帝国ではアレフティナ艦隊主任参謀ヨハン・フォン・シェーンブルンの姉一人であるかもしれない。

訂正します。

53 名前:ヨハン・フォン・シェーンブルン ◆sb1dqdZ74k [sage] 投稿日:2008/10/28(火) 00:37:19 O
「レオーノフ提督、帝都への報告電および、艦隊司令部への報告の草案です。ご確認ください」
そういって、ヨハン・フォン・シェーンブルンは、書類の束をアレフティナのコンソールの上に置いた。
この草案には、先程セドリックが報告した情報の他にも、新たに確認された情報、敵の旗艦が轟沈し、指揮官が戦死、あるいは重傷を負ったため、ヴァイスが途中から指揮権を引き継いだことなどが記されている。
「敵将ヴァイス・パピア・フォン・ゼカルテの帝国時代のデータはこちらのディスクに入っています」
このディスクにはヴァイスの個人情報とともに、彼が亡命の際に持ち出した最新鋭巡洋艦<ウォルフ級>の情報も技術評価を行ったヨハンの姉、ユリア・フォン・シェーンブルン技術大尉の所見と共に入っている。

54 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:18:02 0
>>51-52
敗残兵の精神状態は何時の時代も陰鬱なものに支配される。
まして今回、連合軍は安全と思われた航路上でサンドバックにされたのだ。
口に出しては誰も言わないが、彼らの心はほぼ折れていた。

「放流していた負傷者、資源の回収に成功しました」
「そうか…では撤退するとしよう。今度こそ索敵に厳重な注意を払いながら、な」

ここに来てようやく軍帽を被り深々と椅子に座りなおすと、冷静にブリッジを見回す。
ほぼ無傷の本艦がこの有様では、他の艦たるや燦燦たるものだろう。
仕方ないな…とばかりに溜息をつき、オペレーターに通信を開くように命じた。

「全部隊に告げる。巡洋艦ブラオ・メーアのゼカルテ中佐である!
 わが軍は敗れた。司令部も、半数の同胞も失われた。だがそれでも尚、諸君らは生き残った。生き残ったのだ!
 この地は敵軍も海賊も跋扈する死地に成り果てている。
 我々は今まさに敵地に取り残された孤児に等しい。だがしかし!私は諸君ら将兵全員を惑星ホンに送り届けることを約束する!
 誇りと秩序を守り、毅然として航路を歩もうではないか!以上だ」

(こんな風にアジるのは趣味じゃないし、性格上ありえんな)

内心苦笑いがとまらないが、効果は大きかった。少なくとも将兵の精神から陰惨を取り除くには十分な程に。

55 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:18:45 0
演説の余韻が収まると、今度は惑星ホンの司令部、及び援軍の司令に向けて簡潔な被害報告を行う。
向こう側のこちらを見る目は冷ややかだ。艦隊司令部が吹き飛んでいるのに生き残ったのだから。
政治宣伝用の英雄として持て囃された分、こういった時の風当たりも強くなる。
常に最前線に送られ、自分の意思では容易く逃げを打つことも出来ない。
帝国、連合であろうと変わることのない亡命者の宿命だ。

正確な報告は無論惑星ホン到着後に行うが、課題は山積していた。
航路を襲われた以上、情報流出の出所としてまず真っ先に彼が疑われる。
彼はこの頭痛を治める方法があるなら、悪魔に魂を売り渡しても手に入れたい心境だった。

「それにしても、向こう側から返信がありませんね」
「別に期待して送ったわけではないがな」

彼の元上官は50隻程度とはいえ、艦隊司令にまで出世したのだ。
平民出の女性でそこまで上り詰めたとなると、その心労たるや想像を絶する。
敵、それも裏切り者に対して返事をくれてやる余裕などないことは最初からわかっていた。

56 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:19:52 0
>>53
(エルフリーデから2年か、早いものだな)

当時彼は23歳。
士官学校を20で卒業!飛び級の主席と鳴り物入りで軍人としてのスタートを切って3年。
CW部隊の小隊長に就任後、エースパイロット・撃墜王の名を欲しいままにしていた。
機を見るに敏であり、個人プレイだけによらない隊を率いる手腕や機転も持ち、
その戦果と名声は当時の本人いわく”青天井”でありまさに得意の絶頂だった。

エルフリーデ前に中隊長・大尉に昇進してアフレティナの元へ配属された当初は、
「エズンの戦果を見るに、俺の上官としてはまぁ及第点だろうな」と言ってのけた程であり、
その増長慢は最早手がつけられないところにまで到達していた。

いざ戦闘が開始されれば、確かに彼は前評判を裏切ることなく忠実に戦果を挙げた。
そして連合軍の左翼に防御上層が薄いポイントを発見したのである。
見つけたのは自分の手柄だとばかりに嬉々として上官に攻撃を進言したが、
アフレティナの返事はにべも無い「不許可」の3文字だった。

彼には大いに不満だった。見つけたポイントを自身のCW隊で撹乱後、
ただちに火線を集中させれば敵左翼は崩壊すると確信していたからである。

「どうやら少佐殿は慎重と臆病の区別が出来ておらぬようですな。
 でなければ用兵のよの字もしらんとしか言いようがありません」

と当人に文句をたれるに留まらず、他の隊がそのポイントへの攻撃を開始した時などは
憤懣から筆舌に尽くしがたい程の上官への罵詈雑言を自分の部下に向けて言い放ち、
中隊のメンバーを凍りつかせるという一幕もあった。

57 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:20:54 0
が、やがて攻撃をしかけた部隊が敵の包囲下に落ちて蹂躙されたのを皮切りに、
味方艦隊の足並みが乱れ遂には司令部崩壊を招くのを見てヴァイスはたちどころに色を失った。
自分の眼力が浅はかであり、彼の上官の方がよっぽど優れていたと思い知らされたのだ。
崩壊した味方を救うべくアフレティナが下した命令に従い、
彼とその中隊は大いに奮戦し、その面目を保つに至った。

戦闘終了後、彼は己の不明と増徴慢を恥じ、上官の前で平伏して謝罪する。
以後は彼女の部下でいれたことを誇り、深い敬意を抱くようになったのだ。

ただ、功績が認められて機甲揚陸師団の混成大隊長に抜擢された時、
編成上の都合から「勝利の女神」の下を離れることになったのは彼にとっては痛恨だった。

58 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:24:20 0
1年後、彼に転機が訪れる。
当時彼はある惑星の戦力作戦時に参加したのだが、そこで看過し得ないものに遭遇した。
装甲車両の中隊長を務めていた男が、部隊を私兵のごとく扱い私掠を行っていたのだ。
さらに兵士達に褒美と称して暴行を推奨し、自身も率先して興じていたのだから呆れて言葉も出ない。

いずれも帝国軍法において厳重に禁止されている項目であり、
処分は直属の上司の責任と権限である。
銃殺も認められてはいるが、いちおう反省の機会を与えてやろうと、逮捕の後に軍法会議にかけさせようと考える。
だが男はゲマインハイト公爵の甥という立場を傘に来て、ヴァイスの期待に反して反抗的かつ不遜な態度を示した。

上流貴族の子弟が軍属になった場合、おおよそ二つのパターンに分けることができる。
後方の安全地区を占拠するか、前線に出張って暴虐を働くか─である。
悪辣すぎる所業に無反省どころか高圧的な態度に出るようではもう寛容の域を超えていた。
一気呵成の処断を決め、その場で銃殺刑に処して憲兵に連絡。あとは事後処理…と思っていたが甘かった。
中隊の中には貴族の子弟が複数人含まれており、彼のやり方に大いに不満を持って逃亡し各々の実家に通報。
その知らせを受けて激怒したゲマインハイトの横槍によって、あべこべに逮捕されてしまった。

だが、この処置は流石に上流貴族の横暴に対する不満を噴出させる結果となった。
彼は瞬く間に同情の対象となり、家族を奪われたことで貴族に恨みを持つ憲兵の助けを借りて脱獄に成功。
その後も彼に協力する者が現れた為、共謀して軍港から最新鋭の巡洋艦を強奪。
一連の行動には数日を要しているが、これらはたやすく成功してしまった。

59 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:27:43 0
逮捕さえしてしまえば、名門に逆らってまで助ける者もおらず何もできまいと考える貴族達の慢心と、
自分達に逆らった見せしめ、意趣返しの両面から最も効果的な殺し方を、
結論が出るまで数日にわたって考えて悦に入るという嗜虐的な風習も手助けしたと言える。

奪取したヴォルフ級巡洋艦「ブラオ・メーア」の性能は彼を大いに満足させた。
この船があったからこそ、警戒網をものともせず、自身や同志の故郷に立ち寄りそれぞれの家族を回収、
そのままノルド共和国を目指すことが出来たのだから。

共和国にとっては願っても無い客であり、嬉々として彼を政治的英雄に仕立て上げる。
一方帝国軍、とりわけ貴族達の面子はズタズタとなり、彼を裏切り者呼ばわりして打倒を叫ぶ以外に何も出来なかった。

「あれから1年ですか…長いようで短いですね」
「そうだな」

今の彼には、気の利いた返事を返す余力も無く、ブリッジも疲労困憊の一色で染められているようだった。

それでも船団は演説通りに矜持を守りつつ惑星ホンにたどり着いた。
闘終了から到着まで、脱落者はただの一人として出なかった。彼の誓いは守られたのだ。

60 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/10/29(水) 00:28:57 0
訂正

× 闘終了
○ 戦闘終了

61 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [age] 投稿日:2008/10/30(木) 00:45:34 0
>>53
指令席よりセドリックが去ってものの数分と経たぬ内に、今度は碧眼の若者が傍へと立った。
若者の名はヨハン・フォン・シェーンブルン。階級はセドリックと同じく少佐であり、参謀を務めている。
聞けば貴族の伯爵家の出でしかも長男だというのだから、いずれは爵位を継ぐことになるのだろう。
無愛想だが、実績から指揮官としての芽もあれば、将来に約束された地位もある。
しかも貴族のお坊ちゃまには珍しく規律正しく真面目ときている。
こんな彼に対し、正直アレフティナはあまり可愛げを感じていなかったが、特に冷遇するといったことはなかった。

彼が現れると同時に席の上にどさりと白い書類の束が積まれた。
分艦隊にも満たぬ数の司令官とはいえ、その責任は如何に重いものかを物語っているかのようだった。
アレフティナはその場から逃げたくなるような衝動を抑えながら、
一枚一枚と片っ端から無言で書類を目に通していったが、その手は直ぐに止まった。
シェーンブルンから敵将に関するデータの入ったディスクを渡されたからだ。

「頼んだわけでもないのに、良く気が回るものだね。……ご苦労さん」

「余計な仕事を増やしてくれたものだ」と、内心でそう思った彼女ではあったが、
小規模とはいえ、一艦隊の司令官としては「もうあの敵将とは二度と遇うことはないから不要」と
敵将のデータに目を通さないわけにもいかず、渋々ディスクを受け取るのだった。
彼女はディスクを指令席に内蔵されているコンピューターに差し込んで中身を確認していくと、
とある項目で目が止まった。

「929年、"エルフリーデの戦い"で帝国軍CW部隊中隊長として参加。……エルフリーデ……?」

3Dで投影された映像には、その戦歴が誰のものであるかを示すように濃い緑色の頭髪を持った、
堀の深い顔の軍人が映し出されていた。
彼女にとってエルフリーデといえば忘れ難い出来事である。
見てみれば当時のこの軍人は大尉。当時の彼女は司令官代理の少佐として各残存部隊の佐官や
尉官クラスの責任者とは顔を合わせているので、恐らく面識はあるはずであろう。

「ヴァイス・パピア・フォン・ゼカルテ……ねぇ。こんな男前いたかしら。
 居たような居なかったような……ん〜〜、エルフリーデの時に大尉で居たなら見覚えあるはずなんだけどねぇ」

二年という年月が記憶の戸を固く閉ざしてしまったからなのか、
それとも初めから思い出す気などなかったのか、とにかく思い出すことはなかったが、
この時、彼女は初めて敵将の正体を知ったといえる。

62 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/10/30(木) 00:48:58 0
特に深く考え込む様子も見せずに、彼女はファイルのページをめくっていくと、
先程の軍人とは違い、映像には見覚えのある女性が映し出された。
その女性はユリア・フォン・シェーンブルン。ヨハン・フォン・シェーンブルンの姉であり、
アレフティナの士官学校での同期だった女性である。

「──この時、ヴァイス・パピア・フォン・ゼカルテが持ち出した戦闘艦は当時の最新鋭巡洋艦、
"ウォルフ級"に区分されるものであり、これは現在でも……」
「あの青い艦か……。恐れ多くも皇帝陛下が下賜されたものをよくもまぁ」

アレフティナはユリアの説明を聞きながら悪態をついたが、
実は帝国、連合問わずして亡命者が土産を亡命先に持ち込むというのは然程珍しい例ではない。
中には、部下が上官を土産代わりに捕虜として連行し、亡命したという例もあるくらいである。
彼女はそのことを知らなかったわけではないのだが、
彼女にしてみれば、今更ながらただ漠然とそう呟きたくなるだけだったのだ。

「そうだ。ユリアは元気してる? 勤め先の部署でいい男がいたら紹介するように伝えておいてちょうだい」

映像が終わりを告げる共に、特に期待感を込めずにシェーンブルンにそう告げると、
アレフティナは再び果てしなき書類の処理に追われていった。

──書類の全てに目を通し、戦果の報告を終えた頃には、既に艦隊は帝都へと帰着していた。
だが、戦いを終えた彼女らを待っていたのは、次なる戦いへの出征指令であった。

63 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/10/30(木) 07:37:31 0
今度の戦場はどこだろうね

64 名前:└|∵|┐[sage] 投稿日:2008/10/31(金) 01:34:53 O
└|∵|┐ポッ!ポ!
(しじみの味噌汁を作る)

65 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/01(土) 00:52:10 0
メーデー!メーデー!
こちら帝国軍巡洋艦ゾリンゲン!
所属不明の船団から攻撃を受けている!
至急救援を求む!

66 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/01(土) 01:19:38 0
>65
正直このスレってかなり文章練ってるから
急に名無しがネタ振りすると停滞しそうなんだがw

67 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/01(土) 04:11:39 0
受けるのとスルーするのを選んで書いていけば良いんじゃない?

68 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/01(土) 13:09:22 O
つまりレス出来る能力がない奴らしかいないって事か?

69 名前:ウォルフガング ◆opccglODi6 [sage] 投稿日:2008/11/01(土) 22:18:59 0
(キャラ)
名前:ウォルフガング・ゲイボルグ
階級:特別大尉
役職:人型機動母艦「アブラクサス」艦長
性別:男
年齢:36歳
身長:210cm
体重:130kg
容姿:スキンヘッドの筋骨隆々とした大男
出身惑星:砂漠の惑星ミクターム
人物紹介:一面が砂漠に覆われた廃墟惑星ミクターム出身の大男
       戦いと殺戮を好む残虐な性格で、元々は傭兵として働いていた
       新世代のコントロールシステムである感応リンキングシステムに対し、類稀なる適性を持つ
       そのため、急遽特別大尉として招かれ、アブラクサスの艦長に任命される
       個人の戦闘力は高いが、指揮官としての才能は全くない

(兵器)
名前:アブラクサス
全高:555m
武装:アーム・パンチ(主砲でもある腕部で殴る)
    腕部大出力粒子主砲×2
    高出力二連装パルスレーザー・カノン×8
    対艦ミサイル、ホーミングミサイル、スプリットミサイル
    対空迎撃用パルスレーザー
兵器紹介:両腕を突き出し座した人型という、得意な外観を有する特殊な艦船
       感応リンキングシステムによって運用できる兵器の大きさの限界を測るために造られた
       開発には、マッドサイエンティスト的な志向が問題視されているダイク博士が関わっている
       感応リンキングシステムとは、増幅された脳波によって機体を制御するシステムである
       そのため、巨体で鈍いながらも通常の軍艦には不可能な柔軟性のある動きができる
       その最たる例は、主砲でもある二本の巨大なアームで白兵戦が可能である点である
       軍艦というよりは、艦船クラスの超ド級コンバット・ウォーカーに近い
       しかし、その形状ゆえの問題点も非常に多い
       航行速度が非常に遅く、連合で最も足の遅い艦船である
       また、火力が前方に集中しすぎているため、背後や側面からの攻撃には対処しづらい
       白兵戦を展開すると稼動部に大きな負担が掛かり、負うリスクが大きい
       艦のコントロール以外は全て機械制御の無人機頼みのため、有機的な対処がしづらい

70 名前:ヨハン・フォン・シェーンブルン ◆sb1dqdZ74k [sage] 投稿日:2008/11/02(日) 01:51:30 O
>>61‐62
上官がディスクの内容を確認している間、ヨハンは亡命の敵将について、思いを馳せていた。
エルフリーデの戦いのとき、CW隊の隊長として初陣した彼の直属の上官がヴアィス・パピア・フォン・ゼカルテだった。
自分の進言が却下されたと知るや、部下達に向かい上官に対する聞くに耐えないような罵詈雑言を並べ立てる中隊長に対してヨハンは失望したが、アレフティナが正しかったとわかると、すぐに自分の誤りを認めて謝罪する姿勢には好感を持った。
その後の彼とヴアィスの関係について思考を進めようとした時、アレフティナの問いが、ヨハンを現実に呼び戻した。
「シェーンブルン技術大尉は健在です。クラスナーエの改修にも関わっており、現在はCW開発部に勤務しています。また同大尉によりますと、開発局には提督にふさわしい男性はいない、とのことです」
上官の問いにそう返答すると、ヨハンはアレフティナの前から退出した。
その後、宇宙海賊の船団に襲われた巡洋艦を救出しなければならなかったために、当初の予定よりも若干遅れてアレフティナ独立分艦隊は帝都に凱旋した。
その直後、新たな出征指令を受け、再び戦場に赴くことになったことは、先の戦闘で参謀らしい働きができなかったヨハンには、名誉挽回の好機であるように思われた。

71 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/02(日) 23:29:26 0
帝都に帰着してから港に係留されていたクラスナーエは、
三時間という短い休息の時を経た後、再びその巨体を揺らして広大な宇宙へと飛び立っていた。
一戦を終えた後のアレフティナにとって、体を休める間もなく再び戦場へと赴く事態になることは
全くの想定外であった。司令席に腰をかけながら、指先で軍帽を回す彼女の表情は沈んでいる。
だが、実のところそうなる理由はただそれだけではなかった。
その答えを明らかにするには、およそ二時間前に遡らなければならない──。

「──先刻、アレンテージョ星系近くの宙域を航行中の帝国巡洋艦が所属不明の船団に撃沈された。
 既に承知のこととは思うがな」

アレフティナの前で、偉そうに椅子に踏ん反り返りながらそう言う中年男は、軍の高官である。
名はバルテル・ハインリッヒ・フォン・ベッカート上級大将。
帰着後、アレフティナは遥か雲の上の存在である彼に直々に呼び出されていた。

「アレンテージョ? あそこは連合軍の勢力下ではありませんか。であれば、連合軍の仕業では?」

アレフティナがそう言うと、ベッカートはデスクに収納された3D投影装置から空中に一つの画像を映し出した。

「……これは!」
「勿論、我々も海賊などの可能性も考えたが……これだけの攻撃艦を備えた海賊はこれまでに例がない。
 そして見ても分かるように、これらはアルゴビー宙域から現れた船団なのは明白だ。
 よって我々は、アルゴビーが不法に所持している軍事力だと結論付けている。これは明らかな条約違反だよ」

アルゴビーとは、連合側の領域であるアレンテージョと、帝国側の領域であるオレンボーの調度中間に位置する
中立宙域の名である。この狭い宙域には大小様々なスペースコロニーが多数存在し、
3億とも4億ともいわれる民間人が暮らしている。このコロニー郡の統治機関、すなわちアルゴビー政府は、
大戦が勃発すると戦火が自国に拡大することを恐れて、国内軍事力の完全放棄を条件に、
連合と帝国の両国に軍事的干渉の拒絶と、軍艦の航行不可などの条件を認めさせていた。
その結果、現在のアルゴビー宙域は事実上の非武装中立地帯と化している──はずであるのだが。

「それだけにのみならず、領域を侵犯したわけでもない我が軍の巡洋艦を不当に攻撃、破壊するという暴挙を
 我々は黙って見過ごすつもりはない! 目には目を、彼らには相応の酬いをくれてやらねばなるまい!
 既にアルゴビーに対しては全面的な攻勢をかけることが決まっている。
 そこで貴官には先鋒として、今すぐ麾下の艦隊を率い、アルゴビーが不当に有した軍事力を無力化してもらう!
 火器を持って抵抗しようとする者や、そうと疑われる者がいれば、それも徹底的に殲滅せよ!」
「──!! ……小官が……でありますか?」
「貴官が先の戦いで失った兵員と艦艇の分を早急に補充できるよう手配しておいた。
 心置きなくその手腕を発揮できると思うが、何が不満があるのか?」

アレフティナにとって、勿論大いに不満はあった。
この命令は、必要とあらば事実上の無差別攻撃をせよと示唆していることは明らかであったからだ。
だが、上官の命令とあれば不服であっても従わなければならない。拒否権など初めからないのだ。
彼女は、無言のうちにその命令を引き受けていた。

72 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/02(日) 23:34:55 0
「報告によれば、奇襲作戦の時は確かに戦果も十分に上げたようだが、私にはいささか消極的にも見えるな?
 ……中佐、覚えておくといい。人によっては、敵に情けをかければそれだけ敵を利する行為と受け取られかねん、
 ということをな……。第二陣が到着するまでの間の、貴官の働きに期待する」

アレフティナの頭の中は、部屋を出る際に言われたベッカートの言葉が繰り返しこだましていた。
彼女は思わず大きく溜め息をついた。

「今回の作戦、あまりお気に召さないご様子ですな」
「……少佐はどう思う? アルゴビーが宣誓布告に等しい攻撃をしたという話」
「帝国軍人としては、事実だと信じなければなりますまい。……我々は与えられた命令に従うだけです。
 深くお考えにならない方がよろしいでしょう」
「……ま、ね」

アレフティナはセドリックに上手くまとめられた感じを受けたが、
彼女の胸には、軍のあまりに急な決定の裏には、何か別の意図が隠されているからでは
ないのだろうかという、どこか釈然としない思いが渦巻き、全てを割り切ることはできなかった。
しかし命令を受けた以上、軍人としてそれを遂行しなくてはならない。
気がつけば、セドリックの言うように深く考えても仕方のないことと、彼女は自分に言い聞かせていた。

「──全艦、アルゴビーの国境線を越えました!」

即座に全艦に臨戦態勢がとられ、艦内に緊張が走る。
もしアルゴビーが本当に軍事力を有しているなら、迎撃の機会を伺っていることだろう。
士官達はレーダーを眺めながら、艦隊を慎重にコロニー郡に近づけさせていく──。
とその時、レーダーが艦隊の影を捕えた。

「艦影発見! およそ30の所属不明の船団が、こちらに近づいてきます!
 ──熱減体急速接近! 艦砲による攻撃です!」
「シールドを張れ! 全艦攻撃──いや! 待て!」

アレフティナは攻撃命令を止めていた。
船団の一部がコロニーを盾としており、もし反撃をすれば、コロニーが巻き添えをくらうことは目に見えていたからだ。

「提督、攻撃命令を! あれは敵です! 躊躇していたら我々がやられます! 提督ッ!!」
「……くっ! 全艦……攻撃開始ッ!!」

苦渋に満ちた顔を浮かべながら、アレフティナはセドリックの言を受け入れ、攻撃の指令を出した。
瞬間、無数の艦艇から放たれた白光が敵艦とコロニーを貫き、爆煙をあげた。
この一撃だけで多くの人命が失われたことだろう。しかしこれはまだ、凄惨な戦闘の幕開けでしかなかった──。

73 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/02(日) 23:37:23 0
訂正します
×「──先刻、アレンテージョ星系近くの宙域を航行中の帝国巡洋艦が所属不明の船団に撃沈された。
 既に承知のこととは思うがな」
○「──先刻、アレンテージョ星系近くの宙域を航行中の帝国巡洋艦が所属不明の船団に撃沈された」

74 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:38:29 0
惑星ホンに到着した時、彼の頭痛はピークに達しようとしていた。
今回の輸送船団大損害の責任はヴァイス一人に被せられる要素が無いのだが、
敵が連合側の情報を予め取得していたと言う事実を、司令部が重く受け止めたことは想像に難くない。
下手をすれば、スパイ扱いで即拘禁ということだってあり得るのだ。

(俺が帝国国軍人の亡命者であったことも、上にとっちゃ状況証拠となってしまうか)

処罰を覚悟で司令部の出頭命令に応じたヴァイスを待っていたのは、
───全く意外なことであったが、新しいCW独立大隊長への就任を命じる辞令であった。

「これは惑星司令部の総意ですか?」
「ダイク技術将官の意向だ」

ホンの司令官ジャック=バイソン大将は、不本意極まるという表情を隠そうとはしない。
バイソンは戦功も多く出身国や連合全体に対する忠誠心の高さも随一との評判の名称である。
故に連合軍内でも尊敬を集める男であったが、年齢を重ねる度に頑固さを増しているという評判だった。
老司令官にとって、亡命はスパイ行為を誤魔化す為の方便という判断基準が前提にあり、
もし仮にそうではなかったとしても、敵国に逃げてくること事態が醜い裏切りとして映るらしい。
彼の不満はスパイとしての疑惑があるヴァイスを始末できない故なのか、
それとも人事に対して横槍を入れられたことに対するものなのか…あるいは両方かもしれない。

「責任を取らされるかと判断しておりましたが」
「貴官を処断するだけの根拠が無いことは事実だ。
 最も、あの博士の肝煎りによる人事なら、いっそ責任を取らされた方良かっただろうがな

ダイク博士の噂は彼が帝国にいた頃から良く聞いている。
マッドサイエンティストなどという陰口が横行しているくらいだから、大抵が碌なものではない。
兵士達からの評判に関しても、バイソン大将の反応からも十分にわかるというものだ。
だが、その技術力の高さは本物であり、大戦初期の技術革新において大いにその辣腕を振るってきた。
現在でも感応リンキングシステムの開発を行うなど、その頭脳は衰えるところを知らない。

75 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:39:30 0
「貴官には、ヴォルフ級巡洋艦を旗艦とした駆逐艦15隻の船団を預ける」
(おやおや…こいつは随分と大盤振る舞いじゃないか)

CWは戦術運用上で欠かすことのできない兵器ではあるが、それだけでは戦場にはたどり着けない。
運用する為には搭載する艦船が必要であり、多くの場合大量搭載能力を持つ航空母艦がその役目を負う。
駆逐艦15隻ということは1隻で、CW1個小隊を搭載することを前提としている。
船団の運用としては、機動力の高い船で固めた有機的な活用が意図されているらしい。

>>70
しかしこうなると、亡命時の後悔が再び首をもたげてくる。

(あの時、多少無理をしてでもヨハンを連れてくれば良かったか)

エルフリーデの戦いの時、中隊長として彼が指揮した小隊長の一人が、ヨハン=フォン=シェーンブルン中尉だった。
シェーンブルン伯爵家の跡取りであり、帝国においては”勝ち組”に分類してもいい。

(規律に忠実ってのは帝国貴族が本来保つべき矜持に通じるものだ。その点では評価に値するが…)

愛想というものが感じられない───しかしながら生まれ持った気品と風格を称えた表情が気に食わなかった。
一言で表現すれば「スカしてる」という印象を覚えた為、ヨハンが軍人になったことは、
貴族とは名ばかりの貧乏に生まれた彼の目には金持ちの道楽にしか見えなかったのだ。

第一印象からヨハンに対して勝手な偏見を抱いていたヴァイスにとって、
アレフティナへの暴言に対して失望を浮かべたヨハンの表情は、自分の戦術眼に対する誹謗としか思えなかった。

(士官学校で何をやっていた!?それとも伯爵家の孺子は単位が自動的に付加されるのか?)

流石に部下との口論は、中隊の連携に亀裂が走る恐れがあったため口に出しては言わなかったが、
内心にたまった苛立ちはどうにもしようがなく、敵への八つ当たりは苛烈を極めた。

76 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:42:12 0
自らの戦術眼が敵の想定内であったことを知った時、彼が己の不明を恥じたのは既に述べた。
戦闘終了後、自らの過ちと非礼を上司に謝罪したヴァイスは、その後部下達にも自らの稚拙さを詫びた。
もし彼の進言が通っていれば、友軍どころか部下達まで死地に追いやっていたからである。

自然、ヨハンに対する味方も180度変わる。
「スカしてる」と感じた表情の裏で冷静に物事を見通す力があると考えるようになった。
その後彼が混成大隊長に任命された時、ヨハンはCW中隊長として指揮下につく。
ヴァイスは頻繁に一歳下の部下と相談し、より堅実で効率的な戦術を選択するように心がけた。
幾度と無く戦場を往来することで築かれた二人の信頼関係は、一年前の惑星マーヴェラの攻略戦まで続くことになる。

ヨハンの戦術眼、戦略眼の高さを良く知っていヴァイスとしては、
亡命時に強引に連れて行ってしまおうかとも考えたが、流石に元部下を巻き添えにするのは憚られた。

(故に、結局こうして後悔する羽目になったんだから笑えんな)

今更何を考えても無いものねだりにしかならない以上、ただ前を進む意外に術は無い。

「ヴァイス=パピア=フォン=ゼカルテ中佐、謹んで拝命いたします!」

彼とその大隊は、まさに今白紙の海図を手に大海原に漕ぎ出した。

77 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:43:10 0
>>69
アレンテージョ星系の一角に佇むブラオ・メーアの艦橋では、
渋面の大隊長と喜色満面の技術将官が、モニターに映し出された映像を見ながら討議していた。

「見たまえ中佐、あれが人型機動母艦「アブラクサス」だ」
「母艦ですか?小官には超ド級のCWにしか見えませんが」

艦長にしてCW大隊長の任を受けたフォン=ゼカルテがこの場所にまで来ている理由は、
ひとえに彼をその地位に推薦した技術将官、ダイク博士の呼び出しによるものだった。
バイソン大将をはじめとしたホン司令部の意向を捻じ曲げる程の政治力を、目の前の科学者は有しているのだ。
その呼び出しに応じた…というより応じざるを得なかった一介の中佐の目には、
モニターを通じて、彼の言った通り”艦と言うより巨大なCWといった表現の方が似合う”兵器が映し出されていた。

「その表現も正しいな、中佐。あれは感応リンキングシステムの実験機のようなもんじゃて」
「操縦や戦闘を技術によってではなく、精神によって行う兵器と言うわけですか」

ヴァイスの表情は暗いが、それは頭痛の為だけではない
おそらくそのような技術が汎用化されれば前線において大多数の人手が不要となり、
多くの技術士官や下士官が廃業、いや絶滅するだろう。
絶対的な犠牲者数が減ることは喜ばしいことではあるのだが…

「お話によると、あの中にいるのは例の傭兵あがりの特別大尉だとか。彼の噂についてはご存知ですか?」
「知っとるよ。でなけりゃ起用なんぞせんわい」

にべも無いく言ってのける。戦いと殺戮を求める攻撃的な性格が好ましいと言っているに等しい。
だが、精神の中で攻撃性だけを特化させた時、果たして人は正気を保てるだろうか?
正気を失った狂戦士達が戦線を支配する時、どのような事態になるか今の彼には想像もつかなかった。

78 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:45:58 0
「ま、百聞は一見にしかず、中佐にはあの船の威力をみてもらいたい」

ヴァイスの渋面なぞ歯牙にもかけず、ダイクは船内はアブラクサスに指示を飛ばす。
可能な限り搭載されているであろうミサイルと高出力のビームとが、鹵獲艦で構成された目標群をなぎ払っていく。
中でも圧巻だったのは、主砲の部分がアームのごとく変形して敵艦を文字通り捻り潰したことだった。

「どうかねあの破壊力、惚れ惚れするじゃないか!」
「ですが博士、あの速度では敵に包囲されてしまうでしょう。側面・背面・稼動部と弱点が多すます」

どこまでも肯定的に弁を振るうダイクに対して、ヴァイスの方はどこまでも否定的に”新兵器”を評した。
博士の方は意に介する風も無い。指を左右に振りながら反論する。

「船足なら追加でブースターをつけるなり牽引するなりすれば良かろう。弱点はCW隊を補わせれば済むことだ」

有機的な運用が求められる事態に対して、事前に単機での対策を行うつもりはさらさら無いらしい。
こうなるとヴァイスを読んだ理由も実にわかりやすかった。

「中佐にはあの艦をCW大隊に組み込んでもらいたいのじゃよ」
「私にク・ホリンになれと仰せですか?」

船足が命である彼の大隊にアブラクサスを組み込むのは容易ならざることである。
ひとまず思いつく運用方法としては、ブースターをつけて先頭に配置することで、
敵艦を刺し貫く衝角よろしく敵艦隊に風穴を開けるやり方があるだろう。

「帝国ではヴォルフ級機動巡洋艦の開発を皮切りに、新世代艦隊計画が着々と進んでおる。
 それに対抗するためにもその為にも感応リンキングシステムはは必要不可欠だ。
 兎に角今は実戦データが欲しい。中佐、貴官にも是非協力して欲しい」
「わかりました。微力ながらお引き受け致しましょう」

あくまで要望であるが、された側に選択肢が無いことは言うまでも無い。
頭痛が増しているのをひしひしと感じながら、今後の。

79 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:48:20 0
訂正

× 今後の
○ 今はただ従順に応じるヴァイスであった。

80 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:50:17 0
>>65
>>70-73
アルゴビー宙域

銀河において数多く存在する「コロニー国家」のひとつがここに存在している。
居住可能な惑星や小惑星が一切存在しないこの星系に幾多のコロニーが建造された理由は、
銀河開拓の時代に、オレンボーをはじめとした数多くの恒星系の開拓の中間地点として利用されたことによる。
成り立ち故に流通が盛んな大国であったが、第一次銀河大戦によって殆どのコロニーが破壊されてしまう。
戦争終了後、アルゴビーに残されたのは20のコロニーと1千万程度の人口だけであった。

アルゴビーの絶望の淵から再出発を果たしたが、その歩みは常に苦難の連続だった。
復興は勿論のこと、弱小な極小国家にまで転落した国の立場を回復させなければならなかったからだ。
終戦当時の惨状から、コロニー数を20倍、人口を40倍にまで戻し、
経済立国としての面目を施すところまでたどり着いたのは、
商人達の逞しい商魂と、指導者達の英知とたゆまぬ努力があった故に他ならない。

この国が帝国と連合の境界線に位置していたのは不運としか言いようが無い。
戦争に巻き込まれることによる被害は先の大戦で骨身にしみていたアルゴビー政府は
その政治力の限りを尽くして永世中立を保つべく奔走。

結果、アルゴビーは「銀河で最も戦場から遠い場所」とまで言われるようになったのである。

その不文律が今、覆されようとしていた。

81 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 13:52:25 0
「司令部より入電!先ほどアルゴビー政府から緊急の救難要請が発進された模様。
 ただちに先鋒として大隊は救援に向かうべし。とのことです」
「どういうことだ?あそこは非武装中立地帯の筈だぞ」

海賊にでも狙われたということだろうか?彼の疑問に答えるべく通信士が答える。

「どうやら、帝国軍の攻撃を受けた模様です。」
「宣戦布告も無しにか?」

あそこを攻撃して帝国軍に利益があるとは考えにくい。
中立地帯を強引に抜けて油断する敵を奇襲するという策もあるが、
それなら通過ないしは占領で事足りる。わざわざコロニーを”攻撃する”必要性がどこにあるのか。
が、傍にいる技術将官の狂気に満ちた笑顔を見れば、それらの疑惑も説明がつきそうだった。

「博士、何か知っておられますね?」
「そう難しい話ではないぞ中佐。衛生非武装中立国を占領ではなく攻撃を持って報いる理由は一つ。
 彼らが戦力を持って帝国軍に害をなしたということじゃ」

目の前のマッドサイエンティストが何を企んだのか、彼の知るところではない。
ダイクの政治力の高さは、連合軍内部においても国籍に左右されないものがあるのだ。
おそらく帝国軍にアルゴビーに対して攻撃をしかけさせるだけの策略をあらかじめ用意していたのだろう。

(気に食わん話だ。何が目的かは知らんが、平然と民衆が犠牲になるような謀略(マネ)を──)

不満がさらにヴァイスの頭痛を強め、表情を険しくさせる。
無論、現在進行形で犠牲者が出ている以上、救援に向かわない訳にはいかない。
詳細情報によれば敵戦力は多数ではないそうだが、こちらはたったの1個大隊でしかないのだ。

(艦隊が来るまで持ちこたえられるだろうか?)

懸念材料は山ほど抱えている。だが、今は諮詢している暇も無さそうだ。
全艦に補給を済ませると、新たにアブラクサスを面子に加えたる独立CW大隊はアルゴビー宙域に向けて発進した。

82 名前:ウォルフガング ◆opccglODi6 [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 15:22:22 0
ヴァイス中佐の率いる隊に組み込まれることになる数日前…
人型機動母艦アブラクサスは、連合軍領のガデヴァナ宙域にて試験運用されていた
ここは、数十メートルから数百メートルの小惑星が点在する小規模な小惑星帯である
主に暗礁宙域での戦闘を想定した演習が行われていたが、数年前に閉鎖された
現在は技術部が管理しており、新兵器の極秘試験運用などが行われている

「どうかね、主砲の調子は?」
「こいつぁご機嫌だぜ
 頭ン中で考えるだけで動かせる船なんて最高だな」
「当然も当然じゃ
 何せわしの開発した感応リンキングシステムを搭載しているのだからな
 大火力に優れた運動性、そして白兵戦能力を追求しておる」
「ま、こんなに便利なのに誰でもにゃ使えネエって点は不便だな」
「うむ、現段階では、感応リンキングシステムをまともに扱えるのは大尉だけだからな
 が、何れは誰にでも使えるように改良を加え、更に更なる小型化を実施するつもりじゃ
 将来的には、全ての艦やCWが脳内思考だけで制御できるようになる
 そうなれば、帝国軍など物の数ではないわ!」
「期待してるぜ、ダイク博士
 ま、データは俺がきっちり取ってやっからよ
 安心しな」

アブラクサスの横には、連合軍の200メートル級駆逐艦が並行していた
そこに、マッドサイエンティストと名高いダイク博士が居る
アブラクサスのブリッジは頭部だが、クルーはスキンヘッドの大男一人である
艦長席にふんぞり返り、夥しい数のコードと繋がったメットを被りお菓子を食べている
彼に艦長の才能も経験も無く、この艦を動かすのは彼一人である
頭で考えるだけで、腕が動き主砲が発射される
対空砲火や無人機の制御は人工知能が行っているため、半自動ではある
兎にも角にも、全ての準備が整ったのである

83 名前:ウォルフガング ◆opccglODi6 [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 15:43:52 0
「特別大尉、中佐に挨拶くらいはしておけ
 この部隊の司令官なのだからな」

ブリッジから博士に呼びかけられ、モニターを回して部隊の司令らしき男と顔を合わせる
小僧のくせに、如何にも将校クラスの軍人であるという雰囲気を漂わせた奴である
博士の話では、特別階級とは一般階級よりも二階級上に扱われる特殊な階級らしい
つまり、俺の扱いは一般階級では中佐で、この男と同等ということである
動かすのは俺だけとは言え、一応肩書きは艦長なのだ
これぐらい建前だけでもやるのは当然だろう

「俺の特別大尉ってのは中佐と同格だろうがよ
 なんでそんな奴の命令に従わにゃならねえんだ?」
「不服かもしれんが我慢してくれ
 それとも、おまえさんが部隊の指揮を執るのか?」
「へっ、それこそ勘弁だぜ
 こちとらCWのパイロットしかやったことねえもんでな
 指揮官なぞ真っ平御免だ
 というわけで、アンタの命令にゃとりあえず従ってやるから安心してくれ
 …その代わりと言っちゃあなんだが、思う存分暴れさせてもらうぜ
 中立地帯を帝国の奴らが襲ってんだろ?
 元々敵だけどよ、そんなクズどもに容赦するこたあねえよな、へへへ…」

CWでの実戦は嫌というほどやってきたが、こんな新鮮で刺激的なモノは初めてだ
ガキの頃に少年兵として初めて戦場に出たときの期待感と同様の気分だ
最高にホットでクールなパーティーが始まるのだから

84 名前:ヨハン・フォン・シェーンブルン ◆sb1dqdZ74k [sage] 投稿日:2008/11/03(月) 22:51:52 O
>>71ー73
ヨハンは事前に、アルゴビー艦隊を出来るだけコロニー群から引き離したうえで、軍事基地化された、あるいはその疑いのあるコロニーに対し、ミサイル攻撃を行って破壊したのち帰投する。という作戦案をアレフティナに提出していた。
しかし、苦渋に満ちた表情で指揮を続ける上官を見る限り、彼の作戦案が忠実に実行されることはないだろう。


85 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/04(火) 17:53:20 0
──一筋の白光が堅い装甲に覆われた戦闘艦をいとも容易く突き破る。
それから数秒と経たずして戦闘艦は爆煙をあげ、即座に中の乗務員全てを死に至らしめる火球と化していく。
多くはそのまま爆発して粉々になるが、中には艦船の形を保ったまま付近のコロニーと衝突し、
コロニーの一角ごと中の住民を巻き込んで砕け散るという、凄惨な光景も展開されていた。

「戦艦アールスト、機関部に被弾! 救援を、救援を請──うわぁぁぁああっ!!」

通信から悲痛な叫び声があがると共に、確実に一つ、また一つと爆発の光が戦闘宙域を照らした。
しかし、未だなお生き残り戦い続けている人間には、その一つ一つに関心を示す余裕などない。
それは司令官ともなれば尚更である。司令席に座したまま、眼前の敵艦隊を見つめ続けているアレフティナも、
歪んだその表情とは裏腹に、敵の動きからその特性を冷静に分析し始めていた。

「……艦隊の全体的な連動こそ稚拙なものの、個々の動きは大したものだ。ゲリラ戦術に慣れているな」

敵の艦隊は真っ向から立ち向かうことなく、ことあるごとにコロニーを盾として利用し、
火砲の数で勝るアレフティナ艦隊の苛烈な攻撃にしぶとく耐えていた。
しかし、そこでアレフティナがとある違和感に気がついたのは、正にそんな敵の動きを目の当たりにしたからだろう。

「妙だな……。まるで奴らは初めからコロニーなど守る気がないように見える。
 いやむしろ、作戦として大きく利用しているのは明らかだ。奴らは自国民のことなど考えていないのか?」
「確かに……逆にできるだけコロニーに被害が及ばないよう心がけているのは、我々の方だと言えますな。
 それに敵の懐深く潜り込んでいる我々に対し、未だ我々と砲火を交えているのは目の前のあの艦隊だけです。
 増援が来る気配すら感じられないのは、いささか奇妙ですな。どういうつもりなのでしょうか?」
「保有した軍事兵器が攻撃艦30隻、というわけでもあるまい。もしかすると、奴らは30隻で我々を引き付ける内に、
 何か強力な破壊兵器の照準を我々に合わせているのかも……」

顎を手の拳に乗せ、いつになく神妙な顔つきで敵の意図に思いを巡らすアレフティナに対し、
セドリックは即座にヨハンの作戦案の実行を具申した。

「──なにっ!? あの作戦を使えとっ!?」
「左様です。仮に提督の危惧なされたことが敵の意図であるなら、シェーンブルン少佐の作戦が最も有効でしょう」
「しかし、実際は軍事基地などどこにも見当たらないではないか! あるのは居住用コロニーだけだろう!」

思わずアレフティナは司令席を立ち、破壊されたコロニーを指差して強い口調で言い返した。
セドリックは、ここまで激情する彼女を見たのは恐らく始めてであっただろう。
しかしそんな司令官を見てもセドリックは動揺せず、あくまで冷静に、理路整然としていた。

「ですが、ここから攻撃艦が30隻も出てきたことは確かです」
「──! そ、それは、そう……だが」
「となれば、この宙域のどこかに、居住用コロニーに偽装された軍事基地があるはずです。
 ですが我々にはその場所を特定するだけの時間も余力もありません。
 ……特定する術がない以上、我々にとって、目に映る全てのコロニーを疑うしかないでしょう。
 想定されうる事態を未然に防ぐ為にも、どうかご決心を」

86 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/04(火) 17:59:50 0
アレフティナは再び司令席にどかりと座り込み、天上を仰ぎ見た。
その瞳は、どこか弱々しいものがあった。

「敵軍事力の無力化が我々に与えられた任務です。例えこの一帯のコロニーをデブリに変えてしまうとしても、
 ベッカート閣下には想定内の出来事に過ぎないでしょう」
「……確かに、そうだろうねぇ……」

瞳と同じく、そう弱々しく呟いたアレフティナは、天上からメインスクリーンに映った敵艦隊に視線を移すと、
軍帽を被りなおして、今度は強く、はっきりと言った。

「全艦、一時後退せよ! そしてミサイル発射用意! 目標は……敵の中央艦隊が潜むコロニー!」
「ミサイル、発射準備よし!」
「……撃てッ!!」

──瞬間、星の数ほどもあるような無数の巨大なミサイルが、500万人は居住しているであろう
一つのコロニーに向けて、発射された。

次の瞬間にメインスクリーンが捕えた映像は、光と、星が寿命を終える時に見せるような巨大な爆発であった。
コロニーの硬い外壁部など着弾と同時に跡形もなく消え去り、コロニーは直後の爆発で内部から破裂したように
見事に真っ二つに引き裂かれていた。そして、それまでそのコロニーの陰に潜んでいた敵艦隊も、
多くは爆発に巻き込まれ誘爆し、急速に離脱を図る艦も、飛ばされたコロニーの残骸と衝突しては
無残に破壊されていった──。
結果としては、最初の一撃を除いて、これまで時間をかけてできる限りコロニーを避けながら攻撃を加えて
得た戦果を、わずか数秒でそれらを遥かに上回る戦果が舞い込んだことになった。
結果を見たアレフティナは勿論、作戦を薦めた当事者であるセドリックの心中も、複雑であった。

「て、敵艦隊……ほぼ全滅です……!!」
「……左翼と右翼の艦隊は他のコロニーの破壊に移れ。我々中央は残敵の掃討に移る……以上だ。
 ……一番簡単なやり方で、一番大きい戦果を上げたか。私の苦労は何だったのかと、考えさせられるな」
「敵国人とはいえ、民衆に被害を及ぼさないとした提督の姿勢は立派です。
 恥ずべきは民衆を盾としたアルゴビー艦隊でしょう」

セドリックはそう言ったが、アレフティナはそれに対しては何も言おうとはしなかった。
アレフティナの反応に期待していたわけでもないセドリックも、これ以上何も言うことはなく、
しばしの間、艦橋には一時の沈黙が訪れた。
そしてそれを破ったのは、オペレーターの声だった。

「提督! 残敵からの通信が入りまして、敵は降伏すると言っていますが……」
「降伏……? できるなら、もう少し早く降伏して欲しかったものだ……」
「いや、それがその……敵は……海賊を名乗っておりまして……」
「海賊ッ!?」

アレフティナは思わず驚きの声を挙げた。隣で佇むセドリックは声を挙げなかったものの、
流石に顔に出さないことはできなかったのか、その驚きの表情が心中を物語っていた。

「とにかく……会って確かめよう。降伏を受諾すると伝えろ! そして司令官を艦橋まで連れてきな!」

87 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/04(火) 18:04:47 0
体も顔も無骨。もみあげから口顎にかけて黒いひげがたくわえられ、
片方の目には眼帯がつけられている、如何にも古典的な海賊の格好をした男が数人の兵士に
連れられて艦橋に姿を現した。そしてすぐさまこの男に対しての説明をセドリックが語り始めた。

「"キャプテン・ヴェイン"。詳しい経歴は分かりませんが、まず912年、大戦勃発の混乱に乗じて
 帝国軍の軍艦1隻を強奪していることが記録に残っています」
「へっへ、あの時は苦労しましたぜ? こちらも命がけで……」
「……。それからこの20年の間に、帝国、連合問わず度々艦船を襲撃。民間船から金品を巻き上げ、
 周辺の海賊を傘下に収めるなどして勢力を拡大。927年には15隻の海賊船でオレンボー星系に出現し、
 帝国の補給艦から金品と物資を強奪した後、乗務員全員を殺害したことが記録されています」
「なるほど……。海賊なら、コロニーを盾にしても痛くも痒くもないだろうな……納得だ」

アレフティナは呆れながら顔を横に振った。
だが、それは目の前にしているこの海賊の頭にではなく、海賊と気付けなかった自分自身に対してであった。

「……ねぇ、帝国の巡洋艦を撃沈したのはあんたらなのかい?」
「へ、へぇ……確かにそうですが……。仕事を見られるのは避けたかったもんでして……。
 あっしらは、あなた方がその仕返しに来たのだとばかり……」

これが事実だとすれば、アルゴビーは無実の潔白ということになる。
いや、むしろ事実であるからこそ、アレフティナ達はアルゴビー軍ではなく、海賊と戦う羽目になったのだろう。
だが、そうだとすれば、逆に一つの疑問が浮かぶことになる。
それは、何故軍の上層部が、海賊の存在をありもしない軍の存在と取り違えたのか、ということだ。
もし単に勘違いしたのであればこれ程お粗末な話もないだろう。
しかしアレフティナは、それよりも合点のいく解答に気付きつつあった。

(早急な命令に何か釈然としないものがあったが……。
 軍め……初めからアルゴビーに軍事力が無いことを知っていたんじゃないのか?
 海賊による攻撃をアルゴビーの宣戦布告としたのは、それを口実に進攻するためではないのか?
 だとすると……その目的は……)

考えるより先に、アレフティナは口が動いていた。

「帝都に通信だ! ベッカート上級大将を呼び出して!」

しかし、ベッカートに通信が繋がるより早く、アルゴビー宙域には新たな戦いの幕が上がろうとしていた。

88 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/04(火) 18:08:18 0
「──!? れ、レーダーに艦影多数! 我が艦隊に向かっています! これは、連合軍の艦隊です!」

「チッ、もう臭いを嗅ぎ付けてきたか。左翼と右翼を戻らせな! 陣形を整える!」
「はっ!」

キャプテン・ヴェインと称された男は、しばらく艦橋が慌ただしくなる様子を眺めていたが、
自分が周囲から放置されていることに気がつくと、ばつが悪そうに呟いた。

「あ、あの〜……あっしはどうすれば……?」
「あんたは捕虜だ。戦闘が終わったら帝国へ送り届けることになる。そこでたっぷり縄をちょうだいするんだね」

それは絞首刑宣告であった。
海賊であればその処罰も妥当なものであるだろうが、ヴェインはそれを知らなかったのか、
彼は今初めて、自分の置かれた立場というものを理解するのだった。

「お、おい! 俺は捕虜だぞ! 捕虜には保護が約束されてるんじゃないのか、おい!!」
「それは海賊には適用されないのよ。残念ね? ──牢にぶちこんどけ!」

アレフティナは髪をかきあげて、軽くウィンクをしながらヴェインに現実の非情さを告げると、
迫りつつある連合軍を捕えたメインスクリーンに目を向けた。

「どうやら絶対数においてはまだ我が艦隊に分があるようですな。
 しかし、連戦ともなれば兵士の士気の低下は免れますまい」
「無理をする必要は無い。我々は第二陣が到着するまで死守すればいい」
(新たな敵の出現とはいえ、何もせず逃げ出したとなれば、今度こそ私も死刑台送りになるやもしれないからねぇ……)

思いを巡らす内にも、敵艦隊は着々と距離を詰めている。
そして陣形の再編が完了しない内に、ついに敵艦隊が射程距離内へと突入した。

「再編率は80%といったところか……しかし、止むを得ない。全艦、攻撃開始ッ!!」

こうしてアルゴビー宙域の戦い、第二幕が始まった。

89 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/05(水) 00:20:14 0
「どうかね中佐、出発前に例の”特別大尉”と挨拶してみるかね?」

口調こそ穏やかな質問調だが、実質的には命令である以上「お断りします」などと言える訳も無い。
モニターが切り替わり、アブラクサスのメインブリッジが映し出される。
艦長席に鎮座して菓子を貪り食らう巨漢からは、おおよそ緊張感と呼べるものは感じられなかった。

艦長たる特別大尉が身につけたヘルメットは、無数のコードを介してコンピュータに接続されている。
視認すれば非常にわかりやすいこの設備こそが、感応リンキングシステムの根幹なのだろう。

特別大尉がこちらを見る目は怪訝だ。年の差を考えれば小僧と思われても仕方が無い。
かといってあまり舐められる訳にもいかないので、せめて将校らしく毅然とした態度で臨む。
無言の彼を他所に、ヴォルフガングはダイク相手に不満をぶつけ始めた。
だが会話を聞く限り、粗野な傭兵は自分の領分を踏み越えるような迂闊さは持っていないようだ。

(いいだろう…どうせこちらは引くも進むも地獄。ならこの男と組んでみるのも一興だ)

そのうち男がこちらに向けて、不遜な態度を崩さぬまま挨拶してきたが、もとよりその態度を咎めるつもりも無い。
自分にも覚えのあることだし、従順で規律に満ちた態度を目の前の傭兵に求める方がお門違いと言うものだろう。

「こちらこそよろしく頼むぞ、特別大尉殿。
 そこまで大言壮語したからには、卿の経歴と戦闘に対する意欲は大いに活用させてもらう」
「カカカカ、お互いに自己紹介が終わったようじゃの。それでは向かうとするか」

モニター通信が切られ、変わりに目標までの地図が表示される。
ブリッジの左舷にはアブラクサスに加速用のブースターが取り付けられている様子が見て取れた。
ダイクの説明によれば長時間の使用に耐える代物ではないらしいが、そもそも長期的に加速させる必要も無いから十分である。
いずれにしろ、戦場までは牽引する必要がある。数隻の駆逐艦からケーブルが延び、巨大なCWと連結した。

「発進!」

号令と共に、CW1個大隊がアルゴビーに向けて発進した。

90 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/05(水) 00:21:41 0
>>84-88
戦場に向かうにあたって、ヴァイスは情報の収集を徹底させた。
コロニーから発進させる情報は事態をリアルタイムで把握する材料になる為、映像音声問わず収集の必要があったからだ。
勿論、それら全てが鮮明なものとなってくるわけではないが、
現時点で大まかな情勢くらいであればぎりぎりわかるレベルにあった。

「…複合的に判断するに、アルゴビー側の船団はコロニーを盾にして戦っている模様ですな」
「解せんな。コロニー側の艦隊が取る行動としては理に適っていないぞ」

ヴァイスも副官も首をかしげた。コロニー側と目される艦隊が守るべき住処と住民を盾にし、
攻撃をしかけた帝国軍がそれに気を取られ、遅延と損害を余儀なくされているという状況が不可解でだったからだ。

(攻撃側は…ひょっとしたらアレフティナ司令かもしれんな)

確信に足る材料は無いが、彼女以外の軍人で民間人に躊躇して消極的対処を取る者は中々いないだろう。
だとすれば、彼女はいかなる指令の元にコロニーに攻撃をしかけなければならないのか。
ダイクは先ほどアルゴビー側からの攻撃の可能性を諮詢したが、どうにも納得しかねる。
あるいはあのマッドサイエンティストが、帝国軍が動かざるを得ない情報を意図的にリークしたのだろうか。

(いずれにしろやりきれん…住民にとってはたまったものではないぞ)

大抵のスペースコロニーには、デブリに備えてバリアコーティングが成されている。
勿論、万が一側面壁に穴があこうが火災が発生しようが、即時対処できるシステムも存在した。
が、戦闘に巻き込まれればそれらの仕組みが何ら効力を成さないことは映像音声によって十分に伝わってくる。
露骨な言い方をすれば、攻撃に晒されたコロニーは薄壁一枚で作られた棺桶に過ぎないのだ。
逃げ場も無くサンドバックにされ、内部の大気が炎に包まれた時の凄惨な光景には、ヴァイスにも覚えがある。

───なんとかならないものか!?───

大隊が現場に到着するにはまだ時間がかかる。焦燥感が場を支配した。

91 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/05(水) 00:22:23 0
大隊メンバーの焦燥感がピークに達しようとしていた頃、モニターの表示情報に変化が訪れた。

「帝国艦隊、後退していきます」
「いよいよ強硬手段に出たか…同じ状況下にいれば俺も同じ手段を取らざるをえんだろうな」

軍帽を被りなおし、頭を抱える。敵の司令の心中は察するに余りあった。

「帝国軍、攻撃を再開しました!」

帝国の艦隊から生み出されたミサイル斉射と言う名の洗礼が、円筒状コロニーに次々と突き刺さっていく。
逃げ場の無い筒の中で、無数の熱と光がみるみる広がっていき、最後には大爆発となって深淵の宇宙を照らす。
結果論でしかないが、ヴァイス達は間に合わなかった。沈痛な面持ちがブリッジを支配する。
だが、その直後に傍受された通信はそんな精神状態を吹き飛ばすには十分すぎる代物だった。

「海賊だと!?帝国軍は海賊退治のためだけに非武装中立地帯を蹂躙したのか?」

これには流石にヴァイスも驚いた。条約に抵触する軍事行動ともなると国家と国家の衝突になる。
大戦略レベルでの判断は、一介の艦隊指令にはとてもではないが許されるものではない。
もっと上、それこそ参謀本部が絡んでくる…そこまで考えて、彼は非常に嫌な予感に囚われた。
もしこれがあのダイクの策略に端を発していたとしたら、その政治的影響力は敵の高位高官にまで及んでいることになる。

(こいつはとんでもないババ(ジョーカー)を引かされたかもしれんぞ)

内心の身震いを隠しながら、彼は戦闘態勢を整えるように指示を飛ばした。
全体の陣形が縦陣形からより鋭利で突撃を意識した紡錘陣形へと変化する。
その最先端には、牽引艦からワイヤーを外されたアブラクサスが鎮座する格好となった。
アブラクサスには追加ブースターが取り付けられている。
よって移動速度という面では味方の足を阻害しないギリギリの線まで取り繕うことが可能となっている。

92 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/05(水) 00:23:36 0
当然こちらの接近も敵艦隊の知るところとなり、それに伴って鶴翼陣形へと移行しようとしていた。
こうなれば先手必勝である。敵に連戦を強いてその行動の余地を狭めるのが定石だろう。

「ゲイボルグ特別大尉、卿には大隊の最先鋒として突貫してもらう。
 側面と背面のサポートはCW隊の先鋒が勤める」
「良いのですか?相手の方が数では勝っておりますが」

副官の懸念を持って口を挟むのも最もである。だが彼はそれを片手で制すると命令を続ける。

「中衛は前衛に後続してアブラクサスがこじ開けた傷口を押し広げ、強引に突き抜ける。
 旗艦ブラオ・メーアを含む後衛もそれに続くのだ!」
「すると、敵を突破した後衛は最後尾にあってその追撃を受け止め、味方の脱出の時間を稼ぐのですな」

副官の新たな問いかけには、今度は意を得たといわんばかりに頷く。

「そうだ。しかる後に、先鋒は蛇の頭が如く取って返し、再び敵を撃つ、これを繰り返す
 もとより数で劣っているのだから、増援が来るまで持ちこたえるには他に手が無い!」

今までの焦燥感や悲壮感とは違う、明確な緊張感と高揚感がブリッジに浸透していく。
その熱気が一つの渦となって、指揮を取るヴァイスへと集約されていくのだ。

「全艦!突撃開始!」

本来非武装中立が約束されていた筈の場所で、凄惨な戦いの火蓋が切って落とされた。

93 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/05(水) 00:37:08 O
プロバイダーが永久アクセス規制となったので、代行依頼スレに依頼しました。
向こうのスレでトリップを晒したので、これからはトリップを変更します。

94 名前:└|∵|┐[sage] 投稿日:2008/11/07(金) 16:49:47 O
└|∵|┐ポッ!ポッ!
(長き眠りから目覚める)

95 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/08(土) 17:30:37 0
>>89-92
「敵艦隊突撃してきます!」

オペレーターが艦内全てに響き渡るような声で敵の動きを艦橋の司令部に報せる。
しかし、そんなことは敵の陣形を目の当たりにした司令部の人間にとっては予想済みのことであった。

「陣形とその動きを見る限りでは、敵の目的は短期決戦にあるように思われますな。
 すなわち、狙いは旗艦クラスナーエ一つである可能性が高いのではないかと。
 元々敵は絶対数で劣っておりますので、玉砕覚悟の賭けに出たとしても不思議はございますまい」
「うーん……」

アレフティナは副官の言葉に頷きながらも、直ぐに具体的な対抗策を述べようとしなかった。
そんな彼女の態度に痺れを切らしたように、副官セドリックは続いてその対抗策を進言した。
しかし、次に発せられた彼女の言葉はその策に対しての可否ではなく、彼が全く予想だにしないものだった。

「中央部は弾幕を張り続け敵の進撃を阻む間、伸びた両翼は敵の退路の断ちに向かわせ、
 しかる後に前後左右から砲火を浴びせ一挙に殲滅に移るべきです」
「……少佐。思ったんだけど、連合軍はどうしてこうも早くアルゴビーにかけつけたと思う?」

彼は思考の整理もあって、一瞬その回答に躊躇したが、直ぐに現実的な回答を述べた。

「はっ。敵の艦数から考えれば、アルゴビー近くの連合領を航行中の地方艦隊が我々の動きを察知し
 自らの意思によって急行したか、あるいはアルゴビー政府から救援要請を受けたのか……」
「そうだよねぇ。けどそのいずれにしても、本国にそのことが伝わっていないはずがない。
 ……いずれこの宙域には連合の正規艦隊が殺到してくるよ」

彼女がそう言い終えてから、彼は彼女のいわんとすることに数秒の間気付けないでいたが、
それに気付くと、思わず目を見開いて呟いた。

「……まさか!」
「黙ってても増援が来るのだから、あの艦隊は初めから自分達だけで勝つつもりはないのかもしれないねぇ。
 仮にそう考えているとすれば、勿論この突撃は、玉砕覚悟のものであるということがなくなる」
「……すると、敵の意図は短期決戦とは全く逆の、増援が来るまでの間の時間稼ぎにあると?」
「確信してるわけじゃない。あくまでの私が考えた可能性の一つさ。この可能性について、少佐はどう考える?」

確かに確証があるわけではない。しかし、彼にとっては自分が勧めた作戦を執るより、
司令官である彼女が考えているであろう作戦の方が、既に有効であるように感じられていた。

96 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/08(土) 17:35:40 0
「……十分にありえるでしょう。それで、提督は敵の作戦をどうお読みになりますか?」
「今にしても思えば、数の少ない敵が敢えて防御の弱い突撃陣を形成したのは、こちらが包囲陣を敷くように誘導
 するためだったのかもしれないな。とすれば、敵は包囲網を形成される前に層の薄い中央部を突破しようとするだろう。
 しかし我々の後背にあるのは帝国領オレンボー。敵が少数であの広大な星域を占領しようという気がなければ、
 敵の選択肢は絞られる」
「つまり突破後、急速に反転回頭して背を向けた我々中央部を再び撃つ、と……。
 反撃しようと全艦が躍起になればそれこそ敵の思う壺になるでしょうな」
「まぁ、あくまで時間を稼ぐつもりならこちらも望むところではあるのさ。アルゴビーへの奇襲を察知してから艦隊を
 差し向けた連合より、作戦開始から順次艦隊を差し向けている帝国の方が、第二陣の到着が早いはずだからね。
 だけどかといって敵の思う通りに動けば、こちらの戦力の消費も馬鹿にならない。だからここは敵の突破を阻止する」
「やはり中央部の弾幕を厚くさせますか?」
「それもあるけど……何もこちらがただ敵の接近を待つことはないのさ。つまり、全軍を敵の進撃速度と方向に
 合わせてスライドさせていけば、こちらは常に左右前方の三方向から砲火を浴びせることができるだろう?
 そこで広げられた左右の翼を上手く閉じることができれば、敵は前後左右の十字砲火に晒される」
 
彼女はいつになくキッパリと対抗策を言ってのけたが、内心ではあまり自信を持っていたわけではなかった。
それには生来の性格以前に、彼女自身がこの作戦の問題点に大きな不安を抱いていたからだった。
だが、彼女がそれを言うまでもなく、副官セドリックもその問題点に気がついていた。

「突破を許さず、尚且つ敵を包囲し続け絶え間なく砲火を浴びせる……成功すれば間違いなく有効でしょうが、
 問題があるとすれば、各艦がちゃんと連動して動いてくれるかどうかですな」
「そう……。しかも両翼は広げている分、敵の動きに合わせつつ翼を閉じようとする時の負担は計り知れない。
 秒単位の正確さが求められるだろうからねぇ……。しかし、これ以上他の策を練る時間もない」
「加えて我が艦隊は遠征連戦続きでただでさえ兵士の士気の低下が懸念されますからな。
 これは提督の無理はしないとの前言を、撤回しなくてはならないでしょう」

彼のこの言葉に、彼女は腕を組みながら顔を下に向け一つ溜め息をついた。
その顔には、自分の思い通りにはいかない世の厳しさを改めて知ったといわんばかりの表情が浮かんでいた。
再び彼女が顔を上げた時、メインスクリーンには間近まで迫った敵の先陣が映っていた。

「提督! ご命令を!」
「少佐、全艦に今の作戦を通達! そして10秒後に全砲門を開いて弾幕を張り、敵の進撃速度に合わせて後退!
 これより作戦に入る! 総員、心してかかれ!」

97 名前:ヨハン・フォン・シェーンブルン ◆sb1dqdZ74k [sage] 投稿日:2008/11/09(日) 18:55:05 O
>>95ー96
ヨハンは敵の巨大CWに注目していた。
何故あのような巨大兵器が投入されたのか?
地方のパトロール艦隊がこのような兵器を所有しているはずがない。
敵の目的は新兵器の性能実験ではないか。
「意見具申。敵の目的は新兵器の性能実験である可能性があります。よって小官は敵の巨大CWに攻撃を集中させるべきであると考えます」

98 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/10(月) 22:33:08 O
今から投下依頼してきます。
鳥はuruQDYw3oです。

99 名前:ヴァイス中佐 ◆uruQDYRw3o [sage] 投稿日:2008/11/10(月) 22:41:13 0
>>95-97
艦隊戦というものは、指揮官の性格や選択によって様々な局面を見せる。
配置上の関係から部隊の責任度合いというものも変わってくることもあり、結果的に遊兵が出現してしまうことも珍しくない。
その意味では、鶴翼の包囲陣において責任の軽い部隊など一つもなかった。

中央の部隊は敵の突進を受け止めねばならず、左右両翼は敵より素早い行動によって蓋を閉めねばならない。
仮に敵を完全に包囲下においたとしても、艦隊を一個の円として運用する以上その線は細くならざるを得ず、
ほんの僅かの緩みを見せたが最後、蟻があけた小さな穴から堤が決壊してしまうように、敵の突破を許してしまう羽目になる。

故に包囲殲滅線は困難を極めるのだ。それは時と場所を違えても決して変わらない。
古来に伝わる英雄によって確立された戦術が、銀河暦を迎えた今でも士官学校の教本に残っている所以である。

それを避けるべく銀河の端で一個大隊の指揮を取る男が、低くうめいた。

「…これは」

数で勝る相手の包囲陣形に対して時間を稼ぐ為に、突破してこれをかき乱す。
巡洋艦巡洋艦ブラオ・メーアのメインブリッジにいたヴァイスは、そう判断して突撃命令を出したのだが、
モニターに表示される敵艦隊の動きを見つめるうち、指揮官としてその脳裏に違和感と疑念が生じさせていたのだ。

「…敵左翼が若干ブレてますな」

副官を務めるこの男もまた、敵の動きに訝しげに見ている。
こちらを包囲せんと動き出した敵左翼の中に、僅かながら後退しているものを見つけたのだ。

(間違いない!)

命令を出した直後に彼が抱いた懸念、それは敵が移動包囲戦をしかけてくる可能性だった。
片方の突貫にあわせて引く、数に驕らず有機的かつ柔軟な戦法を選択している。
指揮官はアレフティナであるというヴァイスの推察は確信へと変わった。

100 名前:ヴァイス中佐 ◆uruQDYRw3o [sage] 投稿日:2008/11/10(月) 22:43:42 0
「敵は後退しながらこっちを包み込む気か!」
「中佐!」

副官も言葉に出してこそ言わないが、その表情が突撃命令の撤回を訴えていた。
だが、放り投げたサイが元に戻らないように最早停止命令を出すことも出来ない。
命令を出しても、それが正確に伝達されるまでは若干の時間を要する。
既に先鋒では弾幕の張り合いが開始されていた。この段階で反転後退と命令を出そうものなら…

「それこそ敵の包囲殲滅にどっぷりと嵌るぞ」

前衛は最早とめようが無いし、全体の動きを止めるのも危険だった。
それならば、ポイントを変えてせめてその方向を変えるしかない。

「目標を変更する。中衛を右翼、後衛を左翼としそれぞれ敵左翼、後衛は敵右翼を叩く!」
「兵力を分散するのですか!?」

兵力を集中させるのは兵法の定石であるのに、あえて無視しようと言うのだから副官の驚きは当然と言えた。
ましてや戦力では敵の方が勝っているのだから、正気の沙汰ではない。

「敵の両翼、個々の艦船で見れば操船は決して悪かないが、
 後退しながら敵の包囲を行うには運用レベルでの訓練が足りとらん」
「そこで敵の虚をつくと?」

中央突破を改め、挟み撃ちのつもりでいた敵への奇襲に切り替えようと言うのだ。
味方の艦隊が来るまで時間を稼がねばならない事情故の苦肉の策のつもりが、
先鋒のアブラクサスがどうにも目立ち、次第に敵の矛先を引き受けていったことが僥倖となった。
その分連合側の両翼には枷がついておらず、より自由な戦術的行動を取れるからだ。

(とはいっても、選択肢は限られているがな)

彼の作戦とはこうだ。帝国軍は蛇を誘い込みながら両の手でその頭を捕まえようとしている。
それならば新たに二匹の蛇を出現させ、その手首に噛み付かせるまでだ。
こうして敵が怯んだ隙にそのまま敵後方に回り込み、先鋒とあわせて敵中央部を挟撃する。
問題があるとすれば、敵の両翼を混乱させても尚、味方が数で劣っている点だった。

「敵側面を横殴りにしてすり抜けろ!…さぁて、うまくいくだろうかねぇ」

頭痛薬を口に放り込みながら彼は自嘲気味に呟いた。

101 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/12(水) 20:55:17 0
>>97
主任参謀シェーンブルンが敵の先陣に紛れた、特殊な形の攻撃艦を発見したのは、
アレフティナが全艦に向けて移動包囲戦の指令を出した直後だった。
艦橋にいる司令官と副官の二人は、とっさにメインスクリーンに目を向けた。

「確かに見ない形の戦艦だな。いや、戦艦というよりは、巡洋艦に近い大きさだが」
「形は主任参謀の指摘する通り、CWを連想させるものですが……」

副官セドリックはそこで言葉を詰まらせた。当然である。
形を見ればCWと判断できるかもしれないが、艦船に見えるのもまた事実であり、
しかもあれ程巨大なCWなどこれまでに例がなかったのだから。
いずれにせよ、「あれは新兵器」であろうという認識においては、既に艦橋の三人の考えは一致していると言えた。

「小官も主任参謀殿の意見に賛同いたします。巡洋艦であれCWであれ、性能が未知数である以上、
 どんな破壊兵器を備えているか分かりません。いずれにせよ、とにかくあの兵器は鹵獲、または破壊すべきでしょう」
「ふむ……。分かった、貴官らの言に従おう。だがその前に、あの妙な形の艦船についてのデータを出来る限り
 集めておこう。主任参謀、頼まれてくれるね?」

アレフティナはシェーンブルンにそう伝えると、次に新兵器への集中砲火を命じた。
次にオペレーターの報告を聞く時は、敵新兵器の撃沈が確認された時であろうと艦橋にいる誰もが
考えていただろう。ところがそこに予想だにしない報告が、司令部の三人のもとへと届けられるのだった。
>>99-100
「……? て、敵が三つの部隊に分散しました! その内二つは味方右翼、左翼に向かっています!」

三人の内誰もが耳を疑っただろう。
だが彼らはオペレーターに問い直すこともせず、無言の内に互いに目だけを合わせて、
敵の意図について素早く考えを巡らし始めていた。

「とても正気とは思えませんな。これでは数の劣勢を補うどころか、逆に自らを窮地に追い込んだようなものです。
 こちらの作戦に気が付いて、起死回生は不可能と判断し自棄になったのでしょうか?」
「そうだと有り難い。けど、こちらの作戦に気が付いたなら、それを逆手に取った敵の作戦と考えるべきかな。
 とするならば、だ……やはり……動きが"雑"な両翼の隙を敵が見逃さなかったということか……。
 分散した敵の両翼が我々の両翼の動きを牽制する間、敵先端部のみが中央部への突撃に徹するのか、
 それともやはり分散しても敵全ての最終的な狙いが我々中央部への攻撃にあるのか……」

彼女はそこまで言うと、肘をついて頬を手に乗せ、逆の手の指でデスクを「トントン」と突き始めた。
瞬時に明確な答えを出さずにいた彼女には、どこがその表情に焦りの色が浮かんでいるようだったが、
次の副官の一言が、彼女からそれを振り払わせた。

「……いずれにしましても、敵の策が諸刃の剣であることは確かでしょう。
 形勢は未だ我々の優勢です。こちらが必要以上に警戒して、予防線を張ることもないと存じますが」
「……ふむ……そうか、そうだな……。ならば、こちらは単純に分散した敵の弱点を利用するだけにしようか。
 全艦に"我が方優勢。怯まず、一つ一つ慎重に目の前の敵を墜とせ"と伝えな」
(やれやれ……慌てるのが私じゃね……。これじゃどっちが司令官だか……)

軍帽を被り直しながら、彼女は自分自身に苦笑していた。

102 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 19:15:28 0
惑星ホンから出動したロゼアン連合軍の艦隊は、最大限の速力を持ってアルゴビー宙域を目指していた。
その勢いたるや、司令官の名前にもある猛牛の突進を連想させるものがあった。

「急げ、4億の民衆が窮地に晒されているのだ」

旗艦ビャウォヴィエジャの艦橋で、老提督は静かながらも力強さを持って厳命する。
既に一基のコロニーが塵芥と化している以上、一刻の猶予も無いのだ。

司令官たるジャック=バイソン大将が率いるのは4個艦隊4000隻、動員している将兵の数にして80万は下らない。
だが、アルゴビー救出という戦略上の目的を果たすに十分と言い切ることは出来ないだろう。
帝国軍は明確な意図によって攻撃を開始した以上、後続の艦隊が確実に押し寄せてくる。

「それにしても厄介なことだ。敵は予め可能な限りの用意をできるのに比べてこちらは…」
「即時に投入できるだけの戦力には限度があるでしょうな。後手に回っている弱みでしょう」

参謀のマサムネ=ヤギュウ准将の応答に頷くも、表情は冴えなかった。
だが、彼らの元にその曇りがちな表情が一変する情報が齎される。
人道支援と証したノルド共和国の救助部隊が既に出発しているというのだ。

「対応が早すぎますね」

救援要請が届いてから行動を起こせば、今ようやく救助部隊の編成と収集が始まったくらいであろう。
ホンから出たこの艦隊とて先のオカダ大将(死後二階級特進)の襲撃戦からの臨戦態勢があった故である。
にもかかわらずノルド側が既に出発しているとなると、救助部隊には事前に指示が出ていたことになる。

「今回は連合側の方が敵の内部情報を事前に掴んだ…ということか?」
「いえ、それでしたら我々に伝わらないという道理がありません…あるいは…」

ヤギュウ准将の脳裏には、ノルドが描いた絵というものがおぼろげながら浮かんできた。

103 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 19:17:15 0
ロゼアナ連合において、”国家”などというものは規模の大小に関わらず地方行政の単位の一つでしかなく、
各国の元首などはその選抜方法の違いを問わず酋長と呼んでしまってもいいくらいの扱いである。
ロゼアナの政治体制は、複数の国家からなる選挙区から選出させた三百人あまりの議員達によって決定されるのだ。

連合はより大勢の人間の支持で成り立つ民主主義を人類史上至高の政治体制と認識し、崇拝している。
だがそれは51%を抑えれば勝利できる故に49%を切捨てという露骨な言い方をすること出来る。
51%の支持を得た候補者を送り出した国家が、その選挙区で51%の勢力を得ていればそのまま議員当選という按配だ。

連合の制度上議員はまず一つの国家から候補を一人推薦することが許されている。選出方法に規定は無い。
国内において、連合議会の選挙権を国民による投票で過半数を得た──いわゆる民主的な方法で選出された候補者は、
その過程で投票された全ての票を、議員選挙の本選において己の票として扱うことが出来るのだ。
これは、膨大な量となる開票作業を可能な限り短縮するために設けられた規則である。

「時期を考えれば自ずと正解が見えてくるかもしれません。今は11月の半ばですので…」
「連合議会の選挙が近いということか」
「亡命者や難民は、正式な手続きを踏んだ上であれば連合議会における選挙権が与えられますからね」

簡単に言えば、億単位の難民はそのまま億単位の票となり、選挙区内部での自国の影響力を高められるのだ。
連合に送り出す議員を選出する際に、より自国の意思が反映されやすくなるから当然票田を欲する。
看過しがたかった。参謀の推察が正しければ、ノルド共和国は何らかの形で情報を掴んでおり、
独自に救助部隊を編成しておきながら、連合軍全体に情報を共有しなかったということになる。

「結果的に、コロニーの住民はノルドの地位向上のための道具とされたと言うことか!」
「しかも現場に急行したのはダイク技術将官お抱えの実験部隊の模様です」

またあやつか──!あの老人は一体どういうつもりなのだ──!バイソンは溜息と共に天を仰いだ。
攻撃を仕掛けた帝国側の意図はわかる。空白地帯を飛びぬけて敵地に攻め入るという発想は古来から存在するのだ。
それに付け込んだノルド側の目的も見えてきた。国益に沿った行動でしかない。
だが、あの科学者の思考だけは皆目見当がつかない。司令官の苛立ちは募る一方であった。

「閣下、いずれにせよ今は我々の成せることを成す。それだけでしょう」
「そうだな。貴官の言うとおりだ」

深く椅子に座りなおすと、今は目の前の事態に備える以外のことを脳裏から排除した。

104 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 19:19:47 0
その頃、戦場となったアルゴビーでは、戦局は刻一刻と変化しつつあった。
移動包囲戦術をとった帝国軍に対し、寡兵の連合側が戦力の分散を持って応じた為である。
純戦術的に見ても非常に稚拙極まる決断をした指揮官は、旗艦の艦橋で注意深くモニターを見つめていた。

「敵は中々に慎重だな…」
「我々は数で劣っています。各個撃破を狙っているのでしょう」

その言葉どおり、目前の敵は積極的には動かず有効射程内に相手が入ってくるのを待ち構えているようだ。
相手が寄せてくれば迎え撃ち、取って返すようならそのままジリジリと寄せてくる心算だろう。

「ならば、さらに二手にわかれる。敵左翼に相対している右翼にも同一行動を取るように伝達しろ」
「正気ですか中佐!?」

言葉遣いとしては不適切だが、副官はそれを意識する精神的余裕をほんの一瞬失っていた。
だが、それとは裏腹にヴァイスの表情には先ほどの頭痛による苛立ちから、次第に不敵な笑みのような余裕あるものへと姿を変えていく。

「各艦、戦術端末のBB5回路を開き、暗号ファイルを解答せよ」

若き指揮官は自身を持ってその指示を出した後、徐に立ち上がった。

「全艦!全速前進!」

105 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 19:20:18 0
駆逐艦からなる両翼は、敵に向かって悠然と突進したと思うとそれぞれ敵両翼の有効射程範囲外で二手に分かれた。
挟撃する気か?と連合側の指揮官が防戦に努めるべく指示を出したが、その予想を大いに裏切り、
連合軍の駆逐艦達は彼らの目の前を悠然と通り過ぎ、後方で合流後してそのまま前進を続けたのである。

───俺達を平然と無視して中央を狙う気か!──

帝国軍の両翼の指揮官がどのような心理状態に陥ったかを想像するのは容易かろう。
そのまま行かせてなるものかとばかりに急速反転して敵の後背を撃たんとしたが、包囲隊形を取りつつ押し寄せたことが仇となった。

「な、なんだこれは!?」
「機雷です!うわああぁああ!」

機雷を即席の撒き菱として活用したのである。手段としては単純極まりないものだし、確実性にかける。
それでも少数の敵から無視されたことで視野狭窄に陥っていた敵の両翼は簡単に罠に嵌った。
機雷により爆発、座礁した艦船が後続の艦船の前方を塞ぐ格好になっている以上、
帝国側の両翼は即時追撃を断念せざるを得なかった。

仮に相手が体勢を立て直しても、船足を考えればしばらくはこちらの優位を保てる筈だ。
敵は彼の狙い通りに見事分断された。後は3隊による敵中央部挟撃を貫徹するのみである。

「突撃!ただし敵の機雷原や罠には最新の注意を払いつつ…な」

106 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/11/16(日) 22:21:18 0
現在の登場人物

帝国側
バルテル・ハインリッヒ・フォン・ベッカート上級大将
アレフティナ・レオーノフ中佐
ヨハン・フォン・シェーンブルン少佐
セドリック少佐
ユリア・フォン・シェーンブルン技術大尉(ヨハンの姉)

連合側
ジャック・バイソン大将
オカダ少将→大将(戦死後二階級特進)
マサムネ・ヤギュウ准将
ダイク技術将官
ヴァイス・パピア・フォン・ゼカルテ中佐
ウォルフガング・ゲイボルグ特別大尉

その他
キャプテン・ヴェイン(海賊)

抜けがあったらよろ

107 名前:└|∵|┐[└|∵|┐] 投稿日:2008/11/16(日) 22:29:00 O
└|∵|┐ポーッ!

(大地を割り登場)

108 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 23:38:51 0
>>104-105
スクリーンを通して戦況を見つめるアレフティナは思わず舌打ちをした。
傍らに立つ副官セドリックの表情も、苦虫を噛み潰したようなものとなっていた。
それは敵の動きに関する誤算からくるものであったが、
彼らはその表情とは裏腹に、至って冷静ともいえる会話を続けていた。

「敵が接近してきます。艦長として、ここは旗艦を下がらせることにしますが、よろしいですな?」
「艦長の良きように。……中央部を敵の動きに合わせて更に後退。両翼はそれぞれ時計回り、
 反時計回りに機雷原を迂回させて、後方で合流させるよ」

両翼は混乱の中にある以上、勿論この命令が忠実に実行されるかどうかは甚だ疑問である。
かといって中央部だけの兵力では劣勢は明らかであり、迫り来る三つの艦隊を各個撃破、
あるいは後退から一転逆進して敵の一つを突破し、自ら両翼と合流を果たす等という戦術を
成功させうるだけの余地があるかと言えば、それこそ疑問であるだろう。
いずれにせよ"守"に徹しなければならないということは当人達の一致した結論であり、
彼らはその姿勢に相当する指令を命じたに過ぎないのである。
もっとも、感情的な司令官であったなら、中央だけでも敢えて"攻"に回っていたかもしれない。
内心、煮え繰り返るものがありながらも彼らがそうしなかったのは、
それぞれが作戦の根幹を沸き立つ感情で忘れ去ることがない人間であったからだろう。

「両翼の兵士達には気の毒なことをさせてしまいましたな」
「力無きものがここまで罪深いとはね。全く、今後のいい勉強になるよ」

アレフティナは真顔でそう呟いた。
副官には指令席に力なく肘をついたその姿に、どこか哀愁のようなものが漂っているように感じられた。
そして副官がそんな彼女から視線を外した時、オペレーターが艦影発見の報せを司令部にもたらすのだった。

109 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 23:41:21 0
「艦影発見! これは……オレンボーからの艦影です! その数およそ3000隻!!」

敵か味方かを訊ねることなく、彼らは安堵の表情を浮かべた。
敵の増援が帝国領を経由して来るという可能性がほとんどない以上、
発見された艦影が何を意味するものであるかは明らかであったからだ。

「味方です! アレニウス艦隊、マッカラム艦隊、アングラード艦隊の帝国軍第二陣です!!」

敵とアレフティナの艦隊を合わせた数の、およそ60倍以上の艦隊が急速に接近する姿を
敵もキャッチしたのか、敵は前進を止め、中央部を牽制しながら急速に後退していった。
アレフティナ艦隊の両翼は混乱の中にありがならも何とか迂回を進めており、
これが逆に後方の脅威を無くした敵に速やかな後退を許す結果となっていた。

多数の味方の来援で、アレフティナ艦隊は失いつつあった活気を再び取り戻しており、
アレフティナにはここで追撃の命令を下すこともできたであろう。
だが追い詰められた鼠に噛まれるが如くの事態を恐れた彼女は、分断された自軍の再集結を最優先とした。

「ゴングに救われたな。勿論、我々が……だが」

彼女がそう自嘲気味に呟いた時、艦橋に来援艦隊からの通信が入るのだった。
回線を開くとメインスクリーンに映ったのは、青い瞳に銀髪、既に40代半ばの年齢でありながら
まだ若き青年を思わせるような風貌の、アレニウス艦隊司令、オッシアン・アレニウス中将であった。
艦橋にいる司令官やその幕僚は即座に席から立ち上がり、敬礼を始める。
彼はスクリーンを通して彼女らの姿を視認すると、ようやく喋り始めた。

110 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/16(日) 23:44:19 0
「私は第二陣の指揮を任されたオッシアン・アレニウス中将である。
 貴官が当作戦の第一陣を務めたアレフティナ・レオーノフ中佐か?
 貴官の任務であるアルゴビーが不当に有した軍事兵器および軍事基地の破壊はどうなったのか?」
「アルゴビー宙域への侵入と同時におよそ30隻あまりの攻撃艦が出現しましたが、
 そのことごとくを殲滅いたしました」
「そうか。では先程まで貴官らが交戦していた相手は連合軍というわけだな。ご苦労であった。
 奴らの処理も後は我々に任せ、貴官は第三陣が到着するまで後方へ下がるがよい」

彼はそこまで言うと通信を切ろうとしたが、彼女はそこに待ったをかけた。

「お待ち下さい! 実はアルゴビーの軍事力についてお話しておかなければならないことが……」
「中佐、我々は与えられた任務を実行に移すだけだ。私は他の二艦隊と共に、この宙域と首都コロニーを
 早々に制圧せねばならない。間もなくベッカート閣下が直々に指揮なされる第三陣がここに到着する。
 その時閣下に直接伝えればよかろう……。では」

彼はそう言い残すと、画面から姿を消した。
敬礼を解いて、彼女は疲れたように司令席へと腰を下ろした。

「第二陣が3000隻とは……第三陣はもっと大規模な戦力であることが予想されますな」
「……」
(第三陣がどの程度の規模のものなのかは分からないが……
 軍事力を有していると想定される一国の首都とその領域を制圧するのに、
 3000隻というのはむしろ少なくはないのか? アレニウス中将の態度といい、
 やはりお偉方はアルゴビーに軍事力などないと知っていて……)
「……いずれにしろ、確かに直接聞けば分かることか」

いきなり独り言のように呟いた彼女を見て、副官は不思議そうに尋ねた。

「……なにか?」
「いや……なんでもない。とにかく後方に下がって良いと言われたんだ。そうしようじゃないか。
 こちらの被害を算出しながら、高みの見物と決め込むとしよう」

こうして合流した両翼と共に、アレフティナ艦隊は前線より退いていった。

111 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:34:52 0
>>108-110
帝国軍の中央部を補足しえた時、ヴァイスは作戦の成功を半ば確信していた。

もともと3倍の敵を相手に救難信号が出たから拠点防衛に赴けと言うこと事態が、
順軍事的に考えれば常軌を逸するどころか自殺願望の域に達している。
だが軍隊にいる以上命令は絶対なので、極限の中で手段を選択していく他はない。
そこで彼は3倍の敵に対してその兵力を分断し敵中央を包囲するという博打をしかけたのだ。

小規模の戦闘ながらそれを果たしつつある今、彼自身経験したことの無い充実感と高揚感に満たされ、
血沸き肉踊る軍記物の人物になりおおせたかのごとき錯覚まで見えていた。

「敵両翼が機雷を迂回しつつあります」
「包囲を諦めんつもりだろう。その前に叩いておこうか」

この時ヴァイスの脳裏には、敵増援が出現する可能性が浮かんではいたものの、
成功を前に都合の悪い予想を排除したがる人間の性の虜とならざるを得なかった。
彼が再びその因子に思い至るのは、けたたましいアラートと共に齎されたオペレーターの悲鳴によってだった。

「新たに艦影出現!その数およそ三千!」
「戦力差がゲオルギウスの5倍だな…話にならん」

はき捨てるように言うと、先ほどまでブリッジに充満していた高揚感はどこか遠いところへ消え去っていた。
勝利を目前に滾らせていた熱気に対し、真っ向から冷や水を浴びせられたのもあるが、
これからまさに帝国軍の攻撃に晒されることになるコロニー住民を見捨てざるを得ないことの方がより大きかった。

「三十六計逃げるに如かず…か、撤収だ!」

彼らの本質的な任務はコロニー防衛ではなく新兵器の実戦データ収集にある以上、全滅しては元も子もないのだ。
借り物は責任を持って返却する、などというのは幼年学校に入る前の児童ですらわかりきっている理屈である。

幸い、逃げるには労力を要さなかった。元々足回りの早い駆逐艦で構成された船団であったし、
相手が包囲をしこうとして機雷原を迂回したことで直線的な逃走経路が出来上がっていたからである。

「この場は、逃がしてくれた…と見るべきだろうな」

敵の待ち伏せなどを警戒し火力で圧倒できるアブラクサスを先頭に、殿には防御力で勝るブラオ・メーアを宛がって戦場を離脱した。

112 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:35:31 0
─ 一ヶ月前 ─

アルゴビーの首都最大のホテル「メリッサ」で、あるプロジェクトの成功を祝う記念式典が開かれていた。
政財界はもとより各国の著名人やマスコミがつめかけ、ホテルの周囲までもがお祭り騒ぎの様相を呈していた。

「このすばらしい今日と言う日を皆さんと共に迎えられたことを感謝します」

大勢の賓客を前に老科学者が控えめな言葉で喜びを口にすると、壇上に向けて拍手とフラッシュが一斉に巻き起こる。
コロニーで形成されたこの国が、3年もの時間をかけて配備した自給計画は今ここに実を結んだ。
その最大の功労者は先ほど挨拶を行ったカーペンター博士であろう。
エナジーサイクルシステム(ESS)をはじめとした数々の新技術を開発し、計画の中心的存在となった人物である。

エネルギー、食料…どちらも人間が文明社会を営む上で必要不可欠だが、賄うのは容易ではない。
農業は水耕プラントを用意すればいいが、アルゴビーにとってエネルギーに関しては原料を輸入する以外に手は無かった。
そのエネルギーをコロニー1基単位で自給する為の画期的な仕組みが「エナジーサイクルシステム」である。

コロニーの外側に球体のエナジープラントが連なってリングを形成している。その光景は数珠を思わせるものがあり、
後にニュースを拝見したヴァイスなどはコロニー本体が攻撃に無力なことから棺桶に喩え、
また新造されたミラー壁──太陽光発電とESSのサポートの為のハード──が見方によっては十字架にも見えることから、
「合わせて葬式三点セットだ」などと不謹慎極まる感想を脳裏に抱いている。

VIPに囲まれ、上機嫌で自らの発明について嬉々として語る博士の姿は、おおよそ好々爺の範疇を出ていない。
だが、パーティーの中で気づいている者はおそらく一人として存在しなかった。
彼らの中心にいる老科学者が、場所を変えれば名前も地位も尽く変える人物であったとを──!

113 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:36:33 0
現在

一ヶ月前、上機嫌でホテル「メリッサ」の記念式典に臨んだ老科学者は再びアルゴビーを訪れた。
ただし、今回はアルゴビーが用意したクルーザーではなく、軍の連絡艇に搭乗しており、
出迎えるのもホテルの従業員ではなく、戦艦マフートの無機質な収容口だった。

ノルド共和国から発進した救援部隊と称するそれは、まだ帝国と連合の小規模戦闘の最中にアルゴビーの反対側に到着していた。
だが、3個艦隊、及び多数の工作船からなるその船団はおおよそ救援という言葉には似つかわしくない様相を呈している。

「お待ちしておりました。ダイク博士」
「思ったより速くついたのぉ、結構結構」

旗艦ポロットのメインブリッジで、艦隊司令官たるイカロス中将の形式どおりの挨拶に軽口で応じると、
ダイクはそのままメインスクリーンに目を移した。
無数のコロニーが深淵の宇宙にその巨体を横たえており、その円筒をESSが数珠状に取り囲んでいる。
自身の作品が現状問題なく作動していることを満足げに確認すると、再び司令官の方に向き直った。

「しかし驚きましたな。帝国軍が本当に攻めてくるとは」
「攻めてこざるをえんじゃろうなぁ。
 帝国軍、とりわけ…確かベッカートと言ったかな。奴さんにはその事情がある」

ベッカートという名前には心当たりがある。帝国軍上級大将だが、統帥本部次期総長と呼ぶべき人物との情報だ。
現在の総長であるフォン=バイエルン元帥が定年間近の老齢につき精彩を欠いていることから、
その元帥府も実質彼が統治しているようなもの──と目の前の老人が付け加えた。

敵側の人物の動向や情勢を、この老人は何ゆえ詳しく知っているのか?
イカロスは口外こそしないが、一体何を企んだのだという目線を送りつけた。
最も、目の前の老人はそのようなことは一向に意に介さず、発言を続ける。

「ま、今回の主眼はコロニーの民衆を無事逃がすことにある」

口で言うのは簡単だが、億単位の人口を一挙に輸送するのは極めて困難である。
ノルドの船団も数は多いがそれだけの輸送船を動員している訳ではない。
司令官たるイカロスとて詳細は聞かされてはいないが、おそらく鍵はこの工作船にあるのだろう。

114 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:37:45 0
「あの船は最後の仕上げをちょこっとやってもらうだけじゃ
 前準備はESSを取り付ける段階でもう終わっとるわい」

エネルギー物資を循環再利用する為の仕組みのESS取り付けに乗じて、ダイクは既に工作を施していたようだ。
アルゴビー側の人間が知ったらどんな顔をするのか、さぞ見ものだろうとイカロスは内心思った。

「ワシが組み込んだのは単純なワープアウトの為のシステムじゃよ。規模で言えば前代未聞じゃがの」

計画の実を始めて聞かされたイカロスは大胆かつ突飛な発想に半ば呆れた。
何しろ400個あまりの直系50キロ、幅10キロ以上の円筒形の物体が、一度にワープアウトしようというのだ。
予め用意が成されているとはいえ、その実現には輸送船より工作船の動員が必要なのは言うまでも無い。

「しかし、帝国軍の攻撃によって失敗することもありえるのでは?」
「そうじゃの、明後日の方向へと吹っ飛ぶ可能性もゼロではない」

老科学者が口の端を持ち上げたその表情を、イカロスは気にも留めなかったが、
もう少し突っ込んでおけば、この時点でのダイクのもう一つの発想もこの時点で明らかになっていたかもしれない。

「ま、仮にそうなったとしても3億以上の人間が無事にノルド領内にワープアウトできる算段じゃ」

だから安心せいと言わんばかりの老人に対し、数の問題ではないのではないか?という疑問を口にしようとした時、
けたたましいまでのアラームが帝国軍の第2陣の到着を告げた。

「来なすったのぉ、そろそろワープアウトの準備を始めんと…な」

結論から言えば、ダイクの思惑は成就した。
帝国軍の第2陣が攻撃を開始した瞬間、無数のコロニー群が突如として光の彼方に消え去ったのである。
それを見た連合軍の側は、事情を知っていも尚驚きを隠せなかったのだから、
全く知らされていなかった帝国軍にどれほどの衝撃を齎したのか、想像しても余りあるものがあったが、
後続の第3陣と合流した帝国軍は更なる驚愕と恐怖を、ゾルタウ消滅という凶事によって思い知ることになった。

115 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:41:17 0
ゾルタウ要塞

帝国領オレンボー星系存在する帝国の軍事拠点であり、アルゴビー攻撃のために出陣した帝国艦隊の塒でもある。
直系はおよそ120km、人口天体としての規模は帝国内部でもトップクラスであり、
極めて頑強な装甲と液体流金属、さらにはバリアフィールドによって守られた難攻不落の城であった。

要塞司令官は総帥本部総長バイエルン元帥の元帥府に所属しており、
元帥府をそのまま派閥と言い換えればバイエルン派の根城と言い換えても良い。
揮下の艦隊を全て収容できるドッグを持ち、要塞主砲の一撃は一個艦隊を容易に殲滅し得る。
バイエルン派の長が事実上引退寸前の今、ゾルタウはベッカートの権力の象徴だった。

その要塞に、突如として無数のコロニーが亜高速で突入してきたのである。
これこそがダイクの最大の目的、質量をぶつけて質量を無効化するという作戦だった。
だが、コロニーを弾丸に見立てて攻撃するというのは聊か問題になりやすい。
そこで方便として帝国軍の攻撃による一部コロニー群のワープ失敗という形式を取ったのだ。

116 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:41:48 0
本来であればその衝撃を吸収するべきバリアーは、ミラーに模した中和システムで半ば無効化され、
液体金属も度重なる衝撃を吸収しきれず捲れ上がり、衝撃は要塞に直に響き鉄壁の装甲が幾度と無く悲鳴を上げる。
こうなると銃弾の如く突き刺さってくるコロニーが要塞の核融合炉に致命的なダメージを与えるのに時間はかからなかった。

帝国軍の誇る要塞の一つであるゾルタウが、光の玉となって消えうせる頃、
惑星ホンから出撃したバイソン大将の4個艦隊と、イカロス中将の3個艦隊が合流を果たし、
コロニーの消えうせたアルゴビーで帝国軍に対して攻撃を仕掛ける。
今ここにアルゴビー会戦の幕が切って落とされたのだ。

その時には、立役者だったダイクは既に工作船と共に戦場を離脱していた。

帝国軍は要塞を失った衝撃を隠せぬまま会戦に及んだのに対して、
ロゼアン連合は会戦が始まると同時に議会がアルゴビーに対する帝国の非道な攻撃を映像つきで全土に伝え、
そのプロパガンダを持って内部に浸透していた厭戦の機運を吹き飛ばすし、
地方自治体としてのノルド共和国がその発言権を増大させるに至るところを聞いたとき
ヴァイスは背筋が寒くなるのを感じた。

帝国軍にもそれ相応の思惑があったろうが、結果だけを見ればその差は歴然としており、
アルゴビー会戦において両軍が衝突する前に今回の事態の総括として老人の一人勝ち以外の何者にも思えなかった。

117 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/20(木) 00:32:15 0
…少しやりすぎじゃないか?
帝国側最大級の要塞をいきなりぶっ潰すとか一人で話飛ばしすぎ

118 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/20(木) 07:23:01 0
すいません
ノリでやりすぎました

要塞云々のくだりは無しで、
目標を要塞から帝国艦隊へ変更ってことで…

119 名前:エイク・リ・パブリク ◆K7L81OAJSo [sage] 投稿日:2008/11/20(木) 17:35:20 0
名前:エイク・リ・パブリク
階級:技術大尉
役職:連合軍第1特務実験戦隊(α部隊)指揮官
性別:男
年齢:33歳
身長:178cm
体重:87kg
容姿:平均的だががっしりとした体付き
    長い白髪を後ろ手に纏めている
出身惑星:惑星バイラック
人物紹介:
 元々は本星勤務の技術仕官だったが、ダイク技術将官の機嫌を損ね左遷されてしまう。
 その後は、ワケの分からない試作兵器の運用試験を行う実験戦隊の指揮を任される。
 慣れない指揮業務のためかストレスが溜まり、金髪は白髪に変わり大分老けて見える。
 かつては堂々とした性格だったが、現在では誰に対しても下手に出る臆病な性格である。
 ダイク技術将官の前に出ることを最も苦手としている。

【第1特務実験戦隊】
通称「α部隊」とも呼ばれ、エイク技術大尉が指揮官を務める特務部隊である。
その任務は兵器の試験運用及び評価にあり、データを纏めて開発本部に報告する。
データ収集艦「α」と二隻の護衛艦によって構成される。

名前:α
全長:200m
武装:旋回式2連ビーム砲、対空ミサイルランチャー、対空機関砲
兵器紹介:
 エイク技術大尉の乗艦で、α部隊の旗艦でフラッグシップ的存在のデータ収集艦。
 艦内には様々な機器が搭載され、それなりの情報処理能力と管制力を持つ。
 元々は旅客船だったものを改造したもののため、装甲は薄く武装も貧弱である。
 そのため、何らかの護衛が無ければ単独行動はできない。
 唯一の取り柄は、黒い船体と特務艦並みに強化されたステルス性能である。
 ハンガーには、様々な珍兵器が溢れかえったまま放置されている。

名前:試作型特別攻撃艦
全長:400m
武装:偏向ビーム砲、ビーム誘導用自律ユニット
兵器紹介:
 ダイク技術将官が開発した特殊な性能の試作艦。
 正四角錐の流線型ボディに黄緑色の船体が非常に特徴的である。
 砲塔の類いは無く、船体側面にあるクリスタルから偏向ビームを撃ち出す。
 それらを直径数十mほどの自律ユニットを操作して、増幅・誘導することができる。
 また、その形状から耐弾性が高く、先端の衝角は敵艦に対する特攻や突入に役立つ。
 しかし、それ以外の武装を積んでおらず、近距離防御力は皆無に等しい。

名前:試作型多目的防衛艦
全長:400m
武装:全方位バリア発生装置、多目的バリア展開用自律ユニット、対空パルスレーザー
兵器紹介:
 同じくダイク将官が開発した特殊な性能の軍艦。
 武装はほとんど搭載しておらず、バリア展開による防御にのみ徹底的に特化している。
 自艦の全方位にバリアを張れるほか、攻撃艦と同様の自律ユニットでインスタントバリアを展開できる。
 そのため、自艦以外の艦を保護することも可能。
 しかし、武装の少なさから、総合的な火力は旗艦α以下である。



120 名前:エイク・リ・パブリク ◆K7L81OAJSo [sage] 投稿日:2008/11/20(木) 17:58:12 0
「技術屋の我々に実戦をやれと?
 正気ですか、閣下!」
司令官「アルゴビー宙域での戦闘で、帝国の増援が確認されている。
     数で勝っているとはいえ、向こうに援軍が加われば我が方は持たん。」
「彼のヴァイス中佐の指揮される部隊なのでしょう?
 不利な戦況ならば、鮮やかに撤退されるはずです。
 そもそも我々などを援軍に回さずとも…。」
司令官「今、アルゴビーに回せるだけの戦力は無いのだ。
     撤退の手助けぐらいならできるだろう?
     無理して戦えと言っているわけではない。
     頼んだぞ、直ぐに向かってくれたまえ。」

はっきり言って、鬱になりそうである。
今まで駄作兵器の評価手続きを片付けてきただけの我が隊に、初実戦をやれと言うのだ。
技術屋とは言え軍人である以上、上からの命令には逆らうことはできない。
落ち込む者、いきり立つ者、クルーの反応も様々である。

そもそもα部隊は兵器の試験運用・評価を行う、技術屋の集まりである。
技術に貢献する栄誉ある部隊にも見えるが、実際そんな甘いものではない。
いや、甘いどころか厳しい世界だ。
データ収集艦を使っての性能評価など、最早旧式化したシステムなのだ。
我が隊も、かつて無数に存在した特務実験戦隊の最後の生き残りである。
つまり、本来であれば存在価値の無い部隊なのだ。

ここに所属することは即ち、左遷されることと同意なのだ。
私を含め、部隊の面々は皆左遷されてきた問題人。
言わば、負け組の掃き溜めである。
オンボロで安易な名前のデータ収集艦が旗艦。
護衛艦は、私を左遷した忌まわしき男の開発したトンデモ試作艦2隻。
どこに行っても馬鹿にされ、奇異の目で見られる存在である。

121 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/20(木) 21:06:23 0
ワープで敵にぶつけて吹っ飛ばすってのはSFの禁じ手だよなw
でもまー主役であるアレフティナやヴァイスの及ばぬ話だし別にいいんじゃね?
人命軽視の戦法とかマッドサイエンティストがいかにもやりそうだし
何度もやられると萎えるが

122 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/20(木) 23:42:25 0
>>119
耐弾性が高いのに防御力が皆無とはこれいかに

123 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/21(金) 09:04:45 0
>>119>>122
防御力というより、迎撃力が無いんじゃねえの?


124 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/21(金) 21:47:58 0
>>118
後続の艦隊をふっとばしたらアレフティナ関連の話がぶっ壊れちゃうやん
要塞なら話に破綻を齎さないからそっちの方がいいだろ

>>123
取り付かれたら終わりか
何となくラミエルみたいのを想像したけど

125 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2008/11/22(土) 00:21:05 0
ふと思ったけど参加者将校将官ばっかやな
つか登場人物に将校以上しかおらん気が

126 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 00:23:38 O
↑上げるな!!

127 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 00:30:55 O
このスレの避難所か雑談所を作って自己紹介、注意、変更など会議室的なスレを作ってみれば?
あと荒らし対策をしないとね(^∪^)

128 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 10:45:11 0
そもそもスレのシステムに問題あるんじゃね?
艦隊戦が基本みたいだからね
たかだか一機のCW出したところで、やれることはたかが知れてる
必然的に将校じゃないと活躍できなくなるわけだ
艦載機はほとんどMOBにならざるを得ないだろう

129 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/23(日) 18:13:35 0
>>113-116
「駆逐艦18隻、巡洋艦7隻、戦艦1隻が大破撃沈。尚、CW48機が撃墜されたとのことです」

艦隊を後方に下げたアレフティナは兵力の再編制を終えてからしばらくして、幕僚から損害の報告を受けていた。
艦隊の半数を失ったとの報告に、アレフティナは思わず溜息をついていた。

「現時点で兵士の生存と死亡率は半々かい。……やってくれるよ」
「やはり連戦続きであるということを、軍首脳部が軽視していた結果であることは否めませんな」
「責任は私にもある。それも否定できない事実さ」

彼女は自らを嘲るようには言わず、真顔でそう呟いた。
副官は何も言おうとはしなかったが、これは兵士達の命を預かる司令官の言として、
自然、あるいは当然な認識であったからだ。二人はこのやりとり以降、互いにしばらく口を閉ざした。
疲労により無駄口を叩く気力も失せていたのだろうか。だが、それは彼ら二人だけではなかったらしい。
先程までの騒がしさとは打って変わって、艦橋はしばらく異様なほどの静けさを取り戻していた。
しかし、それを破ったのは、スクリーンが映し出した"コロニーの一斉消失"の瞬間であった。
だが驚きはこれでは済まなかった。あまりの出来事に一同が唖然とするそんな中、
タイミングを見計らったかのように出現した新たな艦隊がアルゴビーへ殺到してきたのだ。
その数、およそ7000。第二陣の倍以上の数である。アレフティナは純粋に目の前の事態に驚きながらも、
同時に帝国に差し迫った危険性を感じていた。
何故なら敵が帝国軍の動きを事前に察知していなければ、とても考えられぬ程の素早い対応であるのだ。
すなわち情報が筒抜けであった可能性が極めて高いのではないか。
そうであれば、今後も帝国軍の作戦を逆手に取られることも否定できないのだ。

「……まずいな」

アレフティナはそう呟いたが、それは倍以上の艦隊に囲まれて見る見る内に撃ち減らされていく
第二陣の艦隊を見て言ったものなのか、それとも脳裏に浮かぶ危険な疑惑に対し言ったものなのか。
──恐らく、その両方であっただろう。

130 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/23(日) 18:22:55 0
ゾルタウ──。それは帝国領オレンボーに浮かぶ巨大要塞の名である。
ゾルタウ要塞は帝国側アールガウ回廊の守備の要であるアールガウ要塞と、
オードルド星系のアクサナ要塞と並んで帝国三大要塞の一つに数えられている。
つまるところそれだけ巨大で、難攻不落として名を馳せたということなのだが、
アルゴビーで帝国軍が連合軍と砲火を交えている調度この頃、ゾルタウは忽然とその姿を消していた。
その原因は大質量物体を用いた連合軍の攻撃を受け、その思惑通りに完全に破壊されたからである。
アルゴビー宙域の帝国軍がこの事実を知るのは戦闘が終結してからのことであるのだが、
彼らにとってはそれが幸いしていたとも言える。
何故なら、仮にこの時彼らに要塞消滅の報がもたらされていれば、彼らの多くは驚愕し、
ただでさえ劣勢の中で急速に失いつつある戦意を更に加速度的に損失していたはずであるのだから。

だが、アルゴビー攻撃に関わる帝国軍全ての指揮官の中で、ただ一人だけ要塞消滅の事実を知る人間がいた。
それは他でもない作戦の最高責任者ベッカート上級大将である。
彼はこの事実を知ると憤怒し、拳を強く握り締めてデスクを叩き周囲に自身の心中を露にしたという。
しかし、内心では胸を撫で下ろしていたという一面もあったことは知られていない。

彼は当初、"ゾルタウ要塞をワープによりアルゴビー宙域に移動"させ、要塞を拠点にアルゴビーを連合領侵攻の
橋頭堡とする構想を持っていた。ところがゾルタウは直径120kmにも及ぶ大質量の人口天体である。
これ程の天体をワープさせる例はこれまでになく、多くの高いリスクが彼の前に立ちふさがった。
かといって大型のブースターによって移動させる、というやり方では時間がかかりすぎるなどの
幾多の技術的困難を解決することもできず、結局のところこの構想は実行に移されず、
代わりに"ワープが可能な範囲にあり、防衛拠点として十分機能する"代用品をもって実行されることとなった。
その代用品に選ばれたのが、オレンボーの端でひっそりと浮かぶ"ダルルーボ要塞"である。

ダルルーボ要塞。複数の小惑星を結合させ、表面を加工し特殊な防弾鋼板で覆うことで綺麗な正八面体の
姿をなす、高さ40kmのこの要塞は、かつてチェーンスト公国と呼ばれた国の最終防衛ラインの拠点であった。
後に要塞を接収した帝国が長らくの間オレンボーの防衛拠点として使用していたが、
巨大なゾルタウ要塞の誕生以降、ダルルーボは影を潜め要塞としては半ば引退気味となっていた。
しかしそんなダルルーボに目をつけたことが、結果的にベッカートの命を救ったといえる。
本来であれば直接彼自身がゾルタウに乗り込んで指揮をとることになっており、
そうなっていれば今頃はゾルタウと共に宇宙の塵と消えていたであろうことは明白であったからだ。
だからこそ、彼自身もこの事態を複雑に感じざるをえなかったのである。
彼はそうした様々な思いをオレンボーに残しながらも、ダルルーボ要塞とその艦隊を率いて、
アルゴビーへとワープを開始していた。

131 名前:アレフティナ・レオーノフ中佐 ◆ojH9XuT2Sg [sage] 投稿日:2008/11/23(日) 18:28:14 0
アルゴビーで帝国軍は、時間が経つごとに徐々に劣勢へと追いやられていた。
敵は倍以上の兵力であるのだから当然の成り行きともいえたが、実際に戦っている人間にとっては
後続が到着するより先に壊滅の不安が頭にちらつく中で、冷静に達観してもいられないだろう。
後方で戦況を見つめているアレフティナは戦闘にこそ参加しなかったが、
コーヒーの入ったカップを持つ手は小刻みに震え、一人焦っていることは誰の目にも明らかであった。

「……これじゃ全滅の方が早いかもしれないぞ。第三陣はまだか!?」
「まだ、確認されておりません」

いやに冷静な幕僚の一言に、彼女は内心怒りを感じたが、
そのことで八つ当たりしてもどうにもならないことは理解していたので、
結局何も言えずただ何もかもに耐える時間を送り続けていた。
そんな彼女の我慢が限界に達しようとした時であった──。

「──後方から何かがワープアウトしてきます!」

咄嗟に彼女はスクリーンを後方の映像へと切り替えさせ、司令席から身を乗り出した。
映像は空間が歪んでいく様をとらえ、その歪みの大きさから一個艦隊レベル以上の物体が
出現することは明らかであった。この時、誰もが第三陣の大艦隊だろうと思ったことだろう。
彼女もそう思い顔に一瞬安堵の色が浮かべたが、それは直ぐに驚嘆へと変わった。

「──!?」
「おお! あ、あれは! ダルルーボ要塞……!!」

驚いたのは紛れも無く艦橋にいた全員であっただろう。
彼女は持っていたカップを落としそうになりながら、冷め切ったコーヒーを一気に飲み干した。

「あれが……ベッカート閣下の指揮される第三陣……。とんでもない物を運んできたな……」

要塞の後をついてくるように、アルゴビーには続々と新たな艦隊が姿を現していた。
その数、およそ3000。要塞内に更なる艦隊が収容されていると仮定するなら、
いまや状勢は一変したと言っていいだろう。
次々と予想外のことが起きるこの戦場で、アレフティナ艦隊の人間はただ唖然とするだけであった。

132 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/27(木) 00:27:00 0
青天の霹靂、寝耳に水…突然の驚愕を表すための言葉は数多く用意されており、
人の一生が常にそういったものに脅かされている証拠といえた。
当然それは人類が銀河を寝床とするようになってからも変わる訳ではなく…

「あ、アルゴビーが…消失いたしました!」
「どういうことだ!」

ブラオ・メーアの艦橋にてヴァイスが発した一言は、まさに彼の部隊の全員の心情を代弁していた。
コロニー国家の突然の消失、その事象の報告を受けた指揮官は無意識下のうちに立ち上がっており、
通信士はその事態に報告を復唱する以外になす術を知らなかった。

「…まぁいい、こうなったら俺らがこの宙域で這いずり回る理由も無い」

既に守るべきコロニーが無ければ彼らがここにいる道理は無い。
全艦惑星ホンへの帰還を…と発しかけた彼の命令を打ち消したのは、連合艦隊からの通信である。
メインブリッジのモニターに映し出された顔を見た彼は、たちどころにげんなりとしていくのを自覚した。
元凶たる張本人はそんなヴァイスの様子には一切の注意を払わず、自分の用件だけを伝える。

「α部隊との合流ですか?」
「うむ、今後は実験系の部隊を合流させ、実戦部隊として再編することにしたのじゃ

アルゴビーの第11艦隊旗艦ポロットに居座るダイクの顔は上機嫌そのものだった。
コロニー消失という事態が恐らく彼の計算の範疇にあったであろうことは想像に難くない。
そもそもこの宙域に何故ノルド共和国の艦隊が先行して到達しているのか…
知らせを受けて急行中の惑星ホンからの艦隊すら、まだ姿形も見えていないというのに…

(問いただしたところで、答える筈も無いがな…)

半分諦めの境地に入らざるを得ないので、思考を転換することにした。

133 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/27(木) 00:27:30 0
>>119-120
連合軍第1特務実験戦隊、通称α部隊。ダイクの発明品を評価する為の部隊といえば聞こえはいいが、
老人の趣味でこさえた発明品と言う名の玩具を転がす為の実験室と表現した方が的確だろう。
後方勤務の中でもハズレくじに分類される部署であり、左遷同然の人間が送り込まれる流刑地と大差無かった。

指揮官はエイク・リ・パブリク技術大尉。
連合の首都星「アルトネリコ・ローゼス」に勤務する技術屋きってのエリートだったのだが、
どこかの老人から睨まれたのが運の尽き、出世街道から弾き出された。
太陽に照らされた稲穂を連想させる豊穣な金髪も今ではすっかり色あせており、
威風堂々と評されたその物腰も、ストレス故かすっかり萎縮してしまっている。

ヴァイスにとっては軍人としても人間としても先輩にあたり、
あのマッドサイエンティストの機嫌を損ねたらどうなるかという見本でもあった。

(バイソン大将が露骨に嫌な顔をする訳だ…)

そこまで思いをはせていたところに、味方の艦影がさらに4000程増したとの知らせが入る。
彼の思考の端にあったホン司令官のバイソン率いる艦隊が到着したのである。

「この上は、我々の役目もありませんな。ただちに後方に下がりα部隊と合流します」
「うむ、是非そうしてくれたまえ

こうして彼は一度前線を退き、α部隊と合流する。
その場で初めて、彼はコロニーの行き先の一つがノルド共和国であったことを知らされたのである。

134 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/27(木) 00:28:52 0
>>128-131
惑星ホンを出発した艦隊ははアルゴビーを目指して来ており、今まさに到着した筈だった。
にも関わらず、彼らの眼前に広まっていなければならないコロニー国家はどこにも存在しなかったのである。

「どういうことだ…!」
「攻撃によって消失した可能性は低いでしょう…ワープアウトの類かと」

参謀のヤギュウ准将も半ば信じられないという表情を浮かべながらも、持ちうる理性を総動員して推察する。
そこにノルド共和国の3個艦隊が出現したことにより、准将には一つの確信が生じた。

当のノルド側の艦隊にはホン艦隊程の驚愕は広がってはいなかった。
巨大なコロニー群が視界から消えうせる様は、視覚的に衝撃の大きい事態ではあるのだが、
それでも事前にワープアウトの計画を知らされていたことが大きかった。

「おそらく…コロニーはノルド共和国へと移送されたものと思われます」
「…ノルドめ、何が救援部隊か!これだけの艦隊を用意しておったとはな!」

バイソン大将は苛立ちを隠そうとはしなかった。
だが、帝国の3個艦隊が出張ってきている以上、これを見過ごす道理も無い。
今のところ連合側には敵の2倍以上の数が揃っており、包囲して敵を殲滅すべく艦隊運動を開始した。
先ごろから帝国側に先手を取られてやられっぱなしということが多かった分、
連合側の兵士の敵愾心も相当に高まっており、今までの仕返しとばかりに攻撃は熾烈を極めた。

連合の猛攻に対しアレニウス中将中将揮下の艦隊が帝国軍の矜持を保っていたが、
他の艦隊は次々に打ち減らされていき、こうなると統制は難しかった。
大破轟沈などして消失する艦、損害の大きさ故に逃散する艦が相次ぎ、全軍崩壊も間近だった。

だがこれで戦いは終わらなかった。
今までアルゴビーのコロニーが存在した場所に、帝国軍のダルルーボ要塞が出現したのである。
無傷の3個以上の艦隊と要塞が一挙に押し寄せると言う事態によって、連合の圧勝に終わる筈の戦局は一変した。

戦闘能力を完全に失い、虫の息の状態で逃散していた帝国軍の艦船が次々と要塞へと群がっていく。
午前0時14分、両軍共未だにゾルタウの消失を知らなかった。

135 名前: ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/27(木) 00:29:54 0
「ほっほーぅ、敵は代わりに要塞を移動させてきおったのか。中々どうしてやるもんじゃのぉ」

連合軍の大半が驚愕を持って迎えた事態に対し、ダイクは半ば無感動に呟いた。
ある程度予想していたのもあったし、今まさに自分が似たような手品を見せたばかりなのだ。
無論、あの程度の規模の要塞であれば複数個のコロニーをぶつければ宇宙の塵と化すことも不可能ではない。

とはいえ、いかにダイクとてコロニーを用いた2度目の質量攻撃を行うことは出来なかった。
ゾルタウ要塞を破壊する為に、既に5000万を超える犠牲がアルゴビーから出ている。
それもこれも”ワープ中の敵の妨害”という理由付けがあって始めて発射出来たのである。
もしこれ以上方便もなしに犠牲者を増やせば、誰にとっても不都合な事態を招くことは明白だった。

かといって、他のコロニーを用いる為には用意するにも時間がかかる上、
住民を排除する必要がありこれもまた人道上の観点から糾弾される可能性が極めて高い。
老科学者としてはどのような手段を用いても恥じるところが無いが、わざわざ自己の立場を悪くする必要も無かった。

問題があるとすれば、帝国側が同様の戦法を取る危険性だが、これについてはダイクは左程懸念してはいない。
帝国の社会構造は、平民による無条件の奉仕が貴族という特権階級を支えることで成り立っている。
だが、数十年続いている大戦によって平民が矢面に立ち続けた結果、その意識にも変化が生じていた。

昨年のゼカルテ中佐亡命事件以来、門閥貴族の横暴に対する不平不満は常に何らかの形で噴出の兆しを見せている。
仮に戦略上の目的の為に無辜の民衆をコロニーから追い出す、または死に追いやろうものなら、
平民達の怒りが特権階級たる貴族を脅かす結果を招きかねないのだ。

連合側は人道及び政治的な理由から、帝国側はその情勢故にコロニーによる質量攻撃を行うことが出来なかった。

無論、上記の理由だけであればあらかじめ無人のものを用意してワープアウトさせることも出来るかもしれないが、
質量が大なるものをワープさせること事態にリスクを伴うし、相手の座標に対する正確な情報が求められる。
ダイクにせよベッカートにせよ、事前に対象地区の情報を入手していなければ計画を遂行出来なかった。
人工物を新たに製造するにせよ、小惑星を流用するにせよ、必要数用意するには時間とコストがかかりすぎる以上、
余程のことが無い限りこの作戦が用いられることは無いと断言できるだろう。

「ま、局所的な戦局にまでワシが責任を持つ必要もないでな」

マッドサイエンティストと悪名高い老人は、飄々とした声で呟いた。

136 名前:ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y [sage] 投稿日:2008/11/27(木) 00:32:48 0
α部隊と合流したヴァイス率いる船団は、アルゴビー宙域の外延からその様子を眺めていた。
連合艦隊の勝利に終わると思われた戦局が、予想外の事態により再び混迷に戻ったのには流石に驚きを隠せなかった。

「ダルルーボ要塞をワープさせるとはな…」

彼がモニターを眺める目は非常に冷ややかなものがあり、その視線は主に自分の所属するノルド共和国を見据えている。

政治的な思惑からダイクにコロニーを動かさせたまでは良かったが、
敵の要塞が入れ替わるようにワープしてきたとあっては、わざわざ窮地を運んでやったようなものである。
防衛拠点としても橋頭堡としても利用可能な代物がやってきたというのだから穏やかではない。

「ゾルタウでは無いようですな…恐らくリスクとコストの面からダルルーボが選ばれたのでしょう」
「それにしても…懐かしいな」

彼らもまた未だにゾルタウの消失を知らない為、副官も敵が効率を考慮した上でのダルルーボ出現と判断した。
そして胸に去来するの懐かしさもあった。士官学校の訓練に良く用いられたこともあって感慨深いものを感じる。

「ま、懐かしさに浸っていても何ら益になるところが無い。不毛のきわみだ。
 何にせよ手をこまねいていられる状況じゃない。合計20隻の愚連隊だが…可能な限り動いてみようか」

エイク大尉とゲイボルグ大尉をブラオ・メーアの艦橋に招き、それ相応の手立てを打つことで合意した。

────────────────────────────────────────────

『メーデーメーデー!こちら第7艦隊所属の輸送船団!敵の攻撃を振り切れない…至急応援を求む!』

混迷する戦況の中、通信を受けたダルルーボ要塞の駐留部隊のひとつが現場に急行すると、
青い色の巡洋艦を先頭にした小規模船団が、輸送艦、及びその護衛艦からなる船団に対し
いたぶるかのごとく執拗に付回している様が見て取れた。

仲間の窮地に悠然と立ち向かわんとした帝国軍に対して、連合軍側は戦火を交えないうちから逃走。
結果として駆けつけた部隊と連合側の部隊との間に戦闘は行われなかった。

負傷した船団の長がかろうじて通信に応じると、2、3言葉を交わしただけで部隊長は通信を切った。
陰惨な状況の中でかろうじて生き延びた味方を一刻も早く連れ帰らねばならない。
輸送船や護衛艦の数は撃ち減らされた挙句能力を激減させており、そんな彼らを牽引するようにして要塞へと戻っていた。

137 名前: ◆ojH9XuT2Sg [sage] 本日のレス 投稿日:2008/11/30(日) 12:38:54 O
都合によりしばらく書き込めそうにありません
ですので私を待たず先に話を進めても構いません

【兵員】第二次銀河大戦【募集】

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